JPH07223298A - 積層ポリカーボネート樹脂平板 - Google Patents

積層ポリカーボネート樹脂平板

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JPH07223298A
JPH07223298A JP1748094A JP1748094A JPH07223298A JP H07223298 A JPH07223298 A JP H07223298A JP 1748094 A JP1748094 A JP 1748094A JP 1748094 A JP1748094 A JP 1748094A JP H07223298 A JPH07223298 A JP H07223298A
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JP
Japan
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acrylic resin
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polycarbonate resin
acrylic
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JP1748094A
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English (en)
Inventor
Ganichi Tsuruta
▲巌▼一 鶴田
Shinichi Nakayama
伸一 中山
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 透明性、耐応力白化性、および耐候性に優れ
た積層ポリカ−ボネ−ト樹脂平板を提供する。 【構成】 ポリカ−ボネ−ト樹脂からなる基板層と、こ
の基板層の片面もしくは両面に、被覆層として厚みが1
0〜200μmのアクリル系樹脂組成物を設けた、積層
ポリカ−ボネ−ト樹脂製平板。該アクリル系樹脂組成物
は、最内硬質層重合体、架橋軟質層重合体、および最硬
質層重合体を含む多層構造アクリル系粒状複合体20〜
80重量%、硬質熱可塑性アクリル樹脂20〜80重量
%、および被覆層の厚み(μm)×被覆層中の紫外線吸
収剤濃度(重量%)=50〜250を満足する量の紫外
線吸収剤とからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透明性、耐応力白化性、
および耐候性に優れたポリカーボネート樹脂製の平板に
関する。本発明の平板は自動販売機の透明前面板、自動
車道路防音壁の透明採光窓、自動車の窓材、グレージン
グ、カーポートやサンルームの屋根、ドーム、アーケー
ド、腰板等の建材、看板、表示板、照明器具カバーなど
の耐候性および耐光性が必要とされる分野において利用
しうる。
【0002】
【従来技術】近年、自動販売機設置台数の急速な増加が
見られ、さらに販売商品の展示しやすさから、前面板は
ほぼ全体が透明プラスチック化される傾向となった。こ
のため、自動販売機前面板用の樹脂板の需要が急激に伸
びてきた。また、カーポートについては、軽量アルミ骨
格と透明プラスチック製屋根を組み合わせた軽快な意匠
のものの普及が著しい。
【0003】このような屋外用透明板の分野には、始め
透明性、外観の美麗さ、耐候性、成形加工性に優れた一
般アクリル樹脂板が多く用いられた。ところが、例え
ば、自動販売機前面板用途では大型化や形状複雑化に対
応して絞り加工成形が一般的となったが、この際にコ−
ナ−部が薄肉化して割れやすくなるという問題があり、
さらに設置された自動販売機の前面板がいたずらで割ら
れたりするなどの被害があり、前面板の耐衝撃性の改良
が求められた。
【0004】このため、最近は自動販売機前面板用に耐
衝撃性アクリル樹脂板が用いられることが多くなってき
た。即ち、耐衝撃性アクリル樹脂板を用いることによっ
て、透明性、耐衝撃性および耐候性についてはほぼ実用
的なレベルに達したものと考えられる。特開平3−30
945号公報には、さらに耐候性を改良するために耐衝
撃性アクリル樹脂基板部と高耐候性透明性熱可塑性樹脂
積層部からなる積層シ−トが提案されている。
【0005】ところが、最近、自動販売機前面板に対す
る材料特性として難燃化の要望が高まりつつある情勢と
なってきた。ここで、上記の耐衝撃性アクリル樹脂に難
燃剤を添加してシ−ト化した場合、UL94垂直試験で
のV−2に近いレベルの難燃性は付与できるものの、板
の外観、耐熱性、剛性あるいは耐候性の低下が見られ、
実用上は必ずしも満足できるものではなかった。
【0006】ここで、ポリカ−ボネ−ト樹脂は透明性、
耐衝撃性、耐熱性および難燃性等に優れていることか
ら、ド−ム、ア−ケ−ド、腰板等の建築用資材や自動車
道路防音壁等の道路用資材、風防、看板、カ−ブミラ−
等の成形雑貨用資材等に広く用いられており、今後も用
途の拡大が期待されている。そこで、ポリカ−ボネ−ト
樹脂を用いれば、例えば、自動販売機前面板に要求され
る諸物性のうち、透明性は従来の耐衝撃性アクリル樹脂
板に近く、耐衝撃性、難燃性、さらには耐熱性について
はより良好な性能の板が得られるであろうと期待でき
る。
【0007】しかしながら、特に屋外で用いられる自動
販売機の前面板等については、耐候性に優れていること
が必要であるが、一般にポリカ−ボネ−ト樹脂の耐候性
はアクリル樹脂に比べて劣り、屋外に暴露されると黄変
や白化、失透が発生しやすい。そこで、ポリカ−ボネ−
ト樹脂の耐候性を改良するための検討が様々になされて
おり、例えば、ポリカ−ボネ−ト等の樹脂基材を紫外線
吸収剤を含んだアクリル樹脂で被覆する手法が報告され
てきた(例えば、特公昭47−19119号公報、特開
昭55−59929号公報)。
【0008】これらの方法により、ポリカ−ボネ−ト樹
脂板の耐候性は確かに改良されうる。ところが、このよ
うな積層板の落錘衝撃試験において、同じ厚みのポリカ
ーボネート単層板が到底割れないはずの衝撃エネルギー
の場合にも、積層板の場合は、意外にも簡単に割れてし
まうという大きな問題点が見出された。これは、硬質の
アクリル樹脂被覆層が衝撃時に破断し、この時発生する
ポリカーボネート/アクリル樹脂界面のノッチが、ポリ
カーボネート樹脂層の破断をも引き起こすためと推定さ
れている。この問題を解決するためには、アクリル樹脂
層の耐衝撃性と柔軟性を改良して、衝撃時のアクリル樹
脂層自体の破断を防ぐことが必要である。このため、被
覆層のアクリル樹脂の組成を特定し、例えば、アルキル
アクリレート等のコモノマーを比較的多量に共重合によ
り導入したり、多層構造のアクリルゴムを配合すること
によって、アクリル樹脂層の伸びや柔軟性を改良し、積
層ポリカーボネート板の耐衝撃性を損なわない様にする
ことが検討されてきた(特開昭54−33574号公
報、特公平1−9194号公報、特公平1−9195号
公報、特開平2−175245号公報、特開平4−11
9838号公報、特開平4−270652号公報)。し
かしながら、これらのアクリル樹脂積層ポリカーボネー
ト板は、なお耐衝撃性や耐候性に劣ったり、あるいは冷
間加工で曲げた場合に応力白化しやすいといった問題点
を有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な屋外用途透明ポリカーボネート樹脂板をめぐる諸問題
を解決するために、透明性、耐応力白化性、および耐候
性に優れたポリカ−ボネ−ト樹脂平板を提供しようとす
るものである。即ち、耐衝撃性に優れ、柔軟で、かつ紫
外線遮蔽効果に優れたアクリル系樹脂組成物を被覆層と
して用いることにより、ポリカ−ボネ−ト樹脂が本来備
えている優れた機械的特性を維持し、外観や耐候性にも
優れた積層ポリカ−ボネ−ト樹脂平板を提供しようとす
るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の積
層ポリカ−ボネ−ト樹脂板を冷間加工で折り曲げたりし
た際に、著しく白化して透明性を損なうという問題点を
解決するために詳細に検討した。その結果、このような
現象は被覆するアクリル樹脂層に特定の多層構造アクリ
ル系粒状複合体を配合することで解決できること、即
ち、硬質熱可塑性アクリル樹脂、紫外線吸収剤と共に特
定の多層構造アクリル系粒状複合体を含むアクリル系樹
脂組成物層をポリカーボネート樹脂基板層の少なくとも
片面(太陽や照明ランプに照射される側)に10〜20
0μmの厚みで設ければ、ポリカーボネート樹脂本来の
透明性、機械的強度、および耐応力白化性を損なうこと
なく、耐候性を改良しうることを見出し、本発明を完成
するに至った。
【0011】即ち、本発明は、ポリカ−ボネ−ト樹脂か
らなる基板層と、この基板層の片面もしくは両面に、ア
クリル系樹脂組成物からなる厚みが10〜200μmの
被覆層を設けた積層ポリカーボネート樹脂平板であっ
て、該アクリル系樹脂組成物が、メチルメタクリレート
を主体とする単量体混合物を重合してなる最内硬質層重
合体、最内硬質層存在下にアルキル基の炭素数が4〜8
のアルキルアクリレートを主体とする単量体混合物を重
合してなる架橋軟質層重合体、および最内硬質層と架橋
軟質層の存在下にメチルメタクリレートを主体とする単
量体混合物を重合してなる最外硬質層重合体を含み、粒
