JP6213407B2 - モータのトルクを推定する方法及び装置 - Google Patents

モータのトルクを推定する方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、自動車の駆動モータのように、減磁が生じ易い永久磁石式の同期モータ(PMモータ)のトルクの推定に好適な方法及び装置に関する。
本発明に関し、減磁後のトルクを高精度で算出できるようにした方法が開示されている(特許文献1)。
そこには、原理上、減磁が生じた後の減磁曲線は実測できないことから、実験データから減磁関数を求め、その減磁関数を用いて減磁後のトルクを算出する方法が開示されている。
特開2013−165554号公報
一般的に、PMモータは、ロータの表面に永久磁石を張り付けたSPMモータとロータに永久磁石を埋設したIPMモータに大別できる。特に、後者は、磁石磁束に起因したマグネットトルクに加えて、磁気的な突極性により生じるリラクタンストルクを併用できることから、モータの高トルク化が図れる。特許文献1の方法では、ロータコアの永久磁石を空気層(非磁性体)に置き換え、その状態で磁界解析を行って算出される「リラクタンストルク」が、トルクの算出に際して用いられている。このリラクタンストルクの値は、減磁の前後において不変であり、同一なものとして扱われている。
また、特許文献1の方法では、減磁後の磁束を算出する際、永久磁石の有限要素法による各要素の磁束の総和と、永久磁石全体の磁束とが等価であるとみなされており、各要素間の磁気的な相互作用については考慮されていない。
ところが実際には、減磁後にはモータコア内部の磁束密度分布に変化が生じるため、リラクタンストルクも変化するうえ、各要素間の磁気的な相互作用が存在する。従って、特許文献1の方法は、精度の面で改善の余地がある。
特に近年では永久磁石の使用量が減少傾向にある。そのため、総トルクのうち、リラクタンストルクの占める割合が高まりつつあり、特許文献1の方法は、今後更に精度の低下が懸念される。
そこで本発明の目的は、モータのトルクが高精度に推定できる方法及び装置を提供することにある。
本発明に係わる方法は、ロータとステータとの対向部位に複数の永久磁石が配置されているモータのトルクを推定する方法である。この方法には、少なくとも基準温度と不可逆減磁が生じ得る対象温度とにおいて、前記永久磁石の減磁曲線を実測し、これら温度別の減磁曲線をデータ化して記憶する材料特性取得工程と、不可逆減磁率と、磁化及び残留磁束密度の比率と、の相関からなる前記永久磁石の減磁関数を取得し、当該減磁関数をデータ化して記憶する減磁関数取得工程と、前記減磁曲線及び前記減磁関数を用いてトルクを推定するトルク推定工程と、が含まれている。
そして、前記トルク推定工程には、有限要素法による磁場解析により、前記永久磁石に設定される複数の要素の各々について、前記対象温度における減磁曲線上の動作点の位置データを、前記ステータに対する前記ロータの回転角度ごとに算出する動作点情報取得ステップと、算出された前記動作点の位置データに基づいて、前記要素の各々において磁化の最小値を取得し、当該磁化の最小値を前記減磁関数に代入することにより、前記不可逆減磁率を前記要素ごとに算出する要素別減磁率算出ステップと、記憶した前記基準温度の減磁曲線に、前記不可逆減磁率を適用することにより、減磁後の減磁曲線を取得する減磁後減磁曲線取得ステップと、前記減磁後の減磁曲線を用いた有限要素法による磁場解析により、トルクを算出する減磁後トルク算出ステップと、が含まれている。
すなわち、この方法によれば、実測される減磁曲線と減磁関数とを用いて、不可逆減磁率を求め、その不可逆減磁率に基づいて取得される減磁後の減磁曲線を用いた有限要素法による磁場解析によってトルクが算出される。
従って、この方法によれば、減磁後の減磁曲線を用いた磁場解析によって、トルクが算出されることから、永久磁石の減磁に起因したモータコア内部の磁束密度分布の変化に加えて、磁石の各要素間の磁気的な相互作用の影響も考慮されるため、リラクタンストルクを含む、モータの総トルクを高精度に推定することが可能である。
