JPH08104995A

JPH08104995A - 外観の優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法

Info

Publication number: JPH08104995A
Application number: JP24266394A
Authority: JP
Inventors: Fuminori Mukohara; 文典向原; Tsutomu Komori; 務小森; Nobuo Totsuka; 信夫戸塚
Original assignee: Kawasaki Steel Corp
Current assignee: JFE Steel Corp
Priority date: 1994-10-06
Filing date: 1994-10-06
Publication date: 1996-04-23

Abstract

(57)【要約】【目的】鋼板に酸性浴を用いて電気亜鉛めっきを行っ
ても、筋状等の欠陥がなくしかも光沢の良いめっき外観
の優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法の提供。【構成】被めっき材としての鋼板をめっき前の酸洗で
酸洗減量が0.60g/m²以上となるように酸洗し、次いでめ
っきする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、硫酸浴、塩化物浴等の
酸性浴を使用した外観の優れた電気亜鉛めっき鋼板の製
造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に電気亜鉛めっき鋼材は、溶融亜鉛
めっき鋼材に比較して、皮膜の均一性および外観におい
ても優れるために、自動車、家電、建材用等に広く使用
されている。この電気亜鉛めっきに用いられるめっき浴
としては、特に生産性向上を目的とする高速めっきライ
ンでは硫酸浴、塩化物浴等の酸性浴が主流となってい
る。

【０００３】しかしながら、これら酸性のめっき浴で
は、めっきの結晶配向性が母材鋼板の影響を強く受ける
ために、母材鋼板に不均一部や欠陥部があるとそれがそ
のままめっきの結晶配向性に影響を与え、不均一部や欠
陥部が他の部分と異なっためっきの結晶配向性となり、
めっきにあたかも模様がついたような不均一なめっき外
観になることが多かった。これが酸性浴の大きな欠点で
あり、また、光沢においてもシアン浴に対して及ばなか
った。

【０００４】また、亜鉛めっきの外観は、以下の理由か
らめっき鋼板製造者側にも無視できない重要な項目とな
っている。従来、亜鉛めっき鋼板は塗装下地用として用
いられていたが、最近では、ユーザー側からの塗装省略
要求によって、亜鉛めっきの上にクロメート、有機樹脂
コーティングを施し、耐食性、耐指紋性の優れた表面処
理鋼板として裸のまま使用されることが多くなってきて
いる。この場合、亜鉛めっきの外観は、製品の外観とし
てそのまま反映される。したがって、いかにして外観の
美麗なめっきを施すかが重要な課題となっている。

【０００５】そこで、たとえば硫酸酸性浴による亜鉛め
っきの光沢を改善する方法として、(1) グリセリン、グ
ルコース、デキストリン等の有機添加剤をめっき浴に添
加する方法（特開昭64−14890 号公報）、(2) めっき浴
中にSrCO₃、BaCO₃を添加してめっき浴を浄化する方法
（特公昭53−18170 号公報）等が提案されている。ま
た、めっき外観欠陥を改善する方法として、(3) 被めっ
き材としての鋼板のフェライト結晶粒度を10μm から35
μm の範囲に規定する方法（特開昭61−166992号公
報）、(4) 被めっき材としての鋼板の表面粗度を規定す
る方法（特公平５−43796 号公報）、(5) 電気亜鉛めっ
き鋼板を調質圧延する方法（特開昭64−52099 号公報）
等が提案されている。

【０００６】また、電気亜鉛めっき前のめっき母材鋼板
の酸洗は、日常的に実施されているが、焼鈍後のテンパ
ーカラー等の表面酸化物の除去（高々数百Åの厚み）が
主目的で、鋼板の酸洗減量も0.3g/m²以下となってお
り、電気亜鉛めっき外観の向上には利用されてはいな
い。一方、電気亜鉛系合金めっきでのめっき前の母材鋼
板の酸洗は、表面濃化層の除去によるピンホール等のめ
っき欠陥防止（特開昭61−159590号公報）や、鋼板酸洗
による表面のアンカー効果で疵部の塗膜クリープと冷凍
チッピング性の向上を図ること（特開昭63−38597 号公
報）が行われているが、鋼板の不均一な集合組織を除去
する観点から、めっき前の母材鋼板に酸洗を行うことは
実施されていない。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
(1) の方法は、有機添加剤がカソード界面に吸着され、
レベリング作用により光沢を改善する効果は少しはある
が、完全ではない。また添加剤の濃度管理範囲が狭く、
特に操業時めっき浴組成の変動しやすい高速高電流密度
のめっきでは、製品の均質性が保証されない問題があ
る。また、添加剤自体がカソード界面で還元され、実際
に亜鉛皮膜中に取り込まれるために、めっきの耐食性、
クロメート反応性を劣化させる問題がある。また（2)の
方法についても、添加した薬剤の濃度管理範囲が難しい
ことと亜鉛中に微量のSr、Baが共析し、皮膜特性が低下
する問題がある。

