JP7099041B2 - 鋼材 - Google Patents
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BI=(Cr/52)/(N/14) … (1)
EI=(Cu/64)/(Sb/122) … 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … (3)
[1] 質量%で、
C:0.01~0.10%、
Si:0.04~0.40%、
Mn:0.30~1.50%、
Cu:0.05~0.50%、
Sb:0.03~0.30%、
Ni:0.01~0.50%、
Cr:0.02~0.50%、
Al:0.005~0.055%、
N:0.002~0.010%、
P:0~0.020%、
S:0~0.015%、及び
O:0~0.0035%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
Siの含有量とAlの含有量とが、質量比で、
Si/Al:7.0~15.0
を満足し、
下記(1)で求められるBIが0.55~30.00であり、
下記(2)で求められるEIが1.0~6.0であり、
下記(3)式で求められるCeqが0.150~0.400であることを特徴とする鋼材。
BI=(Cr/52)/(N/14)… 式(1)
EI=(Cu/64)/(Sb/122)… 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
ここで、式中、C、Mn、Cu、Sb、Ni、Cr、V、Nは各元素の質量%に基づく含有量を示し、含有しない場合は0である。
[2] 更に、質量%で、
Mo:0.50%以下、
W:0.50%以下 、
Sn:0.30%以下、
As:0.30%以下、及び
Co:0.30%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の鋼材。
[3] 更に、質量%で、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.050%以下、
Ta:0.050%以下、及び
B:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の鋼材。
[4] 更に、質量%で、
Ca:0.010%以下、
Mg:0.010%以下、及び
REM:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]~[3]の何れかに記載の鋼材。
本発明者らの検討により、Cu、Sb、Crを含む耐酸性鋼の耐酸性向上には、鋼材表面で腐食起点となりやすい、窒化物や酸化物を抑制することが有効であることがわかった。まず、酸化物の生成を抑制するには、Alに比べて酸化力が弱いSiを活用することが有効であり、Si/Al比が重要であるこという知見を得た。
BI=(Cr/52)/(N/14)… 式(1)
EI=(Cu/64)/(Sb/122) … 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
Cは、強度を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させることが必要である。好ましくはC量を0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。一方、C量が0.10%を超えると炭化物が増加し、耐酸性が劣化するため、C量を0.10%以下とする。好ましくはC量を0.09%以下、より好ましくは0.08%以下とする。
Siは、脱酸及び強度の向上に寄与する元素であり、また、酸化物の形態を制御するために、0.04%以上を含有させることが必要である。好ましくはSi量を0.05%以上とし、より好ましくは0.10%以上とする。一方、0.40%を超えるSiを含有させると酸化物が増加し、耐酸性を損なうため、Si量を0.40%以下とする。好ましくはSi量を0.30%以下とする。
Mnは、強度及び靭性を向上させる元素であり、0.30%以上を含有させる。好ましくはMn量を0.50%以上、より好ましくは0.80%以上とする。一方、1.50%を超える量のMnを含有させると、粗大なMnSが生成し、耐食性や機械特性が劣化するため、Mn量を1.50%以下とする。好ましくはMn量を1.20%以下、より好ましくは1.00%以下とする。
Cuは、Sbと同時に含有させると、硫酸や塩酸に対する耐食性を顕著に発現する極めて重要な元素である。酸性環境での耐食性を確保するために、Cu量を0.05%以上とすることが必要である。好ましくはCu量を0.10%以上、より好ましくは0.150%以上、更に好ましくは0.20%以上とする。一方、Cu量が0.50%を超えると熱間加工性が低下し、製造性を損なうため、0.50%以下とする。好ましくはCu量を0.40%以下、より好ましくは0.30%以下とする。
Sbは、上述のように、Cuと同時に含有させると耐酸性を向上させる極めて重要な元素であり、酸性環境での耐食性を確保するため、0.03%以上を含有させることが必要である。好ましくはSb量を0.05%以上、より好ましくは0.08%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。一方、Sb量が0.30%を超えると熱間加工性が低下するので、0.30%以下とする。好ましくはSb量を0.15%以下とする。
Niは、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、Ni量を0.01%以上とする。Cuを含有する場合、Niは製造性を高める効果を発現する。Cuは、耐食性を向上させる効果が大きいが、偏析し易く、単独で含有させると鋳造後の割れを助長する場合がある。これに対して、NiはCuの偏析を軽減する作用がある。Niを含有させると、Cu偏析起因の鋳片の割れの抑制に加えて、偏析に起因する局部腐食の発生も抑制されるため、耐食性を向上させる効果が顕著に発現される。好ましくはNi量を0.03%以上とし、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。一方、Niは高価な元素であるため、コストの観点からNi量を0.50%以下とする。好ましくはNi量を0.30%以下、より好ましくは0.25%以下とする。
CrはCu、Sbと同様に耐食性を向上させる元素である。特に、CrをCu、Sbと同時に含有させることで高温・高濃度となる酸性環境において優れた耐食性を発揮する。したがって、耐食性確保の観点から0.02%以上のCrを含有させることが必要である。好ましくはCr量を0.05%以上とする。一方、Crを過剰に含有させると、腐食の起点となる窒化物の増加によって、耐酸性を損なうため、Cr量を0.50%以下とする。より、好ましくはCr量を0.30%以下、より好ましくはCr量を0.20%以下とする。
