以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される印刷システムの構成を示す図である。
本実施の形態の印刷システムは、用紙に画像を印刷する印刷装置1と、印刷装置1において印刷すべき画像データ(元画像データ)とその印刷条件とを設定する設定装置2と、印刷装置1によって用紙に印刷された画像(印刷画像)の内容を検査する検査装置3と、これら印刷装置1、設定装置2および検査装置3を相互に接続するネットワーク4とを備えている。
図2は、印刷装置1の構成を示す図である。本実施の形態の印刷装置1は、電子写真方式にて画像の印刷を行う、無版式印刷装置である。
この印刷装置1は、所謂タンデム型の構成を有するものであって、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。また、印刷装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成され、印刷装置1を構成する各装置および各部の動作(画像処理を含む)を制御する制御部100を備えている。ここで、複数の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の画像を形成する。
また、印刷装置1は、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kにて形成された各色成分トナー像が順次転写(一次転写)されるとともにこのトナー像を保持する中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20上のトナー像を矩形状に形成された用紙P(記録材の一例)に一括転写(二次転写)する二次転写装置30とを備えている。
ここで、複数の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々は、回転可能に取り付けられた感光体ドラム11を備えている。また、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々において、感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12、感光体ドラム11を露光して静電潜像を書き込む露光装置13、感光体ドラム11上の静電潜像を対応する色のトナーにより可視像化する現像装置14が設けられている。さらに、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々には、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写装置15、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラム清掃装置16が設けられている。
次に、中間転写ベルト20は、それぞれが回転可能に設けられた3本のロール部材21〜23に掛け渡され、回転するように設けられている。これら3本のロール部材21〜23のうち、ロール部材22は、中間転写ベルト20を駆動する。また、ロール部材23は、中間転写ベルト20を挟んで二次転写ロール31に対向配置されており、これら二次転写ロール31およびロール部材23によって二次転写装置30が構成されている。なお、中間転写ベルト20を挟んでロール部材21と対向する位置には、中間転写ベルト20上の残留トナーを除去するベルト清掃装置24が設けられている。
また、印刷装置1には、二次転写装置30に向けて搬送される用紙Pが通過する第1搬送経路R1、二次転写装置30を通過した後の用紙Pが通過する第2搬送経路R2、定着装置50(後述)よりも下流側にて第2搬送経路R2から分岐するとともに第1搬送経路R1の下方まで延び、用紙Pを再び第1搬送経路R1に導く第3搬送経路R3が設けられている。なお、第2搬送経路R2に沿って搬送されてきた用紙Pのうち、第3搬送経路R3に導かれないものは、印刷装置1の外部に排出され、図示しない用紙積載部に積載される。
また、印刷装置1は、これら第1搬送経路R1、第2搬送経路R2および第3搬送経路R3に沿って用紙Pを搬送する用紙搬送部40を有している。この用紙搬送部40は、第1搬送経路R1に用紙Pを供給する第1用紙供給装置40Aと、第1用紙供給装置40Aよりも用紙Pの搬送方向における下流側に設けられ、第1搬送経路R1に用紙Pを供給する第2用紙供給装置40Bとを備えている。なお、第1用紙供給装置40Aおよび第2用紙供給装置40Bは同じ構造を有しており、第1用紙供給装置40Aおよび第2用紙供給装置40Bの各々には、用紙Pを収容する用紙収容部41、用紙収容部41に収容された用紙Pを取り出して搬送する取り出しロール42が設けられている。ここで、第1用紙供給装置40Aおよび第2用紙供給装置40Bには、異なるサイズおよび向きや異なる種別の用紙Pが収容され得る。
さらに、用紙搬送部40は、第1搬送経路R1、第2搬送経路R2および第3搬送経路R3のそれぞれにおいて用紙Pを挟んで搬送する複数の搬送ロール43を備えている。さらにまた、用紙搬送部40は、第2搬送経路R2において、二次転写装置30を通過した用紙Pを定着装置50側へと搬送するベルト搬送部44を備えている。
また、印刷装置1は、第2搬送経路R2上に、二次転写装置30により用紙P上に二次転写された画像をこの用紙Pに定着させる定着装置50をさらに備えている。この定着装置50は、内蔵されたヒータ(不図示)により加熱される加熱ロール50Aと、加熱ロール50Aを押圧する押圧ロール50Bとを有している。そして、この定着装置50では、加熱ロール50Aと押圧ロール50Bとの間を用紙Pが通過することで、用紙Pが加熱および加圧され、用紙P上の画像が用紙Pに定着される。
なお、以下の説明においては、上述した画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K、中間転写ベルト20、二次転写装置30、用紙搬送部40および定着装置50を、まとめて画像形成部10と呼ぶ。
本実施の形態の印刷装置1では、第1用紙供給装置40A等から供給された用紙Pの第1面に画像を印刷することができるのに加え、用紙Pの第2面に画像を印刷することができるようになっている。より具体的に説明すると、この印刷装置1では、第1面に画像が転写された後に定着装置50を通過した用紙Pの表裏が、第3搬送経路R3を介して搬送されることで反転され、表裏が反転された用紙Pが再度二次転写装置30へと供給される。そして、二次転写装置30にて用紙Pの第2面に対して画像が転写される。その後、この用紙Pは定着装置50を再び通過し、転写されたこの画像は用紙Pに定着される。これにより、用紙Pの第1面のみならず、第2面にも画像が形成されるようになる。