前記減磁関数取得工程は、前記永久磁石の試験片を用いた熱減磁試験により、温度別の不可逆減磁率を実測する実測ステップと、各温度時の前記試験片の磁化を、有限要素法による磁場解析によって算出する解析ステップと、を含むようにするのが好ましい。
そうすれば、試験片の磁化の算出誤差が、近似式により算出した試験片の平均パーミアンス係数と減磁曲線を用いるのに比べて小さくなるため、より高精度な減磁関数を取得することができる。
特に、前記モータが、弱め磁束制御が行われるモータである場合には、前記動作点情報取得ステップにおいて、前記動作点の位置データの算出に、前記弱め磁束制御時の電流及び電流位相条件を入力条件として与えるのが好ましい。
そうすれば、熱負荷による不可逆減磁だけでなく、外部磁界による不可逆減磁も考慮してトルクの推定ができるので、減磁後のトルクを、よりいっそう精度高く推定できる。
更に、前記モータが自動車の駆動モータである場合には、前記永久磁石はNd−Fe−B系焼結磁石とするのが好ましい。
Nd−Fe−B系焼結磁石であれば、自動車の駆動モータに適したモータ特性を得ることができるが、その一方で温度の影響で減磁が生じ易いという特質があり、減磁を考慮しないと、トルクを適切に推定できないからである。
この場合、前記対象温度は、−40〜200℃の範囲内で選定するのが好ましい。
自動車の駆動モータにおいて、減磁が生じ得る実用的な温度範囲であるため、自動車の駆動モータのトルクを適切に評価することができる。
このようなトルクの推定方法を用いることにより、モータのトルクの推定が可能な装置が容易に実現できる。具体的には、その装置が、前記減磁曲線及び前記減磁関数の各データと、前記各データを用いて減磁解析を実行する減磁解析プログラムと、前記磁場解析を実行する磁場解析プログラムと、を記憶する記憶部と、前記記憶部と協働して前記トルク推定工程の各ステップの演算処理を行う演算部と、を備えるようにすればよい。
そうすれば、この装置を用いて簡単に高精度なトルクの評価ができるので、利便性に優れる。
本発明の方法等によれば、モータのトルクが高精度に推定できるようになる。
磁界等を説明するための図である。 ヒステリシスカーブを説明するための図である。 減磁曲線や動作点等を説明するための図である。 本発明が対象とするモータの一例を示す概略図(断面図)である。 本実施形態のトルク推定装置の一例を示す概略図である。 本実施形態のトルク推定方法の流れを示すフローチャートである。 減磁関数の一例を示すグラフである。 動作点情報取得ステップでの磁場解析を説明するための概念図である。 要素別減磁率算出ステップを説明するための図である。 減磁後減磁曲線取得ステップを説明するための図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<本発明の関連技術>
(磁界等)
図1に、板状の永久磁石の断面を示す。この永久磁石は、厚み方向に着磁されており、永久磁石の周囲には、N極からS極に向かう磁界(磁場)が形成されている。ここでは永久磁石が着磁される方向の磁界の強さを記号Hで表す。
磁界は、永久磁石の外部だけでなく内部にも形成される。この永久磁石の内部の磁界は、永久磁石を減磁させる方向に働くため、反磁界と呼ばれる。反磁界の強さ(Hd)は、永久磁石の形状や寸法、永久磁石の部位によっても異なる。通常、永久磁石の厚みが薄くなるほど、反磁界の強さHdは大きくなる。
図中の矢印線は、磁力線の束である磁束線を表している。磁束は、磁界の流束であり、ここでは永久磁石の表面における単位面積当たりの磁束の密度(磁束密度)を記号Bで表す。
磁化(磁気分極)は、永久磁石それ自体による単位面積当たりの磁束であり、記号Jで表す。磁束密度Bは、磁化Jに外部磁界の強さが加わったものであり、B=μ・H+J(μ:真空の透磁率)の関係がある。
(ヒステリシスカーブ)
