JP5862464B2 - 石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼 - Google Patents

石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼 Download PDF

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Description

本発明は、石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉に用いられる耐食性に優れた鋼材に関する。
ばら積み貨物船において、1990年代初頭に海難事故が相次ぎ国際問題となった。特に、石炭船や石炭・鉄鉱石兼用船で事故が多く報告されおり、その原因の大部分は船倉内の損傷であった。ばら積み貨物船では、積荷を直接船倉(以下「ホールド」とも言う)に積載するため、腐食性の積荷の影響を受け易く、船倉内の腐食、特に石炭船、石炭・鉄鉱石兼用船の船倉内の側壁部での孔食により、局所的に強度が減少することが問題と考えられている。
この孔食が著しく進行した事例や、船の強度を確保する肋骨部分の板厚が極端に減少している事例が報告されており、事故防止のために非特許文献1において、ホールド側壁部鋼材の切替基準を図面板厚の70%以下の場合、ホールド肋骨部鋼材の切替基準を図面板厚の75%以下の場合(但し、図面板厚−腐食代−腐食余裕厚より大きな値とする必要はない)と定めている。
前記孔食の発生するばら積み貨物船の側壁部は、シングルハルとなっていて、積荷と海水とは鋼材一枚隔てているだけである。そして、船倉内の温度は、石炭が有する自己発熱性により上昇するため、海水と船倉内の温度差により、船倉側壁部には結露水が生じやすい。
こうした、船倉側壁部に結露水が生じた場所に、石炭のSO 2−が溶け出し、結露水と反応して硫酸を生成するので、船倉内は硫酸腐食が生じやすい低pH環境となっている。そこで、低pH環境に対しては「水素発生反応を抑制」すること、鉄の溶解のカウンターアニオンとなるSO 2−の地鉄−錆界面への透過に対しては、「SO 2−の錆透過抑制」することの2つの防食メカニズムが必要となる。
このような船倉内の腐食対策として、船倉内には変性エポキシ系塗装が被覆厚さ約150〜200μm施されている。しかし、石炭や鉄鉱石によるメカニカルダメージや積荷搬出の際の重機による傷・磨耗により、塗装が剥がれる場合が多いため、十分な防食効果が得られていない。
そこで、さらに腐食対策として定期的に再塗装や一部補修する方法が取られているが、このような方法は、非常に大きなコストがかかるため、船舶のメンテナンス費用を含め、ライフサイクルコストを低減させることが課題となっている。
ところで、船舶用の耐食鋼としては、カーゴオイルタンク用やバラストタンク用に開発された鋼が知られている。
カーゴオイルタンクの上甲板裏面は、防爆対策のためにタンク内に吹き込まれるイナートガス中に含まれるO、CO、SOや原油から揮発するHS等の腐食性ガス環境に曝される。底板は、原油由来の保護性フィルムがあるものの、フィルムが剥離した箇所でお椀型の局部腐食が生じる環境に曝される。例えば、特許文献1では、「pH低下抑制による耐食性向上」および「硫化物微細分散による耐局部腐食性向上」の防食メカニズムを利用することによる耐食鋼が提案されている。
また、バラストタンクは積荷がない時には、海水を注入して船舶の安定航行を可能にする役目を担うものであり、極めて厳しい腐食環境下におかれている。バラストタンクの上甲板の裏側は、海水に浸からず、海水の飛沫を浴びる状態におかれないため、電気防食が機能せず、さらに、この部位は、太陽光によって鋼材の温度が上昇するため、厳しい腐食環境となり、激しい腐食を受ける。また、バラストタンクの側壁面や底面は、海水に完全に浸漬されている部分で、腐食環境ではあるが、電気防食作用が機能する。
しかし、積荷が無く運行する場合には、バラストタンクに海水が注入されておらず、バラストタンク全体で、電気防食が全く働かないため、乾湿繰り返し環境と残留付着塩分の作用によって、激しい腐食を受ける。例えば、特許文献2では、錆を緻密化することにより、Clの透過を抑制することが、特許文献3では、WO 2−により、電気化学的にClの透過を抑制する防食メカニズムを利用した耐食鋼が提案されている。
前述したように、石炭船および石炭・鉱石兼用船においては、乾湿繰り返しで硫酸の濃縮が起こる低pH環境の場合、水素発生反応の抑制およびSO 2−の錆−地鉄界面への透過を抑制しなければならない。このように、石炭船および石炭・鉱石兼用船の船倉とバラストタンクおよびオイルタンクにおいては、腐食環境や防食メカニズムが異なるためバラストタンク用およびオイルタンク用の耐食鋼をそのまま転用することは出来ない。このため、石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用の鋼としては、独自の材料設計や特性評価が必要とされる。
また、石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用途に言及した従来技術としては、特許文献1、4および5がある。石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド使用環境下での造船用耐食鋼の化学成分組成として、特許文献1にはCuおよびMgを必須成分組成とした鋼材が、特許文献4にはCu、NiおよびSnを必須成分組成とした鋼材が、そして、特許文献5にはさらにコスト面の改善を目的としたCuおよびSnを必須成分組成とした鋼材が、それぞれ開示されている。
