JP6373787B2 - パルプの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、パルプの製造方法に関する。
従来、国産のパルプは複数の樹種を混合したチップから製造されていた。そのため、得られるパルプの繊維の形状は均一ではなく、それぞれの材の特徴が現れ難かった。
特許文献1には、(1)同一樹齢のユーカリ属植物の検定林から高パルプ収率のユーカリ属植物を選抜する工程、(2)選抜されたユーカリ属植物から挿し木法によりクローン苗を作製する工程、(3)クローン苗を植林する工程を経て、高いパルプ収率を有するユーカリ属植物を生産することができることが記載されている。
特開2010−104289号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているユーカリ属植物から得られるパルプおよび紙の品質は様々であり、強度に優れるパルプを効率よく得ることができなかった。
本発明は、繊維幅が均一なパルプおよび紙の原料を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。また、得られたパルプおよび紙の原料を用いることで、嵩高で強度に優れる紙を製造すること方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔5〕である。
〔1〕SSRマーカーEMBRA8、EMBRA16、EMBRA35、EMBRA105、EMBRA191のそれぞれの遺伝子型が、反復回数143/155、136/144、218/226、118/118、178/194であるユーカリ属植物のクローン苗を育成し、得られるユーカリ属植物を原料としてパルプを製造する、パルプの製造方法。
〔2〕パルプが、繊維全体に占める繊維幅16〜18μmの存在割合が45%以上であるパルプである、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕ユーカリ属植物が、ユーカリ・ユーログランディスである〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕ユーカリ属植物が、ユーカリ・ユーログランディスH3911株である〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の製造方法により得られるパルプから製造される紙。
本発明によれば、繊維幅が均一なパルプを製造することができ、嵩高で強度に優れる紙を製造することができる。
図1は、パルプの密度に対する比破裂強度の関係を示すグラフである。 図2は、パルプの密度に対する比引き裂き強度の関係を示すグラフである。 図3は、パルプの密度に対する裂断長の関係を示すグラフである。 図4は、パルプの密度に対する比破裂強度の関係を示すグラフである。 図5は、パルプの密度に対する比引き裂き強度の関係を示すグラフである。 図6は、パルプの密度に対する比引張り強度の関係を示すグラフである。 図7は、パルプの密度に対する裂断長の関係を示すグラフである。 図8は、パルプの繊維幅に対するCSFの関係を示すグラフである。 図9は、パルプにおける各繊維幅の繊維の存在頻度を示すグラフである。 図10は、漂白工程ごとの白色度推移を示すグラフである。 図11は、H3911株のEMBRA8マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図12は、H3911株のEMBRA16マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図13は、H3911株のEMBRA35マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図14は、H3911株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図15は、H3911株のEMBRA191マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図16は、H4079株のEMBRA8マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図17は、H4079株のEMBRA16マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図18は、H4079株のEMBRA35マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図19は、H4079株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図20は、H4079株のEMBRA191マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図21は、U3074株のEMBRA8マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図22は、U3074株のEMBRA16マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図23は、U3074株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図24は、U3074株のEMBRA191マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図25は、U3237株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図26は、U3244株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図27は、P3335株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。 図28は、P3336株のEMBRA105マーカーの存在頻度を示すチャートである。
