JP7093708B2 - 円偏波アンテナ - Google Patents
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Description
従来の円偏波アンテナとしては、縮退分離法を用いたマイクロストリップアンテナがある。この円偏波アンテナは、正方形のマイクロストリップアンテナの2つの角の一部を切り取った形状のアンテナであり、特許文献1の図10に示されている。
また、2点給電方式による円偏波アンテナとして、正方形のマイクロストリップアンテナの直交する2辺に対し、別々に給電することで円偏波とするアンテナがある。この方式では、方形または円形マイクロストリップアンテナを空間的に直交する2つの給電点で位相差がπ/2となるように給電するものである。
一方、2点給電方式の円偏波アンテナでは、2点で給電するための二分配回路などの外部回路が必要であり、給電系が複雑になるという問題がある。
この円偏波アンテナでは、破断環状アンテナが第1アンテナとして機能し、給電ラインが破断環状アンテナと直交方向に延びる第2アンテナとして機能することで、小型の円偏波アンテナを容易に製造することができる。
また、上記出願では、小型の円偏波アンテナが提供されるが、より小型化可能なアンテナも望まれる。
本発明は、より設計の自由度が高い円偏波アンテナを提供することを第2目的とする。
本発明は、より小型化した円偏波アンテナを提供することを第3目的とする。
(2)請求項2に記載の発明では、前記破断部は、前記破断環状部の長手方向の中央に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の円偏波アンテナを提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記破断部は、前記破断環状部の長手方向の端部に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の円偏波アンテナを提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、長手方向の端部に破断部が形成された破断環状部と、前記破断環状部の破断部を形成する一方の端部と連続し、前記破断環状部の内側、又は外側方向に延設された第1延設部と、前記破断環状部の破断部を形成する他方の端部と連続し、前記第1延設部に対して所定間隔で並行して形成された第2延設部と、前記破断環状部から所定距離だけ隔てて配設された地導体板と、一端側が前記破断環状部と電気的に接続され、前記地導体板まで延びる他端側に給電点を備えた給電ラインと、を具備し、前記破断環状部と前記第1延設部、前記第2延設部は第1アンテナとして機能し、前記給電ラインは第2アンテナとして機能している、ことを特徴とする円偏波アンテナを提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記第1アンテナと前記第2アンテナの偏波がほぼπ/2の位相差である、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナを提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記破断環状部は、前記地導体板と平行に配設された矩形形状であり、前記地導体板と平行な2辺のうち前記地導体板から離れた側の辺に破断部が形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナを提供する。
(7)請求項7に記載の発明では、前記1対の延設部は、前記破断環状部の内側に、又は外側に延設されている、ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナを提供する。
(8)請求項8に記載の発明では、前記破断環状部と前記延設部は、絶縁層を介してビア接続された複数層に形成され、前記給電ラインの前記一端は、いずれか1の層の破断環状部に、前記EM給電部を介して電磁的に接続され、又は電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナを提供する。
(9)請求項9に記載の発明では、前記地導体板は、前記破断環状部の最上層と最下層に対応した2層に形成され、前記地導体板の2層はビア接続されている、ことを特徴とする請求項8に記載の円偏波アンテナを提供する。
また請求項1から請求項3に記載の発明によれば第2目的に対応して、第1アンテナに対する給電を、電磁的なEM給電としているので、設計の自由度をより高くすることができる。
請求項3、請求項4に記載の発明によれば第3目的に対応して、破断部を破断環状部の長手方向の端部に形成することで、より小型化することができる。