特開2000−17381号公報 特開2008−144204号公報 特開2007−46148号公報 特開2007−262555号公報 特開2008−174768号公報
日本海事協会、ばら積み貨物船用共通構造規則(鋼船規則CSR−B編)、p.384〜394、(2006)
しかしながら、特許文献1に示された鋼材は、船舶外板、バラストタンク、カーゴオイルタンク、鉱石船カーゴホールド等の共通的な使用環境での優れた鋼材を対象としているため、鋼材の耐食性の評価方法として、カーゴオイルタンクとバラストタンクの腐食試験の結果が良好であることを挙げているが、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド使用環境下を考慮した試験結果は示されていない。
また、特許文献4と5では、石炭船や石炭・鉱石兼用船の環境を模擬した塗膜下における耐食性を評価しているものの、ホールド使用環境下では不可避といえる石炭や鉄鉱石によるメカニカルダメージで剥離しやすい状況を想定した評価試験および鋼板の切替基準となる最大孔食深さの評価を行っていない。
以上、石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールドに用いられる耐食性に優れた鋼材の開発には、石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールド特有の腐食環境を考慮すると同時に、塗膜が剥離して塗膜がない状態での鋼材の腐食の評価が重要であるにもかかわらず、従来技術においては、この観点は考慮されていなかった。
そこで、本発明の目的は、乾湿を繰返しかつ低pH環境下において、塗膜剥離後の腐食を抑制することができる石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼を提供することにある。
一般に、船舶は、厚鋼板や薄鋼板、形鋼、棒鋼等の鋼材を溶接して建造されており、その鋼材の表面には防食塗膜が施されて使用される。しかし、石炭船、石炭・鉱石兼用船ホールド環境では、石炭・鉱石のメカニカルダメージで塗装は剥がれやすい状況にあり、鋼材が乾湿繰返しかつ低pH環境下に曝される。ここでは、鋼材の表面の防食塗膜の剥離後も耐食性の発揮できる鋼材の開発を行った。
そこで、本発明者らは、石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉内の環境を模擬した試験法を開発し、その試験法を用いて各合金元素の影響を検討した結果、Sbの添加により、石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉内の塗膜剥離後の鋼材の耐食性が向上することを見出した。しかしながら、Sbは環境負荷物質であり、今後Sb含有量が規制されていく可能性がある。そこで、錆層を緻密にすることで腐食因子の地鉄への到達を抑制するSn、Taの添加により、耐食性が向上することを知見した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1] 成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.025%以下、S:0.035%以下、Al:0.005〜0.10%、Sn:0.01〜0.5%、Ta:0.001〜0.1%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
[2] さらに、質量%で、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
[3] さらに、質量%で、Mo:0.01〜0.5%、W:0.01〜0.5%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
[4] さらに、質量%で、Cr:0.1%以下を含有することを特徴とする上記[1]乃至[3]の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
[5] さらに、質量%で、Sb:0.01〜0.10%を含有することを特徴とする上記[1]乃至上記[4]の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
[6] さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.010%を含有することを特徴とする上記[1]乃至[5]の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
[7] さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.10%、V:0.002〜0.2%、Ti:0.001〜0.030%およびZr:0.001〜0.050%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする上記[1]乃至[6]の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
本発明によれば、石炭船、石炭・鉱石兼用船ホールド内の乾湿繰返しかつ低pH環境下において、塗膜剥離後の腐食を抑制することができる石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼を得ることができるので、船舶のメンテナンス費用を抑え、船舶のライフサイクルコストを低減させることができる。