本発明においてパルプの原料である植物は、ユーカリ属(Eucalyptus)植物である。ユーカリ属植物のSSR(Simple Sequence Repeat)マーカーEMBRA8の遺伝子型(反復回数)は、143/155である。ユーカリ属植物のSSRマーカーEMBRA16の遺伝子型(反復回数)は、136/144である。ユーカリ属植物のSSRマーカーEMBRA35の遺伝子型(反復回数)は、218/226である。ユーカリ属植物のSSRマーカーEMBRA105の遺伝子型(反復回数)は、118/118である。ユーカリ属植物のマイクロサテライトマーカーEMBRA191の遺伝子型(反復回数)は、178/194である。
EMBRA8、EMBRA16、EMBRA35、EMBRA105、EMBRA191は、それぞれユーカリ属植物の以下の位置に存在する:
EMBRA8:6番染色体の塩基番号24277625−24277735
EMBRA16:1番染色体の塩基番号20282905−20283144
EMBRA35:1番染色体の塩基番号32941508−32941769
EMBRA105:6番染色体の39021093−39021216
EMBRA191:11番染色体の6628128−6628386
これらは、E.grandis(BRASUZ1)の配列情報から確認可能である。
各SSRマーカーの遺伝子型の確認は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、Inter−Simple Sequence Repeat(ISSR)等の方法により行えばよい。
ユーカリ属植物としては、ユーカリプタス・ユーログランディス、ユーカリプタス・ユーロフィラ、ユーカリプタス・グランディス、ユーカリプタス・グロビュラス、丸葉ユーカリ、ユーカリプタス・ラディアータが例示され、ユーカリプタス・ユーログランディス、ユーカリプタス・ユーロフィラ、ユーカリプタス・グランディスが好ましく、ユーカリプタス・ユーログランディスがより好ましく、ユーカリプタス・ユーログランディスH3911株がさらに好ましい。
ユーカリプタス・ユーログランディスH3911株が上記マイクロサテライトマーカーを有していることは、図11〜15に示すデータからも明らかである。
ユーカリ属植物は上記の1種および2種以上の組み合わせのいずれであってもよいが、ユーカリプタス・ユーログランディスH3911株またはこれを含む組み合わせであることが好ましく、ユーカリプタス・ユーログランディスH3911株であることがより好ましい。これにより、繊維幅が均一で強度が高いパルプを容易に得ることができる。
ユーカリ属植物からクローン苗を得る方法は、特に限定されない。クローン苗とは、不定根を有する植物体を意味する。
クローン苗を得る際の材料としては、植物体の一部等全部を用いることができるが、不定根を形成することが期待される点で、通常は植物体の一部であり、好ましくはシュートである。シュートとは、発根能を有する組織全般をいう。該組織としては、枝、茎、頂芽、腋芽、不定芽、葉、子葉、胚軸、不定胚、苗条原基等が例示される。シュートの由来は特に限定されず、温室または屋外に生育している植物個体から得られる組織でもよいし、組織培養法により得られた培養組織であってもよいし、天然の植物体の一部の組織であってもよい。シュートは、挿し穂の母本植物、または多芽体から効率良く取得することができる。中でも、挿し穂(母本植物から得た挿し穂)、母本植物から採取した器官を無菌的に培養することにより得た多芽体、もしくは前記器官を無菌的に育成して得た茎葉であることが好ましい。
多芽体は、ユーカリ属植物から頂芽、腋芽等の組織を切取って、これを組織培養して誘導すればよい。多芽体を、母本植物から採取した器官を無菌的に培養して、形成させるには、特開平8−228621号公報に記載の方法、条件に従って行い得る。その方法、条件は概ね次の通りである。まず、材料とする植物から頂芽、腋芽等の組織を採取し、採取した組織について、有効塩素量約0.5%〜約4%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液または有効塩素量約5%〜約15%の過酸化水素水溶液に約10分〜約20分間浸漬して表面殺菌を行う。次いで、これを滅菌水で洗浄し、固体培地に挿し付けて芽を開じょさせ、伸長してきた茎葉を同じ組成の培地で継代培養することにより、多芽体を形成させる。ユーカリ属またはアカシア属の組織(例えば腋芽)を用いる場合には、固体培地は、ショ糖1〜5重量%、植物ホルモンとしてベンジルアデニン(以下、BAと略す。)約0.02mg/l以上約1mg/l以下、ゲランガム約0.2重量%以上約0.3重量%若しくは寒天約0.5重量%以上約1重量%以下を含有するムラシゲスクーグ(以下、MSと略す。)培地、または、MS培地の硝酸アンモニウム成分と硝酸カリウム成分とを半減させた改変MS培地を用いるのが好ましい。こうして形成された多芽体からは活発にシュートが伸長する。多芽体自体は、適当に分割して多芽体形成に用いた培地と同一組成の培地で培養することにより維持し、増殖させればよい。
