JP6301222B2 - 構造物の振動抑制装置 - Google Patents

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Description

本発明は、構造物の振動を抑制するための構造物の振動抑制装置に関する。
従来、この種の構造物の振動抑制装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この振動抑制装置は、高層のビルの振動を抑制する動吸振器として構成されており、マスダンパと、ビルの振動に伴う変位をマスダンパに伝達するための左右の柱材及び左右のケーブルとから成る付加振動系を備えている。マスダンパは、ボールねじ及び回転マスを有する一般的なものであり、ビルの上端部の中央に設けられており、左右の柱材は、ビルの周囲に立設されるとともに、上下方向に延びている。左右のケーブルの一端部は、左右の柱材の上端部に、それぞれ取り付けられており、左右のケーブルの他端部は、マスダンパのボールねじのねじ軸の左端部及び右端部に、それぞれ取り付けられている。また、振動抑制装置は、ビルの上端部の左右の端部にそれぞれ取り付けられた左右の第1滑車と、左右の柱材の上端部にそれぞれ取り付けられた左右の第2滑車を備えており、左ケーブルは左側の第1及び第2滑車に、右ケーブルは右側の第1及び第2滑車に、それぞれ巻き回されている。
以上の構成の従来の振動抑制装置では、ビルの振動時、ビルの振動に伴う変位が、柱材及びケーブルを介してマスダンパに伝達され、それにより、マスダンパの回転マスが回転する。その結果、ビルの振動エネルギが、マスダンパ、柱材及びケーブルから成る付加振動系で吸収され、ひいては、ビルの振動が抑制される。この場合、第1及び第2滑車の一方は他方に対して、いわゆる動滑車として機能し、それにより、ビルの振動に伴う変位が増大された状態でマスダンパに伝達される。
特許第5269245号
上述したように、従来の振動抑制装置では、マスダンパ及び左右の第1滑車が別個に設けられているので、振動抑制装置をビルにコンパクトに設置できなくなってしまう。また、ビルへの設置にあたり、マスダンパ及び左右の第1滑車をビルにそれぞれ取り付けなければならないため、その設置作業が繁雑であり、施工性が低くなってしまう。以上の点で、この従来の振動抑制装置には改善の余地がある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、構造物にコンパクトに設置できるとともに、その施工性を向上させることができる構造物の振動抑制装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、構造物を含む系内の第1部位及び第2部位の間に設けられ、構造物の振動を抑制するための構造物の振動抑制装置であって、第1及び第2部位の一方に連結された筒状の本体部、ねじ軸、ねじ軸にボールを介して回転可能に螺合するナット、及び、回転可能な回転マスを有し、ねじ軸及びナットの一方である第1ボールねじ部材が本体部に対して軸線方向に移動可能かつ回転不能に設けられ、ねじ軸及びナットの他方である第2ボールねじ部材が本体部に対して軸線方向に移動不能かつ回転可能に設けられるとともに、回転マスが第2ボールねじ部材に連結されたマスダンパと、本体部に一体に設けられた第1滑車と、第1及び第2部位の他方に連結された第2滑車と、第1ボールねじ部材に一端部が連結され、第1及び第2滑車に巻き回されるとともに、第1及び第2部位の他方に他端部が連結されたケーブルと、を備え、構造物の振動時、ケーブルを介して伝達された第1部位と第2部位との間の相対変位が、ねじ軸及びナットによって回転運動に変換された状態で回転マスに伝達されることを特徴とする。
この構成によれば、マスダンパの本体部が第1及び第2部位の一方に連結され、マスダンパのねじ軸及びナットの一方である第1ボールねじ部材が本体部に対して軸線方向に移動可能かつ回転不能に設けられるとともに、ねじ軸及びナットの他方である第2ボールねじ部材が本体部に対して軸線方向に移動不能かつ回転可能に設けられており、ナットは、ボールを介して、ねじ軸に回転可能に螺合している。第2ボールねじ部材には、回転可能な回転マスが連結されている。また、第1滑車が本体部に一体に設けられるとともに、第2滑車が第1及び第2部位の他方に連結されている。さらに、ケーブルが、第1及び第2滑車に巻き回されており、その一端部が第1ボールねじ部材に、他端部が第1及び第2部位の他方に、それぞれ連結されている。このように、本体部が第1及び第2部位の一方に連結されるとともに、第1ボールねじ部材が、ケーブルを介して第1及び第2部位の他方に連結されているので、構造物の振動に伴って発生した第1及び第2部位の間の相対変位は、ケーブルを介してマスダンパに伝達される。
また、構造物の振動時、ケーブルを介してマスダンパに伝達された第1部位と第2部位との間の相対変位は、ねじ軸及びナットによって回転運動に変換された状態で、回転マスに伝達される。これにより、回転マスが回転し、回転マスの回転慣性効果が得られることによって、構造物の振動を抑制することができる。この場合、第1及び第2滑車の一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能するので、マスダンパに伝達される第1部位と第2部位の間の相対変位を増大させることができ、それにより、より大きな回転マスの回転慣性効果が得られることによって、構造物の振動を良好に抑制することができる。
また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、マスダンパの本体部及び第1滑車が互いに別個に設けられておらず、第1滑車が本体部に一体に設けられているので、構造物に振動抑制装置をコンパクトに設置することができる。同じ理由により、構造物への設置にあたり、前述した従来の振動抑制装置と異なり、本体部及び第1滑車を、第1及び第2部位の一方に一体に連結できるので、その施工性を向上させることができる。
さらに、本発明による振動抑制装置では、ケーブルから成る弾性要素と、回転マスから成る慣性接続要素が、互いに直列に接続された関係になるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。したがって、例えば、ケーブルの剛性(ばね定数)や、回転マスの質量(回転慣性質量)などの諸元を適切に設定することによって、この付加振動系の固有振動数を構造物の所望の固有振動数に同調(共振)させることができ、それにより、構造物の振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、構造物の振動をより良好に抑制することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構造物の振動抑制装置において、ケーブルは、第1ボールねじ部材から互いに反対方向に延びる一対のケーブルで構成されており、第1ボールねじ部材と一体に、かつ本体部内に摺動可能に設けられ、本体部内を第1室及び第2室に区画するとともに、第1及び第2室を互いに連通させる連通孔が形成されたピストンと、第1及び第2室に充填された粘性体と、をさらに備え、構造物の振動時、ピストンは、第1及び第2部位が所定方向に相対的に変位したときには、第1ボールねじ部材と一緒に一対のケーブルの一方で引っ張られることにより、本体部に対して第1室側に移動し、第1及び第2部位が所定方向と反対方向に相対的に変位したときには、第1ボールねじ部材と一緒に一対のケーブルの他方で引っ張られることにより、本体部に対して第2室側に移動することを特徴とする。
この構成によれば、ケーブルが、第1ボールねじ部材から互いに反対方向に延びる一対のケーブルで構成されているので、構造物の振動時、第1及び第2部位が所定方向とこれとは反対方向とに相対的に交互に繰り返し変位したときに、両部位の間の相対変位を、両ケーブルを介して、第1ボールねじ部材に適切に伝達することができる。
また、ピストンが、第1ボールねじ部材と一体に、かつ本体部内に摺動可能に設けられており、本体部内が、ピストンによって第1室と第2室に区画されている。第1及び第2室には、粘性体が充填されており、ピストンには、第1及び第2室を互いに連通させる連通孔が形成されている。構造物の振動時、第1及び第2部位が所定方向とこれとは反対方向とに相対的に交互に繰り返し変位したときに、ピストンは、第1ボールねじ部材と一緒に、一対のケーブルの一方と他方で交互に繰り返し引っ張られることにより、本体部に対して第1室側と第2室側に交互に繰り返し移動する。それに伴い、第1及び第2室が、ピストンで交互に繰り返し圧縮/膨張され、圧縮される側の室内の粘性体の一部が、連通孔を介して、膨張される側の室内に流入する。これにより、構造物の振動時、前述した回転マスの回転慣性効果に加え、粘性体の粘性減衰効果を得ることができ、ひいては、構造物の振動をより良好に抑制することができる。
さらに、本発明による振動抑制装置では、回転マスから成る慣性接続要素に加え、粘性体から成る粘性要素が、ケーブルから成る弾性要素に直列に接続された関係になるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。したがって、例えば、ケーブルの剛性(ばね定数)や、回転マスの質量(回転慣性質量)、粘性体の密度及び粘度などの諸元を適切に設定することによって、この付加振動系の固有振動数を構造物の所望の固有振動数に同調(共振)させることができ、それにより、構造物の振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、構造物の振動をさらに良好に抑制することができる。
本発明の第1実施形態による振動抑制装置を、これを適用した建物の一部とともに概略的に示す図である。 図1の振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 本発明の第2実施形態による振動抑制装置を、これを適用した建物の一部とともに概略的に示す図である。 本発明の第3実施形態による振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 本発明の第4実施形態による振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 本発明の第5実施形態による振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 本発明の第6実施形態による振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 本発明の第7実施形態による振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 本発明の第8実施形態による振動抑制装置などを拡大するとともに、その一部を破断して示す図である。 図3の振動抑制装置に関し、図3の伝達部材とは異なる伝達部材を適用した場合の例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態による振動抑制装置1は、建物Bの振動を抑制するための動吸振器として構成されており、マスダンパ2と、建物Bの振動に伴う変位をマスダンパ2に伝達するための伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rと、左右の第1滑車5L、5R及び第2滑車6L、6Rを備えている。建物Bは、例えば高層のビルであり、基礎Fに立設されている。
