JP7368802B2 - 重金属分離方法および金属回収方法 - Google Patents
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Description
複数の金属種を含む原料を溶解して得たアルカリ溶液または、原料がアルカリ性溶液である原料溶液において、所定の金属種に応じて、金属錯体を形成することにより、重金属との分離が可能となることを見出した。この知見に基づいて、以下の構成を想到した。
金属Mの錯体と、前記金属Mとは異なる重金属と、が溶解されたアルカリ性溶液と、マグネシウム化合物とを接触させ、前記金属Mの錯体を含有する前記アルカリ性溶液から前記重金属を分離するマグネシウム化合物接触工程を有する、重金属分離方法である。
前記マグネシウム化合物接触工程前の前記アルカリ性溶液とアパタイトとを接触させ、前記金属Mの錯体を含有する前記アルカリ性溶液から前記重金属を分離するアパタイト接触工程を有する。
前記アパタイト接触工程において分離される前記重金属は鉛を含み、前記マグネシウム化合物接触工程において分離される前記重金属はヒ素を含む。
前記アパタイト接触工程の前に、前記重金属を含有する銅含有物中の銅を、2価銅のアンミン錯体を含有するアルカリ性溶液中に浸出させる際に、銅と2価銅のアンミン錯体とを1価銅のアンミン錯体へと変化させ且つ該1価銅のアンミン錯体と前記重金属とを含む前記アルカリ性溶液を得る浸出工程を有する。
前記重金属は、鉛、ヒ素およびアンチモンのうち少なくともいずれかを含む。
浸出工程では、複数の金属種を含む固体原料をアルカリにて溶解する。原料が液体である場合には、アルカリ等を添加して液調製を行えばよい。固体原料は、非鉄製錬の工程から発生する中間産物として、粗銅、残さ等があり、産業廃棄物として、廃銅、廃電子部品等がある。
詳しく言うと、以下の浸出反応が生じる。
Cu→[Cu(NH3)2]++e-
以下の反応により、この浸出反応が促進される。
[Cu(NH3)4]2++e-→[Cu(NH3)2]+
その結果、本工程での反応は以下のようにまとめられる。
Cu+[Cu(NH3)4]2+=2[Cu(NH3)2]+
非鉄製錬工程の中間産物である粗銅を用い、該粗銅の浸出試験を行った。
5MのNH3、4MのNH4Cl、1MのCuOからなる浸出液20mLをスクリュー管に入れ、粗銅粉(ヒ素、アンチモン、鉛を含む)0.3gを添加し、室温(24.5~26.0℃)にてスターラーで4日間撹拌し、浸出工程後にアルカリ性溶液を得た。アルカリ性溶液中では、銅が溶解していることから銅錯体が形成されている。その後、固液分離を行い、液側の組成分析をICPで行い、元粗銅粉(ヒ素、アンチモン、鉛を含む)の事前に測定した組成値を100として、浸出率(%)を求めた。結果、銅100%、ヒ素55%、ニッケル93%、鉛4%、アンチモン7%、スズ1%であった。このように、複数の金属種を含む粗銅粉(ヒ素、アンチモン、鉛を含む)から各金属を浸出できることが分かった。
本工程では、浸出工程後に得られたアルカリ性溶液とアパタイトとを接触させ、金属Mの錯体を含有するアルカリ性溶液から重金属を分離する。
(1)以下の4種類の吸着剤を作製すべく、以下の作業を行った。
吸着剤1:リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト:和光純薬株式会社製)30g
吸着剤2:リン酸カルシウム27g+酸化マグネシウム(MgO)3g
吸着剤3:リン酸カルシウム27g+酸化鉄(Fe3O4)3g
吸着剤4:リン酸カルシウム27g+アルミナ(Al2O3)3g
なお、ヒドロキシアパタイトはアルカリ性溶液中では安定するため、ヒドロキシアパタイトであるのが好適である。
(2)各材料を秤量し、水を加えて混合し、ペースト化した。