一方、シュートとして挿し穂を用いてもよい。通常は挿し穂に対し、投与されることで、その効果を発揮する。挿し穂としては、植物の少なくとも一部であればよく、緑枝(当年枝)、熟枝(前年以前に伸びた枝)等の枝;頂芽、腋芽等の芽;葉、子葉;胚軸などが例示される。木本植物の場合の挿し穂は、通常は緑枝または熟枝であり、草本植物の場合の挿し穂は、通常は葉または芽であるが、これらには限定されない。
クローン苗を得る方法に特に制限はなく、植物の種類、部位、状態等から適宜選択できるが、発根用培地でユーカリ属植物(好ましくはシュート)を培養する方法が例示される。発根用培地は、植物(好ましくはシュート)から発根させることができる培地であればその成分、形状等は特に限定されない。
発根用培地は、銀イオンおよび/または抗酸化剤を含有することが好ましく、銀イオンおよび抗酸化剤の両方を含有することがより好ましい。銀イオンは、チオ硫酸銀(STS、AgS46)、硝酸銀等の銀化合物(銀イオン源)として培地中に添加すればよい。中でもSTSは、健全な根の発根および/または伸長を促進するので、好ましい。これは、STSに由来する銀イオンが、培地中で、チオ硫酸銀イオンの形態を取り、マイナスに帯電しているためと考えられる。銀イオン1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。発根用培地中の銀イオンの濃度は、銀イオン源の種類その他の培養条件等にもよるが、約0.5μM以上約6μM以下が好ましく、約2μM以上約6μM以下がより好ましい。
一方、抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩等の、公知の抗酸化剤が挙げられ、培地への残留性が低いためアスコルビン酸が好ましい。抗酸化剤1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。発根用培地中の抗酸化剤の濃度は、約5mg/l以上約200mg/l以下が好ましく、約20mg/l以上約100mg/l以下がより好ましい。
発根用培地は、上記成分に加え、無機成分、炭素源、ビタミン、アミノ酸および植物ホルモン等の他の成分を含んでもよい。
無機成分としては、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素、および、これらの元素から選ばれる1以上の元素を含む無機塩が例示される。該無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等、これらの水和物が挙げられる。無機成分1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。
発根用培地は、窒素、リン、カリウムを必須元素として含んでもよい。よって、無機成分は、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩、リンを含む無機塩、およびカリウムを含む無機塩を含むことが好ましく、窒素、リン、カリウム、および、窒素を含む無機塩を含むことがより好ましい。無機成分が1種である場合、発根用培地中の無機成分の濃度が、約0.1μM以上約100mM以下であることが好ましく、約1μM以上約100mM以下であることがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合は、それぞれの無機成分の濃度が約0.1μM以上約100mM以下であることが好ましく、約1μM以上約100mM以下であることがより好ましい。
炭素源としては、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール、等が例示される。炭素源1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。発根用培地中の炭素源の濃度は、約1g/l以上約100g/l以下であることが好ましく、約10g/l以上約100g/l以下であることがより好ましい。しかし、培養を炭酸ガスを供給しながら行う場合には、培地は炭素源を含む必要は無く、含まないことが好ましい。ショ糖等の炭素源となりうる有機化合物は微生物の炭素源ともなるので、これらを添加した培地を用いる場合には、無菌環境下で培養を行う必要がある。しかし、炭素源を含まない培地を用いることにより、非無菌環境下での培養が可能となる。
ビタミンとしては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミドおよび/またはリボフラビン(ビタミンB2)等が挙げられる。ビタミン1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。ビタミンが1種である場合は、発根用培地中のビタミンの濃度が、約0.01mg/l以上約200mg/l以下であることが好ましく、約0.02mg/l以上約100mg/l以下であることがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合、それぞれの濃度が約0.01mg/l以上約150mg/l以下であることが好ましく、約0.02mg/l以上約100mg/l以下であることがより好ましい。
