添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1から図6は、第1実施形態に係るウェーハ11の加工における各ステップ、加工に用いる装置等を示す図である。また、図7は、第1実施形態に係る加工方法のフローチャートである。
図1は、ウェーハ11の裏面11b側を支持テープ17bに貼り付けるウェーハ支持ステップ(S10)を示す斜視図である。樹脂等で形成されている支持テープ17bは、環状のフレーム17aの開口よりも大きな径を有している。支持テープ(ダイシングテープ)17bの周辺部は、金属で形成された環状のフレーム17aに貼り付けられており、支持テープ17bの中央部は、フレーム17aの開口で露出している。
支持テープ17bは、例えば、基材層と、当該基材層上の全面に設けられた粘着層とを有する。粘着層は、例えば、紫外線硬化型の樹脂層であり、フレーム17a等に対して強力な粘着力を発揮する。フレーム17aの開口には支持テープ17bの粘着層が露出している。
本実施形態のウェーハ11は、可視光線(例えば、360nm以上830nm以下)に対して透明であるガラスからなる板状基板であるが、ウェーハ11のガラスの種類は、特に限定されない。ウェーハ11のガラスは、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の各種ガラスであってよい。
なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、シリコン等の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等をウェーハ11として用いることもできる。
ウェーハ11は、例えば、100μm以上1000μm未満の厚さ(Z軸方向の長さ)を有する。本実施形態のウェーハ11は730μmの厚さを有する。また、ウェーハ11は、平面視で長辺と短辺とを有する矩形状に形成されている。
本実施形態では、ウェーハ11の長辺と平行な方向を第1方向とし、ウェーハ11の短辺と平行な方向を第2方向とする。なお、図1では、第1方向を数字1で示し、第2方向を数字2で示す。
裏面11bとは反対側のウェーハ11の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)11cによって複数の領域に区画される。本実施形態では、分割予定ライン11cで区画される各領域は、20mm角の矩形領域である。
なお、本実施形態のウェーハ11における各領域の表面11a側には、デバイス等が形成されていない。また、本実施形態のウェーハ11の表面11a側は、直線状の分割予定ライン11cによって矩形状の領域に区画されるが、分割予定ライン11cを曲線状にして、曲線状の分割予定ライン11cによってウェーハ11の表面11a側を円形状の領域に区画してもよい。
ウェーハ11の表面11a上の全面には、偏光膜13が形成されている。偏光膜13もウェーハ11と同様に分割予定ライン11cによって複数の領域に区画される。偏光膜13は、ウェーハ11の第1方向に沿った長手部を有する複数の凸部を備える。つまり、複数の凸部の各々は、第1方向に沿ってストライプ状に形成されている。第2方向で隣接する2つの凸部は所定の間隔を空けて設けられており、この2つの凸部の間には溝が形成されている。図1では、この溝を偏光膜13中に線で示している。
偏光膜13の凸部は、金属材料で形成されて光を反射する反射層と、反射層上に半導体材料で形成され光を吸収する吸収層との積層構造で構成されている。偏光膜13は、凸部の表面と、2つの凸部の間に位置する溝の底部でウェーハ11の表面11aとに接する酸化膜を更に含む。当該酸化膜は、ウェーハ11上に複数の凸部を形成した後、例えば、熱酸化等の酸化工程を経て形成される。酸化膜は凸部の高さよりも十分に薄く、酸化膜は2つの凸部間の溝を完全には充填しない。
本実施形態の偏光膜13は、上述の様に無機材料で形成された、いわゆるワイヤーグリッド偏光膜であるが、偏光膜13の材質、形状、構造等は特に制限されない。例えば、偏光膜13として、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素イオン等を配向させて形成された有機材料の偏光膜等を用いることもでき、その他の偏光膜を用いることもできる。
なお、図1では、分割予定ライン11cを説明するために、偏光膜13とウェーハ11とを離して示しているが、偏光膜13はウェーハ11の表面11aに接して設けられており、偏光膜13とウェーハ11とは積層体15を構成している。
