JP7350449B2 - メカニカルシール - Google Patents

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Description

本発明は、メカニカルシールに関する。
被密封流体の漏れを防止するためにメカニカルシールが用いられている。メカニカルシールは、相対回転して摺動面同士が摺動する一対の密封環を備えている。このようなメカニカルシールにおいては、近年、摺動により失われるエネルギーの低減が望まれており、摺動面間の潤滑性向上を図るメカニカルシールが開発されている。
例えば、特許文献1に示されるメカニカルシールは、回転軸とともに回転する第1の密封環と、ハウジングに固定される第2の密封環と、を備え、これら密封環の摺動面同士を摺動させることで外径側の空間に密封される被密封流体が内径側の空間へ漏れることを防止している。また、第2の密封環には、内径側に開口するように切欠き形成された歪制御用凹部が周方向に複数配置されている。被密封流体の圧力が第2の密封環に作用したときには、歪制御用凹部を基点として第2の密封環を変形させ、歪みを生じさせることにより、第2の密封環の摺動面に凹凸が形成されるようになっている。
特開2009-79634号公報(第7頁、第3図)
特許文献1のメカニカルシールによれば、第1の密封環及び第2の密封環の相対回転時には、第2の密封環の摺動面に形成される凸部が第1の密封環の摺動面に摺動する実質的な摺動面として機能し、第2の密封環の摺動面に形成される凹部に被密封流体を導入し且つ摺動面間に排出することで摺動面間に動圧を発生させ、その動圧により摺動面同士を離間させ、該摺動面間に被密封流体を介在させることで潤滑性が向上し、低摩擦化を実現している。しかしながら、特許文献1のメカニカルシールにあっては、歪制御用凹部が大気側である内径側に開口しているため、内径側の空間に存在する塵埃等のコンタミが歪制御用凹部内に侵入して堆積することがあり、コンタミの堆積により歪制御用凹部の変形代が小さくなり、第2の密封環の変形が阻害され、摺動面に有効に凹凸を形成することができない虞があった。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、歪み制御用の凹部にコンタミが侵入することを抑制できるメカニカルシールを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明のメカニカルシールは、
互いに相対摺動する摺動面を備える一対の密封環を有し、被密封流体を封止するメカニカルシールであって、
一方の密封環は、軸方向において前記摺動面とは反対側に周方向に離間しかつ背面側に開口する複数の切欠溝が配置されており、
前記切欠溝は、前記被密封流体側に配置される第1の側板部と、前記第1の側板部から径方向に離間する第2の側板部によって区画されており、
前記第1の側板部と前記被密封流体側の空間との間には、環状の二次シール部材が配置されている。
これによれば、切欠溝を有するため、被密封流体の圧力により一方の密封環が変形するようになっており、摺動面に凹凸を形成することができる。さらに、切欠溝の被密封流体側とは反対側には第2の側板部が設けられているため、被密封流体側とは反対側の空間から切欠溝内にコンタミが侵入することを抑制することができ、切欠溝による一方の密封環の変形代を確保できる
前記切欠溝の開口は、カバー部材によって覆われていてもよい。
これによれば、切欠溝の開口がカバー部材により閉塞されるので切欠溝内へのコンタミの侵入を確実に防ぐことができる。
前記第2の側板部は、前記第1の側板部よりも薄く形成されていてもよい。
これによれば、第2の側板部が第1の側板部よりも構造強度が低いので、径方向において一方の密封環の被密封流体側とは反対側の部位を縮径、或いは、拡径させやすい。
前記切欠溝は、前記一方の密封環の径方向断面における仮想重心よりも前記摺動面側まで延びる形状であるもよい。