そして、本実施の形態の印刷装置1には、第2搬送経路R2のうち、定着装置50よりも用紙Pの搬送方向下流側であって、第2搬送経路R2と第3搬送経路R3との分岐部よりも用紙Pの搬送方向上流側に、二次転写および定着を経て用紙Pに印刷された画像を読み取る画像読取部60が設けられている。画像読取部60は、二次転写装置30を通過する用紙Pのうち、中間転写ベルト20と対向する側の面、すなわち、直前に画像の二次転写が行われた面の画像を読み取るように構成されている。
図3は、印刷装置1に設けられた画像読取部60の構成を示す図である。ここで、図3は、図2における手前側からみた画像読取部60の断面構成を示している。なお、以下の説明においては、用紙Pの搬送方向(図中左側から右側に向かう方向)を副走査方向SS、用紙Pの搬送方向に直交する方向(図中手前側から奥側に向かう方向)を主走査方向FSと呼ぶ。
ここで、図2に示す定着装置50の下流側には、搬送される用紙Pを案内するための第1ガイド45および第2ガイド46が形成されている。そして、用紙Pは、第1ガイド45と第2ガイド46との間に形成される第2搬送経路R2内を搬送されるようになっている。
画像読取部60は、第1ガイド45の上方すなわち搬送される用紙Pの画像形成面と対向する側に配置されて用紙Pの画像を撮像する撮像部61と、第2ガイド46の下方に撮像部61と対向するように配置される対向部62と、第1ガイド45の上方であって撮像部61よりも用紙搬送方向上流側に配置され、第2搬送経路R2内に送風を行うファンを有する送風部63とを備えている。
これらのうち、撮像部61は、内部に空間が形成され、第2搬送経路R2と対向する下方の部位に開口71aが形成された第1のハウジング71と、可視光に対する光透過性を有し開口71aにはめ込まれた光透過性部材72とを備えている。第1のハウジング71は、その一部が、第1ガイド45とともに第2搬送経路R2の一部を形成する搬送路形成部として機能している。また、撮像部61は、第1のハウジング71の内部下方且つ光透過性部材72の上方において、光透過性部材72を介して第2搬送経路R2側に光を照射する第1の光源73と、第1の光源73よりも用紙Pの搬送方向下流側となる部位に配置され、同じく光透過性部材72を介して第2搬送経路R2側に光を照射する第2の光源74とを備えている。さらに、撮像部61は、第1の光源73および第2の光源74から光透過性部材72を介して第2搬送経路R2内を搬送される用紙Pに照射され、この用紙Pの読取位置RPから反射した光をさらに反射させる第1ミラー75a、第2ミラー75bおよび第3ミラー75cと、第3ミラー75cから入射する光学像を縮小するレンズ系76と、レンズ系76からの出射光を受光して光電変換するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ77とを備える。つまり、この例において、画像読取部60は、いわゆる縮小光学系を用いてCCDイメージセンサ77に光学像を結像させている。なお、図3においては、レンズ系76を1個のレンズで示しているが、レンズ系76を複数のレンズの組み合わせで構成することもある。
一方、対向部62は、内部に空間が形成され、第2搬送経路R2と対向する上方の部位に開口81aが形成された第2のハウジング81と、第2のハウジング81の内側に回転可能に配置され、撮像部61によって読み取られることで撮像部61の校正(キャリブレーション)などに用いられる読取基準部材82とを備えている。ここで、読取基準部材82は八角形状の断面を有しており、外側の各面のうちの一面が開口81aに露出した状態で配置されるようになっている。すなわち、読取基準部材82の外側の各面は、撮像部61による読取位置RPに配置され得るようになっている。そして、読取基準部材82の外周面には、例えば、白基準部材が形成された白基準面82a、黒基準部材が形成された黒基準面(符号なし)、イエロー基準部材が形成されたY基準面(符号なし)、マゼンタ基準部材が形成されたM基準面(符号なし)、シアン基準部材が形成されたC基準面(符号なし)、そして、用紙Pの読み取り時に露出する読取露出面82b等が形成されている。また、本実施の形態において、読取露出面82bは、黒基準面と同じく、黒色を呈するようになっている。なお、これら白基準面、黒基準面、Y基準面、M基準面、C基準面、読み取り露出面等は、撮像部61による撮像領域よりも主走査方向FSおよび副走査方向SSにおいて広い領域に形成される。
図4は、撮像部61に設けられたCCDイメージセンサ77の構成を説明するための図である。
このCCDイメージセンサ77は、矩形状に形成されたセンサ基板77aと、このセンサ基板77a上に並べて取り付けられた三本のラインセンサ77R、77G、77Bとを有している。なお、以下の説明では、これら三本のラインセンサ77R、77G、77Bを、それぞれ赤用ラインセンサ77R、緑用ラインセンサ77G、青用ラインセンサ77Bと呼ぶ。赤用ラインセンサ77R、緑用ラインセンサ77G、および青用ラインセンサ77Bは、それぞれ、主走査方向FSに延びるように配置されている。また、赤用ラインセンサ77R、緑用ラインセンサ77G、および青用ラインセンサ77Bは副走査方向SSに並べて配置されている。これら赤用ラインセンサ77R、緑用ラインセンサ77G、青用ラインセンサ77Bは、それぞれ、フォトダイオードPDを直線状にk個(例えば本実施の形態ではk=8000)並べたもので構成される。また、赤用ラインセンサ77R、緑用ラインセンサ77G、青用ラインセンサ77Bには、それぞれに異なる波長成分を透過するためのカラーフィルタが装着されている。ただし、CCDイメージセンサ77については、これに限られるものではなく、RGB各色を読み取る二次元のエリアセンサで構成してもかまわない。またCCDイメージセンサ77に代えて、CMOS撮像素子を用いてもよい。
図5は、図1に示す設定装置2の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態の設定装置2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータ装置によって構成されている。ここで、設定装置2は、1回の指示に基づいて1または複数の用紙Pに画像を連続印刷して出力するジョブの実行に際して、印刷装置1に入力するためのデータ処理を行うDFE(Digital Front End)と呼ばれるものである。
この設定装置2は、元画像作成部201と、ユーザインタフェース(UI)202と、送受信部203とを備えている。
元画像作成部201は、例えば外部から入力されてくる入力画像データに基づいて、印刷装置1にて解釈が可能な、『元画像データ』を作成する。
