JP7406100B2 - めっき線及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、めっき線及びその製造方法に関するものである。
溶融めっき線の一般的な製造工程は熱間圧延線材を原材料とし、熱間圧延線材表面のスケールを除去し、表面に被膜処理した後、ダイスにより、目的の線径まで冷間加工し、被めっき線とする。この後に、めっき前処理工程で酸洗やフラックス処理等による表面の活性化処理後、溶融金属の浴に浸漬し、被めっき線表面に金属の被膜を形成し、製造される。
亜鉛を含む成分皮膜を有する溶融めっき線は、めっき皮膜層の亜鉛の犠牲防食作用により、地鉄の腐食を抑制することで、耐食性を改善することが大きな目的である。特に、亜鉛-アルミニウム二元合金、さらには亜鉛-アルミニウムに加え、微量のMgを含む三元合金めっきは、より高い耐食性が得られる。
一方、溶融めっきにより、疲労特性が低下する課題がある。このため、めっき線に繰り返し負荷が作用する、架線等に使用する溶融めっき線には耐食性とともに、疲労特性も要求される。
そこで、従来、溶融めっき線の疲労特性を改善するための方法について検討されている。
特許文献1には、Al:2~12%と、残余が実質的にZnからなる組成のめっき浴組成を用いて鋼線に溶融めっきを施した後、250℃から100℃の温度範囲において、T(logt+8.9)≧4900で表わされる関係式を満足する加熱(温度:T°K)、保持(保持時間:s)を行なう製造方法により疲労特性が改善することが記載されている。
また、特許文献2には、めっき層の成分が、質量%で、 Mg:0.10%以上1.00%未満、Al:5.0%以上15.0%以下、残部がZn及び不純物からなり、 めっき層の組織は、質量%でZnを90%以上含むZn相を面積率で25~70%有し、Zn相に占める、円換算した結晶粒径が2~5μmの粒径を有するZn相の面積率が20~100%である溶融めっき鋼線が開示されている。
特開平2-259055号公報 国際公開第2019/124485号
特許文献1に記載されている合金めっき鋼線の製造方法は、ZnとAlの二元合金めっきの共析変態応力低減のため、加熱温度範囲を共析温度以下の100~250℃としている。
しかし、より耐食性に優れる、Zn、Alに、Mgを含む三元合金めっきでは、めっき層による疲労特性の悪化影響が大きいために、共析変態応力制御のみでは改善効果が小さく、さらに疲労特性を改善することが望ましい。
また、特許文献2に記載されている三元合金めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼線は、Znめっき鋼線又はZn-Al溶融めっき鋼線に比べ耐食性が高いとされているが、疲労特性は考慮されていない。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたもので、Zn、Al、及びMgを含むめっき層を有し、疲労特性と耐食性に優れためっき線とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、Zn、Al、及びMgを含む三元合金めっき組成において、めっき線の疲労特性及び耐食性に及ぼすめっき層組織の影響について鋭意検討した。その結果、めっき層の母相であるZn相(Zn結晶)の結晶粒径、初晶として晶出する、共晶相のAl相(Al結晶)の結晶粒径が疲労強度に大きく影響することを知見した。また、そのようなめっき組織を得るための冷却条件を見出した。
すなわち、本開示の要旨は以下のとおりである。
<1> 鋼線と、前記鋼線の表面を被覆するめっき層と、を含み、
前記めっき層の組成が、質量%で、
Al:5.0%超~12.0%、
Mg:0.30%超~1.00%、並びに
残部:Zn及び不純物、からなり、
前記めっき層の組織が、Zn相、Al相、及びMgZn相を含み、EBSD(電子線後方散乱解析:Electron Back Scattered Diffraction Pattern)により、Zn結晶とAl結晶を測定したときの結晶の方位差15度以上を結晶粒界と定義し、前記Zn結晶のうち5μm以上の円相当結晶粒径の平均円相当結晶粒径をdZnμm、前記Al結晶の平均円相当結晶粒径をdAlμmとしたとき、前記dZnが30μm以下であり、かつ下記(1)式の値Dが64以上、108以下である、めっき線。
D=2.4×dZn+24.2×dAl ・・・(1)
<2> 前記めっき層を前記EBSDにより測定した前記Al相、前記Zn相、及び前記MgZn相の相マップにおいて、前記MgZn相の面積率が0.3~3.5%である<1>に記載のめっき線。