(1)第1実施形態の概要
本実施形態の円偏波アンテナ1では、地導体板10と、この地導体板10から所定距離だけ離れて配設された破断環状アンテナ20と、この破断環状アンテナ20に電磁的な結合による給電(EM結合型給電)を行う給電部40を備えている(図1参照)。
給電部40は、破断環状アンテナ20と所定間隔で平行に対向配置されるEM給電部41と、このEM給電部41に一端が電気的に接続され、他端側が地導体板10まで延びると共に他端が給電点となる給電ライン42を有する。
破断環状アンテナ20は第1アンテナとして機能し、給電ライン42は第2アンテナとして機能し、両アンテナはほぼ直交状態に配設されると共に、両アンテナの偏波がほぼπ/2だけ位相がズレていることで、円偏波の送受信が可能となる。
給電ライン42が破断環状アンテナ20との電気的な接続にはよらず、電磁的接合により給電することで、周波数特性の変化を考慮することなく給電ライン42の特性インピーダンスを単独で設計することが可能になるため、設計が容易になる。
本実施形態の円偏波アンテナ1は、給電ライン42が地導体板10から露出することで、給電ライン42からの輻射(Eθ成分)と、破断環状アンテナ20からの輻射(Eφ成分)が直交を成しており、円偏波化が実現される。具体的には、軸比≦3dBを満たす角度幅が、Z-Y面(φ=90°)で90度前後、X-Y面(θ=90°)で30度前後となり、良好な円偏波特性を示す。また、共振周波数2.57Hz、効率75.8%である。
図1は、円偏波アンテナ1の全体構成と、その一部である破断環状アンテナ20を表した斜視図である。
図1に示すように本実施形態の円偏波アンテナ1は多層化されている。なお、各層の部材を表す場合には同一数字の符号にa、b、~を付し、部材全体を表す場合には数字の符号だけで表示するものとする。
円偏波アンテナ1は、図1(a)に示されるように、地導体板10、第1アンテナとして機能する破断環状アンテナ20、第1アンテナに電力を供給すると共にその一部が第2アンテナとして機能する給電部40を備えている。
本実施形態の地導体板10、破断環状アンテナ20、給電部40は、それぞれ銅で形成されているが、他の金属や合金を使用するようにしてもよい。
この絶縁層11は、平面サイズが30mm×50mmで、厚さが0.4mm~0.6mm(後述する)で、ガラスエポキシ樹脂等の各種樹脂により形成されている。
この絶縁層11上に、絶縁層11の1の辺側に破断環状アンテナ20が形成されている。破断環状アンテナ20は4層に形成され、各層は各絶縁層11a~11cの間と両外側面に形成されている。破断環状アンテナ20の各層は互いにビア接続されている。
両地導体板10aと地導体板10dとは、図3に示すように、ビア接続12によって互いに接続されている。
破断環状部22は、その地導体板10と対向している側の反対側に、長手方向の中央に破断部Aが形成されている。破断環状部22は、直線部23~27の順に、互いに直角方向に連続する5つの直線部で方形状に構成されている。直線部23と直線部27とは連続しておらず、両者間に所定幅で破断された破断部Aが形成されている。直線部23と直線部27は、方形の絶縁層11の一辺(端部)と一致するように形成される。
破断環状部22は、破断部が存在しない場合(破断部の両端が接続している場合)にその形状が環状となる形状であり、本実施形態で説明する形状としては方形であるが、半円形、D字状、三角形、その他の多角形等の左右対称となる形状も可能である。この場合、対称軸となる部分に破断部が形成される。
第3層目のEM給電部41cは、給電ライン42の一端と電気的に接続されている。これにより、給電ライン42から破断環状アンテナ20に対し、EM給電部41を介して電磁(EM)結合給電が行われる。すなわち、EM給電部41を介して、図示しない外部の高周波回路からの高周波信号が破断環状アンテナ20に給電される。
本実施形態の円偏波アンテナ1では、地導体板10と破断環状部22とが所定間隔だけ離れていることで、給電ライン42が地導体板10から露出し、その結果、給電ライン42からの輻射(Eθ成分)を得ることができる。
図2に示すように、破断環状部22の内側サイズは直線部24、26に対応する縦方向、すなわち直線部23、27と直線部25間の距離が3.5mmである。また、直線部25に対応する横方向、すなわち、長手方向における内側の距離(直線部24と直線部25間の距離)が9mmである。各直線部23~27の幅は0.5mmに形成されている。
直線部23の破断部A側の端部には延設部28が、また、直線部27の破断部A側の端部には延設部29が、それぞれ所定間隔で平行して破断環状部22の内側に延設されている。延設部28と延設部29は、直線部23、27と直角方向に延設されている。また両延設部28、29の間隔は0.1mmである。延設部28、29は、長さが1.45mm、幅が0.5mmである。
