JP5864966B2 - ノルボルネン系重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、沈殿重合法によるノルボルネン系モノマーの(共)重合体の製造方法に関する。
従来、ノルボルネン系重合体を代表とする環状オレフィン系付加重合体は耐熱性及び透明性に優れる有機材料として、光学フィルム等の分野で工業的に利用されている。このような環状オレフィン系付加重合体はTi、Zr、Cr、Co、Ni、Pd等の遷移金属化合物を含む触媒を用いて環状オレフィン系モノマーを付加重合することにより製造できることが種々報告されている。
しかし、その大半は、触媒の高性能化に特化したものが多く、重合方法としては、いわゆる溶液重合での実施が主流であり、製造工程の簡素化、製造コストの低減に着目した報告は非常に少なかった。
一般に、溶液重合では、生成したポリマーが溶媒に溶解したまま重合反応が進行するため、重合終了後にポリマーを固体状で取り出すには、溶媒を揮発させたり、ポリマー溶液を大量のポリマーの貧溶媒中に加えて、ポリマーを沈殿させた後、溶媒と分離することが必要となる。これらの方法では工程数が増えることに加え、多量のエネルギー及び大量の溶媒が必要となり、溶媒のリサイクルなどに掛かる費用、エネルギー費用のため製造コストが増大するという問題がある。
さらに、溶液重合では生成したポリマーが溶媒に溶解したまま重合反応が進行するため、ポリマーの生産量が増えてくると、溶液の粘度が著しく上昇し、撹拌ができなくなり、その影響で反応温度の制御が困難になるだけでなく、単位容積当りのポリマー生産量が上がらないという短所がある。
このように溶液重合には、複雑なポリマー分離工程、反応温度制御の難しさ、低生産性という問題点があることから高性能な触媒を使用しても、工業的にポリマーを生産する方法としては、適さないという問題があった。
これらの問題を解決することができるポリマーの製造方法として沈殿重合が知られている。沈殿重合では、モノマーは溶解するが、生成するポリマーについては貧溶媒である溶媒を反応溶媒として使用することにより、生成するポリマーを重合中に沈殿させ、反応液の粘度の上昇を防ぐことができる。その結果、反応温度制御と生産性向上を両立でき、かつポリマーの分離が容易であるという利点を有する。しかし、環状オレフィン系重合体の製造方法として沈殿重合を利用した例は非常に少ない。
例えば、国際公開第08/069568号パンフレット(特許文献1)には、アンチソルベント(ポリマーの貧溶媒)として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンを使用する沈殿重合を環状オレフィン系重合体の製造方法に適用することが開示されている。しかし、これらの溶媒を使用して極性基を有する環状オレフィン系重合体もしくは共重合体を製造する場合、生成したポリマーは沈殿するものの、沈殿したポリマーの表面にベタつきが発生し、ポリマーが反応器壁に付着し、重合が進んでいくと、やがては大きな塊状物となり、撹拌が困難になるという問題があった。
このように極性基を有するノルボルネン系付加(共)重合体の製造方法において、生成するポリマーを重合中に沈殿させることで高い単位容積当りのポリマー生産量を実現でき、かつ沈殿したポリマー表面にベタつきがなく、反応温度制御や反応終了後のポリマーの分離が容易な優れた沈殿重合法の例はなく、従ってそのような沈殿重合法の開発が望まれていた。
国際公開第08/069568号パンフレット
本発明の課題は、極性基を有するノルボルネン系モノマーの高分子量付加(共)重合体の効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来知られている沈殿重合溶媒であるn−ヘキサンに替えて脂肪族酢酸エステルを使用すると、生成した重合体が粉末状となり、その後の重合体と溶媒などとの分離(ろ過操作など)が容易となるため、生産性が著しく向上し、極性基を有するノルボルネン系モノマーの高分子量付加共重合体を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]のノルボルネン系共重合体の製造方法に関する。
[1]ノルボルネン系モノマーを溶解し、前記モノマーの重合体を溶解しない液体を溶媒として用いる、沈殿重合によるノルボルネン系(共)重合体の製造方法であって、前記沈殿重合の溶媒が脂肪族カルボン酸エステルを含むことを特徴とするノルボルネン系(共)重合体の製造方法。
[2]前記ノルボルネン系(共)重合体が、一般式(2)
Figure 0005864966
及び一般式(3)
Figure 0005864966
(式中、R12は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R13、R14、及びR15はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示されるモノマーユニットを含む前項[1]に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[3]一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみからなる前項[2]に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[4]沈殿重合の溶媒に含まれる脂肪族カルボン酸エステルが60容量%以上である前項[1]〜[3]のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[5]前記脂肪族カルボン酸エステルが炭素数1〜5の脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルである前項[1]〜[4]のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[6]前記脂肪族カルボン酸エステルが脂肪族カルボン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステルである前項[1]〜[4]のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[7]前記脂肪族カルボン酸エステルが、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルの少なくとも一種である前項[1]〜[4]のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[8]前記沈殿重合の溶媒がトルエンと60容量%以上の酢酸エチルを含む前項[1]〜[3]のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
本発明によればノルボルネンと極性基を有するノルボルネン系モノマーとの高分子量付加共重合体を効率よく製造することができる。本発明により得られるノルボルネン系共重合体は優れた透明性、耐熱性、低吸水性、電気絶縁特性等を有し、光学用途、医療用途、電材用途、包装材料用途、構造材料用途等の多くの用途で利用できる。
具体的には、レンズや偏光フィルム等の光学用成形品、フィルム、キャリアテープ、フィルムコンデンサー、フレキシブルプリント基板等の電気絶縁材料、プレススルーパッケージ、輸液バッグ、薬液バイアル等の医療用容器、ラップやトレイ等の食品包装成形品、電気器具等のケーシング、インナーパネル等の自動車内装部品、カーポートやグレージング等の建材等に利用可能である。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[ノルボルネン系モノマーの重合用触媒]
本発明に使用できるノルボルネン系モノマーの重合用触媒に特に限定はない。沈殿重合はモノマーと生成するポリマー及び重合溶媒との組み合わせに依存するので触媒の種類には依存しない。ただし、沈殿重合の溶媒により被毒されない触媒と重合条件を選定する必要がある。パラジウム(Pd)やニッケル(Ni)を中心金属とする錯体を必須成分とする組成物を触媒として用いることができる。
本発明に使用できるノルボルネン系モノマーの重合用触媒としては、例えばPdやNiを中心金属とする遷移金属錯体を必須成分とし、その遷移金属錯体と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物である助触媒(以下、「助触媒」と略すことがある。)及びホスフィン系配位子を任意成分として含有する触媒、あるいは、PdやNiを中心金属とする遷移金属錯体を必須成分とし、有機アルミニウム化合物及び3級または4級ホウ素化合物を任意成分として含有する触媒を挙げることができる。
本発明に使用できるPdやNiを中心金属とする遷移金属錯体を必須成分とし、助触媒及びホスフィン系配位子を任意成分として含有する触媒における遷移金属錯体の具体例としては、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、(π−アリル)パラジウムクロリドダイマー、シクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウム、メチルシクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウム、ペンタメチルシクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウム、インデニル(π−アリル)パラジウム、フルオレニル(π−アリル)パラジウム、ジ(π−アリル)ビス[μ−(N,N’−ジフェニルベンズアミジナート)−N:N’]ジパラジウム、ジ(π−アリル)ビス{μ−[N,N’−ビス(2−メチルフェニル)ベンズアミジナート]−N:N’}ジパラジウム、ジ(π−アリル)ビス{μ−[N,N’−ビス(2−イソプロピルフェニル)ベンズアミジナート]−N:N’}ジパラジウム、ジ(π−アリル)ビス{μ−[N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ベンズアミジナート]−N:N’}ジパラジウム、ジ(π−アリル)ビス{μ−[N,N’−ジシクロヘキシルベンズアミジナート]−N:N’}ジパラジウム、ジ(π−アリル)ビス{μ−[N,N’−ジイソプロピルベンズアミジナート]−N:N’}ジパラジウム、ジ(π−アリル)ビス[