図2に、磁性体のヒステリシスカーブ(磁気履歴曲線)を模式的に示す。実線が、縦軸を磁束密度Bで表したB−H曲線であり、破線は、そのB−H曲線を換算して得られる、縦軸を磁化Jで表したJ−H曲線である。ヒステリシスカーブは、直流磁化特性測定装置(B−Hトレーサー)等を用いて測定することができる。
具体的には、磁性体に磁界を加えて、磁気飽和させる(図中のa点)。その状態から磁界を減少させていくと、磁界の強さHが0になっても磁化Jは、残存する(図中のb点)。このときの磁化Jを残留磁束密度といい、記号Brで表す。更に、磁界を減少させていくと、磁化は、0になる(図中のc点)。このときの磁界の強さHを保磁力といい、記号Hcjで表す。
更に磁界の強さHを逆向きに増加させていくと、逆向きに磁気飽和し(図中のd点)、その状態から、磁界の方向を反転して磁界の強さHを増加させることで、当初と同様に磁気飽和してヒステリシスカーブが得られる。このヒステリシスカーブのうち、特に、第2象限の部分を減磁曲線と呼ぶ。
(減磁曲線)
図3に、減磁曲線(B−H曲線)を模式的に示す。減磁曲線は温度によって変化し、C1は常温の減磁曲線を、C2は100℃以上の高温の減磁曲線を、それぞれ表している。L1,L2は、傾きが、反磁界Hdと磁束密度Bとの比(B/Hd)である動作線を表している。これら動作線L1,L2の傾きは、磁石の形状や寸法等によって定まり、パーミアンス係数と呼ばれる。
動作線L1,L2と減磁曲線C1,C2との交点は、動作点Pwと呼ばれる。この動作点Pwは、永久磁石の減磁を評価するうえで重要な要素となる。
すなわち、減磁曲線には、減磁曲線C2に示すように、磁束密度Bの減少が急に大きくなる変曲点(クニック点Kという)があり、このクニック点Kに対する動作点Pwの位置により、可逆減磁か不可逆減磁かが判定されるからである。
具体的には、動作線L1を見た場合、常温からC2の温度に加熱すると、その磁束密度Bは、B1からB2に減少する。C1及びC2のいずれにおいても、動作点Pwはクニック点Kの上側に位置しているため、常温に戻れば、磁束密度BもほぼB1に回復する(可逆減磁)。
ところが、動作線L2のように、C2において動作点Pwがクニック点の下側に入り込むと、常温に戻っても、磁束密度Bは元通りに回復せず、一定の不可逆な減磁が生じてしまう(不可逆減磁)。
不可逆減磁は、減磁量が増加する方向にのみ進む。すなわち、減磁が生じた後に、それよりも減磁量の小さい減磁が生じても減磁は進まないが、それよりも減磁量が大きい減磁が生じると、その減磁量の増加分だけ減磁が進む。
このような不可逆減磁(以下、単に減磁ともいう)は、加熱だけでなく冷却でも生じ得るし、また、逆向きに作用する外部磁界によっても生じ得る。
モータの磁極を構成している永久磁石に減磁が生じると、トルクも減少する。従って、減磁が生じ得る条件の下で用いられるモータの場合、使用開始後のトルクは、使用開始前のトルクよりも減少するため、設計時に、実効のあるトルクを高精度に推定するためには、その推定に減磁の影響を反映させることが必要になる。
<本発明が対象とするモータ>
本発明では、減磁が生じ得る永久磁石式のモータ(PMモータ)を主たる対象とする。
図4に、そのようなモータの一例を示す(モータ50)。このモータ50は、埋込磁石型のインナーロータ型モータであり、シャフト51やロータ52、ステータ53、これらを収容するモータケース54などで構成されている。
ロータ52は、主として、電磁鋼板等の軟磁性材料を積層して円柱状に形成されたロータコア52aと、複数の板状の永久磁石55とを有している。ロータコア52aは、モータケース54に回転自在に軸支されたシャフト51に、中心を一致させた状態で固定されている。永久磁石55は、ロータ52の外周部分に、回転軸の方向に延びるように埋設されており、等間隔でN極とS極とが周方向に交互に並ぶように配置されている。
ロータ52の外周面と僅かな隙間を隔てて対向するステータ53の内周部分には、複数のティース53aが等間隔で突出しており、これらティース53aの各々にワイヤを巻き付けることによって複数のコイル56が形成されている。これらコイル56に、制御された電流が印加されることにより、ロータ52が回転し、シャフト51を通じてその回転力が出力される。
