従来、たとえばフライスカッターおよびドリルのような切削工具が開発されている。
[本開示が解決しようとする課題]
切削工具にセンサを取り付けることにより、切削工具による加工の状態を示す物理量を計測することができる。このような計測を用いた優れた技術が望まれる。
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することが可能な切削工具、切削システム、処理方法および処理プログラムを提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る切削工具は、センサを取り付け可能なシャフト部と、前記シャフト部における前記センサの取り付け位置を変更可能な位置変更部とを備える。
このように、シャフト部におけるセンサの取り付け位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。したがって、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することができる。
(2)好ましくは、前記シャフト部は、棒形状であり、拡径部を含み、前記拡径部は、前記シャフト部のうちの他の部分よりも径が太く、前記センサを取り付け可能であり、前記位置変更部は、前記拡径部における前記センサの取り付け位置を変更可能である。
このような構成により、拡径部がシャフト部の剛性を高める。そのため、たとえば、シャフト部の一部を除去してセンサを取り付ける場合であっても、シャフト部の剛性を確保しつつ、シャフト部にセンサを取り付けることができる。
(3)好ましくは、前記位置変更部は、前記シャフト部の軸方向に沿って前記センサの位置を変更することが可能である。
このような構成により、切削対象物を切削している際に切削工具に発生する加速度等を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。これにより、切削対象物を切削している際に切削工具に発生する加速度等を計測することができる。また、シャフト部の軸方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具に発生する変位のうちの曲げの成分に関与する。上記構成により、当該曲げの成分に関する値を算出することができる。
(4)好ましくは、前記位置変更部は、前記シャフト部の径方向に沿って前記センサの位置を変更することが可能である。
このような構成により、切削対象物を切削しているか否かに拘わらず切削工具の回転時に発生する遠心加速度等を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。これにより、切削工具の回転時に切削工具に発生する遠心加速度等を計測することができる。また、シャフト部の径方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具に発生する変位のうちのねじりの成分に関与することから、上記構成により、当該ねじりの成分に関する値を算出することができる。
(5)好ましくは、前記位置変更部は、前記シャフト部の軸方向に沿って前記センサの位置を変更することが可能であり、かつ前記シャフト部の径方向に沿って前記センサの位置を変更することが可能である。
このような構成により、切削対象物を切削している際に切削工具に発生する加速度等を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。これにより、切削対象物を切削している際に切削工具に発生する加速度等を計測することができる。また、切削対象物を切削しているか否かに拘わらず切削工具の回転時に発生する遠心加速度等を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。これにより、切削工具の回転時に切削工具に発生する遠心加速度等を計測することができる。また、シャフト部の軸方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具に発生する変位のうちの曲げの成分に関与することから、上記構成により、当該曲げの成分に関する値を算出することができる。また、シャフト部の径方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具に発生する変位のうちのねじりの成分に関与することから、上記構成により、当該ねじりの成分に関する値を算出することができる。
(6)好ましくは、前記切削工具は、さらに、前記シャフト部に取り付けられたセンサを備える。
このような構成により、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することが可能なセンサ付きの切削工具を提供することができる。
(7)より好ましくは、前記センサは、加速度センサであり、前記加速度センサの計測方向は、前記シャフト部の回転軸を法線とする平面に沿った方向であって、前記加速度センサと前記回転軸とを結ぶ直線に対して直交する方向に沿う。
このような構成により、切削対象物との接触に伴う振動等の加速度を計測することができる。
(8)より好ましくは、前記切削工具は、歪センサ、温度センサおよび音センサのうちの少なくともいずれか1つを前記センサとして備える。
このような構成により、たとえば、シャフト部に発生する歪の異常な増大、シャフト部に異常な振動が発生した場合の摩擦熱および異音、のうちの少なくともいずれか1つを検出することができる。
(9)より好ましくは、前記切削工具は、さらに、無線通信装置を備え、前記無線通信装置は、前記センサの計測結果を示すセンサ情報を送信する。
このような構成により、たとえば、受信側の装置において、各センサの計測結果を用いた異常検知等の処理を行うことができる。
(10)好ましくは、前記シャフト部は、円柱形状であり、前記切削工具は、転削工具である。
このような構成により、たとえば、シャフト部の回転速度等の加工条件に応じてセンサの感度を変更することができる。
(11)本開示の実施の形態に係る切削システムは、上記(9)に記載の切削工具と、管理装置とを備え、前記管理装置は、前記切削工具から前記センサの計測結果を示すセンサ情報を受信する。
このように、シャフト部におけるセンサの取り付け位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。したがって、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することができる。また、たとえば、管理装置において、各センサの計測結果を用いた異常検知等の処理を行うことができる。
(12)本開示の実施の形態に係る処理方法は、切削工具を用いる処理方法であって、前記切削工具は、センサを取り付け可能なシャフト部と、前記シャフト部における前記センサの取り付け位置を変更可能な位置変更部とを備え、前記処理方法は、工作機械に取り付けられた前記切削工具により切削対象物の切削を行い、前記センサの計測結果を蓄積するステップと、前記位置変更部により前記センサの取り付け位置を変更するステップと、前記センサの取り付け位置が変更された前記切削工具により切削対象物の切削を行い、前記センサの計測結果を蓄積するステップと、蓄積した前記各計測結果を処理するステップとを含む。
このように、シャフト部におけるセンサの取り付け位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。したがって、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することができる。また、複数の位置におけるセンサの計測結果に基づいて、たとえば、当該複数の位置の各々において発生する変位のうちの、切削工具の曲げによる成分に関する値、切削工具のねじりによる成分に関する値、および切削工具を支持する支持部材の変位の成分に関する値を算出することができる。すなわち、切削工具による加工の状態および当該切削工具を支持する支持部材の状態を把握することができる。
(13)好ましくは、前記各計測結果を処理するステップにおいては、前記計測結果から前記工作機械に対応する成分を算出する。
このような構成により、たとえば、工作機械における、切削工具を支持する支持部材の状態を把握することができる。
(14)より好ましくは、前記センサは加速度センサである。
このような構成により、複数の位置における加速度センサの計測結果に基づいて、たとえば、当該複数の位置の各々において発生する加速度のうちの、切削工具の曲げによる加速度の成分に関する値、切削工具のねじりによる加速度の成分に関する値、および切削工具を支持する支持部材の加速度の成分に関する値を算出することができる。
(15)本開示の実施の形態に係る処理プログラムは、切削工具を管理する管理装置において用いられる処理プログラムであって、前記切削工具は、センサを取り付け可能なシャフト部と、前記シャフト部における前記センサの取り付け位置を変更可能な位置変更部とを備え、コンピュータを、工作機械に取り付けられた前切削工具により切削対象物の切削が行われ、前記位置変更部により前記センサの取り付け位置が変更され、前記センサの取り付け位置が変更された前記切削工具により切削対象物の切削が行われる際に、前記各切削が行われるごとに前記センサの計測結果を記憶部に書き込む保存処理部と、前記保存処理部によって書き込まれた前記各計測結果を処理する制御部、として機能させるためのプログラムである。
