JP6733839B2 - 亜鉛系電気めっき鋼板 - Google Patents
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Description
本願は、2018年4月3日に、日本に出願された特願2018−071944号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
また、本発明者らは、めっき層の表面において微視的範囲の表面粗さが所定の閾値超である粗部と平滑部との割合を適切に調整することで、メタリック感及び被膜密着性を両立させつつ、光沢の過度な上昇を抑制できるとの知見を得ることができた。なお、「微視的範囲の表面粗さ」については、後述する。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下のとおりである。
前記亜鉛系電気めっき層において、前記ヘアラインが延伸しているヘアライン方向、及び、前記ヘアライン方向に対して直交するヘアライン直交方向のそれぞれに沿って、50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を連続して測定して、隣り合う2つの前記領域により形成される隣接領域で前記Sa(50μm)の比率であるR50を算出し、前記R50が0.667未満又は1.500以上の前記隣接領域を隣接領域Aとしたときに、前記ヘアライン方向及び前記ヘアライン直交方向のいずれにおいても、前記隣接領域Aの個数割合が30%以上である。
前記ヘアライン方向に測定した光沢度G60の値であるGlと、前記ヘアライン直交方向に測定した光沢度G60の値であるGcとが、0.3≦Gc/Gl≦0.85を充足し、 前記有機樹脂被覆層のL * a * b * 表色系による色調を、CIE標準光源D65を用いた色差計を用いて正反射光除去方式で測定したときに、彩度を示す(a *2 +b *2 ) 0.5 の値が10以下である。
(2)(1)に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記有機樹脂被覆層が、着色剤を含有してもよい。
(3)(1)又は(2)に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記有機樹脂被覆層が存在する状態において、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した表面粗さRa(CC)と、前記有機樹脂被覆層を剥離した後における、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した前記亜鉛系電気めっき層の表面粗さRa(MC)と、が、以下の式(1)で表される関係を満足してもよい。
Ra(CC)<Ra(MC)<5×Ra(CC) ・・・式(1)
(4)(1)〜(3)の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層の地鉄露出率が、5%未満であってもよい。
(5)(1)〜(4)の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層の付着量が、10g/m2〜60g/m2であってもよい。
(6)(1)〜(5)の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、1.0μm以上1.7μm以下であってもよい。
(7)(1)〜(6)の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層が、Fe、Ni、及び、Coからなる群より選択される何れか1以上の元素を、合計で5質量%〜20質量%含有してもよい。
(8)(1)〜(7)の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、前記亜鉛系電気めっき層の厚みの60%以下であってもよい。
以下では、まず、図1A及び図1Bを参照しながら、本発明の実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の全体構成について詳細に説明する。図1A及び図1Bは、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の構造の一例を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1の基材である鋼板11は、特に限定されるものではなく、亜鉛系電気めっき鋼板に求められる機械的特性(例えば、引張強度等)等に応じて、公知の各種の鋼板を適宜利用することが可能である。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1において、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaは、1.0μm以上1.7μm以下であることが好ましい。ここで、Raは、JIS B 0601:2013に規定された算術平均粗さである。表面粗さRaが1.0μm未満である場合には、以下で詳述するような表面形状を有する亜鉛系電気めっき層13を設けにくくなる可能性があるため好ましくない。表面粗さRaが1.7μmを超える場合には、以下で詳述するような表面形状を有する亜鉛系電気めっき層13を設けたとしても、所定の方向にヘアラインが延伸していると認識されにくくなる可能性があるため好ましくない。