本発明の場合、ロータの磁極に永久磁石が用いられているモータであれば、その型は限定されない。永久磁石の個数や形状、配置、あるいはコイルの個数、ワイヤの巻き方など、モータの構造も特に限定されない。
本発明は、特に自動車の駆動モータに好適である。
すなわち、自動車の駆動モータは、高トルク低回転から低トルク高回転まで、幅広い駆動条件に対応したモータ特性が求められる。更に、用いられる永久磁石は、例えば−40℃〜200℃の幅広い温度条件に耐え得る耐熱性が求められ、減磁の影響が大きいからである。
例えば、永久磁石としては、Nd−Fe−B系焼結磁石が好ましい。Nd−Fe−B系焼結磁石の場合、高い残留磁束密度Brが得られるため、自動車の駆動モータに適したモータ特性を得ることができる。その一方で、Nd−Fe−B系焼結磁石は、温度の影響を受け易く、減磁を生じ易いという特質があり、トルクの推定精度が低下し易い。
それに対し、本発明の方法や装置であれば、減磁の影響を適切に反映させることができるので、ロータの永久磁石がNd−Fe−B系焼結磁石であっても、トルクを高精度で推定することができる。
その場合、永久磁石の保磁力Hcjは、20〜35kOeの範囲内であるのが好ましい。保磁力Hcjが、この範囲内にあれば、減磁が生じた場合でも、自動車の駆動モータに要求されるモータ特性を維持できるし、本発明の方法等が効果的に適用できる。
更に、弱め磁束制御がそのモータで行われる場合に、より効果的である。
ロータ側の永久磁石で発生する磁束は一定である。そのため、モータの回転数の上昇に伴い、その磁束によって生じる逆起電圧は増加する。そして、この逆起電圧が、ステータ側のコイルに印加される電圧と等しくなると、電流が流れなくなってそれ以上に回転数が上がらなくなるという現象が発生する。
弱め磁束制御では、この逆起電圧の増加を抑制するために、コイルへ供給する電流の位相を進角させ、ステータ側から永久磁石に逆向きの磁界を作用させる。それにより、モータは、より高い回転数まで上げられるようになる。
ところが、この場合、永久磁石に逆向きの磁界(外部磁界)が作用することで、永久磁石に減磁が生じ得る。従って、対象とされるモータで弱め磁束制御が行われる場合には、温度だけでなく、この外部磁界による減磁の影響も考慮する必要がある。
それに対し、本発明の方法では、この外部磁界による減磁の影響も反映されるようになっているため、弱め磁束制御が行われるモータであっても、トルクを高精度に推定することができる。
<トルク推定装置>
図5に、本実施形態のトルク推定装置の一例を示す(以下、単に装置1ともいう)。この装置1のハードウエアは、いわゆるコンピュータシステムであり、CPU2(演算部に相当)、ROM、RAM、HDD等のメモリ3(記憶部に相当)、ディスプレイ4(表示部)、キーボード5やマウス6等(入力部)などで構成されている。
メモリ3には、オペレーティングシステム、磁場解析プログラム、減磁解析プログラム等のソフトウエアが記憶されていて、それぞれ実行可能となっている。これらソフトウエアを記録したディスク等の記憶媒体を装置1に取り込むことにより、一時的にメモリ3を構成してもよい。磁場解析プログラムは、例えば、株式会社JSOL製の「JMAG」等、公知のソフトウエアが利用できる。
メモリ3には、有限要素モデルのデータ、減磁曲線のデータ、減磁関数のデータなどの各種データや、各プログラムによって作成される計算結果も記憶される。
オペレーティングシステムを起動して、磁場解析プログラム及び減磁解析プログラムを実行することで、このコンピュータシステムは、トルク推定装置1としての機能を発揮する。それにより、CPU2は、キーボード5等を通じて入力される指示や情報に基づき、次に説明するトルク推定方法に基づいた各工程及び各ステップの演算処理を、メモリ3と協働して実行する。
<トルク推定方法>
