JPH07123645A - 車両用電動モーターの冷却構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヒートパイプによる車両用電動モーターの冷
却構造を、モーターハウジング自体の構造を変える必要
がなく、ヒートパイプのモーターへの設置が容易であ
り、冷媒の漏れる虞がないものにすると共に、冷却構造
の放熱部分を、簡単な構造で、他の部材の邪魔になるこ
となく配置でき、しかも、冷却風を効率良く送風するこ
とができるものとする。 【構成】 車両に走行用駆動源として配備されている電
動モーター２０において、内壁に毛細管構造を有する中
空パイプ内に冷媒が封入されたヒートパイプ７０を、そ
の一部が入熱部７０ａとしてモーター２０の内側に位置
し、その一部が放熱部７０ｂとしてモーター２０の側方
に突出するように、モーター２０に対して設置すると共
に、モーター２０の側方に突出するヒートパイプの放熱
部７０ｂに、車両の幅方向に並列的に配置された複数の
放熱板７２を付設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両に走行駆動源とし
て配備される電動モーターの冷却構造に関し、特に、ヒ
ートパイプを使用した車両用電動モーターの冷却構造に
関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、自動二，三輪車や自動車等の車両
の一部において、エンジン音や排気音による騒音、排気
ガスによる大気汚染といった問題がないという利点か
ら、従来の内燃機関に代えて電動モーターを車両の走行
駆動源として使用するということが行われている。

【０００３】このように、電動モーターが車両の走行駆
動源として使用される場合、特に加速時などにモーター
が過熱状態となることがあり、モーターを冷却すること
が必要となるが、そのために従来の内燃機関と同様の水
冷式を採用するとラジエーターや冷却水循環ポンプが必
要となって重量が増加することとなり、また、モーター
を空冷式とすれば、冷却効果に不足の生じることがある
だけでなく、冷却風をモーターのハウジング内に導入す
るための開口部から水や泥が侵入する虞も生じることと
なる。

【０００４】そこで、それらの点を解決するために、車
両の駆動源として使用する電動モーターのハウジング自
体に冷媒を封入した液溜を形成し、この液溜に冷媒を保
持し得る金属管よりなるヒートパイプを備えた凝縮器を
接続することによって、モーターハウジングの液溜にお
ける冷媒の気化と凝縮器のヒートパイプにおける冷媒の
液化の繰り返しにより発熱したモーターを冷却するとい
う技術が既に提案されている。（特開平４−２２４４９
０号公報参照）

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
な従来の凝縮器にヒートパイプを使用した電動モーター
の冷却構造においては、モーターハウジング自体に冷媒
を封入するための液溜を形成する必要があると共に、モ
ーターにヒートパイプを設置するために、液溜とヒート
パイプにより形成される空間内を一旦真空状態としてか
ら冷媒を封入した後、液溜とヒートパイプとを密閉状態
に接続するという作業を必要とする。

【０００６】したがって、モーターハウジング自体、そ
の構造が複雑なものとなり製造が困難で高価なものにな
ると共に、モーターへのヒートパイプの設置が面倒なも
のとなって、しかも、設置後に液溜とヒートパイプの接
続部分から冷媒の漏れる虞がある。

【０００７】さらに、上記のような電動モーターの冷却
構造においては、モーターハウジングに接続される放熱
部分自体の構造が複雑なものであって、これを車体に設
置するための作業も面倒なものであると共に、これを車
体に配備するのに車体の要部に大きなスペースを必要と
し、他の部材との関係からこれに冷却風を効率良く送風
できるように車体に配備することが困難な場合もある。

【０００８】本発明は、上記のような従来の車両用電動
モーターの冷却構造の持つ不都合を解消することを目的
としており、より具体的には、ヒートパイプによる車両
用電動モーターの冷却構造を、モーターハウジング自体
の構造を変える必要がなく、ヒートパイプのモーターへ
の設置が容易であり、冷媒の漏れる虞がないものにする
と共に、冷却構造の放熱部分を、簡単な構造で、他の部
材の邪魔になることなく配備でき、しかも、冷却風を効
率良く送風することができるものとすることを目的とし
ている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決しかつ目的を達成するために、車両に走行駆動源と
して配備されている電動モーターの冷却構造において、
内壁に毛細管構造を有する中空パイプ内に冷媒が封入さ
れたヒートパイプを、その一部が入熱部としてモーター
の内側に位置し、その一部が放熱部としてモーターの側
方に突出するように、モーターに対して付設すると共
に、モーターの側方に突出するヒートパイプの放熱部
に、車両の幅方向に並列的に配置された複数の放熱板を
付設するものである。