<3> 組成が、質量%で、Al:5.0%超~12.0%、Mg:0.30%超~1.00%、並びに残部:Zn及び不純物からなる溶融金属のめっき浴に鋼線を浸漬して引き上げることにより、前記鋼線の表面に前記溶融金属の被膜を付着させる溶融金属被膜付着工程と、
前記溶融金属被膜が付着した鋼線を、400℃から330℃までの範囲で冷却速度5.0~15.0℃/sで25℃以上1次冷却し、330℃から200℃までの範囲で冷却速度0.3~3.0℃/sで10℃以上2次冷却する冷却工程と、
を含む、めっき線の製造方法。
本開示によれば、Zn、Al、及びMgを含むめっき層を有し、疲労特性と耐食性に優れためっき線とその製造方法が提供される。
本開示のめっき線の製造工程の一例を示す概略図である。 本開示のめっき線におけるめっき層の組織の一例として、SEM観察したZnAl共晶領域、Zn相領域、及びMgZnAl三元共晶領域を示す図である。 本開示のめっき線におけるめっき層の組織の他の例として、EBSDで測定したAl相領域、Zn相領域、及びMgZn相領域の一例を示す図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。
本開示において、「鋼線」とは、めっき線の素材である鋼線を意味し、「めっき線」とは、鋼線の表面(外周)にめっき層が形成されたもの、すなわち、鋼線とめっき層が含まれる。
化学組成の元素の含有量について、「%」は「質量%」を意味する。
化学組成の元素の含有量は、元素量(例えば、C量、Si量等)と表記する場合がある。
また、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。ただし、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
[めっき線]
本開示に係るめっき線は、鋼線と、前記鋼線の表面を被覆するめっき層と、を含み、
めっき層の組成(本開示において「めっき組成」と記す場合がある。)が、質量%で、
Al:5.0%超~12.0%、
Mg:0.30%超~1.00%、並びに
残部:Zn及び不純物、からなり、
めっき層の組織(本開示において「めっき組織」と記す場合がある。)が、Zn相、Al相、及びMgZn相を含み、EBSD(電子線後方散乱解析:Electron Back Scattered Diffraction Pattern)により、Zn結晶とAl結晶を測定したときの結晶の方位差15度以上を結晶粒界と定義し、Zn結晶のうち5μm以上の円相当結晶粒径の平均円相当結晶粒径をdZnμm、Al結晶の平均円相当結晶粒径をdAlμmとしたとき、dZnが30μm以下であり、かつ下記(1)式の値Dが64以上、108以下である。
D=2.4×dZn+24.2×dAl ・・・(1)
本開示におけるめっき層のめっき組織は、例えば、ZnAl共晶組織である初晶部分とその周囲を取り囲むZn相、及びMgZn相からなり、MgZn相の生成によりめっき層の耐食性を改善する効果を有する。一方、MgZn相がめっき層を硬くし、疲労亀裂の進展パスとして作用し、疲労強度を低下させることがある。
本発明者は、めっき組織と疲労強度の関係、疲労亀裂の進展状況を詳細に調査、観察した結果、めっき線の疲労強度は、めっき層に生成した亀裂が地鉄とめっき界面に達し、地鉄に進展することで、切り欠きとして作用するためにめっき線の疲労強度を低下させることがわかった。
この疲労強度低下の影響は、めっきの組成によって異なり、純ZnめっきよりZnAl二元合金めっきが大きく、さらにZnAlMg三元合金めっきは、より疲労強度を低下させることが明らかになった。
そこで、本発明者は、Zn、Al、Mgを含む三元合金めっきにおいて、耐食性を維持しつつ、疲労強度の低下を抑制する方法について検討を行った。
特に、めっき層の組織に着目してめっき層の結晶粒径と疲労強度の関係を鋭意調査したところ、共晶部分のAl相の結晶粒径とその周囲のZn相の結晶粒径が大きくなるほどめっき中に発生した疲労亀裂の停留効果を発揮し、疲労強度が改善されることを知見した。
一方、Zn相の結晶粒径が大きくなると、めっき線を加工したときに、粒界に沿って割れが発生しやすくなることも明らかにし、Zn結晶粒径に上限を設けることで疲労強度が改善されることも見出した。
さらに、Zn相、Al相の各結晶粒径を大きくしても、めっき線の耐食性は変化しないことも確認された。
そして、本発明者は、めっき線の素材である鋼線を、Mg、Al、Znをそれぞれ所定量含む溶融金属のめっき浴に浸漬してめっき浴から引き上げた後の高温域での1次冷却によりZn相の結晶粒を制御し、めっき層が凝固後の低温域での2次冷却によりAl相の結晶粒を制御することにより、疲労強度と耐食性が良好なめっき線を製造することができることも見出した。