ウェーハ支持ステップ(S10)では、フレーム17aの開口に露出した支持テープ17bの粘着層に、ウェーハ11の裏面11b側を貼り付ける。これにより、フレーム17a、支持テープ17b及び積層体15が一体化されたウェーハユニット19を形成する(図2を参照)。
本実施形態では、上述のウェーハ支持ステップ(S10)の後に、レーザービームLを偏光膜13のウェーハ11とは反対側に位置する外面13a側からウェーハ11に照射して、改質層11d(図3を参照)を形成する(第1の改質層形成ステップ(S20))。
第1の改質層形成ステップ(S20)は、レーザー加工装置20を用いて行われる。図2は、ウェーハ11の第1方向に沿って改質層11dを形成する第1の改質層形成ステップ(S20)におけるウェーハユニット19及びレーザー加工装置20の斜視図である。
図3は、ウェーハ11の第1方向に沿って改質層11dを形成する第1の改質層形成ステップ(S20)で、直線偏光であるレーザービームLの偏光方向を制御してウェーハ11に改質層11dを形成する様子を示す図である。なお、本実施形態におけるレーザービームLの偏光状態は、レーザービームLの進行方向に対して電場及び磁場が各々特定の方向に振動する直線偏光である。
図2に示す様に、レーザー加工装置20のチャックテーブル28の上面には、支持テープ17bの基材層の裏面(即ち、支持テープ17bの基材層の粘着層とは反対側の面)が接するよう、ウェーハユニット19が配置される。
チャックテーブル28は、ウェーハ11よりも大きな円形状の上面を有しており、当該上面はX軸方向及びY軸方向に対して概ね平行に形成されている。チャックテーブル28の上面の中央領域には、多孔質セラミックス等で形成されたポーラス板が設けられている。
ポーラス板は、チャックテーブル28の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引手段(不図示)に接続されている。ポーラス板及び吸引路を介して吸引手段の負圧をウェーハ11に作用させることで、ポーラス板の上面はウェーハ11を吸引保持する保持面28a(図3等を参照)として機能する。
チャックテーブル28の下方には、移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル28は、この移動機構によりX軸方向(即ち、加工送り方向。図2中に両矢印で示し、図3中のチャックテーブル28の下に記号で示す。)及びY軸方向に移動できる。ただし、必ずしもX及びY軸方向の両方向にチャックテーブル28を移動させなくてもよく、X軸方向にのみチャックテーブル28を移動させてもよい。
チャックテーブル28は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転することができる。チャックテーブル28を所定角度だけ回転させることにより、保持面28aによって吸引保持されたウェーハユニット19は同じ所定角度だけ回転させられる。これにより、レーザー加工装置20に対するウェーハ11のX-Y平面での向きが調節される。
図2に示す第1の改質層形成ステップ(S20)では、ウェーハユニット19を回転させることにより、ウェーハ11の第1方向とレーザー加工装置20のX軸方向とが平行になるように、ウェーハ11のX-Y平面での向きが調節されている。
チャックテーブル28に対向する位置には、ウェーハ11に対してレーザービームLを照射するレーザー照射ユニット22が設けられている。また、レーザー照射ユニット22は、その先端部に設けられ高さ方向がZ軸方向と略平行な円筒形状のレーザー加工ヘッド24を有する。レーザー加工ヘッド24は、チャックテーブル28側の下端からパルス状のレーザービームLを出射する。
レーザー照射ユニット22は、レーザー加工ヘッド24の近傍に配置された撮像ユニット26を更に有する。撮像ユニット26により撮像された積層体15の画像は、積層体15とレーザー加工ヘッド24との位置合わせ等に利用される。
図3に示す様に、レーザー照射ユニット22は、レーザー発振器22aを有している。レーザー発振器22aから出射されたレーザービームLは、レーザー加工ヘッド24に入射する。
レーザー加工ヘッド24へ入射したレーザービームLは、レーザー加工ヘッド24中のミラー24cで反射してその進行方向が略90度方向変わる。その結果、レーザービームLは、Z軸方向に沿ってチャックテーブル28へ向かって入射する。