UI202は、上記元画像データに基づく印刷を印刷装置1で実行するにあたって、印刷に要求される各種設定の入力を受け付ける。ここで、UI202を介して受け付ける設定としては、例えば元画像データを定義するための色空間や、元画像データに基づく印刷を実行する際の解像度などが挙げられる。ただし、色空間や解像度の情報が、既に入力画像データに含まれている場合もある。なお、以下の説明においては、元画像データの色空間を『設定色空間』と呼び、元画像データの解像度を『設定解像度』と呼ぶ。この例において、設定色空間はRGB色空間にて定義される。また、UI202は、ネットワーク4を介して、図1に示す印刷装置1や検査装置3から送られてきたデータに基づく画像を、図示しないディスプレイに表示する。
送受信部203は、図1に示す印刷装置1や検査装置3との間で、ネットワーク4を介して、各種データの送受信を行う。
図6は、図1および図2に示す印刷装置1の機能構成を示すブロック図である。
本実施の形態の印刷装置1は、用紙Pに画像を印刷する画像形成部10と、用紙P上の印刷画像を読み取る画像読取部60と、これら画像形成部10および画像読取部60を制御する制御部100とを有している。また、制御部100は、送受信部101と、印刷用元画像作成部102と、照合用元画像作成部103と、下地補正設定部104と、照合用読取画像作成部105とを備えている。
出力手段の一例としての送受信部101は、図1に示す設定装置2や検査装置3との間で、ネットワーク4を介して、各種データの送受信を行う。
印刷用元画像作成部102は、設定装置2から送受信部101を介して入力されてくる元画像データに基づき、画像形成部10に対応した、出力画像データの一例としての『印刷用元画像データ』を作成する。ここで、印刷用元画像作成部102は、元画像データから印刷用元画像データを作成するに際して、元画像データの設定色空間を、画像形成部10の色材に対応する色空間(『出力色空間』と呼ぶ)に変換する。なお、この例において、第1色空間の一例としての出力色空間は、画像形成部10の色材(この例ではシアン、マゼンタ、イエロー、黒)に対応するCMYK色空間にて定義される。また、印刷用元画像作成部102は、元画像データから印刷用元画像データを作成するに際して、元画像データの設定解像度に基づく解像度(『出力解像度』と呼ぶ)を設定する。なお、出力解像度は、設定解像度と同じ値に設定される場合と、設定解像度とは異なる値に設定される場合とがある。
画像形成手段の一例としての画像形成部10は、印刷用元画像作成部102で作成された印刷用元画像データを用い、出力色空間および出力解像度に基づく画像(印刷画像)を用紙Pに印刷し、印刷物として出力する。
読取手段および取得手段の一例としての画像読取部60は、3本のラインセンサ77R、77G、77B(図4参照)を用いて、用紙P上の印刷画像を読み取る。そして、画像読取部60は、各ラインセンサ77R、77G、77Bから入力されてくる読取結果に基づき、『読取画像データ』を作成する。ここで、画像読取部60は、印刷画像の読取結果から読取画像データを作成するに際して、読取画像データの色空間を、各ラインセンサ77R、77G、77Bの読取色に対応する色空間(『入力色空間』と呼ぶ)に設定する。なお、この例において、第2色空間の一例としての入力色空間は、画像読取部60を構成する各ラインセンサ77R、77G、77Bの色(この例では赤、緑、青)に対応するRGB色空間にて定義される。また、画像読取部60は、印刷画像の読取結果から読取画像データを作成するに際して、読取結果に基づく解像度(『入力解像度』)を設定する。なお、入力解像度は、各ラインセンサを構成する複数のセンサの配列間隔、各ラインセンサにおける読取周期、さらには用紙Pの搬送速度等によって決まるものであり、出力解像度と同じ値となることもあるし、出力解像度とは異なる値となることもある。
基準画像データ作成手段の一例としての照合用元画像作成部103は、設定装置2から送受信部101を介して入力されてくる元画像データに基づき、後述する画像欠陥の検査に用いるための基準となる、基準画像データの一例としての『照合用元画像データ』を作成する。ここで、照合用元画像作成部103は、元画像データから照合用元画像データを作成するに際して、元画像データの設定色空間を、画像欠陥の検査に対応する色空間(『検査色空間』と呼ぶ)に変換する。なお、この例において、第3色空間の一例としての検査色空間は、CIELAB(以下では、L*a*b*と称することがある)色空間にて定義される。また、照合用元画像作成部103は、元画像データから照合用元画像データを作成するに際して、設定解像度を、必要に応じて、画像欠陥の検査に対応する解像度(『検査解像度』と呼ぶ)に変換する。また、この例では、元画像データから照合用元画像データを作成しているが、これに限られるものではなく、例えば、元画像データに基づいて得られた印刷用元画像データから照合用元画像データを作成してもよい。
下地補正設定部104は、画像読取部60から入力されてくる読取画像データに基づき、印刷物における用紙Pの性質の一例としての、用紙Pの地色、用紙Pの紙肌(地肌)、用紙Pの厚みに関する特性(坪量、透け具合を含む)(以下では、これらの用紙Pの性質をまとめて単に「下地」と称する)に起因して読取画像データ内に存在することとなった、下地の影響を取り除くための補正に用いる各種補正データの設定を行う。なお、補正データの具体的な内容については後述する。
照合用読取画像作成部105は、画像読取部60から入力されてくる読取画像データに基づき、後述する画像欠陥の検査に用いるための基準となる、比較画像データの一例としての『照合用読取画像データ』を作成する。また、照合用読取画像作成部105は、読取画像データに基づいて照合用読取画像データを作成する際に、下地補正設定部104にて設定された各種補正データに基づく補正を施す。ここで、照合用読取画像作成部105は、読取画像データから照合用読取画像データを作成するに際して、読取画像データの入力色空間を、上述した検査色空間に変換する。また、照合用読取画像作成部105は、読取画像データから照合用読取画像データを作成するに際して、入力解像度を、必要に応じて、上述した検査解像度に変換する。ここで、本実施の形態では、下地補正設定部104および照合用読取画像作成部105の両者が、補正手段としての機能を有している。
なお、上述した照合用元画像作成部103は、元画像データ(あるいは印刷用元画像データ)に基づいて照合用元画像データを作成する際に、下地補正設定部104にて設定された補正データに基づく補正を施すことがある。
図7は、印刷装置1の制御部100に設けられた下地補正設定部104および照合用読取画像作成部105の機能構成を示すブロック図である。