μ−(N,N’−ジフェニルアセトアミジナート)−N:N’]ジパラジウム、(π−アリル){4−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)−2−ペンテン−2−オラト−κ2N,O}パラジウム、(π−アリル){4−(1−ナフチルイミノ)−2−ペンテン−2−オラト−κ2N,O}パラジウム、シクロペンタジエニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、メチルシクロペンタジエニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ペンタメチルシクロペンタジエニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、インデニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、フルオレニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、シクロペンタジエニル(メチル)(トリシクロへキシルホスフィン)ニッケル、ペンタメチルシクロペンタジエニル(メチル)(トリシクロへキシルホスフィン)ニッケル、インデニル(メチル)(トリシクロへキシルホスフィン)ニッケル、フルオレニル(メチル)(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル、ビスインデニルニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケルを挙げることができる。
この遷移金属錯体に組み合わせる助触媒及びホスフィン系配位子の具体例については、後に記載した触媒の詳細説明部分における助触媒(B)、ホスフィン系配位子(C)と同様のものを挙げることができる。
本発明に使用できるPdやNiを中心金属とする遷移金属錯体を必須成分とし、有機アルミニウム化合物及び3級または4級ホウ素化合物を任意成分として含有する触媒における遷移金属錯体の具体例としては、シクロペンタジエニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、メチルシクロペンタジエニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ペンタメチルシクロペンタジエニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、インデニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、フルオレニル(メチル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、シクロペンタジエニル(メチル)(トリシクロへキシルホスフィン)ニッケル、ペンタメチルシクロペンタジエニル(メチル)(トリシクロへキシルホスフィン)ニッケル、インデニル(メチル)(トリシクロへキシルホスフィン)ニッケル、フルオレニル(メチル)(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル、ビスインデニルニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル、シクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウム、メチルシクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウム、ペンタメチルシクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウム、インデニル(π−アリル)パラジウム、フルオレニル(π−アリル)パラジウム、(π−アリル)パラジウムクロリドダイマー、ビス(アセチルアセトナト)パラジウムなどが挙げられる。これらの中でも、ビスインデニルニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケルが好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロへキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−プチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジへキシルアルミニウム、水素化ジイソへキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソプチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソプチルアルミニウムが好ましい。これらの有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
3級または4級ホウ素化合物の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N、N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
本発明の沈殿重合によるノルボルネン系(共)重合体の製造方法では、下記の重合触媒を用いることが好ましい。以下の記載ではこの触媒を例として説明するが、前述のような他の触媒系でも本発明の重合方法は適用可能である。
本発明の方法で好ましく用いられるノルボルネン系モノマーの重合用触媒は、遷移金属錯体(A)を必須成分とし、遷移金属錯体(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物である助触媒(B)(以下、「助触媒(B)」と略すことがある。)及びホスフィン系配位子(C)を任意成分として含有することを特徴とする。
遷移金属錯体(A):
必須成分の遷移金属錯体(A)は、π−アリル配位子を有する1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族の遷移金属と、2座配位子であるサリチルアルジミンとからなることを特徴とする。
遷移金属錯体(A)は一般式(1)
Figure 0005864966
で示される。
一般式(1)におけるMは1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族元素より選択される1つの遷移金属を表す。具体例としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)等を挙げることができる。これらのうち、錯体の安定性、合成のしやすさの観点から好ましい元素は、コバルト、ニッケル、パラジウム及び白金であり、ニッケルまたはパラジウムを用いることがより好ましい。
一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシロキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜10の炭化水素基を有するアミド基または炭素数1〜10のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表し、R1、R2、R3、R4は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−メトキシエチル基等の炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、3−メトキシシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、4−フルオロフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては塩素原子、フッ素原子が挙げられる。アルコキシ基としては炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。アリーロキシ基としてはフェノキシ基、ベンジロキシ基等が挙げられる。炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等が、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシロキシ基としてはトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられる。この他、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜10の炭化水素基を有するアミド基、炭素数1〜10のアルキル基を有するジアルキルアミノ基等が挙げられる。これらのうち、錯体の合成のしやすさの観点から、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子が好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
一般式(1)におけるR5は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基等の炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等が挙げられ、これらのうち、錯体の合成のしやすさの観点から、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
一般式(1)におけるR6は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ベンジル基等の炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基等が挙げられ、これらのうち、錯体の合成のしやすさ、及び錯体の安定性の観点から、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基が好ましく、フェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基が特に好ましい。