本実施形態に係る鋼板11において、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaは、1.1μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。
なお、本発明においては、上記の表面粗さRaは、ヘアラインが延伸していると視認される方向と、ヘアラインに直交する方向と、で大差はないが、上記の表面粗さRaの範囲に関しては、ヘアラインと直交する方向で測定する。
本実施形態に係る鋼板11において、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaは、亜鉛系電気めっき層13の厚みの40%以下であることがより好ましい。
なお、亜鉛系電気めっき層13の厚みは次のようにして求める。まず、めっき鋼板をインヒビターを含有する酸液に浸漬して、亜鉛系電気めっき層13を溶解する。次に、このようにして得られた亜鉛系電気めっき層13の付着量と、亜鉛系電気めっき層13に含まれる金属の比重と、から亜鉛系電気めっき層13の厚さを換算する。
また、上記のような鋼板11の一方の表面には、亜鉛系電気めっき層が形成されている。本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13は、図1Aに模式的に示したように、所定の方向(図1Aの下部に矢印で記載した方向)に延伸するヘアラインとして視認される平滑部103と、ヘアラインではない部分として視認される粗部101a,101bと、を有している。ここで、以下の説明では、「ヘアラインが延伸していると視認される方向」のことを、「ヘアライン方向」と略記し、「ヘアラインの延伸方向と視認される方向に対して直交する方向」のことを、「ヘアライン直交方向」と略記する。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13としては、電気亜鉛めっき、又は、電気亜鉛合金めっき(以下、「亜鉛系電気めっき」と総称する。)を使用する。
従って、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1では、鋼板表面に亜鉛系めっきを施すために、電気めっきを利用する。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層の付着量は、10g/m2以上であることが好ましい。所望の耐食性を担保できれば、亜鉛系電気めっき層の付着量は問われないが、亜鉛系電気めっき層の付着量が10g/m2未満の場合、ヘアラインの付与時に地鉄露出率が5%を越える可能性が高くなるため好ましくない。
亜鉛系電気めっき層の付着量は、より好ましくは15g/m2以上であり、更に好ましくは20g/m2以上である。なお、亜鉛系電気めっき層の付着量の上限値については、特に規定されず、本実施形態に係るめっき鋼板の製造コスト等に鑑みて、適宜決定すればよく、例えば、60g/m2程度とすることができる。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1は、亜鉛系電気めっき層13の表面に対し、研磨等によりヘアライン加工を施すことを前提としている。そのため、研磨等の工程段階で、亜鉛系電気めっき層13の一部が除去され、研磨・研削厚さ次第では、部分的に地鉄(すなわち、鋼板11)が露出する場合も生じ得る。
亜鉛系電気めっき層13の地鉄露出率は、より好ましくは3%以下であり、0%であることが更に好ましい。
なお、地鉄露出率は、めっきを侵さない溶剤やリムーバーなどの剥離剤で有機樹脂被覆層15を除去してから、任意の1mm四方5ヶ所をEPMA分析し、分析面積に対するZnが検出されない面積率を画像解析することで、求めることができる。
上記のようなヘアラインを付与された亜鉛系電気めっき層13の表面は、図1Bに模式的に示したように、透明な樹脂(換言すれば、透光性を有する樹脂)で被覆されることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の表面側には、有機樹脂被覆層15が設けられることが好ましい。ここで、本実施形態において、「樹脂が透光性を有する」とは、亜鉛系電気めっき鋼板1の表面に光を当て、亜鉛系電気めっき鋼板1を鉛直方向から10°の角度で観察した際に、亜鉛系電気めっき層13に付与されたヘアラインを視認できることを意味する。
有機樹脂被覆層15の形成に用いられる樹脂は、十分な透明性を保持するものであれば特に限定されない。有機樹脂被覆層15の形成に用いられる樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、メラミンアルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
本実施形態に係る有機樹脂被覆層15の厚みは、10μm以下であることが好ましい。有機樹脂被覆層15の厚みが10μmを超えると、光が有機樹脂被覆層15内を通る距離が長くなることによって反射光が減少し、ヘアライン方向の光沢度が低下する結果、ヘアラインが視認しづらくなる可能性が高くなるため好ましくない。また、加工に伴う樹脂の変形によって、亜鉛系電気めっき層13表面のテクスチャと、有機樹脂被覆層15の表面の形状とのずれが、発生しやすくなるため好ましくない。
以上の理由により、有機樹脂被覆層15の厚みは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
