JP6471723B2 - 磁性トナー - Google Patents
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Description
磁性トナーが、結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性樹脂と、磁性粉とを含有するトナー粒子を、複数含む。磁性粉は、アスペクト比2.0以上の針状磁性粒子の粉体(以下、針状磁性粉と記載する)と、アスペクト比2.0未満の非針状磁性粒子の粉体(以下、非針状磁性粉と記載する)とを含む。針状磁性粒子は、ニグロシンで表面処理されている。磁性トナーの残留磁化は7emu/g以上20emu/g以下である。なお、アスペクト比は、粒子の顕微鏡像に基づいて測定される粒子の「最大長径/最大長径に直交する幅」に相当する。
(結着樹脂)
トナー母粒子では、一般に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナー母粒子全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナー母粒子はアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナー母粒子はカチオン性になる傾向が強くなる。
トナー母粒子は、着色剤(例えば、黒色着色剤)を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、又はアニリンブラックが挙げられる。
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有させてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
前述の基本構成を有する磁性トナーでは、トナー母粒子が、針状磁性粉(アスペクト比2.0以上の針状磁性粒子の粉体)と、非針状磁性粉(アスペクト比2.0未満の非針状磁性粒子の粉体)とを含有する。
・SPIRIT BLACK:「ABL」
・NUBIAN(登録商標)BLACK:「NH−805」/「NH−815」
・NIGROSINE BASE:「EX」/「EX−BP」/「SAPL」
・SPECIAL BLACK:「EB」
・NUBIAN BLACK:「TN−870」/「TN−877」/「TH−807」
・BONTRON(登録商標):「N−71」/「N−75」/「N−79」
トナー母粒子の表面に外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナー粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(複数種の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
前述の基本構成を有する磁性トナーを容易かつ好適に製造するためには、例えば、次に示す溶融混練工程、粉砕工程、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を含むトナーの製造方法が好ましい。
以下、溶融混練工程の一例について説明する。溶融混練工程では、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性樹脂、及び磁性粉を含むトナー材料(例えば、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を混合して、混合物を得る。使用される磁性粉は、前述の基本構成で規定される構成を有する。詳しくは、磁性粉は、針状磁性粉と非針状磁性粉とを含む。針状磁性粒子は、ニグロシンで表面処理されている。例えば、針状磁性粉とニグロシンとの混合物を、混合装置(例えば、FMミキサー)を用いて適当な回転速度(例えば、800rpm以上2800rpm以下)で適当な時間(例えば、30秒間以上10分間以下)攪拌することで、容易に針状磁性粒子をニグロシンで表面処理できる。また、液中でニグロシンと他の表面処理剤とを相溶させて、その液中に針状磁性粒子を加えて液を攪拌することで、針状磁性粒子をニグロシンと他の表面処理剤とで表面処理してもよい。トナー材料の混合には、混合装置(例えば、FMミキサー)を好適に使用できる。トナー材料としては、結着樹脂及び着色剤を含むマスターバッチを用いてもよい。
以下、粉砕工程の一例について説明する。まず、ドラムフレーカーのような冷却固化装置を用いて溶融混練物を冷却することにより固化する。続けて、第1の粉砕装置を用いて、得られた固化物を粗粉砕する。その後、得られた粗粉砕物を、第2の粉砕装置を用いてさらに粉砕して、粉体を得る。得られた粉体(粉砕物)を、分級機(例えば、風力分級機)を用いて分級してもよい。
粉砕工程の後、例えば水を用いてトナー母粒子を洗浄してもよい。トナー母粒子の洗浄方法としては、例えば、トナー母粒子を含む分散液を固液分離して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を回収し、回収されたウェットケーキ状のトナー母粒子を水で洗浄する方法が好ましい。また、トナー母粒子の洗浄方法としては、トナー母粒子を含む分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が好ましい。
