JP6041728B2 - 固体酸化物形燃料電池用の薄膜立方晶系ジルコニアシートの製造方法 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池用の薄膜立方晶系ジルコニアシートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池用の薄膜立方晶系ジルコニアシート、特に、緻密で寸法精度に優れたシート厚さが50μm以上160μm以下で、平面面積が50cm以上の立方晶系ジルコニアシートの製造方法に関するものである。
従来、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCとも称することがある)の固体電解質として、酸素イオン導電体であるイットリアなどで安定化されたジルコニアが広く使用されている。特に、電解質支持型セルでは電解質自体でセルを保持する強度が必要なため、強度特性にすぐれた正方晶系ジルコニアシートが固体電解質膜として好ましい。しかし、正方晶系ジルコニアは酸素イオン伝導率が立方晶系ジルコニアに比べて低いため、セル発電性能が劣る傾向にある。一方、立方晶系ジルコニアは強度特性が正方晶系ジルコニアに劣るため、電解質支持型セルでは立方晶系ジルコニアシートを厚くすることによってセル強度の保持が図られている。しかしながら、電解質が厚くなると電解質での抵抗が大きくなりセル発電性能が低下する問題がある。
近年、SOFCシステムが汎用化されるためにさらなるコストパーフォーマンスの向上が必要であり、高い発電性能を有する電解質支持型セルを製造するために、立方晶系ジルコニアシートの薄膜化、特に、ハンドリング強度に優れた厚さが50μm以上160μm以下の立方晶系ジルコニアシートが求められている。
しかしながら、立方晶系ジルコニアシートの高強度化については、シート中の残留ポアを低減して緻密化し電解質シートの機械的強度を高めるスカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法(特許文献1)などの検討がなされているが、立方晶系ジルコニアシートで厚さが200μm以下の薄膜化についての検討はほとんどなされていない。
特開2011−204398号公報
一般的に、立方晶系ジルコニアシートの曲げ強度は、JIS規格(JIS R1601)に準拠して測定するとシートの厚さに係りなくほとんど0.3〜0.4GPaの範囲の値になるが、そのときのシートが破壊した時の最大荷重値はシートの厚さによって大きく異なり、シートの厚さの2乗に反比例することになる。従って、厚さが50μm以上160μm以下の薄膜立方晶系ジルコニアシートでは、シートに少しの外力がかかっただけで簡単に割れや欠けが生じやすくなるのでハンドリング性に大きな問題があった。
特に、シート面積が50cm以上の大きな薄膜立方晶系ジルコニアシートを製造するときには焼成直後シートに割れや欠けが顕著に認められ、シート製造歩留りが低下する問題があった。さらに、薄膜シートの平面方向の寸法精度の低下の問題、具体的にはX方向とY方向の寸法の差が大きくなる傾向にあることが判明した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、緻密(相対密度が99%以上)で厚さが50μm以上160μm以下の薄膜立方晶系ジルコニアシート製造歩留りの低下を抑制でき、高い寸法精度を有するSOFC用の薄膜立方晶系ジルコニアシートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、薄膜立方晶系ジルコニアシートの製造方法について、原料として用いる粉末やスラリーの物性と、得られるシート割れや欠け発生率との関係についてさらに研究を進めた。その結果、グリーンシート中の粉体充填率を高め、焼成収縮率を小さくする観点から、原料の立方晶系安定化ジルコニア粉末の比表面積と、該粉末中の粗大粒子の割合とをさらに少なくすることによって、ハンドリング強度に優れた薄膜立方晶系ジルコニアシートの製造歩留りの低下を抑制できることを見出して本発明を完成した。
上記課題を解決することができた本発明の厚さが50μm以上160μm以下の固体酸化物形燃料電池用の薄膜立方晶系ジルコニアシートの製造方法は、立方晶系安定化ジルコニア粉末、溶媒およびバインダーを含むスラリー原料を混合してスラリーを調製する工程;得られたスラリーを用いてテープキャスティング法により連続的に高分子フィルム上に、テープ状に塗工し、乾燥してグリーンテープとする工程;得られたグリーンテープを所定形状に打ち抜き・切断してグリーンシートとする工程得られたグリーンシートを焼成する工程;を含み、前記ジルコニア粉末のBET比表面積が3m/g以上10m/g以下であり、且つ前記ジルコニア粉末の90体積%径(D90)が0.25μm以上0.8μm以下であり、50体積%径(D50)と90体積%径との比(D90/D50)が1を超え2以下、90体積%径(D90)と100体積%径(D100)との比(D100/D90)が1を超え4以下である粉末を用いることを特徴とする。
原料粉末として、上記立方晶系安定化ジルコニア粉末を用いることにより、粉末の比表面積が小さいこと、および粉末中の粗大粒子(約1.0μm以上の粒子)の含有量が非常に少なく且つ平均粒子径が小さくて粒度分布がシャープであることからグリーンテープ成形に必要なバインダー量が低減できグリーンテープ中の粉体充填率が高められる。その結果、グリーンシートの焼成収縮率が低減されるので、焼成中のシートに外力や応力が負荷されることが少なくなり、焼成直後の薄膜の立方晶系ジルコニアシートに割れや欠けの発生が低減されて、高い歩留まりを維持することができる。