有機樹脂被覆層15の最も薄い部分の厚みは、0.5μm以上であることがより好ましく、有機樹脂被覆層15の平均厚みは、3.0μm以上であることがより好ましい。
次に、図1Aを参照しながら、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の表面形状について、詳細に説明する。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13において、平滑部103がヘアライン方向に長い距離にわたって連続して存在していると、光沢が高くなりすぎるため好ましくない。一方、粗部101a,101bが過度に連続していると、ヘアラインの連続性が損なわれるため好ましくない。そのため、ヘアラインを形成する平滑部103を、粗部101a,101bが適切な割合で分断していることが重要である。
ヘアライン方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満である(つまり、隣接領域Bの個数割合が70%以上である)場合、平滑部103が連続しすぎて光沢が高くなりすぎ、かつ、有機樹脂被覆層15を設けた場合の加工部密着性が低下するか、又は、粗部101a,101bが連続しすぎて連続したヘアラインと認識できなくなり、かつ、ヘアライン方向の光沢度が低下しすぎることによってメタリック感を損なってしまうため好ましくない。
一方、ヘアライン方向の隣接領域Aの個数割合の上限は無く、当該個数割合は100%であってもよい。
ヘアライン方向の隣接領域Aの個数割合を30%以上とすることで、メタリック感を損なわずに光沢を適度に抑制し、かつ、優れた被膜密着性を実現することができる。当該個数割合は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上である。
一方、ヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合についても上限は無く、当該個数割合は100%であってもよい。
当該個数割合を30%以上とすることで、メタリック感を損なわずに光沢を適度に抑制し、かつ、優れた被膜密着性を実現することができる。
当該個数割合は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上である。
前述のように、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13では、隣接領域Aの個数割合を30%以上とすることにより、亜鉛系電気めっき層13の上層に有機樹脂被覆層15が設けられた際の被膜密着性を担保している。
また、先だって言及したように、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13では、平滑部103が適切な割合で存在していることで、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1は好適なメタリック感を有している。ここで、平滑部103によるメタリック感の向上効果を実現するためには、平滑部103が、適切な表面粗さを有し、かつ適切な広さの領域を有することが好ましい。
また、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13において、有機樹脂被覆層15が存在する状態において、ヘアライン直交方向に沿って測定した表面粗さRa(CC)[単位:μm]と、有機樹脂被覆層15を剥離した後における、ヘアライン直交方向に沿って測定した亜鉛系電気めっき層13の表面粗さRa(MC)[単位:μm]と、が、以下の式(101)で表される関係を満足することが好ましい。
続いて、以上説明したような本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法について、簡単に説明する。
まず、表面粗さが所定の範囲内となるように調整された鋼板に対し、アルカリ溶液による脱脂と塩酸や硫酸等を用いた酸による酸洗とを施し、亜鉛系電気めっき層を形成する。ここで、鋼板の表面粗さの調整は、公知の方法を利用することが可能であり、例えば、表面粗さが所望の範囲となるように調整されたロールで圧延して転写する方法、などの方法を用いることができる。
電気めっき浴としては、例えば、硫酸浴、塩化物浴、ジンケート浴、シアン化物浴、ピロリン酸浴、ホウ酸浴、クエン酸浴、その他錯体浴及びこれらの組合せ等を使用できる。
電気亜鉛合金めっき浴には、Znイオンの他に、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、P、Sn、Mn、Mo、V、W、Zrから選ばれる1つ以上の単イオン又は錯イオンを添加することで、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、P、Sn、Mn、Mo、V、W、Zrを所望量含有する電気亜鉛合金めっき層を形成することができる。めっき浴中のイオンの安定化やめっきの特性を制御するために、上記めっき浴に対して添加剤を加えることが、さらに好ましい。
10〜80%の研磨・研削率でヘアラインを形成することにより、基材である鋼板11の表面上の凹凸が残ったままの状態でヘアラインが形成されるため、平滑部が物理的には連続していないにも関わらず、所定の方向に繋がって見えるヘアラインを形成することができる。
研磨・研削率が10%未満の場合、ヘアライン方向及び/又はヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満となってしまう可能性が高いため好ましくない。研磨・研削率は10%以上とし、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。