石炭腐食試験の温湿度サイクルの一例を示す図。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.成分組成について
はじめに、本発明の鋼の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分%は、すべて質量%を意味する。
C:0.01〜0.20%
Cは、鋼の強度を上昇させるのに有効な元素であり、本発明では所望の強度を得るために0.01%以上の含有とする。一方、0.20%を超える含有は、溶接性および溶接熱影響部の靭性を低下させる。よって、C量は0.01〜0.20%の範囲とする。好ましくは、0.05〜0.15%の範囲である。
Si:0.01〜0.50%
Siは脱酸剤として添加され、また鋼の強度を高める元素であるので、0.01%以上を含有させる。しかしながら、0.50%を超える含有は、鋼の靱性を劣化させるので、Si量は0.01〜0.50%の範囲とする。加えてSiは酸性環境下で、防食皮膜を形成して耐食性を向上させる。この効果を得るには、好ましくは0.20〜0.40%の範囲である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは低コストで鋼の強度を上げることができ、さらに熱間脆性を防止できる元素であるので、0.1%以上含有させる。しかしながら、2.0%を超える含有は、鋼の靱性および溶接性を低下させるため、Mn量は0.1〜2.0%の範囲とする。なお、強度の確保と介在物抑制の観点から、好ましくは0.8〜1.4%の範囲である。
P:0.025%以下
Pは粒界に偏析することで、鋼の母材靱性のみならず、溶接性および溶接部靱性を劣化させる有害な元素であるので、できるだけ低減することが望ましい。特に、Pの含有量が0.025%を超えると、母材靱性および溶接部靱性の低下が大きくなる。よって、P量は0.025%以下とする。好ましくは、0.015%以下である。
S:0.035%以下
SはCuと金属間化合物CuSを生成し、耐硫酸性を向上させる。しかしながら、Mnと局部腐食の起点となるMnSを形成し、耐局部腐食性を低下させる。さらに、鋼の靱性および溶接性を劣化させる有害な元素であるので、極力低減することが望ましく、本発明では0.035%以下とする。好ましくは0.025%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。
Al:0.005〜0.10%
Alは脱酸剤として添加される。このためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.10%を超える含有は、溶接した場合に、溶接金属部の靱性を低下させる。よって、Al量は0.005〜0.10%の範囲とする。好ましくは、0.010〜0.050%の範囲である。
Sn:0.01〜0.5%
Snは大きな水素過電圧を持つため、Snが析出した部分では水素発生反応が抑制され、耐食性が向上する。また、腐食生成物を緻密にし、地鉄へのHO、O、SO 2−、Clの拡散を抑制する。この効果を得るには0.01%以上の含有が必要であるが、0.5%を超える含有は、鋼材の靭性を著しく低下させ、さらにSn添加効果も飽和するため、Sn量は0.01〜0.5%の範囲とする。好ましくは、0.02〜0.2%の範囲である。
Ta:0.001〜0.1%
Taは無定形およびガラス状の酸化皮膜を生成することで、アノード活性点を減少させる。また、Taは水素過電圧が大きいため耐酸性を向上させるだけでなく、鋼の強度を高める元素であり、この効果を得るには0.001%以上の含有が必要であるが、0.1%を超えて含有すると靭性が低下するため、Ta量は0.001〜0.1%の範囲とする。
以上が本発明の基本化学成分であり、残部はFe及び不可避的不純物からなるが、更に耐食性の観点からCu、Niの一種以上、Mo、Wの一種以上、Sbを選択元素として含有してもよい。また、Crの含有量を制限してもよい。更に、強度、靭性の観点からCa、Nb、Ti、Zr、Vの一種以上を選択元素として含有してもよい。
Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上
Cuは腐食生成物を緻密にし、地鉄へのHO、O、SO 2−、Clの拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果を得るには、0.05%以上の含有が必要であるが、1.0%超えでは、溶接性や母材の靭性が低下する。そのため、Cuを含有する場合は、Cu量は0.05〜1.0%の範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜0.50%の範囲である。いっそう好ましくは0.05〜0.35%の範囲である。また、CuとSbの金属間化合物であるCuSbを形成することで、耐食性が向上する効果もある。
NiはCuと同様に腐食生成物を緻密にし、地鉄へのHO、O、SO 2−、Clの拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果は、0.05%以上で得られるが、1.0%を超えると効果が飽和すると共にコストも上昇するため、Niを含有する場合は、Ni量は0.05〜1.0%の範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは0.010〜0.50%の範囲である。