<鋼線>
本開示に係るめっき線の素材となる鋼線の鋼成分は特に限定されないが、高い疲労強度を得るために、炭素含有量が0.62%以上の高炭素鋼線の適用が好ましい。Si、Mnはめっき線の強度を調整するために適宜選択できる。さらにCr、Ti、B、Al、Cu、Mo、Sn等を含む鋼線も適用可能である。
本開示に係るめっき線の素材となる鋼線は、通常、熱間圧延線材を伸線により加工した伸線材を用いることが出来る。
鋼線の直径も特に限定されず、用途に応じて選択すればよい。例えば、2.0mm~5.0mmの直径を有する鋼線を用いることができる。
<めっき層>
本開示に係るめっき線は、鋼線の表面に、前述した組成及び組織を有するめっき層が形成されている。以下、めっき層の組成及び組織について説明する。
(めっき組成)
Mg:0.30%超~1.00%
Mgはめっき層にZnMg金属間化合物を形成し、腐食環境下で生成した腐食生成物を安定化させ、めっき線の腐食の進行を抑制させる作用がある。しかし、Mg量が0.30%以下ではその効果が小さく、耐食性改善効果が小さくなるため、めっき層におけるMg含有量は0.30%超とする。一方、めっき層が1.00%超のMgを含むと硬質なZnMg金属間化合物相が多く生成し、めっき層が硬くなり、本開示におけるめっき組織に制御しても、疲労強度の改善効果が得にくくなる。そのため、めっき層におけるMg含有量は1.00%を上限とする。めっき層におけるMg含有量は、好ましくは0.50~0.80%である。
Al:5.0%超~12.0%
AlもMgと同様に腐食環境下で生成した腐食生成物を安定化させる効果があり、5.0%以下ではその効果が小さくなり、耐食性改善効果が得にくくなるため、めっき層におけるAl含有量を5.0%超とする。一方、12.0%を超えると、Al初晶領域が増加し、優先して腐食が進行するために耐食性が低下することがある。また、めっき浴の融点が高くなり表面の酸化が進行しやすくなり、表面性状が低下し、疲労強度が低下することがある。そのため、めっき層におけるAl含有量は12.0%を上限とする。めっき層におけるAl含有量は、好ましくは7.0%~12.0%、より好ましくは8.0~12.0%である。
残部:Zn及び不純物
めっき層の組成の残部はZn及び不純物である。
不純物は、めっき浴に含まれるZn、Mg、Al以外の元素であって、めっき工程において意図してめっき浴中に添加した成分ではなく、原料、製造工程に起因して意図せず混入する成分(元素)であり、めっきの耐食性、疲労特性に影響を及ぼさない元素および含有量である。めっき層に不純物として含まれる含有量は、不純物元素にもよるが、成分(元素)単独の含有量は0.1%以下であることが好ましい。また、めっき層に含まれる不純物元素の合計含有量の上限は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲とし、具体的には1.0%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.01%未満であることが特に好ましい。
めっき層の組成分析は、JIS H0401:1999「溶融亜鉛めっき試験方法」に準じてめっき線を1000mlの塩酸溶液に浸漬してめっき層を溶解し、溶解前重量をW、溶解後重量をWとして、小数点以下5桁のg重量でめっき層の溶解重量を求め、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により溶解液中のAl量、Zn量、Mg量をそれぞれg/l濃度で定量し、
Al濃度(%)は分析値のAl/(W-W)×100として、
Mg濃度(%)は分析値のMg/(W-W)×100として、
Zn濃度(%)は分析値のZn/(W-W)×100として、
それぞれ求めることができる。
(めっき組織)
本開示におけるめっき層は、鋼線の表面(外周)に付着した溶融金属が、冷却、凝固により形成される。
Al:5.0%超~12.0%、Mg:0.30%超~1.00%、残部:Zn及び不純物からなるめっき組成は、鋼線の表面にめっき膜として付着した溶融金属が冷却して凝固する際に、ZnとAlの共晶が初晶として晶出し、次いで、MgZn相が晶出し、その後で共晶部分を取り囲んで、Zn相が生成する。
図2は、本開示に係るめっき線のめっき層の断面についてSEMで観察した組織を示し、ZnAl共晶領域、MgZnAl三元共晶領域、及びZ相領域を含むめっき層の一例を示している。図2において、ZnAl共晶領域における白っぽい部分がZn相であり、黒っぽい部分がAl相である。MgZnAl三元共晶領域は、MgZn相とAl相で構成されている。
