JP7359382B2 - 中空糸膜、中空糸膜モジュール、廃水処理装置及び廃水処理方法 - Google Patents
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Description
本発明は、小型化及び省エネルギー化が可能な中空糸膜、中空糸膜モジュール、廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
[1] 廃水中の微生物又は菌に由来する微生物層が表面に形成される、廃水処理用の中空糸膜であって、多孔質層及び非多孔質層を含む複層構造とされているとともに、最外層に前記多孔質層が配置されており、前記中空糸膜の酸素透過量が30g/m2・d以上である、中空糸膜。
[2] 前記中空糸膜の水蒸気透過量が15g/m2・d以下である、前記[1]の中空糸膜。
[3] 前記多孔質層が複数設けられ、前記非多孔質層が前記複数の多孔質層の間に配置されている、前記[1]又は[2]の中空糸膜。
[4] 前記多孔質層がポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びフッ素系樹脂から選択される1種以上を含む材料からなる、前記[1]~[3]のいずれか1つの中空糸膜。
[5] 前記非多孔質層がスチレン系樹脂を含む材料からなる、前記[1]~[4]のいずれか1つの中空糸膜。
[6] 前記[1]~[5]のいずれか1つの中空糸膜を含む、中空糸膜モジュール。
[7] 前記[6]の中空糸膜モジュールを含む、廃水処理装置。
[8] 前記[6]の中空糸膜モジュール、又は、前記[7]の廃水処理装置を用いて廃水を処理する廃水処理方法であって、前記中空糸膜の表面に、廃水中の微生物又は菌に由来する前記微生物層を形成させた後、前記中空糸膜の中空部に酸素を含む気体を供給する、廃水処理方法。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
以下、本発明の中空糸膜の一実施形態について詳述する。
図1、2に示すように、本実施形態の中空糸膜1は、廃水処理中において、廃水中の微生物又は菌に由来する微生物層6が表面に形成されるものである。
図示例の中空糸膜1は、2層の多孔質層2,4と1層の非多孔質層3を含む複層構造とされているとともに、最外層に多孔質層4が配置されている。図示例においては、2層の多孔質層2,4の間に非多孔質層3が配置された3層構造とされている。以下の明細書において、最内層に配置された多孔質層2を「第1多孔質層2」ともいい、最外層に配置された多孔質層4を「第2多孔質層4」ともいう。図示例において、微生物層6は、中空糸膜1の表面、すなわち、第2多孔質層4の表面(非多孔質層3と接する側とは反対側の面)4aに形成される。
本実施形態の中空糸膜1において、第1多孔質層2及び第2多孔質層4の2層の多孔質層は、非多孔質層3を介して同心状に配置されている。また、図示を省略するが、第1多孔質層2及び第2多孔質層4は、それぞれ、複数の細孔を有する膜から構成されており、これら多孔質層2,4の全周にわたって細孔が形成されている。
また、本実施形態で説明する「細孔」とは、三次元的な構造を形成している膜基材の隙間の空間を表し、内面側から表面(外面)側に向けて酸素が透過する際の、酸素の通り道となる部分を意味する。
第1多孔質層2及び第2多孔質層4は、同じ材料からなるものでもよいし、異なる材料からなるものでもよい。特に、第1多孔質層2及び第2多孔質層4は、それぞれポリオレフィン系樹脂を含む材料からなることが好ましい。
また、上記の観点からは、各多孔質層の合計の平均膜厚Dpは、15μm以上90μm以下がより好ましく、20μm以上80μm以下がさらに好ましい。
第2多孔質層4の表面4aが凹凸構造であることで、廃水中に存在する微生物又は菌等が付着しやすくなる効果が得られる。また、凹凸構造のアンカー効果により、第2多孔質層4の表面4aから微生物層6が剥がれにくくなり、廃水処理中に微生物層6が脱落するのを抑制できる。
また、上記の観点からは、多孔質層2,4における細孔の平均細孔径は、それぞれ0.03μm以上4μm以下がより好ましく、0.05μm以上3μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の中空糸膜1において、非多孔質層3は、第1多孔質層2と第2多孔質層4との間に単層で設けられている。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。