【００１０】

【作 用】上記のような構成によれば、モーターに発生
した熱は、モーターハウジングの内側に位置するヒート
パイプの入熱部に伝導され、これによって入熱部のヒー
トパイプ内の冷媒が蒸発し（蒸発潜熱の吸収）、この蒸
気がヒートパイプのモーターハウジングの外側に位置す
る放熱部に移動し、この放熱部で冷媒が凝縮し（蒸発潜
熱の放出）、この凝縮液が毛細管現象により再び入熱部
に還流され、これが連続的に行われることによって、ヒ
ートパイプにおける入熱部から放熱部への熱の移動が行
わる。

【００１１】そして、ヒートパイプの放熱部に移動した
熱は、これに付設された各放熱板に伝導されて大気中に
放出されるが、その際、各放熱板がモーターの側方に突
出するように車両の幅方向に並列的に配置されているた
め、車両の走行により前方から送給される冷却風が各放
熱板の間を効率良く流れ、各放熱板の冷却は充分に行わ
れる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の車両用電動モーターの冷却構
造を、電動二輪車に適用した一実施例によって、図面に
基づいて説明する。

【００１３】図１に示すように、電動二輪車１は、前方
車体フレームＦ１に固着したヘッドパイプ２の下端にフ
ロントフォーク３が枢支され、このフロントフォーク３
にフロントクッション４を介して前輪Ｗ１が軸架されて
いると共に、後方車体フレームＦ３に、ピボット５とリ
ヤクッション６を介してパワーユニット７が上下揺動自
在に枢支され、このパワーユニット７の後部に後輪Ｗ２
が軸架された、スイング式パワーユニットを有するもの
である。

【００１４】この電動二輪車１には、走行駆動のための
電気装置として、ステップフロア８の下方で中央車体フ
レームＦ２の間にモーター駆動用の電源となるバッテリ
ー１１が、シート９の下方で後方車体フレームＦ３の上
方にバッテリー１１を充電するための充電器１２が、ま
た、充電器１２の下方にＤＣ−ＤＣコンバーター１３と
モーターの駆動を制御するためのコントローラー１４が
それぞれ配備されると共に、パワーユニット７に走行駆
動源としての電動モーター２０が配備されている。

【００１５】図２に示すように、電動二輪車１のパワー
ユニット７には、その前部に走行駆動源となるモーター
２０が配置され、その後部に後輪Ｗ２の車軸３４が片持
ち状に軸架されていて、モーター２０と後輪Ｗ２の車軸
３４との間に、モーター２０の回転力を減速して後輪Ｗ
２の車軸３４に伝動するための減速機構３０が配置され
ている。

【００１６】このパワーユニット７におけるモーター２
０の出力部２２ａと減速機構３０とは、チェーン３１を
介して連接されており、それらを収容するミッションケ
ース４１は、ボルト５１，５２によって結合されるミッ
ションケース本体４３とミッションケースカバー４４と
により形成されていて、減速機構３０の各ギヤの回動軸
３２，３３は、ミッションケース本体４３内面の軸受部
６３，６５とミッションケースカバー４４内面の軸受部
６４，６６によって、それぞれミッションケース４１に
対して回動自在に軸支されており、後輪Ｗ２の車軸３４
は、軸受部６７，６８を介してミッションケース本体４
２の後部に軸架されている。

【００１７】このようなパワーユニット７の前方に走行
駆動源として配備されるモーター２０は、車両本体に設
置されたコントローラー１４により制御されるブラシレ
ス交流モーターであって、モーターケース４２とミッシ
ョンケース本体４３の一部によって画成されるモーター
ハウジング４０内にその回転子２１と固定子２４が収容
されている。