さらには、グリーンシート焼成時のX方向とY方向の寸法収縮が安定して、X方向とY方向での寸法に差が非常に小さくなって、高い寸法精度を有する薄膜電解質シートが得られるようになった。
また、前記立方晶系安定化ジルコニア粉末として、嵩密度が1.05g/cm以上1.3g/cm以下である粉末を使用することも好ましい態様である。この場合、使用するバインダー量がさらに低減され、より高い寸法精度を有する薄膜電解質シートが得られる。
さらに、前記スラリー原料として、立方晶系安定化ジルコニア粉末を含有する回収グリーン体を使用することも好ましい態様である。この場合、前記回収グリーン体の使用量は、該回収グリーン体に含まれる立方晶系安定化ジルコニア粉末の質量に換算し、前記スラリー中に含まれる全立方晶系安定化ジルコニア粉末の質量中5質量%以上50質量部%以下とすることが好ましい。
また、前記スラリーの固形分濃度を70〜90質量%の範囲にすることによって、容易にグリーンテープ中の粉体充填率を高めることができ、より高い歩留まりを維持することができる。
本発明によれば、シート製造歩留りの低下を抑制でき、高い寸法精度を有するSOFC用の薄膜立方晶系ジルコニアシートが得られる。
本発明の固体酸化物形燃料電池用の薄膜スカンジアジルコニアシートの製造方法は、立方晶系安定化ジルコニア粉末、溶媒およびバインダーを含むスラリー原料を混合してスラリーを調製する工程;得られたスラリーを用いてテープキャスティング法により連続的に高分子フィルム上に、テープ状に塗工し、乾燥してグリーンテープとする工程;得られたグリーンテープを所定形状に打ち抜き・切断してグリーンシートとする工程:得られたグリーンシートを焼成する工程;を含む。以下、これらの各工程について詳細に説明する。
1.スラリーの調整
まず、スラリーを調整する工程について説明する。本工程では、立方晶系安定化ジルコニア粉末、溶媒、バインダー、必要に応じて可塑剤や分散剤等をボールミルやビーズミル等で混合してスラリーを調製する。
前記立方晶系安定化ジルコニア粉末としては、BET比表面積が3m/g以上10m/g以下であり、且つ90体積%径(D90)が0.25μm以上0.8μm以下であり、50体積%径(D50)と90体積%径との比(D90/D50)が1を超え2以下、90体積%径(D90)と100体積%径(D100)との比(D100/D90)が1を超え4以下である粉末を用いる。
立方晶系安定化ジルコニア粉末とは、粉末X線回折法で求められた回折ピークの強度のうち、立方晶を主体とするジルコニア粉末である。具体的には、ジルコニア粉末におけるジルコニア結晶のX線回折パターンから各ピーク強度を求め、各強度値と下記式から立方晶比率(%)を求め、当該立方晶比率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい、95%以上がさらに好ましい。立方晶比率を80%以上に定めているのは、80%未満では得られるジルコニアシートの酸素イオン電導性と曲げ強度が損なわれる傾向にあるからである。
立方晶比率(%)=(100−単斜晶比率)*(c(400))÷(t(400)+t(004)+c(400))・・・・式1
単斜晶比率(%)=(m(111)+m(−111))÷(m(111)+m(−111)+tc(111))*100・・・・式2
(式中、c(400)は立方晶(400)面のピーク強度を示し、t(400)とt(004)は正方晶(400)面と(004)面のピーク強度を示し、m(111)とm(−111)は単斜晶(111)面と(−111)面のピーク強度を示し、tc(111)は重なった正方晶と立方晶との(111)面のピーク強度を示す。)
前記結晶構造を有する立方晶系安定化ジルコニア粉末は、安定化剤としてSc、Y、La、CeO、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb等の希土類金属酸化物;MgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物が使用されるが、特に、スカンジウム、イットリウム、セリウム、イッテルビウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素の酸化物を7〜15モル%含む安定化ジルコニアが好ましい。
これらの中でも、スカンジア安定化ジルコニア(以下、「ScSZ」と称することがある。)粉末の場合は、スカンジアの含有量は7〜12モル%、好ましくは8〜11モル%であり、スカンジアセリア安定化ジルコニア(以下、「ScCeSZ」と称することがある。)粉末の場合は、スカンジアとセリアの含有量はスカンジア7〜12モル%セリア0.5〜3モル%、好ましくはスカンジア8〜11モル%、セリア1〜2モル%である。
また、イットリア安定化ジルコニア(以下、「YSZ」と称することがある。)粉末の場合は、イットリア含有量は7〜12モル%、好ましくは8〜10モル%であり、イッテルビア安定化ジルコニア(以下、「YbSZ」と称することがある。)粉末の場合は、イッテルビア含有量は8〜15モル%、好ましくは9〜12モル%である。なお、これら安定化剤と共に、Al、Ga、In、TiO、Bi、In等を0.03〜3モル%添加することも可能である。