他のモノマーとしては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、アクリロニトリル等が挙げられる。
また、上記の観点から、非多孔質層3の平均膜厚は、0.5μm以上8μm以下がより好ましく、1μm以上6μm以下がさらに好ましい。
非多孔質層3の平均膜厚Dnと多孔質層2,4の平均膜厚Dpとの関係が上記式で表される関係を満たすことで、多孔質層2,4及び非多孔質層3の全体膜厚に対する非多孔質層3の膜厚の割合が小さくなる。したがって、実使用に適した十分な機械的強度を確保しながら非多孔質層を薄膜化できるので、酸素透過性をより高められる。
また、上記の観点からは、非多孔質層3の合計の平均膜厚Dnと多孔質層2,4の合計の平均膜厚Dpとの関係は、次式{0.007≦Dn/Dp≦0.9}で表される関係がより好ましく、次式{0.01≦Dn/Dp≦0.8}で表される関係がさらに好ましい。
微生物層6は、例えば中空糸膜1を後述する中空糸膜モジュールとして廃水処理に使用する際に、別の廃水処理場等で既に使用している活性汚泥を種として微生物又は菌を増殖処理し、所定濃度としたものに中空糸膜モジュールを浸漬させることで、微生物又は菌に由来して、中空糸膜1の表面(第2多孔質層4の表面4a)に形成されるものである。
中空糸膜1の外形状としては特に限定されず、例えば略円筒状に構成し、上記のように、細孔を有する第2多孔質層4が最外層に配置され、この第2多孔質層4を覆うように微生物層6が形成されるように構成することができる。ここで、本実施形態で説明する中空糸膜1の外形状とは、微生物層6を除いた状態での外形状、及び、第2多孔質層4の表面に微生物層6が形成された状態での外形状の両方を含む。
なお、本実施形態で説明する「略円筒状」とは、長手方向に垂直な任意の断面の形状が、例えば、真円形、卵形、長円形、楕円形等のオーバル形である立体形状を意味する。
また、中空糸膜1の平均外径Dは、第2多孔質層4の表面4aに形成される微生物層6が剥がれ落ちない程度の表面積を確保できる寸法であることがより好ましい。
中空糸膜1の酸素透過性は、中空糸膜全体における、酸素を透過させる性能を示す指標であり、例えば、単位膜面積あたりで1日(24hr)に透過する酸素の量(酸素透過量、単位:g/m2・d)で表すことができる。
中空糸膜1の酸素透過量は、30g/m2・d以上である。中空糸膜1の酸素透過量が30g/m2・d以上であることで、中空糸膜1の表面への微生物層6の形成や成長が促進される。よって、中空糸膜1の本数を減らしても十分に廃水を処理できるので、小型化を可能にできる。加えて、同じ膜面積であれば、消費エネルギーを減らすことができるので、省エネルギー化を可能にできる。
また、上記の観点からは、中空糸膜1の酸素透過量は、35g/m2・d以上がより好ましく、40g/m2・d以上がさらに好ましい。好気処理と嫌気処理とをワンプロセスで行う観点からは、中空糸膜1の酸素透過量は、200g/m2・d以下が好ましく、150g/m2・d以下がより好ましい。
中空糸膜1の水蒸気透過量は、15g/m2・d以下であることが好ましい。水蒸気透過量が高くなるということは、第2多孔質層4の表面4a側から第1多孔質層2の内面2bに向けて透過する水蒸気(水)の量が増えることを意味する。水蒸気透過量が高くなると、第1多孔質層2の内面2b側から第2多孔質層4の表面4aに向けて酸素が透過しにくくなり、微生物層6の形成や成長が妨げられる傾向にある。そのため、中空糸膜1の内部に侵入した水蒸気(水)を除去する必要があり、消費エネルギーや作業の手間が増える。中空糸膜1の水蒸気透過量が15g/m2・d以下であれば、中空糸膜1の酸素透過性を良好に維持できる。また、中空糸膜1の内部に侵入した水蒸気(水)を除去する工程(除去工程)が必要でなくなるか、除去工程を行う場合でもその回数を軽減できるので、省エネルギー化をより促進できるとともに、作業の手間も省ける。
また、上記の観点からは、中空糸膜1の水蒸気透過量は、10g/m2・d以下が好ましい。
中空糸膜1は、例えば紡糸工程と延伸工程により製造できる。紡糸工程と延伸工程との間に、アニール工程を行うことが好ましい。