一般式(1)におけるR7、R8、R9、R10、R11はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R7、R8、R9、R10、R11は互いに結合して環構造を形成していてもよい。具体例としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;エテニル基、2−プロペニル基等の炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基等が挙げられ、これらのうち、錯体の合成のしやすさの観点から、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
以下に、一般式(1)で示される遷移金属錯体(A)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、以下の具体例において「M」は一般式(1)における「M」と同義である。また、Meはメチル基、Etはエチル基、t−Buはt−ブチル基、Phはフェニル基を表す。
Figure 0005864966
Figure 0005864966
Figure 0005864966
Figure 0005864966
Figure 0005864966
Figure 0005864966
Figure 0005864966
これらの中でも、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノラト}パラジウム、(π−アリル)[2−(N−フェニルイミノメチル)フェノラト]パラジウム、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノラト}パラジウムが好ましい。
本発明の遷移金属錯体(A)は、前駆体である(π−アリル)パラジウム(II)化合物とサリチルアルジミン化合物
Figure 0005864966
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は一般式(1)と同じ意味を示す。)の配位子交換反応により製造することができる。具体的な製造方法として、例えばJ.Organomet.Chem.,1974,81,227−246に記載の方法を挙げることができる
(π−アリル)パラジウム(II)化合物としては、サリチルアルジミン化合物と配位子交換可能な配位子を有する化合物であれば特に制限はされない。例えば、ジ(π−アリル)ジ(μ−クロロ)ジパラジウムや(π−アリル)(アセチルアセトナト)パラジウムが好ましい。
以下に、遷移金属錯体(A)を製造する際に用いるサリチルアルジミン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005864966
Figure 0005864966
このようなサリチルアルジミン化合物は市販されているものをそのまま使用することができる。また、Organometallics,1998,17,p.3149〜3151またはOrganometallics,1998,17,p.3460〜3465に記載の方法で製造したものを使用することもできる。
前記配位子交換反応は前駆体である(π−アリル)パラジウム(II)化合物を溶媒に溶解したものに、サリチルアルジミン化合物もしくは必要に応じてそれに塩基を加えたものを添加し、所定の温度で所定の時間撹拌を行うことで実施することができる。
配位子交換反応の際に使用する溶媒としては、各基質と反応しないものであれば特に制限はないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素系炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は混合して使用してもよい。また、使用する溶媒は脱水処理を施し、脱気処理したものが好ましい。
溶媒の使用量は、反応を著しく遅延しなければ、特に制限はないが、前駆体である(π−アリル)パラジウム(II)化合物の溶解性等に応じて適宜定めることができる。通常、前駆体である(π−アリル)パラジウム(II)化合物1gに対して、1〜100gの溶媒を用いる。
反応温度は特に制限されないが、一般には、−100〜150℃、好ましくは−50〜120℃である。温度が−100℃より低いと反応速度が遅くなり、温度が150℃より高いと生成した錯体の分解が起こることがある。上記範囲内で反応温度を選択することにより、反応速度を調整することができる。
反応時間も特に制限はなく、例えば1分間〜50時間である。また、反応は窒素ガスやアルゴンガスのような不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
反応終了後は、通常の分離・精製操作を行うことにより、目的の遷移金属錯体(A)を単離することができる。具体的には、反応で生成した塩を遠心分離やろ過で除去した後、再結晶することにより目的の遷移金属錯体(A)を単離する。
反応で得られた生成物が目的の遷移金属錯体(A)であることの確認はNMRスペクトル、元素分析、マススペクトル、X線結晶解析等により行うことができる。
以上のようにして得られる遷移金属錯体(A)は、ノルボルネン系モノマーの重合用触媒成分として有用である。
本発明のノルボルネン系モノマーの重合用触媒は、遷移金属錯体(A)の少なくとも1種を含有するものであればよいが、遷移金属錯体(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物である助触媒(B)、及びホスフィン系配位子(C)をさらに含有するものが、より高い触媒活性を発現できる点で好ましい。
助触媒(B):
本発明で用いられる遷移金属錯体(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物である助触媒(B)としては、非配位性アニオンとカチオンとを組み合わせたイオン性化合物が挙げられる。
非配位性アニオンとしては、1991年版周期表第13族元素の4級アニオンが挙げられる。具体的には、テトラ(フェニル)ボレート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ジ(トリフルオルメチル)フェニル]ボレート、テトラ(トリイル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、トリフェニル(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。
前記カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオン等の3置換カルボニウムカチオンが挙げられる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンが挙げられる。
オキソニウムカチオンの具体例としては、ヒドロキソニウムカチオン、メチルオキソニウムカチオン等のアルキルオキソニウムカチオン、ジメチルオキソニウムカチオン等のジアルキルオキソニウムカチオン、トリメチルオキソニウムカチオン、トリエチルオキソニウムカチオン等のトリアルキルオキソニウムカチオン等が挙げられる。
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
フェロセニウムカチオンの具体例としては、フェロセニウムカチオン、1,1−ジメチルフェロセニウムカチオン、1,1−ジエチルフェロセニウムカチオン等のジアルキルフェロセニウムカチオン等が挙げられる。
助触媒(B)の好ましい例は、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(フルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス[3,5−ジ(トリフルオルメチル)フェニル]ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ジ(トリフルオルメチル)フェニル]ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等である。
ホスフィン系配位子(C):
本発明で用いられるホスフィン系配位子(C)とは、水素原子、アルキル基もしくはアリール基から独立して選ばれる3つの置換基が結合した3価のリン化合物である。具体的にはトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のトリシクロアルキルホスフィン類、ならびにトリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン類を挙げることができる。これらの中では触媒活性向上の観点から、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィンが好ましい。
本発明では、高活性にノルボルネン系重合体を製造することができることから、遷移金属錯体(A)として、一般式(1)において、R1、R2、R3、R4がメチル基またはハロゲン原子であり、R5が水素原子であり、R6がアルキル置換フェニル基であり、R7、R8、R9、R10、R11がいずれも水素原子である錯体を用い、助触媒(B)として、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph(Me)2NH][B(C654]}またはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C654]}を用い、さらにホスフィン系配位子(C)として、トリイソプロピルホスフィンまたはトリ−t−ブチルホスフィンを用いる触媒が、好ましい。
また、遷移金属錯体(A)として、一般式(1)において、R1、R3がメチル基またはフッ素原子であり、R2、R4、及びR5が水素原子であり、R6がフェニル基または2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、R7、R8、R9、R10、及びR11がいずれも水素原子である錯体を用い、助触媒(B)として、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph(Me)2NH][B(C654]}を用い、さらにホスフィン系配位子(C)として、トリイソプロピルホスフィンを用いる触媒が、さらに好ましい。