本実施形態では、延設部28、29部分はそれぞれ直線部23、27と連接しているためビア接続されていないが、延設部28、29においても各層をビア接続するようにしてもよい。
なお、本実施形態の延設部28、29は、破断環状部22の内側に延設されているが、破断環状部22の外側に延設するようにしてもよい。この場合においても両延設部28、29の間隔を0.1mm、長さを1.45mmに形成する。
給電ライン42は、後述する給電点の形式により異なるが13mmより長く形成されている。
給電ライン42の幅は、高周波回路と基準インピーダンス(例えば50Ω)でインピーダンス整合させるための幅Hが選択される。本実施形態では、基準インピーダンス50Ωに対して、幅H=0.55mmが選択されている。
従って給電ライン42と直線部24との間隔Fについて本実施形態ではF=0.20mmとしているが、より広くなるように間隔Fの値を選択することができる。例えば、間隔Fの最大値として、EM給電部41の延設部28側の端部側に設けることで、F=3.2mmとすることが可能であるが、F=1.0mmが好ましく、F=0.68mm以下であれば更に好ましい。
なお、破断環状部22の破断部251は、間隔Fの値(給電ライン42の接続位置)に併せて形成する。
上述したとおり、給電ライン42の幅が0.55mm、給電ライン42と直線部24との間隔FがF=0.2mmなので、給電ライン42と直線部25の端部との間隔は、1.93-(0.2+0.55)=1.18mmである。
なお、本実施形態における給電ライン42は、3層目のEM給電部41cと一体形成されているが、他層のEM給電部41と一体形成するようにしてもよい。
また、給電ライン42の先端にビアホールを形成し、EM給電部41とビア接続することで電気的に接続されるようにしてもよい。ビア接続をする場合の給電ライン42は、EM給電部41のいずれの層間に配設してもよく、またEM給電部41a又は、41dの外側に配設するようにしてもよい。
更に、本実施形態の給電ライン42は1層であるが、給電ライン42についても、EM給電部41の層数以下であれば複数層としてもよい。この場合にも給電ライン42の各々を、EM給電部41と一体形成しても、EM給電部41にビア接続してもよい。また、EM給電部41に一体形成又はビア接続された各層の給電ライン42同士については、ビア接続する場合、しない場合のいずれも可能である。
円偏波アンテナ1では、所望の共振周波数となるように、破断環状アンテナ20の形状を選択する。例えば、破断環状部22の内側のサイズで短手方向の長さをq1(本実施形態では3.5mm)、長手方向の長さをq2とした場合、q1/q2が小さい程(すなわち、横長に形成する程)共振周波数は小さくなり、延設部28、29の長さが長いほど共振周波数は小さくなる。
そして、第1アンテナとして機能する破断環状アンテナ20の偏波に対して、直交状態にあり第2アンテナとして機能する給電ライン42の偏波がほぼπ/2の位相差となるように、給電ライン42の長さ(距離Lの長さ)の調整がされる。
なお点線で示したのが、1層と2層目間、2層と3層目間、3層と4層目間に配置され、円偏波アンテナ1の外形となる絶縁層11の外形である。
1層目(Layer1)には、図3(a)に示すように、破断環状アンテナ20aと、EM給電部41aと、地導体板10aが配設される。地導体板10aは4層目の地導体板10dとビア接続12で電気的に接続されている。
2層目(Layer2)には、図3(b)に示すように、破断環状アンテナ20bとEM給電部41bが配設される。
4層目(Layer4)には、図3(d)に示すように、破断環状アンテナ20dと、EM給電部41dと、地導体板10dが配設される。
図4は、給電ライン42の端部に形成される給電点の各種形状を表した断面図である。
図4(a)は、円偏波アンテナ1における1層目の地導体板10a側に給電端子35を形成した場合の第1の例である。
すなわち、給電ライン42の給電点に対応する位置で、絶縁層11a、11bにスルーホール31を形成するとともに、地導体板10aに設けた開口部に給電端子35が形成される。
そして、スルーホール31の内周面がメッキされ、又はスルーホール31内に導電ペーストが充填されることで、給電端子35と給電ライン42の端部(給電点)とがビア接続される。
この例では、給電ライン42の給電点に対応する位置で、絶縁層11cにスルーホール32を形成するとともに、地導体板10dに設けた開口部に給電端子36が形成される。
そして、スルーホール32の内周面がメッキされ、又はスルーホール32内に導電ペーストが充填されることで、給電端子36と給電ライン42の端部(給電点)とがビア接続される。