これによれば、一方の密封環は、切欠溝が深く形成されることで、切欠溝を区画する摺動面側の部位の軸方向長さが短いので、変形により生じる内部応力を一方の密封環における摺動面に伝達させやすい。
各前記切欠溝は、前記一方の密封環の中心から放射状に延びる基準面を基準として周方向に面対称を成していてもよい。
これによれば、一方の密封環が被密封流体の圧力を受けたときに、基準面を中心として切欠溝の周方向に対称に変形が生じるので、切欠溝の周方向中央部に位置する摺動面を大きく膨出させることができる。
前記一方の密封環は一体形成されていてもよい。
これによれば、一方の密封環は一体形成されており、一方の密封環の単位体積当たりの強度が一定であるため、一方の密封環を確実に変形させることができ、且つ加工しやすい。
本発明の実施例1におけるメカニカルシールの一例を示す側断面図である。 静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。 静止密封環の背面を軸方向から見た図である。 (a)は図3のA-A断面図、(b)は図3のB矢視図である。 静止密封環がハウジング及びシールカバーに取付けられた状態を示す側断面図である。 (a)は静止密封環に被密封流体の圧力が作用する受圧部を示す概略図、(b)は(a)の状態から被密封流体の圧力により静止密封環が縮径した状態を示す概略図である。 静止密封環の薄板部の膨出量を示す概略図である。 図6のC矢視図である。 本発明の実施例2における静止密封環を示す図である。
本発明に係るメカニカルシールを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
実施例1に係る摺動部品につき、図1から図8を参照して説明する。尚、本実施例においては、メカニカルシールを構成する密封環の外径側を被密封液体側(高圧側)、内径側を漏れ側としての大気側(低圧側)として説明する。さらに尚、静止密封環の摺動面側を正面側として説明する。
図1に示される一般産業機械用のメカニカルシール1は、互いに対向する摺動面11,21の外径側から内径側(すなわち大気A側)に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するインサイド型のものであって、被取付機器を構成するハウジング4に固定されたシールカバー5に、回転が規制された状態で設けられた円環状の一方の密封環としての静止密封環10と、回転軸3に固定スリーブ2を介して回転軸3と一体的に回転可能な状態で設けられた円環状の他方の密封環としての回転密封環20と、から主に構成されている。回転密封環20は、固定スリーブ2に対して軸方向に移動可能な状態で取付けられており、図示しないスプリングによって回転密封環20が静止密封環10に向けて軸方向に付勢された状態で、回転軸3に伴い回転することにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とが互いに密接摺動するようになっている。尚、後述するが、静止密封環10の摺動面11は、回転密封環20側(以下、正面側ということもある)の端面10aよりも軸方向に突出して形成されるノーズ部12の端面であり、この摺動面11は、後述する被密封液体Fによる圧力が負荷される前の自然状態では、その全面にわたり軸方向に対して直交する平坦面である。また回転密封環20の摺動面21は、全面にわたり軸方向に対して直交する平坦面である。
静止密封環10及び回転密封環20は、代表的にはSiC(すなわち硬質材料)同士またはSiC(すなわち硬質材料)とカーボン(すなわち軟質材料)の組み合わせで形成されるが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC、SiC-TiC、SiC-TiN等があり、カーボンとしては、炭素質と黒鉛質の混合したカーボンをはじめ、樹脂成形カーボン、焼結カーボン等が利用できる。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、表面改質材料(例えばコーティング材料)、複合材料等も適用可能である。