本発明で使用する触媒における遷移金属錯体(A)と助触媒(B)との使用割合は、各種の条件により異なるため一義的には定められないが、通常は(A)/(B)(モル比)で1/0.1〜1/100であり、好ましくは1/0.5〜1/50、さらに好ましくは1/1〜1/10である。
遷移金属錯体(A)とホスフィン系配位子(C)との使用割合も、各種の条件により異なるため一義的には定められないが、通常は(A)/(C)(モル比)で1/0.1〜1/2であり、好ましくは1/0.5〜1/1.8、さらに好ましくは1/1〜1/1.5である。
各触媒成分を接触させる温度も特に制限されないが、一般には、−100〜150℃、好ましくは−50〜120℃である。温度が−100℃より低いと各成分間の反応が遅くなり、温度が150℃より高いと各成分の分解を招き、触媒の活性が低下する。上記範囲内で接触温度を選択することにより、重合に使用した際に重合速度や生成ポリマーの分子量等を調整することができる。
各触媒成分の混合は溶媒存在下に行ってもよい。使用可能な溶媒としては特に限定はされないが、各触媒成分との反応性が無く、工業的スケールでの製造がされていて、入手が容易なものが好ましい。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素系炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等を使用することができる。これらの中でも、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素が好ましい。また、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
[ノルボルネン系重合体の製造方法]
本発明のノルボルネン系重合体の製造方法は、重合用触媒の存在下に、ノルボルネン系モノマーを付加重合することを特徴とする。
本発明の製造方法は、(i)ノルボルネン系モノマー1種類のみを付加重合することにより、ノルボルネン系モノマーの単独付加重合体を得る方法、(ii)ノルボルネン系モノマー2種類以上を付加共重合することにより、ノルボルネン系モノマーの付加共重合体を得る方法、(iii)ノルボルネン系モノマー1種類以上とノルボルネン系モノマーと共重合可能な他のビニルモノマー1種類以上とを付加共重合することにより、ノルボルネン系モノマーの付加共重合体を得る方法のいずれかである。
ノルボルネン系モノマー:
本発明に用いられるノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を有する化合物(以下、単に「ノルボルネン類」ということがある。)であれば、特に制限はされない。極性あるいは非極性の置換基を有していてもよく、ノルボルネン環以外の環構造を有していてもよい。
ノルボルネン類としては、一般式(4)で示されるものが好ましい。
Figure 0005864966
式中、R16〜R19は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子もしくはケイ素原子を含む官能基;ハロゲン原子もしくは前記官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、R16〜R19は、互いに結合して環を形成していてもよい。nは0または1である。
一般式(4)で示されるノルボルネン類は、nが0であるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類及びnが1であるテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類に分類することができる。本発明の製造方法ではいずれも使用することができる。
一般式(4)におけるR16〜R19としては、具体的には、水素原子;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子;水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基等の酸素原子を含む官能基;アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、及びシアノ基等の窒素原子を含む官能基;メルカプト基、アルコキシチオ基、及びアリールオキシチオ基等の硫黄原子を含む官能基;シリル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシシリル基、及びアリールオキシシリル基等のケイ素原子を含む官能基を挙げることができる。また、これらの官能基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、及びアリール基等の炭化水素基も挙げられる。さらに、R16〜R19は、互いに結合して環を形成してもよく、このような例としては、酸無水物構造、カーボネート構造、ジチオカーボネート構造等を例示することができる。
本発明に用いられるノルボルネン類の具体例としては、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−n−ブチル−2−ノルボルネン、5−n−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−n−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン等の無置換または炭化水素基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等の無置換または炭化水素基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類;
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸n−ブチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸n−ブチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸エチル等のアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸エチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸エチル等のアルコキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等のヒドロキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸等のヒドロキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、2−ヒドロキシメチル−5−ノルボルネン、2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−5−ノルボルネン、2,3−ジ(ヒドロキシメチル)−5−ノルボルネン等のヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−オール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジメタノール等のヒドロキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−アセトキシ−5−ノルボルネン、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン、2,2−ジ(アセトキシメチル)−5−ノルボルネン、2,3−ジ(アセトキシメチル)−5−ノルボルネン等のアセトキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;4−アセトキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−アセトキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジ(アセトキシメチル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のアセトキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、5−ノルボルネン−2−カルボキサミド等の窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボニトリル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボキサミド等の窒素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−クロロ−5−ノルボルネン、2−フルオロ−5−ノルボルネン等のハロゲン原子を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;4−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−フルオロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のハロゲン原子を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−トリメチルシロキシ−5−ノルボルネン、2−トリメトキシシリル−5−ノルボルネン、2−トリス(トリメトキシシリロキシ)シリル−5−ノルボルネン等のケイ素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;4−トリメチルシロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−トリメトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−トリス(トリメトキシシリロキシ)シリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のケイ素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−カーボネート、5−ノルボルネン−2,3−ジチオカーボネート等の酸無水物構造、カーボネート構造、ジチオカーボネート構造を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−カーボネート、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジチオカーボネート等の酸無水物構造、カーボネート構造、ジチオカーボネート構造を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類等を挙げることができる。