レーザー加工ヘッド24は、レーザービームLを集光する集光レンズ24aを内部に有しており、レーザービームLは、この集光レンズ24aからレーザー加工ヘッド24外へ出射される。集光レンズ24aは、レーザービームLの集光点をウェーハ11の内部に位置付ける機能を有する。
レーザービームLは、ウェーハ11に対して透過性を有する(即ち、ウェーハ11を透過する)所定の波長を有する。所定の波長は、例えば、1064nm程度又は1300nm程度である。また、レーザービームLの平均パワーは、例えば1.0Wである。
レーザー加工ヘッド24は、ミラー24cと集光レンズ24aとの間に波長板24bを有している。本実施形態の波長板24bは、円筒形状のレーザー加工ヘッド24の中心軸を回転軸としてX-Y平面と平行な面内で回転できるように、レーザー加工ヘッド24内に収容されている。
レーザー加工ヘッド24は、波長板24bを回転させる回転機構を有する。この回転機構の回転角度は、例えば手動で調節可能であるが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で形成された小型のロータリーアクチュエーターで調節されてもよい。
波長板24bは、レーザービームLの偏光方向を変える機能を有する。波長板24bは、例えば、λ/2波長板(即ち、半波長板)であり、レーザービームLの進行方向に垂直な面内で、直線偏光の偏光方向を任意の角度だけ回転させることができる。
例えば、レーザービームLの偏光方向がλ/2波長板の光学軸(高速軸ともいう)に対して反時計回りに角度θだけ傾いている場合に、λ/2波長板を透過したレーザービームLの偏光方向は、λ/2波長板の光学軸に対して時計回りに角度θだけ傾く。つまり、レーザービームLの偏光方向は、λ/2波長板の透過前と透過後とで角度2θだけ回転する。仮に、角度θを45度とすれば、λ/2波長板を透過したレーザービームLの偏光方向は90度回転する。
レーザー発振器22aから出射されるレーザービームLの偏光方向は、予め定められている。それゆえ、波長板24bの光学軸を回転させてその向きを適宜調節することにより、レーザービームLの偏光方向をレーザービームLの進行方向に垂直な面内で回転させることができる。これにより、レーザービームLの偏光方向を制御できる。
波長板24bにより、レーザービームLの偏光方向を偏光膜13に対して調節することで、レーザービームLが偏光膜13に吸収・反射されるか、及び、レーザービームLが偏光膜13を透過するかを調節できる。
本実施形態の偏光膜13はワイヤーグリッド偏光膜であるので、レーザービームLの偏光方向が、ストライプ状である凸部の延伸方向(溝の延伸方向でもある)と直交する場合に、レーザービームLは偏光膜13を透過する。これに対して、レーザービームLの偏光方向が、ストライプ状である凸部の延伸方向と平行である場合に、レーザービームLは偏光膜13に吸収又は反射される。
図3に示す第1の改質層形成ステップ(S20)では、レーザービームLの偏光方向をウェーハ11の第1方向と直交させる。これにより、外面13a側から照射されたレーザービームLは、偏光膜13を透過する。
第1の改質層形成ステップ(S20)では、まず、レーザー加工装置20のX軸方向とウェーハ11の第1方向とが平行となる様に、チャックテーブル28を回転させる。そして、レーザー加工ヘッド24とチャックテーブル28とを相対的にX軸方向に動かしつつ、レーザー加工ヘッド24から積層体15に対してレーザービームLを照射する。
本実施形態では、ウェーハ11の第1方向の一端から他端までレーザービームLを照射するように、チャックテーブル28をX軸方向に沿って移動させることで、ウェーハ11の第1方向と平行な分割予定ライン11c(図1を参照)に沿って直線状にレーザービームLを照射する(1回(即ち、1パス)のレーザービームLの照射)。直線状にレーザービームLを照射するときのチャックテーブル28の移動速度は、例えば、500mm/sである。
本実施形態では、偏光膜13を透過したレーザービームLの集光点を、ウェーハ11の内部の特定の深さに位置付ける。集光点には多光子吸収が生じ、ウェーハ11が変質する。これにより、機械的強度等が低下した改質層11dが形成される。改質層11dは、例えば、ウェーハ11が部分的に溶融した領域である。