図2及び図3に示されるように、静止密封環10は、軸方向視で円環状を成す短筒状に形成されており、該静止密封環10における正面側の端面10aには、回転密封環20側に径方向の一部が突出するノーズ部12が環状に形成されている。また、静止密封環10における摺動面11の背面側(すなわち回転密封環20とは反対側)には、該背面側に開口して軸方向に延びる切欠溝13が周方向に複数等配に形成されている。なお本実施例では切欠溝13が周方向に8箇所形成されているが、切欠溝13の数は本実施例に限らない。
言い換えれば、静止密封環10には、周方向に離間して複数配設される切欠溝13の間に、離間して複数配設される肉厚部としての厚板部14と、隣り合う厚板部14同士の正面側の部位を連結し、厚板部14よりも軸方向に肉薄の薄板部15と、薄板部15から軸方向に延び隣り合う厚板部14同士の高圧側の部位を連結し、厚板部14よりも径方向に肉薄の側板部16と、薄板部15から軸方向に延び隣り合う厚板部14同士の低圧側の部位を連結し、厚板部14よりも径方向に肉薄の側板部18と、が形成されている。すなわち、側板部16は、被密封液体F側の空間と切欠溝13とを区画する第1の側板部として機能しており、側板部18は、大気A側の空間と切欠溝13とを区画する第2の側板部として機能している。また側板部16の薄板部15側には、径方向に段差を成す段差部16aが形成されており、この段差部16aとシールカバー5の前面部に縮径された縮径部5a(図1参照。)とが軸方向に係合することで、静止密封環10が抜け止めされている。尚、厚板部14における回転密封環20側の面である正面、及び薄板部15における回転密封環20側の面である正面が面一に形成されており、静止密封環10の端面10aを構成している。また、厚板部14における外周面、及び側板部16における外周面が面一に形成されており、静止密封環10の外周面を構成しているとともに、厚板部14における内周面、及び側板部18における内周面が面一に形成されており、静止密封環10の内周面を構成している。段差部16a、縮径部5aは、静止密封環10が他の手段で抜け止めされていれば、無くてもよく、その場合、静止密封環10は一様の周面でもよく、また、他の凹凸形状となっていてもよい。
図3及び図4に示されるように、切欠溝13は、背面から軸方向に見て矩形状を成している。詳しくは、切欠溝13は、周方向に対向して平行に延びる一対の面13cと、これらの面13cにそれぞれ直交し該面13cの外径側の部位を繋ぐように延びる面13b(すなわち切欠溝13の外径面13b)と、一対の面13cの内径側を繋ぐように円弧状に延びる面13d(すなわち切欠溝13の内径面13d)と、各面13c、面13b及び面13dの前端側の部位を直交して繋ぐように延びる面13e(すなわち切欠溝13の摺動面11側の端面13e、すなわち薄板部15の背面)と、で構成されている。側板部18の被密封液体F(図5参照)とは径方向反対側かつ背面側の端部13a(すなわち側板部18の内径側かつ背面側の端部13a)の周方向の寸法L1は、隣り合う切欠溝13同士の被密封液体F(図5参照)とは径方向反対側かつ背面側の端部14aの周方向の離間寸法L2、言い換えれば厚板部14の内径側かつ背面側端部の周方向に延びる円弧線の寸法L2よりも短くなっている(L1<L2)。尚、側板部18の外径側かつ背面側の端部の周方向の寸法L10(すなわち、面13dの背面側の端部の周方向の寸法L10)は、側板部18の内径側の端部13aの周方向の寸法L1よりも僅かに長くなっている(L1<L10)。さらに尚、側板部18の外径側かつ背面側の端部の周方向の寸法L10は、切欠溝13の内径側かつ背面側の端部の周方向の寸法と同一であるため、以下、単に切欠溝13の周方向の寸法L10とも表す。