前記立方晶系安定化ジルコニア粉末のBET比表面積は、3m/g以上であり、好ましくは4m/g以上であり、より好ましくは5m/g以上が好ましい。また、10m/g以下であり、好ましくは8m/g以下であり、より好ましくは7m/g以下が好ましい。BET比表面積が上記範囲内であれば、グリーンテープ成形のためのバインダー必要量が少なくなるので、グリーンシート中の粉体充填率が高められて得られる立方晶系ジルコニアシート中の残留ポアをより低減で、相対密度が99%以上の緻密なシートを得ることができる。
前記立方晶系ジルコニア粉末の90体積%径(D90)は、0.25μm以上、0.8μm以下である。D90が0.8μmを超えると、ジルコニア粉末の凝集体が大きくなって粉体充填率が低下するので、得られる薄膜ジルコニアシートの強度が低下する。一方、D90が0.25μm未満では、ジルコニア粉末中にナノサイズの微細粒子が多くなるため、バインダー量が逆に多く必要になり寸法精度が損なわれることになる。前記D90はより好ましくは0.26μm以上、さらに好ましくは0.27μm以上、特に好ましくは0.28μm以上であり、より好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.65μm以下、特に好ましくは0.6μm以下である。
また、前記立方晶系ジルコニア粉末の50体積%径と90体積%径との比(D90/D50)は、1を超え2以下である。前記比(D90/D50)が上記範囲内であれば、グリーンシート成形に必要なバインダー量をさらに低減でき、焼成収縮率が低下して、焼成後のジルコニアシートの割れや欠けが低減され歩留まりが向上する。前記比(D90/D50)は、より好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.9以下、さらに好ましくは1.8以下である。
さらに、前記立方晶系ジルコニア粉末の90体積%径と100体積%径との比(D100/D90)は、1を超え4以下である。前記比(D100/D90)が上記範囲内であれば、極端に粗大な粒子の割合が少なくなって、グリーンシート中の粉体充填率をさらに高めることができるとともに、シート曲げ強度も強化される傾向となる。前記比(D100/D90)は、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
本発明において、50体積%径とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、商品名「LA−920」)により測定し、各々粒子径が小さいほうから粒子体積を積算して全粒子体積に対して50体積%となる粒子径の値である。また、同様に90体積%径および100体積%径は、それぞれ粒子径が小さいほうから粒子体積を積算して全粒子体積に対して90体積%または100体積%となる粒子径の値である。
なお、本発明で使用される立方晶系安定化ジルコニア粉末は、市販の立方晶系安定化ジルコニア粉末で該当するものはほとんど無いので、市販の立方晶系安定化ジルコニア粉末を1000〜1400℃で熱処理したものを粉砕する方法、市販のジルコニア粉末と前記安定化剤粉末を混合後、熱処理したものを粉砕する方法、立方晶系安定化ジルコニア粉末や前記混合粉末を成形後、仮焼もしくは焼結等によって熱処理して得た焼成体を粉砕して粉末化する方法などによって得ることができる。
熱処理や、仮焼もしくは焼結によって立方晶系安定化ジルコニア粉末中の細孔容積や細孔径が減少するために比表面積が低下してテープ成形のためのバインダー量が低減される。なお、粉砕する工程で得られる粉末のD90等の粒度分布の再現性を高めるためには、立方晶系安定化ジルコニア粉末を用いることが好ましく、粉末の凝集や焼結を抑制して所望の粒度分布に簡便に粉砕できるように、この粉末をロータリーキルン等で流動させながら上記温度範囲で均一に熱処理することが好ましい。
また、前記熱処理した粉末や焼成体を粉砕することによって、本発明のD90、D90/D50比やD100/D90比に調整される。前記のように原料ジルコニア粉末の粒度分布を特定の範囲に調整するためには、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ジェットミル等を用いて粉砕が行われる。
被粉砕物は熱処理や、仮焼もしくは焼結された粉末や焼成体であるので市販の立方晶系安定化ジルコニア粉末に比べて硬くなっており、投入(粉砕)動力や周速度を高くして強い剪断力を与えてしまうと、粉末の一次粒子まで破壊される過分散状態となって再凝集や異常な粘度上昇が起こる場合がある。従って、過分散させない状態で効率的にマイルドに粉砕させることが好ましく、そのためには、循環式の湿式ビーズミルを用い、粉砕メディアとして粒径が0.05〜3mmφのジルコニアビーズ、分散媒として水もしくはエタノールやイソプロパノール等の低級アルコールを用いて、攪拌動力を0.5〜5kWh/kg、周速度を6〜12m/sの条件で粉砕する。より好ましくは、攪拌動力を0.6〜1.5kWh/kg、周速度を7〜10m/sの条件である。
また、必要に応じて分散剤を添加しもよく、被粉砕物が非常に硬い焼結体の場合には、乾式、湿式や乾式と湿式の組み合わせた前粉砕することが好ましい。
スラリー原料粉末には、本発明の効果を損なわない程度に、立方晶系安定化ジルコニア粉末の他にアルミナ、チタニア、シリカ、酸化ニオブ、酸化タリウム等からなるセラミックス粉末を添加してもよい。かかるセラミックス粉末の使用量は、原料粉末の総和に対して0.01質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上、3質量%以下がより好ましい。