本実施形態では、集光点の深さ位置を変えて、上述の1回のレーザービームLの照射を繰り返す。これにより、ウェーハ11内部の異なる深さ位置に改質層11dを形成する。集光点の深さ位置を変えて5回から10回(例えば、8回)、レーザービームLを照射して、ウェーハ11の厚さ方向で隣接する改質層11dが互いに接続された複数の改質層11dを形成する(図6を参照)。
次に、第2の改質層形成ステップ(S30)について説明する。図4は、ウェーハ11の第2方向に沿って改質層11dを形成する第2の改質層形成ステップ(S30)におけるウェーハユニット19及びレーザー加工装置20の斜視図である。
第2の改質層形成ステップ(S30)では、第1の改質層形成ステップ(S20)におけるチャックテーブル28の向きを90度回転させる。これにより、レーザー加工装置20のX軸方向とウェーハ11の第2方向とが平行になる。
第2の改質層形成ステップ(S30)における偏光膜13の凸部の延伸方向は、図2に示す第1の改質層形成ステップ(S20)における凸部の延伸方向と直交する。それゆえ、仮に、レーザービームLの偏光方向が第1の改質層形成ステップ(S20)と同じである場合には、レーザービームLは偏光膜13により吸収又は反射される。
そこで、レーザー加工ヘッド24内の回転機構を用いて、波長板24bを45度回転させる。これにより、レーザービームLの偏光方向は、レーザービームLの進行方向に垂直な面内で90度回転されて、偏光膜13の凸部の延伸方向と直交する。
図5は、第2の改質層形成ステップ(S30)で、レーザービームLの直線偏光の偏光方向を制御してウェーハ11に改質層11dを形成する様子を示す図である。なお、本明細書では、第1の改質層形成ステップ(S20)及び第2の改質層形成ステップ(S30)の両方を合わせて、改質層形成ステップと称する場合がある。
第2の改質層形成ステップ(S30)では、レーザービームLの偏光方向が偏光膜13の凸部の延伸方向と直交するので、偏光膜13の外面13a側から照射されたレーザービームLは、偏光膜13を透過する。
第2の改質層形成ステップ(S30)では、ウェーハ11の第2方向の一端から他端まで直線状にレーザービームLを照射するように、チャックテーブル28をX軸方向に沿って移動させることで、レーザービームLをウェーハ11の第2方向と平行な分割予定ライン11cに沿って照射する。なお、チャックテーブル28の移動方向を、図4中に両矢印で示し、図5中のチャックテーブル28の下に記号で示す。
ウェーハ11の第1方向の異なる複数の位置で、ウェーハ11の第2方向の一端から他端まで直線状にレーザービームLを次々に照射することで、ウェーハ11の第2方向と平行な全ての分割予定ライン11cに沿って改質層11dを形成する。直線状にレーザービームLを照射するときのチャックテーブル28の移動速度は、例えば、500mm/sである。
第2の改質層形成ステップ(S30)では、第1の改質層形成ステップ(S20)と同様に、1つの分割予定ライン11cに沿って、集光点の深さ位置を変えて複数回レーザービームLを照射することで、ウェーハ11内部の異なる深さ位置に改質層11dを形成する。
複数の改質層11dを形成するとき、最も表面11aに近い位置の改質層11dから表面11aまで至るクラック11eが形成される。同様に、最も裏面11bに近い位置の改質層11dから裏面11bまで至るクラック11eが形成される(図6を参照。なお、図6では、X軸方向で改質層11d及びクラック11eと重なる分割予定ライン11cの記載を省略している)。
上述の様に本実施形態では、レーザービームLが偏光膜13を透過するようにレーザービームLの偏光方向を制御するので、偏光膜13を除去しなくても、レーザービームLをウェーハ11内部に到達させることができる。それゆえ、偏光膜13の除去工程を省略することができる。従って、ウェーハ11の加工に要する時間を短縮できる。
改質層形成ステップ(S30)の後に、分割装置(ブレーキング装置)30を用いてウェーハ11に外力を付与し、ウェーハ11を分割予定ライン11cに沿って分割する。図6は、ウェーハ11を分割する分割ステップ(S40)を示す一部断面側面図である。
分割ステップ(S40)は、例えば、図6に示す分割装置30を用いて行われる。本実施形態の分割装置30は、ウェーハユニット19の支持テープ17b側が配置される支持台32を有する。また、分割装置30は、支持台32に支持されたウェーハ11の表面11a側に対して応力を加える押圧刃34を有する。
