以下に、本発明の実施形態に係る苗移植機を、乗用型の苗移植機として図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下では苗移植機全体を指して機体と呼ぶ場合がある。
図1は、実施形態に係る苗移植機1の直進サポートの概要を示す説明図である。本実施形態に係る苗移植機1は、後部に苗植付部50を連結するとともに、それぞれ左右一対の前輪4および後輪5を備える走行車体2を備えている。
本実施形態において、直進サポートとは、苗移植機1の転舵輪の舵角(切れ角)と、当該苗移植機1の位置情報とに基づき、制御部が操舵輪の動作を制御することによって、圃場Fにおける苗移植機1の自動直進走行を支援する機能を指す。ここでは、舵角を、前輪4の切れ角としているが、例えば、ハンドル32(図2参照)の操舵角を舵角として検出するようにしてもよい。また、苗移植機1の位置情報は、走行車体2に設けられた、位置情報取得装置としてのGNSSユニット120(図7参照)により取得される。なお、以下の説明においては、苗移植機1の前後、左右の方向基準は、作業者が着座可能な操縦座席28(図2参照)からみて、走行車体2の走行方向を基準とする。
図示するように、苗移植機1は、圃場F内における所定作業エリアG内を往復しながら、所定の作業幅Dで苗の植付を行う。このとき、直進サポートを実行すれば、ハンドル32を用いた作業者のマニュアル操作としては、枕地近傍で行う旋回操作だけでよく、直進走行については、苗移植機1は自動直進ラインL1に沿って自動走行する。図1中、符号L3は、枕地における苗移植機1のマニュアル操作による旋回ラインを示す。また、符号Eは、圃場Fへの苗移植機1の進退口を示す。
直進サポートによる苗移植機1の自動直進ラインL1は、直進サポートを行う上で基準となる基準走行線L2に平行であり、この基準走行線L2は、苗の植付方向に合わせて、圃場F内において予め設定される。すなわち、直進サポートの開始位置および終了位置をそれぞれ基準始点P1および基準終点P2として、苗移植機1が備える走行基準登録部152で取得し、取得した基準始点P1および基準終点P2を結ぶ線分を、基準走行線L2として登録するようにしている。
かかる直進サポートを実行する上で、本実施形態に係る苗移植機1は、直進サポートを実行中に、走行車体2の前上がり姿勢が所定角度以上である場合、苗植付部50、あるいはその少なくとも一部を下降させて、走行車体2の傾きを抑制するようにしている。すなわち、機体重心よりも後方に位置する部材を圃場面に押し付けて突っ張ることにより、走行車体2における機体重心よりも前側部分を前下がり方向へと矯正することができる。そのため、苗移植機全体の姿勢を水平にすることで操舵輪となる前輪4の駆動トルクを確保することができ、直進性を向上させることができる。また、苗植付部50の少なくとも一部を下降させて圃場面に押し付けることで、そのブレを減らし、機体の直進性を向上させることができる。
ここで、走行車体2が所定角度以上、前上がり姿勢となった場合、圃場Fに押し付ける苗植付部50の少なくとも一部を、ロータ用モータ165(図7参照)で昇降駆動するロータ67(図2参照)とすることができる。ロータ67は、ロータ用モータ165で昇降駆動するため、より精密かつ能率的な制御が行え、苗移植機1の直進性を効果的に高めることができる。
以下、図2および図3を参照しながら、苗移植機1の具体的な構成について説明する。図2は、実施形態に係る苗移植機1の側面図、図3は、操縦部の説明図である。
図2および図3に示すように、苗移植機1の走行車体2には、苗植付部50が、昇降装置である苗植付部昇降機構40を介して昇降可能に取付けられる。また、走行車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5とが共に駆動する四輪駆動車であり、ハンドル32が回動されることによって転舵輪となる前輪4が操舵され、圃場Fや圃場F間の道などを走行することが可能である。
また、走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載された原動機であるエンジン10と、エンジン10の動力を前後輪4,5と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15とを備える。この苗移植機1では、動力源であるエンジン10には、ディーゼル機関やガソリン機関等の内燃機関が用いられ、発生した動力は、走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用される。
また、動力伝達装置15は、エンジン10から伝達される駆動力を変速して出力する、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と云われる油圧式無段変速装置16と、この油圧式無段変速装置16にエンジン10からの動力を伝える動力伝達部17とを有する。
また、動力伝達装置15は、ミッションケース18を有する。すなわち、エンジン10からの駆動力は、動力伝達部17を介して油圧式無段変速装置16に伝達され、この油圧式無段変速装置16で変速した動力がミッションケース18に伝達される。そして、ミッションケース18は、後述する高速モードと低速モードとに切り替える副変速機構(不図示)を内設しており、メインフレーム7の前部に取り付けられる。
ミッションケース18から前輪4および後輪5に伝達される動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース13を介して前輪4に伝達可能であり、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能となっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース13は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設される。左右の前輪4は、車軸131を介して左右の前輪ファイナルケース13に連結されており、かかる前輪ファイナルケース13は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることができる。
同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸220を介して後輪5が連結されている。一方、ミッションケース18からは、図示しない作業機駆動軸から走行車体2の後部に設けた植付クラッチ500を介して苗植付部50へ動力が伝達される。なお、植付クラッチ500は、後に詳述するコントローラ150に接続された植付クラッチモータ510によって動作する(図7参照)。