一方、図3は、本開示に係るめっき線のめっき層の断面をEBSDで測定した他の一例を示している。図3に示すめっき層は、図2に示すめっき層には見られない比較的大きなAl相の組織が存在するほか、Zn相、MgZn相(モザイク状領域)が存在している。すなわち、図2に示すめっき層と図3に示すめっき層は、各相の形態及び大きさが異なるが、いずれも、Al相、Zn相、MgZn相が存在しており、主に、MgZn相によって耐食性が改善される。
なお、図2に示すめっき層及び図3に示すめっき層は、いずれも後述するめっき線の製造方法によって形成したものである。図2に示すめっき層は、1次冷却速度が8.0℃/s、2次冷却速度が2.8℃/sで製造した場合に得られたものであり、図3に示すめっき層は1次冷却速度が10.0℃/s、2次冷却速度が0.3℃/sで製造した場合に得られたものである。図3に示すめっき層では、図2に示すめっき層に比べ、Al相が成長して大きくなっている。
本開示に係るめっき線は、めっき層におけるZn相の結晶粒径とAl相の結晶粒径を適正に制御することで、めっき線の疲労強度が改善される。
Zn相の平均円相当結晶粒径dZn:30μm以下
Zn相はZnAl共晶部を取り囲むように(図2参照)又はAl相部を取り囲むように(図3参照)生成し、結晶粒径が大きくなると、めっき線を曲げたりしてめっき層にひずみが入ると、結晶粒界から亀裂が発生することがある。特にZn相の結晶粒径dZnが30μm超となると粒界部分から亀裂が発生しやすくなり、めっき線の加工性が低下するためZn相の平均円相当結晶粒径は、30μmを上限とする。より好ましいZn相の平均円相当結晶粒径の上限は28μmである。
一方、疲労強度向上の観点から、Zn相の平均円相当結晶粒径の下限は、15μmであることが好ましい。
Zn相の平均円相当結晶粒径dZn(μm)及びAl相の平均円相当結晶粒径dAl(μm)の関係: 64≦2.4×dZn+24.2×dAl≦108
疲労強度に影響を及ぼすZn相の結晶粒径とAl相の結晶粒径はいずれも、大きくなると疲労強度を高める作用を有する。
一方、Zn相の結晶粒径が小さい場合でもAl相の結晶粒径が大きい場合は疲労強度は高くなり、逆にAl相の結晶粒径が小さくてもZn相の結晶粒径が大きくなると疲労強度が高くなる。
しかし、疲労強度に及ぼすZn粒径とAl粒径の影響度は異なり、本発明者が実験を重ねた結果、Zn相の結晶粒径が1μm大きくなったときの疲労強度の改善は2.4MPaで、Al相の結晶粒径が1μm大きくなったときの疲労強度の改善は24.2MPaである。この関係から、
D=2.4×dZn+24.2×dAl ・・・(1)
として、上記(1)式の値Dが64以上である場合、本開示におけるめっき組成の三元めっきの疲労強度がZnAlの二元合金めっき線の疲労強度と同等以上となることから、(1)式の結晶粒径から求めた値Dを64以上とする。
一方、(1)式の結晶粒径から求めた値Dが108を超えると、結晶粒粗大化による疲労強度改善効果が飽和すると共に、著しく遅い冷却速度で冷却する必要があり、生産性の低下及び設備の増大を招くため、上限を108とする。上記(1)式の値Dは、好ましくは、70~100である。
なお、Al相の平均円相当結晶粒径dAlは、上記(1)式の値Dが64~108の範囲であれば特に限定されないが、疲労強度向上の観点から、0.5~2.0μmが好ましい。
(めっき層の結晶粒径の求め方)
めっき線のC断面(めっき線の長手方向に垂直な断面)、すなわち、めっき層と地鉄(鋼線)を含む断面をCP(クロスセクションポリッシャー)で加工し、走査型電子顕微鏡(SEM)で、加速電圧25kVの条件でめっき層を観察し、めっき層部分を電子線後方散乱回折法(EBSD:Electron BackScatter Diffraction)によりZn相の結晶とAl相の結晶についてそれぞれ測定する。
Zn相及びAl相のEBSD測定領域は、めっき層の厚さ(付着量)にもよるが、極力めっき層の厚さ全体が入るようにして領域を決定する。
例えば、めっき付着量が300g/m以上で、めっき厚さが40μm以上の場合はZn結晶の測定は、倍率2000倍で、40μm×80μmの領域を測定ステップ0.1μmでAlとZnの結晶を測定する。Al結晶の測定は、倍率5000倍で、20μm×20μmの領域を測定ステップ0.05μmで、AlとZnの結晶を測定する。なお、共晶部に存在するAl結晶は微細なため、Zn結晶の測定よりも観察倍率を高くして測定する。