また、切欠溝13の軸方向の寸法L3は、厚板部14の軸方向長さの半分よりも長く、且つ切欠溝13の周方向の寸法L10よりも長くなっている(L10<L3)。尚、切欠溝13の形状は切欠溝13の周方向中央部を通るように静止密封環10の中心から放射状に延びる面S(以下単に基準面Sという。図4(b)の二点破線を参照。)を基準として面対称に形成されていればよく、これにより、後述のように、静止密封環10が被密封液体Fの圧力を受けたときに、変形が基準面Sを中心に対称に生じ、切欠溝13を区画する薄板部15の周方向中央部にその変形応力が集中し、また、その変形の向きは摺動面11側に向かうため、変形応力は摺動面11に伝達され、後述する摺動面11の膨出が効率よく生じる。
また、図4(a)に示されるように、静止密封環10には、背面側に開口する切欠溝13が形成されているため、静止密封環10の正面側である摺動面11側に偏った形状となっており、径方向の断面における静止密封環10の仮想重心Gは、静止密封環10の軸方向中央部Cよりも摺動面11側に位置している。尚、仮想重心Gは、径方向に断面における平面における重心を意味し、仮想を付して称している。また、図4(b)に示されるように、切欠溝13の軸方向の寸法L3は、静止密封環10の背面から仮想重心Gまでの軸方向の寸法L9よりも長く形成されている。言い換えると、切欠溝13は背面側の開口Mから仮想重心Gを越えて摺動面11側まで延びる形状となっている。
後述のように、静止密封環10が被密封液体Fの圧力を受けた際には、薄板部15と側板部16との角部近傍を変形起点T(図4(a)参照)として側板部16の背面側の部位が内径方向に移動し、静止密封環10の背面側の部位が縮径するようになっている。このように、切欠溝13は背面側の開口Mから仮想重心Gを越えて摺動面11側まで延びる形状となっており、切欠溝13の軸方向の寸法L3、言い換えれば、側板部16の背面から変形起点Tまでの寸法を長く確保できるので、静止密封環10の背面側の部位を大きく縮径させることができるとともに、薄板部15の軸方向の厚みが薄く形成されているので、静止密封環10の縮径時に生じる内部応力が薄板部15に伝わりやすい構造となっている。
薄板部15の軸方向の厚み寸法L4は、厚板部14の軸方向の厚み寸法L5よりも短い(L4<L5)。
側板部16の厚み寸法L6は、厚板部14の径方向の厚み寸法L7よりも短い(L6<L7)。また、側板部18の厚み寸法L8は、厚板部14の径方向の厚み寸法L7よりも短い(L8<L7)。さらに、側板部18の厚み寸法L8は、側板部16の厚み寸法L6よりも短い(L8<L6)。
また、特に図4(a)に示されるように、ノーズ部12は、静止密封環10の端面10aの径方向中央部に配置されている。具体的には、静止密封環10の摺動面11の内径端11aが側板部18の外径面である切欠溝13の内径面13dよりも外径側に配置され、静止密封環10の摺動面11の外径端11bが側板部16の内径面である切欠溝13の外径面13bよりも内径側に配置されている。詳細には、ノーズ部12は、側板部16及び側板部18と軸方向に重畳せず、かつ側板部18側に若干寄せるように配置されており、言い換えれば、ノーズ部12は、静止密封環10の端面10aの径方向中央部における内径側に配置されている。尚、本実施例では、ノーズ部12が側板部16及び側板部18と軸方向に重畳しないようになっている形態を例示したが、ノーズ部12の外径端、或いは内径端が側板部16、或いは側板部18と軸方向に一部重畳していてもよい。
次に、メカニカルシール1の使用時の静止密封環10の形態について図5~図8に基づいて説明する。
図5に示されるように、静止密封環10がハウジング4及びシールカバー5に取付けられた状態にあっては、ハウジング4の正面に環状に凹溝4aが形成され、凹溝4aに配置された無端状の二次シール6例えばOリングが、周方向一様(すなわち周方向に同じような形状)に設けられ、静止密封環10の背面側(すなわち回転密封環20とは反対側)における外径側の端面に圧接されており、被密封液体Fは、二次シール6よりも外径側の静止密封環10とシールカバー5との間に浸入し、二次シール6よりも内径側の切欠溝13(すなわち大気A側)への浸入は防止されている。すなわち、静止密封環10の外周面、具体的には厚板部14、薄板部15、側板部16、及びノーズ部12の外周面は、外径から内径に向けて被密封液体Fの圧力を受ける受圧部17として構成されている。