【０００８】また(3) の方法は、様々なユーザーに対し
て、鋼板としての要求項目に加えて、鋼板のフェライト
結晶を10μm から35μm のような狭い範囲に管理するの
は、極めて難しく、外観の向上の効果も小さい。(4) の
方法も同様に、鋼板の表面粗度の管理が難しく、外観の
向上の効果も小さい。(5) の方法は、調質圧延によって
めっき鋼板の材質が低下する問題がある。

【０００９】さらに、めっき前のめっき母材鋼板の酸洗
は、日常的に実施されているが、鋼板表面の酸化物の除
去（高々数百Åの厚み）が主目的で、鋼板の酸洗減量も
0.3g/m²以下となっており、めっき外観の向上に利用さ
れていない。本発明は、鋼板に酸性浴を用いて電気亜鉛
めっきを行っても、筋状等の欠陥がなくしかも光沢の良
いめっき外観の優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を
提供するとを目的とするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、酸性浴を用い
て鋼板に電気亜鉛めっきするに際して、被めっき材とし
ての鋼板をめっき前の酸洗で酸洗減量が0.60g/m²以上と
なるように酸洗し、次いでめっきすることを特徴とする
外観の優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法である。

【００１１】

【作用】本発明者らは、電気亜鉛めっきの外観に及ぼ
すめっき母材側因子の影響を鋭意検討した結果、電気亜
鉛めっきの結晶は、母材鋼板のフェライト結晶粒度や数
十mm角の範囲での結晶配向性にはよらず、目視可能な数
百μm 角の範囲の母材鋼板表面の集合組織の影響を強く
受け、かつめっき外観はめっき結晶によって決定される
ことを、見い出し本発明に至った。

【００１２】すなわち、本発明では、被めっき材として
の鋼板をめっき前の酸洗で酸洗減量として0.60g/m²（片
面当り）以上の酸洗を施して、鋼板表面の亜鉛めっきの
結晶配向に影響を与える不均一な層を除去した後にめっ
きするので、筋状の模様等の欠陥がなく、しかも光沢の
良い外観の優れた電気亜鉛めっき鋼板を製造できる。酸
性電気亜鉛めっき浴として、硫酸浴、塩化物浴および硫
酸浴と塩化物浴の混合浴等を用いることができる。

【００１３】次に、本発明のめっき前の鋼板の酸洗減量
の限定理由を説明する。めっき前の母材鋼板の酸洗減量
を0.60g/m²以上に規定したのは、めっき結晶に影響を与
える鋼板表面の不均一層を、ほとんどの鋼板について除
去できるからである。望ましくは、全ての鋼板の不均一
層を完全に除去できる0.90g/m²以上がよい。めっき前の
鋼板の酸洗は、硫酸浴でのめっきでは硫酸、塩化物浴で
のめっきでは塩酸で行うのが、めっき浴組成の管理から
も好ましいが、特にこれに限定されずにリン酸、硝酸な
どの種々のものも用いることができる。本発明の鋼板の
酸洗減量を得るには、酸濃度を装置の点から上げられな
い場合は鋼板の浸漬時間を長くする、浸漬時間を装置の
点から増加できない場合は酸濃度を上げる方法を採るの
が良い。

【００１４】一般に、多結晶上に電析する亜鉛の結晶形
態は、硫酸浴（添加剤を加えないもの）の場合、断層
（六方晶状）を呈する。ある一定の方向性を持つ断層結
晶がそれぞれ大きく成長すると、キラキラし外観は劣
る。これに対して、断層結晶が全体に微細なものは、外
観もきめ細かく、平滑観、光沢に優れている。一方、亜
鉛の電析時、結晶の成長方位は下地（母材）の結晶方位
の影響を受け、金属の酸化現象等でよく観察されるエピ
タキシャル効果と類似の現象が生じる。このエピタキシ
ャル効果の係る母材の結晶類は最表層のものである。