スラリーに用いられるバインダーの種類は特に制限されず、従来公知の有機質バインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、(メタ)アクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。
これらの中でも、ジルコニアグリーンシートの成形性や打抜き加工性、強度、焼成時の収縮率バラツキを抑制する観点から、熱可塑性で且つ数平均分子量が20000〜250000、より好ましくは50000〜200000の(メタ)アクリレート系共重合体が好ましいものとして推奨される。
バインダーの使用量は、原料および/またはスラリー中の立方晶系ジルコニア粉末の粒子径、粒度分布によって異なるが、原料粉末100質量部に対して5質量部以上が好ましく、より好ましくは7質量部以上であり、さらに好ましくは8質量部以上であり、16質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは14質量部以下である。
バインダーの使用量が不足すると、ジルコニアグリーンシートの成形性が低下し、また、強度や柔軟性が不十分となり得る。逆に多過ぎる場合は、スラリーの粘度調節が困難になるばかりでなく、脱脂・焼結時のバインダー成分の分解放出が多く且つ激しくなってX方向、Y方向の線収縮率のバラツキも大きくなり、寸法安定性が低くなり得る。
スラリー用の溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトンや2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらから適宜選択して使用する。
これら溶媒は単独で使用し得る他、2種以上を適宜混合して使用することができる。これら溶媒の使用量は、ジルコニアグリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味して調節するのがよい。好適なスラリー粘度は1Pa・s以上、50Pa・s以下であり、より好ましくは2Pa・s以上、20Pa・s以下である。
また、スラリーの固形分濃度は60〜90質量%の範囲に調整されることが好ましい。固形分濃度を前記範囲に調整することによって、塗工時のグリーンテープ中の溶剤量が少なくなり、グリーンテープの粉体充填密度を高めることができる。本発明で言う固形分濃度とは、以下式で表される。
固形分濃度(%)=(ジルコニア粉末質量+バインダー固形分の質量)÷全組成の質量*100
・・・・式3
好ましいスラリーの固形分濃度は70質量%以上、さらに好ましくは75質量%、特に好ましくは80質量%以上である。なお、固形分濃度が90質量%を超えると、スラリー粘度が50Pa・sを超えて、スラリーの流動性が損なわれ高分子フィルムへの均一塗工が困難になる。
スラリーの調製に当たっては、ジルコニア原料粉末の分散を促進するため、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、ポリアクリル酸やポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;α−オレフィン・無水マレイン酸共重合物の部分エステル;クエン酸や酒石酸等の有機酸;イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアンモニウム塩あるいはアミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアンモニウム塩等を挙げることができる。
また、スラリーの成形性を高めるために、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、フタル酸ジブチルやフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類;プロピレングリコール等のグリコール類やグリコールエーテル類;フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル等のポリエステル類を挙げることができる。さらに、界面活性剤や消泡剤等を必要に応じて添加することができる。
また、本発明の製造方法においては、スラリー原料として、安定化ジルコニア粉末を含有する回収体グリーン体を使用することも好ましい態様である。前記立方晶系安定化ジルコニア粉末は高価なため、実際の製造工程では、原料のコスト低減のために回収グリーン体を使用することは必須となっている。
ところで、本願の製法によるグリーンテープ中の安定化ジルコニア粉末は、従来の原料を用いた場合に比べてスラリー中のサブミクロン級の微粒子の含有量が少ないため、溶剤への再溶解性に優れている。すなわち、短時間でもとのスラリーの粒子径にまで溶解でき、凝集物が生じにくいものである。それゆえ、従来の原料を使用した回収グリーンテープを使用するのに比べて、微小な凝集の残留によるポアの発生を低減することができる。