また、振動抑制装置1は、基礎F、建物Bの梁BU及び左右の柱PL、PRによって取り囲まれた空間に配置されている。この梁BUは、建物Bの下部に設けられ、左右方向に延びており、その左端部及び右端部が左右の柱PL、PRにそれぞれ接合されている。図1及び図2に示すように、マスダンパ2は、円筒状のシリンダ11と、シリンダ11に部分的に収容されたボールねじ12と、シリンダ11内に摺動可能に設けられた円柱状のピストン13と、左右の回転マス14、14などで構成されている。
シリンダ11は、互いに対向する左壁11a及び右壁11bと、両者11a、11bの間に一体に設けられた周壁11cで構成されており、左右方向に延びている。また、左壁11a及び右壁11bには、その径方向の中央に、左右方向に貫通するねじ軸支持孔11d、11eがそれぞれ形成されており、ねじ軸支持孔11d、11eの上側及び下側の部分の各々に、左右方向に貫通するケーブル案内孔(図示せず)が形成されている。ねじ軸支持孔11d、11eの各々には、軸受け16及びシール(図示せず)が設けられており、ケーブル案内孔の各々には、シール(図示せず)が設けられている。また、シリンダ11内は、ピストン13によって、左側の第1油室11fと右側の第2油室11gに区画されており、両油室11f、11gには、例えばシリコンオイルで構成されたオイルOIが充填されている。
また、シリンダ11の周壁11cの内面には、一対のレール11h、11hが一体に設けられている。便宜上、図2では、レール11h、11hの断面を示すハッチングを省略している。これらのレール11h、11hは、周壁11cの径方向に若干、突出するとともに、径方向において互いに対向するように配置されており、周壁11cのほぼ全体にわたって、左右方向に延びている。
前記ボールねじ12は、左右方向に延びるねじ軸12aと、ねじ軸12aの中央部に、多数のボール(図示せず)を介して回転可能に螺合するナット12bを有している。ねじ軸12aは、その中央部がナット12bともにシリンダ11内に収容されていて、上述したねじ軸支持孔11d、11eに、軸受け16、16を介して回転可能に支持されており、左壁11aよりも左方に延びるとともに、右壁11bよりも右方に延びている。ねじ軸12aの左部及び右部には、フランジ12c、12dがそれぞれ一体に設けられている。これらのフランジ12c、12dは、軸受け16、16に内側から接触しており、それにより、ねじ軸12aは、シリンダ11に対して左右方向(軸線方向)に移動不能である。また、ねじ軸12aの左端部及び右端部にはそれぞれ、摩擦材15が取り付けられている。摩擦材15は、摩擦係数が比較的安定している材料、例えばテフロン(登録商標)などで構成されている。
ピストン13は、ナット12bの外周に同心状に一体に設けられており、ナット12bと一緒にシリンダ11内を左右方向(軸線方向)に移動可能である。ピストン13のナット12bよりも径方向の外側の部分には、左右方向に貫通する複数の連通孔13a(2つのみ図示)が形成されており、前述したシリンダ11の第1及び第2油室11f、11gは、これらの連通孔13aを介して互いに連通している。さらに、ピストン13の径方向の外端部には、左右方向に延びる一対の凹部(図示せず)が形成されており、これらの一対の凹部は、前述したシリンダ11のレール11h、11hに、シール(図示せず)を介してそれぞれ係合している。以上の構成により、ピストン13及びナット12bは、シリンダ11に対して回転不能である。
前記回転マス14、14の各々は、比重の比較的大きい材料、例えば鉄で構成されており、ドーナツ板状に形成されている。回転マス14の中央の孔には、前述した摩擦材15が同心状に嵌合している。摩擦材15の摩擦係数は、回転マス14の回転トルクが所定値以上になったときに、回転マス14が摩擦材15に対して滑るように設定されている。以上の構成により、回転マス14は、その回転トルクが所定値に達するまでは、ねじ軸12aと一緒に回転する。
伝達部材3は、例えばH形鋼から成るブレース状のものであり、全体としてV字状に上下方向に斜めに延びる左右の斜め材3a、3bなどで構成され、弾性を有している。左右の斜め材3a、3bは、それらの上端部が左右の柱PL、PRと梁BUとの接合部にそれぞれ連結されており、基礎Fの付近まで延びている。また、左右の斜め材3a、3bの下端部は、互いに連結された連結部3cになっている。連結部3cには、シリンダ11の周壁11cが取り付けられており、それにより、シリンダ11は、伝達部材3を介して梁BUに連結されている。
また、左右のケーブル4L、4Rはそれぞれ、上下一対のケーブルから成り、例えば鋼線で構成され、弾性を有している。左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)は、互いに同じ大きさに設定されている。左ケーブル4Lは、その一端部がピストン13の左端部に取り付けられており、ピストン13から左方に延びるとともに、シリンダ11の左壁11aの前記ケーブル案内孔に、シールを介して挿通されている。また、左ケーブル4Lの他端部は、左連結部材7Lに取り付けられている。左連結部材7Lは、例えばH形鋼で構成され、基礎Fに取り付けられており、シリンダ11と左側の回転マス14の間に配置されている。また、左連結部材7Lには、ねじ軸案内孔(図示せず)が形成されており、ねじ軸12aは、ねじ軸案内孔に挿入されるとともに、左連結部材7Lよりも左方に延びている。
左側の第1及び第2滑車5L、6Lは、左ケーブル4Lに対応して上下一対の滑車でそれぞれ構成されており、第1滑車5Lはシリンダ11の左壁11aに、第2滑車6Lは左連結部材7Lに、それぞれ取り付けられている。左ケーブル4Lは、その中間の部分において、第1及び第2滑車5L、6Lに折り返された状態で巻き回されており、所定のテンションが付与されている。
右ケーブル4Rは、シリンダ11を中心として、左ケーブル4Lと左右対称に配置されており、その一端部がピストン13の右端部に取り付けられ、ピストン13から右方に延びるとともに、シリンダ11の右壁11bの前記ケーブル案内孔に、シールを介して挿通されている。また、右ケーブル4Rの他端部は、右連結部材7Rに取り付けられている。右連結部材7Rは、左連結部材7Lと同様に例えばH形鋼で構成され、基礎Fに取り付けられており、シリンダ11と右側の回転マス14の間に配置されている。また、右連結部材7Rには、ねじ軸案内孔(図示せず)が形成されており、ねじ軸12aは、ねじ軸案内孔に挿入されるとともに、右連結部材7Rよりも右方に延びている。
右側の第1及び第2滑車5R、6Rは、右ケーブル4Rに対応して上下一対の滑車でそれぞれ構成されるとともに、シリンダ11を中心として、左側の第1及び第2滑車5L、6Lと左右対称にそれぞれ配置されている。また、第1滑車5Rはシリンダ11の右壁11bに、第2滑車6Rは右連結部材7Rに、それぞれ取り付けられている。右ケーブル4Rは、その中間の部分において、第1及び第2滑車5R、6Rに折り返された状態で巻き回されており、左ケーブル4Lのテンションと同じ大きさのテンションが付与されている。
以上の構成により、ナット12b及びピストン13は、左右のケーブル4L、4R及び左右の連結部材7L、7Rを介して、基礎Fに連結されている。
以上の構成の振動抑制装置1では、建物Bが静止しているときには、ピストン13及びナット12bは、図2に示す中立位置にある。
建物Bの振動時、基礎Fが梁BUに対して左方に変位したときには、当該変位は、伝達部材3、左ケーブル4L及び左連結部材7Lを介して、マスダンパ2に伝達される。これにより、ピストン13及びナット12bは、左ケーブル4Lで引っ張られることにより、シリンダ11に対して左方に移動する。それに伴い、ナット12bにボールを介して螺合するねじ軸12aが回転マス14、14と一緒に回転するとともに、第1油室11f内のオイルOIがピストン13で圧縮され、このオイルOIの一部が、連通孔13aを介して第2油室11g内に流入する。
また、建物Bの振動時、上記とは逆に、基礎Fが梁BUに対して右方に変位したときには、当該変位は、伝達部材3、右ケーブル4R及び右連結部材7Rを介して、マスダンパ2に伝達される。これにより、ピストン13及びナット12bは、右ケーブル4Rで引っ張られることにより、シリンダ11に対して右方に移動する。それに伴い、ねじ軸12aが回転マス14、14と一緒に回転するとともに、第2油室11g内のオイルOIがピストン13で圧縮され、このオイルOIの一部が、連通孔13aを介して第1油室11f内に流入する。
以上のように、第1実施形態によれば、建物Bの振動時、伝達部材3や左右のケーブル4L、4Rを介してマスダンパ2に伝達された梁BUと基礎Fとの間の相対変位が、ねじ軸12a及びナット12bによって回転運動に変換された状態で、回転マス14、14に伝達される。これにより、回転マス14、14が回転し、回転マス14、14の回転慣性効果が得られる。この場合、左右のケーブル4L、4Rが、ナット12b(ピストン13)から互いに反対方向に延びているので、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、両者BU、Fの間の相対変位を、両ケーブル4L、4Rを介してナット12bに適切に伝達することができる。
また、建物Bの振動時、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、ピストン13は、ナット12bと一緒に左右のケーブル4L、4Rの一方と他方で交互に繰り返し引っ張られることにより、シリンダ11に対して第1油室11f側と第2油室11g側に交互に繰り返し移動する。それに伴い、第1及び第2油室11f、11gが、ピストン13で交互に繰り返し圧縮/膨張され、圧縮される側の室内のオイルOIの一部が、連通孔13aを介して、膨張される側の室内に流入する。これにより、建物Bの振動時、上述した回転マス14、14の回転慣性効果に加え、オイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