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニンおよび/またはリジン等が挙げられる。アミノ酸1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。アミノ酸が1種である場合は、発根用培地中のアミノ酸の濃度が、約0.1mg/l以上約1000mg/l以下であることが好ましい。2種以上の組み合わせの場合、それぞれの濃度が約0.2mg/l以上約1000mg/l以下であることが好ましい。
植物ホルモンとしては、例えば、オーキシンおよび/またはサイトカイニンが挙げられる。オーキシンとしては、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p−クロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)およびこれらの誘導体等が例示される。オーキシン1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。サイトカイニンとしては、ベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチンおよびこれらの誘導体等が例示される。サイトカイニン1種を用いてもよいし、2種以上の組み合わせを用いてもよい。植物ホルモンは、オーキシンのみを含んでいてもよく、サイトカイニンのみを含んでいてもよく、オーキシンとサイトカイニンの組み合わせを含んでいてもよい。植物ホルモンが1種である場合、発根用培地中の植物ホルモンの濃度は、約0.01mg/l以上約10mg/l以下であることが好ましく、約0.02mg/l以上約10mg/l以下であることがより好ましい。2種以上の場合、それぞれの濃度は、約0.01mg/l以上約10mg/l以下であることが好ましく、約0.02mg/l以上約10mg/l以下であることがより好ましい。
発根用培地は、植物組織培養用培地として用いられる培地であってもよい。発根用培地には、必要に応じて、不定根形成促進剤、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、植物ホルモン等の成分が添加されていてもよい。植物組織培養用培地として用いられる培地としては、例えば、MS培地、リンスマイヤースクーグ培地、ホワイト培地、ガンボーグのB−5培地、ニッチニッチ培地等が挙げられる。中でも、MS培地およびガンボーグのB−5培地が好ましい。これらの培地は、必要に応じて適宜希釈等してもよい。
発根用培地は、液体培地、固体培地のいずれであってもよいが、液体培地の方が作業効率および移植時に根を傷つけることが少ない点で好ましい。液体培地は、培地組成を混合して調製すればよい。固体培地は、培地組成を混合すると同時に、又はその後に、寒天、ゲランガム等の固化剤で固化させて調製すればよい。固化剤の添加量は、固化剤の種類、培地の組成等の条件によって異なり、一律に特定できない。寒天の添加量は、培地に対し0.5重量%以上1重量%以下であることが好ましい。ゲランガムの添加量は、培地に対し0.2重量%以上0.3重量%以下であることが好ましい。
発根用培地への植物(好ましくは、シュート)の挿し付け方法は、培地の種類、培養条件等により適宜選択すればよい。発根用培地が固体培地の場合は、発根用培地に直接シュートの基部を挿し付けて培養すればよい。一方発根用培地が液体培地の場合は、例えば、後述の支持体を発根用培地で湿潤させてから、シュートの基部を挿し付けて培養すればよい。発根用培地に挿し付ける時にシュートの基部に傷をつけるといった物理的刺激を加えることも、発根率の向上のために好ましい。シュートの基部とは、シュートの一端であって根が形成される領域(葉の形成される端部に対し反対側)を意味する。シュートとして多芽体を用いる場合の基部は、多芽体を分割する際の切断面を有する領域である。シュートの基部への傷のサイズ(大きさ、形状等)は特に限定されない。例えば、シュートとして多芽体を用いる場合、シュートの基部(上述の切断面)を正面方向から見た際に十字型となるような傷を付けることが好ましい。傷を付ける際には、ハサミ、ナイフ等の器具を用いればよい。
植物からクローン苗を得る際には、支持体を用いてもよい。支持体とは、植物(好ましくは、シュート)を支持するための支持体である。発根用培地(特に固体培地)を用いる場合等には、支持体は不要の場合があるが、それ以外の場合には通常支持体が利用される。
支持体は、栽培の期間中シュートを指しつけた状態で保持できる支持体が好ましい。液状の発根用培地を用いる場合、通常、培地を浸潤させた支持体に植物を挿し付ける。よって支持体は液体で浸潤され得る支持体が好ましい。支持体としては、例えば、従来慣用の支持体が挙げられ、特に限定されない。支持体としては例えば、砂、赤玉土等の自然土壌;籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品等が挙げられる。支持体を培養容器内に入れ、液体培地にて湿潤させることにより発根床が調製され得る。なお、発根用培地が固体培地の場合には、固体培地を直接培養容器に入れることで、発根床が調製され得る。
植物からクローン苗を得る際には、発根用培地および/または支持体を納めるための培養容器を用い得る。培養容器としては、従来慣用の培養容器を用いればよく、特に限定されない。例えば、育苗ポット、プラグトレー等が挙げられる。培養容器は、密閉型でもよいし開放型でもよいが、密閉型の培養容器が好ましい。およびまた、シュートおよびこれから形成されるクローン苗を取り巻く環境の湿度維持が容易となる。