ここで、安定化ジルコニア粉末を含有する回収グリーン体とは、焼成する工程に供されなかったグリーンテープとグリーンシートのことである。具体的には上記原料粉末、バインダー、溶媒等を用いてスラリーを調製した後、該スラリーを用いてグリーンテープを作製する際の所定の塗工厚さになっていない塗工初めのグリーンテープ先端部、塗工終了近くのグリーンテープ後端部およびグリーンテープの左右端部;作製されたグリーンテープについて打抜き等の成形を行った場合における、焼成用グリーンシートとして使用しなかった切断屑;等を回収したものである。実際の使用に当たっては、切断機やカッター等により細かく、好適には3cm角以下に破砕したものを使用する。
前記回収グリーン体の使用量は、該回収グリーン体に含まれる安定化ジルコニア粉末の質量に換算し、前記スラリー中に含まれる全安定化ジルコニア粉末中5質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
スラリーは、上記成分を適量混合することにより調製する。その際、各粒子の微細化や粒子径を均一化するために、ボールミルやビーズミル等により粉砕しつつ混合してもよい。また、各成分の添加の順番は特に制限されず、従来方法に従えばよい。
2.グリーンシートの製造
次に、上記で得たスラリーを用いてグリーンシートを製造する工程について説明する。本発明の製造方法においては、得られたスラリーを用いてテープキャスティング法により連続的に高分子フィルム上にテープ状に塗工し、乾燥してグリーンテープとする。
ここで、テープキャスティング法とは、原料粉末を含んだスラリーをシート状に塗工する方法であり、例えば、ドクターブレード法が挙げられる。ドクターブレード法は、一般的にはスラリータンク中へと原料スラリーを供給して、ここへ圧力をかけ、配管を介してスラリーを塗工ダムへ輸送し、ドクターブレードによりスラリーの厚さが均一となるように、高分子フィルム上に塗工する。前記高分子フィルムの材料は特に制限されず、従来公知のプラスチックフィルムを使用することができる。高分子フィルムには、可撓性のみならず、グリーンテープの支持体として十分な剛性および強度も要求される。そのためポリエチレンテレフタレートを素材とする厚さが、50μm〜130μmのPETフィルムを使用することが好ましい。
その後、キャリアーフィルム上に塗工されたスラリーを乾燥することにより、テープ状成形体、即ちグリーンテープとする。乾燥条件は特に制限されず、例えば室温〜150℃の一定温度で乾燥してもよいし、50℃、80℃、120℃の様に順次連続的に昇温して加熱乾燥してもよい。
次いで、得られたグリーンテープを所定形状に打ち抜き・切断して、グリーンシートを得る。打ち抜き・切断加工後のグリーンシートの形状としては、円形、楕円形、角形、R(アール)を持った角形等何れでもよく、これらのシート内に同様の円形、楕円形、角形、Rを持った角形等の穴を1つもしくは2つ以上有するものであってもよい。グリーンシート厚さは、60μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、200μm以下、より好ましくは170μm以下、さらに好ましくは140μm以下の範囲に調整される。また、平面面積は60cm以上、より好ましくは90cm以上、さらに好ましくは120cm以上であり、600cm以下、より好ましくは500cm以下、さらに好ましくは400cm以下の範囲に調整される。
ジルコニアグリーンシートの表面粗さは、使用する原料安定化ジルコニア粉末やスラリーの粒度分布等に依存するが、ドクターブレード法によるテープキャスティングの場合、必要に応じて比較的容易に調整することができる。例えば、粗化したPETフィルム上にスラリーを塗工、あるいは塗工後のグリーンシートに表面を粗くした粗化用シートあるいは金型を押圧すればよい。なお、SOFC用の薄膜立方晶系ジルコニアグリーンシートの表面粗さとしては、一般的には、Raで0.05μm以上、1μm以下の範囲が好適である。
なお、グリーンシートの粉体充填率は以下の手順で計算した。グリーンシートの質量(W)とグリーンシートの水中質量(W)を室温で測定し、水の密度(ρ)とからグリーンシート体積(V)を、
=(W−W)*(ρ)・・・・式4
より求めた。
次いで、グリーンシートを空気中で800℃1時間焼成してグリーンシート中のバインダー等の有機成分を除去したのち室温まで冷却して、焼成後の質量(W)を測定した。ジルコニアシートの密度(ρ)をアルキメデス法より求め、粉体充填率(PD)を、
PD=(W/ρ)/V*100・・・・式5
より計算した。
3.グリーンシートの焼成
グリーンシートを焼成する工程では、前記のようにして作製されたグリーンシートを焼成し、薄膜立方晶系ジルコニアシートとする。
グリーンシートの焼成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。例えば、グリーンシートを1枚ずつ棚板に載置して焼成することも可能であるが、量産化のためにグリーンシートと多孔質スペーサーシートとを交互に積み重ねた積層体を棚板に載置して焼結することが好ましい。
積層体の構成は、最下段にスペーサーシートを置き、その上にグリーンシートとスペーサーシートを交互に積み重ね、最上段にはスペーサーシートを載せたものからなる。最下段のスペーサーシートはグリーンシートと棚板との接合を防ぎまた、最上段のスペーサーシートは重しとなりシートの反りやうねりを低減する。
具体的な焼成の条件は特に制限されず、常法によればよい。例えば、グリーンシートからバインダーや可塑剤等の有機成分を除去するために100℃〜400℃、好ましくは150℃〜300℃で2時間〜50時間程度処理する。次いで、1300℃〜1600℃、好ましくは1350℃〜1550℃で2時間〜10時間保持焼成することによりジルコニアグリーンシートを焼結すればよい。