【００１８】モーター２０の回転子２１は、その外周に
希土類マグネット２３を配設したもので、軸受部６１と
軸受部６２とを介してモーターハウジング４０に回動自
在に軸支されており、モーターハウジング４０からミッ
ションケース４１内に突出した回転子２１の回転軸の一
端２２ａは出力部となり、モーターハウジング４０から
外方に突出した回転軸の他端２２ｂには、回転子２１の
位相を検出する回転センサー８０が付設されている。

【００１９】モーター２０の固定子２４は、金属板素子
を多数枚積み重ね合わせて形成した筒状の金属芯体２６
の内面に形成された複数の内面突条部のそれぞれにコイ
ル２５を巻回したものであって、金属芯体２６の外周面
に形成された外面突条とこれに対応するモーターケース
４２内面の凹部とにより、モーターケース４２に対して
回動不能に位置合わせされると共に、ボルト５３によっ
て結合されるモーターケース４２とミッションケース本
体４３とによりその両端部が挟持されて、モーターケー
ス４２の内面に沿って固定されている。

【００２０】モーターケース２０の外側に付設された回
転センサー８０に対しては、これを覆う回転センサーカ
バー４５がボルト５５によりモーターケース４２に取り
付けられ、この回転センサーカバー４５のさらに外側に
位置して、後述するようなヒートパイプ７０と放熱板７
２からなる放熱部分を保護するための放熱部分保護カバ
ー４６がボルト５４によりモーターケース４２に取り付
けられている。

【００２１】上記のような電動二輪車１のパワーユニッ
ト７に配備されている電動モーター２０において、モー
ター２０の内部に発生する熱をモーターハウジング４０
の外部に放出するために、棒状のヒートパイプ７０が、
モーターケース４２を貫通して、モーターハウジング４
０の内部と外部にわたるように付設されていて、ヒート
パイプ７０のモーターハウジング外部に位置する部分７
０ｂは、車体の側面外方に向かってモーター２０の側方
から突出するように設けられている。

【００２２】なお、図２にはヒートパイプ７０は１本し
か図示されていないが、本実施例においては、固定子２
４の金属芯体２６を貫通して、図示されているヒートパ
イプ７０と同様のヒートパイプがその他に２本付設され
ている。

【００２３】このような３本のヒートパイプ７０のそれ
ぞれについては、それ自体外観上は、図４に示すよう
に、その外周に固定用の鍔部７１を有する金属の単なる
棒状体にすぎないものであるが、それ自体、管の内壁に
メッシュウィックやグルーブウィックのような毛細管構
造を有する中空の金属パイプの内部を真空状態として、
その中に水やフロンなどの作動液を少量封入したもので
あって、その一部が加熱されると、加熱部で作動液が蒸
発し（蒸発潜熱の吸収）、蒸気が低温部に移動し、低温
部で作動液蒸気が凝縮し（蒸発潜熱の放出）、この凝縮
液が毛細管現象により再び加熱部に還流されるというこ
とが連続的に行われ、加熱部から低温部に熱が迅速に伝
えられるものである。

【００２４】なお、このようなヒートパイプ７０自体
は、古河電工で「ＦＲＨＰ」（商品名）として既に一般
的に販売されているものであって、ヒートパイプ内の蒸
気が音速なみのスピードで移動して、熱応答性が極めて
良く、大きな熱伝導性を有するため、冷却用の部材とし
て各種の産業分野において広く利用可能性を有するもの
である。

【００２５】上記のようなヒートパイプ７０を利用した
車両用電動モーターの冷却構造において、ヒートパイプ
７０のモーター２０の側方に突出する部分７０ｂには、
図４に示すように、５枚の放熱板７２が並列的に配置さ
れて付設されている。

【００２６】それぞれの放熱板７２自体の形状は、図３
に示すように、中央に空間部を有する環状の金属平板
で、その３箇所にヒートパイプ７０を挿通する孔７３が
設けられていると共に、その前後方向のほぼ中央に傾斜
した段部７４が形成されているものである。

