JP7370789B2 - 制震構造物、制震構造物の制御方法及び制震構造物の設計方法 - Google Patents

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本発明は、中間免震層を利用した制震構造物制震構造物の制御方法及び制震構造物の設計方法に関する。
従来、例えば、オフィスビルや商業ビル、マンションなどの中高層建物には、中間階に積層ゴムなどの免震装置を介設してなる中間免震層を設け、中間免震層を境に上部構造体の固有周期を卓越周期帯域から長周期側にずらし、地震時や強風時における応答加速度を小さくするように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
このような中間免震建物(中間免震構造物)は、例えば巨大地震を受けた場合であっても、中間免震層に変形を集中させ、上部構造体の応答加速度を小さくして揺れを抑えることができる。このため、中間免震層を備えていない場合に生じ得る、建物の最弱層に損傷が生じて耐力が低下し始め、この最弱層に地震エネルギーが集中して層崩壊が生じ、他の層は健全性が確保されているにもかかわらず最弱層の被害が甚大となって補修による復旧が困難になったり、建物が崩壊に至る現象を、中間免震建物(中間免震構造物)では効果的に防止できる。
ちなみに、下階層を商業施設、上階層を居住スペースにするなど、下階層と上階層の用途が異なる中高層建物に中間免震構造を適用する場合などにおいては、用途が異なる下階層と上階層の境界層に機械室、空調室を設けるとともに免震装置などを設置し、この境界層を中間免震層として階層空間の有効活用することも提案、実用化されている。
特開2006-009477号公報
ここで、建物の全高の半分よりも下方に中間免震層を設けた場合には、免震層の振動周期が下部構造体の振動周期よりも長くなりすぎるため、直下階層、すなわち、下部構造体の最上階層の応答加速度が大きくなり、下部構造体を頑強に設計する必要が生じてしまうという課題がある。
また、上部構造体においても、建物躯体の剛性を十分大きく設計しなければ、上部構造体の上部、すなわち、建物の頂部付近の応答が増幅して応答加速度が大きくなる、いわゆる「むちふり現象」が生じてしまうという課題がある。この「むちふり現象」が生じると、上部構造体の最上階層の応答が過大になり、居住性が著しく低下する。
逆に、免震層上部の重量が建物全体重量の1割に満たない位置(全高の半分よりも相当上方)に中間免震層を設け、これをTMDとして利用しようとした場合、地震時における免震層の層間変位が過大となり、積層ゴムなどの免震装置の変形が大きくなり過ぎるという課題がある。層間変位が過大になることを防ぐためには、積層ゴムの径を大きくしたり、数を増やすなどして中間免震層の剛性を大きくすることが有効だが、これにより上部構造体を慣性質量とみなした下部構造体に対するTMD(Tuned Mass Damper)効果が失われるという不都合を招く。すなわち、免震層の上部の重量が小さすぎると、地震時における免震層の層間変位の抑制と、下部構造体に対するTMD効果を両立させることができない。なお、TMD効果とは、免震層上部躯体を「重り(慣性質量)」として捉えた際の、免震層下部躯体への振動抑制効果を言う。
これらの課題への対応として、建物の全高の半分よりも上方に中間免震層を設けた場合において、中間免震層に履歴型の鋼材ダンパやロック機構付きのオイルダンパを設け、地震時や強風時の大入力に対する免震層の層間変形を抑制する手法が実用化されている。
しかしながら、履歴型の鋼材ダンパやロック機構付きのオイルダンパは、中間免震層に作用するせん断力が小さいときにも中間免震層の変形を止めてしまうため、中小地震などの小入力時に上部構造体を慣性質量とみなして下部構造体の揺れを抑えるTMD効果を得ることが難しくなってしまう。
ここで参考として、中間免震層を設けない場合の従来の態様の例を説明する。この場合は、構造体の全階層(多階層)の構面内などにオイルダンパなどの制震装置を設置(下部構造体に多数の制震装置を設置)して、構造体の応答の低減を図ることが考えられる。
しかしながら、この場合には、構造体に多数の制震装置が設置されるため、制震装置の施工、メンテナンスなどに多大な労力とコストを要し、さらに、構造体の全階層の構面内などに制震装置を設置するための占有スペースが必要になり建築計画の自由度が損なわれ、空間利用効率の低下、見栄えの悪化など、多くの不都合が生じてしまう。
このため、地震対策や事業継続に対する社会的ニーズが飛躍的に高まる中で、建築計画の自由度を確保しつつ、高度な耐震性能を有する制震構造物が強く望まれている。
