JP6047010B2 - 光拡散フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
特に、入射光を等方性光拡散させるためのカラム構造をフィルム内に有する光拡散フィルムを、光学特性における筋ムラの発生を効果的に抑制しつつ、容易に得ることができる光拡散フィルムの製造方法に関する。
また、このような光拡散フィルムは、所定の光拡散フィルム用組成物からなる塗布層に対して、平行度の高い活性エネルギー線を照射することで得ることができるが、平行度の高い活性エネルギー線の光源としては、通常、大がかりで高価な平行光源が用いられており、製造効率やコストの面で問題が生じていた。
すなわち、特許文献1には、光硬化性化合物を含む組成物をシート状に設け、このシートに所定の方向Pから平行光線を照射して組成物を硬化させて、シート内部に方向Pに平行に延在している複数の棒状硬化領域の集合体を形成せしめる異方性拡散媒体(光拡散フィルム)の製造方法であって、線状光源とシートとの間に、方向Pに平行に配置した筒状物の集合を介在させ、この筒状物を通して光照射を行うことを特徴とする異方性拡散媒体(光拡散フィルム)の製造方法が開示されている。
また、かかる筋ムラを抑制すべく、例えば、筒状物の集合と光硬化性化合物を含む組成物との間隔を広げて筒状物による影をぼやかしたり、筒状物の厚さを薄くしたりした場合であっても、光硬化性化合物を含む組成物に対する活性エネルギー線の照度が過度に低下したり、筒状物が過度に加熱されてひずみが生じたりすると言った問題が生じてしまう。
さらに、仮に、筒状物の集合体と、光硬化性化合物を含む組成物とを、相対的に動かすことにより筒状物の影の影響を抑制しようとすると、重量の大きい筒状物の集合体を連続的、あるいは断続的に動かすには非常に大掛かりな設備が必要となるばかりか、動かす際に発生する振動が、得られる光拡散フィルムの精度に悪影響を及ぼすと言う問題が生じてしまう。
したがって、線状光源を用いた場合であっても、光学特性における筋ムラの発生を効果的に抑制することができる光拡散フィルムの製造方法が求められていた。
すなわち、本発明の目的は、入射光を等方性光拡散させるためのカラム構造をフィルム内に有する光拡散フィルムを、光学特性における筋ムラの発生を効果的に抑制しつつ、容易に得ることができる光拡散フィルムの製造方法を提供することにある。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)平行配置された複数の筒状部材の集合体から構成され、複数の筒状部材が上下端に開口部を有してなる照射光平行化部材を、線状光源と塗布層との間、かつ、線状光源からの活性エネルギー線の放射領域中に配置する工程であって、塗布層の上方から眺めた場合に、塗布層の移動方向と、塗布層の上方から照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線と、が為す鋭角θ1が10°以上の値となるように照射光平行化部材を配置する工程
(d)塗布層を移動させながら、当該塗布層に対し、線状光源からの活性エネルギー線を、照射光平行化部材を介して照射する工程
すなわち、本発明の光拡散フィルムの製造方法であれば、線状光源を用いて活性エネルギー線を照射する際に、線状光源と塗布層との間に所定の照射光平行化部材を介在させていることから、大がかりで高価な平行光源を用いることによる製造効率やコストの問題を回避し、容易に光拡散フィルムを製造することができる。
また、塗布層の上方から眺めた場合に、照射光平行化部材の配置角度を所定の範囲内の値としていることから、照射光平行化部材の影に起因した照度ムラを抑制し、ひいては得られる光拡散フィルムの光学特性における筋ムラを効果的に抑制することができる。
したがって、本発明の光拡散フィルムの製造方法であれば、入射光を等方性光拡散させるためのカラム構造をフィルム内に有する光拡散フィルムを、光学特性における筋ムラの発生を効果的に抑制しつつ、容易に得ることができる。
このように実施することにより、平行光への変換性能に関し、方位角方向における差を小さくすることができ、かつ、開口率を大きくして照射光平行化部材により発生する影の絶対量を減らすことができる。
このように実施することにより、線状光源からの照射光を、効率的に所定の平行度を有する平行光に変換することができる。
このように実施することにより、線状光源からの照射光を、より効率的に所定の平行度を有する平行光に変換することができる。
このように実施することにより、照射光平行化部材による影の影響を抑制しつつ、活性エネルギー線に起因した筒状部材のひずみについても効果的に抑制することができる。
このように実施することにより、照射光平行化部材による影の影響をより効果的に抑制しつつ、塗布層に対して十分量の活性エネルギー線を照射することができる。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)平行配置された複数の筒状部材の集合体から構成され、複数の筒状部材が上下端に開口部を有してなる照射光平行化部材を、線状光源と塗布層との間、かつ、線状光源からの活性エネルギー線の放射領域中に配置する工程であって、塗布層の上方から眺めた場合に、塗布層の移動方向と、塗布層の上方から照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線の全てと、が為す鋭角θ1が10°以上の値となるように照射光平行化部材を配置する(但し、筒状物の集合を円形に回転させること、および、線状光源と筒状物の集合を複数個直列に設置することを除く。)工程
(d)塗布層を移動させながら、当該塗布層に対し、線状光源からの活性エネルギー線を、照射光平行化部材を介して照射する工程
すなわち、本発明の光拡散フィルムの製造方法であれば、線状光源を用いて活性エネルギー線を照射する際に、線状光源と塗布層との間に所定の照射光平行化部材を介在させていることから、大がかりで高価な平行光源を用いることによる製造効率やコストの問題を回避し、容易に光拡散フィルムを製造することができる。
また、塗布層の上方から眺めた場合に、照射光平行化部材の配置角度を所定の範囲内の値としていることから、照射光平行化部材の影に起因した照度ムラを抑制し、ひいては得られる光拡散フィルムの光学特性における筋ムラを効果的に抑制することができる。
したがって、本発明の光拡散フィルムの製造方法であれば、入射光を等方性光拡散させるためのカラム構造をフィルム内に有する光拡散フィルムを、光学特性における筋ムラの発生を効果的に抑制しつつ、容易に得ることができる。
このように実施することにより、フィルム内においてカラム構造をより安定的に形成することができる。
なお、ここでいうピーク照度とは、塗布層表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。
このように実施することにより、照射光平行化部材の影に起因した照度ムラを、より効果的に抑制することができる。
このように実施することにより、フィルム内においてカラム構造をさらに安定的に形成することができる。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)平行配置された複数の筒状部材の集合体から構成され、複数の筒状部材が上下端に開口部を有してなる照射光平行化部材を、線状光源と塗布層との間、かつ、線状光源からの活性エネルギー線の放射領域中に配置する工程であって、塗布層の上方から眺めた場合に、塗布層の移動方向と、塗布層の上方から照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線と、が為す鋭角θ1が10°以上の値となるように照射光平行化部材を配置する工程
(d)塗布層を移動させながら、当該塗布層に対し、線状光源からの活性エネルギー線を、照射光平行化部材を介して照射する工程
以下、本発明の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明するが、かかる説明の理解を容易にするため、まず、光拡散フィルムにおける光拡散の基本原理について説明する。
最初に、図1〜2を用いて光拡散フィルムにおける光拡散の基本原理について説明する。
まず、図1(a)には、光拡散フィルム10の上面図(平面図)が示してあり、図1(b)には、図1(a)に示す光拡散フィルム10を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向に眺めた場合の光拡散フィルム10の断面図が示してある。
また、図2(a)には、光拡散フィルム10の全体図を示し、図2(b)には、図2(a)の光拡散フィルム10をX方向から見た場合の断面図を示す。
かかる図1(a)の平面図に示すように、光拡散フィルム10は、屈折率が相対的に高い柱状物12と、屈折率が相対的に低い領域14とからなるカラム構造13を有している。
また、図1(b)の断面図に示すように、光拡散フィルム10の垂直方向においては、屈折率が相対的に高い柱状物12と、屈折率が相対的に低い領域14は、それぞれ所定の幅を有して交互に配置された状態となっている。
すなわち、図1(b)に示すように、光拡散フィルム10に対する入射光の入射角が、カラム構造13の境界面13´に対し、平行から所定の角度範囲の値、つまり、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(52、54)は、カラム構造内の相対的に高屈折率の柱状物12の内部を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が光拡散フィルム10によって拡散され、拡散光(52´、54´)になると推定される。
一方、光拡散フィルム10に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、図1(b)に示すように、入射光56は、光拡散フィルムによって拡散されることなく、そのまま光拡散フィルム10を透過し、透過光56´になるものと推定される。