以上の振動抑制装置1の構成から明らかなように、回転マス14、14から成る慣性接続要素及びオイルOIから成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。
また、伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス14、14の質量(回転慣性質量)、オイルOIの密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。なお、付加振動系の固有振動数を同調させる建物Bの固有振動数は、1次の固有振動数に限らず任意である。また、左右のケーブル4L、4Rを左右の連結部材7L、7Rに、直接、取り付けているが、ケーブルの剛性を自由に調整できるようにするために、皿ばねなどのばね材を介して取り付けてもよい。これらのことは、後述する他の実施形態についても同様に当てはまる。
この場合、第1及び第2滑車5L、5R、6L、6Rの一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能するので、マスダンパ2に伝達される梁BUと基礎Fの間の相対変位を増大させることができ、それにより、より大きな回転マス14、14の回転慣性効果及びオイルOIの粘性減衰効果が得られることによって、建物Bの振動をより良好に抑制することができる。
また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、マスダンパ2のシリンダ11及び第1滑車5L、5Rが互いに別個に設けられておらず、第1滑車5L、5Rがシリンダ11に一体に設けられているので、建物Bに振動抑制装置1をコンパクトに設置することができる。特に、第1実施形態では、振動抑制装置1が基礎F、梁BU及び左右の柱PL、PRで取り囲まれた比較的狭い空間に配置されているので(図1参照)、上述した効果を有効に得ることができる。同じ理由により、建物Bへの設置にあたり、前述した従来の振動抑制装置と異なり、シリンダ11及び第1滑車5L、5Rを梁BUに一体に連結できるので、その施工性を向上させることができる。
さらに、所定のテンションが左右のケーブル4L、4Rに付与されているので、建物Bの振動時、ピストン13の移動量がテンションによる左ケーブル4L又は右ケーブル4Rの引張量に達するまでは、両ケーブル4L、4Rの反力が作用するため、左右のケーブル4L、4R全体のばね定数kは、両ケーブル4L、4Rのばね定数k1、k2の和(=k1+k2)になる。これに対して、ピストン13の移動量がテンションによる左ケーブル4L又は右ケーブル4Rの引張量に達した後には、一方のケーブルのテンションが消失し、他方のケーブルの反力だけが作用するようになるため、左右のケーブル4L、4R全体のばね定数kは、左ケーブル4Lのばね定数k1又は右ケーブル4Rのばね定数k2になる。
このように、左右のケーブル4L、4Rにテンションを予め付与することによって、建物Bの変位に対する両ケーブル4L、4Rから成る弾性要素の剛性の特性として、バイリニアな特性を得ることができる。したがって、例えば、振動による建物Bの変位が大きくなるのに伴って振動抑制装置1の反力が過大にならないうちに、この弾性要素の剛性がより小さな値(k1又はk2)に切り替わるようにすることが可能になる。それにより、付加振動系の固有振動数を建物Bの固有振動数と異ならせることで、振動抑制装置1の反力の過大化を防止することができる。
次に、図3を参照しながら、本発明の第2実施形態による振動抑制装置1Aについて説明する。この振動抑制装置1Aは、第1実施形態と比較して、梁BU及び基礎Fに対するシリンダ11及びピストン13(ナット12b)の間の連結関係が逆になっている点が主に異なっている。すなわち、図3に示すように、シリンダ11が基礎Fに連結されており、ピストン13に連結された左右のケーブル4L、4Rが、伝達部材21を介して梁BUに連結されている。図3において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。なお、図3では、便宜上、シリンダ11内に設けられたピストン13などの構成要素が描かれていないが、これらの構成要素は、第1実施形態のそれと同じであるので、その詳細な説明を省略するとともに、本明細書中では、理解の容易化のために、それらの符号を記載するものとする。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
伝達部材21は、第1実施形態の伝達部材3と同様、例えばH形鋼から成るブレース状のものであり、全体としてV字状に上下方向に斜めに延びる左右の斜め材21a、21bと、両斜め材21a、21bの下端部から左右に延びる中間部材21cと、中間部材21cの左端部及び右端部から下方にそれぞれ延びる左右の連結部材21d、21eで構成されている。左右の斜め材21a、21bの上端部は、左右の柱PL、PRと梁BUとの接合部にそれぞれ連結されている。左連結部材21dは、シリンダ11と左側の回転マス14の間に配置され、右連結部材21eは、シリンダ11と右側の回転マス14の間に配置されており、両連結部材21d、21eの各々には、左右方向に貫通するねじ軸案内孔(図示せず)が形成されている。
ねじ軸12aは、これらのねじ軸案内孔に挿入されており、左連結部材21dよりも左方に延びるとともに、右連結部材21eよりも右方に延びている。また、左ケーブル4L及び左側の第2滑車6Lは、左連結部材21dに取り付けられており、右ケーブル4Rの他端部及び右側の第2滑車6Rは、右連結部材21eに取り付けられている。以上の構成により、ピストン13及びナット12bは、左右のケーブル4L、4R及び伝達部材21を介して、梁BUに連結されている。
また、左右の連結部材21d、21eには、左右の規制機構22L、22Rが設けられている。左右の規制機構22L、22Rは、基礎Fに対する伝達部材21の前後方向(図3の奥行き方向)の移動のみを規制し、左右方向及び上下方向の移動を許容するものであり、互いに同様に構成されている。左側の規制機構22L(右側の規制機構22R)は、左連結部材21d(右連結部材21e)に取り付けられ、左右方向に延びるレール22La(22Ra)と、基礎Fに取り付けられ、レール22La(22Ra)を前後方向に挟み込むように設けられた規制部材22Lb(22Rb)を有している。
建物Bの振動時、伝達部材21に、基礎Fに対して前後方向に移動させるような力が作用したときに、レール22La(22Ra)が規制部材22Lb(22Rb)に当接することによって、基礎Fに対する伝達部材21の前後方向の移動が規制される。
また、シリンダ11は、基礎Fに直接、取り付けられておらず、連結機構23を介して基礎Fに取り付けられている。連結機構23は、基礎Fに、シリンダ11を前後方向及び左右方向に移動不能に、かつ上下方向に移動可能に連結するものである。連結機構23は、シリンダ11の下端部に取り付けられ、左右方向に延びるレール23aと、基礎Fに取り付けられ、レール23aを前後方向に挟み込むように設けられた連結部材23bを有している。連結部材23bには、上下方向に延びる複数の長孔23cが形成されている。これらの長孔23cの各々には、ボルト23dが外側から挿入されており、各ボルト23dはレール23aにねじ込まれている。なお、図3では、便宜上、長孔23c及びボルト23dの符号を1つのみ付している。
建物Bの振動時、シリンダ11に、基礎Fに対して前後方向に移動させるような力が作用したときに、レール23aが連結部材23bに当接することによって、シリンダ11は、基礎Fに対して前後方向に移動不能になる。また、建物Bの振動時、シリンダ11に、基礎Fに対して左右方向に移動させるような力が作用したときに、ボルト23dが長孔23cの縁部に当接することによって、シリンダ11は、基礎Fに対して左右方向に移動不能になる。
以上の構成の振動抑制装置1Aでは、建物Bの振動時、梁BUが基礎Fに対して左方に変位したときには、当該変位は、伝達部材21、左ケーブル4L及び連結機構23を介して、マスダンパ2に伝達される。これにより、第1実施形態と同様、ピストン13及びナット12bは、左ケーブル4Lで引っ張られることにより、シリンダ11に対して左方に移動する。それに伴い、ねじ軸12aが回転マス14、14と一緒に回転するとともに、第1油室11f内のオイルOIがピストン13で圧縮され、その一部が、連通孔13aを介して第2油室11g内に流入する(図2参照)。
また、建物Bの振動時、上記とは逆に、梁BUが基礎Fに対して右方に変位したときには、当該変位は、伝達部材21、右ケーブル4R及び連結機構23を介して、マスダンパ2に伝達される。これにより、第1実施形態と同様、ピストン13及びナット12bは、右ケーブル4Rで引っ張られることにより、シリンダ11に対して右方に移動する。それに伴い、ねじ軸12aが回転マス14、14と一緒に回転するとともに、第2油室11g内のオイルOIがピストン13で圧縮され、その一部が、連通孔13aを介して第1油室11f内に流入する(図2参照)。
以上の動作から明らかなように、第2実施形態によれば、建物Bの振動時、梁BUと基礎Fとの間の相対変位が、伝達部材21や左右のケーブル4L、4Rを介してマスダンパ2に伝達されることにより、第1実施形態と同様、回転マス14、14の回転慣性効果及びオイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
また、上述した振動抑制装置1Aの構成から明らかなように、回転マス14、14から成る慣性接続要素及びオイルOIから成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス14、14の質量(回転慣性質量)、オイルOIの密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。
さらに、基礎Fに対する伝達部材21の前後方向への移動が、規制機構22L、22Rによって規制されるとともに、基礎Fに対するシリンダ11の上下方向への移動が、連結機構23によって許容される。したがって、伝達部材21に、基礎Fに対して前後方向に移動させるような力が作用したときや、シリンダ11に、基礎Fに対して上下方向に移動させるような力が作用したときに、それによるシリンダ11やねじ軸12aなどの損傷を防止することができる。その他、第1実施形態による前述した効果、すなわち、振動抑制装置1Aの施工性の向上効果などを、同様に得ることができる。