本発明の制震構造物の一態様は、中間免震層よりも上方の上部構造体の質量をm、下方の下部構造体の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下であり、平面で直交するX,Yの二方向の少なくとも一方の前記上部構造体と前記下部構造体を剛結した剛結構造物全体の固有周期(全)と、前記中間免震層及び前記上部構造体の固有周期(上部免震)と、前記下部構造体の固有周期(下部)とが、(全)>(上部免震)>(下部)の関係を満たし、前記上部構造体をTMDとして利用するように構成されており、前記中間免震層に設けられ、前記中間免震層の層変形を制御するオイルダンパとして、減衰力がハードニングするハードニングオイルダンパを備える
本発明の制震構造物の他の態様は、中間免震層よりも上方の上部構造体の質量をm、下方の下部構造体の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下であり、前記上部構造体をTMDとして利用するように構成されており、前記中間免震層に設けられ、前記中間免震層の層変形を制御するオイルダンパとして、減衰力がハードニングするハードニングオイルダンパを備える。
本発明の制震構造物の制御方法の一態様は、前記上部構造体と前記下部構造体の相対速度が所定の相対速度に達した時点で、前記中間免震層に設けられ、前記中間免震層の層間変形を制御するオイルダンパの減衰力を、前記所定の相対速度以下に制限するように制御する。
本発明の制震構造物の設計方法の一態様は、中間免震層よりも上方の上部構造体の質量をm、下方の下部構造体の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下であり、平面で直交するX,Yの二方向の少なくとも一方の前記上部構造体と前記下部構造体を剛結した剛結構造物全体の固有周期T(全)と、前記中間免震層及び前記上部構造体の固有周期T(上部免震)と、前記下部構造体の固有周期T(下部)とが、T(全)>T(上部免震)>T(下部)の関係を満たすように前記中間免震層の剛性を調節し、前記上部構造体をTMDとして利用するように構成する。
本発明の制震構造物制震構造物の制御方法及び制震構造物の設計方法によれば、上部構造体をTMDとして利用して、下部構造体と上部構造体の応答を効果的に低減でき、建築計画的な犠牲を抑えつつ、高度な耐震性能を備えた制震構造物を実現することが可能になる。
一実施形態の制震構造物の一例を示す模式図である。 一実施形態の制震構造物の中間免震層の構成の一例を示す立面図である。 一実施形態の制震構造物における、上部構造体と下部構造体を剛結した構造物と、上部構造体及び中間免震層と、下部構造体との各固有周期の大小関係を示す模式図である。 一実施形態の制震構造物の中間免震層に設置されるオイルダンパの性能を示す図であり、ダンパ速度と減衰力の関係を示す図である。 シミュレーション結果を示す図であり、各階層の最大応答変位を示す図である。 シミュレーション結果を示す図であり、各階層の最大応答加速度を示す図である。 シミュレーション結果を示す図であり、各階層の最大応答せん断力を示す図である。 一実施形態の制震構造物の変更例を示す図であり、上部構造体から吊り下げる構造体と下部構造体から立ち上がる構造体とからなる変形抑制機構の一例を示す断面図である。
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る制震構造物及び制震構造物の制御方法について説明する。
本実施形態の制震構造物1は、オフィスビル、マンション、商業ビル、複合ビルなどの中高層建物であり、図1に示すように、建物1の全高の中間階に免震層2を備え、この中間免震層2に積層ゴム等の免震装置(アイソレータ)が設置されている。例えば、中間免震層2は、中間免震層2を境に上部構造体3の柱と下部構造体4の柱の間に免震装置を介設し、この免震装置によって上部構造体3を支持して構成されている。
なお、中間免震層2は、図2に示すように、積層ゴムなどの免震装置5を複数段積層配置して構成してもよい。このとき、免震装置5の上下端の固定度を確保するために、中間梁6などを適宜設けて構成すればよい。
本実施形態の制震構造物において、中間免震層2には、上部構造体3と下部構造体4に両端部を接続してオイルダンパが設置されている(図2中の符号7:オイルダンパ(減衰装置)参照)。本実施形態では、このオイルダンパとして、特許第5870138号公報に開示された「ハードニング油圧回路を搭載した速度制限機能付き油圧ダンパ」(以下、ハードニングオイルダンパという)が適用されている。ハードニングオイルダンパはダンパに作用する力の大きさに応じて、すなわち、上部構造体3と下部構造体4の相対速度、つまり中間免震層2の層間速度の大きさに応じて、減衰係数が増減する可変減衰性能を備えたダンパである。ハードニングオイルダンパの詳細な説明は、後述する。