分割ステップ(S40)では、まず、支持台32上にウェーハユニット19を配置する。そして、ウェーハ11の表面11a側の分割予定ライン11cに対して押圧刃34を押し当てる。これにより、改質層11d及びクラック11e(即ち、分割予定ライン11c)に沿ってウェーハ11は複数のチップ11f(図8(B)参照)に分割される。
なお、本実施形態では、偏光膜13が設けられているウェーハ11の表面11a側をチャックテーブル28で保持しない。それゆえ、偏光膜13がチャックテーブル28と接触することにより破壊されることを防止できる。
ウェーハ11から分割して形成される各チップ11fは、例えば、プロジェクター装置に用いられる偏光素子である。プロジェクター装置は人が視認できる映像をスクリーンに投影するための装置であるので、ウェーハ11としては、可視光線に対して透明であるガラスが好適である。
ところで、偏光膜13を有するウェーハ11を押圧刃34ではなく切削装置により切削して分割することも考えられる。しかしながら、切削時に、切削装置のブレードと、ブレード及びウェーハ11の接触点(即ち、加工点)とに供給される切削水により、分割予定ライン11c以外の領域の偏光膜13も破壊される。それゆえ、偏光膜13付きウェーハ11を分割するときには、本実施形態の様に、分割予定ライン11c以外の領域の偏光膜13に負荷がかからない方法で分割することが望ましい。
ところで、本実施形態では、第2の改質層形成ステップ(S30)でチャックテーブル28を90度回転させたが、第1変形例に係る第2の改質層形成ステップ(S30)では、チャックテーブル28を90度回転させずに、チャックテーブル28をY軸方向に沿って動かしてもよい。
更に、チャックテーブル28をY軸方向に沿って動かすことに代えて、第2変形例に係る第2の改質層形成ステップ(S30)では、レーザー加工ヘッド24をY軸方向に沿って動かしてもよい。
第1及び第2変形例では、第1の改質層形成ステップ(S20)における偏光膜13の凸部の延伸方向と、レーザービームLの偏光方向とが直交していれば、第2の改質層形成ステップ(S30)で、チャックテーブル28の向きとレーザービームLの偏光方向とをそれぞれ回転させなくてよい。
また、第3変形例に係る第2の改質層形成ステップ(S30)では、偏光膜13の凸部の延伸方向に対して、レーザービームLの直線偏光の偏光方向を45度傾けてもよい。
第3変形例では、改質層11dを形成するレーザービームLのエネルギーが第1実施形態に比べて低下するが、レーザービームLの偏光方向を90度回転させずに、チャックテーブル28又はレーザー加工ヘッド24をX軸及びY軸方向に沿って動かすことでウェーハ11に改質層11dを形成できる。このため、第3変形例では、レーザー加工ヘッド24内の回転機構が不要になる点が有利である。
次に、分割装置30を用いた分割ステップ(S40)に代えて、エキスパンド装置40を用いてウェーハ11を分割する第2実施形態を説明する。図8(A)は、第2実施形態に係るエキスパンド装置40上に固定されたウェーハユニット19を示す一部断面側面図である。
エキスパンド装置40は、ウェーハ11の径よりも大きい径を有する円筒状のドラム42を備える。また、エキスパンド装置40は、ドラム42の上端部を外周側から囲むように設けられたフレーム支持台48を含むフレーム保持ユニット44を備える。
フレーム支持台48は、ドラム42の径よりも大きい径の開口を有しており、ドラム42の上端部と同様の高さに配置されている。また、フレーム支持台48の外周側の複数箇所には、クランプ46が設けられている。
フレーム支持台48の上にウェーハユニット19を載せ、クランプ46によりウェーハユニット19のフレーム17aを固定すると、ウェーハユニット19がフレーム支持台48により固定される。
フレーム支持台48は、鉛直方向に沿って伸長する複数のロッド50により支持される。各ロッド50の下端部には、円板状のベース(不図示)により支持されており、ロッド50を昇降させるエアシリンダ52が設けられている。各エアシリンダ52を引き込み状態にすると、フレーム支持台48がドラム42に対して引き下げられる。
分割ステップ(S45)では、まず、エキスパンド装置40のドラム42の上端の高さと、フレーム支持台48の上面の高さとが一致するように、エアシリンダ52を作動させてフレーム支持台48の高さを調節する。
次に、レーザー加工装置20から搬出されたウェーハユニット19をエキスパンド装置40のドラム42及びフレーム支持台48の上に載せる。その後、クランプ46によりフレーム支持台48の上にウェーハユニット19のフレーム17aを固定する。