Mo:0.01〜0.5%、W:0.01〜0.5%の中から選ばれる1種以上
Mo、Wはいずれも母材から溶出した際に酸素酸を形成し、これらがアニオンを電気的に反発させ、アニオンが地鉄表面まで侵入することを防ぎ、耐食性を向上させる.さらにはMo、WはFeMoOやFeWOといった難溶性の腐食性物質を形成することで耐食性を向上させる.これらの効果を得るためには、いずれも0.01%以上を含有させることが好ましい。しかし、0.5%を超えて含有しても効果が飽和するだけでなく、コストが嵩むため、Mo、Wを含有する場合は、Mo、Wとも0.01〜0.5%の範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01〜0.3%の範囲である。
Cr:0.1%以下
Crは、低pH環境で加水分解を起こすため、耐食性を低下させる元素であるので無添加でよい。強度調整のため添加することができるが、特にその含有量が0.1%を超えると耐食性の低下が著しくなるため、Crを含有する場合は、0.1%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.03%以下である。
Sb:0.01〜0.10%
Sbは鋼材に合金元素として0.01%以上含有すると、低pH環境において地鉄近傍に濃縮する。Sbは大きな水素過電圧を持つため、Sbが析出した部分では水素発生反応が抑制され、耐食性が向上する。さらに、腐食生成物を緻密にし、地鉄へのHO、O、SO 2−、Clの拡散を抑制する。一方、0.10%を超えて含有すると靭性が低下する。よって、Sbを含有する場合は0.01〜0.10%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.03〜0.10%の範囲である。
Ca:0.0005〜0.010%
Caは数ppmから100ppm程度の添加で腐食界面のpHを上昇させる効果があるため、石炭腐食環境のような硫酸環境では、腐食抑制効果が認められる。また、Caは介在物の形態を制御して鋼の延性および靱性を高める元素である。このような効果を発揮させるためには、少なくとも0.0005%含有することが好ましい。しかし、0.010%を超えて含有させると、粗大な介在物を形成し、母材の靱性を劣化させるので、Caを含有する場合は0.0005〜0.010%の範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0010〜0.0030%の範囲である。
Nb:0.001〜0.10%、V:0.002〜0.2%、Ti:0.001〜0.030%およびZr:0.001〜0.050%の中から選ばれる1種以上
Nb、V、TiおよびZrはいずれも、鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有させることができる。このような効果を得るためには、Nb、TiおよびZrは、いずれも0.001%以上、Vは0.002%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Nbは0.10%を超えて、Vは0.2%を超えて、Tiは0.030%を超えて、およびZrは0.050%を超えて含有すると靱性が低下するため、それぞれ、Nbを含有する場合は0.001〜0.10%の範囲と、Vを含有する場合は0.002〜0.2%の範囲と、Tiを含有する場合は0.001〜0.030%の範囲と、およびZrを含有する場合は0.001〜0.050%の範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは、Nbは0.0050〜0.020%の範囲であり、Vは0.005〜0.10%の範囲であり、Tiは0.005〜0.020%の範囲であり、およびZrは0.005〜0.020%の範囲である。
2.製造方法について
上述した成分組成を有する鋼を転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とし、そのまま、あるいは冷却後再加熱して熱間圧延を行う。耐食性を発揮させる為の熱処理条件は問わないが、機械的特性の観点からは適切な圧下比を確保することが好ましい。熱間圧延の仕上温度が750℃未満となると変形抵抗が大きくなり、形状不良が起きるため、仕上温度は、750℃以上とすることが好ましい。
例えば、仕上温度を750℃以上、その後150℃/min以上の冷却速度で600℃以下まで冷却することで、引張強さ490MPa級以上の鋼材を製造することができる。
冷却速度150℃/min未満では引張強さ490MPa級以上の鋼材を得られない。
本発明者らは、石炭船および石炭・鉱石兼用船の船倉(以下ホールドと呼ぶ)内の腐食でもっとも船舶の破壊に影響を与える孔食発生のメカニズムを調査した結果、以下のようであった。ばら積み貨物船の側壁部は、シングルハルとなっていて、積荷と海水とは鋼材1枚隔てているだけである。そのため、海水と船倉内の温度差により、船倉側壁部には結露水が生じ、鋼材及び石炭表面が濡れ、石炭表面に吸着しているHSO由来の物質が水膜に滲出する。メニスカスを形成する石炭下で孔食が進展し、メニスカス部分では、鋼材の腐食にHが消費されていくため、H濃度が減少していく。一方、石炭表面にはHが多く存在するため、石炭表面とメニスカス部分でH濃度の差が生まれる。その化学ポテンシャルの差を駆動力とし、メニスカス部分に石炭表面からHが供給されると考えられる。そして、乾燥過程で未反応のHは再び石炭表面に固着し、次の結露過程で腐食反応に使用され、この過程が長期的なサイクルで起こり、メニスカス部分で腐食がより進行し、孔食が形成されていく。本メカニズムを基に、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド内の孔食を実験室的に模擬すべく以下の試験をおこなった。