測定対象結晶データとして、Znは、hexiagonal結晶で、格子定数a=b=c=2.605Å、c=4.947Å、Alは、cubic結晶で、格子定数a=b=c=3.66Åとすることが好ましい。
なお、めっき付着量が300g/m未満の場合にはEBSD測定領域は小さくなるものの、測定条件は上記と同様にして測定する。
Zn相及びAl相の各結晶粒径は、EBSDで測定したそれぞれの結晶について、結晶方位の角度差が15度以上の大角粒界を結晶粒界として、TSL社のOIM解析ソフトで、粒径分布を求め、面積率が50%となる粒径を平均結晶粒径として求めることができる。
ZnとAlの共晶組織である初晶領域にも微細なZn相が存在するため、母相Znの結晶粒径は、初晶領域の微細なZn結晶を除いて求めることが好ましい。具体的には粒径測定の対象下限粒径を5μmとすることで、初晶領域のZn相を除いた、母相Zn相(Zn相組織領域)の結晶粒径を求めることが可能である。なお、Al結晶粒径及びZn結晶粒径は、いずれも円相当径として算出される。
めっき層の上記結晶粒径の測定は、加工した1断面で、めっき線の中心軸を中心として180度反対側となる2ヵ所で測定し、かつ、めっき線の長手方向に2ヵ所のC断面で測定し、合計4ヵ所でそれぞれ測定した平均結晶粒径の平均値とする。
(MgZn相の比率)
MgZn相は耐食性改善効果を有する。MgZn相の生成比率(断面内の面積率)が0%超であれば耐食性改善効果が得られるが、耐食性改善効果を高める観点から、0.2%以上が好ましく、0.3%以上とすることがより好ましく、0.5%以上とすることがさらに好ましい。一方、MgZn相が、面積率で3.5%を越えて存在すると、めっき層が硬くなり疲労特性が低下するため、3.5%以下とすることが好ましい。MgZn相の比率はさらに好ましくは0.5~2.5%である。
MgZn相の測定は結晶粒径測定と同じサンプルの断面においてEBSDで、Zn結晶、Al結晶を測定すると同時に、MgZn結晶も測定し、OIM解析ソフトによる相マップによりZn相、Al相、MgZn相の各面積率を求めることができる。
MgZn結晶は、MgZn、Hexagonal結晶とし、格子常数a=b=5.221Å、c=8.567Åとして求める。
本開示においては、めっき付着量は必ずしも制限はされないが、めっき付着量が好ましくは200g/m以上とすることで、良好な耐食性が得られる。
めっき付着量の測定は、JIS G 3548:2011「溶融めっき線」記載の方法に準じて実施する。具体的な手順は以下の通りである。
ヘキサメチレンテトラミン3.5gを、質量分率35%の塩酸500mlに溶かし、その溶液を1Lに希釈した溶液に、長さ300mm~600mmに切断した溶融めっき線を、気泡の発生がなくなるまで浸漬する。
浸漬前の溶融めっき線の重量(即ち、試験片のめっき層を除去する前の質量)W(g)、めっき層溶解後の鋼線の重量(即ち、試験片のめっき層を除去した後の質量)W(g)、及びめっき層溶解後の鋼線の線径d(mm)を測定する。
これらの数値を以下の計算式に代入することで、めっき付着量A(g/m)を求めることができる。
A=((W-W)/W)×d×1960
[めっき線の製造方法]
本開示に係るめっき線の製造方法は特に限定されないが、以下の製造方法が挙げられる。すなわち、本開示に係るめっき線の製造方法は、
組成が、質量%で、Al:5.0%超~12.0%、Mg:0.30%超~1.00%、並びに残部:Zn及び不純物からなる溶融金属のめっき浴に鋼線を浸漬して引き上げることにより、前記鋼線の表面に前記溶融金属の被膜を付着させる溶融金属被膜付着工程と、
前記溶融金属被膜が付着した鋼線を、400℃から330℃までの範囲で冷却速度5.0~15.0℃/sで25℃以上1次冷却し、330℃から200℃までの範囲で冷却速度0.3~3.0℃/sで10℃以上2次冷却する冷却工程と、を含む、めっき線の製造方法である。
図1は、本開示に係るめっき線の製造工程の一例を概略的に示している。
まず、めっきを施す鋼線を用意する。例えば、熱間圧延線材の表面に生成したスケール(酸化鉄)を除去し、更に被膜処理した後、ダイスによる伸線加工で目的の線経に加工して鋼線(被めっき線)1とする。
この鋼線を、めっき前処理装置2で脱脂、酸洗、電気Znめっきによる1次めっきを行い、さらに、本開示におけるめっき組成のめっき金属が溶融した2次めっき浴3に浸漬し、鋼線1の表面に溶融金属の被膜を形成し、浴3の外に引き出した後に冷却凝固させてめっき層を形成する。
溶融金属(2次めっき浴)3に浸漬したときに、1次めっきの電気亜鉛めっき層は溶解し、浴3から引き上げることで、地鉄(鋼線)1の表面に溶融金属3が形成される。これにより、鋼線とめっき層の間にZn、Al、Fe、及びMgを含む硬質な合金層の生成は抑制される。