つまり、二次シール6は静止密封環10の周囲で切欠溝13よりも被密封液体F側に配置され、切欠溝13に被密封液体Fが流入しない配置であればよい。尚、被密封液体Fによる力は、受圧部17以外にも薄板部15の前面(すなわち端面10a)や段差部16aの前面に背面側に向けて軸方向に作用するが、静止密封環10の外周面、特に厚板部14の外周面に支配的に作用し、後述のように静止密封環10が縮径するようになる。また、静止密封環10の内周面、具体的には厚板部14、薄板部15、側板部18、及びノーズ部12の内周面は、被密封液体Fよりも低圧の大気A側に面している。
また、静止密封環10がハウジング4及びシールカバー5に取付けられた状態にあっては、切欠溝13の背面側の開口Mはカバー部材としてのハウジング4により閉塞されている。すなわち、切欠溝13は、被密封液体F側の空間とは連通しておらず、且つ大気A側の空間とは側板部18とハウジング4との僅かな隙間を介して連通している。尚、大気A側の空間と側板部18との間にOリングを配置して切欠溝13が密封状に閉塞されるようにしてもよい。
図6(a)(b)に示されるように、静止密封環10の受圧部17が被密封液体Fの圧力を受けると、切欠溝13があるため、他の箇所と比較して強度的に弱い静止密封環10の軸方向背面側の部位が圧力により縮径するようになる。具体的には、特に図6(b)に示されるように、静止密封環10の受圧部17が被密封液体Fの圧力を受けると、隣り合う厚板部14における背面側の部位の径方向中央部は互いに接続されておらず、言うなれば自由端であるとともに、外径側の側板部16に比べ内径側の側板部18が強度的に弱いので厚板部14の背面側の部位且つ内径側の部位が周方向に互いに近づくように押圧されて静止密封環10が縮径する。また、薄板部15およびノーズ部12には切欠溝13が無く無端環状であり、構造的強度が高いため、軸方向において摺動面11に近いほど変形しにくい。そのため、静止密封環10は背面側の部位が大きく縮径し、摺動面11側の部位が小さく縮径する。これにより、図6(b)の右図で示すように、この押圧により生じた内部応力により厚板部14よりも薄い薄板部15を軸方向に回転密封環20側に膨出させることができるようになっている。また、薄板部15が回転密封環20側に膨出されると、薄板部15に沿ってノーズ部12も膨出するように変形する。尚、図6では、説明の便宜上、側板部16の変形量や薄板部15の膨出量を実際よりも大きく図示している。
また、図6(b)に示されるように、切欠溝13は外径側に側板部16が存在し、内径側に側板部18が存在するので、薄板部15は、径方向中央部が変形しやすい。また、側板部16に比べ側板部18が薄く形成され、構造強度が弱いので、薄板部15は、径方向中央部における外径側の部位に比べて内径側の部位が変形しやすく、薄板部15における回転密封環20側への膨出量は径方向中央部における内径側の部位が大きくなっている。また、ノーズ部12は、静止密封環10の端面10aの径方向中央部における内径側に配設されているので、薄板部15の大きな膨出を受けて変形するようになっている。また、薄板部15は、その周方向両端よりも周方向中央部の方が回転密封環20側への膨出量が大きくなっている。薄板部15の膨出態様について、より詳しくは、薄板部15を回転密封環20側から軸方向に見た図である図7に示されるように、薄板部15の周方向中央部かつ径方向中央部における若干内径側の箇所が最も膨出し、当該箇所から周囲に末広がり状に膨出している。尚、図7においては、薄板部15の膨出量を網点で概略的に図示しており、網点の濃度が高いほど軸方向への膨出量が大きいことを示している。さらに尚、図7では、説明の便宜上、ノーズ部12の図示を省略している。