研磨・研削率が80%超の場合、ヘアライン方向及び/又はヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満となってしまう可能性が高いため好ましくない。研磨・研削率は80%以下とし、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
鋼板11の表面粗さRaは、上述したように、触診式の粗さ計で測定可能である。また、研磨・研削率は、隣接する2か所について、一方にはヘアラインを付与し、もう一方にはヘアラインを付与せず、その両者のめっき付着量の差から算出する。なお、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層の場合、付着量から長さに変換する際には比重7.1を用いる。
続いて、以上説明したような方法により形成される、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の具体例について、図2A及び図2Bを参照しながら、簡単に説明する。図2Aは、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板が有する亜鉛系電気めっき層の表面をSEMで観察した際の画像の一例である。また、図2Bは、図2Aに示した亜鉛系電気めっき層13の表面について、目視した場合と同様に見えるように通常のカメラで撮影した画像である。
亜鉛系電気めっき層としては、Znめっき皮膜、Zn―Niめっき皮膜、Zn−Feめっき皮膜、Zn−Coめっき皮膜、Zn−Ni−Feめっき皮膜、Zn−Co−Moめっき皮膜を用いた。それぞれのめっき皮膜の形成条件は、次の通りである。
Znめっき皮膜は、硫酸Zn七水和物1.0Mと、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、浴温50℃、電流密度50A/dm2で、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
浴温50℃、電流密度50A/dm2でめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
浴温50℃、電流密度50A/dm2でめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Fe(II)七水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Fe(II)七水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
浴温50℃、電流密度50A/dm2でめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
浴温50℃、電流密度50A/dm2でめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物と硫酸Fe(II)七水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物と硫酸Fe(II)七水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
浴温50℃、電流密度50A/dm2でめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物とモリブデン酸ナトリウム二水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物とモリブデン酸ナトリウム二水和物(合計で1.2M)と、ギ酸ナトリウム25g/Lと、ほう酸50g/Lと、を含むpH4.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
得られためっき皮膜の組成は、めっきした鋼板をインヒビター(朝日化学製 NO.700AS)入りの10質量%塩酸に浸漬して溶解剥離し、溶解した溶液をICPで分析することで確認した。
得られためっき鋼板に対して、鋼板のL方向(圧延方向)に沿って、ヘアラインを付与した。ヘアラインは研磨紙を鋼板に押し当てることで形成した。研磨紙の粒度、圧下力及び研磨回数を調整して、表に記載の研磨・研削率となるようにヘアラインを形成した。
なお、研磨・研削率は、鋼板幅方向に隣接する100mm幅の2か所の一方にヘアラインを付与し、もう一方にはヘアラインを付与せずにそれぞれのめっき付着量を求め、ヘアライン付与前のめっき付着量ともう一方のヘアライン付与後の付着量の差から算出した。また、この時のめっき比重の値は7.1を用いた。
ヘアライン付与後のめっき粗度及びめっき付着量は、表に示すとおりである。
めっき層を除去した後の鋼板の表面粗さRaは、3次元表面粗さ測定機(東京精密製 サーフコム1500DX3)で測定し、めっき鋼板の3次元表面粗さSaは、高さ方向の表示分解能が1nm以上であり、かつ、幅方向の表示分解能が1nm以上であるキーエンス社製レーザー顕微鏡/VK−9710を用いて上記の方法に則して測定した。
ヘアライン付与前のめっき付着量は、めっき層を形成した後の鋼板を、インヒビター(朝日化学製 NO.700AS)入りの10質量%塩酸に浸漬して、溶解剥離する前後の重量差から算出した。