なお、本発明において、「光拡散入射角度領域」とは、光拡散フィルムに対し、点光源からの入射光の角度を変化させた場合に、拡散光を出光するのに対応する入射光の角度範囲を意味する。
また、かかる「光拡散入射角度領域」は、図2(a)に示すように、光拡散フィルムにおけるカラム構造の屈折率差や傾斜角等によって、その光拡散フィルムごとに決定される角度領域である。
また、図1〜図2に示すように、カラム構造13を有する光拡散フィルムは、通常、「等方性」を有することになる。
ここで、本発明において「等方性」とは、図2(a)に示すように、入射光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって変化しない性質を有することを意味する。
より具体的には、図2(a)に示すように、点光源の入射光による出射光の拡散具合は、フィルムと平行な面内への投影が円状になる。
なお、本発明においては、当該光拡散フィルムを適用する技術分野を考慮すると、「等方性」とは、必ずしも完全な円状の光の拡散具合のみを意味するものではなく、光の拡散具合が±10%程度のずれを有する略円状をも含む概念である。
また、本発明において、「光拡散角度領域」とは、光拡散フィルムに対して、入射光が最も拡散される角度に点光源を固定し、この状態で得られる拡散光の角度範囲を意味するものとする。
さらに、本発明において、「拡散光の開き角」とは、上述した「光拡散角度領域」の角度幅(°)であり、図2(b)に示すように、フィルムの断面を眺めた場合における拡散光の開き角θ3を意味するものとする。
したがって、得られた光拡散フィルムは、光を所定箇所に集中させる集光作用を有すると言うことができる。
なお、カラム構造内の柱状物12の内部における入射光の方向変化は、図1(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合の他、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
また、図1(a)および(b)では、相対的に屈折率が高い柱状物12と、相対的に屈折率が低い領域14と、の界面を簡単のために直線で表わしたが、実際には、界面は僅かに蛇行しており、それぞれの柱状物は分岐や消滅を伴った複雑な屈折率分布構造を形成している。
その結果、一様でない光学特性の分布が光拡散性を高めているものと推定される。
かかる工程は、所定の光拡散フィルム用組成物を準備する工程である。
より具体的には、屈折率が異なる少なくとも2つの重合性化合物、光重合開始剤および所望によりその他の添加剤を混合する工程である。
また、混合に際しては、室温下でそのまま撹拌してもよいが、均一性を向上させる観点からは、例えば、40〜80℃の加温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
また、塗工に適した所望の粘度となるように、希釈溶剤をさらに加えることも好ましい。
以下、光拡散フィルム用組成物について、より具体的に説明する。
(1)−1 種類
屈折率が異なる2つの重合性化合物のうち、屈折率が相対的に高い方の重合性化合物(以下、(A)成分と称する場合がある。)の種類は、特に限定されないが、その主成分を複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとすることが好ましい。
この理由は、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、(A)成分の重合速度を、屈折率が相対的に低い方の重合性化合物(以下、(B)成分と称する場合がある。)の重合速度よりも速くして、これらの成分間における重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率良く形成することができる。
また、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、単量体の段階では(B)成分と十分な相溶性を有しつつも、重合の過程において複数繋がった段階では(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、カラム構造をさらに効率よく形成することができるものと推定される。
さらに、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、カラム構造における(A)成分に由来した領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、後述する(B)成分の特性と相まって、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率的に得ることができる。
なお、「複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基部分に複数の芳香環を有する化合物を意味する。
また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味する。
また、カラム構造における(A)成分に由来した領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、所定以上の値に、より容易に調節することができる。
この理由は、かかる炭素数が4を超えた値となると、(A)成分の重合速度が低下したり、(A)成分に由来した領域の屈折率が低くなり過ぎたりして、カラム構造を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜3の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、光拡散フィルムを廃棄する際に、焼却によるダイオキシンの発生を防止でき、環境保護の観点から好ましいためである。
なお、従来のカラム構造を備えた光拡散フィルムにおいては、所定のカラム構造を得るにあたり、モノマー成分を高屈折率化する目的で、モノマー成分においてハロゲン置換が行われることが一般的であった。
この点、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物であれば、ハロゲン置換を行わない場合であっても、高い屈折率とすることができる。
したがって、本発明における光拡散フィルム用組成物を光硬化してなる光拡散フィルムであれば、ハロゲンを含まない場合であっても、良好な入射角度依存性を発揮することができる。
なお、「良好な入射角度依存性」とは、光拡散入射角度領域と、入射光が拡散されずにそのまま透過する非拡散入射角度領域との区別が、明確に制御されていることを意味する。
この理由は、一般式(2)で表わされる置換基の位置を、R1およびR10以外の位置とすることにより、光硬化させる前の段階において、(A)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止することができるためである。
さらに、光硬化させる前のモノマー段階で液状であり、希釈溶媒等を使用しなくとも、見掛け上(B)成分と均一に混合することができる。
これにより、光硬化の段階において、(A)成分および(B)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
さらに、同様の観点から、一般式(1)におけるR3、R5、R6およびR8のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが特に好ましい。
この理由は、繰り返し数mが10を超えた値となると、重合部位と、ビフェニル環とをつなぐオキシアルキレン鎖が長くなりすぎて、重合部位における(A)成分同士の重合を阻害する場合があるためである。
したがって、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、1〜4の整数とすることがより好ましく、1〜2の整数とすることが特に好ましい。
なお、同様の観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、通常1〜4の整数とすることが好ましい。
また、重合部位である重合性炭素−炭素二重結合の位置が、ビフェニル環に対して近すぎて、ビフェニル環が立体障害となり、(A)成分の重合速度が低下する場合をも考慮すると、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、2〜4の整数とすることがより好ましく、2〜3の整数とすることが特に好ましい。
また、(A)成分の分子量を、200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分の重合速度をさらに速くして、(A)成分および(B)成分の共重合性をより効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を、より効率的に形成することができる。
すなわち、(A)成分の分子量が200未満の値となると、立体障害により重合速度が低下して、(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなる場合があるためである。一方、(A)成分の分子量が2,500を超えた値となると、(B)成分との分子量の差が小さくなるのにともなって、(A)成分の重合速度が低下して(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなるものと推定され、その結果、カラム構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の分子量を、240〜1,500の範囲内の値とすることがより好ましく、260〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(A)成分の分子量は、分子の組成と、構成原子の原子量から得られる計算値から求めることができ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重量平均分子量として測定することもできる。