ところで、エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置される。フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に亘って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場Fに落とすことができる。また、フロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられる。リアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有し、エンジン10の左右それぞれの側方に配置される。
また、エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップ26,27から突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設される。
そして、エンジンカバー11の上部に、作業者が着席する操縦座席28が設置され、かかる操縦座席28の前方で、且つ走行車体2の前側中央部に操縦部30が設けられる。かかる操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。
操縦部30には、ステアリングポスト315が設けられ、このステアリングポスト315の上部には、作業者による操舵が可能なハンドル32が設けられる。そして、ステアリングポスト315に設けられた計器パネル33には、図3に示すように、後述する基準点登録スイッチ83や直進サポート開始スイッチ84を含む各種スイッチ153やメータなどが設けられる。また、操縦部30には、ステアリングポスト315の下側部分に着脱自在に取付けられた、後述するタブレット端末装置140を備えている。また、操縦部30の所定位置には、例えば、報知装置200の一例となるブザー215が設けられる(図7参照)。
さらに、操縦部30には、ステアリングポスト315の近傍に主変速レバー81と副変速レバー82とが設けられる。主変速レバー81は、操縦部30の右側に設けられ、副変速レバー82は、操舵輪であるハンドル32の下方に設けられている。
主変速レバー81は、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作するレバーであり、先端に設けられた把持部810を作業者が握って操作することにより、後述する油圧式無段変速装置16のトラニオン(不図示)の回動角度を調節して走行車体2の速度調節を行うことができる。
他方、副変速レバー82は、走行車体2の走行速度を規定する走行モードを、走行する場所に応じて低速モードと高速モードとに切り替えるレバーである。ここで、低速モードとは、苗移植機1が圃場Fで植付作業を行うに相応しい速度範囲に規定される走行モードである。他方、高速モードとは、例えば、苗移植機1を圃場F間で移動させたりする際の走行モードであり、低速モードのときよりも高速で走行することが可能となる。これらのモード切替えは、副変速レバー82の位置に応じて、ミッションケース18内に設けられた副変速機構により行われる。
また、操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられる。そして、このフロントカバー31の前端中央に位置するように、走行の指標となる指標部材としてのセンターマスコット350が取り付けられている。なお、図2では、便宜上、図示を省略しているが、走行車体2の前側左右には予備苗載台400,400(図5A参照)が設けられている。
図4Aは、センターマスコット350の全体側面図、図4Bは、センターマスコット350の一部正面図である。図4Aおよび図4Bを用いて、本実施形態に係るセンターマスコット350について説明する。
本実施形態に係るセンターマスコット350は、走行車体2の前部中央位置に取付けられており、操縦座席28に座した作業者が苗移植機1を運転する際に、進行方向の目安となるように機能するものである。また、本実施形態に係るセンターマスコット350は、前述した直進サポートの実行可否を含むサポート状況を報知する報知装置200としても機能する。
すなわち、センターマスコット350は、図4Aに示すように、走行車体2の前部中央位置に、進行方向に沿って複数並設される。具体的には、それぞれ下部が湾曲形成されるとともに、先端が上方に延伸した第1支柱353aと第2支柱353bとが、フロントカバー31の前端中央に位置するように取付けられる。
そして、第1支柱353aの先端には第1レンズ部351が、第2支柱353bの先端には第2レンズ部352が設けられている。第2支柱353bの中途には、係止バー356が設けられており、操縦部30の前部に設けられたフロントカバー31を開けた際には、かかる係止バー356に係止して、開放状態を保持することができる(図5B参照)。なお、第1支柱353aおよび第2支柱353bの区別の必要がない場合、両者を合わせてマスコット支柱353と記す場合がある。かかるマスコット支柱353の基端は、枢支部355を介して走行車体2のメインフレーム7の前部側に前後傾動自在に取付けられる。
かかるセンターマスコット350の第1レンズ部351および第2レンズ部352は、図4Bに示すように、複数のランプ353A〜354eを備えており、かかるランプ354a〜354eの発光によって報知装置200を構成する表示部210(図7参照)として機能するように構成される。なお、複数のランプ354a〜354eを総称する場合はランプ354と記す。
また、図4Aに示すように、第1支柱353aは相対的に長尺で前側に位置し、この第1支柱353aの後ろ側に密着した状態で第1支柱353aよりも短尺に形成された第2支柱353bが配設される。第1支柱353aは、中途で前方へ屈曲し、その後、先端が上部へ延伸している。
そのため、それぞれ発光して報知装置200(表示部210)として機能する第1レンズ部351と第2レンズ部352とは、所定の高低差をもって前後方向に離隔して配置されることになり、作業者からの視認性は良好となって、第1レンズ部351の発光と第2レンズ部352の発光とを誤認識するおそれがない。また、複数のレンズ部351,352を用いることで、報知内容を多様化することができる。
ここで、報知装置200としての作用について例を挙げて説明する。例えば、直進サポートが実行されて自動直進可能な場合、センターマスコット350の第1レンズ部351が備える下側のランプ354dが点滅し、実際に自動直進している場合は、当該下側のランプ354dは点灯する。他方、何らかの理由により直進サポートが利用できない場合は、下側のランプ354dは消灯した状態になるのである。このとき、上側のランプ354eが、例えば赤色で点灯することで、直進サポートの利用不可である状況を報知するようにしてもよい。