本実施形態の制震構造物1は、図1及び図3に示すように、中間免震層2よりも上方の上部構造体3の質量をm、下方の下部構造体4の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下(0.1≦m/M≦1)であり、平面で直交するX,Yの二方向の少なくとも一方の上部構造体3と下部構造体4を剛結した剛結構造物全体の固有周期(全)と、中間免震層2及び上部構造体3の固有周期(上部免震)と、下部構造体4の固有周期(下部)とが、
(全)>(上部免震)>(下部)
の関係を満たし、上部構造体3をTMD(慣性質量)として利用するように構成されている。なお、中間免震層2及び上部構造体3の固有周期(上部免震)は、上部構造体3を完全剛体と仮定したときの、実質的な中間免震層2の固有周期を意味する。
本実施形態の制震構造物1は、中間免震層2の減衰定数hがh≧40%とされ、通常の中間免震層における減衰定数20~30%程度よりも大きく設定されている。
従来の中間免震層を備えた構造物においては、上部構造体の質量mが下部構造体の質量Mよりも小さすぎると、大地震や強風時に中間免震層の変形(層間変位)が大きくなりすぎ、設計可能なストロークに収めながら、上部構造体の質量mをTMD(慣性質量)として利用して下部構造体に対する十分な制震効果を発揮させることが難しくなってしまう。
逆に、上部構造体の質量mが下部構造体の質量Mより大きくなると、中間免震層直下の下部構造体の頂部の応答加速度が大きくなってしまう。
これに対し、本願の発明者らは、鋭意研究によって、上部構造体3と下部構造体4の質量比m/Mを10%以上、100%以下にすることによって、上記の両課題を解消し、上部構造体3の質量mをTMD(慣性質量)として利用して下部構造体4に対する十分な制震効果を得るとともに、中間免震層2の直下の下部構造体4の頂部の応答加速度を好適に抑えることが可能であることを見出した。
本実施形態の制震構造物1においては、(全)>(上部免震)>(下部)としている。
ここで、免震構造物の一般的な考え方においては、免震装置の積層ゴムの硬さを調節するなどすれば、(上部免震)を選択することができ、(上部免震)>(全)>(下部)としたり、(全)>(下部)>(上部免震)とすることもできる。
しかしながら、中間免震層の固有周期((上部免震))を長くしすぎると、大地震や強風時に中間免震層の変形(層間変位)が大きくなりすぎ、設計可能なストロークに収めながら、上部構造体の質量mをTMDとして利用して下部構造体に対する十分な制震効果を発揮させることが難しくなってしまう。
逆に、中間免震層の固有周期((上部免震))を短くしすぎると、TMDとしての上部構造体の下部構造体との間に大きな同調ずれが生じてしまい、TMDとしての制震効果が低減、喪失し、下部構造体の揺れを抑制できなくなってしまう。
これに対し、本願の発明者らは、鋭意研究によって、上部構造体3と下部構造体4の質量比m/Mを10%以上、100%以下にすることに加え、(全)>(上部免震)>(下部)とすることによって、上部構造体3の質量mをTMDに利用し、十分で確実に下部構造体4に対する制震効果を得ることが可能で、且つ中間免震層2の直下の下部構造体4の頂部の応答加速度を好適に抑えることができることを見出した。
したがって、本実施形態の制震構造物1によれば、中間免震層2によって上部構造体3の揺れを抑制することができ、上部構造体3をTMDとして効果的に利用することで、下部構造体4の応答(加速度、変位)を抑制でき、中間免震層2を境に上下の上部構造体3と下部構造体4の両者の揺れを効果的に抑制することが可能になる。
従来の中間免震層を備えた構造物では、大地震時や強風時に中間免震層の層間変位、すなわち上部構造体の揺れが大きくなり、上部構造体の居住性が悪くなってしまう。上部構造体の揺れを抑えようとすると、今度は下部構造体、特に中間免震層直下の応答が大きくなってしまうという課題があった。しかし、本実施形態のように、上部構造体3と下部構造体4の質量比m/Mを10%以上、100%以下にすることに加え、(全)>(上部免震)>(下部)とすることによって、このような課題を解決することができ、制震、免震性能に優れた制震構造物1を実現することが可能になる。
言い換えれば、本実施形態の制震構造物1においては、必ずしも下部構造体4に制震装置を設置することを要さず、上部構造体3と下部構造体4の質量比m/Mを10%以上、100%以下にすることに加え、(全)>(上部免震)>(下部)とすることによって、優れた制震、免震性能に加え、施工性、メンテナンス性、経済性、空間利用性、意匠性などに優れた制震構造物1を実現することが可能になる。