子径が0.05〜0.2μmであり、さらにアセトンで
分別したときに不溶部を有し、その不溶部のメチルエチ
ルケトン膨潤度が1.5〜4.0である多層構造アクリ
ル系粒状複合体20〜80重量%、硬質熱可塑性アクリ
ル樹脂20〜80重量%、および被覆層の厚み(μm)
×被覆層中の紫外線吸収剤濃度(重量%)=50〜25
0を満足する量の紫外線吸収剤とからなるアクリル系樹
脂組成物であることを特徴とする、積層ポリカ−ボネ−
ト樹脂平板、に関するものである。
【0012】本発明において平板とは、その面積の過半
の部分が平面であるような板状の物品を言う。本発明に
おける基板層を構成するポリカーボネート樹脂として
は、ビスフェノールAに代表される二価のフェノール系
化合物から誘導される重合体が用いられる。このポリカ
ーボネート樹脂の製造方法については特に限定せず、ホ
スゲン法、エステル交換法あるいは固相重合法のいずれ
により製造されたものでも使用できる。分子量について
も特に限定はしないが、押出成形により所望の厚みの積
層板を作り、これを熱成形して自動販売機前面板等を製
造するという観点からは、ゲルパーミエーションクロマ
トグラフィー法(GPC法)を用い、単分散ポリスチレ
ンを標準とした検量線から求めた重量平均分子量が2〜
8万のものが好ましく、3〜7万のものが特に好まし
い。さらに、押出成形時あるいは加熱成形時のドローダ
ウン防止のために、構造粘性(チキソトロピー性)を有
するポリカーボネート樹脂を基板層として用いることも
できる。
【0013】また、ポリカーボネート樹脂はもともとU
L94基準で「V−2」レベルの樹脂ではあるが、これ
は試験片の燃焼部分が溶融滴下することによって試験片
自体の燃焼は止まる、という機構に基づいている。ここ
で、自動販売機前面板のような大型の成形品では、UL
94基準で「V−2」レベルを達成しているとは言って
も、通常のポリカーボネート樹脂では必ずしも満足な難
燃性を有してはいない。
【0014】そこで、さらに平板の難燃性能を向上させ
るために、本発明における基板層を構成するポリカーボ
ネート樹脂として、難燃性ポリカーボネート樹脂を用い
ることもできる。この難燃性ポリカーボネート樹脂と
は、ビスフェノールAに代表される二価のフェノール系
化合物から誘導される重合体を基本とし、これに難燃処
方を施したものを言う。難燃処方としては、1)ポリカ
ーボネートを製造する際に、テトラブロモビスフェノー
ルAの様な難燃性成分と共重合させる方法、2)一般の
ポリカーボネート樹脂に難燃剤を混合する方法、3)難
燃性ポリカ−ボネート樹脂と一般ポリカーボネート樹脂
とを混合する方法、が挙げられる。
【0015】1)の共重合法は、難燃性成分が加熱成形
時に揮発、あるいはブリードして失われることがなく、
難燃性能が安定していることが利点であるが、樹脂価格
がやや高くなる。 2)の難燃剤添加法は、種々の難燃剤を、所望の難燃性
能を発揮するために必要なだけ後添加するものであり、
比較的簡便にポリカーボネート樹脂を難燃化することが
できる。
【0016】後添加される難燃剤としては、下記のもの
が例示される。 (1) テトラブロモビスフェノールAのカーボネート
オリゴマー(特開昭47−44537号公報)。 (2) モノマー性あるいはポリマー性のフェノールエ
ステルスルホン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属
塩、例えば、4−クロロ−3−スルホフェニル安息香酸
カリウム、トリフェニルホスフェート−4−スルホン酸
カリウム、(フェニル−2.4.5−トリクロロベンゼ
ンスルホネート)−4’−スルホン酸ナトリウム等(特
開昭52−54741号公報)。 (3) アルカリ金属およびアルカリ土類金属芳香族ス
ルホン酸塩単量体および重合体、例えば、ジフェニルメ
タン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸
カリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジナトリ
ウム等(特開昭52−54742号公報、特開昭52−
54744号公報)。 (4) 芳香族サルファイドのスルホン酸のアルカリ金
属あるいはアルカリ土類金属塩、例えば、ジフェニルサ
ルファイド−4−スルホン酸ナトリウム、メチルフェニ
ルサルファイド−4−スルホン酸カリウム(特開昭52
−54743号公報)。
【0017】(5) 芳香族スルホキサイドのスルホン
酸のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩、例え
ば、4’−クロロジフェニルスルホキサイド−4−スル
ホン酸カリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スル
ホン酸カリウム等(特開昭52−54745号公報)。 (6) 単量体および重合体芳香族スルホンスルホン酸
のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩、例えば、
ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、2,
4,5,4’−テトラクロロジフェニルスルホン−3’
−スルホン酸カリウム等(特開昭52−54746号公
報)。 (7) 有機リン酸カリウム塩(例えば、9,10−ジ
ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン
−10−オキシドのカリウム塩)、芳香族系亜リン酸エ
ステル化合物、および有機シリコン化合物(特開昭60
−149658号公報、特開昭61−89252、89
253号公報)。 (8) リン化合物(例えば、リン酸ビス−フェニル−
(4−フェニルフェニル)−エステル、リン酸トリス−
(ベンジルフェニル)エステル等)とポリテトラフルオ
ロエチレン(特開平2−69557号公報)。 (9) 有機リン酸エステルの金属塩、例えば、リン酸
ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム(特開平2
−180956号公報)。 (10) テトラブロモビスフェノールAグリシジルエ
ーテルとテトラブロモビスフェノールAとの反応による
オリゴマー(特開平4−39353号公報)。
【0018】これらの難燃剤は、単独で使用しても、ま
たは2種類以上を併用しても良い。衛生上および環境保
護の観点からは、非ハロゲン系難燃剤を用いることがよ
り好ましい。ポリカーボネート樹脂に対する添加量は
0.01〜20重量%が好ましいが、得られる難燃性ポ
リカーボネート樹脂の透明性を阻害しない様、添加量を
選択することが重要である。
【0019】一般のポリカーボネート樹脂を難燃化する
ために、難燃剤を混合する方法に特に制限は無い。例え
ば、ドラムドラムブレンダー、ヘンシェルミキサーなど
でドライブレンドする方法や、混合したあと押出機を通
してペレット化する方法、あるいは一般ポリカーボネー
ト樹脂を押出機を用いて押出しながら、難燃剤を定量ポ
ンプにて押出機に注入し、内部で混合する方法等のいず
れを用いても良い。
【0020】また、本発明に用いられる難燃性ポリカー
ボネート樹脂として、1)共重合法や2)難燃剤後添加
法で製造された難燃性ポリカーボネート樹脂と、難燃処
方を施していない一般ポリカーボネート樹脂との混合物
を用いることもできる。両者の混合重量比は、所望の難
燃性能に応じて95/5〜5/95の範囲で任意に決定
しうる。両者の混合方法にも特に制限は無い。
【0021】本発明の基板層は上記のポリカーボネート
樹脂からなるが、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改
良するため、フェノール系やリン酸エステル系等の酸化
防止剤を添加することもできる。また、各種の紫外線吸
収剤を配合することも、もちろん可能である。さらに有
機系あるいは無機系の染料やブルーイング剤を配合して
着色することもさしつかえない。
【0022】本発明における被覆層は、厚みが10〜2
00μmのアクリル系樹脂組成物からなり、該アクリル
系樹脂組成物は、多層構造アクリル系粒状複合体20〜
80重量%、硬質熱可塑性アクリル樹脂20〜80重量
%、および被覆層の厚み(μm)×被覆層中の紫外線吸
収剤濃度(重量%)=50〜250を満足する量の紫外
線吸収剤とからなることを特徴としている。
【0023】本発明のアクリル系樹脂組成物に用いられ
る多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周
部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟
質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合
わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体を
言う。本発明のアクリル系樹脂組成物に用いられる多層
構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以
下の様なものが挙げられる。(a)メチルメタクリレ−
ト80〜98.9重量%、アルキル基の炭素数が1〜8
のアルキルアクリレ−ト1〜20重量%、および多官能