この場合、給電ライン42の絶縁層11a、11bの端部位置が給電点となり、そこから外側に延設した部分が給電端子37となる。
なお、図4(c)では、絶縁層11cを絶縁層11a、11bよりも大きくしたことにあわせて、地導体板10dも、地導体板10aよりも大きく形成しているが、地導体板10dを絶縁層11cよりも小さく(給電ライン42の長さ方向を短く)することで地導体板10aと同じ大きさに形成するようにしてもよい。
図5(a)は、各層の厚さと材料を表したものである。
破断環状アンテナ20と地導体板10の材料は銅で、その厚さ(所定厚T)は、例えば18μmや35μmが採用されるが、後述する特性解析においては、ほぼゼロとしている。
一方、絶縁層11a~11cの材料としては、ガラスエポキシ樹脂が使用される。絶縁層11aの厚さが0.4mm、絶縁層11bの厚さが0.6mm、絶縁層11cの厚さが0.4mmである。
なお、円偏波アンテナ1の基板の総厚は、破断環状アンテナ20a~20d、地導体板10a、10dの厚さをほぼゼロとしているので、全体で1.4mmで特性解析を行っている。
絶縁層11a~11cの材料であるガラスエポキシ樹脂は、比誘電率εr=4.25、誘電正接(損失)tanδ=1×10{-2}である。なお、記号{}は、中の数字が累乗を示す指数を表すものとし、例えば、x{2}は、xの二乗を表す。
また、特性解析では円偏波アンテナ1の周囲を空気で取り囲むものとし、その比誘電率は1.000517とした。
例えば、給電系を含む市販品完成体の2.4GHz帯の無線LAN円偏波平面アンテナ(導波器付平面アンテナ)のサイズが約110mm×110mm×20mm(アンテナ部)であるのに比べて、十分に小型化することができる。
更に例を挙げると、一点給電パッチアンテナのアンテナ部自身のサイズは、2.45GHzの場合、自由空間波長の半波長が62.5mmとなるので、この62.5mm角(基板が発砲フォーム等の場合)となるのに比較しても本実施形態の円偏波アンテナ1では小型化することができている。
また、2点給電方式の円偏波アンテナは、2点で給電するための二分配回路や外部回路が必要であり、給電系が複雑になるのに対し、本実施形態の円偏波アンテナ1では、給電ライン42を第2アンテナとして機能させているので、簡単な構造であって容易に製造することができる。
従って、EM給電部41に対する給電ライン42の接続位置(給電位置)、言い換えると、給電ライン42と破断環状アンテナの直線部24との距離F(図2参照)を変化させることが可能になる。また、比帯域幅をより広く確保することができると共に、安定給電が可能になる。
図6は円偏波アンテナ1のリターンロス特性を、図7は指向性特性を、図8は軸比特性を表したものである。
図6に示されるように、円偏波アンテナ1は2.57GHzの共振周波数である。
また、図示していないが、円偏波アンテナ1の効率=75.8%と高効率が確保されている。
さらに、図8(b)に示すように、X-Y面(θ=90°)において、3dB以下の周波数が、56.0度~94.0度(BW=38.0度)と、267.0度~288.0度(BW=21.0度)であり、良好な角度幅が得られていることがわかる。
このように、本実施形態の円偏波アンテナ1では、軸比≦3dBを満たす角度幅は、Z-Y面では90度前後、X-Y面では30度前後となり、良好な円偏波特性を示す。
図9は円偏波アンテナ1のt=0とt=T/4における面電流密度を表し、図10は、t=T/2とt=3T/4における面電流密度を表したもので、それぞれの位相が90度ずれた状態を表している。ここでTは周期を示す。
なお、図9、10では、面電流密度の状態を表した模式図であり、破断環状部22とEM給電部41は最も電流値が大きく面電流特性が解りやすい層である3層目(Layer3)を代表して表示している。
図面精度の都合で詳細な分布までは表示できていないが、t=0から3T/4まで位相が90度変化する毎の面電流密度の分布状態から、破断環状アンテナ20は強、弱、強、弱と面電流密度状態が変化しており、給電ライン42は常に一定レベルの面電流密度を示している。
図9、10に示すように、円偏波アンテナ1では、破断環状アンテナ20(第1アンテナとして機能)と、破断環状アンテナ20に対して直交状態に配置される給電ライン42(第2アンテナとして機能)とが、t=T/2とt=3T/4においてπ/2の位相差を持つことで、円偏波が発生していることが示される。
一般にアンテナでは、光の速度c、周波数f、波長λとすると、c=f×λの関係にある。そのため、第1実施形態で説明した円偏波アンテナ1のサイズを小さくすると、周波数fは大きくなることが一般に予想される。