(3)ペーストを、90℃で3時間予備乾燥させた後、450℃で10時間焼成し、その後室温まで徐冷した。
(4)焼成後の塊を乳鉢で砕き、篩別を行い、1~4.5mmの粒群を各吸着剤として採用した。なお、1mm以下の粒群に対し、XRD測定を行った。
アパタイト接触工程の有意性を調べるのに際し、浸出試験を行った。
(1)5MのNH3、4MのNH4Cl、1MのCuOからなる溶液約100mLに対し、粗銅粉(ヒ素、アンチモン、鉛を含む)12gを添加し、室温(18~19℃)にてボールミル架台で25時間撹拌した。
(2)131番ろ紙にてろ過を行った。なお、ろ液の酸化防止のためにArガスを吹き付けながら、大気雰囲気下でろ過を行った。
本発明者らは、上記の知見に基づき、アパタイトにおける有用性とは別に、マグネシウム化合物の添加により重金属を分離した例を以下に示す。
本工程を反映させた試験例としては以下のとおりである。
(1)5MのNH3、4MのNH4Cl、1MのCuOからなる溶液約100mLに対し、粗銅粉(ヒ素、アンチモン、鉛を含む)12gを添加し、室温にてボールミル架台で25時間撹拌した。その後、20mLのスクリュー管2本の各々に対し、撹拌後に得られたアルカリ性溶液約5mLを採取した。
(2)スクリュー管2本の各々に対し、0.5M相当量のMgCl2粉末、CaCl2粉末(参照用)を添加した。
(3)スターラーにて内容物を約1日間撹拌した後、マイレクス(登録商標)フィルター(0.2μm)にてろ過を行った。
(4)ろ液に濃硫酸を加え、溶液を調製してICP分析を行った。
このICP分析の結果を示すのが以下の表2である。
・MgCl2粉末、CaCl2粉末共に、アルカリ性溶液にはほぼ全量溶解した。
・表2に示すように、MgCl2粉末を添加した場合、Asを99%分離できた。
・表2に示すように、MgCl2粉末を添加した場合、Asに比べてPbの分離度合いが低いが、これは、先の(アパタイト接触工程)にて組合せてさらに低減が可能である。
表2から得た知見に基づき、重金属の分離に有用なマグネシウムのうち、具体的にどのマグネシウム化合物が有用なのかを調べる試験を行った。その試験例は以下のとおりである。
(2)131番ろ紙にてろ過を行った。なお、ろ液の酸化防止のためにArガスを吹き付けながら、大気雰囲気下でろ過を行った。
同様に、0.5M相当の上記MgCl2と、振とうして均一化したアルカリ性溶液20mLとを、50mLのスクリュー管にセットし、蓋をして、室温(24.5~25.6℃)にてボールミル架台で24時間撹拌した。こうして得られたアルカリ性溶液は、後述の表3中の試験液a-2(MgCl2)である。
このICP分析の結果を示すのが以下の表3である。
また、アパタイトの添加なし(添加量0g)にヒ素を顕著に分離できることも分かった。
上記の各工程により得た液は、銅錯体が溶解状態であることから、ろ過等によっても液中に残存する。ろ過後のアルカリ性溶液は、電解液の原液となり、必要に応じて、電解処理に必要な濃度調整、電極表面の平滑化のための各種添加剤を加えて電解液(電解給液)となる。電解処理に用いる装置、条件は、通常のものを用いればよく、適宜設定すればよい。このように電解析出の処理をすることで99.99%以上の純度の電解銅が回収可能である。
以下にその例を示す。本例は、浸出から始め、電解析出までを通しで行った。
(1、浸出工程)5MのNH3、4MのNH4Cl、1MのCuOからなるアルカリ性溶液約250mLに対し、粗銅粉(ヒ素、アンチモン、鉛を含む)30gを添加し、室温(24.0±0.5℃)にてボールミル架台で23.5時間撹拌した。
(2、浸出-ろ過)撹拌後、窒素置換したグローブボックス内に移して静置した。撹拌終了から30分後にオムニポア(登録商標)メンブレンフィルター(0.2μm)を用い、25分間吸引ろ過した。ろ液は別の250mLのメディウム瓶に入れた。ろ液の一部をスクリュー管に密封した。