また、本発明における光拡散フィルム用組成物は、カラム構造における屈折率が相対的に高い領域を形成するモノマー成分として、(A)成分を含むことを特徴とするが、(A)成分は一成分で含まれることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、(A)成分に由来した領域、つまり屈折率が相対的に高い柱状物における屈折率のばらつきを効果的に抑制して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分における(B)成分に対する相溶性が低い場合、例えば、(A)成分がハロゲン系化合物等の場合、(A)成分を(B)成分に相溶させるための第3成分として、他の(A)成分(例えば、非ハロゲン系化合物等)を併用する場合がある。
しかしながら、この場合、かかる第3成分の影響により、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い領域における屈折率がばらついたり、低下し易くなったりすることがある。
その結果、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下し易くなったりする場合がある。
したがって、(B)成分との相溶性を有する高屈折率なモノマー成分を選択し、それを単独の(A)成分として用いることが好ましい。
なお、例えば、(A)成分としての式(3)で表わされるビフェニル化合物であれば、低粘度であることから、(B)成分との相溶性を有するため、単独の(A)成分として使用することができる。
また、(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、有効な光拡散角度領域を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(B)成分との見かけ上の相溶状態さえも形成困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の屈折率を、1.52〜1.62の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分の屈折率を意味する。
また、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
また、光拡散フィルム用組成物における(A)成分の含有量を、後述する相対的に屈折率が低い重合性化合物である(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、(A)成分に由来した柱状物の幅が過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における柱状物の長さが不十分になり、光拡散性を示さなくなる場合があるためである。一方、(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が多くなって、(A)成分に由来した柱状物の幅が過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における柱状物の長さが不十分になり、光拡散性を示さなくなる場合があるためである。
したがって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(2)−1 種類
屈折率が異なる2つの重合性化合物のうち、屈折率が相対的に低い方の重合性化合物((B)成分)の種類は、特に限定されず、その主成分として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特に、ウレタン(メタ)アクリレートとすることが好ましい。
この理由は、ウレタン(メタ)アクリレートであれば、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
したがって、以下においては、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートについて、主に説明する。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
なお、(B)成分には、ウレタン結合の繰り返し単位を有するオリゴマーも含むものとする。
このうち、(B1)成分であるイソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等を挙げることができる。
この理由は、脂環式ポリイソシアナートであれば、脂肪族ポリイソシアナートと比較して、立体配座等の関係で各イソシアナート基の反応速度に差を設けやすいためである。
これにより、(B1)成分が(B2)成分とのみ反応したり、(B1)成分が(B3)成分とのみ反応したりすることを抑制して、(B1)成分を、(B2)成分および(B3)成分と確実に反応させることができ、余分な副生成物の発生を防止することができる。
その結果、カラム構造における(B)成分に由来した領域、すなわち、低屈折率領域の屈折率のばらつきを効果的に抑制することができる。
さらに、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分の屈折率を小さくすることができることから、(A)成分の屈折率との差を大きくし、光拡散性をより確実に発現するとともに、光拡散角度領域内における拡散光の均一性の高いカラム構造をさらに効率よく形成することができる。
また、このような脂環式ポリイソシアナートの中でも、イソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
この理由は、脂環式ジイソシアナートであれば、(B2)成分および(B3)成分と定量的に反応し、単一の(B)成分を得ることができるためである。
このような脂環式ジイソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート(IPDI)を特に好ましく挙げることができる。
この理由は、2つのイソシアナート基の反応性に有効な差異を設けることができるためである。
この理由は、ポリプロピレングリコールであれば、得られるウレタン(メタ)アクリレートの粘度が低いことから無溶剤で取り扱うことができるためである。
また、ポリプロピレングリコールであれば、(B)成分を硬化させた際に、当該硬化物における良好なソフトセグメントとなり、光拡散フィルムのハンドリング性や実装性を、効果的に向上させることができるためである。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、主に、(B2)成分の重量平均分子量により調節することができる。ここで、(B2)成分の重量平均分子量は、通常、2,300〜19,500であり、好ましくは4,300〜14,300であり、特に好ましくは6,300〜12,300である。
また、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定のカラム構造をより効率的に形成する観点から、特に、ヒドロキシアルキルメタクリレートであることがより好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
このとき(B1)〜(B3)成分の配合割合を、モル比にて(B1)成分:(B2)成分:(B3)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(B2)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(B1)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに2つの(B1)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(B3)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
したがって、(B1)〜(B3)成分の配合割合を、モル比にて(B1)成分:(B2)成分:(B3)成分=1〜3:1:1〜3の割合とすることがより好ましく、2:1:2の割合とすることがさらに好ましい。
また、(B)成分の重量平均分子量を、3,000〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率良く形成することができる。
すなわち、(B)成分の重量平均分子量が3,000未満の値となると、(B)成分の重合速度が速くなって、(A)成分の重合速度に近くなり、(A)成分との共重合が生じ易くなる結果、カラム構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の重量平均分子量が20,000を超えた値となると、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を形成することが困難になったり、(A)成分との相溶性が過度に低下して、塗布段階で(A)成分が析出したりする場合があるためである。
したがって、(B)成分の重量平均分子量を、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがより好ましく、7,000〜13,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
また、(B)成分は、分子構造や重量平均分子量が異なる2種以上を併用してもよいが、カラム構造における(B)成分に由来した領域の屈折率のばらつきを抑制する観点からは、1種類のみを用いることが好ましい。