このように、シャフト部におけるセンサの取り付け位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。したがって、より多様な加工条件下において切削工具による加工の状態を計測することができる。また、複数の位置におけるセンサの計測結果に基づいて、たとえば、当該複数の位置の各々において発生する変位のうちの、切削工具の曲げによる成分に関する値、切削工具のねじりによる成分に関する値、および切削工具を支持する支持部材の変位の成分に関する値を算出することができる。すなわち、切削工具による加工の状態および当該切削工具を支持する支持部材の状態を把握することができる。
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す側面図である。
切削工具101は、たとえば、フライス盤等において使用される切削工具であり、具体的には、たとえば、エンドミルである。切削工具101は、金属等からなる切削対象物を切削するために使用される。切削工具101は、アーバ等の工具ホルダ210に保持された状態で使用される。
工具ホルダ210は、工具ホルダ210に回転力を与える柱状の主軸220に取り付けられる。工具ホルダ210は、主軸220の延長線上に配置される柱状の部材である。具体的には、工具ホルダ210の上端部が、主軸220に保持される。また、工具ホルダ210の下端部が、切削工具101を保持する。
図1を参照して、切削工具101は、シャフト部11と、刃取付部12と、図示しない刃部と、加速度センサ14と、位置変更部50とを備える。シャフト部11の上部は、シャンク111を構成し、工具ホルダ210に保持される。なお、切削工具101は、刃部を備えない構成であってもよい。また、刃部は、刃取付部12に一体に固定されたものであってもよいし、刃取付部12に着脱可能に取り付けられるものであってもよい。
図1に示す例では、シャフト部11と刃取付部12との境界を二点鎖線41により示している。
シャフト部11は、後述する拡径部15を除き、シャフト部11の中心軸17に垂直な断面において、円形または多角形の周面を持つ棒形状である。シャフト部11の基材は、たとえば、切削工具用の超硬合金または金型用鋼により構成されている。
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す矢視図である。詳細には、図2は、図1におけるA方向から見た矢視図である。図3は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図3は、図1におけるB方向から見た矢視図である。
図2を参照して、加速度センサ14は、たとえば、一方向の加速度を計測する、いわゆる一軸の加速度センサである。加速度センサ14の計測方向は、たとえば、切削工具101による切削に伴う振動が発生する方向である。すなわち、加速度センサ14は、切削工具101による切削に伴う振動の加速度を計測することができる。具体的には、加速度センサ14の計測方向141は、シャフト部11の回転軸である中心軸17を法線とする平面18に沿った方向であって、加速度センサ14と中心軸17とを結ぶ直線143に対して直交する方向に沿う。
なお、加速度センサ14は、遠心加速度を計測してもよい。この場合、加速度センサ14の計測方向は、たとえば、シャフト部11の中心軸17と加速度センサ14とを結ぶ方向に沿う。また、加速度センサ14は、たとえば、三方向の加速度を計測する、いわゆる三軸の加速度センサであってもよい。また、加速度センサ14の代わりに、他の種類のセンサがシャフト部11に取り付けられてもよい。
図1〜図3を参照して、シャフト部11は、シャフト部11のうちの他の部分よりも径が太く、加速度センサ14を取り付け可能な拡径部15を含む。
詳細には、シャフト部11は、切削工具101の軸方向、具体的には長手方向である方向Xに沿った一部の領域に、方向Xに対して直交する方向である径方向Yにおいてシャフト部11の径を拡大する拡径部15を含む。
具体的には、拡径部15の径は、シャフト部11における拡径部15以外の部分の径よりも大きい。換言すれば、拡径部15は、シャフト部11における拡径部15以外の部分よりも太い。なお、シャフト部11における拡径部15以外の部分が多角形の周面を有する場合、シャフト部11における拡径部15以外の部分の径は、中心軸17方向視で、中心軸17を通り、シャフト部11における拡径部15以外の部分の周面上に両端がある線分のうち最大のものを言う。
切削工具101の方向Xは、シャフト部11の中心軸17に沿っている。たとえば、切削工具101の方向Xおよびシャフト部11の中心軸17は、互いに平行である。
拡径部15は、円柱状に形成されている。図1〜図3に示す例では、拡径部15は、円柱の一部が除去された形状である。本明細書においては、円柱だけでなく、円柱の一部が除去された形状についても円柱状と称する。具体的には、拡径部15は、円柱内におけるシャフト部11の中心軸17に対して平行でかつ平坦な表面55を有する。拡径部15は、表面55に対して中心軸17の反対側の部分が円柱から除去された形状である。なお、拡径部15の径は、中心軸17方向視で、中心軸17を通り、拡径部15の周面上に両端がある線分のうち最大のものを言う。図1〜図3に示す例では、拡径部15の径は、円柱の一部が除去される前の当該円柱の直径に相当する。
また、拡径部15は、表面55の一部において開口し、かつ中心軸17側に凹む凹部16を有する。凹部16は、長方形状に開口している。凹部16の底面161は、表面55と平行な平面である。底面161は、中心軸17に沿って延びるように長方形状に形成されている。表面55には、複数のねじ穴57が形成されている。
なお、図1〜図3に示す例では、拡径部15は1つの表面55を有しているが、これに限定されるものではない。たとえば、拡径部15は、中心軸17に対して互いに反対側に位置する2つの表面55を有する構成であってもよい。このような構成により、拡径部15のバランスがよくなるため、切削工具101の回転時に異常な振動が発生することを防止することができる。
位置変更部50は、シャフト部11に加速度センサ14が取り付けられた状態において加速度センサ14の位置を変更する。
具体的には、たとえば、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向、すなわち、中心軸17に沿った方向に加速度センサ14の位置を変更することが可能である。
図1〜図3に示す例では、方向Xに沿って並ぶ第1のセンサ位置A1、第2のセンサ位置A2、第3のセンサ位置A3、および第4のセンサ位置A4が、加速度センサ14を取り付けることが可能な4つの位置となっている。第1のセンサ位置A1、第2のセンサ位置A2、第3のセンサ位置A3、および第4のセンサ位置A4は、刃取付部12に近い側から遠い側へこの順に並んでいる。
位置変更部50は、第1のセンサ位置A1から第4のセンサ位置A4の範囲において、加速度センサ14の位置を変更できるように構成されている。
具体的には、位置変更部50は、加速度センサ14を支持する台座部51と、凹部16の底面161に形成された複数のねじ穴53と、ねじ穴53と螺合する複数の雄ねじ部材54とを含む。ねじ穴53の数は、たとえば10個であり、雄ねじ部材54の数は4つである。
台座部51は、板状の部材である。台座部51には、雄ねじ部材54の脚部を挿通可能な、図示しない複数の貫通孔が形成される。台座部51には、たとえば4つの貫通孔が形成される。
ねじ穴53は、方向Xに沿った2つの列において、それぞれ、4つずつ形成されている。各列において、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴53と2つ目のねじ穴53とが、第1のセンサ位置A1に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、各列において、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴53と3つ目のねじ穴53とが、第2のセンサ位置A2に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、各列において、刃取付部12に近い側から3つ目のねじ穴53と4つ目のねじ穴53とが、第3のセンサ位置A3に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、各列において、刃取付部12に近い側から4つ目のねじ穴53と5つ目のねじ穴53とが、第4のセンサ位置A4に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
たとえば、第1のセンサ位置A1に加速度センサ14を取り付ける場合には、方向Xに沿った各列における、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴53および2つ目のねじ穴53に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53とを螺合することにより、第1のセンサ位置A1に加速度センサ14が取り付けられる。
そして、加速度センサ14の取付位置を、第1のセンサ位置A1から第2のセンサ位置A2へ移動させる場合には、方向Xに沿った各列における、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53との螺合を解除した後、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴53および3つ目のねじ穴53に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53とを螺合することにより、第2のセンサ位置A2に加速度センサ14が取り付けられる。