性グラフト剤0.01〜0.3重量%からなる単量体混
合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記
最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4
〜8のアルキルアクリレ−ト75〜98.5重量%、、
多官能性架橋剤0.01〜5重量%および多官能性グラ
フト剤0.5〜5重量%からなる単量体混合物を重合し
て得られる架橋軟質層重合体、
【0024】(c)上記最内硬質層および架橋軟質層か
らなる重合体の存在下に、メチルメタクリレ−ト80〜
99重量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキ
ルアクリレ−ト1〜20重量%とからなる単量体混合物
を重合して得られる最外硬層重合体、よりなる3層構造
を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合
体(a)5〜40重量%、軟質層重合体(b)30〜6
0重量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50重
量%からなり、平均粒子径が0.07〜0.2μmであ
って、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不
溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であ
るアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
【0025】なお、特公昭60−17406あるいは特
公平3−39095において開示されている様に、多層
構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定
しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張
り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度
を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝
撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能と
なる。
【0026】ここで、アクリル系粒状複合体を構成する
最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレ−ト80
〜98.9重量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアル
キルアクリレ−ト1〜20重量%および多官能性グラフ
ト剤0.01〜0.3重量%からなる単量体混合物を重
合して得られるものが好ましい。。ここで、アルキル基
の炭素数が1〜8のアルキルアクリレ−トとしては、メ
チルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、n−プロピル
アクリレ−ト、n−ブチルアクリレ−ト、s−ブチルア
クリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等が挙げ
られ、メチルアクリレ−トやn−ブチルアクリレ−トが
好ましく用いられる。最内硬質層重合体(a)における
アルキルアクリレ−ト単位の割合は1〜20重量%であ
り、該単位が1重量%未満では、重合体の熱分解性が大
きくなり、一方、該単位が20重量%を越えると、最内
硬質層重合体(c)のガラス転移温度が低くなり、3層
構造アクリル系アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効
果が低下するので、いずれも好ましくない。
【0027】多官能性グラフト剤としては、異なる重合
可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリ
ル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエ
ステル等が挙げられ、アリルメタクリレ−トが好ましく
用いられる。多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体
と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、そ
の最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3重
量%である。該単位の割合がこの範囲をはずれると、い
ずれも3層構造アクリル系重合体の耐衝撃性付与効果が
低下するので、好ましくない。
【0028】アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質
層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在
下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレ
−ト75〜98.5重量%、多官能性架橋剤0.01〜
5重量%および多官能性グラフト剤0.5〜5重量%か
らなる単量体混合物を重合して得られるものが好まし
い。ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルア
クリレ−トとしては、n−ブチルアクリレートや2−エ
チルヘキシルアクリレ−トが好ましく用いられる。ま
た、これらの重合性単量体と共に、25重量%以下の共
重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可
能である。共重合可能な他の単官能性単量体としては、
スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。、ア
ルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレ−トとス
チレンとの比率は、前者が多いほど生成重合体(b)の
ガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。
一方、樹脂組生物の透明性の観点からは、軟質層重合体
(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最
外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹
脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者
の比率を選定する。例えば、被覆層厚みの小さな用途に
おいては、必ずしもスチレンを共重合しなくとも良い。
【0029】多官能性グラフト剤としては、前記の最内
層硬質重合体(a)の項で挙げたものを用いることがで
きる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合
体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合する
ために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は
0.5〜5重量%が好ましい。該単位の割合がこの範囲
をはずれると、いずれも3層構造アクリル系重合体の耐
衝撃性付与効果が低下するので、好ましくない。
【0030】多官能性架橋剤としては、ジビニル化合
物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル
化合物などの一般に知られている架橋剤が使用できる
が、ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト(分子量2
00〜600)が好ましく用いられる。ここで用いる多
官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生
成し、弾性体としての効果を発現させるために用いられ
る。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時
に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成
するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官
能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は0.01〜5
重量%が好ましい。該単位の割合が5重量%を超える
と、3層層構造アクリル系重合体の耐衝撃性付与効果が
低下するので、好ましくない。
【0031】アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質
層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および
軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレ−ト
80〜99重量%およびアルキル基の炭素数が1〜8で
あるアルキルアクリレ−ト1〜20重量%からなる単量