すなわち、(B)成分を複数用いた場合、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域における屈折率がばらついたり、高くなったりして、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下する場合があるためである。
また、(B)成分の屈折率を1.4〜1.55の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(A)成分との相溶性が極端に悪化し、カラム構造を形成することができないおそれがあるためである。一方、(B)成分の屈折率が1.55を超えた値となると、(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の屈折率を、1.45〜1.54の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.52の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(B)成分の屈折率を意味する。
そして、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
この理由は、かかる屈折率の差を所定の範囲内の値とすることにより、光の透過と拡散におけるより良好な入射角度依存性、およびより広い光拡散入射角度領域を有する光拡散フィルムを得ることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、光拡散における開き角が過度に狭くなる場合があるためである。一方、かかる屈折率の差が過度に大きな値となると、(A)成分と(B)成分の相溶性が悪化しすぎて、カラム構造を形成できないおそれがあるためである。
したがって、(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.05〜0.5の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう(A)成分および(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分および(B)成分の屈折率を意味する。
また、光拡散フィルム用組成物における(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量100重量%に対して、10〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の含有量が10重量%未満の値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が少なくなって、(B)成分に由来した領域が、(A)成分に由来した領域と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の含有量が80重量%を超えた値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が多くなって、(B)成分に由来した領域が、(A)成分に由来した領域と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量100重量%に対して、20〜70重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明における光拡散フィルム用組成物においては、所望により、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤を含有させることにより、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的にカラム構造を形成することができるためである。
ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
なお、光重合開始剤を含有させる場合の含有量としては、(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対し、0.2〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜15重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、上述した化合物以外の添加剤を添加することができる。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、このような添加剤の含有量は、一般に、(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
工程(b)は、図3(a)に示すように、光拡散フィルム用組成物を工程シート2に対して塗布し、塗布層1を形成する工程である。
工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。
このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。
なお、工程シートとしては、シート強度および表面平滑性に優れることから、プラスチックフィルムであることが好ましい。
また、後述する工程を考慮すると、工程シート2としては、熱や活性エネルギー線に対する寸法安定性に優れたプラスチックフィルムであることがさらに好ましい。
このようなプラスチックフィルムとしては、上述したもののうち、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムおよびポリイミド系フィルムが好ましく挙げられる。
かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
なお、工程シートの厚さは、通常、25〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、塗布層の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、カラム構造を、より一段と効率的に形成することができるためである。
すなわち、塗布層の膜厚が80μm未満の値となると、形成されるカラム構造の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、光拡散角度領域内における拡散光の強度の均一性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、塗布層の膜厚が700μmを超えた値となると、塗布層に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、塗布層の膜厚を100〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、120〜300μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
工程(c)は、図3(b)に示すように、平行配置された複数の筒状部材210aの集合体から構成され、複数の筒状部材210aの上下端に開口部212aを有してなる照射光平行化部材200aを、線状光源125と塗布層1との間、かつ、線状光源125からの活性エネルギー線の放射領域中に配置する工程であって、図4(a)に示すように、塗布層1の上方から眺めた場合に、塗布層1の移動方向Eと、塗布層1の上方から照射光平行化部材200aに対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線Ka(Ka1、Ka2、Ka3)と、が為す鋭角θ1a(θ1a1、θ1a2、θ1a3)が10°以上の値となるように照射光平行化部材200aを配置する工程である。
なお、図3(b)および図4(a)では、照射光平行化部材として、筒状部材における開口部の断面形状が正六角形である照射光平行化部材200aを一例として記載している。
以下においても、特に断りが無い限り、筒状部材における開口部の断面形状が正六角形である照射光平行化部材200aは、説明の便宜のために照射光平行化部材の一例として記載されるのであり、本発明の照射光平行化部材がこれに限定されることを意味しない。
また、「平行配置された複数の筒状部材の集合体」としたが、線状光源からの直接光を平行光に変換する観点から、実質的に平行であれば足りる。
また、「線状光源125と塗布層1との間、かつ、線状光源125からの活性エネルギー線の放射領域中」とは、例えば、図3(c)に示すように、線状光源125から鉛直下方に活性エネルギー線を照射する場合には、線状光源125の鉛直下方かつ塗布層1の鉛直上方になる。
この点、本発明においては、図3(b)に示すように、平行配置された複数の筒状部材210aの集合体から構成され、複数の筒状部材210aが上下端に開口部212aを有してなる照射光平行化部材200aを、線状光源125と塗布層1との間、かつ、線状光源からの活性エネルギー線50の放射領域中に配置した上で、線状光源125から活性エネルギー線を照射することにより、塗布層1に対して平行光を照射することを特徴としている。
すなわち、図3(c)に示すように、照射光平行化部材200aは、線状光源125による活性エネルギー線50のうち、光の向きがランダムとなる線状光源125の軸線方向と平行な方向において、複数の筒状部材210aを用いて光の向きを統一することにより、線状光源125による活性エネルギー線50を、容易に平行光60に変換することができる。
より具体的には、線状光源125による活性エネルギー線50のうち、複数の筒状部材210aに対する平行度が低い光は、筒状部材210aの内壁で吸収される。