これらのノルボルネン類はそれぞれ単独で用いることもできるし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明の製造方法においては、これらのノルボルネン類の中でも、下記一般式(2)
Figure 0005864966
及び一般式(3)
Figure 0005864966
(式中、R12は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R13、R14、及びR15はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示されるモノマーユニットに相当するノルボルネン類を用いることが好ましい。
一般式(2)におけるR12が表す炭素数1〜10のアルキル基は直鎖状でも分岐していてもよい。
直鎖状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ぺンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。
分岐を有するアルキル基の例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基等が挙げられる。
これらの中でもR12としては、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が経済性の面で好ましい。モノマー製造コストの観点からは、メチル基が特に好ましい。
一般式(2)におけるR13及び式(3)におけるR14及びR15は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、炭素数3〜10のアルキル基は分岐していてもよい。これらのアルキル基としては前述のR12のアルキル基と同様のものが挙げられる。これらの中でもR13、R14及びR15としては、モノマー製造コストの観点から、水素原子が好ましい。
なお、R13が水素原子である場合、一般式(2)で示されるモノマーユニットの基本になるノルボルネン類は、R12が炭素数1のアルキル基のとき、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン、R12が炭素数2のアルキル基のとき、2−[(エチルカルボニルオキシ)メチル]−5−ノルボルネン、R12が炭素数3の直鎖状のアルキル基のとき、2−[(プロピルカルボニルオキシ)メチル]−5−ノルボルネンとなる。
14及びR15が水素原子である場合、式(3)で示されるモノマーユニットの基本になるノルボルネン類はノルボルネンとなる。
本発明の製造方法において、遷移金属錯体(A)、助触媒(B)及びホスフィン系配位子(C)を用いたノルボルネン系単量体の重合は沈殿重合で行う。
沈殿重合は溶液重合の一種であり、溶媒としてモノマーは溶解するが、ポリマーが溶解しないものを使用する。沈殿重合では重合と共にポリマーが析出してくるので、再沈殿精製のために大量に使用する貧溶媒(メタノール等)が不要となり、製造コストの面で有利となる。本発明の(共)重合体ではトルエンと酢酸エチルとの混合溶媒等が沈殿重合に適する。
一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットを含む共重合体を沈殿重合で製造する本発明の方法では、モノマーは溶解するが、生成したポリマーは溶解しない重合溶媒としては脂肪族カルボン酸エステルを含むものを使用する。沈殿重合用の溶媒は、脂肪族カルボン酸エステルを含んでいれば他に制限はなく、2種以上の脂肪族カルボン酸エステルからなる混合溶媒でもよい。また、生成したポリマーが溶解しない範囲で当該ポリマーの良溶媒(トルエンなど)や貧溶媒を含有してもよい。良溶媒は触媒を溶解するために用いてもよい。さらに、脂肪族カルボン酸エステル以外の、モノマーは溶解するが、生成したポリマーは溶解しない溶媒、例えばn−ヘキサンなどを併用してもよい。ただし、脂肪族カルボン酸エステルの割合が少なくなると、生成したポリマーが完全には沈殿しなかったり、粉状に沈殿しないなどハンドリングが悪化することがある。
脂肪族カルボン酸エステルとしては、炭素数1〜5の脂肪族カルボン酸のエステルが好ましく、炭素数1〜5の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜5のアルコールとの脂肪族カルボン酸アルキルエステルがより好ましく、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルがさらに好ましい。
種以上の脂肪族カルボン酸エステルからなる混合溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルから任意に選ばれる2種の混合溶媒が好ましく、酢酸エチルと酢酸n−プロピルの混合溶媒がより好ましい。また、脂肪族カルボン酸エステルとその他の溶媒との混合溶媒としては、炭素数1〜5の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルと芳香族炭化水素との混合溶媒が好ましく、酢酸エチルとトルエン、酢酸n−プロピルとトルエンの混合溶媒がより好ましい。

本発明の(共)重合体の製造方法において、沈殿重合を実施する際に2種以上の脂肪族カルボン酸エステルからなる混合溶媒を使用する場合、それぞれの混合割合に特に制限はなく、どのような割合で混合したものも使用することができる。
また、脂肪族カルボン酸エステルとその他の溶媒との混合溶媒を使用する場合、脂肪族カルボン酸エステルの割合が60容量%以上であることが好ましく、80容量%以上がより好ましい。脂肪族カルボン酸エステルの割合が60容量%未満だと、生成した(共)重合体が沈殿しにくくなり、ポリマーの回収率が低下することがある。なお、脂肪族カルボン酸エステルの割合は触媒などの溶解用に用いた溶媒など溶媒成分すべての合計量中の割合を意味する。
本発明の(共)重合体の製造方法において沈殿重合を実施する場合、溶媒として一般的な沈殿重合でよく利用される脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンを使用すると、ポリマーは生成と同時に析出するが、生成したポリマーが反応器壁に付着して、それがやがて凝集していき、最後には塊状物が生成し、撹拌が継続できなくなるため、沈殿重合用溶媒としては使用可能ではあるが、脂肪族カルボン酸エステルを使用する場合よりハンドリング性がやや劣る。
また、本発明の(共)重合体の製造方法において沈殿重合を実施する場合に、溶液重合でポリマーを沈殿させるためによく利用されるメタノール、エタノールのようなアルコール化合物やアセトン、メチルエチルケトン(MEK)のようなケトン化合物を使用すると、重合触媒の活性を著しく低減させてしまう。
以上のことから、本発明の(共)重合体の製造方法において沈殿重合を実施する場合、溶媒選択が重要であり、生成するポリマーが溶解せず、析出したポリマー表面のベタつきが無く、触媒を被毒しない溶媒として脂肪族カルボン酸エステルが適していることが分かる。
ポリマーの溶解性には当該ポリマーの分子構造が影響するが、モノマーの構成、量比があまり変わらなければ、重合触媒の種類などの影響は小さい。従って、本発明の重合触媒に限らず、他の重合触媒を用いて一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットを含む(共)重合体を沈殿重合で製造する場合にも、前記溶媒系を適用することができる。環状オレフィン化合物を重合することができるNi化合物またはPd化合物を含む触媒は、カルボン酸アルキルエステルにより被毒されて活性を発現しないものを除けば、すべて使用することができる。
重合を行う際には、主触媒(A)、助触媒(B)及びホスフィン系配位子(C)を混合するが、その混合順序は、主触媒(A)が助触媒(B)と接触する前にホスフィン系配位子(C)と混合されるようになっていれば、その他は特に限定されない。予め主触媒(A)成分とホスフィン系配位子(C)を混合し、さらに助触媒(B)を混合して反応組成物を得、重合させる単量体を含む溶液にこれを添加してもよい。また、重合させる単量体と主触媒(A)及びホスフィン系配位子(C)を含む溶液に、助触媒(B)を添加してもよく、重合させる単量体と助触媒(B)の混合溶液中に主触媒(A)及びホスフィン系配位子(C)の混合物を添加してもよい。
本発明では、予め主触媒(A)とホスフィン系配位子(C)とを混合し、1分間以上、好ましくは30分〜1時間程度接触させた後に、助触媒(B)と混合して反応系に添加するか、もしくは主触媒(A)とホスフィン系配位子(C)との混合物を助触媒(B)を含む反応系に添加することが好ましい。このような操作を行うことにより、より高い重合活性を発現することが可能になる。
重合温度も特に制限されないが、一般には、−100〜150℃、好ましくは−50〜120℃である。温度が−100℃より低いと重合速度が遅くなり、温度が150℃より高いと触媒の活性が低下することがある。上記範囲内で重合温度を選択することにより、重合速度や分子量等を調整することができる。
重合時間も特に制限はなく、例えば1分間〜100時間である。また、反応は窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
重合反応終了後、生成物であるノルボルネン系重合体は、必要に応じて公知の操作、処理方法(例えば、再沈殿等)により後処理を行い、ろ過分別後、乾燥を行うことにより単離される。