他方、第1レンズ部351に対して下側に位置する第2レンズ部352では、直進サポートの状況ではなく、苗植付部50の状況をランプ報知するようにしてもよい。例えば、図示はしないが、苗の残量や肥料の残量を検出するセンサを設けておき、苗植付部50における苗が所定量以下になると、その残量に応じて第2レンズ部352の下側の左ランプ354aや右ランプ354bが点灯あるいは点滅させるのである。また、肥料が所定量以下になると、第2レンズ部352の上側ランプ354cが点滅あるいは点灯させるようにする。なお、上述した報知とは反対に、第1レンズ部351で苗植付部50の状況を、第2レンズ部352で直進サポートの状況を報知するようにしてもよい。
このように、本実施形態に係る苗移植機1は、報知装置200となるセンターマスコット350を用いて、直進サポートの状況に加え、苗植付部50が備える苗や肥料などの作業資材の残量に関する情報をも報知することができるようにしている。
センターマスコット350は、前方を向いている作業者の視界に常に存在するため、作業者は目線を前方から逸らすことなく、常時、苗移植機1の状況を把握することができ、安全性の向上に大きく寄与することができる。
また、苗移植機1に直進サポートを行わせるためには、予め、ティーチング作業が必要になる。ティーチング作業では、例えば、直進サポートを実行して直進制御するために基準走行線L2(図1参照)を、GNSSユニット120を利用しつつ走行基準登録部152(図7参照)により登録する。
すなわち、本実施形態に係る苗移植機1のコントローラ150(図7参照)は、直進サポートにおける走行車体2の直進進行の基準となる基準走行線L2(図1参照)を登録する走行基準登録部152を有する。
走行基準登録部152は、直進サポートの開始位置および終了位置を、それぞれ基準始点P1および基準終点P2として取得し、取得した基準始点P1および基準終点P2を結ぶ線分を、基準走行線L2として登録するようにしている。
基準始点P1および基準終点P2の取得操作は、操縦部30に設けられた基準点登録スイッチ83を操作して行うことができる。基準点登録スイッチ83は、いわゆる跳ね返りスイッチにより構成されており、一回目の操作を基準始点P1の取得操作、二回目の操作を基準終点P2の取得操作としている。そして、基準点登録スイッチ83を長押し操作すれば、基準始点P1および基準終点P2の取得操作がキャンセルされるようにしている。
このとき、報知装置200、すなわちセンターマスコット350では、ランプ354a〜354eにより構成される表示部210により、基準始点P1および基準終点P2の取得状況を報知することができる。また、報知装置200のブザー215がスイッチ操作に伴って鳴るようにすることで、視覚および聴覚を通して確認しながら基準始点P1および基準終点P2の取得操作を行うことができる。なお、基準始点P1および基準終点P2の取得操作をキャンセルする長押し操作時には、ブザー音も長く鳴るようにするとよい。
ここで、センターマスコット350による報知について説明する。例えば、第2レンズ部352を用いるとして、基準走行線L2を規定する基準始点P1および基準終点P2が未取得の場合、当該第2レンズ部352の2つある下側の左右ランプ354a,354bは共に消灯しており、基準始点P1のみが取得済の場合は左ランプ354aが点灯する。そして、基準始点P1および基準終点P2のいずれもが取得済になると、左右ランプ354a,354bが共に点灯する。この場合、例えば上側のランプ354cを、ティーチング作業を実行中である場合には点滅させ、終了すると点灯させるようにしてもよい。
なお、もちろんではあるが、かかる基準始点P1および基準終点P2の取得状況の報知を、第1レンズ部351で行うようにしてもよい。その場合、例えば、基準始点P1および基準終点P2が未取得の場合、第1レンズ部351の上下のランプ354e,354dは共に消灯し、基準始点P1のみが取得済の場合は上のランプ354eが点灯する。そして、基準始点P1および基準終点P2のいずれもが取得済になると、上下のランプ354e,354dが共に点灯するのである。
上述のようにして基準走行線L2(図1参照)を登録する際に用いられる基準点登録スイッチ83は、図3に示すように、操縦部30における計器パネル33の左側に設けられている。すなわち、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作する主変速レバー81と、基準始点P1および基準終点P2を取得するための操作スイッチである基準点登録スイッチ83とは、ハンドル32を挟んで互いに対向する位置に設けられる。このように、主変速レバー81と基準点登録スイッチ83とを、左右反対側に互いに対峙するように配設したため、例えば、直進サポートの前準備であるティーチング作業を行う際に、機体の前後進させる主変速レバー81の操作と基準点登録スイッチ83との操作を作業者が勘違いなどで誤操作するおそれを可及的に減じている。
ところで、本実施形態に係る苗移植機1は、図2に示すように、受信アンテナ121(図7参照)を内蔵したGNSSユニット120が走行車体2に配設されている。このGNSSユニット120は、受信アンテナ121で時間的に所定の間隔でGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。また、本実施形態に係るGNSSユニット120には、受信アンテナ121に加え、図示しないが、ジャイロセンサや加速度センサを利用した慣性航法装置と、これらを制御する制御基板が内蔵される。
図5Aは、実施形態に係る苗移植機1が備えるアンテナフレームの正面視による説明図、図5Bは、アンテナフレームの側面視による説明図、図6は、アンテナフレームの斜視図である。図2、図5Aおよび図5Bに示すように、GNSSユニット120は、前輪4の車軸131の直上方に位置するように、走行車体2の前端側に基端が連結されたアンテナフレーム124の頂部に取り付けられている。通常状態におけるアンテナフレーム124の高さは、標準的な一般男性がフロアステップ26上で起立しても頭部と干渉しない程度の高さに設定される。
アンテナフレーム124は、図6に示すように、左右の前側下部フレーム124a,124aと、前側上部フレーム124bと、上部L形フレーム124cと、後側縦フレーム124dとから構成される。
左右の前側下部フレーム124a,124aの基端部には、一対のブラケット127,127が設けられており、かかるブラケット127,127を介して前側下部フレーム124aは走行車体2のバンパ700に取付けられる。