したがって、複数の筒状部材210aに対する平行度が高い光、すなわち線状光源125の軸線方向と平行方向においても平行な光のみが、照射光平行化部材200aを通過することになり、結果として、線状光源125による活性エネルギー線50が、照射光平行化部材200aにより線状光源125の軸線方向と平行方向の活性エネルギー線のベクトルも、垂直方向の活性エネルギー線のベクトルも平行な光(平行光)60に変換されることになる。
なお、線状光源125による活性エネルギー線50のうち、線状光源125の軸線方向と垂直な成分においては、基本的にその進行方向は略平行に統一されているが、多少の広がりを有する場合がある。
この点、複数の筒状部材210aの集合体から構成される照射光平行化部材200aであれば、線状光源125の軸線方向と垂直な方向においても、光の向きを統一することができることから、線状光源125による活性エネルギー線50を、より平行度の高い平行光60に変換することができる。
この理由は、所定の照射光平行化部材をこのように配置することにより、照射光平行化部材の影に起因した照度ムラを抑制し、ひいては得られる光拡散フィルムの光学特性における筋ムラを効果的に抑制することができるためである。
すなわち、鋭角θ1(図4(a)の場合、θ1a1、θ1a2、θ1a3のいずれか1つの鋭角)が10°未満の値となると、例えば、図4(b)〜(d)に示すように、照射光の下方を移動する塗布層の表面において、最初から最後まで、その鋭角θ1が10°未満となる仮想直線Kaに相当する隔壁の連続体の影とはならない部分と、一時的に当該隔壁の連続体の影となる部分と、の2タイプの部分が生じ易くなり、これら2タイプの部分の間では明確な照度ムラが生じる。このことから、得られる光拡散フィルムの光学特性において筋ムラが発生し易くなる場合があるためである。なお、図4(b)〜(d)は、それぞれ塗布層1の移動方向Eと、仮想直線Ka1、Ka2、Ka3と、が為す鋭角θ1a1、θ1a2、θ1a3がそれぞれ0°となった場合を示している。
したがって、塗布層の上方から眺めた場合に、塗布層の移動方向と、塗布層の上方から照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線と、が為す鋭角θ1を20〜90°の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜70°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
すなわち、図4(a)は、θ1a1、θ1a2、θ1a3のいずれもが10°以上の値となるように照射光平行化部材200aを配置した場合を示しており、図4(b)、(c)、(d)は、それぞれθ1a1、θ1a2、θ1a3が0°となるように照射光平行化部材200aを配置した場合を示している。
まず、図4(a)の場合、塗布層1が移動することによって、塗布層1における個々の筒状部材210aの隔壁の影となる部分は、同一箇所に固定されることなく、常に変化し続けることが理解される。
したがって、塗布層1において、筒状部材210aの隔壁の影に起因した照射光の照度ムラを効果的に抑制し、ひいては得られる光拡散フィルムの光学特性における筋ムラを効果的に抑制することができる。
したがって、塗布層1において、隔壁の連続体の影に起因した照射光の照度ムラが顕著になり、ひいては得られる光拡散フィルムの光学特性に筋ムラが発生することになる。
なお、図4(b)では、θ1a1=0°の場合を例に挙げたが、θ1a1が10°未満の場合も、塗布層の移動速度の影響はあれ、θ1a1=0°の場合とほぼ同様の作用により、筋ムラが発生し易くなる。
より具体的には、照射光の下方を移動する塗布層の表面において、最初から最後まで仮想直線Ka1に相当する隔壁の連続体の影とならない部分と、一時的に当該隔壁の連続体の影となる部分と、の2タイプの部分が生じ易くなり、これら2タイプの部分の間において筋ムラが発生し易くなる。
さらに、図4(d)は、仮想直線をKa3と塗布層の移動方向とが為す鋭角θ1a3=0°としたほかは図4(b)と同様の場合を示しているが、図4(b)の場合と同様に筋ムラが発生し易くなることが理解される。
すなわち、本発明における仮想直線は、塗布層の上方から照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線と定義されるが、より具体的には、以下のように定義される。
すなわち、塗布層の上方から照射光平行化部材を眺めたときに、照射光平行化部材の表面において、
(i)開口部を横切ることなく、筒状部材の隔壁上のみを通る直線を引くことができる場合には、そのような直線を仮想直線とする。
(ii)(i)で規定される仮想直線を引くことができない場合には、筒状部材の隔壁の連続体を内側に包含しつつ一方向に延びる帯状部の中心線を第2の仮想直線とする。
ここで、直線la1は、開口部を横切ることなく、筒状部材の隔壁上のみを通る直線を引くことができることから、定義(i)に当てはまり、本発明の仮想直線に該当することが分かる。
また、直線la1に沿って塗布層を移動させた場合に、塗布層において照度ムラが発生し、ひいては筋ムラが発生することも自明である。
一方、図5(a)は、上述したように定義(i)によって仮想直線が規定される場合に該当するため、直線la2は本発明の仮想直線に該当しないことになる。
ここで、直線la2に沿って塗布層を移動させた場合に、帯状部raの内側に含まれる部分は、その中心線である直線la2に沿って蛇行する隔壁の下を、帯状部raの両側の境界部分の2倍の回数、通ることになる。
したがって、確かに、帯状部raの両側の境界部分の直下における照度は、その内側部分の直下における照度よりも大きくなるため、照度ムラが発生することになるが、帯状部raの両側の境界部分は、ほぼ幅を持たないため、その照度ムラは光拡散フィルムの光学特性における筋ムラの発生の原因とはならない。
ここで、直線lb1は、上述した定義(i)に当てはまることから、言うまでも無く本発明の仮想直線に該当することが分かる。
また、直線lb1に沿って塗布層を移動させた場合に、塗布層において照度ムラが発生し、ひいては筋ムラが発生することも自明である。
一方、直線lb2は、図5(a)におけるla2の場合と同様の理由から、本発明の第2の仮想直線に該当せず、直線lb2に沿って塗布層を移動させた場合であっても、光拡散フィルムの光学特性における筋ムラは発生しないことになる。
ここで、直線lcは、開口部を横切ることなく、筒状部材の隔壁上のみを通る直線を引くことができないことから、上述した定義(i)に当てはまらない。
したがって、筒状部材の隔壁の連続体を内側に包含しつつ一方向に延びる帯状部rcの中心線である直線lcは、定義(ii)に当てはまり、本発明の仮想直線に該当することになる。
ここで、直線lcに沿って塗布層を移動させた場合に、帯状部rcの内側に含まれる部分は、その中心線である直線lcに沿って蛇行する隔壁の下を、隣接する帯状部rc´の内側に含まれる部分の2倍の回数、通ることになる。
しかも、帯状部rc´の内側に含まれる部分における隔壁は、塗布層の移動方向と直交する方向であるため、隔壁の影の影響は隔壁の厚さ分のみの影響となるが、帯状部rcの内側における直線lcに沿って蛇行する隔壁ではそれぞれ隔壁の厚みの2/√3倍の影響となり、塗布層に対する影の影響が帯状部rc´の内側と比較して大きくなる。
さらに、帯状部rcの幅は、帯状部rc´の幅と比較して、無視できない大きさである。
その結果、帯状部rcの内側に含まれる部分と、帯状部rc´の内側に含まれる部分とでは、顕著な照度ムラが生じることになり、ひいては光拡散フィルムの光学特性における筋ムラが発生することになる。
この場合も、直線ldは、図5(c)におけるlcの場合と同様の理由から、本発明の仮想直線に該当することになる。
より具体的には、図6(a)〜(d)では、それぞれ開口部の断面形状が正六角形、正四角形、円、正三角形の場合が示してある。
まず、図6(a)から分かるように、開口部の断面形状が正六角形の場合には、上方から眺めた場合に、60°単位で角度が異なる3本の仮想直線Ka(Ka1、Ka2、Ka3)が存在することになる。
また、図6(b)から分かるように、開口部の断面形状が正四角形の場合には、上方から眺めた場合に、90°単位で角度が異なる2本の仮想直線Kb(Kb1、Kb2)が存在することになる。
また、図6(c)から分かるように、開口部の断面形状が円の場合には、上方から眺めた場合に、60°単位で角度が異なる3本の仮想直線Kc(Kc1、Kc2、Kc3)が存在することになる。
さらに、図6(d)から分かるように、開口部の断面形状が正三角形の場合には、上方から眺めた場合に、60°単位で角度が異なる3本の仮想直線Kd(Kd1、Kd2、Kd3)が存在することになる。
この理由は、開口部の断面形状をこのようにすることにより、平行光への変換性能に関し、方位角方向における差を小さくすることができ、かつ、開口率を大きくして照射光平行化部材により発生する影の絶対量を減らすことができるためである。
一方、図6(b)に示すように、開口部の断面形状を正四角形にすると、正六角形に比べて異方性が高いために、得られる光拡散フィルムの光拡散特性に異方性が生じる場合がある。
また、図6(c)に示すように、開口部の断面形状を円にすると、開口率が小さくなりやすく、あるいは、図7(d)に示すように、開口部の断面形状を正三角形にすると、正四角形の場合と同様に、得られる光拡散フィルムの光拡散特性に異方性が生じる場合がある。
この理由は、開口部の断面形状における外接円の直径L1をかかる範囲内の値とすることにより、線状光源からの照射光を、効率的に所定の平行度を有する平行光に変換することができるためである。
すなわち、開口部の断面形状における外接円の直径L1が1mm未満の値となると、照射光平行化部材を構成する筒状部材の数が過度に多くなって、線状光源からの照射光が塗布層1にまで到達するのを阻害する場合があるためである。一方、開口部の断面形状における外接円の直径L1が100mmを超えた値となると、線状光源からの照射光の進行方向を平行化する作用が過度に低下して、所定の平行度を有する平行光への変換が困難になる場合があるためである。