これらのうち、下地補正設定部104は、シェーディング補正部1041、検査解像度決定部1042、LUT作成部1043を備えている。本実施の形態の下地補正設定部104(シェーディング補正部1041)には、画像読取部60にて作成される読取画像データの中から、一部の領域を抽出して得られた下地画像データが入力される。ここで、抽出画像データの一例としての下地画像データは、主走査方向FSおよび副走査方向SSのそれぞれにおいて連続する複数の画素を含んでいる。なお、下地画像データの詳細については後述する。
シェーディング補正部1041は、画像読取部60から入力されてくる下地画像データに対しシェーディング補正を行う。ここで、シェーディング補正部1041で用いられるシェーディング補正データは、図3に示す画像読取部60において、読取位置RPに読取基準部材82の白基準面82aを配置した状態で、第1の光源73および第2の光源74による光の照射を行った際の、3本のラインセンサ77R、77G、77Bのそれぞれにおける受光結果に基づいて得られる。
検査解像度決定部1042は、シェーディング補正が施された下地画像データに基づき、照合用元画像作成部103で作成する照合用元画像データおよび照合用読取画像作成部105で作成する照合用読取画像データの両者に、共通して設定される検査解像度を基準値から変更するか否かを決定する。そして、検査解像度決定部1042にて決定された解像度変更情報(解像度変換指示)は、照合用元画像作成部103と、照合用読取画像作成部105に設けられた解像度変換部1052と、LUT作成部1043とに出力される。
LUT作成部1043は、シェーディング補正が施された下地画像データと、解像度変更情報とに基づき、照合用読取画像作成部105において読取画像データから照合用読取画像データを作成する際に、用紙Pにおける下地の影響を取り除くための階調変換に使用する下地補正用LUT(Look Up Table)を作成する。この例において、LUT作成部1043が作成する下地補正用LUTは、RGB(入力)→RGB(出力)の関係を有している。そして、LUT作成部1043で作成された下地補正用LUTは、照合用読取画像作成部105に設けられた階調変換部1053に出力される。
一方、照合用読取画像作成部105は、シェーディング補正部1051と、解像度変換部1052と、階調変換部1053と、色空間変換部1054とを備えている。本実施の形態の照合用読取画像作成部105(シェーディング補正部1051)には、画像読取部60から出力される読取画像データそのものが入力される。
シェーディング補正部1051は、画像読取部60から入力されてくる読取画像データに対しシェーディング補正を行う。ここで、シェーディング補正部1051で用いられるシェーディング補正データは、下地補正設定部104のシェーディング補正部1041で用いられるものと同じものである。
解像度変換部1052は、下地補正設定部104に設けられた検査解像度決定部1042から解像度変換指示を受けた場合に、シェーディング補正が施された読取画像データに対し、その解像度(読取解像度)が基準値よりも低解像度(検査解像度)となるように解像度変換を施す。なお、解像度変換指示を受けなかった場合、解像度変換部1052は、解像度変換を施さない。
階調変換部1053は、シェーディング補正が施され、また、指示に応じて解像度変換が施された読取画像データに対し、下地補正設定部104のLUT作成部1043で作成された下地補正用LUTを用いて、階調変換を施す。
色空間変換部1054は、階調変換部1053から入力されてくる階調変換後の読取画像データを、検査色空間に色空間変換し、得られた照合用読取画像データを、送受信部101に向けて出力する。
なお、図7に示す例では、下地補正設定部104にはシェーディング補正部1041を、照合用読取画像作成部105にはシェーディング補正部1051を、それぞれ設け、個別にシェーディング補正を行っていたが、これに限られない。例えば、画像読取部60において先にシェーディング補正を行う構成を採用した場合には、これらシェーディング補正部1041およびシェーディング補正部1051は不要となる。
図8は、図1に示す検査装置3の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態の検査装置3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータ装置によって構成されている。この検査装置3は、印刷装置1によって用紙Pに印刷された印刷画像における画像欠陥の有無を検査するものである。
検査装置3は、送受信部301と、画像照合部302と、画像欠陥判定部303とを有している。
送受信部301は、図1に示す印刷装置1や設定装置2との間で、ネットワーク4を介して、各種データの送受信を行う。
画像照合部302は、印刷装置1から送受信部301を介して入力されてくる、共通の元画像データに基づいて得られた照合用元画像データおよび照合用読取画像データの両者について、画素毎にその画素値の照合を行う。
画像欠陥判定部303は、画像照合部302による照合結果に基づき、上記共通の元画像データに基づいて、用紙Pに印刷された印刷画像における画像欠陥の有無を判定する。なお、この判定結果は、送受信部301を介して設定装置2に送られる。ここで、本実施の形態では、検査装置3に設けられた画像照合部302および画像欠陥判定部303が、検出手段として機能している。
ではここで、用紙Pの状態と、画像読取部60による読取画像データとの関係について説明しておく。
図9および図10は、状態が異なる種々の用紙P(画像なし)を画像読取部60で読み取って得られた、主走査方向FSにおける1ライン分の読取画像データを説明するための図である。なお、この例において、各読取画像データには、上述したシェーディング補正が既に施されているものとする。
まず、図9(a)は、用紙Pとして白色の厚紙を用いた場合における読取画像データを例示している。また、図9(b)は、用紙Pとして白色の薄紙を用いた場合における読取画像データを例示している。さらに、図9(c)は、用紙Pとして灰色の厚紙を用いた場合における読取画像データを例示している。
一方、図10(a)は、用紙Pとして白色の厚紙を用いた場合における読取画像データ(図9(a)と同じもの)を例示している。また、図10(b)は、用紙Pとして薄桃色の厚紙を用いた場合における読取画像データを例示している。さらに、図10(c)は、用紙Pとして白色のエンボス紙(凹凸加工が施されたもの)を用いた場合における読取画像データを例示している。