次に、エアシリンダ52を作動させてフレーム保持ユニット44のフレーム支持台48をドラム42に対して引き下げる。すると、図8(B)に示す様に、支持テープ17bが外周方向に拡張される。図8(B)は、第2実施形態に係る分割ステップ(S45)を示す一部断面側面図である。
支持テープ17bが外周方向に拡張されると、支持テープ17bに支持されたウェーハ11が複数のチップ11fに分離され、且つ、チップ11fどうしの間隔が広げられる。これにより、チップ11fどうしがX-Y平面方向で離れるので、個々のチップ11fのピックアップが容易となる。
なお、第2実施形態の変形例では、分割装置30を用いた分割ステップ(S40)の後に、エキスパンド装置40を用いてチップ11fどうしの間隔を広げてもよい。これにより、個々のチップ11fのピックアップが容易となる。
次に、第1の改質層形成ステップ(S20)の前に偏光膜13上に水溶性の保護膜61を形成し、第2の改質層形成ステップ(S30)後に保護膜61を除去する、第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態で使用される保護膜塗布洗浄装置60の斜視図である。図10(A)は、保護膜被覆ステップ(S15)を示す一部断面側面図であり、図10(B)は、第1の改質層形成ステップ(S20)を示す一部断面側面図であり、図10(C)は、保護膜除去ステップ(S35)を示す一部断面側面図である。また、図11は、第3実施形態に係る加工方法のフローチャートである。
図9に示す様に、保護膜塗布洗浄装置60は、円板状のスピンナテーブル68を有するスピンナテーブル機構62を備えている。スピンナテーブル68は多孔性材料から形成された保持面68aを含み、保持面68aは流路(不図示)を介して吸引手段(不図示)に接続されている。吸引手段が負圧を作用させることにより、スピンナテーブル68は、保持面68a上に配置されたウェーハ11を吸引保持できる。
スピンナテーブル68の外周には、ウェーハユニット19のフレーム17aを押さえる4個の振り子式のクランプ機構66が設けられている。スピンナテーブル68の単位時間当たりの回転数が所定値以下のときには、クランプ機構66の爪部がフレーム17aから離れ、スピンナテーブル68の単位時間当たりの回転数が所定値より大きいときには、爪部がフレーム17aを押さえるように、クランプ機構66は構成されている。単位時間当たりの回転数の所定値は、例えば1000rpmである。
スピンナテーブル68の下方には、スピンナテーブル68とは反対側の下面に開口(不図示)を有するカバー部材82が設けられている。また、スピンナテーブル68の下方には、カバー部材82の開口を介して、スピンナテーブル68を回転駆動するモータ70の出力軸70aが連結されている。
モータ70は円筒形状の筐体に収容されており、この筐体の周囲には複数(本実施形態では、3つ)の支持機構72が設けられている。各支持機構72は、支持脚74と、支持脚74に連結されたエアシリンダ76とを有する。各支持機構72は、支持脚74によりモータ70を支持し、エアシリンダ76を上下方向に移動させる。
スピンナテーブル68及びカバー部材82の周囲には、洗浄水受け機構64が設けられている。洗浄水受け機構64は、使用済の洗浄水を一時的に貯留する洗浄水受け容器78を有する。洗浄水受け容器78の下方には、洗浄水受け容器78を支持する複数の支持脚80が接続されている。
洗浄水受け容器78は、円筒状の外側壁78aと、外側壁78aよりも高さが低くカバー部材82の下方に位置する円筒状の内側壁78bと、外側壁78a及び内側壁78bの各底部を接続するリング状の底壁78cとを有する。
底壁78cの一部には、排水口78dが設けられている。排水口78dには、ドレンホース84が接続されており、洗浄水受け容器78に一時的に貯留された使用済の洗浄水は、ドレンホース84から保護膜塗布洗浄装置60の外へ排出される。
保護膜塗布洗浄装置60は、スピンナテーブル68に保持されたウェーハ11の偏光膜13側に液状樹脂を塗布する塗布手段86を有する。塗布手段86は、スピンナテーブル68に保持されたウェーハ11に向けて液状樹脂を吐出する吐出ノズル88と、吐出ノズル88を支持する概略L字形状のアーム90とを含む。
塗布手段86は、スピンナテーブル68の中心部に対応する位置と、スピンナテーブル68外の退避位置との間で、アーム90を揺動するモータ(不図示)を更に含む。なお、吐出ノズル88は、アーム90を介して液状樹脂供給源(不図示)に接続されている。