したがって、開口部の断面形状における外接円の直径L1を5〜75mmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜50mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図4(a)〜(d)等においては、筒状部材の数を所定の数として記載しているが、これは単なる例であり、実際の筒状部材の数は、活性エネルギー線の照射対象である塗布層の幅や、開口部の断面形状における外接円の直径L1といった諸条件によって決定されるものである。
なお、線状光源125の軸線方向から見た直径は、通常、5〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、筒状部材における隔壁の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、照射光平行化部材による影の影響を抑制しつつ、活性エネルギー線に起因した筒状部材のひずみについても効果的に抑制することができるためである。
すなわち、筒状部材における隔壁の厚さが0.1mm未満の値となると、活性エネルギー線に起因してひずみが生じ易くなる場合があるためである。一方、筒状部材における隔壁の厚さが5mmを超えた値となると、筒状部材の影の影響が大きくなって、塗布層における照度ムラを抑制することが困難になる場合があるためである。
したがって、筒状部材における隔壁の厚さを0.2〜3mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜2mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、照射光平行化部材における上下方向の長さL3をかかる範囲内の値とすることにより、線状光源からの照射光を、より効率的に所定の平行光に変換することができるためである。
すなわち、かかる長さL3が10mm未満の値となると、線状光源からの照射光が、照射光平行化部材の内部をそのまま透過し易くなり、照射光の進行方向を平行化する作用が過度に低下して、所定の平行度を有する平行光への変換が困難になる場合があるためである。一方、かかる長さL3が1000mmを超えた値となると、線状光源と、塗布層との距離が過度に大きくなって、塗布層の表面において、十分な照度を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、筒状部材における上下方向の長さL3を20〜750mmの範囲内の値とすることがより好ましく、50〜500mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図7は、図6(a)〜(d)に示す照射光平行化部材200(200a、200b、200c、200d)を、側面から眺めた側面図である。
この理由は、距離L4をかかる範囲内の値とすることにより、線状光源からの照射光を、さらに効率的に所定の平行度を有する平行光に変換しつつ、塗布層に対して十分量の活性エネルギー線を照射することができるためである。
すなわち、かかる距離L4が0.1mm未満の値となると、筒状部材が線状光源からの熱エネルギーを過度に吸収し易くなり、熱による照射光平行化部材の劣化を防止するための対策が必要となる場合があるためである。一方、かかる距離L4が1000mmを超えた値となると、線状光源と、塗布層との距離が過度に大きくなって、塗布層の表面において、十分な照度を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、照射光平行化部材の上端と、線状光源の下端と、の間の距離L4を0.5〜500mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜100mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、距離L5をかかる範囲内の値とすることにより、照射光平行化部材による影の影響をより効果的に抑制しつつ、塗布層に対して十分量の活性エネルギー線を照射することができるためである。
すなわち、かかる距離L5が0.1未満の値となると、筒状部材の影の影響が過度に大きくなるばかりか、照射時のわずかな振動により照射光平行化部材の下端と塗布層の表面とが接触してしまう場合があるためである。一方、かかる距離L5が1000mmを超えた値となると、筒状部材の影をぼやかすことができる反面、線状光源と、塗布層との距離が過度に大きくなって、塗布層の表面において、十分な照度を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、照射光平行化部材の下端と、塗布層の表面と、の間の距離L5を0.5〜900mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜800mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
工程(d)は、図3(c)に示すように、塗布層1を移動させながら、当該塗布層1に対し、線状光源125からの活性エネルギー線50を、照射光平行化部材200aを介して照射する工程である。これにより、フィルム内において、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成される。
より具体的には、図8(a)に示すように、線状の紫外線ランプ125に集光用のコールドミラー122が設けられた紫外線照射装置120(例えば、市販品であれば、アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX等)により、活性エネルギー線50を、照射光平行化部材200を介して、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、平行光60として照射する。
また、照射光平行化部材200と塗布層1との間には、遮光部材123a、bを設けることにより、平行光60の平行度をさらに向上させることが好ましい。
さらに、平行光60の平行度を向上させる観点からは、線状光源125と照射光平行化部材200との間に遮光板121を設け、活性エネルギー線50を線状光源125からの直接光のみとすることも好ましい。
なお、線状の紫外線ランプ125は、塗布層1の上方から眺めた場合に、塗布層1の移動方向と直交する方向を基準(0°)として、通常−80〜80°の範囲内の値、好ましくは−50〜50°の範囲内の値、特に好ましくは−30〜30°の範囲内の値となるように設置される。
この理由は、かかる照射角度が−80〜80°の範囲外の値となると、塗布層1の表面での反射等の影響が大きくなって、十分なカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
また、照射角度θ4は、1〜80°の幅(照射角度幅)θ4´を有していることが好ましい。
この理由は、かかる照射角度幅θ4´が1°未満の値となると、塗布層の移動速度を過度に低下させなければならず、製造効率が低下する場合があるためである。一方、かかる照射角度幅θ4´が80°を超えた値となると、照射光が分散し過ぎて、カラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、照射角度θ4の照射角度幅θ4´を2〜45°の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、照射角度幅θ4´を有する場合、その丁度中間位置の角度を照射角度θ4とする。
この理由は、活性エネルギー線照射におけるピーク照度をかかる範囲内の値とすることにより、フィルム内においてカラム構造をより安定的に形成することができるためである。
すなわち、かかるピーク照度が0.01mW/cm2未満の値となると、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかるピーク照度が50mW/cm2を超えた値となると、硬化速度が速くなり過ぎるものと推定され、カラム構造を明確に形成できない場合があるためである。
したがって、活性エネルギー線照射における塗布層の表面におけるピーク照度を0.05〜30mW/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜40mW/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、活性エネルギー線照射における積算光量をかかる範囲内の値とすることにより、フィルム内においてカラム構造をより安定的に形成することができるためである。
すなわち、かかる積算光量が1mJ/cm2未満の値となると、カラム構造を上方から下方に向けて十分に伸長させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる積算光量が1000mJ/cm2を超えた値となると、得られる光拡散フィルムに着色が生じる場合があるためである。
したがって、活性エネルギー線照射における塗布層の表面における積算光量を2〜500mJ/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜200mJ/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、照射光の平行度をかかる範囲内の値とすることにより、フィルム内においてカラム構造をさらに安定的に形成することができるためである。
すなわち、かかる平行度が10°を超えた値となると、カラム構造を形成することができない場合がある。
したがって、照射光平行化部材を介して平行化された照射光の平行度を5°以下の値とすることがより好ましく、2°以下の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、塗布層の移動速度をかかる範囲内の値とすることにより、照射光平行化部材の影に起因した照度ムラを、より効果的に抑制することができるためである。