体混合物を重合して得られるものが好ましい。ここで、
アクリルアルキレ−トとしては、前述したものが用いら
れるが、メチルアクリレ−トやエチルアクリレ−トが好
ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキル
アクリレ−ト単位の割合は、1〜20重量%が好まし
い。該単位が1重量%未満では、重合体のの熱分解性が
大きくなり、一方、該単位が20重量%を越えると、3
層構造アクリル系粒状複合体粒子の粘着性が増して、後
処理で取り扱いにくくなるほか、硬質熱可塑性アクリル
樹脂との相溶性が低下して、耐衝撃性や耐候性に劣るも
のしか得られない。
【0032】また、最外硬質層(c)の重合時に、硬質
熱可塑性アクリル樹脂との相溶性向上を目的として、分
子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動
剤として用い、実施することも可能である。とりわけ、
最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に
小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性
のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法と
しては、最外硬質層を形成するための単量体混合物を2
つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順
次増加するような手法によって、分子量を内側から外側
へ向かって小さくすることが可能である。この際に形成
される分子量は、各回に用いられる単量体混合物をそれ
単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測
定することによって調べることもできる。
【0033】本発明の目的である耐衝撃性に優れた積層
ポリカーボネート樹脂平板の製造に用いられる柔軟性、
耐衝撃性を共に満足するアクリル系樹脂組成物を得るに
は、例示した3層構造を基本構造とするアクリル系粒状
複合体における各層重合体の比率を制御することがより
好ましい。即ち、アクリル系粒状複合体における各層重
合体の比率は、最内硬質層(a)が5〜40重量%、架
橋軟質層(b)30〜60重量%、および最外硬質層
(c)が20〜50重量%が好ましい。ここで、最内硬
質層重合体(a)の比率が5重量%未満では、曲げ白化
が大きくなり、またシ−ド重合を完全に行うことが難し
くなり、一方、40重量%を越えると耐衝撃性や柔軟性
の付与効果が低下していずれも好ましくない。架橋軟質
層重合体(b)の比率が30重量%未満の場合は、耐衝
撃性、柔軟性の付与効果に劣り、一方、60重量%を越
える場合は、耐熱性や耐応力白化性が低下するのでいず
れも好ましくない。また、最外硬質層重合体(c)の比
率が、20重量%未満、および50重量%を越える場合
は、耐衝撃性付与効果が十分でないため、いずれも好ま
しくない。
【0034】ここで、積層ポリカーボネート樹脂板の耐
応力白化性は、例えば、特公平1−9194号公報に記
載されているように、サンプルを冷間加工法にて90°
折り曲げたときの白化の状態を観察して評価することが
できる。本発明に用いられる多層構造アクリル系粒状複
合体は、平均粒子径が0.05〜0.2μmであり、
0.07〜0.18μmがさらに好ましい。ここで、粒
子径が0.05μm未満では、得られる樹脂組成物に十
分な耐衝撃性付与効果が現れにくく、0.2μmを越え
る場合は、樹脂組成物の透明性が低下しやすいので好ま
しくない。また、十分な耐曲げ白化性を発現するために
は、粒子径は0.18μm以下がさらに好ましい。粒子
径は、例えば該多層構造アクリル系粒状複合体を乳化重
合法で作製する場合、生成ラテックスの粒子径を透過型
電子顕微鏡で観察することにより実施できる。また、ラ
テックスの濁度と顕微鏡観察した粒子径との相関の検量
線を作成しておき、サンプルラテックスの濁度を測定
し、検量線から粒子径を読み取る方法も使用できる。そ
の他、アクリル樹脂組成物から超薄切片を作製し、四酸
化ルテニウムの溶液または蒸気により多層構造アクリル
系粒状複合体の架橋軟質層部分を染色し、透過型電子顕
微鏡を用いて観察する方法も挙げられる。ただし、この
方法では、本発明の多層構造アクリル系粒状複合体のう
ちの軟質層が染色され、この層までの径は観察できるも
のの、最外硬質層は硬質熱可塑性アクリル樹脂と同様に
染色されないので、区別できないことに注意を要する。
【0035】本発明の多層構造アクリル系粒状複合体
は、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶
部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0である
ことが好ましく、さらに好ましくは1.8〜3.8であ
る。ここでアセトン分別の方法としては、多層アクリル
系粒状複合体をアセトン中に投入して溶解・分散させ、
不溶部が認められれば遠心分離機を用いて、不溶部と上
澄みに分離するのが簡便で好ましい。さらに、分離後の
不溶部にメチルエチルケトンを加えて再度分散させ、遠
心分離機を用いて、不溶部と上澄みに分離し、メチルエ
チルケトンで膨潤した不溶部の重量を測定する。(この
重量をW1とする。)その後、不溶部を加熱真空乾燥し
て残留物の重量を測定する。(この重量をW2とす
る。)ここで、次式により膨潤度を算出することができ
る。 膨潤度=(W1−W2)/W2
【0036】ここで、アセトン不溶部が無い場合は、多
層構造アクリル系粒状複合体を硬質熱可塑性アクリル樹
脂とを混合する際の分散性が低下し、組成物をフィルム
等に成形しても良好な外観が得られず、引張り物性も低
下する。また、膨潤度が1.5よりも小さい場合は、ア
クリル系粒状複合体が固く、これと硬質熱可塑性アクリ
ル樹脂とを混合した組成物は柔軟性に劣り、伸びも小さ
い。一方、膨潤度が4.0を越える場合は柔軟性は増す
ものの、得られた組成物が曲げ白化しやすく、やはり好
ましくない。
【0037】この膨潤度は、本発明のアクリル系粒状複
合体をメチルメタクリレ−トとアルキル基の炭素数が1
〜8のアルキルアクリレ−トとを主体とする単量体混合
物の共重合により調製する際に、他の単量体として一分
子中に二つ以上の重合性官能基を持つ多官性単量体を併
用し、これの種類と量を選択することによって、調整す
ることができる。即ち、多官能性単量体の添加量を増せ
ば、一般的に膨潤度は小さくなり、また多官性能単量体
の種類を変えても膨潤度は変化する。
【0038】本発明の多層構造アクリル系粒状複合体
は、逐次多段重合によって製造することが好ましく、重
合方法としては乳化重合法を用いるのが望ましい。ま
た、最内層硬質重合体の存在下に、軟質層重合体、さら
には最外硬質層重合体を形成させるときには、新たな粒
子が生成しないことが必要であり、この目的のためにシ
−ド重合法が好適に用いられる。即ち、3層の重合を全
て乳化重合法で行う場合は、軟質層および最外硬質層の
重合を行う際に、乳化剤を新たに添加しないか、また
は、添加量を新粒子が生成しない範囲にとどめることが
重要である。また、新たな粒子生成の有無は、ラテック
スの電子顕微鏡による観察によって、確認することがで
きる。各層の重合体を形成させるための適切な重合温度
は、各層とも30〜120℃、好ましくは、50〜10
0℃の範囲で選ばれる。
【0039】乳化重合法で上記のような多層構造アクリ
ル系粒状複合体を製造する場合、その平均粒子径を乳化
剤の種類、乳化剤の水相および単量体混合物相に対する
割合、最内硬質層形成時の単量体混合物相の水相への添
加速度、および重合温度によって制御できることは、当
業者において広く知られた技術の範囲内で可能である。
さらに、乳化重合ラテックス中のポリマーの平均粒子径
の測定は、乳化重合終了時のラテックスを透過型電子顕
微鏡観察する方法のほか、吸光度法あるいは光散乱法な
どの公知の方法で実施しうる。なお、本発明の多層構造
アクリル系粒状複合を硬質熱可塑性樹脂と混合してアク
リル樹脂組成物とし、該組成物の超薄切片を四酸化ルテ
ニウム溶液または蒸気で軟質層を染色してから透過型電
子顕微鏡観察すると、粒子構造を観察しうるが、この場
合は染色される軟質層までの輪郭を観察しており、最外
硬質層の輪郭は染色されないため、硬質熱可塑性アクリ
ル樹脂相と区別できないことに留意すべきである。
【0040】乳化重合に用いられる乳化剤については、
特に制限は無く、従来慣用されているものの中から任意
のものを選ぶことができる。例えば、長鎖アルキルカル
ボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキ
ルベンゼンスルホン酸塩などが挙げられる。また、この
際用いられる重合開始剤については特に制限は無く、通
常用いられている水溶性の過硫酸塩、過ホウ酸塩などの
無機系開始剤を単独で、あるいは亜硫酸塩、チオ硫酸塩
などを併用してレドックス開始剤系として用いることも
できる。さらに油溶性の有機過酸化物/第1鉄塩、有機
過酸化物/ソジウムスルホキシレ−トのようなレドック
ス開始剤系も用いることができる。
【0041】このような乳化重合方法によって得られる
多層構造アクリル系粒状複合体は、ポリマ−ラテックス
の状態から公知の方法によって、塩析、洗浄、乾燥等の