これにより、例えば、上部構造体3が居住スペース、下部構造体4が商業スペースなど、上部構造体3と下部構造体4の用途が異なる場合には、境界層を中間免震層とすることで、大地震時や強風時の上部構造体3の揺れを抑制して好適に居住性を確保すること、下部構造体4の揺れを抑制することの両立を図ることが可能になる。
本実施形態の制震構造物1においては、中間免震層2の層間変位が積層ゴムなどの免震装置の許容ストロークを超えるおそれがある場合に、中間免震層2にオイルダンパなどの減衰装置を設置したり、減衰装置の設置台数を増やすなどして、中間免震層2の減衰定数hを従来よりも大きくし、h≧40%にすることが好ましい。
また、中間免震層2に設置する減衰装置は、減衰定数を変えることができる可変減衰装置(アクティブダンパを含む)とすることが好ましく、さらに、本実施形態の制震構造物1のように、ハードニングオイルダンパを適用することがより好ましい。
ハードニングオイルダンパとは、油圧ダンパの油圧室間に調圧弁と付加油圧弁を並列に接続し、調圧弁をピストンの荷重が一定荷重以下のときに開放状態に保ち、一定荷重を超えたときに閉鎖状態にする一方、付加油圧弁を常に開放状態に保つことで、ピストンの荷重が一定荷重を超え、油圧ダンパの減衰係数が付加油圧弁の減衰係数のみになるときに、油圧ダンパが発生する抵抗力を急激に上昇させ、油圧ダンパの剛性を一時的にほぼ無限大近くにして、油圧ダンパにハードニング特性を付与するものである。
そして、本実施形態の制震構造物1及び制震構造物1の制御方法では、図4に示すように、中小地震などの小入力時において、上部構造体3の下部構造体4に対するTMD効果が良好に得られる減衰力が発現するようにハードニングオイルダンパの制御を行う。そして大地震や強風などの大入力時には、上部構造体3と下部構造体4の相対速度が予め設定した所定の速度に達するときに、減衰力が急激に上昇するように制御を行う。また、所定の速度を一時的に超えてから再度所定の速度を下回る場合は、再び上部構造体3の下部構造体4に対するTMD効果が良好に得られる減衰力が発現するように戻す制御を行う。
具体的に、大地震や強風などの大入力時には、上部構造体3と下部構造体4の相対速度は、上部構造体3が中立位置にある状態、すなわち上部構造体3に生じる加速度および応力が0(ゼロ)に近い状態で最大となる。本実施形態の制震構造物1においては、この相対速度が所定の値を超えた状態でオイルダンパの減衰力をハードニングさせ、中間免震層2の層間速度の上昇を抑える。上部構造体3と下部構造体4の相対速度が所定の値を超えた状態で減衰力をハードニングさせるように制御を行うことによって、上部構造体3の加速度および応力レベルを過度に大きくすることなく、制震構造物1を設計することが可能になる。
本実施形態では、このように制震構造物1を構成、制御することによって、大地震や強風などの大入力時に、上部構造体3と下部構造体4の相対速度が予め設定した所定の速度に達するとともに減衰力が急激に上昇し、上部構造体3の応答(運動エネルギー、加速度、変位)を制限、抑制することが可能になる。また、上部構造体3の加速度および応力レベルを過度に大きくすることなく制震構造物1を設計することが可能になる。
上部構造体3と下部構造体4の相対速度が予め設定した所定の速度より小さい中小地震などの小入力時には、上部構造体3がTMDとして最も効果を発揮できる減衰定数に設定されるため、下部構造体4の揺れを効果的に抑制することができる。
<実施例>
ここで、本実施形態の制震構造物1の優位性を確認するために行ったシミュレーションについて説明を行う。
本シミュレーションでは、A本実施形態の制震建物と、B従来の各層間に減衰装置を設置した制震建物と、C中間免震層や制震装置を備えていない建物と、の3つのモデルに対して、同じ長周期地震動を入力し、各建物の階層毎の最大応答水平変位、最大応答水平加速度、最大応答せん断力を求め、比較を行った。なお、中間免震層や制震装置の有無以外の建物モデルの条件は同一である。
図5、図6、図7に示す通り、従来の制震建物と比較し、本実施形態の制震建物では、最大応答水平変位、最大応答水平加速度、最大応答せん断力が、上部構造体、下部構造体ともに著しく低減する、すなわち、免震・耐震性能が大幅に向上することが確認された。
したがって、本実施形態の制震構造物1及び制震構造物1の制御方法は、層間に減衰装置を設置した従来の制震構造と比較すると、建築計画の自由度を確保しつつ、より良い応答低減効果を発揮できることがわかる。
これにより、効果的で好適に、中間免震層2によって上部構造体3の揺れを抑制することができるとともに、上部構造体3をTMDとして効果的に利用して、下部構造体4の応答(加速度、変位)を抑制できる。すなわち、従来の制震構造と比較し、より一層効果的で好適に、中間免震層2を境に上下の上部構造体3と下部構造体4の両者の揺れを抑制することが可能になる。