前側上部フレーム124bは、左右の前側下部フレーム124a,124aに回動連結具124f,124fを介してそれぞれ基端が回動自在に連結された左右の縦フレーム1241,1242を有する平面視略コ字状のフレームであり、側面視では略く字状に形成される(図2参照)。
左右の回動連結具124f,124f同士は、図6に示すように、ノブボルト128で連結固定し、図2に示すように、回動連結具124f,124fとフロントカバー31との間には補強フレーム124eを掛け渡している。このように、簡単な構成によって前側下部フレーム124a,124aや左右の縦フレーム1241,1242のガタツキを防止している。
左右の前側下部フレーム124a,124aは、図5Aに示すように、上端側がフロントカバー31と接触しない程度まで内側へ向けて斜めに立設されている。そのため、操縦部30と機体左右側に配置された予備苗載台400,400との間には、例えば作業者が機体前方とフロアステップ26との間を移動できるだけのスペースQが形成される。
そして、左右の縦フレーム1241,1242の上部間に架け渡されたアルミブロック122上にGNSSユニット120を配設している。このように、GNSSユニット120と鋼管製のアンテナフレーム124との間にアルミブロック122を介在させることによって、受信アンテナ121に直接取付けるよりも受信感度を向上させている。
上部L形フレーム124cは、先端部が前側上部フレーム124bの後端部に連接されており、図示は省略したが、GNSSユニット120から延在するハーネスなどの配線が当該上部L形フレーム124cに沿って配索されている。
後側縦フレーム124dは、下端を操縦座席28の後部側において、リアステップ27に連結される。操縦座席28の後方には、施肥装置70の貯留ホッパ71,71が左右にそれぞれ配設されているが、かかる左右の貯留ホッパ71,71の間に後側縦フレーム124dを位置させているため、貯留ホッパ71を開閉する際に干渉することがない。
このように、GNSSユニット120を配設するためのアンテナフレーム124は、前側をバンパ700とフロントカバー31とに、後側をリアステップ27に連結しており、構造的に安定する3点支持としたため、きわめて安定した状態で走行車体2に取付けることができる。
後側縦フレーム124dの上端部には、上部L形フレーム124cの他端部を着脱自在に連結する連結部125が設けられており、上部L形フレーム124cを着脱自在に連結している。連結部125は、例えば、上部L形フレーム124cと後側縦フレーム124dとの連結端部に、それぞれ形成されたピン挿入孔(不図示)と、かかるピン挿入孔に挿脱可能な締結ピン(不図示)とにより構成するとよい。このように、簡単な構成によって、上部L形フレーム124cと後側縦フレーム124dとを着脱自在に連結することができる。
こうして、上部L形フレーム124cを後側縦フレーム124dから離脱させ、図6に示すように、回動連結具124f,124fによって、前側下部フレーム124a,124aに対して前側上部フレーム124bおよび上部L形フレーム124cを後部下方に向けて回動させる簡単な操作によって、アンテナフレーム124の高さを低くすることができる(図5B参照)。
したがって、例えば、苗移植機1を輸送する場合や納屋などへ格納する際に、GNSSユニット120の厚みが高さ的な障害となる場合、GNSSユニット120を取り外すことなく、全体車高を低くすることができる。
また、アンテナフレーム124(前側上部フレーム124bおよび上部L形フレーム124c)を回動させる構成として、回動連結具124fを設けた簡単な構成としているため、コストの増加を抑制するとともに、アンテナフレーム124全体のガタツキを最小限にすることができる。しかも、回動操作を1アクションで行える利便性を有する。
ところで、本実施形態では、図6に示すように、後側縦フレーム124dの上端近傍に略Y字状に形成したフレーム受具126を設けている。したがって、アンテナフレーム124を折り畳んで高さを低くする場合、上部L形フレーム124cをフレーム受具126に係止することで安定保持することができる。
ここで、図2に戻り、苗植付部50およびその他の構成について説明する。図2に示すように、苗植付部50は、走行車体2の後部に、苗植付部昇降機構40を介して昇降可能に取付けられている。苗植付部昇降機構40は昇降リンク装置41を備えており、この昇降リンク装置41は、走行車体2の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構を備える。かかる平行リンク機構は、上リンク41aと下リンク41bとを有し、これらのリンク41a,41bが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結される。そして、リンク41a,41bの他端側が苗植付部50に回転自在に連結されている。こうして、苗植付部50は走行車体2に昇降可能に連結されることになる。
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有し、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることができる。油圧昇降シリンダ44は、前述した油圧式無段変速装置16により駆動され、苗植付部昇降機構40の昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(植付位置)まで下降させたりすることができる。
また、苗植付部50は、苗を植え付ける範囲を、複数の区画、あるいは複数の列で植え付けることができる。例えば、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部50とすることができる。
また、苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート47(48,49)を備える。このうち、苗載置台51は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能である。
苗植付装置60は、苗を載置する苗載置台51の下部に配設され、苗を苗載置台51から取って圃場Fに植え付ける装置であり、苗載置台51の前面側に配設される植付支持フレーム55によって支持される。そして、苗植付装置60は、植付伝動ケース64と植付体61とを有し、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場Fに植え付けることができるように構成されており、植付伝動ケース64は、植付体61に駆動力を供給することができる。