シュートとして枝を用いる場合には、培養容器として密閉型の培養容器を用いることが好ましい。これによりシュートを高湿度下に置くことが容易となるので枝についた葉の蒸散作用が抑制され、従来行われていた葉の一部切除処理を省略することができる。
培養容器は、容器内への炭酸ガス供給が可能な容器であることがより好ましい。このような培養容器としては、二酸化炭素透過性の膜で蔽われた開口部を有する容器が例示される。二酸化炭素透過性の膜で蔽われた開口部を有する容器を用いることにより、培養環境の湿度をも容易に調整しうる。開口部の形状は特に問わない。二酸化炭素透過性の膜の材料は特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン等が例示される。膜の孔径も特に限定されず、約0.1μm以上約1μm以下の孔径の膜が例示される。
クローン苗を得る際の栽培条件は、ユーカリ属植物から発根させ得る条件であることが好ましい。栽培条件は、植物の種類、部位、状態、発根用培地の種類等により一概に規定することは難しいが、温度は、約23℃以上約28℃以下であることがより好ましい。光強度(光合成有効光量子束密度)は、約10μmol/m2/s以上約1000μmol/m2/s以下であることが好ましく、約50μmol/m2/s以上約500μmol/m2/s以下であることがより好ましい。いずれの場合でも、通常は約2週間以上約5週間以内で、シュートからの発根が観察されるようになる。
照射光は、約650nm以上約670nm以下の波長成分と約450nm以上約470nm以下の波長成分とを含む光であることが好ましい。その比率は、好ましくは9:1〜7:3、より好ましくは9:1〜8:2である。これにより、植物(好ましくは、シュート)からの発根がより促進され得る。
栽培環境における炭酸ガス濃度は、通常は300ppm以上2000ppm以下、好ましくは800ppm以上1500ppm以下であることが好ましい。炭酸ガスの供給量の制御は、人工気象器等の設備、二酸化炭素透過性の膜を開口部に有する培養容器等を利用して行えばよい。
湿度は、植物の種類等栽培条件に応じて設定すればよく特に限定されない。通常は、80%以上であり、85%以上であることが好ましい。これにより、植物からの発根を促進することができる。湿度の上限については特に制限はなく、100%であってもよい。
シュートとして挿し穂を用いる場合には、遮光を行うことが好ましい。遮光率は、30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。
ユーカリ属植物のクローン苗からパルプの原料となるユーカリ属植物を得る方法は特に限定されないが、一例を挙げると次のとおりである。クローン苗を引き続き栽培し(通常10日以上90日以下)、根を充実させた後に育苗容器、苗畑等に移植して育成し、その後植林する。苗を育成する際の用土、温度、光強度等の条件は、適宜設定すればよい。不定芽、苗条原基等の培養組織由来のシュートを発根させた場合には、育苗容器等への移植の前に、順化の過程を経ることが好ましい。
植物からのパルプの製造は、常法に従って行えばよい。
植物は、パルプ化の前に通常チップ化される。これにより、蒸解の際に薬品を植物に均一に浸透させることができる。チップ化は、受刃、切削ナイフを有する切削装置により行えばよい。
植物からパルプを製造する条件または手法は、特に限定されない。製紙業界で一般に用いられるパルプ化法としては、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の蒸解を行う化学的方法(ケミカルパルプ)、リファイナー、グラインダー等の機器を用いる機械的方法(メカニカルパルプ);薬品による前処理の後機械力によってパルプ化する方法(セミケミカルパルプ)等が挙げられる。さらに漂白、叩解等の処理を行ってもよい。得られるパルプは、未晒(漂白前)パルプ、晒(漂白後)パルプ、叩解パルプ、未叩解パルプのいずれであってもよい。
パルプからの紙の製造は、常法により行えばよい。例えば、日本工業規格(JIS)P 8122「パルプ−試験用手すき紙の調製方法」(1989年版)に従えばよい。一例を挙げると、パルプを抄紙機でシート状に成形して得られるシートがより好ましい。パルプをシート状に成形する際に、製紙用途で一般に用いられる添加剤がパルプに添加されてもよい。該添加剤としては、紙力増強剤、嵩高剤、顔料、歩留り向上剤、ろ水性向上剤、内添サイズ剤(ロジン系サイズ剤、硫酸バンド等)、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が例示される。該添加剤の使用量は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲であればよい。パルプは、レーヨン繊維、フィルム等の他の材料を含んでいてもよく、上記ユーカリ属植物より得られるパルプとともに他の材料がシート、フィルム、ロール等の形状に成形されたものであってもよい。他の材料としては、レーヨン繊維等が例示される。パルプは、他の植物を原料とするパルプを含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