50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を、ヘアライン方向に21箇所、ヘアライン直交方向に21箇所それぞれ連続して測定した。隣接領域での3次元平均表面粗さSa(50μm)の比率R50を、合計20の隣接領域で算出した。合計20の隣接領域のうち、R50が0.667未満又は1.500以上である隣接領域Aが占める個数割合を、各表に記載した。
ヘアライン付与後のめっき層の付着量の測定は、ヘアライン付与前のめっき層の付着量の測定と同様にして行った。
ここで、ヘアライン付与前後でのめっき層の付着量の差分は、ヘアラインを付与する過程での、めっき層の減少分に相当する。
上述の製法で得られためっき鋼板を切り出し、1mm四方の視野5か所をEPMA(日本電子製 JXA8230)で画像を解析した。画像解析により、Znが検出されず、Feが検出される領域は地鉄が露出していると見なし、当該領域の面積率を地鉄露出率とした。EPMA分析は、加速電圧15kV、照射電流30nAの条件で実施した。Znの検出強度が標準試料(純Zn)を測定した場合の1/16以下となる領域をZnが検出されないと判断し、Feの検出強度が標準試料(純Fe)を測定した場合の14/16を超える領域をFeが検出されたと判断した。
ヘアラインを付与した上記のめっき鋼板に対し、透明な有機樹脂被覆層を形成した。有機樹脂形成用処理液としては、ウレタン系樹脂(株式会社ADEKA製、HUX−232)を水に分散させた、種々の濃度と粘度の処理液を用いた。処理液をロールですくい上げ、焼付け乾燥後に表に示す厚みとなるようにめっき鋼板に転写した。処理液を転写しためっき鋼板を250℃に保持した炉に入れ、鋼板の到達温度が210℃に到達するまで1分〜5分間保持した後、取り出して冷却した。また、No.62〜69については、有機樹脂被膜層に対し、着色剤としてカーボンブラック(三菱ケミカル製:#850)とシアニンブルー(大日精化工業製:AFブルーE−2Bを添加した。
有機樹脂形成用処理液に粘度調整剤としてBYK−425(ビッグケミー製)を添加し、せん断速度0.1[1/sec]では10[Pa・s]以上の粘度を有し、せん断速度1000[1/sec]では0.01[Pa・s]以下のせん断粘度を有するように調整した。なお、条件6、9、25、39、53に対応する処理液にのみ粘度調整剤を加えず、せん断速度0.1[1/sec]における粘度が10[Pa・s]を下回るように調整した。
有機樹脂被覆層の表面粗さRa(CC)は、めっき層を除去した後の鋼板の表面粗さRaの測定と同様に、3次元表面粗さ測定機(東京精密製 サーフコム1500DX3)で測定した。
有機樹脂被覆層形成後のめっき鋼板の60°光沢度G60は、光沢度計(スガ試験機製:グロスメーターUGV−6P)によりL方向(鋼板の圧延方向)及びC方向(圧延方向に垂直な方向)のそれぞれで測定した。得られたG60の値を表に示した。
ヘアライン方向(用いた試料ではヘアラインがL方向に沿って形成されているので、L方向と同じ方向を表す)に測定した光沢度G60(Gl)が70以上150以下の場合を適度な光沢度が得られていると判断した。
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板の透光性は、以下の方法により評価した。
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板に対して、45°の角度から蛍光灯の光を当て、鋼板に対して鉛直方向から10°の角度で15cmの距離から観察し、下記の評価基準で透光性を評価した。A又はBと評価されたものを合格とした。得られた結果を、表に示した。
A:長さ20mm以上のヘアラインを明瞭に視認できる
B:輪郭が不明瞭な長さ20mm以上のヘアラインを視認できる
C:20mm以上のヘアラインを視認できない
D:ヘアラインをまったく視認できない
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板の被膜密着性は、以下の方法により評価した。
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板から、幅50mm×長さ50mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して180°の折り曲げ加工を施した後、折り曲げ部の外側に対してテープ剥離試験を実施した。テープ剥離部の外観を拡大率10倍のルーペで観察し、下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は、20℃の雰囲気中において、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した。A又はBと評価されたものを合格とした。得られた結果を、表に示した。
なお、No.SUSでは、有機樹脂被覆層を形成していないため、被膜密着性を評価しなかった。そのため、No.SUSの被膜密着性の評価結果を「−」で示している。
A:テープの粘着面に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められない
B:テープの粘着面の極一部に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められる(剥離面積≦2%)
C:テープの粘着面の一部に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められる(2%<剥離面積≦20%)