本発明の製造方法で製造される一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットから構成されるノルボルネン系共重合体において、一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量は10〜70モル%であることが好ましい。一般式(2)で示されるモノマーユニットが10モル%未満であると共重合体の疎水性が高くなり、有機溶媒に対する溶解性は低下するが、吸水性が低くなる傾向がある。一方、70モル%を超えると共重合体が親水性となり、有機溶媒に対する溶解性が向上するが、吸水性が高くなる傾向がある。従って、一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量を調整することにより、共重合体の溶媒への溶解性と吸水性を制御することが可能である。
本発明の製造方法で製造される一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットから構成されるノルボルネン系共重合体をフィルム、シート等へ成形する際に必要となる溶媒への適度な溶解性と低吸水性を両立させる観点からは、一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量は10〜80モル%が好ましく、15〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%がさらに好ましい。なお、一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量は粉末状もしくはフィルム状の共重合体を適当な重水素化溶媒に溶解させ、1H−NMRを測定し、その積分値より算出することができる。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体は、基本的にはノルボルネン類のみで構成される。ただし、この場合であっても本発明のノルボルネン系(共)重合体の性質をほとんど変化させないような微少量、例えば1モル%以下の第3のモノマーユニットの存在を除外するものではない。また、本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体は物性改良のため、本発明の効果を損なわない範囲で第3のモノマーを共重合させていてもよい。
第3のモノマーには特に制限はないが、エチレン性炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン及び1−ヘキセン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物類;1,3−ブタジエン、イソプレン等の鎖状共役ジエン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート類;等を挙げることができる。なかでも、エチレン、プロピレン、1−ヘキセンのようなα−オレフィン類やスチレンのような芳香族ビニル化合物類が特に好ましい。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系共重合体において、各モノマーユニットの共重合様式は重合条件により、ランダム、ブロック、交互のいずれをもとり得るが、共重合体の物性向上の観点からは、ランダムであることが望ましい。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は50,000〜2,000,000である。さらには100,000〜1,500,000がより好ましい。ポリスチレン換算数平均分子量が50,000未満であると機械強度が不十分である。ポリスチレン換算数平均分子量が2,000,000を超えると、キャストフィルムを成形する際に溶媒への溶解度が低下するばかりでなく、溶液粘度が高くなり、成形加工性が低下する。また、分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.00〜4.00が好ましく、1.30〜3.50がより好ましく、1.50〜3.30がさらに好ましい。分子量分布が広いとキャストフィルム成形時の溶液が均一になりにくいため、良好なフィルムが作製しにくくなる。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体の中でも、一般式(2)
Figure 0005864966
(式中の記号は前述と同じ意味を表す。)
で示されるモノマーユニットのみからなる重合体も好ましい。その数平均分子量(Mn)は、200,000〜1,000,000であり、数平均分子量が200,000未満であると耐薬品性が低下し、1,000,000を超えるとキャストフィルムを成形する際に溶媒への溶解度が低下するばかりでなく、溶液粘度が高くなり、成形加工性が低下することがある。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体の23℃における飽和吸水率は、通常、0.001〜1質量%、好ましくは0.005〜0.7質量%、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差、位相差の均一性、及び寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離等が発生せず、また、酸化防止剤等の添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。なお、上記飽和吸水率はJIS K7209に準拠し、23℃水中で24時間浸漬して増加質量を測定することにより求められる値である。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体のガラス転移温度(Tg)は、共重合体場合、その構成モノマー単位の種類、組成比、添加剤等の有無により異なるが、通常、80〜350℃、好ましくは100〜320℃、さらに好ましくは120〜300℃である。Tgが上記範囲よりも低いと、熱変形温度が低くなり、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、得られる光学フィルムの温度による光学特性の変化が大きくなることがある。また、Tgが上記範囲よりも高いと、延伸加工時にTg近辺まで加熱する場合に樹脂が熱劣化する可能性が高くなる。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン系(共)重合体は溶液流延法(溶液キャスト法)により成膜してフィルムに加工することができる。使用する溶媒としてはトルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、クロロホルム等を用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
各実施例及び比較例において、触媒活性は以下の式
Figure 0005864966
により算出した。ただし、実施例7では「パラジウムのモル数」を「ニッケルのモル数」とした。
得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により求めた。また、共重合体中のノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの組成比は、1H−NMRにより得られたピーク[δ:3.5−4.5ppm,5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(「ANB」と略す。)の「−COOCH2−」ユニット]と[δ:0.5−3.0ppm,ノルボルネン(「NB」と略す。)及び5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの「CH3COO−」、「−CH2−」及び「−CH=」ユニット]の積分比から求め、ANB含有率は以下の式
Figure 0005864966
より算出した。
実施例及び比較例で合成した物質の諸物性は、以下の通りに測定した。
1.1H−NMR,13C−NMR
使用機種:JEOL EX−400(400MHz,日本電子社製)、
測定方法:重水素化クロロホルムに溶解し、内部標準物質にテトラメチルシランを使用して測定した。
2.FT−IR
使用機種
システム:Spectrum GX(パーキンエルマー社製)、
ATR:MIRacleTM(Pike Technologies社製)。
測定方法
1回反射ATR法により測定した。
3.ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)
使用機種
カラム:Shodex GPC K−G+KF−806L×2(昭和電工社製)、
検出器:Shodex SE−61(昭和電工社製)。
測定条件
溶媒:テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:1.0ml/分、
試料濃度:1.0mg/ml、
注入量:1.0μl、
検量線:Universal Calibration curve、
解析プログラム:SIC 480II(システム インスツルメンツ社製)。
また、シクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウムは、Shawらの合成法(Shaw.B.L.,Proc.Chem.Soc.,1960,247)に従って合成した。
合成例1:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの合成
10Lのステンレス製オートクレーブにジシクロペンタジエン(東京化成工業社製,759.80g,5.747mol)、酢酸アリル(東京化成工業社製,1457.86g,14.561mol)及びヒドロキノン(和光純薬工業社製,2.25g,0.0204mol)を加えた。系内を窒素置換した後、500rpmで撹拌しながら、このオートクレーブを190℃まで昇温し、5時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、内容物を蒸留装置に移し、減圧下に蒸留を行い、0.07kPa、48℃の留分として、無色透明液状物1306.70gを得た。
得られた液状物の1H−NMRを測定し、目的の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンであることを確認した。また、得られた2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンのエキソ異性体とエンド異性体のモル比率はエキソ/エンド=18/82であった。