位置変更部50は、たとえば、シャフト部11の径方向に加速度センサ14の位置を変更することが可能である。
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す側面図である。詳細には、図4は、位置変更部50がシャフト部11の径方向等に加速度センサ14の位置を変更することが可能であることを示す図である。
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す矢視図である。詳細には、図5は、図4におけるA方向から見た矢視図である。図6は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す矢視図である。詳細には、図6は、図4におけるB方向から見た矢視図である。
図4〜図6を参照して、位置変更部50は、さらに、位置変更板56と、雄ねじ部材58とを含む。位置変更板56は、図1に示す拡径部15の表面55に固定される。位置変更板56が表面55に固定されることにより、拡径部15の凹部16が塞がれる。
図4〜図6に示す位置変更板56は、たとえば、長方形状に形成された板状部材である。位置変更板56は、図1に示す拡径部15の表面55のサイズに一致したサイズを有し、かつ所定の厚みを有する。
図4〜図6に示す例では、方向Xに沿って並ぶ第5のセンサ位置A5、第6のセンサ位置A6、第7のセンサ位置A7、および第8のセンサ位置A8は、位置変更板56に対して拡径部15の反対側の領域における、加速度センサ14の新たな4つの取付位置となっている。第5のセンサ位置A5、第6のセンサ位置A6、第7のセンサ位置A7、および第8のセンサ位置A8は、刃取付部12に近い側から遠い側へこの順に並んでいる。
位置変更板56には、図1に示す表面55に形成された複数のねじ穴57に対応する位置に形成された、図示しない複数の貫通孔が形成されている。図4に示す例では、当該貫通孔の数は4つである。当該貫通孔は、雄ねじ部材58の脚部を挿通可能に形成されている。
雄ねじ部材58は、ねじ穴57と螺合する。図4に示す例では、雄ねじ部材58の数は4つである。
また、位置変更板56には、複数のねじ穴60が形成されている。雄ねじ部材54は、ねじ穴60と螺合する。ねじ穴60の数は、たとえば10個である。
各ねじ穴60は、方向Xに沿った2つの列をなすように並んでいる。ねじ穴60は、各列において、それぞれ、5つずつ形成されている。当該各列において、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴60と2つ目のねじ穴60とが、第5のセンサ位置A5に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、当該各列において、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴60と3つ目のねじ穴60とが、第6のセンサ位置A6に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、当該各列において、刃取付部12に近い側から3つ目のねじ穴60と4つ目のねじ穴60とが、第7のセンサ位置A7に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、当該各列において、刃取付部12に近い側から4つ目のねじ穴60と5つ目のねじ穴60とが、第8のセンサ位置A8に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
たとえば、加速度センサ14の設置位置を、第1のセンサ位置A1から第5のセンサ位置A5へ移動させる場合には、まず、方向Xに沿った各列における、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53との螺合を解除する。
次に、拡径部15の表面55上に位置変更板56を配置する。次に、表面55に形成された4つのねじ穴57と、位置変更板56の図示しない貫通孔とを位置合わせした状態において、各ねじ穴57と雄ねじ部材58とを螺合することにより、表面55に位置変更板56を固定する。
次に、位置変更板56上に台座部51を配置する。次に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴60および2つ目のねじ穴60に、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴60とを螺合することにより、第5のセンサ位置A6に加速度センサ14が取り付けられる。
また、加速度センサ14の設置位置を、第5のセンサ位置A5から第6のセンサ位置A6へ移動させる場合には、方向Xに沿った各列における、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴60との螺合を解除する。
次に、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴60および3つ目のねじ穴60に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴60とを螺合することにより、第6のセンサ位置A6に加速度センサ14が取り付けられる。
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具を模式的に示す側面図である。具体的には、図7は、図1に示す切削工具101を片持ち梁とみなした場合の切削工具の模式的側面図である。
図7を参照して、切削工具101の端部に位置する刃取付部12または刃部に、荷重すなわち切削抵抗Fが加えられる場合を想定する。
図8は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。具体的には、図8は、図7に示す切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図8における横軸および縦軸は、それぞれ、切削工具101すなわち片持ち梁の支点からの距離、および変位量を示している。
すなわち、図8は、図7に示す切削工具101の刃取付部12または刃部に切削抵抗Fが加えられた場合における、切削工具101の変形の度合いを示している。
図8に示すシミュレーション結果から、切削工具101の刃取付部12または刃部に近いほど、切削工具101の変位量が大きくなることが分かる。このため、切削工具101に加速度センサ14を取り付ける場合には、加速度センサ14の取付位置が、刃取付部12または刃部に近いほど、加速度センサ14の感度が高くなる。
以上のことから、負荷の大きい加工条件下において加速度を計測する場合には、切削工具101の支点すなわち根本部に加速度センサ14を取り付ける一方で、負荷の小さい加工条件下において加速度を計測する場合には、切削工具101の端部に近い位置に加速度センサ14を取り付ける。これにより、負荷が大きい場合には意図的に加速度センサ14の感度を低下させ、負荷が小さい場合には意図的に加速度センサ14の感度を高めることができる。
したがって、切削工具101に加えられる負荷の程度に応じて加速度センサ14の位置を変更することにより、多様な加工条件下において加速度を計測することができる。
図9は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの構成を示す図である。詳細には、図9は、切削工具が、図1に示す構成要素に加えて、さらに、電池および無線通信装置を備えた状態を示す図である。なお、図9においては、電池および無線通信装置を想像線である二点鎖線により示している。
図9を参照して、切削工具101は、図1に示す構成に加えて、さらに、電池22、無線通信装置23およびハウジング24を備える。
電池22は、図示しない電力線を介して、加速度センサ14および無線通信装置23と接続されている。電池22は、電力線を介して、加速度センサ14および無線通信装置23へ電力を供給する。電力線には、電力供給のオンおよびオフを切り替えるスイッチが設けられている。
無線通信装置23は、図示しない信号線を介して、加速度センサ14と接続されている。加速度センサ14は、シャフト部11において生じる加速度を示す計測信号を信号線経由で無線通信装置23へ出力する。
無線通信装置23は、加速度センサ14から計測信号を受けると、受けた計測信号の示す計測結果を無線信号に含めて外部のパーソナルコンピュータ等の管理装置301へ送信する。管理装置301は、たとえば、受信した計測結果を蓄積し、蓄積した計測結果を処理する。具体的には、たとえば、管理装置301は、受信したセンサ情報が示す計測結果を解析する。
また、無線通信装置23は、加速度センサ14と刃取付部12または刃部との位置関係、すなわち、切削工具101における計測位置と切削位置との位置関係を示す第1の位置情報を、図示しない記憶部から取得して管理装置301へ送信する。
切削工具101は、さらに、図示しない操作入力部を備える。当該操作入力部は、ユーザにおいて加速度センサ14の取付位置を入力可能に構成されている。具体的には、たとえば、当該操作入力部は、ユーザが、センサ位置A1〜A8のうち、加速度センサ14が取り付けられたセンサ位置を選択することができる操作ボタンである。
第1の位置情報は、上記操作入力部において入力された加速度センサ14の取付位置に対応する。
管理装置301は、たとえば、受信した第1の位置情報を蓄積し、蓄積した第1の位置情報を解析する。
第1の位置情報の示す位置関係は、たとえば、計測位置と切削位置との距離である。なお、第1の位置情報は、これに限定されるものではなく、当該計測位置と当該切削位置との距離、および当該計測位置に対する当該切削位置の方向または当該切削位置に対する当該計測位置の方向を示してもよい。