また、植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を、植付体61に供給可能に構成されており、植付体61は、植付伝動ケース64に対して回転可能に連結される。また、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場Fに植え付ける植込杆62と、植込杆62を回転可能に支持すると共に植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されるロータリケース63とを有する。ロータリケース63は、植付伝動ケース64から伝達された駆動力によって植込杆62を回転させる際に、回転速度を変化させながら回転させることのできる不等速伝動機構(不図示)を内装している。これにより、植付体61の回転時には、植込杆62は、ロータリケース63に対する回転角度によって回転速度が変化しながら回転をすることができる。
このように構成される苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設されている。すなわち、複数の苗植付装置60は、それぞれ植付条が割り当てられている。また、各植付伝動ケース64は、2条分の植付体61を回転可能に備えている。つまり、1つの植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結される。
また、フロート47は、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49とを有する。
本実施形態におけるセンターフロート48には、圃場Fの状況に合わせて苗植付部50を上下へ昇降させる油圧感度機構として機能するフロートポテンショメータ154(図7参照)が設けられる。かかるフロートポテンショメータ154は、センターフロート48の上下動を検出する感度の幅を変更することができる。例えば、感度を敏感にすれば、センターフロート48の小さな上下動についても検出してコントローラ150へ検出信号を送信するようになう。一方、感度を鈍感にすれば、センターフロート48の小さな上下動については検出することなく、一定振幅以上の上下動のみ検出して検出信号をコントローラ150へ送信するようになる。
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場Fの整地を行う整地用のロータ67,67が設けられる。このロータ67は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成されるとともに、電動モータであるロータ用モータ165(図7参照)によって昇降可能に設けられている。なお、本実施形態に係る苗移植機1では、かかる整地用のロータ67,67が接地していることを条件として、後述するコントローラ150が直進サポートを実行するようにしている。すなわち、苗植付作業を行っている場合にのみ直進サポートが実行されるようになっている。
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられる。線引きマーカ68は、苗移植機1が圃場F内における直進前進時に、圃場Fの畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場F上に線引きする。しかしながら、本実施形態に係る苗移植機1は、GNSS(Global Positioning System)を利用して直進サポートを実行することができるため、線引きマーカ68を廃止することもできる。
また、走行車体2における操縦座席28の後方には、施肥装置70が搭載される。施肥装置70は、肥料を貯留する左右の貯留ホッパ71,71と、貯留ホッパ71,71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場Fに供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給するブロア73とを備える。このブロア73により、施肥ホース74内の肥料が苗植付部50側に移送される。さらに、施肥装置70は、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ホース74によって移送された肥料を苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76とを有する。
図7は、苗移植機1のコントローラ150を中心とした機能ブロック図である。本実施形態に係る苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、苗移植機1は、各部を制御する制御部としてのコントローラ150を備える。このコントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムが格納される。
図示するように、コントローラ150には、タブレット端末装置140をはじめ、各種アクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続される。なお、本実施形態においては、コントローラ150とタブレット端末装置140とは、所定の無線通信規格による無線接続としている。
コントローラ150には、アクチュエータ類として、例えば、エンジン10の吸気量を調節するスロットルモータ100、整地用のロータ67を昇降させるロータ用モータ165、植付クラッチ500を作動させる植付クラッチモータ510が接続される。なお、図示は省略したが、油圧式無段変速装置16のトラニオンの回動角度を変化させるトラニオン駆動モータもコントローラ150に接続されている。
また、コントローラ150には、舵角センサ130、方位センサ160、姿勢センサ170、傾きセンサ180、着座センサ190、および資材残量センサ199、さらには、主変速レバー81や副変速レバー82の操作量を傾動角度で検出するレバーセンサなどを含むその他各種のセンサ接続されている。
舵角センサ130は、例えば、操舵輪であるハンドル32の回動角度を検出するセンサ、あるいは、ハンドル32の操作によって転舵輪である前輪4が操舵された際の切れ角を検出するセンサである。舵角センサ130が検出した値を、コントローラ150は、記憶部のRAMに格納する。
方位センサ160は、機体の向きを検出するセンサであり、自動車のカーナビゲーションシステムなどに一般的に採用されている。コントローラ150は、かかる方位センサ160から取得した値に基いて、機体の実際の進行方向を導出することができる。