図6のフローチャートを参照しながら、トルク推定装置1により、モータのトルクを推定する方法について説明する。このトルク推定方法は、減磁を適切に反映することで、モータのトルクが高精度に推定できるように工夫されている。なお、便宜上、説明では2次元解析モデルを用いるが、3次元解析モデルにも適用可能である。
このトルク推定方法の主体は、材料特性取得工程10、減磁関数取得工程20、及びトルク推定工程30で構成されている。これらのうち、材料特性取得工程10及び減磁関数取得工程20は、トルク推定工程30に先立って行われ、これら工程で得られるデータは、トルク推定工程30が行われる前に、メモリ3に記憶される。
(材料特性取得工程)
本工程では、少なくとも基準温度と対象温度とにおいて、解析対象とされるモータの永久磁石(以下、単に永久磁石ともいう)の減磁曲線を実測し、これら温度別の減磁曲線をデータ化して記憶する処理が行われる。
基準温度は、永久磁石の平常時の温度であり、通常は、常温(20±15℃)である。対象温度は、永久磁石が達し得る、基準温度から最も離れた温度であり、通常は、減磁が生じ得る高温度である。
減磁曲線は、各温度でのヒステリシスカーブを実測することによって得られる。そうして得られた減磁曲線は、座標上の点データの集合体として、磁場解析プログラム及び減磁解析プログラムが利用可能なデータに変換され、メモリ3に記憶される。
減磁曲線は、基準温度と対象温度だけでなく、複数の温度で実測し、データ化してメモリ3に記憶しておくのが好ましい。そうすれば、これら温度別の減磁曲線の中から必要に応じて利用できるので、汎用性に優れる。
更には、素材が異なる複数の永久磁石について、これら減磁曲線をデータ化して記憶しておくのが好ましい。そうすれば、永久磁石の素材が変わっても直ぐに対応できるので、よりいっそう汎用性に優れる。
(減磁関数取得工程)
本工程では、磁化J及び残留磁束密度Brの比率と、不可逆減磁率と、の相関からなる永久磁石の減磁関数を取得し、その減磁関数をデータ化して記憶する処理が行われる。
減磁関数を取得するために、事前に予備的実験が行われる。予備的実験は、主に実測ステップ21と解析ステップ22とで構成されている。
実測ステップ21では、試験片を用いた熱負荷を加える熱減磁試験により、温度別の不可逆減磁率が実測される。具体的には、用いられる試験片は、永久磁石と同一の磁性体からなる。
本ステップでは、まず最初に、各試験片の室温での磁束量(加熱前磁束量)が測定される。そして、これら試験片を、それぞれ異なる所定の温度まで加熱して熱負荷を十分与え、その後、再度室温に戻して磁束量(加熱後磁束量)が測定される。
そうして得られる各試験片の加熱前磁束量と加熱後磁束量との差から、各試験片の減磁量を算出し、加熱前磁束量に対するこの減磁量の比から不可逆減磁率(以下、単に減磁率ともいう)を取得する。
また、これと併せて、室温と、試験片が加熱される所定の温度の各温度での減磁曲線も測定される。なお、これら減磁曲線のデータがメモリ3に既に記憶されている場合には、そのデータが利用できる。
解析ステップ22では、各温度時の試験片の磁化Jが、有限要素法による磁場解析によって算出される。なお、ここでの磁場解析は、公知の方法を用いることができるため、その具体的な説明は省略する。
本ステップでは、有限要素法による磁場解析を用いて各温度時の試験片の磁化Jを算出するため、近似式により算出した試験片の平均パーミアンス係数と減磁曲線を用いて算出する場合よりも、算出精度が高くなる。
そうして、磁化Jと、これに対応した加熱温度での減磁曲線の残留磁束密度Brとから、これらの比率である磁化パラメータ(J/Br)を取得する。
図7に、取得した磁化パラメータと、これに対応した加熱温度での減磁率との関係を表したグラフの一例を示す。これらの間には、高度な1次の相関関係が認められ、これら両者を変数として1次方程式が表せる(減磁関数)。この減磁関数をデータ化し、メモリ3に記憶する。
(トルク推定工程)