次に、図4を参照しながら、本発明の第3実施形態による振動抑制装置1Bについて説明する。この振動抑制装置1Bは、第1実施形態と比較して、マスダンパ31の構成が主に異なっている。図4では、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図4に示すように、マスダンパ31は、シリンダ32、ボールねじ35、回転マス36及び左右のピストン37L、37Rなどで構成されている。シリンダ32は、円筒状の第1シリンダ33と、第1シリンダ33の左右の両側にそれぞれ設けられた円筒状の左右の第2シリンダ34L、34Rを一体に有しており、左右方向に延びている。
第1シリンダ33は、第1実施形態のシリンダ11と同様、左右の壁33a、33bと、両者33a、33bの間に一体に設けられた周壁33cで構成されている。周壁33cは、前述した伝達部材3の連結部3cに取り付けられており、それにより、第1シリンダ33を含むシリンダ32全体は、建物Bの梁BU(図1参照)に連結されている。また、左壁33a及び右壁33bの径方向の中央には、左右方向に貫通するねじ軸案内孔(図示せず)が形成されている。
また、第1シリンダ33には、ボールねじ35のねじ軸35aの中央部が収容されるとともに、ボールねじ35のナット35b及び回転マス36が収容されている。ねじ軸35aは、上記の左右の壁33a、33bのねじ軸案内孔に、シール(図示せず)を介して挿入され、左壁33aよりも左方に延びるとともに、右壁33bよりも右方に延びている。ナット35bは、多数のボールを介して、ねじ軸35aに回転可能に螺合している。回転マス36は、第1実施形態の回転マス14と同様に例えば鉄で構成されており、円筒状に形成されている。また、回転マス36は、左右の軸受け38、38を介して、第1シリンダ33に回転可能に支持されており、これらの軸受け38、38を介して左右の壁33a、33bに係合することで、第1シリンダ33に対して左右方向に移動不能である。回転マス36の内側には、ナット35bが同心状に一体に設けられている。以上の構成により、ナット35bは、第1シリンダ33を含むシリンダ32全体に対して、回転マス36と一緒に回転可能であるとともに、左右方向(軸線方向)に移動不能である。
また、第1シリンダ33と回転マス36の間には、左右一対のシール39、39が設けられており、両者33、36の間は、これらのシール39、39によって液密状態に保持されるとともに、例えばシリコンオイルで構成された粘性体40で充填されている。
左側の第2シリンダ34Lは、第1シリンダ33の左壁33aに同心状に一体に設けられ、左壁33aから左方に延びる周壁34Laと、周壁34Laの左端部に一体に設けられた左壁34Lbなどで構成されており、第1シリンダ33よりも小さい径を有している。左壁34Lbには、前述した左側の第1滑車5Lが取り付けられており、その径方向の中央には、左右方向に貫通するケーブル案内孔(図示せず)が形成されている。
また、第2シリンダ34Lには、ねじ軸35aの左部及び左ピストン37Lが収容されている。第2シリンダ34L内は、左ピストン37Lによって、左側の第1油室34Lcと右側の第2油室34Ldに区画されており、両油室34Lc、34Ldには、オイルOIが充填されている。また、第2シリンダ34Lの周壁34Laの内面には、一対のレール34Le、34Leが一体に設けられている。図4では、便宜上、レール34Le、34Leの断面を示すハッチングを省略している。これらのレール34Le、34Leは、第1実施形態のレール11h、11hとそれぞれ同様に構成されているので、その詳細な説明については省略する。
右側の第2シリンダ34Rは、左側の第2シリンダ34Lと同様に構成されており、第1シリンダ33の右壁33bに同心状に一体に設けられ、右壁33bから右方に延びる周壁34Raと、周壁34Raの右端部に一体に設けられた右壁34Rbなどで構成されている。右壁34Rbには、前述した右側の第1滑車5Rが取り付けられており、その径方向の中央には、左右方向に貫通するケーブル案内孔(図示せず)が形成されている。
また、第2シリンダ34Rには、ねじ軸35aの右部及び右ピストン37Rが収容されている。第2シリンダ34R内は、右ピストン37Rによって、左側の第1油室34Rcと右側の第2油室34Rdに区画されており、両油室34Rc、34Rdには、オイルOIが充填されている。また、第2シリンダ34Rの周壁34Raの内面には、一対のレール34Re、34Reが一体に設けられている。図4では、便宜上、レール34Re、34Reの断面を示すハッチングを省略している。これらのレール34Re、34eも、第1実施形態のレール11h、11hとそれぞれ同様に構成されているので、その詳細な説明については省略する。
左右のピストン37L、37Rは、円柱状に形成され、左右の第2シリンダ34L、34R内に摺動可能にそれぞれ設けられており、ねじ軸35aの左右の端部にそれぞれ取り付けられている。これにより、ねじ軸35aはピストン37L、37Rと一緒に、第2シリンダ34L、34Rを含むシリンダ32全体に対して、左右方向(軸線方向)に移動可能である。また、各ピストン37L(37R)のねじ軸35aよりも径方向の外側の部分には、左右方向に貫通する複数の連通孔37La(37Ra、いずれも2つのみ図示)が形成されている。前述した第2シリンダ34L(34R)の第1及び第2油室34Lc、34Ld(34Rc、34Rd)は、これらの連通孔37La(37Ra)を介して互いに連通している。
さらに、ピストン37L(37R)の径方向の外端部には、左右方向に延びる一対の凹部(図示せず)が形成されており、これらの一対の凹部は、第2シリンダ34L(34R)の前記レール34Le、34Le(34Re、34Re)に、シール(図示せず)を介してそれぞれ係合している。これにより、左右のピストン37L、37R及びねじ軸35aは、第2シリンダ34L、34Rを含むシリンダ32全体に対して、回転不能である。
また、左ピストン37Lの左端部には左ケーブル4Lの一端部が、右ピストン37Rの右端部には右ケーブル4Rの一端部が、それぞれ取り付けられており、左右のケーブル4L、4Rは、前述した左右の壁34Lb、34Rbのケーブル案内孔に、シールを介してそれぞれ挿通されている。なお、左右のケーブル4L、4Rはそれぞれ、第1実施形態と異なり、単一のケーブルで構成されている。以上のように、左右のピストン37L、37R及びねじ軸35aは、左右のケーブル4L、4R及び左右の連結部材7L、7Rを介して、基礎Fに連結されている。
以上の構成の振動抑制装置1Bでは、建物Bが静止しているときには、左右のピストン37L、37Rは、図4に示す中立位置にある。
建物Bの振動時、基礎Fが梁BU(図1参照)に対して左方に変位したときには、当該変位は、伝達部材3、左ケーブル4L及び左連結部材7Lを介して、マスダンパ31に伝達される。これにより、左右のピストン37L、37R及びねじ軸35aは、左ケーブル4Lで引っ張られることによって、シリンダ32に対して左方に移動する。それに伴い、ねじ軸35aにボールを介して螺合するナット35bが回転マス36と一緒に回転するとともに、左右の第2シリンダ34L、34Rの第1油室34Lc、34Rc内のオイルOIが左右のピストン37L、37Rでそれぞれ圧縮され、これらのオイルOIの一部が、連通孔37La、37Raを介して、第2油室34Ld、34Rd内にそれぞれ流入する。
また、建物Bの振動時、上記とは逆に、基礎Fが梁BUに対して右方に変位したときには、当該変位は、伝達部材3、右ケーブル4R及び右連結部材7Rを介して、マスダンパ31に伝達される。これにより、左右のピストン37L、37R及びねじ軸35aは、右ケーブル4Rで引っ張られることによって、シリンダ32に対して右方に移動する。それに伴い、ナット35bが回転マス36と一緒に回転するとともに、第2油室34Ld、34Rd内のオイルOIが左右のピストン37L、37Rでそれぞれ圧縮され、これらのオイルOIの一部が、連通孔37La、37Raを介して、第1油室34Lc、34Rc内にそれぞれ流入する。
以上のように、第3実施形態によれば、建物Bの振動時、伝達部材3や左右のケーブル4L、4Rを介してマスダンパ31に伝達された梁BUと基礎Fとの間の相対変位が、ねじ軸35a及びナット35bによって回転運動に変換された状態で、回転マス36に伝達される。これにより、回転マス36が回転し、回転マス36の回転慣性効果が得られる。この場合、左右のケーブル4L、4Rが、ねじ軸35a(ピストン37L、37R)から互いに反対方向に延びているので、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、両者BU、Fの間の相対変位を、両ケーブル4L、4Rを介して、ねじ軸35aに適切に伝達することができる。
また、建物Bの振動時、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、ピストン37L(37R)は、ねじ軸35aと一緒に左右のケーブル4L、4Rの一方と他方で交互に繰り返し引っ張られることにより、シリンダ32に対して第1油室34Lc(34Rc)側と第2油室34Ld(34Rd)側に交互に繰り返し移動する。それに伴い、第1及び第2油室34Lc、34Ld(34Rc、34Rd)が、ピストン37L(37R)で交互に繰り返し圧縮/膨張され、圧縮される側の室内のオイルOIの一部が、連通孔37La(37Ra)を介して、膨張される側の室内に流入する。これにより、建物Bの振動時、上述した回転マス36の回転慣性効果に加え、オイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
さらに、梁BUに連結された第1シリンダ33と、第1シリンダ33に回転可能に設けられた回転マス36との間に、粘性体40が設けられているので、回転マス36の回転に伴って、粘性体40の粘性減衰効果がさらに得られる。
以上の振動抑制装置1Bの構成から明らかなように、回転マス36から成る慣性接続要素、オイルOIから成る粘性要素、及び粘性体40から成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。
また、伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス36の質量(回転慣性質量)、オイルOI及び粘性体40の密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。
この場合、第1実施形態と同様、第1及び第2滑車5L、5R、6L、6Rの一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能するので、マスダンパ31に伝達される梁BUと基礎Fの間の相対変位を増大させることができ、それにより、より大きな回転マス36の回転慣性効果、オイルOIの粘性減衰効果、及び粘性体40の粘性減衰効果が得られることによって、建物Bの振動をより良好に抑制することができる。