また、無線通信装置23は、加速度センサ14とシャフト部11の中心軸17との位置関係、すなわち、切削工具101における計測位置と中心軸17との位置関係を示す第2の位置情報を、上記記憶部から取得して管理装置301へ送信する。第2の位置情報は、上記操作入力部において入力された加速度センサ14の取付位置に対応する。
管理装置301は、たとえば、受信した第2の位置情報を蓄積し、蓄積した第2の位置情報を解析する。
第2の位置情報の示す位置関係は、たとえば、計測位置と中心軸17との距離である。なお、第2の位置情報は、これに限定されるものではなく、当該計測位置と中心軸17との距離、および中心軸17に対する当該切削位置の方向または当該切削位置に対する中心軸17の方向を示してもよい。
ハウジング24は、加速度センサ14、電池22、無線通信装置23、電力線および信号線を収容した状態、具体的には、加速度センサ14等をこれらの下方および側方から覆った状態において、電池22および無線通信装置23を保持する。
図10は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムにおける管理装置の構成を示す図である。
図9および図10を参照して、切削システム201は、フライス盤等の工作機械202と、管理装置301とを備える。
工作機械202は、切削工具101と、切削工具101を保持する工具ホルダ210と、工具ホルダ210を保持する主軸220と、主軸220に回転力を与える図示しない駆動部と、当該駆動部を制御する図示しない制御部とを備える。駆動部は、主軸220および工具ホルダ210を介して切削工具101を駆動するモータ等である。制御部は、駆動部の回転数等を制御する。
切削工具101は、加速度センサ14の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す計測結果を処理する。
具体的には、管理装置301は、無線通信部31と、制御部32と、表示部33と、記憶部35と、操作入力部36とを含む。
無線通信部31は、切削工具101の無線通信装置23と無線による通信を行う。具体的には、無線通信部31は、切削工具101の無線通信装置23から、センサ情報を含む無線信号を受信して、当該無線信号に含まれるセンサ情報の示す計測結果を記憶部35に保存する。
操作入力部36は、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む。操作入力部36は、ユーザからの指示およびデータ入力を受け付ける。
記憶部35は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を含む。また、たとえば、記憶部35は、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)またはBD−ROM(Blu−ray(登録商標) Disc Read Only Memory)等の補助記憶装置を含む。また、たとえば、記憶部35は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等の半導体メモリを含む。
記憶部35には、制御部32を動作させるためのプログラムおよびデータ、無線通信部31が切削工具101から受信した計測結果、ならびに制御部32の解析結果等が保存される。なお、記憶部35は、管理装置301の外部に設けられてもよい。
制御部32は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部32は、記憶部35に書き込まれた(蓄積された)加速度センサ14の計測結果を解析し、解析結果を記憶部35に保存する。また、制御部32は、管理装置301における無線通信部31および表示部33等の各ユニットの制御を行う。
表示部33は、たとえば、ディスプレイである。表示部33は、記憶部35に書き込まれた制御部32の解析結果を表示する。なお、表示部33は、管理装置301の外部に設けられてもよい。
また、切削システム201は、工作機械202および管理装置301間の距離が長い等の理由により、両者の間において無線信号の送受信を直接行うことが困難である場合には、両者の間に中継装置を備えてもよい。この場合、工作機械202は、無線信号を中継装置経由で管理装置301へ送信する。
[使用方法]
図9および図10を参照して、切削工具101の使用方法について説明する。
まず、ユーザは、切削工具101のシャフト部11を、たとえば、工作機械202における工具ホルダに固定する。
次に、電力線に設けられたスイッチをオフからオンへ切り替えることにより、電池22から加速度センサ14および無線通信装置23へ電力を供給する。
次に、切削工具101を回転駆動し、切削対象物を切削することにより、シャフト部11に切削に伴う加速度が生じる。
加速度センサ14は、シャフト部11に生じた加速度を示す計測信号を無線通信装置23へ出力する。
次に、無線通信装置23は、加速度センサ14から受けた計測信号の示す計測結果および加速度センサ14の位置情報を無線信号に含めて外部の管理装置301へ送信する。
管理装置301において、無線通信部31は、無線通信装置23から加速度センサ14の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報を記憶部35に保存する。
制御部32は、ユーザから操作入力部36を介して入力された指示に応じて、記憶部35に蓄積された計測結果を解析する。
図11〜図14は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムにおける管理装置における解析結果の一例を示す図である。具体的には、図11〜図14は、切削工具101による切削対象物の切削に伴って切削工具101に生じる加速度の一例を示すグラフである。
図11〜図14は、それぞれ、加速度センサ14を図9に示すセンサ位置A4,A3,A2,A1に取り付けた状態において、切削工具101による切削を行った場合に生じる加速度を示している。
すなわち、図11は加速度センサ14をセンサ位置A4に取り付けた場合に生じる加速度を示し、図12は加速度センサ14をセンサ位置A3に取り付けた場合に生じる加速度を示し、図13は加速度センサ14をセンサ位置A2に取り付けた場合に生じる加速度を示し、図14は加速度センサ14をセンサ位置A1に取り付けた場合に生じる加速度を示している。図11〜図14において、加工条件は同じであり、たとえば、切削抵抗Fは同じであるものとする。
シャフト部11の端部には、シャフト部11の周方向に沿って、図示しない4つの刃部が互いに90°の間隔をあけて設けられているものとする。なお、シャフト部11の周方向は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面上にシャフト部11を投影した場合に、投影されたシャフト部11の周面に沿う方向を意味する。
図11〜図14において、横軸はシャフト部11の中心軸17に対して直交する方向Y1に発生する加速度、縦軸はシャフト部11に対して直交する平面に沿った方向であって、方向Y1に対して直交する方向Y2に発生する加速度を示す。
図11〜図14は、各刃部が切削対象物を切削することによって発生する加速度を示している。図11〜図14から分かるように、図11〜図14では、この順に、計測される加速度が大きくなっている。
すなわち、加速度センサ14の位置が切削工具101の刃取付部12または刃部に近いほど、切削工具101において計測される加速度が大きくなることが分かる。このため、切削工具101における加速度センサ14の取付位置が刃取付部12または刃部に近いほど、加速度センサの感度が高くなることが確認された。
また、加速度センサ14によって遠心加速度を計測する場合、加速度センサ14は、計測方向がシャフト部11の中心軸17と加速度センサ14とを結ぶ方向に沿った方向となるように、拡径部15に取り付けられる。
遠心加速度a[mm/s^2]は、以下の式(1)で表される。
a=r×ω^2 ・・・(1)
式(1)において、rはシャフト部11の中心軸17および加速度センサ14間の距離[mm]であり、ωはシャフト部11の角速度[rad/s]である。また、演算子「^」は、べき乗を表す。
すなわち、遠心加速度aは、距離rが大きいほど、大きくなる。このため、加速度センサ14の取付位置がシャフト部11の中心軸17から遠いほど、加速度センサ14の感度が高くなる。
以上のことから、シャフト部11の回転速度が大きい加工条件下において遠心加速度を計測する場合には、シャフト部11の中心軸17から近い位置に加速度センサ14を取り付ける一方で、シャフト部11の回転速度が小さい加工条件下において遠心加速度を計測する場合には、シャフト部11の中心軸17から遠い位置に加速度センサ14を取り付ける。これにより、前者の場合には意図的に加速度センサ14の感度を低下させ、後者の場合には意図的に加速度センサ14の感度を高めることができる。
具体的には、シャフト部11の回転速度の大きい加工条件下において遠心加速度を計測する場合、加速度センサ14は、拡径部15における凹部16の底面161に取り付けられる。たとえば、加速度センサ14は、センサ取付位置(以下、センサ位置とも称する)A1〜A4のうちのいずれかの位置に取り付けられる。
一方、シャフト部11の回転速度の小さい加工条件下において遠心加速度を計測する場合には、加速度センサ14は、拡径部15に位置変更板56が取り付けられた状態において、位置変更板56に取り付けられる。たとえば、加速度センサ14は、センサ位置A5〜A8のうちのいずれかの位置に取り付けられる。