図示例のように、1層の非多孔質層3を2層の多孔質層2,4で挟みこんだ3層構造である中空糸膜1を製造する場合、最内層ノズル部、中間層ノズル部、最外層ノズル部が同心円状に配された複合ノズル口金を用い、紡糸工程を行う。具体的には、最内層ノズル部には、第1多孔質層2を形成する材料を溶融状態で供給する。中間層ノズル部には、非多孔質層3を形成する材料を溶融状態で供給する。最外層ノズル部には、第2多孔質層4を形成する材料を溶融状態で供給する。ついで、各材料を各ノズル部から押し出し、巻き取る。
各材料押し出す際の吐出温度は、各材料がそれぞれ十分に溶融し、紡糸可能な温度であればよい。
押出速度と巻取速度を適宜調節しつつ、未延伸状態で冷却固化することにより、中空糸膜前駆体が得られる。中空糸膜前駆体は、1層の未延伸の非多孔質層前駆体が、非多孔質状態である2層の多孔質層前駆体で挟まれた3層構造を有する。
紡糸工程で得られた中空糸膜前駆体は、延伸工程の前に各材料の融点以下で、定長熱処理(アニール処理)することが好ましい。定長熱処理は、多孔質層2,4を形成する材料としてポリエチレンを用いた場合には、105℃以上130℃以下で、8~16時間行うことが好ましい。定長熱処理の温度が105℃以上であれば、品質の良好な中空糸膜1が得られやすい。定長熱処理の温度が130℃以下であれば、十分な伸度が得られやすく、延伸時の安定性が向上し、高倍率での延伸が容易になる。また、処理時聞が8時間以上であれば、品質の良好な中空糸膜1が得られやすい。
延伸工程では、紡糸工程で得られた中空糸膜前駆体又はアニール処理された中空糸膜前駆体を、多孔質層2,4を形成する材料のビカット軟化点以下の延伸温度Tで延伸することが好ましい。延伸温度Tが多孔質層2,4を形成する材料のビカット軟化点以下であれば、中空糸膜1の孔径を拡大できる。延伸温度Tがビカット軟化点を超えると、結晶ラメラ構造が崩れやすくなり、逆に一旦開孔された多孔質部が閉塞する場合がある。
冷延伸は、比較的低い温度下で膜の構造破壊を起きせ、ミクロなクラッキングを発生させる延伸である。冷延伸の温度は、0℃から、ビカット軟化点-20(℃)よりも低い温度までの範囲内が好ましい。
以上説明したように、本実施形態の中空糸膜1は多孔質層2,4及び非多孔質層3を含む複層構造を採用しているので、多孔質層2,4による高い酸素透過性、及び、非多孔質層3による高い膜強度を両立でき、優れた水処理効率及び機械的特性が得られる。また、廃水処理中に中空糸膜1の表面に微生物層6が形成され、この微生物層6の膜厚方向で酸素が効果的に拡散溶解し、さらに、酸素が豊富な好気処理領域6Aと、酸素が少ない嫌気処理領域6Bとが形成されるので、好気処理と嫌気処理とをワンプロセスで行うことが可能になる。しかも、本実施形態の中空糸膜1は、酸素透過量が30g/m2・d以上であるため、従来のMABRよりもさらに小型化及び省エネルギー化が可能である。特に、多孔質層2,4がポリオレフィン樹脂を含む材料からなり、かつ非多孔質層3がスチレン系樹脂を含む材料からなる場合、中空糸膜1の酸素透過性がより向上し、酸素透過量が高まる。また、水蒸気透過量が低くなりやすい。
本発明の中空糸膜は上述したものに限定されない。
例えば、中空糸膜は1層の多孔質層を含むものでもよいし、3層以上の多孔質層を含むものでもよい。ただし、いずれの場合も最外層に多孔質層が配置される。
また、中空糸膜は2層以上の非多孔質層を含むものでもよい。
さらに、中空糸膜は、多孔質層、非多孔質層及び微生物層に加えて、これら以外の層(他の層)を含んでいてもよい。他の層を備える構成を採用する場合には、他の層を高い酸素透過性を有する層とすることが、中空糸膜全体の酸素透過性をより高める観点から好ましい。
突状部7は、表面4aにおいて、少なくとも1箇所に設けられていればよい。図示例においては、突状部7が、表面4aの12箇所に外周方向で等間隔に配置されている。なお、図5においては、中空糸膜1Aを構成する各層の図示を省略しているが、中空糸膜1Aは図1,2に示す中空糸膜1と同様の層構造を有している。
中空糸膜1Aにおける最外層(多孔質層)の表面4aに、中空糸膜1Aの長手方向に沿って延在する突状部7を有する構成を採用することで、中空糸膜1Aを複数で用いて、後述するような中空糸膜シート状物を構成した場合に、複数の中空糸膜1A同士を十分に離間できる。これにより、複数の各中空糸膜1Aの有効表面積も十分に確保され、また、酸素透過抵抗も均一となり、より効率よく廃水処理を行うことが可能になる。 加えて、中空糸膜1Aにおける表面4aと、廃水処理中に表面4aに形成される微生物層との接触面積が拡大されることで、より強固に微生物層を保持でき、特に、中空糸膜1Aの使用開始初期における微生物層の形成が早期化される効果が得られる。