したがって、コントローラ150は、舵角センサ130が検出した舵角θが、走行車体2を直進させる許容範囲内であることを示す値ではない場合、あるいは、方位センサ160が検出した方角や姿勢センサ170が検出した姿勢が直進方向を示す値ではない場合、直進サポートを禁止することができる。なお、方位センサ160や姿勢センサ170についても、許容範囲を設定し、許容範囲外となる方位や姿勢がコントローラ150に設定する時間以上継続すると、直進方向を向いていないと判断し、直進サポートを禁止する構成とするとよい。
そのため、例えば、何らかの理由で苗移植機1の直進サポートを停止した状態から再開する際などにおいて、苗の植付作業を開始した直後の苗の植付姿勢が乱れてしまうことを防止でき、結果的に苗の育成に悪影響を与えることを未然に排除することができる。
なお、舵角θが、走行車体2を直進させる許容範囲内である値とは、例えば、前輪4の舵角θ(切れ角)の絶対値が15度以下などの場合である。また、走行車体2が旋回した後に、舵角センサ130が検出した舵角が、走行車体2を直進状態ではない値を示す場合(たとえば5度)は直進サポートを禁止することもできる。
また、何らかのトラブルなどが生じて苗移植機1の直進サポートを停止した場合、安全性を向上させるため、あるいは作業ミスを未然に防止するために、直進サポートを再開する際には、苗植付部50が降下してること、予備苗載台400が収納されていること、植付クラッチ500が入っていること、などの条件を満たしていなければ再開しないように制御することもできる。
本実施形態に係る姿勢センサ170は、走行車体2の姿勢が、自動直進ラインL1に対してどの程度斜め姿勢になっているかを検出するもので、ジャイロセンサなどで構成される。
本実施形態に係る傾きセンサ180は、走行車体2の上下方向の傾き、すなわち前傾姿勢または後傾姿勢の程度を検出するもので、加速度センサなどを用いて構成される。
着座センサ190は、操縦座席28に設けられた、ロードセルや感圧フィルムセンサなどにより構成されたセンサであり、作業者が操縦座席28に着座していることを検出することができる。
本実施形態では、操縦座席28への着座を着座センサ190が検出していることを条件として、直進サポートを開始するようにしている。そのため、作業者が着座していない不安定な状態のまま、自動運転による直進サポートがされることがなく、安全を確保することができる。なお、本実施形態では、かかる直進サポートの開始条件は、苗植付作業を最初に開始した場合であっても、一旦開始された直進サポートが中断された後に再開する場合であっても適用されることとしているが、いずれかの場合に限定するような設定も可能である。
また、着座センサ190の機能を失効させるセンサ切ボタンなどを別途設け、着座センサ190を強制的に機能させない状態にした中で直進サポートを行わせ、その間に、作業者は操縦座席28から離れて必要な別作業を行うようにすることも可能である。
資材残量センサ199は、施肥装置70の貯留ホッパ71内の肥料残量、苗植付部50の苗載置台51上の苗残量を検出するセンサである。図8は、資材残量センサ199の種類を示す説明図である。
図8に示すように、資材残量センサ199としては、ロードセル201、レーザセンサ202、画像センサ203、接触センサ204などの中から一つ、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。
いずれのセンサを用いる場合でも、検出結果は、コントローラ150を介してタブレット端末装置140にリアルタイムで表示されるようにするとよい。また、操縦部30における計器パネル33に、表示装置を設けて、資材残量(苗または肥料)を認識できるように構成することもできる。
また、作業者が苗残量を認識できるようにする他、例えば、コントローラ150の記憶部に予め記憶させた圃場情報と、GNSSユニット120により得た機体の位置情報とをリンクさせておき、かかるリンクさせた情報に、作業実績としての苗残量の変化を示す情報を関連させて記録することもできる。かかる構成とすることで、次回(次年度)の苗箱管理に役立てることができる。例えば、苗植付作業の開始はじめの状態を基準とした苗箱の変化量から、次回の苗箱数を自動計算させることも可能となる。
ロードセル201は、苗の重さの変化から残量を検出するもので、例えば、条毎の苗残量が分かるように、板状に形成された苗載置台51の各レーンに設けることができる。なお、苗の重さから苗の数量までを検知することは正確性に欠けるため、例えば、苗補充のタイミングを量る複数の階級分けを、%表示などで行うこともできる。
レーザセンサ202は、光学式のセンサであり、苗載置台51に載置された苗の位置を検出して残量を計測するものである。なお、レーザセンサ202は、苗載置台51の各レーン毎に設ける他、単一のセンサで各レーンの苗位置を検出できるように、レーンに沿って縦移動可能であり、かつ苗載置台51を横断するように横移動可能な移動装置に配設する構成であってもよい。レーザセンサ202によれば、ロードセル201に比べてより正確な苗残量検出が可能である。
画像センサ203は、二値化処理を行って苗載置台51に残存する苗の位置を計測するものであり、すべてのレーンの苗残量を単一の画像センサ203で計測することができ、苗移植機1としてのコスト増を抑制することができる。
また、コントローラ150には、図7に示すように、報知装置200として、例えばセンターマスコット350に設けられた第1レンズ部351および第2レンズ部352からなる表示部210と、警報などを発するブザー215とが接続される。
コントローラ150は、ブザー215や表示部210を用いて、直進サポートの実行や停止などを含むサポート状況を報知できる。したがって、作業者は、現時点における機体の前傾姿勢の状態や、機体を旋回させた後の舵角や機体の姿勢などが、直進サポートを実行するのに相応しい状況であるかを容易に認識できる。そのため、例えば、旋回操作から直進サポートに切り替える操作性が向上する。
ところで、かかるブザー215や表示部210を用いて、コントローラ150は、例えば、動力伝達装置15の異常(クラッチ機構のギヤ抜け等)を作業者に報知することもできる。なお、これら表示部210やブザー215は、本実施形態では走行車体2に予め設けられているものとしているが、同様な機能を、外部から持ち込み可能なタブレット端末装置140に付与することもできる。
また、苗移植機1は、コントローラ150により制御可能な操舵装置110と、位置情報取得装置であるGNSSユニット120と、情報処理端末装置であるタブレット端末装置140とを備えており、これらがコントローラ150に接続される。