このとき、グリーンシートが例えば正方形や円形の場合、グリーンシートのX方向とY方向(円形の場合は、任意の1方向をX方向とし、X方向に垂直の方向をY方向とする)の寸法と、焼成後のX方向とY方向の測定寸法差(焼成収縮率の差異)は、グリーンシート中の粉体充填率が高いため1%以下に抑えられており、好ましくは0.95%以下、さらに好ましくは0.9%以下である。
本発明の製造方法により作製される立方晶系ジルコニアシートの厚さ・大きさは、適宜調整すればよい。例えば、厚さが50μm以上、より好ましくは70μm以上、さらに好ましくは80μm以上であり、160μm以下、より好ましくは140μm以下であり、さらに好ましく120μm以下である。また、平面面積が50cm以上、より好ましくは70cm以上であり、500cm以下、より好ましくは300cm以下、さらに好ましくは200cm以下のジルコニアシートを製造することができる。なお、上記シートの厚さは、10枚の供試シートについて任意の10箇所をマイクロメータで測定し、その平均値を算出し、シート厚さとした。
また、本発明方法により製造される薄膜立方晶系ジルコニアシートは、相対密度(アルキメデス法で測定した密度/理論密度)が、99%以上である緻密体であり、X方向とY方向での寸法差が非常に小さく寸法精度に優れている。
具体的にはジルコニアシートが正方形や円形の場合、シートX方向の長さ(L)とシートY方向の長さ(L)の寸法差率(L)は(L)≧(L)の場合、
L=((L)−(L))*100/(L)/100・・・・式6
で表され、0%以上1.5%以下の範囲である。好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下、特に好ましくは0.07%以下である。
また、薄膜立方晶系ジルコニアシートはその結晶系が立方晶を主体とするジルコニアシートである。具体的には、X線回折法で求められたシートの回折ピークの強度のうち、前記立方晶比率が90%以上であり、高い酸素イオン伝導性と曲げ強度との観点から好ましい。立方晶以外には、単斜晶、正方晶、菱面体晶に起因する回折ピークがあるが、単斜晶と菱面体晶は酸素イオン伝導性と曲げ強度を低下させる傾向があり、正方晶は酸素イオン伝導性を低下させる傾向があるので、立方晶比率は95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。
上述したように、本発明の製造方法により得られる薄膜立方晶系ジルコニアシートは、50μm以上160μm以下の厚さで、平面面積が50cm以上あっても、寸法精度に優れた緻密体で、ハンドリング強度に優れているのでSOFC用の電解質シートとして有用であり、当該SOFCは、効率的な発電が可能で且つ長寿命のものとなる。
本発明の製造方法により製造された立方晶系ジルコニアシートを電解質として用いたSOFC用の電解質支持型セルとするには、常法を用いることができる。即ち、ジルコニアシートの一方の面に燃料極、他方の面に空気極を形成し、また、必要に応じて、電解質材料と燃料極材料または空気極材料との反応を防止するために、電解質の一方の面または両方の面に中間層を形成する。よって、電解質シートと燃料極、空気極または中間層との接合力を高め電解質からの剥離を防止するために、電解質シートの表面にアンカー効果を付与する表面粗さをもたせることが好ましい。
燃料極材料としては、一般的に、Ni、Co、Ru等と安定化ジルコニアおよびセリア酸化物のサーメットが好適に使用される。特に好ましくは、Niと9〜12モル%スカンジア安定化ジルコニアからなるサーメットである。これら燃料極材料を、エチルセルロース等のバインダー、α−テルピネオール等の溶剤とともに混練して燃料極ペーストとするか、或いはミリングして燃料極スラリーとし、これをスクリーン印刷法、コーティング法等で被覆・乾燥・焼成することで燃料極を形成することができる。
空気極材料としては、LaMnO、LaCoOやLaFeOを基本構造とするペロブスカイト型構造酸化物、さらには、これらペロブスカイト型構造酸化物に安定化ジルコニアおよび/またはセリア酸化物が添加された混合物を挙げることができる。特に好ましくは、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8またはLaNi0.6Fe0.4に9〜12モル%ScSZを加えた混合物が好適に使用される。上記燃料極の場合と同様に、空気極ペーストあるいは空気極スラリーを調製し、電解質シートの燃料極と反対の面に、スクリーン印刷法、コーティング法等で被覆・乾燥・焼成することで空気極を形成することができる。
燃料極と空気極の形成の順序は特には限定されるものではない。また、固体電解質と空気極との間に、これらの固相反応防止のために、上記セリア酸化物からなる中間層を形成していてもよい。さらには、燃料極の上に燃料極コンタクト層や、空気極の上に空気極コンタクト層を形成してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.評価方法
1−1.比表面積の測定
吸着分子として窒素を用い、BET法により粉末の比表面積を測定した。測定機器としては、マウンテック社製のマックソーブHM−1210型を用いた。測定は一試料につき3点行い、その平均値を比表面積とした。
1−2.原料粉末の粒度測定
堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を用い、蒸留水中に分散剤として0.2質量%のメタリン酸ナトリウムを添加した水溶液を分散媒とした。当該分散媒の約100cm中に粉末を0.01〜0.5質量%添加し、3分間超音波処理して分散させた後に、体積基準の粒度分布を測定した。
2.立方晶系安定化ジルコニア粉末の調製
試験例1〜4
市販の8モル%YSZ粉末(第一稀元素化学工業製、商品名「HSY−8」、比表面積:9m/g、D50:0.48μm、立方晶系比率:88%)を炉芯管材質がアルミナのロータリーキルンを用いて1050℃、1200℃、1300℃と1380℃の各温度で熱処理した。
ナノ粒子分散専用の湿式媒体循環ビーズミル(アシザワ・ファインテック(株)製)を用い、これに原料粉体スラリーとして、上記熱処理YSZ粉末4kgおよび分散媒としての純水6kgを投入した。ここに、粉砕メディアとして、0.5mm径のジルコニアメディア(比重:6)を、4kg仕込んだ。
ミルモーターの動力を調整し、攪拌動力0.5〜2kWh/kg、攪拌羽根先端周速度(ω)8〜10m/秒の範囲で粉砕した。この湿式粉砕により得られたスラリーを10リットルロータリーエバポレーターに入れ、さらに該スラリーと等量のオクタノールを入れて、加熱減圧しながら水を留出させてオクタノール置換スラリーを得た。このスラリーを更に加熱減圧してオクタノールを留出させ減圧乾燥して立方晶系で安定化されたYSZ粉末A1050、A1200、A1300、A1380を得、各粉末の物性を表1に示した。
試験例5〜6
市販の10モル%スカンジア1モル%セリアで安定化された10Sc1CeSZ粉末(第一稀元素化学工業製、商品名「10Sc1CeSZ」、比表面積:11m/g、D50:0.6μm、D90:1.27μm、立方晶系比率:97%)を炉芯管材質がアルミナのロータリーキルンを用いて1250℃の温度で熱処理し、上記試験例1〜4と同様に粉砕、乾燥して立方晶系で安定化されたScCeSZ粉末B1250を調製した。また、熱処理されていない上記ScCeSZ粉末を高効率湿式粉砕機(コトブキ技研工業(株)製、商品名:アペックスミル、型式:AMV−1)を用いて、上記と同様にして粉砕、乾燥して立方晶系で安定化されたScCeSZ粉末BNCを調製した。これらの粉末の物性を表1に示した。
3.立方晶系ジルコニアシートの製造
3.1グリーンシート製造の試験例1〜6
原料粉末として上記で得た粉末A1050、A1200、A1300、A1380、B1250、BNCを各100質量部に対して、溶媒としてトルエン60質量部、および分散剤としてソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤1.5量部からなる混合物を、ボールミルにより粉砕しつつ混合した。当該混合物へ、バインダーとしてメタクリレート系共重合体(数平均分子量:55000、ガラス転移温度:−8℃、固形分濃度:50質量%)を固形分濃度で12〜18質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部を添加し、ボールミルにより20時間混合してスラリーとした。得られたスラリーを濃縮脱泡することにより、25℃での粘度を2〜13Pa・sに調整し、塗工用スラリーとした。
上記各塗工用スラリーを、ドクターブレード法によりPETフィルム上に塗工した。当該PETフィルムを、0.2m/分の速度で、50℃、80℃および110℃の3つの温度域を有する乾燥機中に通過させた後、スリッターで切断し、幅150mm、長さ200m、厚さが約105〜150μmの長尺グリーンテープを得た。当該長尺グリーンテープを切断し、直径約117〜127mmの円形方形グリーンシートGA1050、GA1200、GA1300、GA1380、GB1250、GBNCを各2000枚得た。
また、GA1300とGB1250では、切断屑等の回収グリーンテープに含まれる安定化ジルコニア粉末の質量に換算し、前記スラリー中に含まれる全安定化ジルコニア粉末中15%と20%になるように回収グリーン体を使用した。各グリーンシートの粉体充填率を測定し、結果を表1に示す。
3.2グリーンシート製造の参考例1〜3
原料粉末として前記で得た粉末A1050、A1200、B1250、BNCを用いて、厚さが約280μm〜340μmの長尺グリーンテープを得た以外は同様にして、直径約117μm〜127mmの円形方形グリーンシートGA’1050、GA’1200、GB’1250、GB’NCを各2000枚得た。なお、GA’1050、GA’1200とGB’NCでは回収グリーン体は使用せず、GB’1250については安定化ジルコニア粉末の質量に換算し、前記スラリー中に含まれる全安定化ジルコニア粉末中20%になるように回収グリーン体を使用した。各グリーンシートの粉体充填率を測定し、結果を表2に示す。
3.3グリーンシート焼成の試験例1〜6および参考例1〜4
一辺150mmの方形アルミナ多孔質シート(気孔率:45%,厚さ:0.2mm)を2枚重ね、その上に前記試験例1〜6と参考例1〜4で作製したそれぞれのグリーンシートを1枚重ね、さらにその上にスペーサーとして多孔質シートを重ね、さらにグリーンシートと多孔質シートを交互に9枚ずつ重ねて積層体とした。