したがって、切削工具101の回転速度に応じて加速度センサ14の位置を変更することにより、多様な加工条件下において遠心加速度を計測することができる。
なお、切削工具101は、シャフト部11に拡径部15が形成されない構成であってもよい。この場合、拡径していないシャフト部11に凹部16が形成され、加速度センサ14は当該凹部16に取り付けられる。
また、加速度センサ14は、ねじ部材以外の他の固定部材によりシャフト部11に取り付けられてもよい。
また、切削工具101は、加速度センサ14等のセンサを備えず、シャフト部11が当該センサを着脱可能な構成であってもよい。
また、切削工具101は、エンドミル等の転削工具でなくてもよく、たとえば、バイト等の旋削工具であってもよい。
また、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向および径方向のいずれか一方の方向に加速度センサ14の位置を変更可能な構成であってもよい。
また、位置変更部50は、台座部51を方向Xにスライドさせることが可能な図示しないスライド機構を有する構成であってもよい。具体的には、たとえば、シャフト部11における凹部16の底面161および位置変更板56に、台座部51をX方向に沿ってスライド移動させることが可能な、図示しないレールまたは溝部が形成される。
この場合、台座部51は、レールまたは溝部に沿ってスライド移動することができる。スライド移動した台座部51は、たとえば、ねじ部材等の固定部材によりシャフト部11に固定される。
また、切削工具101は、無線通信装置23を備えない構成であってもよい。この場合、たとえば、切削工具101は、図示しない記憶部においてセンサ情報等を保存する。そして、たとえば、ユーザは、当該記憶部に保存されたセンサ情報等を、管理装置301の記憶部35に保存する操作を行う。
また、位置変更部50は、たとえば、ボールねじ等の図示しない駆動機構により加速度センサ14の位置を変更する構成であってもよい。この場合、たとえば、ボールねじのねじ軸がシャフト部11のX方向に沿って配置され、ボールねじのナット部に加速度センサ14が取り付けられる。
また、この場合、たとえば、ボールねじのねじ軸を回転駆動するモータを制御する図示しない制御部が、加速度センサ14の移動を制御する構成であってもよい。また、上記モータに対する指示信号を切削工具101の外部から与える構成であってもよい。
図15は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成の他の例を示す図である。
拡径部15の表面55に取り付けられる位置変更板56の数は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。この場合、複数の位置変更板56は、各位置変更板56が積層された状態において、拡径部15の表面55に取り付けられる。加速度センサ14は、シャフト部11の中心軸17から最も遠い位置にある位置変更板56に取り付けられる。
各位置変更板56は所定の厚みを有しているため、積層する枚数を変更することにより、加速度センサ14とシャフト部11の中心軸17との距離を変更することができる。
図16〜図20は、本開示の第1の実施の形態における切削工具の他の例を模式的に示す断面図である。具体的には、図16〜図20は、切削工具におけるセンサの位置の他の例を模式的に示す断面図である。
図16〜図20では、理解を容易にするために、1つのセンサの位置を3つ示している。詳細には、図16〜図20では、位置を変更する前のセンサを実線により示し、かつ位置を変更した後のセンサを二点鎖線により示している。また、図16〜図20では、図示を簡単にするため、断面を表すハッチングを示していない。
図16は、シャフト部11におけるセンサ位置B1、センサ位置B2およびセンサ位置B3を示す。
図16を参照して、位置変更部50は、センサ位置B1〜B3間において加速度センサ14の位置を変更する。
センサ位置B2は、センサ位置B1に対してX方向においてずれており、かつシャフト部11の径方向Yにおいてずれている。センサ位置B3は、センサ位置B1に対してX方向においてずれており、かつ径方向Yにおいてずれていない。センサ位置B3は、センサ位置B2に対してX方向においてずれており、かつ径方向Yにおいてずれている。
図17は、シャフト部11におけるセンサ位置B1、センサ位置B3およびセンサ位置B4を示す。
図17を参照して、位置変更部50は、センサ位置B1,B3,B4間において加速度センサ14の位置を変更する。
センサ位置B4は、センサ位置B1に対してX方向においてずれておらず、かつ径方向Yにおいてずれている。センサ位置B4は、センサ位置B3に対してX方向においてずれており、かつ径方向Yにおいてずれている。
図18は、シャフト部11におけるセンサ位置B1、センサ位置B5およびセンサ位置B6を示す。
図18を参照して、位置変更部50は、センサ位置B1,B5,B6間において加速度センサ14の位置を変更する。
センサ位置B5は、センサ位置B1に対してX方向においてずれており、かつ径方向においてずれている。センサ位置B6は、センサ位置B1に対してX方向においてずれており、かつ径方向においてずれている。センサ位置B6は、センサ位置B5に対してX方向においてずれており、かつ径方向においてずれている。
図19は、シャフト部11におけるセンサ位置B1、センサ位置B7およびセンサ位置B8を示す。
図19を参照して、位置変更部50は、センサ位置B1,B7,B8間において加速度センサ14の位置を変更する。
センサ位置B7は、センサ位置B1に対してX方向においてずれておらず、かつ径方向においてずれている。センサ位置B8は、センサ位置B1に対してX方向においてずれておらず、かつ径方向においてずれている。センサ位置B8は、センサ位置B7に対してX方向においてずれておらず、かつ径方向においてずれている。
図20は、シャフト部11におけるセンサ位置B1、センサ位置B3およびセンサ位置B9を示す。
図20を参照して、位置変更部50は、センサ位置B1,B3,B9間において加速度センサ14の位置を変更する。
センサ位置B9は、センサ位置B1に対してX方向においてずれており、かつ径方向においてずれていない。センサ位置B9は、センサ位置B3に対してX方向においてずれており、かつ径方向Yにおいてずれていない。
図16〜図18に示すように、位置変更部50は、X方向に沿って加速度センサ14の位置を変更することが可能であり、かつ径方向Yに沿って加速度センサ14の位置を変更することが可能である構成であってもよいし、図19および図20に示すように、X方向および径方向Yのいずれか一方の方向に加速度センサ14の位置を変更可能であってもよい。
[変形例1]
図21は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの変形例1を示す図である。
図21を参照して、変形例1に係る切削システム203は、図9に示す工作機械202の代わりに工作機械204を備える。工作機械204は、図9に示す切削工具101の代わりに切削工具102を含む。切削工具102は、図9に示す加速度センサ14の代わりに歪センサ19を有する。
位置変更部50は、シャフト部11における歪センサ19の取付位置を変更可能である。
具体的には、たとえば、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向、すなわち、中心軸17に沿った方向に歪センサ19の位置を変更することが可能である。
また、位置変更部50は、たとえば、シャフト部11の径方向に沿った方向に歪センサ19の位置を変更することが可能である。
位置変更部50による歪センサ19の位置の変更方法は、図9に示す切削システム201における加速度センサ14の位置の変更方法と同様である。
切削工具102は、歪センサ19の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す計測結果を処理する。具体的には、たとえば、管理装置301は、受信したセンサ情報が示す計測結果を解析する。
図22は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具を模式的に示す側面図である。具体的には、図22は、図21に示す切削工具102を片持ち梁とみなした場合の切削工具の模式的側面図である。
図22を参照して、切削工具102の端部に位置する刃取付部12または刃部に、負荷すなわち切削抵抗Fが加えられる場合を想定する。
図23は、本開示の第1の実施の形態の変形例1における切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。具体的には、図23は、図21に示す切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図23における横軸および縦軸は、それぞれ、切削工具102を片持ち梁とみなした場合における片持ち梁の支点からの距離、および歪を示している。
図23に示すシミュレーション結果から、切削工具102の支点に近いほど、換言すれば、刃取付部12または刃部から遠いほど、切削工具102の歪が大きくなることが分かる。このため、切削工具102における歪センサ19の取付位置が切削工具102の支点に近いほど、歪センサ19の感度が高くなる。
以上のことから、負荷の大きい加工条件下において歪を計測する場合には、切削工具102の端部に近い位置に歪センサ19を取り付ける一方で、負荷の小さい加工条件下において歪を計測する場合には、切削工具102の支点すなわち根本部に近い位置に歪センサ19を取り付ける。これにより、負荷が大きい場合には意図的に加速度センサの感度を低下させ、負荷が小さい場合には意図的に加速度センサの感度を高めることができる。