操舵装置110は、ハンドル32と、かかるハンドル32と連動連結する伝動機構(不図示)を備えるとともに、任意の回転力をハンドル32に付与する直進サポート機構310を備えており、コントローラ150による自動操舵を可能にしている。伝動機構には、ハンドル32を回動させるステアリングモータ112が含まれる。コントローラ150は、例えば、直進サポート開始スイッチ84(図3参照)が操作されると、GNSSユニット120が取得した位置情報に基づき、直進サポート機構310を介してハンドル32を自動操舵することにより、走行車体2を直進方向に維持することが可能である。
また、かかる直進サポートを実行中に、走行車体2の前上がり姿勢が所定角度以上であることを傾きセンサ180が検出した場合、コントローラ150は、苗植付部50の少なくとも一部、例えばロータ用モータ165を駆動制御して、整地用のロータ67を下降させ、これを機体の重心後方で圃場面に突っ張らせた状態とすることで、走行車体2の傾きを抑制することができる。したがって、前輪4の駆動トルクを確保して直進性を向上させることができ、直進サポートの精度を向上させることができる。
また、コントローラ150は、走行車体2が旋回した後に舵角センサ130が検出した舵角θが直進状態を示す値ではない場合、あるいは、姿勢センサ170により検出した走行車体2の姿勢が、進行方向に対して斜め姿勢である場合は、直進サポートを禁止するようにしている。
GNSSユニット120は、GNSSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ(不図示)を有し、地球上における苗移植機1の位置情報(座標情報)を取得し、取得した位置情報をコントローラ150に伝達する。
かかるGNSSユニット120で取得した機体の位置データから、コントローラ150は、苗移植機1の実速度を導出することもできる。すなわち、一定時間内における機体の移動量から実走行速度を逐次算出することができる。したがって、コントローラ150は、例えば、前後輪4,5がスリップなどした場合でも、後輪5の回転量と関係なく、苗移植機1の実車速を取得することができる。
タブレット端末装置140は、内蔵される端末通信部144とコントローラ150に接続される車体通信部151との間で無線接続可能に構成される。そして、タブレット端末装置140は、制御部141と、情報を表示する表示部および各種の入力操作を行う入力操作部とを兼用するタッチパネル142と、情報を記憶する記憶部143とを備える。この記憶部143に、一または複数の圃場Fの地図情報や、その他、苗移植機1の制御に必要な各種プログラムや各種データが記憶されている。
タブレット端末装置140は、所謂マップ機能を有しており、本実施形態に係る苗移植機1は、GNSSユニット120により取得した走行車体2の位置情報に基づき、タッチパネル142上において、機***置を、作業領域を含む圃場Fの地図情報上に重畳表示することができる。
そして、前述したように、コントローラ150は、タブレット端末装置140に対し、直進サポートの実行可否を含むサポート状況や、苗や肥料などの残量に関する情報を報知することができる。すなわち、本実施形態の変形例として、タッチパネル142、あるいはこれを備えるタブレット端末装置140を、前述の報知装置200の一例とする構成とすることもできる。
また、苗移植機1は、基準点登録スイッチ83、フロートポテンショメータ154、さらには、主として操縦部30に設けられた直進サポート開始スイッチ84を含む各種スイッチ153を備えており、これらがコントローラ150に接続される。
基準点登録スイッチ83は、図3に示したように、計器パネル33の左側部に設けられており、直進サポートの開始位置となる基準始点P1および終了位置となる基準終点P2を取得する際の操作スイッチとして機能する。
フロートポテンショメータ154は、圃場Fの凹凸に追従して上下動するセンターフロート48に設けられており、このセンターフロート48の上下動を感知して苗植付部50を圃場Fの凹凸に応じて昇降させることができる。
本実施形態に係る苗移植機1は、上述してきた構成を有し、以下、苗移植機1が実行する直進サポートの一例について説明する。図9は、直進サポートの一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、コントローラ150は、直進サポート開始スイッチ84が操作されると、先ず、操縦座席28に作業者が着座しているか否かを判定し(ステップS110)、操縦座席28に作業者が着座するまで待機する(ステップS110:No)。なお、コントローラ150による判定は、着座センサ190による操縦座席28への着座検出によって行われる。着座されていると判定されると(ステップS110:Yes)、コントローラ150は、直進サポートを開始する(ステップS120)。
直進サポートが開始されると、コントローラ150は、傾きセンサ180を介して、走行車体2の前後傾姿勢を水平面に対する上下方向の角度により、所定角度以上の前上がり姿勢であるか否かを判定する(ステップS130)。角度が所定角度に至らない場合は(ステップS130:No)、かかるステップを繰り返す一方、走行車体2の前上がり姿勢が所定角度以上であると判定すると(ステップS130:Yes)、コントローラ150は、ロータ用モータ165を駆動して、ロータ67を下降させる(ステップS140)。
かかる制御により、苗移植機1全体の姿勢を水平になるように矯正でき、前輪4の駆動トルクを確保して直進性を向上させることができるとともに、ロータ67が圃場Fに押し付けられることで、苗植付部50のブレも減じることが可能となることからも苗移植機1の直進性を向上させることができる。
また、コントローラ150は、ロータ67を下降させた後、あるいはロータ67の下降と同時に、センターフロート48の感度を鈍くするように制御する(ステップS150)。すなわち、コントローラ150に記録されている、センターフロート48の回動により苗植付部50を自動昇降させる基準となるフロートポテンショメータ154の検知角度を変更し、センターフロート48の回動角度が大幅に変化したときのみ苗植付部50の自動昇降を作動させる制御構成とする。かかる構成とすることにより、細かい圃場深さの変動では苗植付部50の自動昇降が作動しなくなるので、苗植付部50が上下方向に動く際の振動が減り、直進サポートにおける直進性を損なうことがない。なお、ステップS140およびステップS150の処理は、順番として入れ替えても構わない。
また、コントローラ150は、フロートポテンショメータ154の作動頻度、すなわちセンターフロート48の上下動頻度に応じて、車速規制部として機能するスロットルモータ100を制御して車速を規制する、車速制御処理を実行して(ステップS160)、本直進サポートの一連の処理を終了する。車速制御処理では、例えば、フロートポテンショメータ154が所定時間内に一定の閾値以上に作動して苗植付部50が昇降するような場合、現在の走行速度から所定の割合でスロットルモータ100を強制的に減速回転して走行速度を減速する。フロートポテンショメータ154の作動頻度と減速割合とをリンクさせ、作動頻度に応じた減速度合となるようにしてもよい。