すなわち、塗布層の移動速度が0.1m/分未満の値となると、照射光平行化部材の影の影響が大きくなり、照度ムラを十分に抑制することが困難になる場合があるためである。一方、塗布層の移動速度が10m/分を超えた値となると、塗布層の硬化、言い換えれば、カラム構造の形成よりも速く、塗布層に対する活性エネルギー線の照射角度が変化してしまい、カラム構造の形成が不十分になる場合があるためである。
したがって、塗布層の移動速度を0.2〜5m/分の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜3m/分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、活性エネルギー線透過シートをラミネートすることにより、酸素阻害の影響を効果的に抑制して、より効率的にカラム構造を形成することができるためである。
すなわち、塗布層の上面に対し、活性エネルギー線透過シートをラミネートすることで、塗布層の上面が酸素と接触することを安定的に防止しながら、当該シートを透過させて、効率的に塗布層に対して活性エネルギー線を照射することができるためである。
なお、活性エネルギー線透過シートとしては、工程(b)(塗布工程)において記載した工程シートのうち、活性エネルギー線が透過可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。
このときの活性エネルギー線は、塗布層を十分に硬化させることを目的とするものであるため、平行光ではなく、個々のベクトルが制御されていないランダムな光(散乱光)を用いることが好ましい。
本発明の製造方法により得られる光拡散フィルムは、フィルム内において、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を有することを特徴とする。
以下、本発明の製造方法により得られる光拡散フィルムについて具体的に説明する。
カラム構造において、屈折率が相対的に高い柱状物の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、カラム構造内において入射光を安定的に反射させて、入射角度依存性および拡散光の開き角をより向上させることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、入射角度依存性が過度に低下したり、拡散光の開き角が過度に狭くなったりする場合があるためである。
したがって、カラム構造における屈折率が相対的に高い柱状物の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域の屈折率との差を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、屈折率の差は大きい程好ましいが、カラム構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
また、図9(a)に示すように、カラム構造において、柱状物の断面における最大径Scを0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、入射角度依存性および拡散光の開き角をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる最大径が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度に関わらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる最大径が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、カラム構造において、柱状物の断面における最大径を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、柱状物の断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、不定形等とすることが好ましい。
また、柱状物の断面とは、フィルム表面と平行な面によって切断された断面を意味する。
なお、柱状物の最大径や長さ等は、光学デジタル顕微鏡にて観察することにより算出することができる。
また、カラム構造の厚さLaを5〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる厚さが5μm未満の値となると、柱状物の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる厚さが500μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、カラム構造の厚さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図9(c)に示すように、カラム構造は、フィルムの膜厚方向における上下端部分にまで形成されてなくてもよい。
すなわち、カラム構造が形成されない上下端部分の幅Lbは、フィルムの厚さにもよるが、一般に、0〜50μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜5μmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
また、図9(a)に示すように、カラム構造において、柱状物間における距離、すなわち、隣接する柱状物におけるスペースPを0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる距離を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、入射角度依存性および拡散光の開き角をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる距離が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる距離が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、カラム構造において、柱状物間における距離を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、図9(b)〜(c)に示すように、カラム構造において、柱状物22が膜厚方向に対して一定の傾斜角θaにて林立してなることが好ましい。
この理由は、柱状物の傾斜角を一定とすることにより、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、入射角度依存性および拡散光の開き角をさらに向上させることができるためである。
また、図9(d)に示すように、柱状物が屈曲していることも好ましい。
この理由は、柱状物が屈曲していることにより、カラム構造内を直進してしまう入射光を減少させて、光拡散の均一性を向上させることができるためである。
なお、このような屈曲した柱状物は、活性エネルギー線照射を行う際に、照射光の照射角度を変化させながら光を照射することによって得ることができるが、カラム構造を形成する材料物質の種類にも大きく依存する。
また、θaはフィルム面に垂直な面であって、1本の柱状物全体を軸線に沿って2つに切断する面によってフィルムを切断した場合の断面において測定されるフィルム表面に対する法線の角度を0°とした場合の柱状物の傾斜角(°)(該法線と柱状物の為す角度のうち狭い側の角度)を意味する。なお、図9(b)に示すとおり柱状物が右側に傾いているときの傾斜角を基準とし、柱状物が左側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
また、本発明の製造方法によって得られる光拡散フィルムの膜厚を50〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムの膜厚が50μm未満の値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、光拡散フィルムの膜厚が500μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、光拡散フィルムの膜厚を80〜350μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜260μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の製造方法によって得られる光拡散フィルムは、その片面または両面に、被着体に対して積層するための粘着剤層を備えていてもよい。
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知のアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系等の粘着剤を使用することができる。
1.(B)成分の合成
容器内に、(B2)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(B1)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、および(B3)成分としての2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法に従って反応させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