したがって、切削工具102に加えられる負荷の程度に応じて歪センサ19の位置を変更することにより、多様な加工条件下において歪を計測することができる。
その他の構成は、上述した切削システム201と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
[変形例2]
図24は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削システムを示す図である。
図24を参照して、変形例2に係る切削システム205は、図9に示す工作機械202の代わりに工作機械206を備える。工作機械206は、図9に示す切削工具101の代わりに切削工具103を含む。切削工具103は、図9に示す加速度センサ14に加えて、さらに、温度センサ26および音センサ27を含む。
図24に示す例では、温度センサ26および音センサ27は、加速度センサ14を支持する台座部51とは別に設けられた台座部51に支持される。温度センサ26および音センサ27を支持する台座部51は、加速度センサ14を支持する台座部51とは異なる位置に取り付けられる。たとえば、温度センサ26および音センサ27を支持する台座部51は、雄ねじ部材54により、第3のセンサ位置A3に取り付けられる。
位置変更部50は、シャフト部11における加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の取付位置を変更可能である。
具体的には、たとえば、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向、すなわち、中心軸17に沿った方向に加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の位置を変更することが可能である。
また、位置変更部50は、たとえば、シャフト部11の径方向に沿った方向に加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の位置を変更することが可能である。
切削工具103は、加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の各計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す各計測結果を処理する。具体的には、たとえば、管理装置301は、受信したセンサ情報が示す各計測結果を解析する。
なお、切削工具103は、温度センサ26および音センサ27のいずれか一方を含まない構成であってもよい。
その他の構成は、上述した切削システム201と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
ところで、切削工具にセンサを取り付けることにより、切削工具による加工の状態を示す物理量を計測することができる。このような計測を用いた優れた技術が望まれる。
これに対して、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具は、センサを取り付け可能なシャフト部11と、シャフト部11におけるセンサの取付位置を変更可能な位置変更部50とを備える。
このように、シャフト部11におけるセンサの取付位置を変更可能な構成により、加速度の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。
したがって、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、より多様な加工条件下において切削工具101の状態を計測することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、シャフト部11は、円柱形状であり、切削工具101は、転削工具である。
このような構成により、たとえば、シャフト部11の回転速度等の加工条件に応じて加速度センサ14の感度を変更することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向に沿ってセンサの位置を変更することが可能である。
このような構成により、切削対象物を切削している際に切削工具101に発生する加速度を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。したがって、切削対象物を切削している際に切削工具101に発生する加速度等を計測することができる。また、シャフト部11の軸方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具101に発生する変位のうちの曲げの成分に関与することから、このような構成により、当該曲げの成分に関する値を算出することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、位置変更部50は、シャフト部11の径方向に沿ってセンサの位置を変更することが可能である。
このような構成により、切削対象物を切削しているか否かに拘わらず切削工具101の回転時に発生する遠心加速度を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。したがって、切削工具101の回転時に切削工具101に発生する遠心加速度を計測することができる。また、シャフト部11の径方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具101に発生する変位のうちのねじりの成分に関与することから、このような構成により、当該ねじりの成分に関する値を算出することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向に沿ってセンサの位置を変更することが可能であり、かつシャフト部11の径方向に沿ってセンサの位置を変更することが可能である。
このような構成により、切削対象物を切削している際に切削工具101に発生する加速度等を計測可能なセンサの位置を変更して、センサの計測結果の感度を変更することができる。これにより、切削対象物を切削している際に切削工具101に発生する加速度等を計測することができる。また、切削対象物を切削しているか否かに拘わらず切削工具101の回転時に発生する遠心加速度等を計測可能なセンサの位置を変更して、当該センサの計測結果の感度を変更することができる。これにより、切削工具101の回転時に切削工具101に発生する遠心加速度等を計測することができる。また、シャフト部11の軸方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具101に発生する変位のうちの曲げの成分に関与することから、当該曲げの成分に関する値を算出することができる。また、シャフト部11の径方向に沿った方向のセンサの位置は、切削に伴い切削工具101に発生する変位のうちのねじりの成分に関与することから、上記構成により、当該ねじりの成分に関する値を算出することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101は、さらに、シャフト部11に取り付けられたセンサを備える。
このような構成により、より多様な加工条件下において切削工具101の状態を計測することが可能なセンサ付きの切削工具101を提供することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、上記センサは、加速度センサ14であり、加速度センサ14の計測方向141は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面18に沿った方向であって、加速度センサ14と中心軸17とを結ぶ直線に対して直交する方向に沿う。
このような構成により、切削対象物との接触に伴う振動等の加速度を計測することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101は、歪センサ19、温度センサ26および音センサ27のうちの少なくともいずれか1つを上記センサとして備える。
このような構成により、たとえば、シャフト部11に発生する歪の異常な増大、シャフト部11に異常な振動が発生した場合の摩擦熱および異音、のうちの少なくともいずれか1つを検出することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101は、さらに、無線通信装置23を備える。無線通信装置23は、センサの計測結果を示すセンサ情報を送信する。
このような構成により、たとえば、受信側の装置において、各センサの計測結果を用いた異常検知等の処理を行うことができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムは、切削工具101と、管理装置301とを備える。管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を受信する。
このように、シャフト部11におけるセンサの取付位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。
したがって、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムでは、より多様な加工条件下において切削工具101の状態を計測することができる。また、たとえば、管理装置301において、各センサの計測結果を用いた異常検知等の処理を行うことができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、シャフト部11は、棒形状であり、拡径部15を含む。拡径部15は、シャフト部11のうちの他の部分よりも径が太く、センサを取り付け可能である。位置変更部50は、拡径部15におけるセンサの取付位置を変更可能である。