処理を行うことにより、粒子状固形物として得られる。
本発明のアクリル系樹脂組成物に用いられる硬質熱可塑
性アクリル樹脂は、メチルメタクリレ−ト単位50〜9
9重量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1
〜50重量%からなるものが好ましい。共重合可能な他
の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のア
ルキルメタクリレ−ト、アルキル数の炭素数が1〜18
のアルキルアクリレ−ト、アクリル酸、メタクリル酸等
のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン
酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メ
チルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合
物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β
−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−
置換マレイミド等が挙げられ、これらは単独で、あるい
は2種以上を併用して用いることができる。これらの中
でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチ
ルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、n−プロピルア
クリレ−ト、n−ブチルアクリレ−ト、s−ブチルアク
リレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等が好まし
く、メチルアクリレ−トやn−ブチルアクリレ−トが特
に好ましく用いられる。
【0042】本発明における硬質熱可塑性アクリル樹脂
は、クロロホルム中の25℃における還元粘度(ηSP
c)が30〜80ml/gのものが好ましく用いられ
る。還元粘度が30ml/g未満では、アクリル系樹脂
組成物の機械的強度が低下し、特に引張り伸びが不足
し、さらに積層ポリカーボネート樹脂として用いたとき
に、落錘衝撃で破断しやすくなるので好ましくない。一
方、還元粘度が80ml/gを越える場合は、得られる
アクリル系樹脂組成物は流動性に劣り、例えば、共押出
成形時に良好な被覆層を形成することができず、やはり
好ましくない。
【0043】本発明における硬質熱可塑性アクリル樹脂
の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化
重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のい
ずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通
常のパ−オキサイド系およびアゾ系のものを用いること
ができ、また、レドックス系とすることもできる。重合
温度については、懸濁または乳化重合では30〜100
℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しう
る。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するため
に、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて
重合を実施することもできる。
【0044】本発明のアクリル系樹脂組成物における多
層構造アクリル系粒状複合体と硬質熱可塑性アクリル樹
脂との好ましい比率は、前者が20〜80重量%、後者
が80〜20重量%であり、アクリル系粒状複合体のさ
らに好ましい範囲は30〜70重量%である。アクリル
系粒状複合体が80重量%を越えると、得られるアクリ
ル系樹脂組成物の流動性が低下し、成形性に劣るので好
ましくない。また、アクリル樹脂組成物の柔軟性や衝撃
強度の観点からは、アクリル系粒状複合体は20重量%
以上配合することが好ましい。
【0045】多層構造アクリル系粒状複合体と硬質熱可
塑性アクリル樹脂とを混合して本発明のアクリル系樹脂
組成物を製造する方法は特に制限が無く、ドラムドラム
ブレンダ−、ヘンシェルミキサ−などで混合する方法
や、前記の方法で混合したあと押出機を通す方法等があ
り、これらが実質的に均一な組成物になる方法を採用す
れば良い。
【0046】本発明のアクリル系樹脂組成物において
は、流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用す
ることも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステ
ル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、
リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ
系等が挙げられる。この中で、ポリエステル系とフタル
酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエス
テル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エ
ステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れる
が、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。従って、用途に
応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することに
よって、広範囲の用途に適用できる。
【0047】ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価
のカルボン酸と一価ないし六価のアルコ−ルとの反応物
であるが、主に二価カルボン酸とグリコ−ルとを反応さ
せて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン
酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フ
タル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性
に優れたものが得られる。グリコ−ルとしてはエチレ
ン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレ
ン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチ
レン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコ−ルが
挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコ−ル
はそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、
ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜
10000の範囲が良いが、好ましくは600〜300
0の範囲が可塑化効果が大きい。また、可塑剤の粘度は
分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤
の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000
cp(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリ
エステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0048】可塑剤は多層構造アクリル系粒状複合体と
硬質熱可塑性アクリル樹脂からなるアクリル系樹脂組成
物100重量部に対して、0.5〜30重量部を添加す
るのが好ましい。可塑剤の添加量が30重量部を越える
と、表面がべとつくので、実用上好ましくない。本発明
のアクリル樹脂組成物に用いる紫外線吸収剤としては、
ベンゾトリアゾ−ル系、2−ヒドロキシベンゾフェノン
系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げ
られる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフ
ェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−
3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]
−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−
ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール
等のトリアゾ−ル類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベ
ンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾ
フェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベン
ゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができ
る。
【0049】ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量
が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにく
く、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添
加で効果的に耐候性を改良することができる。また、特
に薄い被覆層から基板層への移行性も小さく、積層板の
表面にも析出しにくいため、含有された紫外線吸収剤量
が長時間維持され、耐候性改良効果の持続性に優れるな
どの点から好ましい。分子量が400以上の紫外線吸収
剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス
(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾ
トリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,
3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾ
ール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール
系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリ
ジル)セバケ−ト、ビス(1,2,2,6,6−ペンタ
メチル−4−ピペリジル)セバケ−ト等のヒンダ−ドア
ミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス
(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジ
ル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]
−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−
テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダ−ドフェノ
−ルとヒンダ−ドアミンの構造を共に有するハイブリッ
ド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種
以上を併用して使用することができる。これらのうちで
も、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジ
メチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール
や2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テト
ラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イ
ル)フェノール]が特に好ましい。
【0050】本発明は、被覆層に紫外線吸収剤を濃縮し
て存在させることにより、樹脂板全体に対する紫外線吸
収剤量を低減でき、かつ効果的にポリカ−ボネ−ト基盤
層の耐候性を改良することができるところに最大の特徴
がある。単純に紫外線吸収剤を添加したポリカ−ボネ−
ト樹脂を板状に成形した場合には、紫外線吸収剤量を極
端に多くしないと耐候性が改良されないため、透明性の
低下、紫外線吸収剤特有の黄着色、機械的強度の低下と
いった問題を招き実用的でない。
【0051】本発明の被覆層に含有される紫外線吸収剤
の量は、被覆層の厚み(μm)×被覆層中の紫外線吸収
剤濃度(重量%)=50〜250を満足することが必要
である。この条件を満足する範囲で、紫外線吸収剤の濃
度と被覆層の厚みは、基板層を紫外線から効果的に遮断
しうるように、さらに加熱成形後の紫外線吸収剤の残存
量をも考慮して決定すれば良い。即ち、被覆層の厚みが
厚ければ、被覆層中の紫外線吸収剤の濃度は相対的に低
く、被覆層の厚みが薄ければ、濃度は高くする必要があ
る。被覆層の厚み(μm)×紫外線吸収剤濃度(重量
%)の数値が50未満の場合は、得られる前面板の耐候
性が不足し、一方、250を超えても耐候性改良効果に
おいてあまり差が無いばかりか、かえって機械的強度の
低下を招き、さらに被覆層が紫外線吸収剤特有の黄色系
の着色を呈するようになるので、いずれも好ましくな
い。一例として、紫外線吸収剤を3重量%含むアクリル
系樹脂組成物を厚さ40μmの被覆層とした場合、その
積は120となる。
【0052】本発明の被覆層の厚みは、前述の条件を満
足するように選ばれるが、実用上は10〜200μmの
範囲が好ましく、20〜100μmの範囲がさらに好ま
しい。被覆層の厚みが10μm未満では、基板層を均一
に被覆することが難しく、一方200μmを越えて被覆
層を設けても、耐候性改良効果に顕著な向上が見られな
いばかりか、板の機械的強度を低下させ好ましくない。
【0053】本発明の被覆層を形成するに当たっては、
あらかじめアクリル系樹脂と紫外線吸収剤を混合してお
くことが好ましい。混合方法については、特に制限は無
く、ドラムドラムブレンダー、ヘンシェルミキサーなど
でドライブレンドする方法や、混合したあと押出機を通
してペレット化する方法、あるいはアクリル系樹脂を押
出機を用いて押出しながら、紫外線吸収剤を定量ポンプ
にて押出機に注入し、内部で混合する方法等のいずれを
用いることも可能である。
【0054】さらに、本発明の被覆層には成形加工時の
熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤
を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、前
面板に帯電防止性能を与えることも可能である。本発明
のアクリル系樹脂組成物として、リン系難燃剤を配合し
た難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。ここで用
いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリール
リン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリ
ールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリ
ールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エ
ステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲ
ン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エス
テル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1
種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,
10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナン
スレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス
(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロ
プロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペン
チル)ホスフェート、あるいは下記の構造式で表される
化合物等が挙げられる。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】該難燃アクリル系樹脂組成物は積層ポリカ
ーボネート樹脂板の被覆層として用いるられるものであ
り、該組成物を押出機中で溶融してポリカーボネート樹
脂と共押出ししたり、あるいは一度フィルムに成形した
後にポリカーボネート樹脂にラミネートするといったプ
ロセスとなるので、添加する難燃剤自体の耐熱分解性が
良好なことが必須である。即ち、熱分解しやすい難燃剤
を用いると、押出機中での滞留、加熱時に熱分解や熱着
色を起こし、着色したり、表面に気泡やブツが発生した
り、さらには分解ガスによって製造現場の環境が著しく
悪化するといった問題が生じる。従って、難燃剤はメタ
クリル系樹脂を成形する温度、即ち、約220〜290
℃において熱分解をほとんど起こさないものが好ましく
用いられる。この観点からは、トリス(ジクロロプロピ
ル)ホスフェ−ト、トリス(トリブロモネオペンチル)
ホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等が好まし
く、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートが
特に好ましい。
【0059】さらに、リン系難燃剤以外の臭素系、塩素
系、あるいはスルホン酸系などの非リン系難燃剤を併用