図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)では、印刷を実行する際の画像読取条件を再現するため、図3に示す画像読取部60において、読取位置RPに読取基準部材82の読取露出面82b(黒色を呈する)が配置されている。また、図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)のそれぞれにおいて、横軸は読取位置RPにおける主走査方向FSの位置を示している。そして、それぞれにおける下段には、読取基準部材82の読取露出面82bと用紙Pとの位置関係を、また、それぞれにおける上段には、読取画像データとして、赤用ラインセンサ77Rからの入力(R入力)、緑用ラインセンサ77Gからの入力(G入力)、青用ラインセンサ77Bからの入力(B入力)を、それぞれの階調値として示している。この例では、各画素が、それぞれ256階調(8ビット)で表現されているものとする。さらに、R入力、G入力およびB入力のそれぞれにおいて、最大値である「255」が最も明るいことを、また、最小値である「0」が最も暗いことを、それぞれ意味しているものとする。そして、以下の説明においては、読取位置RPの上方(CCDイメージセンサ77側)からみたときに、読取露出面82bの上に用紙Pが存在することにより読取露出面82bが隠れている部位を「用紙対向領域」と称し、読取露出面82bの上に用紙Pが存在しないことにより読取露出面82bが露出している部位を「露出面対向領域」と称する。この例において、用紙対向領域は主走査方向FSにおける中央部に位置しており、露出面対向領域は用紙対向領域からみて主走査方向FSにおける両端部に位置している。
最初に、図9(a)に示した、用紙Pとして白色の厚紙を用いた場合に得られる読取画像データについて説明を行う。この例においては、R入力、G入力およびB入力のそれぞれにおいて、露出面対向領域に対応する階調値が0となっており、用紙対向領域に対応する階調値が255となっている。なお、用紙対向領域に対応する階調値が255となるのは、白色の厚紙からなる用紙Pの白色度合い(色調)と、読取基準部材82に設けられた白基準面82aの白色度合いとが一致している場合である。
次に、図9(b)に示した、用紙Pとして白色の薄紙を用いた場合に得られる読取画像データについて説明を行う。この例においては、R入力、G入力およびB入力のそれぞれにおいて、露出面対向領域に対応する階調値が0となっており、用紙対向領域に対応する階調値が、白色の厚紙の場合よりも小さい230となっている。これは、黒色を呈する読取露出面82bを用い、且つ、白紙の薄紙を用紙Pとして用いた場合、読取露出面82bが用紙Pを介して透けてしまうために、読み取り時に、用紙Pが白色ではなく実質的に灰色を呈してしまうこと、その結果として、読取露出面82bの影響を含む用紙Pの実質的な色調と、白基準面82aの色調とが一致しなくなることに起因する。ただし、灰色は無彩色であるので、この場合におけるR入力、G入力およびB入力の階調値の大きさは共通になっている。
続いて、図9(c)に示した、用紙Pとして灰色の厚紙を用いた場合に得られる読取画像データについて説明を行う。この例においては、R入力、G入力およびB入力のそれぞれにおいて、露出面対向領域に対応する階調値が0となっており、用紙対向領域に対応する階調値が、白色の厚紙の場合よりもさらに小さい190となっている。これは、灰色の厚紙からなる用紙Pの色調と、白基準面82aの色調とが一致していないことに起因する。ただし、灰色は無彩色であるので、この場合におけるR入力、G入力およびB入力の階調値の大きさは共通になっている。
さらに、図10(b)に示した、用紙Pとして薄桃色の厚紙を用いた場合に得られる読取画像データについて説明を行う。この例においては、R入力、G入力およびB入力のそれぞれにおいて、露出面対向領域に対応する階調値が0となっている。ただし、用紙対向領域に対応する階調値については、R入力が白色の厚紙の場合よりも小さい230となっており、G入力およびB入力がR入力よりも小さい200となっている。これは、薄桃色の厚紙からなる用紙Pの色調と、白基準面82aの色調とが一致していないことに起因する。ここで、薄桃色は有彩色であるので、この場合におけるR入力、G入力およびB入力の階調値の大きさは共通になってない。
最後に、図10(c)に示した、用紙Pとして白色のエンボス紙を用いた場合に得られる読取画像データについて説明を行う。この例においては、R入力、G入力およびB入力のそれぞれにおいて、露出面対向領域に対応する階調値が0となっている。ただし、用紙対向領域に対応する階調値については、R入力、G入力およびB入力において、それぞれ255となる部位と、それぞれ200になる部位とが、交互に存在するようになっている。これは、用紙Pの表面に設けられた凹凸により、凸部の色調と白基準面82aの色調とが一致する一方、凹部の色調と白基準面82aの色調とが実質的に一致しなくなることに起因する。ただし、白色は無彩色であるので、この場合におけるR入力、G入力およびB入力の階調値の大きさは、凹部および凸部のそれぞれにおいて共通になっている。
なお、図9および図10では、発明の理解を助けるために、理想的な状態すなわち用紙Pが主走査方向FSに沿って平坦且つ色むらのない状態(図10(c)に示すエンボス紙においては、凹部と凸部とが主走査方向FSに沿って周期的に存在し且つ凹部の深さが揃っている状態)である場合を例とした。しかしながら、実際の用紙Pにおいては、ばらつきが存在し得るため、主走査方向FSに沿う各画素の入力値(階調値)に、多少のばらつきが生じることもあり得る。
また、この説明において、用紙Pが「厚紙」であるか「薄紙」であるかは、用紙Pを介して背面が透けているか否かに基づいて決まるものである。すなわち、用紙Pを介して背面が透けないものが「厚紙」であり、用紙Pを介して背面が透けてしまうものが「薄紙」である。
図11は、用紙P上における画像の印刷領域を説明するための図である。本実施の形態の印刷装置1では、画像形成部10によって用紙P上に画像の印刷を行うが、その際、元画像データ(実際には印刷用元画像データ)に基づく印刷画像は、用紙Pにおける四辺の縁を除く中央側の領域に印刷される。なお、以下の説明においては、用紙P上において印刷画像が印刷され得る領域の外縁を、設定枠F(図中に破線で示す)と呼ぶ。また、用紙P上において、設定枠Fの内側すなわち印刷画像が印刷され得る領域を枠内領域Aiと呼び、設定枠Fの外側すなわち印刷画像が印刷され得ない領域を枠外領域Aoと呼ぶ。