なお、1次めっきは必須ではなく、電気Znめっきによる1次めっきを行わずに、鋼線1に溶融めっきを施してもよい。
めっき層のめっき組織の制御は、溶融金属3から引き上げて、1次冷却装置4で表面の溶融金属を凝固させ、Znの結晶粒径を制御し、その後に備える、2次冷却装置5でAlの結晶粒径の制御を行う。これにより、本開示に係る溶融めっき線6が得られる。
以下、鋼線をめっき浴から引き上げた後の1次冷却及び2次冷却について説明する。
1次冷却温度域:400~330℃の範囲で25℃以上
1次冷却温度域では主にZn相の結晶粒径の制御を行う。めっき表層に薄い凝固層が生成する前に冷却を行うと、表面が乱れ、きれいな溶融めっき線を得にくくなるために、400~330℃の範囲で25℃以上冷却する1次冷却制御を行う。好ましくは、表面に凝固層が生成する温度である400℃以下から冷却制御を行う。一方、温度が低くなるとZn相の結晶粒が制御できなくなるために、1次冷却温度域の下限温度は330℃とすることが好ましい。
1次冷却速度:5.0~15.0℃/s
Zn相の結晶粒径を制御するためには1次冷却温度範囲で、冷却速度5.0~15.0℃/sで冷却することが好ましい。
1次冷却温度域における1次冷却速度が5.0℃/sより遅い場合は、Zn相の結晶粒が粗大化し、めっき線を加工したときにZn相の結晶粒界に割れが発生し、加工性が低下することがある。一方、1次冷却速度が15.0℃/sより大きい場合は、Zn相の結晶が微細になり、めっき線の疲労強度が低下することがある。1次冷却温度域における1次冷却速度は、より好ましくは、8.0~12.0℃/sである。
めっき層の冷却速度の制御方法は特に限定されないものの、一般的な水冷ノズルを用いて水量、水冷時間を制御することで調整可能である。また、水冷温度を調整することによっても、冷却速度の制御が可能である。
また、冷却ノズルを2流体、気水、水膜等のノズルを用いる方法や特定のガスを噴射することでも強制冷却における平均冷却速度を制御してもよい。
さらにめっき線の冷却は一方向のみではなく、円周の少なくとも4方向から冷却を行うことにより、めっき層組織のばらつきが低減可能となる。
2次冷却温度域:330℃から200℃までの範囲で10℃以上
1次冷却後、330℃から200℃までの範囲で10℃以上冷却する2次冷却制御を行う。
共析温度より高温ではZn相の結晶粒径が変化することがあるため、Al相を含む共晶組織部分は共析温度以下の温度域で制御するのが好ましい。しかし、共析温度の280℃では連続冷却によるAl相の組織制御を行うのが困難な場合があるため、短時間では実質的にZn相の結晶粒径変化が起きにくい、330℃以下から2次冷却の制御を行うのが好ましい。
しかし、200℃より低下してしまうと、冷却制御の影響が得にくいため、200℃を2次冷却制御温度の下限とするのが好ましい。
2次冷却速度:0.3~3.0℃/s
2次冷却温度域である、330℃~200℃の間で10℃以上冷却する際の冷却速度は0.3~3.0℃/sであることが好ましい。
330℃以下の温度域でめっき線を連続して2次冷却する場合、冷却速度を0.3℃/sより遅くしてもAlの結晶粒径の組成制御効果が得にくくなる場合があるとともに、めっき線を巻き取るための装置でのハンドリング可能な低温まで冷却するのに長時間かかり、連続処理できなくなる場合があるため、0.3℃/sを2次冷却速度の下限とするのが好ましい。
一方、2次冷却速度が3.0℃/sより速いとAl相の平均結晶粒径が小さくなるため疲労特性の改善効果が十分に得られないことがある。そのため、2次冷却では、3.0℃/s以下の冷却速度とすることが好ましい。
2次冷却速度の制御方法は特に限定されないが、めっき線に高温のガスを吹き付けることや、2次冷却装置5の雰囲気温度を制御したボックス内を通過させることにより冷却速度の制御が可能となる。
さらに冷却速度を遅くする場合は、単線では2次冷却ゾーンが長くなりすぎるため、めっき線を巻き取った状態で徐冷しても同様に組織の制御は可能である。この場合、より徐冷速度を遅くできる。
以上説明したように、めっき層の組成及び組織を本開示の範囲に制御することでめっき線の疲労強度の低下を抑制することが可能となり、Mgを含まない、Zn-Alの二元合金めっきに比べ良好な耐食性が得られることから、耐食性と疲労特性が良好なめっき線を得ることができる。
本開示に係るめっき線の用途は特に限定されないが、良好な耐食性及び良好な疲労耐久性が得られることから、特に架線用途に適用することで、産業上の貢献が極めて顕著である。
以下、本開示の実施例について説明する。なお、本開示は、必ずしも本実施例に記載の方法に限定されるものではない。