することも可能である。リン系難燃剤を添加する場合
は、メタクリル系樹脂に対して1〜30重量%の範囲で
あることが好ましい。添加量が30重量%を超える場合
は、耐熱性、耐候性、耐光性、および機械的強度の低下
が大きくなり、実用的でない。
【0060】本発明の基板層および被覆層からなる積層
ポリカーボネート樹脂平板の全体厚みは、一般的には
0.5〜20mmであり、1〜10mmの厚みのものが
よく用いられる。本発明の基板層および被覆層からなる
積層ポリカーボネート樹脂平板を製造するための方法に
ついて、特に制限は無い。例えば、基板層および被覆層
の原料樹脂を同時に溶融押出してシ−ト化する共押出法
や、押出成形されたポリカ−ボネ−ト樹脂基板層に被覆
層の原料樹脂をTダイより溶融押出しラミネ−トする方
法、あらかじめフィルム状に成形された被覆層をポリカ
−ボネ−ト樹脂基板層に加熱ロ−ル間で連続的にラミネ
−トする方法、シ−ト状に成形されたポリカ−ボネ−ト
樹脂基板層とフィルム状に成形された被覆層をプレスで
熱圧着する方法等を用いて、まず積層ポリカーボネート
樹脂平板を作製し、この積層板を真空成形等により自動
販売機前面板などに加工するのが一般的な製造方法であ
る。あるいは真空成形時に基板層と被覆層を積層して一
体化する方法なども用いうる。
【0061】本発明の積層ポリカーボネート樹脂平板の
作製においては、共押出法が積層時に両層の流動性を合
わせ、均一にすることができるので、両層の密着性が良
く成形歪みも類似になるなどの点で優れている。この共
押出法では、通常の押出機を2または3台使い、基板層
は60mmφや90mmφ等の大型押出機から、被覆層
は30mmφや40mmφ等の小型押出機から溶融押出
しして実施される。基板層および被覆層の厚みの制御
は、2または3台の押出機の押出量と、押出機出口側の
ポリッシングロ−ルのロ−ル間距離で調整しうる。ま
た、基板層および被覆層との流動性を合わせることが必
要であるが、これはそれぞれの押出機およびダイスの温
度を調整することで実施できる。
【0062】
【実施例】以下に実施例、比較例を用いて本発明の効果
をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何
ら制限されるものではない。なお、各実施例および比較
例で用いた評価、試験方法を以下に示す。 (1)ヘイズ 積分球式ヘイズメ−タ−を使用して、試験片の23℃に
おけるヘイズを測定した。 (2)黄色度(YI) JIS K7103に基づき、積層板の黄色度を測定し
た。 (3)耐応力白化性 積層平板から幅10mmの短冊状サンプルを切り出し、
常温で90°に折り曲げた時の白化の有無を観察した。 (4)耐候性 JIS,K6735−1991に基づき、スガ試験機製
のサンシャインウエザ−メ−タ−(以下SWOMと略
す)でサンシャインス−パ−ロングライフカ−ボンを使
用し、降雨有無のサイクルを繰り返す条件下で、600
時間照射後のサンプルの黄色度で評価した。
【0063】(5)燃焼性 UL94規格に基づき垂直試験での燃焼性を判定し、不
合格の場合は、さらに水平試験での燃焼性を判定した。
また積層板の下端部にライターの炎を10秒間当てて離
し、板の燃焼持続時間を計測した。結果を下記の記号で
示した。 ◎ 炎を離すと直ちに消火する。 ○ 炎を離すと10秒以内に消火する。 △ 炎を離すと30秒以内に消火する。 × 炎を離しても30秒以上燃え続ける。 また、実施例及び比較例において用いた略号は、以下の
化合物を示す。 MMA;メチルメタクリレ−ト BA;n−ブチルアクリレ−ト St;スチレン MA;メチルアクリレ−ト ALMA;アリルメタクリレ−ト PEGDA;ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト
(分子量200) n−OM;n−オクチルメルカプタン APS;過硫酸アンモニウム
【0064】
【実施例1】 (1)アクリル系粒状複合体(A)の調製 内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交
換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナト
リウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で
攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影
響が事実上無い状態にした。APS0.36gを投入
し、5分間攪拌後にMMA1657g、BA21.6
g、およびALMA1.68gからなる単量体混合物を
一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持し
て最内硬質層の重合を完結させた。
【0065】次に、APS3.48gを投入し、5分間
攪拌後にBA8105g、PEGDA(200)31.
9g、およびALMA264.0gからなる単量体混合
物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さら
に120分間保持して,軟質層の重合を完結させた。次
に、APS1.32gを投入し、5分間攪拌後にMMA
2106g、BA201.6gからなる単量体混合物を
20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20
分間保持して最外硬質層1の重合を完結した。次いで、
APS1.32gを投入し、5分後にMMA3148
g、BA201.6g、およびn−OM10.1gから
なる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添
加終了後にさらに20分間保持した。ついで95℃に昇
温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させ
た。
【0066】このようにして得られた重合体ラテックス
を少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ
0.10μmであった。残りのラテックスを3重量%硫
酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、
次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造
のアクリル系粒状複合体(A−1)をパウダ−として得
た。このパウダーをアセトンで分別したところ、不溶部
のメチルエチルケトン膨潤度は2.6であった。またア
クリル系粒状複合体(A−1)をコンプレッション成形
した100μmフィルムの引張り弾性率は700N/m
2 であった。
【0067】(2)アクリル系樹脂組成物の調製 このアクリル系粒状複合体(A−1)60重量部と、M
MA/MA=88/12重量比でクロロホルム中、25
℃における還元粘度(ηsp/c)が43ml/gである
硬質熱可塑性アクリル樹脂(B−1)40重量部、およ
び旭電化工業製MARK LA−31の3重量部とをヘ
ンシェルミキサ−にて20分間混合した後、30mmベ
ント付2軸押出機(ナカタニ機械製、NA−30型)を
用いてシリンダー設定温度240℃でペレット化した。 (3)積層平板の作製と評価 被覆層原料として(2)で調製した樹脂を用い、基板層
原料としてバイエル社製ポリカーボネート樹脂「マクロ
ロン#3103」を用いて、共押出法で積層板を成形し
た。
【0068】即ち、基板層用として、バレル直径110
mm、スクリュ−のL/D=32の押出機を用いシリン
ダ−温度280℃で押出し、一方、被覆層用としては、
バレル直径30mm、スクリュ−のL/D=32の押出
機を用いてシリンダ−温度270℃で押出し、フィード
ブロックタイプのダイ(温度270℃)を用いて基盤層
の両面に被覆層を設けた2種3層の積層板(長さ130
0mm、巾1100mm)を試作した。積層板の厚みは
3mmを目標としてポリッシングロ−ルの間隔で調整し
た。また、被覆層の厚みは、成形した積層板を切り出
し、断面を研磨してから光学顕微鏡を用いて観察した。
この結果から、被覆層樹脂の吐出量を調製して所定の厚
みに制御した。この積層平板の構成を表1に示す。
【0069】この積層平板の透明性、耐応力白化性、耐
候性、および難燃性を評価した結果を表1に示す。 〔参考例〕自動販売機前面板の作製と評価 (3)で得られる積層平板を用い、400℃のヒ−タ−
で10秒間加熱した後、突き上げ成形を行い、自動販売
機前面板を作製した。この前面板に、重さ5kgの鋼球
を1mの高さから落下させて積層板の耐衝撃性を評価し
ても、割れは発生しなかった。
【0070】
【実施例2〜6】被覆層に配合する多層構造アクリル系
粒状複合体(A−1)と紫外線吸収剤の量、被覆層、お
よび積層板全体の厚みを表1に示す通りに変える以外
は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0071】
【実施例7】内容積60リットルの還流冷却器付反応器
に、イオン交換水41.2リットル、ジヘキシルスルホ
コハク酸ナトリウム166.8gを投入し、250rp
mの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温
し、酸素の影響が事実上無い状態ににした。APS1.