また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、マスダンパ31の第2シリンダ34L、34R及び第1滑車5L、5Rが互いに別個に設けられておらず、第1滑車5L、5Rが第2シリンダ34L、34Rに一体に設けられているので、建物Bに振動抑制装置1Bをコンパクトに設置することができる。特に、第3実施形態では、第1実施形態と同様、振動抑制装置1Bが基礎F、梁BU及び左右の柱PL、PRで取り囲まれた比較的狭い空間に配置されているので、上述した効果を有効に得ることができる。同じ理由により、建物Bへの設置にあたり、前述した従来の振動抑制装置と異なり、シリンダ32及び第1滑車5L、5Rを梁BUに一体に連結できるので、その施工性を向上させることができる。
さらに、第1実施形態と同様、所定のテンションが左右のケーブル4L、4Rに付与されているので、建物Bの振動時、ピストン37L、37Rの移動量がテンションによる左ケーブル4L又は右ケーブル4Rの引張量に達するまでは、両ケーブル4L、4Rの反力が作用するため、左右のケーブル4L、4R全体のばね定数kは、両ケーブル4L、4Rのばね定数k1、k2の和(=k1+k2)になる。これに対して、ピストン37L、37Rの移動量がテンションによる左ケーブル4L又は右ケーブル4Rの引張量に達した後には、一方のケーブルのテンションが消失し、他方のケーブルの反力だけが作用するようになるため、左右のケーブル4L、4R全体のばね定数kは、左ケーブル4Lのばね定数k1又は右ケーブル4Rのばね定数k2になる。
このように、左右のケーブル4L、4Rにテンションを予め付与することによって、建物Bの変位に対する両ケーブル4L、4Rから成る弾性要素の剛性の特性として、バイリニアな特性を得ることができる。したがって、例えば、振動による建物Bの変位が大きくなるのに伴って振動抑制装置1Bの反力が過大にならないうちに、この弾性要素の剛性がより小さな値(k1又はk2)に切り替わるようにすることが可能になる。それにより、付加振動系の固有振動数を建物Bの固有振動数と異ならせることで、振動抑制装置1Bの反力の過大化を防止することができる。
次に、図5を参照しながら、本発明の第4実施形態による振動抑制装置1Cについて説明する。この振動抑制装置1Cは、第2実施形態のマスダンパ2を第3実施形態のマスダンパ31に置き換えたものであり、第3実施形態と比較して、建物Bの梁BU(図3参照)及び基礎Fに対するシリンダ32及びピストン37L、37R(ねじ軸35a)の間の連結関係が逆になっている点が主に異なっている。すなわち、図5に示すように、シリンダ32が基礎Fに連結されており、ピストン37L、37Rが、梁BUに連結された伝達部材21に、左右のケーブル4L、4Rを介して連結されている。
図5において、第2及び第3実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付しており、便宜上、一部の構成要素の符号を省略している。以下、第2及び第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
この振動抑制装置1Cでは、図5と、図3及び図4との比較から明らかなように、建物Bの振動時、梁BUと基礎Fの間の相対変位が、伝達部材21や左右のケーブル4L、4Rを介して、マスダンパ31に伝達される。それに伴い、マスダンパ31が第3実施形態で説明したように動作することによって、回転マス36の回転慣性効果、オイルOIの粘性減衰効果、及び粘性体40の粘性減衰効果を得ることができる。
また、上述した振動抑制装置1Cの構成から明らかなように、回転マス36から成る慣性接続要素、オイルOIから成る粘性要素、及び粘性体40から成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス36の質量(回転慣性質量)、オイルOI及び粘性体40の密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。その他、第1〜第3実施形態による前述した効果、すなわち、振動抑制装置1Cの施工性の向上効果などを、同様に得ることができる。
次に、図6を参照しながら、本発明の第5実施形態による振動抑制装置1Dについて説明する。この振動抑制装置1Dは、第1実施形態と比較して、マスダンパ51の構成が主に異なっている。図6において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図6に示すように、マスダンパ51は、左右のシリンダ52L、52R、左右のピストン54L、54R、ボールねじ55、及び回転マス56を備えている。左シリンダ52Lは、第1実施形態のシリンダ11と同様、左右の壁52La、52Lb及び周壁52Lcなどで円筒状に構成され、左右方向に延びており、左シリンダ52L内には、ボールねじ55のねじ軸55aの左部及び左ピストン54Lが収容されている。左シリンダ52L内は、左ピストン54Lによって、左側の第1油室52Ldと右側の第2油室52Leに区画されており、両油室52Ld、52Leには、オイルOIが充填されている。
また、左シリンダ52Lの周壁52Lcの内面には、一対のレール52Lf、52Lfが一体に設けられている。図6では、便宜上、レール52Lf、52Lfの断面を示すハッチングを省略している。これらのレール52Lf、52Lfは、第1実施形態のレール11h、11hと同様に構成されているので、その詳細な説明については省略する。さらに、左壁52Laには、左側の第1滑車5Lが取り付けられ、右壁52Lbには、円筒状の支持部52Lgが同心状に一体に設けられており、左右の壁52La、52Lbの径方向の中央には、左右方向に貫通するケーブル案内孔及びねじ軸案内孔(いずれも図示せず)が、それぞれ形成されている。
右シリンダ52Rは、左シリンダ52Lと同様、左右の壁52Ra、52Rb及び周壁52Rcなどで円筒状に構成され、左右方向に延びており、右シリンダ52R内には、ねじ軸55aの右部及び右ピストン54Rが収容されている。右シリンダ52R内は、右ピストン54Rによって、左側の第1油室52Rdと右側の第2油室52Reに区画されており、両油室52Rd、52Reには、オイルOIが充填されている。周壁52Rcの内面には、左シリンダ52Lと同様、一対のレール52Rf、52Rfが一体に設けられている。さらに、左壁52Raには、円筒状の支持部52Rgが同心状に一体に設けられ、右壁52Rbには、右側の第1滑車5Rが取り付けられており、左右の壁52Ra、52Rbの径方向の中央には、左右方向に貫通するねじ軸案内孔及びケーブル案内孔(いずれも図示せず)が、それぞれ形成されている。
以上の構成の左右のシリンダ52L、52Rは、連結部材53を介して互いに連結されている。連結部材53は、左右方向に延びる第1部材53aと、第1部材53aの左右の端部から下方に延びる左右の第2部材53b、53bで構成されており、これらの第1及び第2部材53a、53b、53bはいずれも、H形鋼で構成されている。左右の第2部材53b、53bには、左右のシリンダ52L、52Rの周壁52Lc、52Rcがそれぞれ取り付けられており、第1部材53aは、伝達部材3の連結部3cに取り付けられている。以上により、左右のシリンダ52L、52Rは、連結部材53を介して互いに連結されるとともに、連結部材53及び伝達部材3を介して、梁BUに連結されている。
左右のピストン54L、54Rは、円柱状に形成され、左右の第2シリンダ52L、52R内に摺動可能にそれぞれ設けられるとともに、ボールねじ55のねじ軸55aの左右の端部にそれぞれ取り付けられている。これにより、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、シリンダ52L、52Rに対して、左右方向(軸線方向)に移動可能である。また、ねじ軸55aは、前述した左シリンダ52Lの右壁52Lb及び右シリンダ52Rの左壁52Raのねじ軸案内孔に、シール(図示せず)を介して挿入されており、右壁52Lbから左方に延びるとともに、左壁52Raから右方に延びている。また、ねじ軸55aの中央部は、左右のシリンダ52L、52Rの間に位置するとともに、前述した支持部52Lg、52Rgの内側に位置している。
さらに、ピストン54L(54R)には、第3実施形態のピストン37L(37R)と同様、左右方向に貫通する複数の連通孔54La(54Ra、いずれも2つのみ図示)と、左右方向に延びる一対の凹部(図示せず)が形成されている。前述したシリンダ52L(52R)の第1及び第2油室52Ld、52Le(52Rd、52Re)は、これらの連通孔54La(54Ra)を介して、互いに連通している。また、上記一対の凹部は、前述したシリンダ52L(52R)のレール52Lf、52Lf(52Rf、52Rf)に、シール(図示せず)を介してそれぞれ係合している。これにより、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、シリンダ52L、52Rに対して回転不能である。
また、左ピストン54Lの左端部には左ケーブル4Lの一端部が、右ピストン54Rの右端部には右ケーブル4Rの一端部が、それぞれ取り付けられており、左右のケーブル4L、4Rは、前述した左右の壁52La、52Rbのケーブル案内孔に、シール(図示せず)を介してそれぞれ挿通されている。以上のように、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、左右のケーブル4L、4R及び左右の連結部材7L、7Rを介して、基礎Fに連結されている。
ボールねじ55のナット55bは、多数のボールを介して、ねじ軸55aに回転可能に螺合しており、左右のシリンダ52L、52Rの間に配置されている。また、ナット55bの左右の端部には、左右のフランジ55c、55dがそれぞれ一体に設けられており、左右のフランジ55c、55dには、円筒状の左右の嵌合部55e、55fがそれぞれ一体に設けられている。左右の嵌合部55e、55fは、軸受け57、57を介して、前述した左右のシリンダ52L、52Rの支持部52Lg、52Rgにそれぞれ嵌合している。以上の構成により、ナット55bは、左右のシリンダ52L、52Rに対して、回転可能かつ左右方向(軸線方向)に移動不能である。
また、左フランジ55cの右側面、右フランジ55dの左側面、及び左右の嵌合部55e、55fの外周面の各々には、摩擦材58が取り付けられている。摩擦材58は、第1実施形態の摩擦材15と同様に、摩擦係数が比較的安定している材料、例えばテフロン(登録商標)などで構成されている。