Alは、脱酸剤であり、0.005%以上を含有させることが必要である。好ましくはAl量を0.010%以上、より好ましくは0.020%以上とする。一方、Alを過剰に含有させると、介在物の増加によって、耐酸性を損なうため、Al量を0.055%以下とする。好ましくはAl量を0.050%以下、より好ましくは0.040%以下とする。
Nは、窒化物を形成する元素であり、Crを含有する場合、N量が過剰になると耐食性が低下することから、N量を0.010%以下とする。好ましくはN量を0.008%以下、より好ましくは0.006%以下とする。一方、微細な窒化物は機械特性等の向上に有効であるため、N量を0.002%以上とする。好ましくはN量を0.003%以上とする。
Pは、不純物であり、鋼材の機械特性や製造性を低下させるため、P量を0.020%以下とする。P量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からP量は0.001%以上であってもよい。
Sは、不純物であり、熱間加工性や鋼材の機械特性を低下させるため、S量を0.015%以下とする。S量の下限は限定せず、0%でもよい。Sは、Cu及びSbと同時に含有させると、酸性環境での耐食性を向上させることから、S量は0.001%以上であってもよい。より好ましくはS量を0.005%以上、更に好ましくは0.01%以上としてもよい。
Oは、酸化物を生成する元素である。酸性環境において腐食の起点となる粗大な酸化物の生成を抑制するために、O量を0.0035%以下とする。好ましくはO量を0.0030%以下、より好ましくは0.0025%以下とする。O量の下限は限定せず、0%でもよいが、コストの観点からO量は0.0005%以上であってもよい。
Moは、Cu、Sb、Crと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素である。特に、塩酸に対する耐食性を高めるために、Mo量を0.01%以上とすることができる。より好ましくはMo量を0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。一方、Moは高価な元素であるため、コストの観点から、Moの含有量を0.50%以下とする。より好ましくは、0.30%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Wは、Moと同様にCu、Sb、Crと同時に含有させることにより、酸性環境での耐食性を向上させる元素である。特に、塩酸に対する耐食性を高めるために、W量を0.01%以上とすることができる。より好ましくはW量を0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。一方、Wも高価な元素であるため、コストの観点から、Moの含有量を0.50%以下とする。より好ましくは、0.30%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Snは、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはSn量を0.02%以上、更に好ましくはSn量を0.05%以上とする。一方、Snを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、Sn量を0.30%以下とする。より好ましくはSn量を0.20%以下とする。
Asは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性の向上に有効な元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはAs量を0.02%以上、更に好ましくはAs量を0.05%以上とする。一方、Asを過剰に含有させると熱間加工性が低下するので、As量を0.30%以下とする。より好ましくはAs量を0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Coは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはCo量を0.02%以上、更に好ましくはCo量を0.05%以上とする。一方、Coを過剰に含有させる経済性が低下するので、Co量を0.30%以下とする。より好ましくはCo量を0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒の微細化や強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはTi量を0.005%以上とする。一方、0.050%超のTiを含有させると、窒化物が粗大になり、機械特性が劣化することがあるため、Ti量を0.050%以下とする。より好ましくはTi量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Nbは、Tiと同様に、窒化物を形成する元素であり、結晶粒の微細化や強度の向上を目的として、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはNb量を0.005%以上とする。一方、0.10%超のNbを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、Nb量を0.10%以下とする。より好ましくはNb量を0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Vは、Ti、Nbと同様、窒化物を形成する元素であり、主に、析出強化による強度の改善のために含有させてもよい。効果を得るために、V量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、0.10%超のVを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、V量を0.10%以下とする。より好ましくはV量を0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Zrは、Ti、Nb、Vと同様、窒化物を形成する元素であり、主に、析出強化による強度の改善のために含有させてもよい。効果を得るために、Zr量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Zrは高価な元素であり、また、0.050%超のZrを含有させると、機械特性が劣化することがあるため、Zr量を0.050%以下とする。より好ましくはZr量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Taは、強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。また、メカニズムは必ずしも明らかでないが、Taは耐食性の向上にも寄与し、より好ましくはTa量を0.005%以上とする。一方、Taを過剰に含有させるとコストが上昇するため、Ta量を0.050%以下とする。より好ましくはTa量を0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