【００２７】このような形状の放熱板７２は、図５に示
すように、パワーユニット７の上方に位置する車体カバ
ー１０の下方に位置して、モーター２０の側方で回転セ
ンサーカバー４５の外側に、車両の幅方向に５枚が並列
的に配置されるように、３本のヒートパイプのモーター
２０の側方に突出するそれぞれの部分７０ｂ，７０ｂ，
７０ｂに共通して各放熱板７２が付設されるもので、車
両の走行により前方から吹き上げられる冷却風Ｄが各放
熱板７２間を吹き抜けることにより放熱板７２は冷却さ
れる。

【００２８】なお、各放熱板７２には、その前後方向の
ほぼ中央に傾斜した段部７４が形成されているが、これ
により、前方から後方に各放熱板７２間を吹き抜ける冷
却風は、各放熱板７２の前部と後部に効率よく接触する
こととなる。

【００２９】このヒートパイプ７０のモーター２０の側
方に突出する部分７０ｂと各放熱板７２とからなる放熱
部分には、外部からの衝突などから保護するために、図
２に示すように、前部下方から後部上方に吹き抜ける冷
却風の通風を邪魔しないように開口部が形成された放熱
部分保護カバー４６が、ボルト５４によりモーターケー
ス４２に取り付けられている。

【００３０】上記のような実施例においては、充電器１
２により充電されたバッテリー１１からの供給電力によ
り回転するモーター２０によって減速機構３０を介して
後輪Ｗ２が駆動され、特に車両の加速時等においてモー
ター２０内に大量の熱が発生しても、この熱はヒートパ
イプ７０を通じて速やかにモーターハウジング４０の外
側に移動し、放熱板７を通して効率良く大気中に放出さ
れるので、モーター２０の過熱状態となるのが防止され
る。

【００３１】以上、本発明の車両用電動モーターの冷却
構造を、スイング式パワーユニットを有する電動二輪車
に走行駆動源として使用する電動モーターに適用した一
実施例によって具体的に説明したが、本発明は、このよ
うな具体的な実施例にのみ限定されるものではなく、例
えば、電動二輪車以外の車両においても適用可能であ
り、その具体的な構造についても特許請求の範囲に記載
された限りにおいて様々な実施態様を採り得るものであ
ることはいうまでもない。

【００３２】

【発明の効果】以上説明したような本発明の電動モータ
ーの冷却構造によれば、モーターハウジング自体の構造
を変える必要がなく、ヒートパイプのモーターへの設置
を容易に行うことができ、冷媒の漏れる心配がないと共
に、ヒートパイプの放熱部に移動した熱を伝導して大気
中に放出するための放熱板を、簡単な構造で、他の部材
の邪魔になることなくコンパクトに、しかも、車両の前
方からの冷却風が各放熱板の間を効率良く流れるように
配備することができるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を使用した電動二輪車の概略
を示す側面図。

【図２】図１に示された電動二輪車におけるパワーユニ
ット部分のＡ−Ａ線に沿った断面図。

【図３】図２中に示されている電動モーターの冷却構造
に使用されている放熱板の１枚を示す側面図。

【図４】図２中に示されている電動モーターの冷却構造
に使用されているヒートパイプ、および、それに対する
放熱板の取付け状態を示す説明図。

【図５】放熱部分保護カバーを除いた状態で電動モータ
ーの放熱部分を図２の矢印Ｂ方向から見た側面図。

【符号の説明】

２０ 電動モーター ７０ ヒートパイプ ７０ａ ヒートパイプの入熱部 ７０ｂ ヒートパイプの放熱部 ７２ 放熱板

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両に走行駆動源として配備されている
   電動モーターにおいて、内壁に毛細管構造を有する中空
   パイプ内に冷媒が封入されたヒートパイプが、その一部
   が入熱部としてモーターの内側に位置し、その一部が放
   熱部としてモーターの側方に突出するように、モーター
   に対して付設されていると共に、モーターの側方に突出
   するヒートパイプの放熱部に、車両の幅方向に並列的に
   配置された複数の放熱板が付設されていることを特徴と
   する車両用電動モータの冷却構造。