回転マス56は、第1実施形態の回転マス14と同様に比較的比重の大きい材料、例えば鉄で構成され、円筒状に形成されており、左右方向に延びている。また、回転マス56の中央部の内周面の全体には、径方向に突出する係合部56aが一体に設けられており、係合部56aの内径はナット55bの外径よりも大きく、フランジ55c、55dの外径よりも小さい。また、回転マス56は、ナット55bの外周に同心状に設けられており、その係合部56aの左右の側面が左右のフランジ55c、55dの摩擦材58、58に接触するとともに、その左部及び右部が、嵌合部55e、55fの摩擦材58、58に同心状に嵌合している。
さらに、回転マス56の左部及び右部の各々には、嵌合部55e、55fに対する回転マス56の嵌合度合いを調整するための複数の調整ねじ59(各2つのみ図示)が、外側からねじ込まれている。なお、図6では、便宜上、上側の調整ねじ59の符号を省略している。これらの調整ねじ59を完全に締め付けた状態では、回転マス56は、嵌合部55e、55fに一体に連結された状態になる。摩擦材58の摩擦係数及び調整ねじ59の締め付け度合いは、回転マス56の回転トルクが所定値以上になったときに、回転マス56が摩擦材58に対して滑るように設定されている。以上の構成により、回転マス56は、その回転トルクが所定値に達するまでは、嵌合部55e、55f及びこれと一体のナット55bと一緒に回転する。
以上の構成の振動抑制装置1Dでは、建物Bが静止しているときには、左右のピストン54L、54Rは、図6に示す中立位置にある。
建物Bの振動時、基礎Fが梁BU(図1参照)に対して左方に変位したときには、当該変位は、伝達部材3、左ケーブル4L及び左連結部材7Lを介して、マスダンパ51に伝達される。これにより、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、左ケーブル4Lで引っ張られることによって、左右のシリンダ52L、52Rに対して左方に移動する。それに伴い、ねじ軸55aにボールを介して螺合するナット55bが回転マス56と一緒に回転するとともに、左右のシリンダ52L、52Rの第1油室52Ld、52Rd内のオイルOIが左右のピストン54L、54Rでそれぞれ圧縮され、これらのオイルOIの一部が、連通孔54La、54Raを介して、第2油室52Le、52Re内にそれぞれ流入する。
また、建物Bの振動時、上記とは逆に、基礎Fが梁BUに対して右方に変位したときには、当該変位は、伝達部材3、右ケーブル4R及び右連結部材7Rを介して、マスダンパ51に伝達される。これにより、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、右ケーブル4Rで引っ張られることによって、左右のシリンダ52L、52Rに対して右方に移動する。それに伴い、ナット55bが回転マス56と一緒に回転するとともに、第2油室52Le、52Re内のオイルOIが左右のピストン54L、54Rでそれぞれ圧縮され、これらのオイルOIの一部が、連通孔54La、54Raを介して、第1油室52Ld、52Rd内にそれぞれ流入する。
以上のように、第5実施形態によれば、建物Bの振動時、伝達部材3や左右のケーブル4L、4Rを介してマスダンパ51に伝達された梁BUと基礎Fとの間の相対変位が、ねじ軸55a及びナット55bによって回転運動に変換された状態で、回転マス56に伝達される。これにより、回転マス56が回転し、回転マス56の回転慣性効果が得られる。この場合、左右のケーブル4L、4Rが、ねじ軸55a(ピストン54L、54R)から互いに反対方向に延びているので、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、両者BU、Fの間の相対変位を、両ケーブル4L、4Rを介して、ねじ軸55aに適切に伝達することができる。
また、建物Bの振動時、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、ピストン54L(54R)は、ねじ軸55aと一緒に左右のケーブル4L、4Rの一方と他方で交互に繰り返し引っ張られることにより、シリンダ52L(52R)に対して第1油室52Ld(52Rd)側と第2油室52Le(52Re)側に交互に繰り返し移動する。それに伴い、第1及び第2油室52Ld、52Le(52Rd、52Re)が、ピストン54L(54R)で交互に繰り返し圧縮/膨張され、圧縮される側の室内のオイルOIの一部が、連通孔54La(54Ra)を介して、膨張される側の室内に流入する。これにより、建物Bの振動時、上述した回転マス56の回転慣性効果に加え、オイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
以上の振動抑制装置1Dの構成から明らかなように、回転マス56から成る慣性接続要素及びオイルOIから成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。
また、伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス56の質量(回転慣性質量)、オイルOIの密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。
この場合、第1実施形態と同様、第1及び第2滑車5L、5R、6L、6Rの一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能するので、マスダンパ51に伝達される梁BUと基礎Fの間の相対変位を増大させることができ、それにより、より大きな回転マス56の回転慣性効果及びオイルOIの粘性減衰効果が得られることによって、建物Bの振動をより良好に抑制することができる。
また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、マスダンパ51のシリンダ52L、52R及び第1滑車5L、5Rが互いに別個に設けられておらず、第1滑車5L、5Rがシリンダ52L、52Rに一体に設けられているので、建物Bに振動抑制装置1Dをコンパクトに設置することができる。特に、第5実施形態では、第1実施形態と同様、振動抑制装置1Dが基礎F、梁BU及び左右の柱PL、PRで取り囲まれた比較的狭い空間に配置されているので、上述した効果を有効に得ることができる。同じ理由により、建物Bへの設置にあたり、前述した従来の振動抑制装置と異なり、シリンダ52L、52R及び第1滑車5L、5Rを梁BUに一体に連結できるので、その施工性を向上させることができる。
さらに、第1実施形態と同様、所定のテンションが左右のケーブル4L、4Rに付与されているので、建物Bの振動時、ピストン54L、54Rの移動量がテンションによる左ケーブル4L又は右ケーブル4Rの引張量に達するまでは、両ケーブル4L、4Rの反力が作用するため、左右のケーブル4L、4R全体のばね定数kは、両ケーブル4L、4Rのばね定数k1、k2の和(=k1+k2)になる。これに対して、ピストン54L、54Rの移動量がテンションによる左ケーブル4L又は右ケーブル4Rの引張量に達した後には、一方のケーブルのテンションが消失し、他方のケーブルの反力だけが作用するようになるため、左右のケーブル4L、4R全体のばね定数kは、左ケーブル4Lのばね定数k1又は右ケーブル4Rのばね定数k2になる。
このように、左右のケーブル4L、4Rにテンションを予め付与することによって、建物Bの変位に対する両ケーブル4L、4Rから成る弾性要素の剛性の特性として、バイリニアな特性を得ることができる。したがって、例えば、振動による建物Bの変位が大きくなるのに伴って振動抑制装置1Dの反力が過大にならないうちに、この弾性要素の剛性がより小さな値(k1又はk2)に切り替わるようにすることが可能になる。それにより、付加振動系の固有振動数を建物Bの固有振動数と異ならせることで、振動抑制装置1Dの反力の過大化を防止することができる。
次に、図7を参照しながら、本発明の第6実施形態による振動抑制装置1Eについて説明する。この振動抑制装置1Eは、第2実施形態のマスダンパ2を第5実施形態のマスダンパ51に置き換えたものであり、第5実施形態と比較して、建物Bの梁BU(図3参照)及び基礎Fに対する左右のシリンダ52L、52R及びピストン54L、54R(ねじ軸55a)の間の連結関係が逆になっている点が主に異なっている。すなわち、図7に示すように、シリンダ52L、52Rが基礎Fに連結されており、ピストン54L、54Rが、梁BUに連結された伝達部材21に、左右のケーブル4L、4Rを介して連結されている。
図7において、第2及び第5実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付しており、便宜上、一部の構成要素の符号を省略している。以下、第2及び第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
図7に示すように、前述した連結機構23のレール23aは省略されており、連結部材53の第1部材53aがこのレール23aとして兼用されている。すなわち、連結機構23の連結部材23bは、基礎Fに取り付けられるとともに、第1部材53aを前後方向に挟み込むように設けられている。また、ボルト23dは、連結部材23bの長孔23cに挿入されるとともに、第1部材53aにねじ込まれている。
この振動抑制装置1Eでは、図7と、図3及び図6との比較から明らかなように、建物Bの振動時、梁BUと基礎Fの間の相対変位が、伝達部材21や左右のケーブル4L、4Rを介して、マスダンパ51に伝達される。それに伴い、マスダンパ51が第5実施形態で説明したように動作することによって、回転マス56の回転慣性効果及びオイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
また、上述した振動抑制装置1Eの構成から明らかなように、回転マス56から成る慣性接続要素及びオイルOIから成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス56の質量(回転慣性質量)、オイルOIの密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。その他、第1、第2及び第5実施形態による前述した効果、すなわち、振動抑制装置1Eの施工性の向上効果などを、同様に得ることができる。
次に、図8を参照しながら、本発明の第7実施形態による振動抑制装置1Fについて説明する。この振動抑制装置1Fは、第5実施形態と比較して、マスダンパ61のナット65b及び回転マス66の構成が主に異なっており、図8において、第5実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