合成例2:2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノールの合成
一口フラスコに、サリチルアルデヒド(東京化成工業社製,2.00g,16.4mmol)、2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業社製,3.12g,17.6mmol)、エタノール(和光純薬工業社製,20ml)、ギ酸(和光純薬工業社製,305mg,6.63mmol)を加え、撹拌しながら、室温で一日反応を行った。析出物をろ別し、メタノールから再結晶を行って黄色結晶1.79gを得た。得られた結晶の1H−NMR及び13C−NMRを測定し、2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノールであることを確認した。
合成例3:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1]の合成
Figure 0005864966
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これに合成例2で調製した2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノール(506mg,1.80mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて溶解した。これを、ドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムの1.6mol/lヘキサン溶液(和光純薬工業社製,1.14ml,1.82mmol)を5分かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、徐々に室温に戻した。
別途用意した三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これにアリルパラジウムクロリドダイマー(和光純薬工業社製,305mg,0.834mmol)を仕込み、脱水ジクロロメタン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて溶解した。
この溶液を氷浴に漬けて0℃に冷却し、これに先に調製したテトラヒドロフラン/ヘキサン混合溶液を5分間かけてゆっくりと滴下し、0℃で2時間反応を行った。その後、減圧下に溶媒を完全に留去し、あらためて脱水トルエン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて撹拌した後、窒素下に遠心分離を行って、不要な塩を取り除き、上澄みのトルエン溶液を回収した。この溶液より減圧下に濃縮し、再結晶を行って、黄色結晶356mgを得た。得られた結晶の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトル測定を行い、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1]であることを確認した。
比較例1:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(溶液重合)
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、トルエン75mlで溶解し、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C65)(CH32NH][B(C654](ストレム社製,8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、70℃まで昇温した。そこへ合成例3で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C373](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、70℃で30分重合反応を行った。その後、その反応溶液に別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を加え、さらに70℃で30分重合反応を行った。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンで希釈し、さらに多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー10.52gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1052g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=916,000、分子量分布はMw/Mn=2.12であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は20.4mol%であった。再沈殿させて粉末状のポリマーを得るために貧溶媒として多量のメタノールを必要とした。
実施例1:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(9.42g,0.100mol)をトルエン5.4mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、酢酸エチル(70ml)で溶解し、80℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C373](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)とN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C65)(CH32NH][B(C654](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、80℃で1時間重合反応を行った。重合中、ポリマーは白色粉末として析出した。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加えて反応を停止し、析出したポリマーをろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー12.41gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1241g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=287,000、分子量分布はMw/Mn=2.18であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は20.1mol%であった。
実施例2:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
重合温度と重合時間を表1に記載の通りに替えた他は実施例1と同様にして重合を行った。
実施例3:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
重合溶媒を酢酸エチルから酢酸n−プロピルに替えた他は実施例1と同様にして重合を行った。
実施例4:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックと滴下漏斗とメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(6.31g,0.067mol)をトルエン7.3mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(22.11g,0.133mol)を加え、酢酸エチル(80ml)で溶解し、80℃まで昇温した。別途、滴下漏斗にノルボルネン(16.29g,0.173mol)をトルエン19.0mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(14.46g,0.087mol)及び酢酸エチル(80ml)を加えた。その後、フラスコへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C373](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)とN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C65)(CH32NH][B(C654](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をトルエン2.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、重合を開始した。重合中、ポリマーは白色粉末として析出した。重合開始から30分経過した時点から、滴下漏斗に仕込んだ混合液の滴下を開始し、80℃で重合反応を行いながら、80分かけて滴下を完了させた。滴下終了後、さらに80℃で10分反応を行い、重合開始から2時間後に少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加えて反応を停止し、析出したポリマーをろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー36.10gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は3610g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=420,800、分子量分布はMw/Mn=2.77であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は39.0mol%であった。
実施例5:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