このような構成により、拡径部15によりシャフト部11の剛性が確保されるため、たとえば、シャフト部11の一部を除去してセンサを取り付ける場合であっても、シャフト部11の剛性を確保しつつ、シャフト部11にセンサを取り付けることができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、拡径部15は、シャフト部11の中心軸17と平行でかつ平坦な表面55を有する。拡径部15は、表面55に対して中心軸17の反対側の部分が除去された形状である。
平坦な表面55には、センサを取り付けやすく、また、平坦な表面55には、センサの位置を調節する部材を取り付けやすいことから、シャフト部11の径方向Yにおいてセンサの位置を容易に変更することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、拡径部15は、表面55の一部において開口し、かつ中心軸17側に凹む凹部16を有する。凹部16の底面161は、表面55に対して平行な平面である。
平面である底面161には、センサを取り付けやすく、また、底面161にセンサを取り付けることにより、たとえば、位置変更板56を用いてシャフト部11の径方向Yにおいてセンサ位置を変更することができる。したがって、センサの位置を容易に変更することができる。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本開示の第2の実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削システム201等の切削システムを用いる処理方法に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削システム201と同様である。以下では、一例として、切削システム201を用いる場合の処理方法について説明する。
本開示の第2の実施の形態に係る切削システム201の管理装置301における無線通信部31は、工作機械202に取り付けられた切削工具101により切削対象物の切削が行われ、位置変更部50によりセンサの取付位置が変更され、センサの取付位置が変更された切削工具101により切削対象物の切削が行われる際に、保存処理部として、各切削が行われるごとにセンサの計測結果を記憶部35に書き込む。
制御部32は、無線通信部31によって書き込まれた各計測結果を処理する。
図25は、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法の手順を定めたフローチャートである。
図25を参照して、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法Mは、切削工具101を用いる処理方法である。
処理方法Mでは、まず、工作機械202は、切削工具101により切削対象物の切削を行う(ステップS201)。
次に、管理装置301は、センサの計測結果を蓄積する(ステップS203)。
次に、ユーザは、切削工具101の位置変更部50によりセンサの位置を変更する(ステップS205)。
次に、工作機械202は、センサの位置が変更された切削工具101により、切削対象物の切削を行う(ステップS207)。
次に、管理装置301は、センサの計測結果を蓄積する(ステップS209)。
次に、管理装置301は、蓄積した各計測結果を処理する(ステップS211)。
なお、処理方法Mでは、複数のセンサを用いてもよいし、1つのセンサを用いてもよく、たとえば、加速度センサ14または歪センサ19を1つ用いてもよい。また、処理方法Mでは、加速度センサ14および歪センサ19とは異なる種類のセンサを1または複数用いてもよい。
より詳細には、処理方法Mは、たとえば、工作機械の切削に不具合があった場合に、その原因を検証する場合に用いられる。
具体的には、処理方法Mは、たとえば、工作機械202において、不具合の原因が切削工具以外の部分、たとえば、切削工具101を保持する工具ホルダ210、および工具ホルダ210を保持する主軸220にあるのかどうかを判定する方法である。
図25に示す処理方法Mでは、まず、ユーザは、工作機械202の工具ホルダに切削工具101を取り付けて、切削工具101により切削対象物の切削を行い(ステップS201)、加速度センサ14の計測結果を管理装置301に蓄積する(ステップS203)。
次に、ユーザは、切削工具101における加速度センサ14の位置を変更する(ステップS205)。
次に、ユーザは、工作機械202の工具ホルダ210に、加速度センサ14の位置が変更された切削工具101を取り付けて、切削工具101により切削対象物の切削を行い(ステップS207)、加速度センサ14の計測結果を管理装置301に蓄積する(ステップS209)。
次に、ユーザは、管理装置301を用いて、蓄積された加速度センサ14の計測結果を解析する。なお、管理装置301は、計測結果の解析に限らず、他の種類の処理を行う構成であってもよい(ステップS211)。
処理方法Mでは、加速度センサ14の計測結果を、第1の実施の形態と比べてさらに有意に用いることができる。以下、詳細に説明する。
図26は、本開示の第2の実施の形態における係る切削工具、工具ホルダおよび主軸を模式的に示す側面図である。
図26においては、理解を容易にするため、工具ホルダ210および主軸220を一体化して1つの部材として示す。一体化した部材を、支持部材230とも称する。
図26を参照して、切削工具101に発生する曲げおよびねじり、ならびに支持部材230に発生する変位について説明する。
切削工具101による切削を行う際に、切削対象物から切削工具101の刃部に荷重、すなわち切削抵抗F[N]が加わる場合を想定する。この場合、切削工具101に発生する曲げによる変位X1[mm]を、以下の式(2)により定式化することができる。
式(2)において、dは切削工具101の端部から加速度の計測位置までの距離[mm]であり、Lは切削工具101の端部から支持部材230までの距離[mm]であり、Iは切削工具101の断面2次モーメント[mm^4]であり、Eは切削工具101のヤング率[MPa]である。
また、切削工具101に切削抵抗Fが加わる場合、切削工具101に発生するねじりによる変位X2[mm]を、以下の式(3)により定式化することができる。
式(3)において、dは切削工具101の端部から加速度の計測位置までの距離[mm]であり、Lは切削工具101の端部から支持部材230までの距離[mm]であり、rforceは切削抵抗Fの作用点および切削工具101の中心軸17間の距離[mm]であり、すなわち刃部および中心軸17間の距離、rsensorは加速度センサ14の取付位置および中心軸17間の距離[mm]であり、Gは切削工具101の横弾性係数[MPa]であり、Jは切削工具101の断面2次極モーメント[mm^4]である。
また、切削工具101に切削抵抗Fが加わる場合、支持部材230に発生する変位X3[mm]を、以下の式(4)により定式化することができる。
式(4)において、K3は所定の係数[mm/N]である。
式(2)〜式(4)は、片持ち梁に荷重が加わったときのセンサの位置の変位が、当該位置において発生する加速度に比例することを前提とするものである。
式(2)〜式(4)をまとめると、式(5)および式(6)のように表すことができる。
式(6)の右辺の大かっこ内において、左から1つ目の項をC1×P1、2つ目の項をC2×P2、3つ目の項をC3×P3と定義する。
C1×P1、C2×P2、およびC3×P3は、それぞれ、切削工具101の曲げによる変位量、切削工具101のねじりによる変位量、および支持部材230の変位量に対応する。
すなわち、上記1つ目の項において、(L^3)/(3EI)がC1であり、他の部分がP1である。また、上記2つ目の項において、rforce/(GJ)がC2であり、他の部分がP2である。また、上記3つ目の項において、1/K3がC3であり、P3は1である。
式(6)を参照して、C1はヤング率Eおよび断面2次モーメントIによって決定され、C2は横弾性係数Gおよび断面2次極モーメントJによって決定され、C3は所定の係数K3によって決定される。ヤング率E、断面2次モーメントI、横弾性係数Gおよび断面2次極モーメントJは、切削工具101によって定まるため、事前に調査を実施すれば把握することができるが、把握に非常に手間がかかる。その一方で、所定の係数K3は支持部材230によって定まるため、測定することが困難である。また、P1により表されている数値は距離dおよび距離Lによって決定され、P2により表されている数値は距離d、距離Lおよび距離rsensorによって決定されるため、当該各数値は、センサの設置位置を把握できていれば計算が容易に可能である。
図1に示す例では、8つのセンサ位置A1〜A8が設けられているため、8つの位置の各々について、P1、P2およびP3、ならびに加速度の計測値accを以下の行列式(7)にまとめて記述する。
式(7)の左辺において、たとえば、P11,P21,P31は、それぞれ、図1のセンサ位置A1におけるP1の値、センサ位置A1におけるP2の値、センサ位置A1におけるP3の値である。また、P12,P22,P32は、それぞれ、図1のセンサ位置A2におけるP1の値、センサ位置A2におけるP2の値、センサ位置A2におけるP3の値である。
式(7)の右辺において、たとえば、acc1は図1のセンサ位置A1に加速度センサ14を取り付けた場合の計測結果であり、acc2は図1のセンサ位置A2に加速度センサ14を取り付けた場合の計測結果である。