これに対して、本願発明者は、第1実施形態の円偏波アンテナ1の試作、実験課程において、第1アンテナとして機能する破断環状アンテナ20において、破断部Aの位置を破断環状部22の長手方向中央から端部に形成することで、共振周波数が10%程度低下することを発見した。
このため、第2、第3実施形態の円偏波アンテナ1では、第1実施形態と同一の周波数(2.57GHz)で、長手方向の端部に破断部Aを設けることで、より小型化することが可能になる。
以下第2、第3実施形態における円偏波アンテナ1について説明するが、第1実施形態と同一部分、相当する部分については同一の符号を付して適宜その説明を省略し、第1実施形態と相違する部分を中心に説明することとする。
第2実施形態における円偏波アンテナ1では、第1実施形態の円偏波アンテナ1と同様にEM給電部41により電磁的に給電し、破断部Aを長手方向の端部に配置したものである。
図11は、第2実施形態の円偏波アンテナ1における破断環状アンテナ20と給電部40の大きさと位置関係を表した説明図である。
図11に示すように、破断環状部22の縦×横のサイズ、及び、各直線部の幅は第1実施形態と同じである。
第2実施形態の破断環状部22の破断部Aは、長手方向の中央ではなく、端部に形成されている。このため、破断環状部22は互いに直交する4本の直線部23~26で構成され、直線部23と直線部26の一端側が開放端となっている。
直線23は第1実施形態よりも長く、直線部26の側面部から破断部Aの幅0.1mmだけ手前まで延びている。
直線部23の破断部A側の端部には、長さ1.45mmの延設部28が、破断環状部22の内側に延設されている。
第2実施形態において、延設部28と対向している、直線部26の開放端側の一部(開放端から長さ1.95mmの部分)が延設部(29)として機能している。
EM給電部41を第1実施形態よりも長く形成することで、効率的に給電することができる。
一方、給電ライン42は第1実施形態と同様に3層目だけに配設され、一端側がEM給電部41cに電気的に接続されている。
1層目(Layer1)には、図12(a)に示すように、破断環状アンテナ20aと、EM給電部41aと、地導体板10aが配設される。
2層目(Layer2)には、図12(b)に示すように、破断環状アンテナ20bとEM給電部41bが配設される。
3層目(Layer3)には、図12(c)に示すように、破断環状アンテナ20cと、EM給電部41cと給電ライン42が配設され、破断環状アンテナ20cの直線部25cには、給電ライン42を通すための破断部251が形成されている。第2実施形態においても、給電ライン42が第2アンテナとして機能する。
4層目(Layer4)には、図12(d)に示すように、破断環状アンテナ20dと、EM給電部41dと、地導体板10dが配設される。
また、円偏波アンテナ1を構成する各部の材料や材料定数については、図5で説明した第1実施形態と同じである。
この点については、第3実施形態も同様である。
図13に示されるように、円偏波アンテナ1は2.30GHzの共振周波数である。
また、図示していないが、円偏波アンテナ1の効率=75.5%と高効率が確保されている。
このように第2実施形態の円偏波アンテナ1によれば、第1実施形態と同一の外形サイズであるが、破断部Aを破断環状部22の長手方向の端部に形成することで、共振周波数を10%程度低下させることができる。
従って、長手方向の端部に破断部Aを設けた第2実施形態の円偏波アンテナ1により、第1実施形態と同一の周波数(2.57GHz)とした場合には、より小型化することができる。
また、本実施形態の円偏波アンテナ1では、図15(a)に示すように、Z-Y面(φ=90°)において、良好な円偏波の目安である3dB以下の周波数が、42.0度~78.0度(BW=36.00度)と、276.0度~317.0度(BW=41.0度)であり、良好な角度幅が得られている。
さらに、図15(b)に示すように、X-Y面(θ=90°)において、3dB以下の周波数が、48.0度~79.0度(BW=31.0度)と、267.0度~288.0度(BW=21.0度)であり、良好な角度幅が得られていることがわかる。
このように、本実施形態の円偏波アンテナ1では、軸比≦3dBを満たす角度幅は、Z-Y面では40度前後、X-Y面では35度前後となり、良好な円偏波特性を示す。
但し、図9、10と同様に、図面精度の都合で詳細な分布までは表示できないため、第2実施形態の面電流密度特性については図示しないこととする。
(5)第3実施形態の概要
第3実施形態の円偏波アンテナ1では、EM給電部41により破断環状アンテナ20に電磁的に給電する第1、第2実施形態と異なり、給電ライン42から破断環状アンテナ20に電気的な接続による直接給電を行う。
一方、第3実施形態の円偏波アンテナ1では、破断部Aを第2実施形態と同様に長手方向の端部に配置している。