洗浄工程の後、トナー母粒子を乾燥してもよい。例えば、乾燥機(より具体的には、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機等)を用いてトナー母粒子を乾燥することができる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いてトナー母粒子を乾燥することが好ましい。スプレードライヤーを用いる場合には、例えば、外添剤(より具体的には、シリカ粒子等)が分散した分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と後述の外添工程とを同時に行うことが可能になる。
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。混合機を用いて、トナー母粒子に外添剤が埋め込まれないような条件でトナー母粒子と外添剤とを混合することで、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
(結晶性ポリエステル樹脂の準備)
結晶性ポリエステル樹脂として、花王株式会社製の「HDK−C14」を準備した。
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に、多官能基を有する酸(詳しくは、テレフタル酸)を反応させることにより、非結晶性ポリエステル樹脂を合成した。
非針状磁性粉としては、表2に示す物性を有するフェライト粒子の粉体を準備した。非針状磁性粉に含まれる非針状磁性粒子のアスペクト比は1.3であった(表2参照)。非針状磁性粒子の形状は、多面体状であった。
表2に示す物性を有するフェライト粒子(処理対象粒子)の粉体に、表3に示す表面処理を行って、針状磁性粉MA〜MDを得た。詳しくは、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、フェライト粒子(粉体)1000gと、トリメトキシシラン化合物(γ−グリシドオキシプロピレントリメトキシシラン)10gと、表3に示す量のニグロシン(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON N−71」)とを、回転速度500rpmで5分間混合した。例えば、針状磁性粉MAの調製では、フェライト粒子(粉体)1000gに対して、ニグロシンを30g添加した(表3参照)。また、針状磁性粉MDの調製では、ニグロシンを添加しなかった。針状磁性粉MA〜MDの各々に含まれる針状磁性粒子のアスペクト比は、表面処理前と変わらず3.6であった(表2参照)。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、結晶性樹脂(前述のように準備した結晶性ポリエステル樹脂)2質量部と、非結晶性樹脂(前述のように準備した非結晶性ポリエステル樹脂)と、着色剤(カーボンブラック:三菱化学株式会社製「MA−100」)5質量部と、離型剤(エステルワックス:日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)4質量部と、電荷制御剤(ニグロシン:オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON N−71」)1質量部と、針状磁性粉(各トナーに定められた、表1に示される針状磁性粉MA〜MDのいずれか)と、非針状磁性粉(前述のように準備した非針状磁性粉)とを、温度40℃かつ回転速度1500rpmで5分間混合した。非結晶性樹脂(非結晶性ポリエステル樹脂)と針状磁性粉と非針状磁性粉との各々の添加量は、表1に示すとおりであった。例えば、トナーTA−1の製造では、非結晶性ポリエステル樹脂を38質量部、針状磁性粉MAを40質量部、非針状磁性粉(フェライト粒子)を10質量部、それぞれ添加した。また、トナーTB−1の製造では、非結晶性ポリエステル樹脂を38質量部、針状磁性粉MAを50質量部、それぞれ添加し、非針状磁性粉を添加しなかった。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、回転速度1500rpmの条件で、トナー母粒子100質量部と、第1シリカ粒子(キャボット社製「CAB−O−SIL(登録商標)TG−7120」)1.0質量部と、第2シリカ粒子(テイカ株式会社製「MS−220NF」)0.5質量部と、第1酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)1.2質量部と、第2酸化チタン粒子(石原産業株式会社製「ET−808」)0.4質量部とを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子及び酸化チタン粒子)が付着した。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子(磁性粒子)を含む磁性トナー(表1に示されるトナーTA−1〜TA−6及びTB−1〜TB−3)が得られた。
・測定装置:高感度振動試料型磁力計(東英工業株式会社製「VSM−P7」)
・測定モード:3/4ループ
・測定磁界範囲:−5kOe〜+5kOe
・サンプル量:約55mg
各試料(トナーTA−1〜TA−6及びTB−1〜TB−3)の評価方法は、以下のとおりである。
試料(トナー)に含まれるトナー粒子を、ウルトラミクロトーム(RMC社製「MT−6000XL」)を用いて切断し、電子顕微鏡を用いてトナー粒子の断面を観察した。下記基準に従って、磁性粉の分散性を評価した。
○(良い):磁性粉の塊が観察されなかった。
△(普通):磁性粉の小さい塊が観察された。
×(悪い):磁性粉の大きい塊が観察された。
評価機としては、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−4020DN」)を用いた。インストールモードで評価機の現像装置に試料(トナー)約200gをセットした。また、評価機の定着温度は180℃に設定した。