図8に示されるように、薄板部15が回転密封環20側に膨出されることで、摺動面11において、薄板部15の周方向中央部に対応する部分は凸部8として形成され、微視的には該凸部8は回転密封環20の摺動面21と接触する部分となるとともに、薄板部15の周方向両端部に対応する部分および厚板部14は凹部7として形成され、微視的には回転密封環20の摺動面21と接触しない部分となる。これら、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21との間に互いに接触する部分と軸方向に離間する部分とが周方向に交互に等間隔で生じる、すなわち周方向において、凸部8同士の間に凹部7が周方向に規則的に形成される。尚、被密封液体Fは気体と比べ粘度が高いため、メカニカルシール1の停止時に凹部7から低圧側の空間に漏れ出すことはなく、若しくは漏れ出す量は微量である。
静止密封環10と回転密封環20とが相対回転したときには、凹部7の周方向終端には凸部8が形成されているため、凹部7内に流入した被密封液体Fが回転密封環20の回転方向に追随移動し、凹部7において被密封液体Fの圧力が高められ、圧力の高められた被密封液体Fは凹部7の終端である凸部8近傍からその周辺に流出する。これにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とは僅かに離間されるとともに、摺動面11,21間に存在する被密封液体Fにより、良好な潤滑状態を成すようになっている。特に、上記した厚板部14同士が周方向に近づくように押圧されることで、薄板部15には、膨出した凸部8が、周方向に離間して複数形成されるため、これらの凸部8の間に形成される凹部7内に被密封液体Fを保持し易く、また回転密封環20の回転により動圧を発生させることができる。
以上説明したように、静止密封環10には、切欠溝13が設けられているので、厚板部14及び側板部16が内径方向に被密封液体Fの圧力を受けたときには、厚板部14同士を近づけることができるとともに、厚板部14同士の近接により生じる内部応力を薄板部15まで有効に伝達させ、摺動面11を局所的に大きく膨出させて摺動面11に凹凸を形成することができる構造となっている。そして、切欠溝13の被密封液体F側とは反対側である大気A側には第2の側板部である側板部18が設けられているため、大気A側の空間から切欠溝13内に塵埃等のコンタミが侵入することを抑制することができる。これによれば、切欠溝13内にコンタミが堆積することが抑制されるので、切欠溝13による静止密封環10の変形代を確保でき、摺動面11に確実に凹凸を形成することができる。
また、静止密封環10がハウジング4及びシールカバー5に取付けられた状態にあっては、切欠溝13の背面側の開口Mがハウジング4により閉塞されているので、切欠溝13内への侵入を確実に防ぐことができる。尚、切欠溝13の開口Mを覆うカバー部材はハウジング4に限られず、例えば、ハウジング4とは別の板部材やキャップなどであってもよい。
また、切欠溝13は軸方向の寸法L3が周方向の寸法L10よりも大きい。そのため、L3が大きいほど摺動面11近くまで切欠溝13を形成して、薄板部15を膨出させ易くすることが可能であり、また、L10が小さいほど静止密封環10が切り欠かれる箇所である切欠溝13の占有容積が小さく済み、静止密封環10の強度を維持することができる。また、二次シール6が静止密封環10の背面側(すなわち回転密封環20とは反対側)の端面に圧接されているので、受圧面積を大きく取ることができ、静止密封環10を縮径させやすい。これにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21との間に確実に凹部7を形成することができ、凹部7内に被密封液体Fを保持できるとともに、凹部7で生じる動圧により摺動面11,21間を僅かに離間させ、摺動性を向上させることができる。
また、大気A側に設けられる側板部18は、被密封液体F側に設けられる側板部16よりも薄く形成されている。具体的には、側板部18の厚み寸法L8は、側板部16の厚み寸法L6よりも短く形成されており、側板部18が側板部16よりも構造強度が低いので、径方向において静止密封環10を大気A側に向けて縮径させやすい。