式(7)の左辺に、式(7)におけるPに関する行列の逆行列を掛けると、以下の式(8)が導かれる。
すなわち、式(8)の右辺を計算することにより、左辺におけるC1、C2およびC3が算出される。
C1、C2およびC3を算出することにより、式(6)における右辺の大かっこ内の値、すなわちC1×P1、C2×P2、およびC3×P3をそれぞれ算出することができる。
すなわち、切削工具101の曲げによる変位量、切削工具101のねじりによる変位量、および支持部材230の変位量を算出することができる。
換言すれば、センサ位置A1〜A8のそれぞれについて、加速度の計測結果における、切削工具101の曲げによる加速度、切削工具101のねじりによる加速度、および支持部材230の加速度の各成分の割合を算出することができる。
図27は、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法により算出された、加速度の計測結果の3つの成分を示すグラフである。
図27における横軸および縦軸は、それぞれ、図1に示すセンサ位置A1〜A8、およびセンサ位置において発生した加速度を示している。
図27は、センサ位置A1〜A8における加速度の計測結果ごとに、切削工具101の曲げによる加速度の成分Xaの割合、切削工具101のねじりによる加速度の成分Xbの割合、および支持部材230の加速度の成分Xcの割合を示している。
図22の内容について考察する。まず、成分Xaおよび成分Xbの和である成分Xabと、成分Xcとの大きさを比較することにより、切削中に計測位置において発生した加速度のうち、切削工具101に起因する加速度の大きさと支持部材230に起因する加速度の大きさとを比較することができる。
比較の結果、Xabの大きさと比べて、成分Xcの大きさが大きすぎる場合には、たとえば、支持部材230の剛性が低すぎる、と判定することができる。すなわち、たとえば、工作機械202に不具合がある場合において、不具合の原因が工具ホルダ210および主軸220にあると判定することができる。
成分Xabの大きさと成分Xcの大きさとの比較は、たとえば、センサ位置A1〜A8における成分Xabの平均値と成分Xcの大きさとの比較、または、センサ位置A1〜A8における成分Xabの最大値と成分Xcの大きさとの比較である。
また、加速度センサ14の取付位置が切削工具101の端部に近いほど、加速度センサ14の計測結果が大きくなる傾向がある。このため、センサ位置A1〜A8間において加速度センサ14の取付位置を変更することにより、加速度センサ14の感度を調節することができる。したがって、切削工具101に加えられる切削抵抗Fの大きさに応じて、加速度センサ14の取付位置を変更することにより、加工条件に応じた適切な計測を行うことができる。
次に、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置301の処理の一例について説明する。
[動作の流れ]
管理装置301は、記憶部35の一部または全部を含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを記憶部35等のメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図28は、本開示の第2の実施の形態に係る切削システムにおける管理装置の動作手順を定めたフローチャートである。
図28を参照して、まず、無線通信部31は、工作機械202に取り付けられた切削工具101の無線通信装置23から、センサ情報および位置情報を含む無線信号を受信して、当該無線信号に含まれるセンサ情報の示す加速度センサ14の計測結果および位置情報を記憶部35に保存する。加速度センサ14は、切削工具101のセンサ位置A1に取り付けられている。上記位置情報は、センサ位置A1に対応する位置情報である(ステップS101)。
次に、無線通信部31は、ユーザにより加速度センサ14の位置がセンサ位置A2に変更され、工作機械202に取り付けられた切削工具101の無線通信装置23から、センサ情報を含む無線信号を受信して、当該無線信号に含まれるセンサ情報の示す加速度センサ14の計測結果および位置情報を記憶部35に保存する。上記位置情報は、センサ位置A2に対応する位置情報である(ステップS103)。
以降、無線通信部31は、上記と同様の処理を、センサ位置A3〜A8についても順次行う(ステップS105〜S115)。
次に、制御部32は、記憶部35に保存された各計測結果および各位置情報を処理する。具体的には、たとえば、各計測結果、各位置情報および式(2)〜(8)に基づいて、センサ位置A1〜A8のそれぞれについて、加速度の計測結果における、切削工具101の曲げによる加速度、切削工具101のねじりによる加速度、および支持部材230の加速度の各成分の割合を算出する(ステップS117)。
次に、表示部33は、センサ位置A1〜A8における加速度の計測結果ごとに、切削工具101の曲げによる加速度の成分Xaの割合、切削工具101のねじりによる加速度の成分Xbの割合、および支持部材230の加速度の成分Xcの割合を、たとえば図27に示すようにグラフ化して表示する(ステップS119)。
以上のように、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法では、まず、ユーザは、工作機械202に取り付けられた切削工具101により切削対象物の切削を行う。次に、管理装置301は、センサの計測結果を蓄積する。次に、ユーザは、位置変更部50によりセンサの取付位置を変更する。次に、ユーザは、センサの取付位置が変更された切削工具101により切削対象物の切削を行う。次に、管理装置301は、センサの計測結果を蓄積する。次に、管理装置301は、蓄積した各計測結果を処理する。
このように、シャフト部11におけるセンサの取付位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。
したがって、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法では、より多様な加工条件下において切削工具101の状態を計測することができる。
また、複数の位置におけるセンサの計測結果に基づいて、たとえば、当該複数の位置の各々において発生する変位のうちの、切削工具の曲げによる成分、切削工具のねじりによる成分、および切削工具を支持する支持部材の変位の成分に関する値を算出することができる。すなわち、切削工具101の状態および切削工具101を支持する支持部材230の状態を把握することができる。
また、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法では、管理装置301は、計測結果から工作機械202に対応する成分を算出する。
このような構成により、たとえば、工作機械202における、切削工具101を支持する支持部材230の状態を把握することができる。
また、本開示の第2の実施の形態に係る処理方法では、センサは加速度センサ14である。
このような構成により、複数の位置における加速度センサ14の計測結果に基づいて、たとえば、当該複数の位置の各々において発生する加速度のうちの、切削工具101の曲げによる加速度の成分に関する値、切削工具101のねじりによる加速度の成分に関する値、および切削工具101を支持する支持部材230の加速度の成分に関する値を算出することができる。したがって、切削工具101の状態および切削工具101を支持する支持部材230の状態を把握することができる。
本開示の第2の実施の形態に係る管理装置301では、無線通信部31は、工作機械202に取り付けられた切削工具101により切削対象物の切削が行われ、位置変更部50によりセンサの取付位置が変更され、センサの取付位置が変更された切削工具101により切削対象物の切削が行われる際に、各切削が行われるごとにセンサの計測結果を記憶部35に書き込む。制御部32は、無線通信部31によって書き込まれた各計測結果を処理する。
このように、シャフト部11におけるセンサの取付位置を変更可能な構成により、加速度等の計測結果の大きさをセンサの位置変更によって変えることができる。これにより、加工条件に応じてセンサの感度を容易に変更することができる。
したがって、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置では、より多様な加工条件下において切削工具101の状態を計測することができる。
また、複数の位置におけるセンサの計測結果に基づいて、たとえば、当該複数の位置の各々において発生する変位のうちの、切削工具101の曲げによる成分に関する値、切削工具101のねじりによる成分に関する値、および切削工具101を支持する支持部材の変位の成分に関する値を算出することができる。すなわち、切削工具101の状態および切削工具101を支持する支持部材230の状態を把握することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
センサを取り付け可能なシャフト部と、
前記シャフト部における前記センサの取り付け位置を変更可能な位置変更部とを備え、
シャフト部は、前記シャフト部のうちの他の部分よりも径が太く、前記センサを取り付け可能な拡径部を含み、
前記位置変更部は、前記拡径部における前記センサの取り付け位置を変更可能であり、
前記拡径部は、前記シャフト部の中心軸と平行でかつ平坦な表面を有し、
前記拡径部は、前記表面に対して前記中心軸の反対側の部分が除去された形状であり、
前記拡径部は、前記表面の一部において開口し、かつ前記中心軸側に凹む凹部を有し、
前記凹部の底面は、前記表面に対して平行な平面である、切削工具。