ナット65bは、多数のボールを介して、ねじ軸55aに回転可能に螺合しており、その左右の端部には、第5実施形態のナット55bと異なり、フランジ55c、55dが設けられておらず、円筒状の左右の嵌合部65c、65dがそれぞれ一体に設けられている。左右の嵌合部65c、65dは、軸受け57、57を介して、前述した左右のシリンダ52L、52Rの支持部52Lg、52Rgに嵌合している。これにより、ナット65bは、左右のシリンダ52L、52Rに対して、回転可能かつ左右方向(軸線方向)に移動不能である。
回転マス66は、円筒状に形成されており、第5実施形態の回転マス56と異なり、一定の内径を有している。また、回転マス66は、ナット65bの外周に同心状に配置されており、左右の軸受け67、67を介して、嵌合部65c、65dに回転可能に支持されている。回転マス66とナット65b及び嵌合部65c、65dとの間は、左右一対のシール68、68によって液密状態に保持されており、粘性体69が充填されている。以上の構成により、ナット65bの回転は、粘性体69を介して回転マス66に伝達される。この場合、回転マス66は、粘性体69がビンガム流体のような特性を有するときには、その回転速度とナット65bの回転速度との差が所定値に達するまでは、ナット65bと一緒に回転する。
以上の構成の振動抑制装置1Fでは、建物Bの振動時、基礎Fが梁BU(図1参照)に対して左方に変位したときには、第5実施形態と同様、当該変位は、伝達部材3、左ケーブル4L及び左連結部材7Lを介して、マスダンパ61に伝達される。これにより、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、左ケーブル4Lで引っ張られることによって、左右のシリンダ52L、52Rに対して左方に移動する。それに伴い、ナット65bが回転し、それに応じて回転マス66が回転するとともに、第1油室52Ld、52Rd内のオイルOIが左右のピストン54L、54Rでそれぞれ圧縮され、これらのオイルOIの一部が、連通孔54La、54Raを介して、第2油室52Le、52Re内にそれぞれ流入する。
また、建物Bの振動時、上記とは逆に、基礎Fが梁BUに対して右方に変位したときには、第5実施形態と同様、当該変位は、伝達部材3、右ケーブル4R及び右連結部材7Rを介して、マスダンパ61に伝達される。これにより、左右のピストン54L、54R及びねじ軸55aは、右ケーブル4Rで引っ張られることによって、左右のシリンダ52L、52Rに対して右方に移動する。それに伴い、ナット65bが回転し、それに応じて回転マス66が回転するとともに、第2油室52Le、52Re内のオイルOIが左右のピストン54L、54Rでそれぞれ圧縮され、これらのオイルOIの一部が、連通孔54La、54Raを介して、第1油室52Ld、52Rd内にそれぞれ流入する。
以上のように、第7実施形態によれば、第5実施形態と同様、建物Bの振動時、伝達部材3や左右のケーブル4L、4Rを介してマスダンパ61に伝達された梁BUと基礎Fとの間の相対変位が、ねじ軸55a及びナット65bによって回転運動に変換された状態で、回転マス66に伝達される。これにより、回転マス66が回転し、回転マス66の回転慣性効果が得られる。また、粘性体69が、ナット65bと回転マス66の間に設けられているので、回転マス66の回転に伴って、粘性体69の粘性減衰効果を得ることができる。さらに、建物Bの振動時、梁BU及び基礎Fが左右方向に相対的に交互に繰り返し変位したときに、第5実施形態と同様、第1及び第2油室52Ld、52Le(52Rd、52Re)が、ピストン54L(54R)で交互に繰り返し圧縮/膨張され、圧縮される側の室内のオイルOIの一部が、連通孔54La(54Ra)を介して、膨張される側の室内に流入する。これにより、建物Bの振動時、上述した回転マス66の回転慣性効果に加え、オイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
以上の振動抑制装置1Fの構成から明らかなように、回転マス66から成る慣性接続要素、粘性体69から成る粘性要素、及びオイルOIから成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。
また、伝達部材3及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス66の質量(回転慣性質量)、粘性体69及びオイルOIの密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。
この場合、第1実施形態と同様、第1及び第2滑車5L、5R、6L、6Rの一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能するので、マスダンパ61に伝達される梁BUと基礎Fの間の相対変位を増大させることができ、それにより、より大きな回転マス66の回転慣性効果、粘性体69の粘性減衰効果、及びオイルOIの粘性減衰効果が得られることによって、建物Bの振動をより良好に抑制することができる。
また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、マスダンパ61のシリンダ52L、52R及び第1滑車5L、5Rが互いに別個に設けられておらず、第1滑車5L、5Rがシリンダ52L、52Rに一体に設けられているので、建物Bに振動抑制装置1Fをコンパクトに設置することができる。特に、第7実施形態では、第1実施形態と同様、振動抑制装置1Fが基礎F、梁BU及び左右の柱PL、PRで取り囲まれた比較的狭い空間に配置されているので、上述した効果を有効に得ることができる。同じ理由により、建物Bへの設置にあたり、前述した従来の振動抑制装置と異なり、シリンダ52L、52R及び第1滑車5L、5Rを梁BUに一体に連結できるので、その施工性を向上させることができる。
さらに、第1実施形態と同様、所定のテンションが左右のケーブル4L、4Rに付与されているので、構造物Bの振動時に、振動抑制装置1Fの反力の過大化を防止することができる。
次に、図9を参照しながら、本発明の第8実施形態による振動抑制装置1Gについて説明する。この振動抑制装置1Gは、第2実施形態のマスダンパ2を第7実施形態のマスダンパ61に置き換えたものであり、第7実施形態と比較して、建物Bの梁BU(図3参照)及び基礎Fに対する左右のシリンダ52L、52R及びピストン54L、54R(ねじ軸55a)の間の連結関係が逆になっている点が主に異なっている。すなわち、図9に示すように、シリンダ52L、52Rが基礎Fに連結されており、ピストン54L、54Rが、梁BUに連結された伝達部材21に、左右のケーブル4L、4Rを介して連結されている。
図9において、第2及び第7実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付しており、便宜上、一部の構成要素の符号を省略している。以下、第2及び第7実施形態と異なる点を中心に説明する。
図9に示すように、連結機構23のレール23aは、第6実施形態と同様に省略されており、連結部材53の第1部材53aがこのレールとして兼用されている。この振動抑制装置1Gでは、図9と、図3及び図8との比較から明らかなように、建物Bの振動時、梁BUと基礎Fの間の相対変位が、伝達部材21、左右のケーブル4L、4R及び連結機構23を介して、マスダンパ61に伝達される。それに伴い、マスダンパ61が第7実施形態で説明したように動作することによって、回転マス66の回転慣性効果、粘性体69の粘性減衰効果、及びオイルOIの粘性減衰効果を得ることができる。
また、上述した振動抑制装置1Gの構成から明らかなように、回転マス66から成る慣性接続要素、粘性体69から成る粘性要素、及びオイルOIから成る粘性要素と、弾性を有する伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rとが、直列に接続された関係にあるので、これらの要素によって付加振動系を構成することができる。伝達部材21及び左右のケーブル4L、4Rの剛性(ばね定数)や、回転マス66の質量(回転慣性質量)、粘性体69及びオイルOIの密度及び粘度などの諸元は、上記の付加振動系の固有振動数が建物Bの所定の固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように、設定されている。これにより、建物Bの振動エネルギを付加振動系で吸収することによって、建物Bの振動を良好に抑制することができる。その他、第1、第2及び第7実施形態による前述した効果、すなわち、振動抑制装置1Gの施工性の向上効果などを、同様に得ることができる。
なお、本発明は、説明した第1〜第8実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、左右のケーブル4L、4Rは、鋼線であるが、テンションを付与することにより剛性を発揮するものであればよく、例えば帯状の鋼板でもよい。なお、第1及び第2滑車5L、5R、6L、6Rへのケーブル4L、4Rの巻き数は、任意に設定可能であり、当該設定により、マスダンパ2、31、51、61に伝達される建物Bの変位の増幅倍率を自由に設定することができる。
また、実施形態では、シリンダ11、第2シリンダ34L、34R、シリンダ52L、52R及びピストン13、37L、37R、54L、54Rの断面形状は、円形状であるが、他の適当な形状、例えば矩形状や、多角形状でもよい。その場合には、ピストン13、37L、37R、54L、54Rの凹部及びシリンダ11、第2シリンダ34L、34R、シリンダ52L、52Rのレール11h、34Le、34Re、52Lf、52Rfを省略しても、ピストンをシリンダに対して回転不能に設けることができる。
さらに、実施形態では、本発明における粘性体として、オイルOI(シリコンオイル)を用いているが、他の適当な粘性体を用いてもよい。このことは、第3、第4、第7及び第8実施形態の粘性体40、69についても、同様に当てはまる。さらに、第3及び第4実施形態では、粘性体40が第1シリンダ33と回転マス36の間に設けられているが、粘性体40を省略してもよい。
また、第1、第3、第5及び第7実施形態(以下、総称して「奇数の実施形態」という)では、左右のケーブル4L、4Rの他端部及び左右の第2滑車6L、6Rを、左右の連結部材7L、7Rにそれぞれ取り付けているが、基礎Fに直接、取り付けるとともに、連結部材7L、7Rを省略してもよい。さらに、第2、4、第6及び第8実施形態(以下、総称して「偶数の実施形態」という)では、規制機構22L、22Rが設けられているが、これを省略してもよいことはもちろんである。
また、偶数の実施形態では、シリンダ11、32、52L、52Rを、連結機構23を介して基礎Fに連結しているが、基礎Fに直接、連結するとともに、連結機構23を省略してもよい。さらに、偶数の実施形態では、左右のケーブル4L、4Rの他端部及び左右の第2滑車6L、6Rをそれぞれ、伝達部材21の左右の連結部材21d、21eに取り付けているが、左右の柱と梁との接合部に直接、取り付けるとともに、伝達部材21を省略してもよい。