[めっき線の製造]
鋼線(被めっき線)の素材として用いた線径が5.5mmの熱間圧延線材の鋼材成分を表1に示す。なお、表1に記載の成分以外の残部はFe及び不純物である。

熱間圧延線材は酸洗でスケールを除去した後、リン酸亜鉛被膜処理を行い、ステアリン酸カルシウムを主体とした乾式潤滑剤(伸線潤滑剤)を用いて1パス減面率が16%~24%で4~6回繰り返し伸線を行い、3.2mmまで加工し、鋼線とした。
次に、めっき前処理として、鋼線をアルカリ溶液で脱脂して伸線潤滑剤を除去した。伸線潤滑剤を除去後、酸洗を行い、1次めっきとして、厚さ2μmの電気亜鉛めっきを施した。
1次めっきに引き続き、Zn、Al、及びMgを含む2次めっきの450℃の溶融金属のめっき浴に1次めっき線を浸漬し、浴から連続して垂直に引き上げて、表面にZn、Al、及びMgを含む被膜(めっき層)を形成した。
2次めっきの溶融金属のAl、Mgの各濃度、浴から引き上げた後の1次冷却温度範囲、及び冷却速度を変えることで、めっき層の組成、Zn相の結晶粒径を制御した。また、通線速度を調整して、めっき付着量を200~320g/mに制御した。
更に1次冷却後に2次冷却を行い、2次冷却温度範囲、冷却速度を変えて、Al相の平均結晶粒径を調整した。
1次冷却温度域は、1次冷却ゾーンの冷却開始温度と、1次冷却ゾーン出口温度を測定して求め、1次冷却速度は、温度差を通線時間で割って平均冷却速度として求めた。
2次冷却温度域は、2次冷却ゾーンの冷却開始温度と、1次冷却ゾーン出口温度を測定して求め、2次冷却速度は、温度差を通線時間で割って、平均冷却速度として求めた。
[めっき層の分析]
<組成分析>
上記のようにして製造しためっき線のめっき層の組成について、前述した方法により分析した。表2に、Mg量、Al量を記載した。残部はZn及び不純物であり、溶解しためっき層の総量からMg量、Al量、及びZn量を差し引いた不純物量は0.01%未満であった。
<組織分析>
Zn相の平均円相当結晶粒径、Al相の平均円相当結晶粒径は先に記載の通り、まず、めっき層のC断面(溶融めっき線の長手方向に垂直な断面)をCPで加工して、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、電子線後方散乱回折法(EBSD)により、めっき層部分を測定領域として、ZnとAlの結晶データを測定した。
Zn相の結晶粒径は倍率2000倍の測定データから結晶方位差が15度以上を粒界として結晶粒径分布をOIMの解析ソフトで求めた。初晶内の微小なZn結晶を測定対象から除くために、最小結晶粒径(最小円相当結晶粒径)を5μmとして面積平均結晶粒径をZn相の平均円相当結晶粒径とした。
Al相の平均円相当結晶粒径は倍率5000倍の測定データから、結晶方位の角度差が15度以上の境界を結晶粒界とみなしてOIM解析ソフトの粒径分布グラフから平均結晶粒径を求めた。
各測定領域及び測定ステップは、前述したとおりである。
各めっき線について、1つのC断面につき、中心軸を中心として180度反対側となる2ヵ所で測定し、かつ、めっき線の長手方向に1m間隔の2ヵ所のC断面で測定し、合計4ヵ所でそれぞれ平均円相当結晶粒径を測定した。そして、4ヵ所におけるZn相の平均円相当結晶粒径の平均値、Al相の平均円相当結晶粒径の平均値を、それぞれ各めっき層における各相の平均円相当平均結晶粒径とした。
[評価]
<疲労強度>
めっき線の疲労強度は、中村疲労試験により評価した。めっき線の引張り強さの0.1~0.5倍の曲げ応力をかけて、回転曲げ疲労試験を行い、それぞれの応力での破断寿命を求め、10回で破断しなかった応力をめっき線の疲労強度とし、疲労強度を引張り強さで除し、疲労限耐久比を求めた。
疲労限耐久比が0.23以上であれば、疲労強度が極めて良好と判断し、◎とした。疲労限耐久比が0.21~0.23未満であれば良と判断し、○とした。疲労限耐久比が0.21未満の場合は疲労強度が劣位と判断し、×とした。
<耐食性>
溶融めっき線の耐食性は以下の方法で評価した。種々のめっき組成、結晶サイズのめっき線を、JIS Z 2371:2015「塩水噴霧試験方法」に記載の塩水噴霧試験を実施し、1000h後の溶融めっき層の腐食減量を測定した。
比較例のNo.18、Zn-10.5%Alめっき線の腐食減量を100とし、腐食減量がZn-10.5%Alめっき線の25%以下の場合は、耐食性が極めて良好と判断し、◎とした。腐食減量がZn-10.5%Alめっき線の25%超~50%の場合は、耐食性が良好で、○と判断した。腐食減量がZn-10.5%Alめっき線の50%超の場合は、耐食性改善効果が小さく、×と判断した。