かかる構成とすることにより、苗移植機1の直進性をより向上させることができるとともに、苗の植付の乱れに起因した苗の生育への悪影響を未然に防止することができる。
また、本実施形態における直進サポートにおける車速制御処理では、条件によって車速規制を強化することができる。図10は、車速制御処理の一例を示すフローチャートである。図10に示すように、直進サポートを実行中、コントローラ150は、舵角センサ130により検出した舵角θが、所定角度Aより大きい場合(ステップS210:Yes)についても、スロットルモータ100を制御して車速を規制する、車速規制強化処理を行う(ステップS230)。
一方、舵角センサ130により検出した舵角θが所定角度Aよりも大きくない場合であっても(ステップS210:No)、コントローラ150は、ハンドル32が自動操舵される頻度、すなわち自動操縦頻度が所定頻度Bよりも高い場合(ステップS220:Yes)、スロットルモータ100を制御して車速規制強化処理を行う(ステップS230)。そして、自動操縦頻度が所定頻度Bよりも高くない場合(ステップS220:No)、およびステップS230の車速規制強化処理を終えた後、本車速制御処理を終了する。なお、舵角θの閾値となる所定角度Aや自動操縦頻度の閾値となる所定頻度Bについては、適宜経験的に設定することができる。
ここで、図11を参照しながら、前述した直進サポートを実行するに際して基準となる基準走行線L2の登録手順について説明する。図11は、直進サポートにおける基準走行線L2の登録手順を示す説明図である。
図11に示すように、先ず、基準始点P1を取得する(ステップS310)。すなわち、圃場F内において、苗の植付作業を実施する際の機体の進行方向に沿って苗移植機1を停止させ、直進方向に機体を向ける。そして、基準点登録スイッチ83を操作することで、その位置を、直進サポートの開始位置となる基準始点P1として取得する。このとき、報知装置200により、基準始点P1の取得が完了したことを示す第1の報知を行う(ステップS320)。ここでは、前述したように、センターマスコット350に設けられた表示部210のランプ354a〜354eの発光による報知が行われる。
次いで、基準終点P2の取得を行う(ステップS330)。これは、基準始点P1の取得を終えた後、直進サポートを実行させる距離だけ苗移植機1を直進させて停止し、基準点登録スイッチ83を操作する。基準点登録スイッチ83の二回目の操作が直進サポートの終了位置となる基準終点P2の取得操作となる。このとき、報知装置200により、基準終点P2の取得が完了したことを示す第2の報知を行う(ステップS340)。ここでも、センターマスコット350に設けられた表示部210のランプ354a〜354eの発光による報知が行われる。
基準始点P1および基準終点P2の取得が完了すると、コントローラ150の走行基準登録部152は、取得した基準始点P1および基準終点P2を結ぶ線分を基準走行線L2として生成する(ステップS350)。これにより、直進サポートを実行する際の直進方向を規定することができる。
そして、生成した基準走行線L2を登録すると、報知装置200により、基準走行線L2が登録されたことを示す第3の報知を行う(ステップS360)。これも、表示部210のランプ354a〜354eの発光による報知としている。
上述した実施形態から以下の苗移植機1が実現する。
(1)操舵装置110により操舵される前輪4を備えた走行車体2と、走行車体2の後部に昇降自在に連結される苗植付部50と、走行車体2の位置情報を取得するGNSSユニット120と、走行車体2の前後方向の傾きを検出する傾きセンサ180と、GNSSユニット120が取得した位置情報に基づき操舵装置110を制御して走行車体2の自動直進走行を支援する直進サポートを行うコントローラ150とを備え、コントローラ150は、直進サポートを実行中に、走行車体2の前上がり姿勢が所定角度以上であることを傾きセンサ180が検出した場合、苗植付部50の少なくとも一部を下降させて、走行車体2の傾きを抑制する苗移植機1。
(2)上記(1)において、苗植付部は、ロータ用モータ165により昇降自在に設けられた圃場整地用のロータ67を備え、コントローラ150は、傾きセンサ180が、走行車体2の前上がり姿勢が所定角度以上であることを検出した場合、ロータ用モータ165を駆動してロータ67を下降させ、走行車体2の傾きを抑制する苗移植機1。
(3)上記(1)または(2)において、走行車体2は、操縦座席28と、当該操縦座席28における作業者の存在を検出する着座センサ190とを備えており、コントローラ150は、操縦座席28への着座を着座センサ190が検出していることを条件として、直進サポートを開始する苗移植機1。
(4)上記(1)または(2)において、走行車体2は、操縦座席28と、当該操縦座席28における作業者の存在を検出する着座センサ190とを備えており、コントローラ150は、一旦中断された直進サポートを再スタートする場合、操縦座席28への着座を着座センサ190が検出していることを条件として行う苗移植機1。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、圃場Fの凹凸に追従して上下動するセンターフロート48と、センターフロート48の上下動を感知して苗植付部50を圃場Fの凹凸に応じて昇降させるフロートポテンショメータ154とを備え、コントローラ150は、傾きセンサ180が、走行車体2の姿勢が所定角度以上の前上がりであることを検出した場合、フロートポテンショメータ154によるセンターフロート48の上下動に対する感度を鈍くする苗移植機1。
(6)上記(5)において、走行車体2の車速を規制するスロットルモータ100を備え、コントローラ150は、フロートポテンショメータ154の作動頻度に応じて、スロットルモータ100を制御して車速を規制する苗移植機1。
(7)上記(6)において、前輪4の舵角θを検出する舵角センサ130を備え、コントローラ150は、一旦中断された直進サポートを再スタートする場合、舵角センサ130により検出した前輪4の舵角θが、走行車体2を直進させる許容範囲内にあることを条件として行う苗移植機1。
(8)上記(7)において、コントローラ150は、直進サポートを実行中に、舵角センサ130により検出した舵角θが所定角度以上の場合、または操舵装置110を自動操舵する頻度が所定頻度よりも高い場合、スロットルモータ100を制御して車速を規制する苗移植機1。
上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。