本工程では、取得した減磁曲線及び減磁関数を用いてトルクの推定が行われる。トルク推定工程30は、主に、動作点情報取得ステップ31、要素別減磁率算出ステップ32、減磁後減磁曲線取得ステップ33、及び減磁後トルク算出ステップ34で構成されている。
(動作点情報取得ステップ)
本ステップでは、有限要素法による磁場解析により、永久磁石に設定される複数の要素の各々について、対象温度、制御条件(電流条件)を入力して、その際の動作点Pwの位置データを、ロータの回転角度ごとに算出する処理が行われる。
具体的には、最初に、ロータコアの材質や形状、永久磁石の形状や配置、コイルの巻数、モータの駆動条件、ロータの回転角度、分割要素数など、磁場解析に必要とされる有限要素モデルのデータを、キーボード5等を通じて入力する。
そして、磁場解析プログラムに、対象温度における動作点Pwの位置データを算出するように指示する。そうすると、CPU2により、断面が複数の要素(メッシュ)で構成された仮想のモータが設定され、ディスプレイ4に表示される。この仮想のモータにおいて、ロータをステータに対して所定の角度づつ回転させながら、磁場解析が行われる。
なお、モータの場合、磁界が周期的に変化するため、モータの全周に対して解析を行う必要はない。1周期分の電気角の範囲で解析するのが効率的である。
図8に、本ステップで行われる処理の概念図を示す。図8では、便宜上、永久磁石だけを複数の要素s1,・・・で表してある。まず、磁場解析により、永久磁石の各要素s1,・・・について初期位置での動作点Pwの位置データが算出される。
図8では、初期位置の永久磁石における各要素s1,・・・のうち、要素s1とsnについて、動作点Pw1,Pwnが取得されるイメージを例示している。
次に、設定された所定角度θだけ、ロータが回転される。その回転角度においても、初期位置の場合と同様にして、各要素s1,・・・の動作点Pwの位置データが取得される。図8では、その回転角度における各要素s1,・・・のうち、要素s1’について、動作点Pw1’が取得されるイメージを例示している。
以降、この処理が繰り返されることにより、各要素s1,・・・について、対象温度における動作点Pwの位置データが、回転角度ごとに取得される。
(要素別減磁率算出ステップ)
本ステップでは、動作点情報取得ステップ31で算出された動作点Pwの位置データに基づいて、各要素での磁化Jの最小値を取得し、これら磁化Jの最小値を減磁関数に代入することにより、減磁率の最大値を要素ごとに算出する処理が行われる。
図9に、永久磁石の対象温度におけるJ−H曲線を示す。J−H曲線は、B−H曲線のデータを換算することによって得られる。
動作点情報取得ステップ31において、要素ごとに、各回転角度の動作点Pwの位置データ(対象温度におけるB−H曲線上に位置している)が取得されている。ここでは、まず、要素ごとに、各回転角度の動作点Pwの位置データが磁化Jの位置データに換算され、換算された位置データがJ−H曲線上にプロットされる。図9に示す複数の白丸は、プロットされたこれらの点を表している。
そして、これら点のうち、最も磁化Jが小さい点が特定される(Jd)。このときの磁化Jdと、残留磁束密度Brとから、磁化Jパラメータ(Jd/Br)が算出される。算出された磁化Jパラメータ(Jd/Br)を減磁関数に代入することで、減磁率の最大値(回転角度の中で最も大きい減磁率)が算出される。このような処理が要素ごとに行われ、各要素の減磁率が算出される。
(減磁後減磁曲線取得ステップ)
本ステップでは、記憶した基準温度の減磁曲線に、算出された減磁率を適用することにより、減磁後の減磁曲線を取得する処理が行われる。
図10に、永久磁石の、基準温度におけるJ−H曲線Csや、対象温度におけるJ−H曲線Ctを示す。基準温度のJ−H曲線Csを構成している各座標データのうち、縦軸の磁化Jの値に対して、各要素の減磁率を適用することにより、基準温度における減磁後のJ−H曲線Cs’を取得し、メモリ3に記憶する。
(減磁後トルク算出ステップ)
減磁後減磁曲線取得ステップ33において、要素ごとに、基準温度における減磁後のJ−H曲線Cs’が得られたことから、本ステップでは、この減磁後の減磁曲線Cs’を用いた有限要素法による磁場解析により、トルクを算出する処理が行われる。