【００１５】めっき母材が例えば冷延鋼板のような多結
晶体である場合、亜鉛結晶はフェライト結晶粒１つずつ
に対応して相互に競合しながら成長する。この時、鋼板
表面の特定部分にフェライト結晶粒の小さい部分（例え
ば10μm 以下）が集積していると、結晶成長の競合が強
まり、結果的にきめ細かな結晶形態となり、他の部分と
異なるめっき外観を呈する。あるいは、特定部分にフェ
ライト結晶粒の大きい部分（例えば40μm 以上）が集積
していると、結晶成長の競合が弱まり、結果的に大きな
結晶形態となり、他の部分と異なるめっき外観を呈す
る。しかしながら、このようなフェライト結晶粒の集積
は、通常の鋼板にはほとんど見られず問題とはならな
い。

【００１６】しかしながら、鋼板表面の特定部分のフェ
ライト結晶が特定方位に集積すると同様に他の部分と異
なるめっき外観を呈する。この鋼板表面での特定部分の
フェライト結晶方位の集積は、冷間圧延や調質圧延にお
いて、圧延ロールでの不均一な圧下によって鋼板表面の
集合組織が決定されるために起こり、通常のめっき母材
鋼板の生産においては避けることができない。鋼板表面
でのこの異常層の厚みは、高々0.12μm 程度（酸洗減量
0.60g/m² 以上で除去可能）であり、この層をめっき前
の酸洗で除去すると、均一なめっき結晶となるために、
鋼板表面の場所によるめっき結晶の違いに起因する外観
欠陥もなく、しかもめっき結晶が細かく、光沢が良く外
観が優れた電気亜鉛めっき鋼板が得られる。

【００１７】

【実施例】以下に、本発明の外観に優れた電気亜鉛めっ
き鋼板の製造方法について、詳細に説明する。板厚0.8m
m の冷延鋼板をアルカリ脱脂後、めっき母材のめっき前
の酸洗減量を種々変え、次に示す条件の硫酸浴および塩
化物浴で電気亜鉛めっきを行い、めっき外観欠陥の有無
および光沢度（デジタル変角光沢度計）を評価した。（硫酸浴） Zn²⁺： 100 g/l Na⁺： 3 g/l pH ： 1.8 温度： 60 ℃ 電流密度： 100Ａ／dm² 目付量： 20 g/m² （塩化物浴） Zn²⁺： 110 g/l Ｋ⁺： 180 g/l pH ： 4.5 温度： 50 ℃ 電流密度： 80 Ａ／dm² 目付量： 20 g/m² めっき外観欠陥の評価は、めっき外観欠陥発生度を０か
ら５に区分し、100 ×150 mm面積の鋼板当たりの筋状模
様等の欠陥本数で次のように評価した。

【００１８】５：０本４：１本３：２〜３本２：４〜９本１：10〜15本０：16本以上その結果を、硫酸浴の場合図１に、塩化物浴の場合図２
に示す。

【００１９】図１、図２から明らかなように、めっき母
材のめっき前の鋼板酸洗減量を0.60g/m²以上とすること
で、外観欠陥がなく、光沢の良い外観に優れた電気亜鉛
めっき鋼板を製造することができる。

【００２０】

【発明の効果】本発明によれば、硫酸浴、塩化物浴等の
酸性浴を使用しながら、めっき外観を損なう筋状等の欠
陥がなくしかも光沢の良いめっき外観に優れた電気亜鉛
めっき鋼板を製造できる。また、本発明は、素材欠陥を
持つ鋼板でも、めっき前の酸洗により異常部を溶解除去
するために、良好なめっき外観が得られるので、製造効
率が上がる利点がある。また、皮膜自体の特性をほとん
ど変えずにめっき外観を良好にするものなので、耐食
性、クロメート処理性等のめっき特性の劣化の問題がな
く、さらに、高速（高電流密度）めっきラインにも適用
できる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】硫酸浴の場合の被めっき材のめっき前酸洗減量
と電気亜鉛めっき外観欠陥発生率および光沢度との関係
を示すグラフである。

【図２】塩化物浴の場合の被めっき材のめっき前酸洗減
量と電気亜鉛めっき外観欠陥発生率および光沢度との関
係を示すグラフである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者戸塚信夫千葉県千葉市中央区川崎町１番地川崎製鉄株式会社鉄鋼開発・生産本部鉄鋼研究所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】酸性浴を用いて鋼板に電気亜鉛めっきす
るに際して、被めっき材としての鋼板をめっき前の酸洗
で酸洗減量が0.60g/m²以上となるように酸洗し、次いで
めっきすることを特徴とする外観の優れた電気亜鉛めっ
き鋼板の製造方法。