図16は、第3実施形態の円偏波アンテナ1における破断環状アンテナ20と給電部40の大きさと位置関係を表した説明図である。
図16に示すように、破断環状部22の縦×横のサイズ、及び、各直線部の幅は第1実施形態と同じである。
第3実施形態の破断環状部22の破断部Aは、第2実施形態と同様に長手方向の端部に形成され、互いに直交する4本の直線部23~26のうちの直線部23と直線部26の一端側が開放端となっている。
また、第2実施形態と同様に、延設部28は直線部26の開放端側に形成され、この延設部28と対向している直線部26の開放端側が延設部(29)として機能している。
給電ライン42と直線部24との間隔Fは、第1実施形態よりも広いF=1.0mmである。これは整合の最適化を図った結果である。
給電ライン42の他端側については、第1実施形態と同じである。
1層目、4層目には、図17(a)(d)に示すように、破断環状アンテナ20a、20dと、地導体板10a、10dが配設される。
2層目には、図17(b)に示すように、破断環状アンテナ20bが配設される。
3層目には、図17(c)に示すように、破断環状アンテナ20cと給電ライン42が配設され、破断環状アンテナ20cの直線部25cには、給電ライン42を通すための破断部251が形成されている。第3実施形態においても、給電ライン42が第2アンテナとして機能する。
図18に示されるように、第3実施形態の円偏波アンテナ1は、第2実施形態と同じく共振周波数が2.30GHzである。また、図示していないが、円偏波アンテナ1の効率=73.3%と、本実施形態の円偏波アンテナ1でも高効率が確保されている。
このように第3実施形態の円偏波アンテナ1によれば、第1実施形態と同一の外形サイズであるが、破断部Aを破断環状部22の長手方向の端部に形成することで、第2実施形態と同様に、共振周波数を10%程度低下させることができる。
従って、長手方向の端部に破断部Aを設けた第3実施形態の円偏波アンテナ1により、第1実施形態と同一の周波数(2.57GHz)とした場合には、より小型化することができる。
また、本実施形態の円偏波アンテナ1では、図20(a)に示すように、Z-Y面(φ=90°)において、良好な円偏波の目安である3dB以下の周波数が、42.0度~84.0度(BW=42.00度)と、271.0度~316.0度(BW=45.0度)であり、良好な角度幅が得られている。
さらに、図20(b)に示すように、X-Y面(θ=90°)において、3dB以下の周波数が、47.0度~85.0度(BW=38.0度)と、271.0度~315.0度(BW=44.0度)であり、良好な角度幅が得られていることがわかる。
このように、本実施形態の円偏波アンテナ1では、軸比≦3dBを満たす角度幅は、Z-Y面では40度前後、X-Y面では35度前後となり、良好な円偏波特性を示す。
但し、図9、10と同様に、図面精度の都合で詳細な分布までは表示できないため、第3実施形態の面電流密度特性については図示しないこととする。
第1~第3の各実施形態では、円偏波アンテナ1を4層で構成し、1層目~4層目に破断環状アンテナ20a~20dを配設した。これに対し、変形例としては、4層に限られず、単層、2層、3層、5層以上とすることが可能である。
例えば、破断環状アンテナ20を2層とした場合、1層の絶縁層11の一方の側に1層目の破断環状アンテナ20aと地導体板10aを、他方の側に2層目の破断環状アンテナ20bと地導体板10b(実施形態の地導体板10dに対応)を配設する。そして給電部40を、1層目又は2層目の何れか一方に配設する。この給電部40が配設される側の破断環状アンテナ20は、実施形態で説明したように、破断環状部22の直線部25に破断部251を形成する。
なお、破断環状アンテナ20、EM給電部41(第1実施形態と第2実施形態)、地導体板10は、それぞれビア接続するのは同じである。
この給電部40は、絶縁層11の一方の面に形成されることから、実施形態において図4で説明したような給電用のスルーホール31、32は形成されない。
ただし、給電部40が形成されている面(層)と反対側の面(層)に給電端子を形成する場合には、図4(b)と同様にスルーホール32及び給電端子36を形成する。
なお、1層の場合にはビア接続される他層が存在しないため、破断環状アンテナ20の直線部25に破断部251を形成することができない。このため、直線部25と給電ライン42との交差範囲に絶縁膜などの絶縁層を配設する。
一方、5層以上とする場合には、図2(b)に示した破断環状アンテナ20bの数と絶縁層11を層数にあわせて増加させる。この場合、図2(c)に示した破断環状アンテナ20と給電部40が配設された層に対して、上下いずれの側に増加してもよく、6層以上とする場合には上下の両方の側に増加するようにしてもよい。