Bは焼入性を向上させ、強度を高める元素である。効果を得るためには、B量を0.0003%以上にすることが好ましい。より好ましくはB量を0.0005%以上とする。一方、0.010%を超えるBを含有させても、効果が飽和し、母材、HAZの靭性が低下する場合があり、B量を0.010%以下とする。より好ましくはB量を0.0050%以下、更に好ましくは0.0030%以下、より一層好ましくは0.0020%以下とする。
Caは、主に硫化物の形態の制御に用いられる元素であり、また、微細な酸化物を形成させるために、0.0005%以上を含有させてもよい。好ましくはCa量を0.001%以上、より好ましくは0.002%以上とする。一方、0.010%を超えるCaを含有させると機械特性が損なわれる場合があるため、Ca量を0.010%以下とする。より好ましくはCa量を0.005%以下とする。
Mgは、微細な酸化物を形成させるために、0.0001%以上を含有させてもよい。好ましくはMg量を0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、製造コストの観点から、Mg量を0.010%以下とする。より好ましくはMg量を0.005%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
REM(希土類元素)は、主に脱酸に用いられる元素であり、微細な酸化物を形成させるために、0.0001%以上を含有させてもよい。好ましくはREM量を0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。一方、製造コストの観点から、REM量を0.010%以下とする。より好ましくはREM量を0.005%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
(Si/Al:7.0~15.0)
Si/Al比(質量比)は、鋼材表面で腐食起点となりやすい酸化物を抑制するために重要な指標である。酸化物の生成を抑制するには、Alに比べて酸化力が弱いSiを活用することが有効であり、Si/Al比を7.0以上にすることによって耐酸性が顕著に向上する。好ましくはSi/Al比を8.0以上、より好ましくは9.0以上とする。一方、Si/Al比が15.0を超えても効果が飽和し、また、Al量の減少に伴って脱酸が不十分になり、酸化物によって耐酸性が低下する場合があるため、上限を15.0とする。好ましくはSi/Al比を14.0以下、より好ましくは13.0以下とする。
耐酸性腐食指数BIは、鋼材表面で腐食起点となりやすい窒化物を抑制するために重要である。Crは、耐酸性の向上に有効であるものの、含有量が過剰であると腐食の起点となる窒化物を形成しやすくなるため、耐酸性を顕著に向上させるには、耐酸性腐食指数BIを30.00以下にすることが必要である。好ましくはBIを30.00以下、より好ましくは15.00以下、更に好ましくは10.00以下、より一層好ましくは5.00以下とする。一方、Crが不足すると、耐酸性の向上の効果が不十分になるため、耐酸性腐食指数BIを0.55以上にすることが必要である。好ましくはBIを0.60以上、より好ましくは0.70以上とする。
BI=(Cr/52)/(N/14)… 式(1)
(EI:1.0~6.0)
加工性指数EIは、Cuによる熱間加工性の低下を助長するSbの影響を考慮した指標であり、熱間加工性を確保するために重要である。Cuの含有量に対してSbの含有量が多過ぎると熱間加工性が低下するため、加工性指数EIは1.0以上にする必要がある。好ましくはEIを2.0以上、より好ましくは3.0以上とする。加工性指数EIを大きくすることが、熱間加工性を確保するためには好ましいが、6.0を超えても効果が飽和する。また、Sbが不足して耐酸性の向上の効果が不十分にならないように、加工性指数EIを6.0以下にすることが必要である。好ましくはEIを5.9以下、より好ましくは5.8以下とする。
EI=(Cu/64)/(Sb/122) … 式(2)
Ceqは、硬さの上昇による溶接性の劣化を示す指標であり、溶接性を確保するために、0.400以下とする。好ましくはCeqを0.350以下、より好ましくは0.330以下とする。一方、Ceqが低すぎると機械特性が不十分になるため、0.150以上とする。好ましくはCeqを0.180以上、より好ましくは0.200以上とする。Ceqは、下記式(3)に示されるように、公知の指標である。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
また、溶接性評価として、JIS Z 3158に基づきy型溶接割れ試験を行った。試験片は16mmtを用い、電流170Aで両面側から溶接後、所定の時間が経過してから表面及び断面の割れの有無を確認した。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.01~0.10%、
Si:0.04~0.40%、
Mn:0.30~1.50%、
Cu:0.05~0.50%、
Sb:0.03~0.30%、
Ni:0.01~0.50%、
Cr:0.02~0.50%、
Al:0.005~0.055%、
N:0.002~0.010%、
P:0~0.020%、
S:0~0.015%、及び
O:0~0.0035%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
Siの含有量とAlの含有量とが、質量比で、
Si/Al:7.0~15.0
を満足し、
下記(1)で求められるBIが0.55~30.00であり、
下記(2)で求められるEIが1.0~6.0であり、
下記(3)式で求められるCeqが0.150~0.400であることを特徴とする鋼材。
BI=(Cr/52)/(N/14)… 式(1)
EI=(Cu/64)/(Sb/122)… 式(2)
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/5+(Cr+Mo+V)/15 … 式(3)
ここで、式中、C、Mn、Cu、Sb、Ni、Cr、V、Nは各元素の質量%に基づく含有量を示し、含有しない場合は0である。 - 更に、質量%で、
Mo:0.02~0.50%(但し、0.02%を除く。)、
を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材。 - 更に、質量%で、
W:0.50%以下、
Sn:0.30%以下、
As:0.30%以下、
Co:0.30%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.050%以下、
Ta:0.050%以下、
B:0.010%以下、
Ca:0.010%以下、
Mg:0.010%以下、及び
REM:0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の鋼材。
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