表2に発明例と比較例の溶融めっき線の特性評価結果を示す。

表2において、本開示の範囲外の値には下線を付した。
比較例のNo.18はZn-10.5%Alの二元合金溶融めっき線で、1次冷却のみを行っためっき線であり、耐食性評価の基準めっき線である。
発明例のNo.2~4,6,9,11~13,15は極めて良好な疲労強度と、耐食性が得られた。
Mg量が本開示の下限近傍及び/又はAl量が本開示の上限近傍の組成であるNo.5,7はMgZn相が比較的少なく耐食性改善効果は良好レベルであった。No.16もMgZn相が比較的少なく、耐食性改善効果は良好レベルであった。
(1)式の値Dが、70未満のNo.1,14,17は疲労強度が良好で、Mgが高めのNo.8もMgZn相が増加し、疲労強度レベルは良であった。
Al結晶粒径0.6μmであり、発明例の中で最も小さいNo.10も疲労強度レベルは良であった。
比較例のNo.19は、めっき組成のMgが本開示の下限未満のため、耐食性の改善効果が見られなかった例である。
比較例のNo.20は、めっき組成のMgが上限を越えて、多いために、耐食性は良好であるが、疲労強度が低下した例である。
比較例のNo.21は、めっき組成のAlが本開示の下限未満のため、初晶がZn相となるとともに、MgZn相が低下し、耐食性が改善しなかった例である。
比較例のNo.22は、めっき組成のAlが本開示の上限を超えているためにAl初晶が増加し、初晶部の腐食が進行するとともにMgZn相が少なく耐食性低下すると共に溶融金属の融点が高くなり、良好な表面性状が得られなかった例である。
比較例のNo.23は、1次冷却速度が速く、1次冷却でめっき線表面の温度が低下したために、Zn結晶が小さくなるとともに、Al結晶粒の制御が出来ず、(1)式の値Dが本開示の下限に満たなかったために疲労強度が低下した例である。
比較例のNo.24は、1次冷却速度が遅いために、Zn結晶粒が本開示の上限を超え、34μmと粗大化したため、疲労試験で割れが発生し疲労強度が低下した例である。
比較例のNo.25は、2次冷却速度温度が低温かつ、冷却速度が速かったためにAlの結晶粒径が微細となり、疲労強度が低下した例である。
比較例のNo.26は、1次冷却のみを実施し、低温まで冷却してめっき線を製造し、2次冷却制御を行なわなかったため、Al結晶粒径が微細になり、(1)式の値Dが本開示の下限に満たなかったために疲労強度が低かった例である。
本開示に係るめっき線は、疲労特性と耐食性に優れるために、架線等、動的負荷が作用する各種用途への適用が可能となり、産業上の利用可能性が極めて高い。
1 鋼線(被めっき線)
2 前処理装置
3 2次めっき浴
4 1次冷却装置
5 2次冷却装置
6 溶融めっき線

Claims (3)

  1. 鋼線と、前記鋼線の表面を被覆するめっき層と、を含み、
    前記めっき層の組成が、質量%で、
    Al:5.0%超~12.0%、
    Mg:0.30%超~1.00%、並びに
    残部:Zn及び合計1.0%以下の不純物、からなり、
    前記めっき層の組織が、Zn相、Al相、及びMgZn相を含み、EBSD(電子線後方散乱解析:Electron Back Scattered Diffraction Pattern)により、Zn結晶とAl結晶を測定したときの結晶の方位差15度以上を結晶粒界と定義し、前記Zn結晶のうち5μm以上の円相当結晶粒径の平均円相当結晶粒径をdZnμm、前記Al結晶の平均円相当結晶粒径をdAlμmとしたとき、前記dZnが30μm以下であり、かつ下記(1)式の値Dが64以上、108以下である、めっき線。
    D=2.4×dZn+24.2×dAl ・・・(1)
  2. 前記めっき層を前記EBSDにより測定した前記Al相、前記Zn相、及び前記MgZn相の相マップにおいて、前記MgZn相の面積率が0.3~3.5%である請求項1に記載のめっき線。
  3. 組成が、質量%で、Al:5.0%超~12.0%、Mg:0.30%超~1.00%、並びに残部:Zn及び合計1.0%以下の不純物からなる溶融金属のめっき浴に鋼線を浸漬して引き上げることにより、前記鋼線の表面に前記溶融金属の被膜を付着させる溶融金属被膜付着工程と、
    前記溶融金属被膜が付着した鋼線を、400℃から330℃までの範囲で冷却速度5.0~15.0℃/sで25℃以上1次冷却し、330℃から200℃までの範囲で冷却速度0.3~3.0℃/sで10℃以上2次冷却する冷却工程と、
    を含む、めっき線の製造方法。
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