いずれの場合であっても図3(c)で示したように、給電ライン42が配設される層の破断環状アンテナ20は、その直線部25に破断部251を設ける。
更に、説明した実施形態及び変形例では、給電ライン42を1層とする場合について説明したが、給電ライン42を多層化するようにしてもよい。この場合、各層の給電ライン42はビア接続する。
これに対する変形例として、絶縁層11を、地導体板10、破断環状アンテナ20、給電部40の投影領域以外の領域を切り取った形状としてもよい。
すなわち、地導体板10が配設されていない側の両角部分を切り取った形状にすることも可能である。角部分を切り取る形状としては、斜めに切り取る三角形状の場合と、矩形形状の場合のいずれでもよい。
ただし、絶縁層11は、地導体板10、破断環状アンテナ20、給電部40の投影領域から所定距離離れた範囲で残されていることが放射効率上は好ましい。
10 地導体板
11 絶縁層
12 ビア接続(地導体板)
20 破断環状アンテナ
21 ビア接続(破断環状部、EM給電部)
22 破断環状部
23~27 直線部
28、29 延設部
40 給電部
41 EM給電部
42 給電ライン
251 破断部
Claims (9)
- 破断部が形成された破断環状部と、
前記破断環状部の破断部を形成する一方の端部と連続し、前記破断環状部の内側、又は外側方向に延設された第1延設部と、
前記破断環状部の破断部を形成する他方の端部と連続し、前記第1延設部に対して所定間隔で並行して形成された第2延設部と、
前記破断環状部から所定距離だけ隔てて配設された地導体板と、
前記破断環状部の内側に、前記破断環状部の長手方向の一部と所定間隔をおいて対向配置されることで、前記破断環状部に電磁的に接続されたEM給電部と、
前記破断環状部の長手方向に対して直交状態に配設され、一端側が前記EM給電部と電気的に接続され、前記地導体板まで延びる他端側に給電点を備え、前記EM給電部を介して前記破断環状部に給電する給電ラインと、を具備し、
前記破断環状部と前記第1延設部、前記第2延設部は第1アンテナとして機能し、前記給電ラインは第2アンテナとして機能している、
ことを特徴とする円偏波アンテナ。 - 前記破断部は、前記破断環状部の長手方向の中央に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の円偏波アンテナ。 - 前記破断部は、前記破断環状部の長手方向の端部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の円偏波アンテナ。 - 長手方向の端部に破断部が形成された破断環状部と、
前記破断環状部の破断部を形成する一方の端部と連続し、前記破断環状部の内側、又は外側方向に延設された第1延設部と、
前記破断環状部の破断部を形成する他方の端部と連続し、前記第1延設部に対して所定間隔で並行して形成された第2延設部と、
前記破断環状部から所定距離だけ隔てて配設された地導体板と、
一端側が前記破断環状部と電気的に接続され、前記地導体板まで延びる他端側に給電点を備えた給電ラインと、を具備し、
前記破断環状部と前記第1延設部、前記第2延設部は第1アンテナとして機能し、前記給電ラインは第2アンテナとして機能している、
ことを特徴とする円偏波アンテナ。 - 前記第1アンテナと前記第2アンテナの偏波がほぼπ/2の位相差である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナ。 - 前記破断環状部は、前記地導体板と平行に配設された矩形形状であり、前記地導体板と平行な2辺のうち前記地導体板から離れた側の辺に破断部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナ。 - 前記1対の延設部は、前記破断環状部の内側に、又は外側に延設されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナ。 - 前記破断環状部と前記延設部は、絶縁層を介してビア接続された複数層に形成され、
前記給電ラインの前記一端は、いずれか1の層の破断環状部に、前記EM給電部を介して電磁的に接続され、又は電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1の請求項に記載の円偏波アンテナ。 - 前記地導体板は、前記破断環状部の最上層と最下層に対応した2層に形成され、
前記地導体板の2層はビア接続されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の円偏波アンテナ。
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