よって、本実施形態の制震構造物1及び制震構造物1の制御方法によれば、上部構造体3をTMDとして利用して、下部構造体4と上部構造体3の応答を効果的に低減でき、建築計画の自由度を確保しつつ、従来よりも格別顕著で高度な耐震性能を備えた制震構造物1を実現することが可能になる。
以上、本発明に係る制震構造物制震構造物の制御方法及び制震構造物の設計方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、適用対象構造物が中高層建物であるものとして説明を行ったが、中間免震層を備え、中間免震層を境に上部構造体と下部構造体を備えていればよく、特に適用対象構造物を中高層建物に限定しなくてもよい。
また、上部構造体や下部構造体に制震装置などを設けてもよい。
さらに、中間免震層2の最大層間変位量を制限(規制)するストッパー(変形抑制機構)を備えて構成してもよい。
例えば、図8に示すように、エレベータシャフト、階段等の上部構造体3から中間免震層2に吊り下げる必要がある構造体(上部構造体3から下方に突出する構造体:変形抑制機構)5を、想定外の大入力時に、下部構造体4から立ち上がる構造体(変形抑制機構)6に衝突させ、構造体5が構造体6にぶつかって止まることによって中間免震層2の最大層間変位量を制限するように構成してもよい。この場合には、他用途、他目的の構造体を利用するなどして変形抑制機構を構成することができる。
1 制震構造物
2 中間免震層
3 上部構造体
4 下部構造体
5 上部構造体から吊り下げる構造体(変形抑制機構)
6 下部構造体から立ち上がる構造体(変形抑制機構)

Claims (5)

  1. 中間免震層よりも上方の上部構造体の質量をm、下方の下部構造体の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下であり、
    平面で直交するX,Yの二方向の少なくとも一方の前記上部構造体と前記下部構造体を剛結した剛結構造物全体の固有周期(全)と、前記中間免震層及び前記上部構造体の固有周期(上部免震)と、前記下部構造体の固有周期(下部)とが、
    (全)>(上部免震)>(下部)
    の関係を満たし、
    前記上部構造体をTMDとして利用するように構成されており
    前記中間免震層に設けられ、前記中間免震層の層変形を制御するオイルダンパとして、減衰力がハードニングするハードニングオイルダンパを備える、
    制震構造物。
  2. 中間免震層よりも上方の上部構造体の質量をm、下方の下部構造体の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下であり、
    前記上部構造体をTMDとして利用するように構成されており、
    前記中間免震層に設けられ、前記中間免震層の層変形を制御するオイルダンパとして、減衰力がハードニングするハードニングオイルダンパを備える、
    制震構造物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の制震構造物を制御する方法であって、
    前記上部構造体と前記下部構造体の相対速度が所定の相対速度に達した時点で、前記中間免震層に設けられ、前記中間免震層の層間変形を制御するオイルダンパの減衰力を、前記所定の相対速度以下に制限するように制御する、
    制震構造物の制御方法。
  4. 前記上部構造体から吊り下げる構造体と前記下部構造体から立ち上がる構造体とを変形抑制機構として利用し、前記上部構造体から吊り下げる構造体を、前記下部構造体から立ち上げた構造体にぶつけることで、想定外の大入力時に前記中間免震層の最大層間変位量を制限する、
    請求項3に記載の制震構造物の制御方法。
  5. 中間免震層よりも上方の上部構造体の質量をm、下方の下部構造体の質量をMとしたとき、質量比m/Mが10%以上、100%以下であり、
    平面で直交するX,Yの二方向の少なくとも一方の前記上部構造体と前記下部構造体を剛結した剛結構造物全体の固有周期T(全)と、前記中間免震層及び前記上部構造体の固有周期T(上部免震)と、前記下部構造体の固有周期T(下部)とが、
    T(全)>T(上部免震)>T(下部)
    の関係を満たすように前記中間免震層の剛性を調節し、
    前記上部構造体をTMDとして利用するように構成する、
    制震構造物の設計方法。
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