具体的には、各要素の減磁後のJ−H曲線Cs’のデータが、減磁後のB−H曲線に換算される。そうして得られる各要素の減磁後のB−H曲線を用い、改めて有限要素法による磁場解析が行われ、減磁後のトルクが算出される。
従って、このトルクを推定する方法や装置1によれば、熱負荷や外部磁界の影響によって不可逆減磁が生じたモータのトルクを高精度に推定できるようになるので、設計段階においてモータ性能を適切に判断することが可能になる。
その結果、安全を見越した過度な設計によるコストアップが抑制できるなど、優れた効果が得られる。
1 トルク推定装置
10 材料特性取得工程
20 減磁関数取得工程
30 トルク推定工程
50 モータ
55 永久磁石

Claims (5)

  1. ロータとステータとの対向部位に複数の永久磁石が配置されているモータのトルクを推定する方法であって、
    少なくとも基準温度と不可逆減磁が生じ得る対象温度とにおいて、前記永久磁石の減磁曲線を実測し、これら温度別の減磁曲線をデータ化して記憶する材料特性取得工程と、
    不可逆減磁率と、磁化及び残留磁束密度の比率と、の相関からなる前記永久磁石の減磁関数を取得し、当該減磁関数をデータ化して記憶する減磁関数取得工程と、
    前記減磁曲線及び前記減磁関数を用いてトルクを推定するトルク推定工程と、
    を含み、
    前記トルク推定工程は、
    有限要素法による磁場解析により、前記永久磁石に設定される複数の要素の各々について、前記対象温度における減磁曲線上の動作点の位置データを、前記ステータに対する前記ロータの回転角度ごとに算出する動作点情報取得ステップと、
    算出された前記動作点の位置データに基づいて、前記要素の各々において磁化の最小値を取得し、当該磁化の最小値を前記減磁関数に代入することにより、前記不可逆減磁率を前記要素ごとに算出する要素別減磁率算出ステップと、
    記憶した前記基準温度の減磁曲線に、前記不可逆減磁率を適用することにより、減磁後の減磁曲線を取得する減磁後減磁曲線取得ステップと、
    前記減磁後の減磁曲線を用いた有限要素法による磁場解析により、トルクを算出する減磁後トルク算出ステップと、
    を含み、
    前記減磁関数取得工程が、
    前記永久磁石の試験片を用いた熱減磁試験により、温度別の不可逆減磁率を実測する実測ステップと、
    各温度時の前記試験片の磁化を、有限要素法による磁場解析によって算出する解析ステップと、
    を含むトルクの推定方法。
  2. 請求項1に記載のトルクの推定方法において、
    前記モータは、弱め磁束制御が行われるモータであり、
    前記動作点情報取得ステップにおいて、
    前記動作点の位置データの算出に、前記弱め磁束制御によって前記永久磁石に外部から逆向きに作用する外部磁界が適用されているトルクの推定方法。
  3. 請求項2に記載のトルクの推定方法において、
    前記モータは、自動車の駆動モータであり、
    前記永久磁石がNd−Fe−B系焼結磁石であるトルクの推定方法。
  4. 請求項3に記載のトルクの推定方法において、
    前記対象温度が−40〜200℃の範囲内にあるトルクの推定方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のトルクの推定方法を用いることにより、前記モータのトルクの推定が可能な装置であって、
    前記減磁曲線及び前記減磁関数の各データと、
    前記各データを用いて減磁解析を実行する減磁解析プログラムと、
    前記磁場解析を実行する磁場解析プログラムと、
    を記憶する記憶部と、
    前記記憶部と協働して前記トルク推定工程の各ステップの演算処理を行う演算部と、
    を備える装置。
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