図6に示す本実施形態の中空糸膜モジュール10は、本実施形態の中空糸膜1を含むものである。
また、本実施形態の廃水処理装置100は、中空糸膜モジュール10を含んで構成されるものである。
以下、本実施形態の中空糸膜モジュール10及び廃水処理装置100について詳述する。
図6に示すように、本実施形態の中空糸膜モジュール10は、ハウジング12(上部ハウジング12A及び下部ハウジング12B)、複数の中空糸膜1(又は中空糸膜1A)をシート状とした中空糸膜シート状物11から概略構成されている。
また、図示例では上部ハウジング12Aに気体供給ライン120が接続され、酸素又は空気が上部ハウジング12Aの内部に供給されるように構成されている。
本実施形態の廃水処理装置100は、本実施形態の中空糸膜モジュール10を単体もしくは複数のユニットの状態で含んで概略構成される。図示例の廃水処理装置100は、処理槽110の内部に中空糸膜モジュール10が収容されてなる。
なお、複数の中空糸膜モジュールの集合体を「中空糸膜モジュールユニット」ともいう。
本実施形態の中空糸膜モジュール10によれば、上述した本発明の中空糸膜1(又は中空糸膜1A)を含むものなので、上記同様、多孔質層による高い酸素透過性、及び、非多孔質層による高い膜強度を両立でき、優れた水処理効率及び機械的特性が得られるとともに、好気処理と嫌気処理とをワンプロセスで行うことが可能になる。しかも、従来のMABRよりもさらに小型化及び省エネルギー化が可能である。
本実施形態の廃水処理方法は、図6に示すような、本実施形態の中空糸膜モジュール10、又は、本実施形態の廃水処理装置100を用いて廃水を処理する方法である。
その後、図示略の分離膜等による固液分離法を用いることで、微生物層の剥離分を含むスラッジを回収し、廃水処理が完了する。
本実施形態の廃水処理方法によれば、上述した本発明の中空糸膜モジュール10又は廃水処理装置100を用い、中空糸膜1の表面4aに微生物層6を形成させた後、中空糸膜1の内面2b側の中空部5から酸素を含む気体を供給することによって廃水Wを処理する方法を採用している。これにより、上記同様、従来は別のプロセスで行っていた好気処理及び嫌気処理の両方をワンプロセスで実施できるので、処理効率に優れるとともに、装置を小型化することも可能になる。しかも、従来のMABRよりもさらに小型化及び省エネルギー化が可能である。
各種測定は以下の通りである。
<多孔質層及び非多孔質層の平均膜厚の測定>
中空糸膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、この画像を解析して多孔質層及び非多孔質層の膜厚をそれぞれ5箇所で測定し、その平均値を求めた。
SEMを用いて多孔質層の外表面部分を観察し、30個の細孔を無作為に選び、各細孔の最長径を測定し、その平均値を求めた。
微生物層が形成される前の中空糸膜を長手方向に対して垂直な任意の5箇所の面で切断し、投影機を用いて各切断面の外縁を内接する最少の円の直径を測定し、その平均値を求めた。
中空糸膜の周りを水で満たし、水の酸素溶解濃度が0.2mg/L以下になるまで窒素曝気を行った。その後、水を循環ポンプで循環させながら、中空糸膜の内部に50kPaの供給圧力で空気を24時間、送気した。中空糸膜の内部への空気の送気開始時の水の酸素溶解濃度と、24時間経過後の水の酸素溶解濃度とを測定し、その経時変化から中空糸膜の酸素透過量を求めた。
中空糸膜の内部を25℃、100kPaの供給圧力の水で満たした後、中空糸膜の外部から-95kPaで24時間、吸引したときに、中空糸膜を透過した水蒸気量を測定し、これを中空糸膜の水蒸気透過量とした。
<中空糸膜の製造>
最内層ノズル部、中間層ノズル部、最外層ノズル部が同心円状に配された複合ノズル口金を用い、以下のようにして紡糸工程を行った。
最内層ノズル部と最外層ノズル部には、多孔質層を形成するための樹脂として、チーグラーナッタ一系触媒を用いて単独重合により製造された高密度ポリエチレン(旭化成株式会社製、商品名「サンテック(登録商標)B161」)を供給した。