◎(非常に良い):定着率が95%以上であった。
○(良い):定着率が90%以上95%未満であった。
×(悪い):定着率が90%未満であった。
N/N環境(温度23℃かつ湿度55%RH)下とH/H環境(温度28℃かつ湿度80%RH)下との各々で、画像濃度及びかぶり濃度の各々の評価を行った。所定の環境(N/N環境又はH/H環境)下、試料(トナー)をセットしたモノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−2020DN」)を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を評価用紙に印刷した。そして、反射濃度計(X−Rite社製「RD914」)を用いて、印刷された紙におけるサンプル画像のソリッド部の反射濃度(ID:画像濃度)を測定した。また、上記反射濃度計(RD914)を用いて、印刷された紙におけるサンプル画像の空白部と、印刷していないベースペーパー(未印刷紙)との各々について、反射濃度を測定した。そして、次の式に基づいて、かぶり濃度(FD)を算出した。
FD=(空白部の反射濃度)−(未印刷紙の反射濃度)
◎(非常に良い):画像濃度(ID)が1.30以上であった。
○(良い):画像濃度(ID)が1.20以上1.30未満であった。
△(普通):画像濃度(ID)が1.10以上1.20未満であった。
×(悪い):画像濃度(ID)が1.10未満であった。
◎(非常に良い):かぶり濃度(FD)が0.010未満であった。
○(良い):かぶり濃度(FD)が0.010以上0.020未満であった。
△(普通):かぶり濃度(FD)が0.020以上0.100未満であった。
×(悪い):かぶり濃度(FD)が0.100以上であった。
温度23℃かつ湿度55%RHの環境下、試料(トナー)をセットしたモノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−2020DN」)を用いて、評価用紙にE13Bフォントを印字した。MICRリーダー(RDM社製「MICR Qualifier」)を用いて、印字されたフォントの読取率を測定した。読取率が90%以上200%未満であれば○(良い)と評価し、読取率が90%未満又は200%以上であれば×(良くない)と評価した。なお、読取率100%は、標準テストパターンの読取率に相当する。
トナーTA−1〜TA−6及びTB−1〜TB−3の各々の評価結果を、表4に示す。表4は、磁性粉の分散性(顕微鏡観察による評価結果)、定着性(定着率)、N/N環境下での画像評価(画像濃度及びかぶり濃度)、H/H環境下での画像評価(画像濃度及びかぶり濃度)、及び磁気読取性(読取率)の各々の測定値を示している。
Claims (9)
- 結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性樹脂と、磁性粉とを含有するトナー粒子を、複数含む磁性トナーであって、
前記磁性粉は、アスペクト比2.0以上の針状磁性粒子の粉体である針状磁性粉と、アスペクト比2.0未満の非針状磁性粒子の粉体である非針状磁性粉とを含み、
前記針状磁性粒子は、ニグロシンで表面処理されており、
前記磁性トナーの残留磁化は7emu/g以上20emu/g以下であり、
前記非針状磁性粒子の表面にはニグロシンが存在しない、磁性トナー。 - 前記非結晶性樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の磁性トナー。
- 前記トナー粒子は、
前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記非結晶性樹脂と、前記磁性粉とを含有するトナー母粒子と、
前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤と、
を備える、請求項1又は2に記載の磁性トナー。 - 前記ニグロシンは、粒子の状態で前記針状磁性粒子の表面に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁性トナー。
- 前記磁性トナーの残留磁化は、8emu/g以上14emu/g以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁性トナー。
- 飽和磁化75emu/g以上95emu/g以下かつ残留磁化25emu/g以上50emu/g以下の針状磁性粉と、飽和磁化75emu/g以上95emu/g以下かつ残留磁化5emu/g以上20emu/g以下の非針状磁性粉との混合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁性トナー。
- 前記針状磁性粒子は、ニグロシンで表面処理されたフェライト粒子であり、
前記ニグロシンの量は、前記フェライト粒子100質量部に対して2質量部以上4質量部以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁性トナー。 - 前記針状磁性粒子のアスペクト比は3.0以上5.0以下であり、
前記非針状磁性粒子のアスペクト比は1.0以上1.5以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁性トナー。 - 前記磁性トナーはMICR用トナーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁性トナー。
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