抄紙機としては、例えば長網式抄紙機、丸網式抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの中から選ばれる2以上の抄造機における抄紙方式を組合せた公知の抄造機等が挙げられる。抄造機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性及び得られる可塑化セルロースの性能に支障を来さない範囲内で設定すればよい。
パルプは、繊維全体における特定の繊維幅の繊維の存在密度が高いことが好ましい。例えば、繊維幅16〜18μmの繊維の存在割合が高いことが好ましく、該割合が45%以上であることがより好ましい。
紙の形状は特に限定されず、フィルム、シート、ロール等が例示される。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1〜15
(1)蒸解試験
(1−1)チップの調製
AMCEL社などから入手した表1〜2に示す樹種の植物(クローン苗より育成)よりチップを得た。
以下、H3911、VEG、Mixを例に取り、チップの製造条件を説明するが、他のサンプルも同様にして製造した。基本的には、JIS P 8122「パルプ−試験用手すき紙の調製方法」(1989年版)に従って製造したH3911及びMix(AMCEL社より入手)については、それぞれ3個体分の丸太を入手し、都内の木材加工業者にてチッピングした。VEGは、日本製紙株式会社勇払工場より入手した。それらのチップをジャイロシフタで篩い分けし、25.4mmΦpass〜9.5mmΦonのフラクションを得、蒸解試験に用いた。
(1−2)蒸解試験
表3に示す条件で、2.5(L)容回転型オートクレーブを用いて蒸解試験を行った。チップに対する活性アルカリ(AA)添加率(%)は、予備試験を行い、表4のアルカリ(AA)添加率にてパルプ作製を行い、各材からの未晒パルプを得た。
(2)酸素脱リグニン
蒸解試験で得た未晒パルプを、表3に示す条件にて、Quantum Mark IVラボミキサーにて、酸素脱リグニンを行った。表6に酸素脱リグニンの結果を示す。Δ白色度は、3パルプともほぼ同等であったが、Mixパルプのカッパー価がやや高かった。
(3)漂白試験
漂白はD0−E/P−D1のシークエンスにて、ラボ手揉みにて行った。比較のCenibra社、Fibria社品の白色度は、それぞれ、88.7%、89.8%であったため、目標白色度は90%程度とした。各漂白段階での白色度推移を図10に示す。漂白条件および結果を表7に示す。
H3811およびMixは、VEGと比較して、未晒白色度および酸脱後白色度が低く、目標白色度を得るのに、漂白薬品が多く必要であったが、最終的な白色度は、ほぼ90%となったパルプを得ることができた。
(4)紙質試験
それぞれの紙の特性(裂断長、比引張強度、カナダ標準濾水度(CSF)、密度、繊維幅、比破裂強度、比引き裂き強度)をJIS規格の紙試験方法に則って測定した。パルプの密度と比破裂強度の関係を図1および4に示す。パルプの密度と比引き裂き強度の関係を図2および5に示す。パルプの密度と裂断長の関係を図3および7に示す。パルプの密度と比引張強度の関係を図6に示す。繊維幅とCSFの関係を図8に示す。パルプにおける各繊維幅の繊維の存在頻度を図9に示す。
図4〜図6の結果は、PAPTAC Standards B.2P,B.3P and B.7に基づいた、FPI独自の方法で分析した。図7の結果のうち実施例1、比較例3および比較例4の結果は、図3の結果と同様である。
図1〜7から明らかなとおり、各実施例のサンプルは、同一密度のパルプを原料とする比較例のサンプルと比較して強度が最も高かった。図8から明らかなとおり、実施例1のサンプルは、比較例のサンプルと比較して短い繊維幅で低いCSFを示した。図9から明らかなとおり、実施例1のサンプルは、比較例のサンプルと比較して特定の繊維幅の繊維の存在密度が高かった。これらの結果は、本発明の製造方法により特定の繊維幅の繊維の存在頻度の高いパルプを得ることができ、該パルプは強度に優れていることを示している。
実施例4及び比較例16〜21
ユーカリプタス・ユーログランディスH3911株(実施例4)、H4079株(比較例16)、U3074株(比較例17)、U3237株(比較例18)、U3244株(比較例19)、P3335株(比較例20)及びP3336株(比較例21)について、それぞれのSSRマーカーの遺伝子型を調べた。結果を表8〜11、図11〜28に示す。

Claims (4)

  1. SSRマーカーEMBRA8、EMBRA16、EMBRA35、EMBRA105、EMBRA191のそれぞれの遺伝子型が、反復回数143/155、136/144、218/226、118/118、178/194であるユーカリ属植物のクローン苗を育成し、得られるユーカリ属植物を原料としてパルプを製造する、パルプの製造方法。
  2. パルプが、繊維全体に占める繊維幅16〜18μmの存在割合が45%以上であるパルプである、請求項1に記載の製造方法。
  3. ユーカリ属植物が、ユーカリ・ユーログランディスである請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. ユーカリ属植物が、ユーカリ・ユーログランディスH3911株である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
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