一方、中間層ノズル部には、非多孔質層を形成するための樹脂として、ポリスチレン(三菱ケミカル株式会社製、商品名「ゼラス(登録商標)MC721APR5」)を供給した。
そして、吐出口温度190℃、巻取り速度145m/分で溶融紡糸し、得られた中空糸膜前駆体をボビンに巻き取った(紡糸工程)。
紡糸工程で得られた中空糸膜前駆体をボビンに巻いた状態で、108℃、12時間の条件で定長熱処理(アニール処理)を行った(アニール工程)。
アニール工程の後、連続して、常温(20℃)下で総延伸倍率が150%の冷延伸を行い、引き続き110℃に加熱された加熱炉中で総延伸倍率が480%になるまで熱延伸を行った。さらに、117℃に加熱された加熱炉中で総延伸倍率が300%になるように緩和熱セットを行い(延伸工程)、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の平均外径Dは0.28mm(280μm)であった。また、多孔質層の合計の平均膜厚Dpは40μmであり、非多孔質層の平均膜厚Dnは1μmであり、Dn/Dp=0.025であった。また、第1多孔質層の細孔の平均細孔径は0.05μmであり、第2多孔質層の細孔の平均細孔径は0.05μmであった。
得られた中空糸膜について、酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1に示す。
得られた中空糸膜の最外層の表面に対し、MLSS(Mixed Liquor Suspended Solids:活性汚泥浮遊物)が2500mg/Lである活性汚泥を、中空糸膜の長手方向に対して平行に、流速2cm/sで30日間循環させながら接触させることにより、中空糸膜の表面に微生物層を形成した。
微生物層を形成する前と、活性汚泥を30日間接触させて微生物層を形成した後の中空糸膜について酸素透過量を測定し、下記式より酸素透過量の保持率を求めた。結果を表1に示す。
酸素透過量の保持率[%]=微生物層を形成した後の中空糸の膜酸素透過量/微生物層を形成する前の中空糸の膜酸素透過量
中空糸膜の最外層の表面に対し、初期MLSS(Mixed Liquor Suspended Solids:活性汚泥浮遊物)が180mg/Lである活性汚泥を、中空糸膜の長手方向に対して平行に、流速4cm/sで65日間循環させながら接触させることにより、中空糸膜の表面に微生物層を形成した。
活性汚泥の接触を開始してから21日、42日及び65日経過後の中空糸膜について、酸素消費速度(OUR)を以下のようにして測定した。結果を図7に示す。
圧力センサーが搭載された装置に中空糸膜を設置し、中空糸膜の両端を開放した状態で中空糸膜の内部に純酸素を供給して中空糸膜の内部を純酸素で満たし、加圧した状態で中空糸膜の両端を封止した。酸素は第1多孔質層から非多孔質層を経て、微生物層が形成される第2多孔質層へと透過されるため、中空糸膜内の圧力は低下する。この圧力低下を圧力センサーでモニタリングすることにより酸素消費速度(OUR)を測定した。
最内層ノズル部と最外層ノズル部には、多孔質層を形成するための樹脂として、チーグラーナッタ一系触媒を用いて単独重合により製造された高密度ポリエチレン(旭化成株式会社製、商品名「サンテック(登録商標)B161」)を供給した。
一方、中間層ノズル部には、非多孔質層を形成するための樹脂として、ポリウレタン(Lubrizol社製、商品名「Tecoflex EG-80A」)を供給した。
そして、吐出口温度190℃、巻取り速度180m/分で溶融紡糸し、得られた中空糸膜前駆体をボビンに巻き取った(紡糸工程)。
紡糸工程で得られた中空糸膜前駆体をボビンに巻いた状態で、108℃、12時間の条件で定長熱処理(アニール処理)を行った(アニール工程)。
アニール工程の後、連続して、常温(20℃)下で総延伸倍率が150%の冷延伸を行い、引き続き103℃に加熱された加熱炉中で総延伸倍率が225%になるまで熱延伸を行った。さらに、124℃に加熱された加熱炉中で総延伸倍率が200%になるように緩和熱セットを行い(延伸工程)、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の平均外径Dは0.28mm(280μm)であった。また、多孔質層の合計の平均膜厚Dpは40μmであり、非多孔質層の平均膜厚Dnは1μmであり、Dn/Dp=0.025であった。また、第1多孔質層の細孔の平均細孔径は0.05μmであり、第2多孔質層の細孔の平均細孔径は0.05μmであった。