そして、本実施の形態では、用紙P上における枠内領域Aiおよび枠外領域Aoの両者を、画像読取部60によって読み取ることにより、1頁分の読取画像データを得ている。ここで、本実施の形態では、上述したように、画像読取部60によって画像読取を行う場合に、黒色を呈する読取露出面82bを読取位置RPに配置している。このため、図9および図10を用いて説明したように、RGB各色の読取結果に基づき、枠外領域Aoの外縁すなわち用紙Pの端部位置(用紙対向領域と露出面対向領域との境界)を容易に判別でき、その内側のデータを1頁分の読取画像データとして抽出することが可能となっている。
また、本実施の形態では、このようにして得られた1頁分の読取画像データのうち、枠外領域Ao内において矩形状に設定された下地画像取得領域Agに存在するものを、制御部100の下地補正設定部104(図7参照)で使用する下地画像データとして抽出している。この例においては、枠外領域Aoのうち、主走査方向FSにおける上流側且つ副走査方向SSにおける上流側となる部位を、下地画像取得領域Agに設定している。
図12(a)は、下地画像取得領域Agの構造を説明するための図であり、図12(b)は、下地画像取得領域Agから得られた各階調値に基づく階調分布(ヒストグラム)の一例を説明するための図である。
図12(a)に示すように、本実施の形態における下地画像取得領域Agは、主走査方向FSにおいてM個連続し且つ副走査方向においてN個連続する、M×N個の画素を含んでいる。すなわち、下地画像取得領域Agは、複数の画素によって構成されている。
また、下地画像取得領域Agを構成する複数の画素の階調値を横軸とし、各階調値の頻度を縦軸としてヒストグラムを作成した場合、図12(b)に示すように、用紙Pの状態に応じて種々のパターンが得られる。ここで、図12(b)においては、用紙Pとして白色の厚紙からなる第1用紙Paを用いた場合に得られる階調分布(図中に実線で示す)と、用紙Pとして白色の薄紙あるいは灰色の厚紙からなる第2用紙Pbを用いた場合に得られる階調分布(図中に破線で示す)と、用紙Pとして白色のエンボス紙からなる第3用紙Pcを用いた場合に得られる階調分布(図中に一点鎖線で示す)とを例示している。
第1用紙Pa(白色の厚紙)の場合、その階調分布は、高階調側においてシャープなピークを有しているパターンとなる。また、第2用紙Pb(白色の薄紙あるいは灰色の厚紙)の場合、その階調分布は、その濃度に応じて、高階調側と低階調側との間の中階調側においてシャープなピークを有しているパターンとなる。これに対し、第3用紙Pc(白色のエンボス紙)の場合、その階調分布は、上述した2つのものと比べてピークが潰れた、ブロードなパターンとなる。
図13は、本実施の形態の印刷システムにおける印刷および検査の手順を説明するための図である。以下では、図13にしたがって、印刷システムを構成する各装置の動作および各装置間でのデータのやりとりについて説明を行う。
設定装置2(図示せず)で作成された元画像データ(設定色空間(この例ではRGB)、設定解像度(この例では300dpi))が、印刷装置1の印刷用元画像作成部102に入力される。これに伴い、印刷用元画像作成部102は、元画像データ(RGB、設定解像度)に基づく印刷用元画像データ(出力色空間(この例ではCMYK)、出力解像度(この例では600dpi))を作成する。
また、印刷装置1では、印刷用元画像作成部102で作成された印刷用元画像データ(CMYK、出力解像度)が、画像形成部10に入力される。これに伴い、画像形成部10が、CMYKの各色を含む画像を用紙Pに印刷し、印刷物として出力する。続いて、この用紙P上の印刷画像を、印刷装置1に設けられた画像読取部60が読み取る。そして、画像読取部60は、3本のラインセンサ77R、77G、77Bを用いた読取結果に基づいて、読取画像データ(入力色空間(この例ではRGB)、入力解像度(この例では300dpi))を作成する。
さらに、印刷装置1では、画像読取部60で作成された読取画像データの一部を抽出して得られた下地画像データ(RGB、入力解像度)が、下地補正設定部104に入力される。これに伴い、下地補正設定部104は、必要に応じて解像度変換指示の出力を行い、また、下地補正に使用する下地補正用LUTの作成を行う。なお、下地補正設定部104が実行する具体的な処理の内容については後述する。
さらにまた、印刷装置1では、画像読取部60で作成された読取画像データ(RGB、入力解像度)が、照合用読取画像作成部105に入力される。これに伴い、照合用読取画像作成部105は、読取画像データ(RGB、入力解像度)と、下地補正設定部104から入力されてくる補正データ(解像度変換指示、下地補正用LUT)とを用いて、照合用読取画像データ(L*a*b*、検査解像度(300dpi(基準値)または150dpi))を作成する。なお、照合用読取画像作成部105が実行する具体的な処理の内容については後述する。
一方、今回の印刷に用いられたものと同じ元画像データ(RGB、設定解像度)が、印刷装置1の照合用元画像作成部103に入力される。これに伴い、照合用元画像作成部103は、元画像データ(RGB、設定解像度)に基づく照合用元画像データ(検査色空間(この例ではL*a*b*)、検査解像度(この例では300dpiまたは150dpi))を作成する。ここで、照合用元画像作成部103は、下地補正設定部104から補正データ(解像度変換指示)を受けていない場合において、照合用元画像データの検査解像度を300dpiとし、下地補正設定部104から補正データ(解像度変換指示)を受けている場合において、照合用元画像データの検査解像度を150dpiとなるように変換する。
続いて、検査装置3では、同じ元画像データに基づいて得られた、印刷装置1の照合用元画像作成部103から出力された照合用元画像データ(L*a*b*、検査解像度)および印刷装置1の照合用読取画像作成部105から出力された照合用読取画像データ(L*a*b*、検査解像度)が、画像照合部302に入力される。これに伴い、画像照合部302では、照合用元画像データ(L*a*b*、検査解像度)および照合用読取画像データ(L*a*b*、検査解像度)について、画素毎に照合を行う。なお、画像照合部302における照合手法としては、例えば照合用元画像データ(L*a*b*、検査解像度)および照合用読取画像データ(L*a*b*、検査解像度)について、二次元座標上で同一位置に存在する画素同士の画素値の差分を、画素毎に演算することで、差分画像データ(L*a*b*、検査解像度)を得るやり方が挙げられる。
そして、検査装置3では、画像照合部302による照合結果(差分画像データ)が、画像欠陥判定部303に入力される。これに伴い、画像欠陥判定部303では、この照合結果に基づいて、用紙Pに印刷された印刷画像における画像欠陥の有無を判定する。なお、画像欠陥判定部303による画像欠陥の判定手法としては、例えば照合結果における差分の大きさが、予め決められた基準値よりも大きい場合に、画像欠陥の発生を検出するやり方が挙げられる。ここで、画像欠陥の発生が検出された場合は、この判定結果が、設定装置2に送信される。そして、設定装置2ではUI202(図3参照)に、画像欠陥の発生を伝えるための画像が表示される。