滴下漏斗にノルボルネン(27.12g,0.288mol)をトルエン31.0mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(23.94g,0.144mol)及び酢酸エチル(135ml)を加え、それを140分かけて滴下したこと及び滴下終了後、さらに80℃で10分反応を行い、反応時間を3時間にしたこと以外は実施例4と同様にして重合を行い白色粉末状のポリマー54.00gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は5400g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=402,800、分子量分布はMw/Mn=3.22であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は34.1mol%であった。
実施例6:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
滴下漏斗にノルボルネン(38.04g,0.404mol)をトルエン44.0mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(33.58g,0.202mol)及び酢酸エチル(190ml)を加え、それを200分かけて滴下したこと及び滴下終了後、さらに80℃で10分反応を行い、反応時間を4時間にしたこと以外は実施例4と同様にして重合を行い白色粉末状のポリマー68.10gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は6810g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=332,300、分子量分布はMw/Mn=3.33であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は38.9mol%であった。
比較例2:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(n−ヘキサン溶媒での重合)
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、n−ヘキサン100mlで溶解し、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C65)(CH32NH][B(C654](ストレム社製,8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、90℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C373](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、90℃で30分重合反応を行った。重合開始直後からポリマーは白色固体として析出したが、固体表面のベタつきのため、フラスコ壁に固着した。この後、反応溶液に別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を加え、さらに90℃で30分重合反応を行った。この時点でポリマーはベトつきのある塊状となり、撹拌翼に絡みついた。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンを加えてポリマーを溶解し、その溶液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー12.10gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1210g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=214,000、分子量分布はMw/Mn=2.46であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は24.3mol%であった。
実施例7:Ni触媒を用いたノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した300ml三口フラスコを窒素置換し、それに、窒素下でノルボルネン(東京化成工業社製、9.6g、0.102mol)をトルエン11.1mlで溶解した溶液と2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(17.1g、0.103mol)及び酢酸エチル(昭和電工社製)60mlを加えた。一方、窒素下で20mLガラスアンプルに、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(10.3mg、40μmol)、トリス(ペンタフルオロフフェニル)ボロン[B(C653](61.0mg、120μmol)及びトリメチルアルミニウム(アルドリッチ社製、2.0M トルエン溶液、0.10ml、200μmol)を仕込み、脱水トルエン4mlで溶解させ、直ちに全量を三口フラスコに添加し重合を開始した。重合中、ポリマーは白色粉末として析出した。重合は室温で30分行い、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加えて反応を停止した。析出したポリマーをろ別洗浄後、減圧下90℃で5時間乾燥して、白色粉末状のポリマー8.9gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般的な有機溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=687,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの分子量分布はMw/Mn=1.99であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は26.0mol%であった。
実施例1〜7及び比較例1〜2について触媒種類、重合条件等を表1に、重合結果を表2に示す。表1中の各記号の意味は以下の通りである。
金属錯体(A):
A−1:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム、
S−1:ビス(アセチルアセトナト)ニッケル
助触媒(B):
B−1:N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
B−2:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、
B−3:トリメチルアルミニウム。
ホスフィン系配位子(C):
C−1:トリイソプロピルホスフィン、
モノマー:
NB:ノルボルネン、
ANB:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン。
なお、実施例1〜7、比較例1〜2で得られたポリマーはいずれもTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解した。
Figure 0005864966
Figure 0005864966
比較例1の重合では分子量の大きいノルボルネン系共重合体を得ることはできるものの、ポリマーを回収するために重合溶媒に対して多量(通常は5〜10倍)のメタノールを要した。
先行技術文献(国際公開第08/069568号パンフレット)に記載の沈殿重合溶媒であるn−ヘキサンを用いた比較例2では、生成したポリマーは撹拌翼に付着し、ポリマー回収のハンドリング性がよくなかった。
重合溶媒に酢酸エステルを用いた実施例1〜7では、触媒種によらず、生成ポリマーは粉状に沈殿し、容易に回収できた。
本発明の製造方法によれば、透明性、耐熱性、低吸水性、電気絶縁特性等に優れたノルボルネン系(共)重合体を効率的に製造することができ、製造コストの削減が可能となる。

Claims (7)

  1. ノルボルネン系モノマーを溶解し、前記モノマーの重合体を溶解しない液体を溶媒として用いる、沈殿重合によるノルボルネン系(共)重合体の製造方法であって、前記沈殿重合の溶媒が脂肪族カルボン酸エステルを含み、前記ノルボルネン系(共)重合体が、一般式(2)
    Figure 0005864966
    及び一般式(3)
    Figure 0005864966
    (式中、R 12 は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R 13 、R 14 、及びR 15 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
    で示されるモノマーユニットを含むことを特徴とするノルボルネン系(共)重合体の製造方法。
  2. 一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみからなる請求項に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
  3. 沈殿重合の溶媒に含まれる脂肪族カルボン酸エステルが60容量%以上である請求項1または2に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
  4. 前記脂肪族カルボン酸エステルが炭素数1〜5の脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルである請求項1〜のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
  5. 前記脂肪族カルボン酸エステルが脂肪族カルボン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステルである請求項1〜のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
  6. 前記脂肪族カルボン酸エステルが、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルの少なくとも一種である請求項1〜のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
  7. 前記沈殿重合の溶媒がトルエンと60容量%以上の酢酸エチルを含む請求項1〜のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
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