(4、ろ過)撹拌後、窒素置換したグローブボックス内に再び移して静置した。撹拌終了から30分後にオムニポア(登録商標)メンブレンフィルター(0.2μm)を用い、3時間40分間吸引ろ過した。ろ液は別の250mLのメディウム瓶に入れた。ろ液の一部をスクリュー管に密封した。
(6)撹拌後、窒素置換したグローブボックス内に再び移して静置した。撹拌終了から30分後にオムニポア(登録商標)メンブレンフィルター(0.2μm)を用い、1時間23分間吸引ろ過した。ろ液は別の250mLのメディウム瓶に入れた。残渣は、アンモニア洗浄液と純水とで、液量合計10mL程度になる程度に軽く洗浄した。ろ液および残渣の一部をスクリュー管に密封した。
これらのICP分析の結果を示すのが以下の表4~表6である。
本実施形態においては重金属を含有する銅含有物を例示した。この銅含有物としては例えば特許文献1に記載された電子基板等の廃電子部品が挙げられるが、限定は無い。また、銅含有物以外であっても構わず、錯体化可能な金属Mであれば限定は無い。
Claims (4)
- 少なくとも鉛とヒ素とを含む重金属を含有する銅含有物中の銅を、2価銅のアンミン錯体を含有するアルカリ性溶液中に浸出させる際に、前記銅と前記2価銅のアンミン錯体とを1価銅のアンミン錯体へと変化させ且つ該1価銅のアンミン錯体と前記重金属とを含む、pHが8~11のアルカリ性溶液を得る浸出工程と、
前記浸出工程後に得られるアルカリ性溶液と、酸化マグネシウムおよび塩化マグネシウムの少なくともいずれかである固体のマグネシウム化合物とを接触させ、前記アルカリ性溶液から、ヒ素を含む前記重金属を分離するマグネシウム化合物接触工程と、
を有し、
前記マグネシウム化合物は酸化マグネシウムである、重金属分離方法。 - 少なくとも鉛とヒ素とを含む重金属を含有する銅含有物中の銅を、2価銅のアンミン錯体を含有するアルカリ性溶液中に浸出させる際に、前記銅と前記2価銅のアンミン錯体とを1価銅のアンミン錯体へと変化させ且つ該1価銅のアンミン錯体と前記重金属とを含む、pHが8~11のアルカリ性溶液を得る浸出工程と、
前記浸出工程後に得られるアルカリ性溶液と、酸化マグネシウムおよび塩化マグネシウムの少なくともいずれかである固体のマグネシウム化合物とを接触させ、前記アルカリ性溶液から、ヒ素を含む前記重金属を分離するマグネシウム化合物接触工程と、
を有し、
前記マグネシウム化合物は少なくとも塩化マグネシウムを含み、
塩化マグネシウムの添加量は、前記浸出工程で得られる前記アルカリ性溶液中のヒ素に対する化学量論比で25倍超え且つ100倍以下とする、重金属分離方法。 - 少なくとも鉛とヒ素とを含む重金属を含有する銅含有物中の銅を、2価銅のアンミン錯体を含有するアルカリ性溶液中に浸出させる際に、前記銅と前記2価銅のアンミン錯体とを1価銅のアンミン錯体へと変化させ且つ該1価銅のアンミン錯体と前記重金属とを含む、pHが8~11のアルカリ性溶液を得る浸出工程と、
前記浸出工程後に得られるアルカリ性溶液と、酸化マグネシウムおよび塩化マグネシウムの少なくともいずれかである固体のマグネシウム化合物とを接触させ、前記アルカリ性溶液から、ヒ素を含む前記重金属を分離するマグネシウム化合物接触工程と、
を有し、
前記浸出工程の後且つ前記マグネシウム化合物接触工程の前に、前記アルカリ性溶液と、リン酸カルシウムを含有するアパタイトとを接触させ、前記アルカリ性溶液から、鉛を含む前記重金属を分離するアパタイト接触工程を更に有する、重金属分離方法。 - 請求項1~3のいずれかに記載の重金属分離方法を経て得た浄液から銅を電解析出させて、99.99%以上の純度の電解銅を得る、金属回収方法。
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