液状樹脂は、保護膜61を形成する材料である。この液状樹脂は、例えば、PVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PEG(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等の水溶性の樹脂である。
保護膜塗布洗浄装置60は、積層体15を洗浄する洗浄水供給手段92を有する。洗浄水供給手段92は、スピンナテーブル68に保持された改質層形成後の積層体15に向けて洗浄水を噴出する洗浄水ノズル94と、洗浄水ノズル94を支持する概略L字形状のアーム96とを含む。
洗浄水供給手段92は、スピンナテーブル68の中心部に対応する位置と、スピンナテーブル68外の退避位置との間で、アーム96を揺動するモータ(不図示)を更に含む。なお、洗浄水ノズル94はアーム96を介して洗浄水供給源(不図示)に接続されている。
保護膜塗布洗浄装置60は、積層体15を乾燥させるエア供給手段98を更に有する。エア供給手段98は、スピンナテーブル68に保持された洗浄後の積層体15に向けてエアを噴出するエアノズル100と、エアノズル100を支持する概略L字形状のアーム102とを有する。
エア供給手段98は、スピンナテーブル68の中心部に対応する位置と、スピンナテーブル68外の退避位置との間で、アーム102を揺動するモータ(不図示)を更に含む。なお、エアノズル100は、アーム102を介してエア供給源(不図示)に接続されている。
本実施形態では、第1の改質層形成ステップ(S20)の前に、偏光膜13の外面13a側に液状の材料を塗布して保護膜61を形成する(保護膜被覆ステップ(S15))(図10(A)参照)。
例えば、保護膜被覆ステップ(S15)では、保持面68aに積層体15の裏面11b側を吸着させて、塗布手段86の吐出ノズル88を積層体15上に移動させる。その後、スピンナテーブル68を2000rpmで回転させて、吐出された水溶性の樹脂を偏光膜13上の全面にスピンコーティングする。
保護膜被覆ステップ(S15)後に、上述の第1の改質層形成ステップ(S20)及び第2の改質層形成ステップ(S30)を順次行う。なお、図10(B)は、偏光膜13上に保護膜61を設けた場合の第1の改質層形成ステップ(S20)を示し、チャックテーブル28の移動方向を両矢印で示している。
ところで、レーザービームLの偏光方向が偏光膜13の凸部の延伸方向と直交する場合に、レーザービームLは偏光膜13を透過するが、透過するレーザービームLのエネルギー密度が偏光膜13をアブレーションするほどに高い場合がある。この場合、偏光膜13の一部がアブレーションされてデブリ(debris)13b(図12を参照)となり、偏光膜13から飛散する。
図10(B)では、レーザービームLからアブレーションに相当するエネルギーを受けた偏光膜13の領域を大文字Aで示す。なお、アブレーションされる偏光膜13の一部は、改質層11dの直上に位置しており、分割後のチップ11fの偏光膜13における周辺端部に対応する。それゆえ、偏光膜13の一部がアブレーションされても、チップ11fの偏光膜13の機能に支障はない。
第2の改質層形成ステップ(S30)の後に、洗浄水供給手段92及びエア供給手段98から積層体15に洗浄水及びエアを噴射して保護膜61を除去する(保護膜除去ステップ(S35))(図10(C)参照)。
例えば、保護膜除去ステップ(S35)では、洗浄水ノズル94及びエアノズル100から洗浄水(純水)及びエアをそれぞれ積層体15に供給しながら、スピンナテーブル68を100rpmから200rpmの低回転数で回転させて積層体15を洗浄する。これにより、デブリ13bと共に保護膜61を除去する。
これに対して、偏光膜13上に保護膜61を設けない場合には、レーザービームLを積層体15に照射するときに、偏光膜13の一部がデブリ13bとして飛散し得る。図12は、比較例に係る第1の改質層形成ステップ(S20)を示す一部断面側面図である。
上述の様に第3実施形態では、偏光膜13上に保護膜61が形成されているので、改質層形成ステップ(S20及びS30)でアブレーションされた偏光膜13が飛散することを防止できる。これにより、レーザー加工ヘッド24の集光レンズ24aにデブリ13bが付着することを防止できる。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。