次いで、得られた(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、(A)成分としての下記式(3)で表わされる分子量268のo−フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−LEN−10)100重量部と、(C)成分としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン10重量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。なお、(A)成分および(B)成分の屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ(株)製、アッベ屈折計DR−M2、Na光源、波長:589nm)により、JIS K0062に準じて測定したところ、それぞれ1.58および1.46であった。
次いで、得られた光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしてのフィルム状の透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと称する。)に対して塗布し、膜厚200μmの塗布層を得た。
次いで、図8(a)に示すような線状の高圧水銀ランプ(直径25mm、長さ1.6m、出力20kW)に集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX)を準備した。
次いで、線状の紫外線ランプと、塗布層との間に、図3(b)に示すように、平行配置された複数の筒状部材(開口部の断面形状が正六角形のもの)の集合体から構成され、複数の筒状部材が上下端に開口部を有してなる照射光平行化部材を配置した。
このとき、塗布層の上方から眺めた場合に、塗布層の移動方向と、塗布層の上方から照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線と、が為す鋭角、すなわち、図4(a)におけるθ1a1が30°、θ1a2が30°、θ1a3が90°となるように照射光平行化部材を配置した。
また、照射光平行化部材における筒状部材の開口部の断面形状における最大径(図6(a)におけるL1a)は10mm、照射光平行化部材の塗布層の移動方向における長さ(図6(a)におけるL2)は350mm、筒状部材における隔壁の厚さは0.1mmであり、材料は耐熱黒塗料を施したアルミであった。
さらに、照射光平行化部材の上端から下端までの長さ(図7におけるL3)は200mm、照射光平行化部材の上端と、線状の紫外線ランプの下端と、の間の距離(図7におけるL4)は100mm、照射光平行化部材の下端と、塗布層の表面と、の間の距離(図7におけるL5)は700mmであった。
また、線状の紫外線ランプは、塗布層の移動方向と、線状の紫外線ランプの長軸方向と、が直交するように配置した。
次いで、照射光平行化部材を介して線状の紫外線ランプから紫外線を照射することにより、平行度が2°以下の平行光を、照射角(図8(b)のθ4)がほぼ0°となるように剥離フィルム越しに塗布層に照射し、その結果、膜厚195μmの光拡散フィルムが得られた。
その際の剥離フィルム表面のピーク照度は2.6mW/cm2、積算光量は13.87mJ/cm2、ランプ高さは500mmとし、塗布層の移動速度は1m/分とした。
なお、光拡散フィルムの膜厚は、定圧厚さ測定器(宝製作所(株)製、テクロック PG−02J)を用いて測定した。
また、得られた光拡散フィルムの断面写真を、図10(a)〜(b)に示す。図10(a)は、塗布層の移動方向に平行でフィルム面に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真であり、図10(b)は、図10(a)における切断面に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真である。
(1)光拡散特性の評価
得られた光拡散フィルムにおける光拡散特性の評価を行った。
すなわち、得られた光拡散フィルムに対して、柱状物の傾斜角(図9におけるθa)が2°であることを考慮し、図2(b)のθ2=3°の光を入射して拡散させ、拡散光の写真を撮影した。得られた写真を図11(a)に示し、かかる写真から起こした線図を図11(b)に示す。
かかる写真および図から、拡散光の拡散具合は、フィルムと平行な面内において円状であるため、等方性光拡散が生じていることが確認された。
また、入射光を照射しながら光拡散フィルムを任意の方向に動かし、入射点を変えた場合であっても光学特性において筋ムラの影響が見出されないことを確認した。
得られた光拡散フィルムにおける筋ムラの評価を行った。
すなわち、得られた光拡散フィルムの写真を撮影し、筋ムラの有無を肉眼にて確認した。得られた写真を図12(a)に示し、かかる写真から起こした線図を図12(b)に示す。
かかる写真および図から、筋ムラが発生していないことが分かる。
比較例1では、照射光平行化部材を配置する際に、図4(b)に示すように、θ1a1が0°、θ1a2が60°、θ1a3が60°となるように照射光平行化部材を配置したほかは、実施例1と同様にして、柱状物の傾斜角が3°である光拡散フィルムを得た。
また、得られた光拡散フィルムの断面写真を、図13(a)〜(b)に示す。図13(a)は、塗布層の移動方向に平行でフィルム面に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真であり、図13(b)は、図13(a)における切断面に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真である。
また、図14(a)に得られた光拡散フィルムにおける拡散光の拡散具合を示す写真を示し、かかる写真から起こした線図を図14(b)に示す。
かかる写真および図から、拡散光の拡散具合は、実施例1と同様にフィルムと平行な面内において円状であるため、等方性光拡散が生じていることが確認された。
但し、入射光を照射しながら光拡散フィルムを任意の方向に動かし、入射点を変えた場合、筋ムラの影響により光拡散特性が不均一であることが確認された。
また、図15(a)に得られた光拡散フィルムの写真を示し、かかる写真から起こした線図を図15(b)に示す。
かかる写真および図から、実用上問題となるレベルの明確な筋ムラが発生していることが分かる。
その結果、入射光を等方性光拡散させるためのカラム構造をフィルム内に有する光拡散フィルムを、光学特性における筋ムラの発生を効果的に抑制しつつ、容易に得ることができるようになった。
したがって、本発明の光拡散フィルムの製造方法は、反射型液晶装置における光制御膜の他、視野角制御フィルム、視野角拡大フィルム、プロジェクション用スクリーン等に使用される光拡散フィルムの製造効率の向上、およびこれらの製品の高品質化に著しく寄与することが期待される。
Claims (10)
- 下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)前記光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)平行配置された複数の筒状部材の集合体から構成され、前記複数の筒状部材が上下端に開口部を有してなる照射光平行化部材を、線状光源と前記塗布層との間、かつ、前記線状光源からの活性エネルギー線の放射領域中に配置する工程であって、
前記塗布層の上方から眺めた場合に、前記塗布層の移動方向と、前記塗布層の上方から前記照射光平行化部材に対して光を当てた場合に下方に投影される線としての仮想直線の全てと、が為す鋭角θ1が10°以上の値となるように前記照射光平行化部材を配置する(但し、筒状物の集合を円形に回転させること、および、線状光源と筒状物の集合を複数個直列に設置することを除く。)工程
(d)前記塗布層を移動させながら、当該塗布層に対し、前記線状光源からの活性エネルギー線を、前記照射光平行化部材を介して照射する工程 - 前記開口部の断面形状を正六角形とすることを特徴とする請求項1に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記開口部の断面形状における外接円の直径を1〜100mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記照射光平行化部材における上下方向の長さを10〜1000mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記筒状部材における隔壁の厚さ0.1〜5mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記照射光平行化部材の下端と、前記塗布層の表面と、の間の距離を0.1〜1000mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記照射光平行化部材の上端と、前記線状光源の下端と、の間の距離を0.1〜1000mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記工程(d)において、前記塗布層の表面におけるピーク照度を0.01〜50mW/cm2の範囲内の値とするとともに、前記塗布層の表面における積算光量を1〜1000mJ/cm2の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記工程(d)において、前記塗布層の移動速度を0.1〜10m/分の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
- 前記工程(d)において、前記照射光平行化部材を介して平行化された照射光の平行度を10°以下の値とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
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