32gを投入し、5分間攪拌後にMMA6287g、B
A40.2g、およびALMA0.66gからなる単量
体混合物を20分間かけて連続添加し、発熱ピークの検
出後さらに20分間保持して最内硬質層の重合を完結さ
せた。
【0072】次に、APS6.06gを投入し、5分間
攪拌後にBA5982g、St1287g、PEGDA
(200)14.4g、およびALMA154.2gか
らなる単量体混合物を90分間かけて連続的に添加し、
添加終了後さらに120分間保持して,軟質層の重合を
完結させた。次に、APS1.80gを投入し、5分間
攪拌後にMMA4192g、BA267.6g、および
n−OM4.62gからなる単量体混合物を20分間か
けて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持
した。ついで95℃に昇温し60分間保持して、最外硬
質層の重合を完結させた。
【0073】このようにして得られた重合体ラテックス
を少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたとこ
ろ、0.23μmであった。残りのラテックスを実施例
1と同様に処理し、3層構造のアクリル系粒状複合体
(A−2)をパウダ−として得た。アセトン不溶部のメ
チルエチルケトン膨潤度は3.3であり、コンプレッシ
ョン成形した100μmフィルムの引張り弾性率は60
0N/mm2 であった。
【0074】このアクリル系粒状複合体(A−2)40
重量部と、硬質熱可塑性アクリル樹脂(B−1)60重
量部、および旭電化工業製MARK LA−31の3重
量部とを混練して被覆層用のアクリル系樹脂組成物を得
た。以下は、基板層原料として出光石油化学〓製「タフ
ロンIV−2700」を用いた以外は、実施例1と同様
に実施した。結果を表1に示した。
【0075】
【実施例8】基板層のポリカーボネート樹脂として、バ
イエル社製ポリカーボネート樹脂「マクロロン#310
3」に帝人化成製テトラブロモビスフェノールAカーボ
ネートオリゴマー「ファイヤガ−ドFG8100」を7
重量%混合し、30mmベント付2軸押出機(ナカタニ
機械製、NA−30型)を用いてシリンダー設定温度2
80℃でペレット化した難燃ポリカーボネ−ト樹脂を使
用する以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1
に示した。
【0076】
【実施例9】基板層用樹脂として、出光石油化学製の臭
素系難燃ポリカーボネート樹脂「タフロンNB−250
0E」を用いた他は、実施例1と同様に実施した。結果
を表1に示した。
【0077】
【実施例10】基板層用樹脂として、出光石油化学製の
臭素系難燃ポリカーボネート樹脂「タフロンNB−25
00E」と一般ポリカーボネート樹脂「タフロンIV−
2700」を20/80の重量比でペレット混合したも
のを用いた他は、実施例1と同様に実施した。結果を表
1に示した。
【0078】
【比較例1】被覆層を設けず、ポリカ−ボネ−ト樹脂
「マクロロン#3103」を単独で押出し、厚さ3mm
の板を得た。評価結果を表2に示した。
【0079】
【比較例2、3】被覆層に配合する紫外線吸収剤の種類
と量、被覆層の厚みを表2に示す通りに変えた以外は、
実施例1と同様に実施した。結果を表2に示した。
【0080】
【比較例4】被覆層原料として、一般アクリル樹脂の旭
化成製「デルパウダー70H」に紫外線吸収剤「MAR
K LA−31」を3%配合・混練したペレットを用い
た以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表2に示
した。
【0081】
【比較例5】被覆層原料として、MMA/MA=70/
30(重量比)の組成で、還元粘度(ηsp/c)が50
ml/gのアクリル樹脂(B−2)に紫外線吸収剤「M
ARK LA−31」を3重量部と旭電化工業製のポリ
エステル系可塑剤「アデカサイザーPN−150」を1
0重量部とを配合・混練したペレットを用いた以外は、
実施例1と同様に実施した。結果を表2に示した。
【0082】
【比較例6】一般アクリル樹脂(旭化成製「デルパウダ
−70H」)80重量%とアクリルゴム(旭化成製「デ
ルパウダ−SR」)20重量%をドラムブレンダ−内で
予備混合し、さらに30mmベント付2軸押出機(ナカ
タニ機械製、A型)を用いて260℃でTダイより押出
して厚み3mmの耐衝撃性アクリル樹脂シ−トを作製し
た。評価結果を表2に示した。
【0083】
【比較例7】一般アクリル樹脂(旭化成製「デルパウダ
−70H」)80重量%とアクリルゴム(旭化成製「デ
ルパウダ−SR」)20重量%からなる樹脂100重量
部に対して、難燃剤(大八化学工業製「CR900)を
15部配合した以外は、比較例6と同様に実施した。評
価結果を表2に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【発明の効果】本発明によれば、透明性、耐応力白化
性、および耐候性に優れた積層ポリカーボネート樹脂平
板を提供しうる。この平板は通常のアクリル樹脂用塗料
での印刷が可能であるため、従来耐衝撃性アクリル樹脂
を用いてきた加工業者にも取り扱いが容易であり、幅広
い利用が期待される。即ち、本発明の平板は、自動販売
機の前面透明板、自動車道路防音壁の透明採光板、自動
車のバイザーや窓材、建築グレージング、カーポートや
サンルームの屋根、ドーム、アーケード、腰板等の建
材、看板、表示板、照明器具カバーなどの耐候性および
耐光性が必要とされる分野において好適に利用しうる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリカーボネート樹脂からなる基板層
    と、この基板層の片面もしくは両面に、アクリル系樹脂
    組成物からなる厚みが10〜200μmの被覆層を設け
    た積層ポリカーボネート樹脂平板であって、該アクリル
    系樹脂組成物が、メチルメタクリレートを主体とする単
    量体混合物を重合してなる最内硬質層重合体、最内硬質
    層存在下にアルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアク
    リレートを主体とする単量体混合物を重合してなる架橋
    軟質層重合体、および最内硬質層と架橋軟質層の存在下
    にメチルメタクリレートを主体とする単量体混合物を重
    合してなる最外硬質層重合体を含み、粒子径が0.05
    〜0.2μmであり、さらにアセトンで分別したときに
    不溶部を有し、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度
    が1.5〜4.0である多層構造アクリル系粒状複合体
    20〜80重量%、硬質熱可塑性アクリル樹脂20〜8
    0重量%、および被覆層の厚み(μm)×被覆層中の紫
    外線吸収剤濃度(重量%)=50〜250を満足する量
    の紫外線吸収剤とからなるアクリル系樹脂組成物である
    ことを特徴とする積層ポリカーボネート樹脂平板。
  2. 【請求項2】 基板層が難燃性のポリカーボネート樹脂
    からなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の
    積層ポリカーボネート樹脂平板。
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