得られた中空糸膜について、酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、酸素透過量の保持率及び酸素消費速度(OUR)を測定した。結果を表1、図7に示す。
最内層ノズル部と最外層ノズル部には、多孔質層を形成するための樹脂として、チーグラーナッタ一系触媒を用いて単独重合により製造された高密度ポリエチレン(旭化成株式会社製、商品名「サンテック(登録商標)B161」)を供給した。
一方、中間層ノズル部には、非多孔質層を形成するための樹脂として、ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「Harmolex NF324A」)を供給した。
そして、吐出口温度190℃、巻取り速度100m/分で溶融紡糸し、得られた中空糸膜前駆体をボビンに巻き取った(紡糸工程)。
紡糸工程で得られた中空糸膜前駆体をボビンに巻いた状態で、108℃、12時間の条件で定長熱処理(アニール処理)を行った(アニール工程)。
アニール工程の後、連続して、常温(20℃)下で総延伸倍率が150%の冷延伸を行い、引き続き106℃に加熱された加熱炉中で総延伸倍率が620%になるまで熱延伸を行った。さらに、115℃に加熱された加熱炉中で総延伸倍率が400%になるように緩和熱セットを行い(延伸工程)、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の平均外径Dは0.28mm(280μm)であった。また、多孔質層の合計の平均膜厚Dpは40μmであり、非多孔質層の平均膜厚Dnは1μmであり、Dn/Dp=0.025であった。また、第1多孔質層の細孔の平均細孔径は0.05μmであり、第2多孔質層の細孔の平均細孔径は0.05μmであった。
得られた中空糸膜について、酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1に示す。
2 第1多孔質層(多孔質層)
2a 外面
2b 内面
3 非多孔質層
4 第2多孔質層(多孔質層)
4a 表面
4b 内面
5 中空部
6 微生物層
6A 好気処理領域
6B 嫌気処理領域
7 突状部
10 中空糸膜モジュール
11 中空糸膜シート状物
12 ハウジング
12A 上部ハウジング
12B 下部ハウジング
100 廃水処理装置
110 処理槽
111 開口部
Claims (8)
- 廃水中の微生物又は菌に由来する微生物層が表面に形成される、廃水処理用の中空糸膜であって、
多孔質層及び非多孔質層を含む複層構造とされているとともに、最外層に前記多孔質層が配置されており、
前記非多孔質層がスチレン系樹脂を含む材料からなり、
前記中空糸膜の酸素透過量が30g/m2・d以上である、中空糸膜。 - 前記スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを重合してなる重合体、又はスチレン系モノマー及び他のモノマーを重合してなる重合体である、請求項1に記載の中空糸膜。
- 前記中空糸膜の水蒸気透過量が15g/m2・d以下である、請求項1又は2に記載の中空糸膜。
- 前記多孔質層が複数設けられ、前記非多孔質層が前記複数の多孔質層の間に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の中空糸膜。
- 前記多孔質層がポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びフッ素系樹脂から選択される1種以上を含む材料からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の中空糸膜。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の中空糸膜を含む、中空糸膜モジュール。
- 請求項6に記載の中空糸膜モジュールを含む、廃水処理装置。
- 請求項6に記載の中空糸膜モジュール、又は、請求項7に記載の廃水処理装置を用いて廃水を処理する廃水処理方法であって、
前記中空糸膜の表面に、廃水中の微生物又は菌に由来する前記微生物層を形成させた後、前記中空糸膜の中空部に酸素を含む気体を供給する、廃水処理方法。
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