図14は、印刷システムにおける印刷および検査の手順のうち、図7に示す下地補正設定部104が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
下地補正設定部104では、まず、シェーディング補正部1041が、画像読取部60から下地画像データを取得し(ステップ101)、取得した下地画像データに対しシェーディング補正を実行する(ステップ102)。
次に、検査解像度決定部1042は、シェーディング補正部1041にてシェーディング補正が施された下地画像データを構成する各画素の階調値に基づき、例えば図12(b)に示したようなヒストグラム(階調分布)を作成する(ステップ103)。それから、検査解像度決定部1042は、得られた階調分布が、広範にわたるものすなわち、図12(b)に示した第3用紙Pcに近いパターンであるか否かを判断する(ステップ104)。ステップ104において肯定の判断(Yes)を行った場合、検査解像度決定部1042はLUT作成部1043、照合用元画像作成部103および照合用読取画像作成部105(解像度変換部1052)に対し、解像度変換指示(検査解像度を300dpi(基準値)から150dpiに変更する旨の指示)を出力する(ステップ105)。一方、ステップ104において否定の判断(No)を行った場合、検査解像度決定部1042は、解像度変換指示を出力することなく、そのまま次のステップ106へと進む。
続いて、LUT作成部1043は、シェーディング補正部1041にてシェーディング補正が施された下地画像データに基づき、下地補正用LUTを作成し(ステップ106)、作成した下地補正用LUTを照合用読取画像作成部105(階調変換部1053)に出力する(ステップ107)。なお、ステップ105において、検査解像度決定部1042から解像度変換指示を受けていた場合、LUT作成部1043は、解像度変換指示に対応した下地補正用LUTの作成を行う。
そして、次頁すなわち次の印刷物が存在するか否かが判断される(ステップ108)。ステップ108において肯定の判断(Yes)を行った場合は、ステップ101に戻って、次頁の印刷物から得られた下地画像データに対する処理を続行する。一方、ステップ108において否定の判断(No)を行った場合は、一連の処理を完了する。
図15は、印刷システムにおける印刷および検査の手順のうち、図7に示す照合用読取画像作成部105が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
照合用読取画像作成部105では、まず、シェーディング補正部1051が、画像読取部60から読取画像データを取得し(ステップ201)、取得した読取画像データに対しシェーディング補正を実行する(ステップ202)。
次に、解像度変換部1052は、下地補正設定部104に設けられた検査解像度決定部1042から解像度変換指示があったか否かを判断する(ステップ203)。ステップ203において肯定の判断(Yes)を行った場合、解像度変換部1052は、シェーディング補正部1041にてシェーディング補正が施された読取画像データに対し、その解像度を半分(この例では、入力解像度が300dpi(検査解像度の基準値と同じ)であるために、150dpiとなる)とする解像度変換を実行する(ステップ204)。一方、ステップ203において否定の判断(No)を行った場合、解像度変換部1052は、解像度変換を実行することなく、そのまま次のステップ205へと進む。
続いて、階調変換部1053は、シェーディング補正部1041にてシェーディング補正が施された読取画像データ(あるいはさらに解像度変換が施された読取画像データ)に対し、下地補正設定部104に設けられたLUT作成部1043から受け取った下地補正用LUTを用いて、階調変換を実行する(ステップ206)。ここで、階調変換に用いられる下地補正用LUTの元となる下地画像データは、階調変換の対象となる読取画像データに含まれていたものとなっている。
それから、色空間変換部1054は、階調変換までが施された読取画像データに、入力色空間すなわちRGB色空間から検査色空間すなわちL*a*b*色空間に変換する色空間変換を実行し(ステップ207)、得られた照合用読取画像データを送受信部101に向けて出力する(ステップ208)。
そして、次頁すなわち次の印刷物が存在するか否かが判断される(ステップ209)。ステップ209において肯定の判断(Yes)を行った場合は、ステップ201に戻って、次頁の印刷物から得られた読取画像データに対する処理を続行する。一方、ステップ209において否定の判断(No)を行った場合は、一連の処理を完了する。
図16は、図7に示すLUT作成部1043で作成され且つ階調変換部1053で使用される、下地補正用LUTの一例を説明するための図である。
ここで、図16(a)は、図9(a)および図10(a)を用いて説明した、用紙Pとして白色の厚紙を用いる場合における、RGB各色の下地画像データの内容と設定される下地補正用LUTとの関係を示している。また、図16(b)は、図9(b)を用いて説明した、用紙Pとして白色の薄紙を用いる場合における、RGB各色の下地画像データの内容と設定される下地補正用LUTとの関係を示している。さらに、図16(c)は、図9(c)を用いて説明した、用紙Pとして灰色の厚紙を用いる場合における、RGB各色の下地画像データの内容と設定される下地補正用LUTとの関係を示している。さらにまた、図16(d)は、図10(b)を用いて説明した、用紙Pとして薄桃色の厚紙を用いる場合における、RGB各色の下地画像データの内容と設定される下地補正用LUTとの関係を示している。そして、図16(e)は、図10(c)を用いて説明した、用紙Pとして白色のエンボス紙を用いる場合における、RGB各色の下地画像データの内容と設定される下地補正用LUTとの関係を示している。
なお、図16(a)〜(e)に示すRGB各色の階調値は、下地画像データを構成する複数の画素において、各色の階調値を色毎に平均して得られた平均階調値である。例えば用紙Pとしてエンボス紙を用いた場合には、図10(c)を用いて説明したように、用紙Pに存在する凹凸に応じて、階調値に変動(分布)が生じてしまうことになるが、複数の画素の階調値を色毎に平均化することにより、用紙Pに存在する凹凸に起因する濃淡の影響を低減している。