また、実施形態では、左右の斜め材3a、3b、21a、21bの上端部を、左右の柱PL、PRと梁BUとの接合部にそれぞれ連結しているが、梁における所定の左部位及び右部位にそれぞれ連結してもよい。この場合、この左部位(右部位)の位置を、例えば、左柱PL(右柱PR)の軸線から左部位(右部位)の中心までの長さが、左右の柱PL、PRの各々の軸線の間の長さ(L:図10参照)のほぼ1/4になるように、設定してもよい。また、そのように左右の部位の位置を設定する場合、左右の斜め材3a、3b、21a、21bに代えて、上下方向にまっすぐ延びる柱材を用いてもよい。図10は、第2実施形態に関し、伝達部材71を上下方向にまっすぐに延びる左右の柱材71a、71bなどで構成した場合の振動抑制装置を示している。
図10に示すように、左右の柱材71a、71bの上端部は、上述した所定の左右の部位にそれぞれ連結されている。また、両柱材71a、71bの下端部には、左右方向に延びる中間部材71cが一体に設けられており、中間部材71cの左右の端部には、下方に延びる左右の連結部材71d、71eが一体に設けられている。これらの柱材71a、71b、中間部材71c、及び左右の連結部材71d、71eはいずれも、H形鋼で構成されている。
左連結部材71dは、シリンダ11と左側の回転マス14の間に配置され、右連結部材71eは、シリンダ11と右側の回転マス14の間に配置されており、両連結部材71d、71eの各々には、左右方向に貫通するねじ軸案内孔(図示せず)が形成されている。また、ねじ軸12aは、これらのねじ軸案内孔に挿入されており、左連結部材71dよりも左方に延びるとともに、右連結部材71eよりも右方に延びている。また、左右のケーブル4L、4Rの他端部は、左右の連結部材71d、71eにそれぞれ取り付けられている。以上の構成により、ピストン13及びナット12bは、左右のケーブル4L、4R及び伝達部材71を介して、梁BUに連結されている。
さらに、実施形態では、伝達部材3、21の左右の斜め材3a、3b、21a、21bを、V字状に設け、それらの上端部を左右の柱PL、PRと梁BUとの接合部にそれぞれ連結するとともに、シリンダ11、32、52L、52Rを基礎Fのすぐ上方に配置しているが、伝達部材とシリンダを上下逆に配置してもよい。すなわち、左右の斜め材を、逆V字状に設け、それらの下端部を左右の柱と基礎との接合部にそれぞれ連結するとともに、シリンダを梁のすぐ下方に配置してもよい。
奇数の実施形態に関し、上述したように伝達部材とシリンダを上下逆に配置した場合には、左右の連結部材(7L、7R)は梁(BU)に取り付けられる。この場合、左右のケーブル(4L、4R)の他端部及び第2滑車(6L、6R)を、梁に直接、取り付けるとともに、連結部材(7L、7R)を省略してもよい。また、偶数の実施形態に関し、上述したように伝達部材とシリンダを上下逆に配置した場合には、シリンダは、連結機構(23)を介して梁(BU)に連結される。この場合、シリンダを梁に直接、連結するとともに、連結機構を省略してもよい。
また、上述したように伝達部材とシリンダを上下逆に配置する場合にも、伝達部材の左右の斜め材の下端部を、左右の柱と基礎との接合部ではなく、基礎の所定の左部位及び右部位にそれぞれ連結してもよく、図10を参照して説明したように、左右の斜め材に代えて、上下方向にまっすぐ延びる柱材を用いてもよい。これらの場合、基礎の左部位(右部位)の位置を、例えば、左柱(右柱)の軸線から基礎の左部位(右部位)の中心までの長さが、左右の柱の各々の軸線の間の長さのほぼ1/4になるように、設定してもよい。
また、実施形態では、伝達部材3、21を用いているが、これを省略してもよい。奇数の実施形態に関し、伝達部材3を省略する場合には、シリンダ(11、32、52L、52R、連結部材53)が梁に取り付けられる。この場合、シリンダを、連結機構23を介して梁に連結してもよい。偶数の実施形態に関し、伝達部材21を省略する場合には、左右のケーブルの他端部及び左右の第2滑車が、左右の柱と梁との接合部にそれぞれ取り付けられる。
さらに、実施形態では、ピストン13、37L、37R、54L、54R及びオイルOIを、シリンダ11、32、52L、52R内に設けているが、これらを省略してもよい。第1及び第2実施形態に関して、ピストン13及びオイルOIを省略する場合、左右のケーブルの一端部が円筒状のナットに取り付けられるとともに、ナットの外周面に、左右方向に延びる凹部が形成される。これらの凹部には、シリンダのレール(11h)が係合する。以上の構成により、ナットは、シリンダに対して、軸線方向に移動可能かつ回転不能に設けられる。この場合、シリンダ及びナットの断面形状を矩形状又は多角形状に形成するとともに、ナットをシリンダに摺動可能に設けてもよく、その場合には、シリンダのレール及びナットの凹部を省略しても、ナットを、シリンダに対して、軸線方向に移動可能かつ回転不能に設けることができる。
また、第3〜第8実施形態に関して、上述したようにピストン37L、37R、54L、54R及びオイルOIを省略する場合には、ねじ軸の左部及び右部に左右方向に延びる凹部が形成されるとともに、これらの凹部に、シリンダのレール(34Le、34Re、52Lf、52Rf)がそれぞれ係合する。以上の構成により、ねじ軸は、シリンダに対して、軸線方向に移動可能かつ回転不能に設けられる。
また、実施形態では、本発明における第1及び第2部位として、基礎F及びそのすぐ上側の梁BUをそれぞれ採用し、2層間の層間変位を抑制しているが、他の適当な部位を採用してもよい。例えば、第1及び第2部位として、基礎F及び梁BUよりも上側の梁をそれぞれ採用し、3層以上の間の層間変位を抑制してもよく、あるいは、梁BU及びそれよりも上側の梁を採用してもよい。さらに、実施形態では、マスダンパ2、31、51、61を左右方向に延びる梁BUに連結することによって、建物Bの振動による左右方向の変位を抑制しているが、前後方向に延びる梁に連結することによって、建物の振動による前後方向の変位を抑制してもよい。
また、実施形態は、本発明による振動抑制装置を高層の建物Bに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、他の適当な構造物、例えば鉄塔などにも適用可能である。さらに、実施形態では、振動抑制装置1、1A〜1Gを、建物Bの層間に設置し、制振装置として用いているが、これに限らず、構造物とこれを支持する支持体の間に設置し、免震装置として用いてもよい。また、以上の実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて適用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
B 建物(構造物)
F 基礎(第1部位)
BU 梁(第2部位)
1 振動抑制装置
1A 振動抑制装置
1B 振動抑制装置
1C 振動抑制装置
1D 振動抑制装置
1E 振動抑制装置
1F 振動抑制装置
1G 振動抑制装置
2 マスダンパ
4L 左ケーブル
4R 右ケーブル
5L 第1滑車
5R 第1滑車
6L 第2滑車
6R 第2滑車
11 シリンダ(本体部)
11f 第1油室(第1室)
11g 第2油室(第2室)
12a ねじ軸(第2ボールねじ部材)
12b ナット(第1ボールねじ部材)
13 ピストン
13a 連通孔
14 回転マス
OI オイル(粘性体)
31 マスダンパ
32 シリンダ(本体部)
34Lc 第1油室(第1室)
34Ld 第2油室(第2室)
34Rc 第1油室(第1室)
34Rd 第2油室(第2室)
35a ねじ軸(第1ボールねじ部材)
35b ナット(第2ボールねじ部材)
36 回転マス
37L 左ピストン
37La 連通孔
37R 右ピストン
37Ra 連通孔
51 マスダンパ
52L 左シリンダ
52Ld 第1油室(第1室)
52Le 第2油室(第2室)
52R 右シリンダ
52Rd 第1油室(第1室)
52Re 第2油室(第2室)
54L 左ピストン
54La 連通孔
54R 右ピストン
54Ra 連通孔
55a ねじ軸(第1ボールねじ部材)
55b ナット(第2ボールねじ部材)
56 回転マス
61 マスダンパ
65b ナット
66 回転マス

Claims (2)

  1. 構造物を含む系内の第1部位及び第2部位の間に設けられ、当該構造物の振動を抑制するための構造物の振動抑制装置であって、
    前記第1及び第2部位の一方に連結された筒状の本体部、ねじ軸、当該ねじ軸にボールを介して回転可能に螺合するナット、及び、回転可能な回転マスを有し、前記ねじ軸及び前記ナットの一方である第1ボールねじ部材が前記本体部に対して軸線方向に移動可能かつ回転不能に設けられ、前記ねじ軸及び前記ナットの他方である第2ボールねじ部材が前記本体部に対して前記軸線方向に移動不能かつ回転可能に設けられるとともに、前記回転マスが前記第2ボールねじ部材に連結されたマスダンパと、
    前記本体部に一体に設けられた第1滑車と、
    前記第1及び第2部位の他方に連結された第2滑車と、
    前記第1ボールねじ部材に一端部が連結され、前記第1及び第2滑車に巻き回されるとともに、前記第1及び第2部位の前記他方に他端部が連結されたケーブルと、を備え、
    前記構造物の振動時、前記ケーブルを介して伝達された前記第1部位と前記第2部位との間の相対変位が、前記ねじ軸及び前記ナットによって回転運動に変換された状態で前記回転マスに伝達されることを特徴とする構造物の振動抑制装置。
  2. 前記ケーブルは、前記第1ボールねじ部材から互いに反対方向に延びる一対のケーブルで構成されており、
    前記第1ボールねじ部材と一体に、かつ前記本体部内に摺動可能に設けられ、当該本体部内を第1室及び第2室に区画するとともに、前記第1及び第2室を互いに連通させる連通孔が形成されたピストンと、
    前記第1及び第2室に充填された粘性体と、をさらに備え、
    前記構造物の振動時、前記ピストンは、前記第1及び第2部位が所定方向に相対的に変位したときには、前記第1ボールねじ部材と一緒に前記一対のケーブルの一方で引っ張られることにより、前記本体部に対して前記第1室側に移動し、前記第1及び第2部位が前記所定方向と反対方向に相対的に変位したときには、前記第1ボールねじ部材と一緒に前記一対のケーブルの他方で引っ張られることにより、前記本体部に対して前記第2室側に移動することを特徴とする、請求項1に記載の構造物の振動抑制装置。
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