また、切欠溝13における摺動面11側の端面13eは、軸方向において静止密封環10の仮想重心Gよりも摺動面11側に配置されていている。このように、切欠溝13における摺動面11側の端面13eは、静止密封環10の仮想重心Gよりも摺動面11側に配設されているので、切欠溝13における摺動面11側の端面13eを摺動面11側に近付けて、薄板部15を軸方向に薄く形成することができるとともに、側板部16の背面から変形起点Tまでの寸法を長く確保して静止密封環10の背面側の部位を大きく縮径させることができるので、変形により生じる内部応力を静止密封環10における摺動面11側にまで伝達させやすい。
また、側板部16は、隣り合う厚板部14同士の外径側の部位を連結しており、隣り合う厚板部14同士の間の空間である切欠溝13が被密封液体F側の空間に連通しないので、切欠溝13と被密封液体Fとの圧力差を大きく確保することができ、薄板部15の回転密封環20側への膨出を確実に行うことができる。
また、薄板部15の軸方向の厚み寸法L4は、厚板部14の軸方向の厚み寸法L5に比べて薄いため、静止密封環10の縮径に追従して薄板部15を応答性高く膨出させることができる。
また、側板部16の厚み寸法L6及び側板部18の厚み寸法L8は、厚板部14の径方向の厚み寸法L7に比べて薄いため、静止密封環10の縮径に追従して側板部16及び側板部18を応答性高く変形させることができる。
また、薄板部15よりも構造強度の高い厚板部14の周方向内径側の部位の寸法L2が、切欠溝13の周方向の寸法L10よりも長いので、静止密封環10の強度を確保できるとともに、薄板部15の周方向の長さが短いため、静止密封環10が縮径したときに変形する箇所が局所的となり、集中するため、回転密封環20への膨出量を大きくとることができる。
また、薄板部15において、厚板部14と薄板部15とが周方向に等配されており、摺動面11に等配して凹凸を形成することができるので、静止密封環10と回転密封環20との摺動性をより向上させることができる。
また、薄板部15および厚板部14の摺動面11側には軸方向に突出したノーズ部12が周方向に亘って環状に設けられている。これによると、ノーズ部12により静止密封環10の強度が向上するので、薄板部15を薄く形成することができる。
また、ノーズ部12は、側板部16よりも内径側に寄せて配置されており、薄板部15の軸方向への膨出をノーズ部12に好適に伝達できる。
また、静止密封環10は、厚板部14、薄板部15、側板部16、側板部18、ノーズ部12が一体形成されているので、各部位が別素材や別部材で形成されている静止密封環に比べて、薄板部15及び側板部16を確実に変形させることができる。また、環状の部材に切欠溝13を切欠き形成すればよいので、静止密封環10を加工しやすい。
次に、実施例2に係るメカニカルシールにつき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
図9に示されるように、実施例2における静止密封環100は、薄板部151の内径側から第1の側板部としての側板部161が軸方向に延びて隣り合う厚板部141同士の内径側の部位を連結するように形成されており、薄板部151の外径側から第2の側板部としての側板部181が軸方向に延びて隣り合う厚板部141同士の外径側の部位を連結するように形成されている。また、静止密封環100がハウジング4及びシールカバー5に取付けられた状態にあっては、ハウジング4に形成された凹溝4a’に配置された二次シール6が静止密封環100の背面側における内径側の端面に圧接されており、被密封液体Fは、摺動面111の内径側に配置されている。すなわち、静止密封環100の内周面、具体的には厚板部141、薄板部151、側板部161、及びノーズ部121の内周面は、内径から外径に向けて被密封液体Fの圧力を受ける受圧部171となっている。
図9(b)(c)に示されるように、静止密封環100の受圧部171が被密封液体Fの圧力を受けると、静止密封環100が外径側に変形して、各厚板部141が互いに遠ざかるように外径方向に移動し、これにより厚板部141よりも薄い薄板部151を背面側に収縮させることができるようになっている。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