また、下地補正用LUTは、RGB各色について、R(赤)の入力階調(変換前)と出力階調(変換後)とを対応付けた赤用変換テーブルと、G(緑)の入力階調(変換前)と出力階調(変換後)とを対応付けた緑用変換テーブルと、B(青)の入力階調(変換前)と出力階調(変換後)とを対応付けた青用変換テーブルとを含んでいる。そして、この例では、説明を簡略化するために、赤用変換テーブル、緑用変換テーブルおよび青用変換テーブルのそれぞれにおいて、入力階調と出力階調との関係が1次式で表される場合を例としている。
例えば図16(a)に示す例では、下地画像データにおけるRGB各色の階調値がそれぞれ255となっている。このため、RGBの各色について、入力階調値0が出力階調値0となり、入力階調値255が出力階調値255となるように赤用変換テーブル、緑用変換テーブルおよび青用変換テーブルが作成される。なお、この場合は、実質的に階調補正が実行されないことになる。
例えば図16(b)に示す例では、下地画像データにおけるRGB各色の階調値がそれぞれ230となっている。このため、RGBの各色について、入力階調値0が出力階調値0となり、入力階調値230が出力階調値255となるように赤用変換テーブル、緑用変換テーブルおよび青用変換テーブルが作成される。
例えば図16(c)に示す例では、下地画像データにおけるRGB各色の階調値がそれぞれ190となっている。このため、RGBの各色について、入力階調値0が出力階調値0となり、入力階調値190が出力階調値255となるように赤用変換テーブル、緑用変換テーブルおよび青用変換テーブルが作成される。
例えば図16(d)に示す例では、下地画像データにおいて、R色の階調値が230となり、G色およびB色の階調値がそれぞれ200となっている。このため、R色については、入力階調値0が出力階調値0となり、入力階調値230が出力階調値255となるように赤用変換テーブルが作成され、G色およびB色については、入力階調値0が出力階調値0となり、入力階調値200が出力階調値255となるように緑用変換テーブルおよび青用変換テーブルが作成される。
例えば図16(e)に示す例では、下地画像データにおけるRGB各色の階調値がそれぞれ180となっている。このため、RGBの各色について、入力階調値0が出力階調値0となり、入力階調値180が出力階調値255となるように赤用変換テーブル、緑用変換テーブルおよび青用変換テーブルが作成される。
最後に、本実施の形態の印刷システムにおける印刷および検査の手順について、具体的な例を挙げて説明を行う。
図17は、元画像から得られた印刷用元画像と、印刷用元画像の印刷対象となる用紙Pと、用紙Pに印刷用元画像を印刷して得られた印刷物との関係を説明するための概念図である。ここで、図17(a)は印刷用元画像を、図17(b)は用紙Pを、図17(c)は印刷物を、それぞれ示している。なお、この例では、図17(a)に示す印刷用元画像が「あいうえお」の文字画像であるものとし、図17(b)に示す用紙Pとして白色の薄紙を用いているものとする。
この場合に得られる印刷物は、用紙Pの背面が透けて見えるような状態となる。また、図17(c)に示す印刷物においては、枠内領域Ai内に画像「あいうえお」が印刷されている一方、枠外領域Aoには、画像が印刷されてないことになる。
図18は、印刷物を読み取って得られた読取画像と、読取画像から得られた下地画像と、読取画像および下地画像に基づいて得られた照合用読取画像との関係を説明するための概念図である。ここで、図18(a)は読取画像を、図18(b)は下地画像を、図18(c)は照合用読取画像を、それぞれ示している。この例では、印刷物を構成する用紙Pが白色の薄紙であることから、読取画像における背景部(用紙Pの地肌が露出している部分)は、読み取り時の背景となっていた、黒色を呈する読取露出面82b(図3参照)に起因して、灰色になっている。ここで、本実施の形態では、下地補正設定部104および照合用読取画像作成部105にて、下地画像を利用した下地補正を行っているため、得られる照合用読取画像においては、白紙の薄紙を用紙Pとして用いたことに起因する影響が取り除かれることになる。
図19は、照合用読取画像と、照合用読取画像と同じ元画像に基づいて得られた照合用元画像と、同じ元画像に基づいて得られた照合用読取画像および照合用元画像の差分画像との関係を説明するための概念図である。ここで、図19(a)は照合用読取画像(図18(c)と同じもの)を、図19(b)は照合用元画像を、図19(c)は差分画像を、それぞれ示している。この例では、照合用読取画像において、用紙Pの下地に起因して存在することとなった下地画像の影響が取り除かれていることから、図19(c)に示すように、共通の元画像に基づいて得られた照合用読取画像および照合用元画像の差分として得られる、差分画像が空の状態になる。すなわち、印刷物における用紙Pの状態が、差分画像に影響を与えにくくなる。
そして、本実施の形態では、画像形成部10から出力される印刷物の1頁毎に下地画像データの取得および下地画像データに基づく下地補正を行っているので、例えば印刷装置1に設けられた第1用紙供給装置40Aと第2用紙供給装置40Bとにそれぞれ状態が異なる用紙Pを収容しておき、一連の印刷動作中に、用紙Pの供給元を第1用紙供給装置40Aと第2用紙供給装置40Bとの間で切り替えるような場合であっても、下地補正における誤差の影響を少なくすることができる。
なお、本実施の形態では、印刷画像が記録された用紙Pすなわち印刷物を読み取って得た読取画像データから抽出した下地画像データに基づいて下地補正を行っていたが、これに限られない。例えば、設定装置2に設けられたUI202を介して、これから実行するジョブで使用する用紙Pの種別(用紙Pの厚さ、用紙Pの色、用紙Pの紙肌等)を下地補正設定部104にて取得し、取得した用紙Pの種別に応じて、解像度変換に関する決定や下地補正用LUTの作成を行うようにしてもよい。
また、本実施の形態では、下地補正において使用する各色の下地補正用LUTを、それぞれ1次式にて設定していたが、これに限られるものではなく、2次式以上を用いてもよく、また、DLUT(Direct Look Up Table)を用いてもかまわない。
さらに、本実施の形態では、有彩色(例えば薄桃色)に着色された用紙Pあるいはエンボス加工された用紙Pを用いて印刷を行った場合においても、下地補正および色変換を行って照合用読取画像データを作成していたが、この種の用紙Pの場合には、下地の影響が除去しきれない場合もあり得る。そこで、有彩色(例えば薄桃色)に着色された用紙Pあるいはエンボス加工された用紙P等を用いている場合には、照合用読取画像データの信頼性が高くないことを示すデータを付加しておくとよい。
さらにまた、本実施の形態では、画像形成部10を用いてフルカラー画像を形成する場合について説明を行ったが、これに限られるものではなく、例えば黒のみを使用してモノクロ画像を形成する場合にも、本実施の形態の手法を適用することが可能である。