D:テープの粘着面に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められる(剥離面積>20%)
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板の耐食性(より詳細には、長期耐食性)を評価する際は、まず、得られた試料を75mm×100mmの大きさに切断し、端面及び裏面をテープシールで保護した。端面及び裏面をテープシールで保護した試料を、35℃−5%NaClの塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2015)に供した。240時間後の錆発生率が5%以下の試料をOKとし、5%を越えた試料をNGとした。得られた結果を、表に示した。
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板のメタリック感は、以下の方法により評価した。
ヘアライン方向に測定した光沢度G60(Gl)及びヘアライン直交方向に測定したG60(Gc)の値、及び、分光測色計(コニカミノルタ製:CM−2600d)を用いてCIE標準光源D65条件でのL*a*b*表色系による色調をSCE(Specula Component Excluded:正反射光除去)方式で測定したa*及びb*の値を用い、下記の評価基準でメタリック感を評価した。A又はBと評価されたものを合格とした。得られた結果を、表に示した。
A:0.3≦Gc/Gl≦0.75 かつ (a*2+b*2)0.5≦5
B:0.3≦Gc/Gl≦0.85 かつ 5<(a*2+b*2)0.5≦10、又は、0.75<Gc/Gl≦0.85 かつ (a*2+b*2)0.5≦10
C:0.3>Gc/Gl、又は、Gc/Gl>0.85、又は、10<(a*2+b*2)0.5
11 鋼板
13 亜鉛系電気めっき層
15 有機樹脂被覆層
101a,101b 粗部
103 平滑部
Claims (8)
- 鋼板と;
前記鋼板の少なくとも一方の表面に位置し、表面に所定の方向に延伸するヘアラインを有する亜鉛系電気めっき層と;
前記亜鉛系電気めっき層の上層に位置し、透光性を有し、かつ、厚みが10μm以下である有機樹脂被覆層と;
を備え、
前記亜鉛系電気めっき層において、前記ヘアラインが延伸しているヘアライン方向、及び、前記ヘアライン方向に対して直交するヘアライン直交方向のそれぞれに沿って、50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を連続して測定して、隣り合う2つの前記領域により形成される隣接領域で前記Sa(50μm)の比率であるR50を算出し、前記R50が0.667未満又は1.500以上の前記隣接領域を隣接領域Aとしたときに、前記ヘアライン方向及び前記ヘアライン直交方向のいずれにおいても、前記隣接領域Aの個数割合が30%以上であり、
前記ヘアライン方向に測定した光沢度G60の値であるGlと、前記ヘアライン直交方向に測定した光沢度G60の値であるGcとが、0.3≦Gc/Gl≦0.85を充足し、
前記有機樹脂被覆層のL * a * b * 表色系による色調を、CIE標準光源D65を用いた色差計を用いて正反射光除去方式で測定したときに、彩度を示す(a *2 +b *2 ) 0.5 の値が10以下である
ことを特徴とする、亜鉛系電気めっき鋼板。 - 前記有機樹脂被覆層が着色剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
- 前記有機樹脂被覆層が存在する状態において、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した表面粗さRa(CC)と、前記有機樹脂被覆層を剥離した後における、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した前記亜鉛系電気めっき層の表面粗さRa(MC)と、が、以下の式(1)で表される関係を満足する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
Ra(CC)<Ra(MC)<5×Ra(CC) ・・・式(1) - 前記亜鉛系電気めっき層の地鉄露出率が、5%未満である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。 - 前記亜鉛系電気めっき層の付着量が、10g/m2〜60g/m2である
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。 - 前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、1.0μm以上1.7μm以下である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。 - 前記亜鉛系電気めっき層が、Fe、Ni、及び、Coからなる群より選択される何れか1以上の元素を、合計で5質量%〜20質量%含有する
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。 - 前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、前記亜鉛系電気めっき層の厚みの60%以下である
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
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