前記実施例では、切欠溝13の周方向の寸法L10が厚板部14の周方向内径側の部位の寸法L2よりも短く形成されている形態を例示したが、切欠溝は厚板部の周方向よりも長く形成されていてもよい。この場合、静止密封環が縮径されたときに摺動面間に生じる凹部の周方向の寸法を大きく取ることができる。
また、前記実施例では、厚板部14が周方向に等配されている形態を例示されたが、厚板部の周方向の長さや数量は自由に変更することができる。
また、前記実施例では、静止密封環10に切欠溝13が形成されている形態を例示したが、回転密封環20に切欠溝13が形成されていてもよいし、両方に切欠溝13が形成されていてもよい。
また、前記実施例では、被密封流体が液体である形態を例示したが、被密封流体は、気体であってもよいし、液体と気体が混合したミスト状であってもよい。
また、前記実施例では、二次シール部材が静止密封環の背面側に配設される形態を例示したが、これに限られず、例えば、静止密封環の外径側に配置されていてもよい。つまり、側板部の被密封流体側の面、例えば実施例1では側板部16の外周面に高い圧力がかかる状態であればよい。
また、前記実施例では、大気A側に設けられる第2の側板部は、被密封液体F側に設けられる第1の側板部よりも薄く形成されている形態を例示したが、これに限られない。また、第1の側板部よりも第2の側板部の構造強度が低くなっていることが好ましい。例えば、第2の側板部を第1の側板部よりも構造強度の低い部材で構成すれば、第2の側板部の厚みが第1の側板部の厚みと同等以上であってもよい。
1 メカニカルシール
3 回転軸
4 ハウジング(カバー部材)
6 二次シール(二次シール部材)
7 凹部
8 凸部
10 静止密封環(一方の密封環)
11 摺動面
12 ノーズ部
13 切欠溝(溝部)
14 厚板部(肉厚部)
15 薄板部
17 受圧部
20 回転密封環(他方の密封環)
21 摺動面
100 静止密封環
121 ノーズ部
200 静止密封環
215 薄板部
231 切欠溝
241 厚板部(肉厚部)
300 静止密封環
315 薄板部
331 切欠溝
341 厚板部(肉厚部)
400 静止密封環
415 薄板部
431 切欠溝
441 厚板部(肉厚部)
A 大気
F 被密封液体(被密封流体)

Claims (6)

  1. 互いに相対摺動する摺動面を備える一対の密封環を有し、被密封流体を封止するメカニカルシールであって、
    前記一対の密封環の外径側及び内径側のうち一方が被密封流体側であり、他方が漏れ側であり、
    一方の密封環は、径方向漏れ側周方向に離間しかつ少なくとも背面側に開口する複数の切欠溝が配置されており、
    前記切欠溝は、径方向被密封流体側に配置される第1の側板部と、前記第1の側板部から径方向漏れ側に離間する第2の側板部によって区画されており、
    前記切欠溝と前記被密封流体側の空間との間には、環状の二次シール部材が配置されており、
    前記二次シール部材は、前記第1の側板部の背面側端面に配置されているメカニカルシール。
  2. 前記切欠溝の開口は、カバー部材によって覆われている請求項1に記載のメカニカルシール。
  3. 前記第2の側板部は、前記第1の側板部よりも薄く形成されている請求項1または2に記載のメカニカルシール。
  4. 前記切欠溝は、前記一方の密封環の径方向断面における仮想重心よりも前記摺動面側まで延びる形状である請求項1ないし3のいずれかに記載のメカニカルシール。
  5. 各前記切欠溝は、前記一方の密封環の中心から放射状に延びる基準面を基準として周方向に面対称を成している請求項1ないし4のいずれかに記載のメカニカルシール。
  6. 前記一方の密封環は一体形成されていている請求項1ないし5のいずれかに記載のメカニカルシール。
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