この積層体を焼成用棚板(厚さ20mm,400mm×400mm)の上に4セット載置し、各積層体の最上部に、ムライト・アルミナ製の重し用治具(気孔率:60%,嵩比重:1.3)を載せた。大気雰囲気下、1420℃で3時間焼結することにより、直径が100mm、厚さ82〜126μmの立方晶系ジルコニアシートSA1050、SA1200、SA1300、SA1380、SB1250、SBNCを各1800枚製造した。
また、直径が100mmで、厚さ239μm〜303μmの立方晶系ジルコニアシートSA’1050、SA’1200、SB’1250、GB’NCを各1800枚製造した。冷却後、上記積層体を解体し、焼成直後のジルコニアシートの割れや欠けを目視で観察し、その発生率を求めた。また、上記の各1800枚の立方晶系ジルコニアシートのうち、任意の10枚を選び出し、円形シートの任意の1方向をX方向とし、X方向に垂直の方向をY方向として、X方向とY方向の寸法をノギスで測定して、それぞれの平均値を求め、X方向の寸法に対するX方向とY方向の寸法差の割合を算出して寸法差率とした。結果を表1と表2に示す。
3.4ジルコニアシート物性
さらに、上記9枚のシートをアルキメデス法で密度を測定し8YSZと10Sc1CeSZの理論密度から相対密度を算出した。また、X線回折のそれぞれのピーク強度から、立方晶比率を算出した。それぞれの結果を表1、表2に合わせて示した。
表1から、本発明の製造方法による試験例2、3と5の薄膜立方晶系ジルコニアシートは、焼成直後の割れ・欠け発生率が12%以下で、薄膜でも安定した製造歩留りになっていることが判る。また、XY方向の寸法差率も1%以下で相対密度も99%以上あり、緻密で寸法安定性にシートが得られている。
一方、本発明の製造方法において、使用するジルコニア粉末のBET比表面積やD90、D90/D50やD100/D90が特定範囲を満たさない場合(試験例1と4)では、グリーンシートの粉体充填率が54%以下であり、焼成直後の割れ・欠け発生率が16%以上で製造歩留りが低く、XY方向の寸法差率も1%以上で相対密度も99%未満であり、緻密で寸法安定性にシートが得られないことが判る。
また、加熱処理をしない粉末の粉砕処理をした試験例6では粉末の比表面積が大きいためかバインダー量が18質量部と多く必要であり、粉体充填率も本発明の製法のものよりも低くなっているためか割れ・欠け発生率が20%以上で製造歩留りが最も低くなっている。従って、通常の安定化ジルコニア粉末を用いて薄膜シートを製造しても本発明の製法に比較して生産性が劣ることが判る。
Figure 0006041728
また、表2の参考例1と2、3と4から、立方晶系ジルコニアシートの厚さが230μm以上であると、本発明の製法で使用される立方晶系ジルコニアシートを用いなくても焼成直後の割れ・欠け発生率は5%以下で製造歩留りにはほとんど変わりなく、また、XY方向の寸法差率も0.9%以下で、生産性には変わりがないことが判った。
Figure 0006041728
本発明の固体酸化物形燃料電池用の薄膜立方晶系ジルコニアシートは、市場要望の薄膜化に対応するものであり、特に、緻密で寸法精度に優れたシート厚さが50μm以上160μm以下の立方晶系ジルコニアシートの優れた製造方法を提供するものである。

Claims (5)

  1. 固体酸化物形燃料電池用で、厚さが50μm以上160μm以下の薄膜立方晶系ジルコニアシートを製造するための方法であって、
    立方晶系安定化ジルコニア粉末、溶媒およびバインダーを含むスラリー原料を混合してスラリーを調製する工程;
    得られたスラリーを用いてテープキャスティング法により連続的に高分子フィルム上に、テープ状に塗工し、乾燥してグリーンテープとする工程;
    得られたグリーンテープを所定形状に打ち抜き・切断してグリーンシートとする工程
    得られたグリーンシートを焼成する工程;を含み、
    前記ジルコニア粉末のBET比表面積が3m/g以上10m/g以下であり、且つ
    前記ジルコニア粉末の90体積%径(D90)が0.25μm以上0.8μm以下であり、50体積%径(D50)と90体積%径との比(D90/D50)が1を超え2以下、90体積%径(D90)と100体積%径(D100)との比(D100/D90)が1を超え4以下である粉末を用いることを特徴とする製造方法。
  2. 前記立方晶系安定化ジルコニア粉末は、嵩密度が1.05g/cm以上1.3g/cm以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記立方晶系安定化ジルコニア粉末は、安定化剤としてスカンジウム、イットリウム、セリウム、イッテルビウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素の酸化物を7〜15モル%含む安定化ジルコニアからなる請求項1〜2のいずれかに記載の製造方法。
  4. 前記スラリー原料として、立方晶系安定化ジルコニア粉末を含有する回収グリーン体を使用し、前記回収グリーン体の使用量を、該回収グリーン体に含まれる立方晶系安定化ジルコニア粉末の質量に換算し、前記スラリー中に含まれる全立方晶系安定化ジルコニア粉末の質量中5質量%以上50質量%以下とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記スラリーの固形分濃度が70〜90質量%の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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