表1に示す成分の鋼を、真空溶解炉で溶製または転炉溶製後、連続鋳造によりスラブとした。ついで、スラブを加熱炉に装入して1200℃に加熱し、仕上圧延終了温度800℃とする熱間圧延により25mm厚の鋼板とした。
Figure 0005862464
前記鋼板から、5mm×50mm×75mmの試験片を採取し、その試験片の表面をショットブラストして、表面のスケールや油分を除去した。この面を試験面とすることにより、塗膜剥離後の鋼材の耐食性を評価した。裏面と端面をシリコン系シールでコーティングした後、アクリル製の治具に嵌め込み、その上に石炭50gを敷き詰め、低温恒温恒湿器により、図1に示す雰囲気A(温度60℃、湿度95%、20時間) ⇔ 雰囲気B(温度30℃、湿度95%、3時間) 、遷移時間0.5時間の温湿度サイクルを84日間与えた。ここで、記号「 ⇔ 」は繰り返しという意味で使用している。
なお、石炭は、5gを秤量し、常温で100mlの蒸留水に2時間浸漬したのち、ろ過を行ない200mlに希釈した石炭浸出液のpHが3.0になるものを用いた。
本実施例は、上記した条件で試験を行うことにより、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド内の腐食に大きな影響を及ぼす温湿度環境、結露状況を模擬している。試験後、錆剥離液を用い、各試験片の錆を剥離し、鋼材の重量減少量を測定し腐食量とした。また、生じた最大孔食深さをデプスメーターを用いて測定した。
ここで、最大孔食深さの値は対象とする面積が大きいほど、増加し、それに伴い最大孔食深さも深くなる。そこで、実船での各期間の最大孔食深さを予測するために、極値統計を用い本試験片面積での測定値から実船ホールド相当面積の最大孔食深さを算出した。
ここで、本開発鋼の適用部位であるホールド肋骨部は両面からの腐食のため、各期間の最大孔食深さを2倍し、それらの値をy=axbで外挿することで船舶寿命である25年後の最大板厚減を推定した。その結果を表2に示す。
適用部位の板厚は15〜20mmであり、腐食代は3.5〜4.0mm、腐食余裕厚は0.5mmであることを前提条件とし、鋼船規則CSR−B編の鋼板切替基準から、25年後の最大板厚減のクライテリアを4.0mmとした。なお、ここで、最大板厚減とは船舶における図面板厚から局所的な腐食によりもっとも減肉した鋼板の厚さを言う。
Figure 0005862464
表2から、本発明例の25年後の最大板厚減推定値は、鋼船規則CSR−B編の切替基準から算出された25年後の最大板厚減のクライテリアである4.0mmを下回っていることが分かる。Taを除く全ての耐食元素を添加した比較例No.31の最大板厚減推定値がクライテリアを上回る4.47mmであることからTaの効果が大きいことが分かる。
以上、本発明の効果が確認された。本実施例では、石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールド内の環境を模擬した試験法として図1に示した方法に拠ったが、実際にホールド内に設置して評価した場合と極めて整合性がある結果が得られている。また、雰囲気A、Bの条件、遷移時間、サイクル、石炭の調整方法、石炭浸出液のpHの値等の条件は上述の例に限られるものではなく、鋼材のホールド内での使用環境に応じて、適宜変更することができる。
本発明に係る鋼材は、石炭や鉱石のメカニカルダメージにより塗膜が剥離し易く、さらに乾湿繰返しかつ低pH環境下に曝される、石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールドの構成部材として使用することができる。

Claims (7)

  1. 成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.025%以下、S:0.035%以下、Al:0.005〜0.10%、Sn:0.01〜0.5%、Ta:0.001〜0.1%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
  2. さらに、質量%で、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
  3. さらに、質量%で、Mo:0.01〜0.5%、W:0.01〜0.5%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
  4. さらに、質量%で、Cr:0.1%以下を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
  5. さらに、質量%で、Sb:0.01〜0.10%を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
  6. さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.010%を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
  7. さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.10%、V:0.002〜0.2%、Ti:0.001〜0.030%およびZr:0.001〜0.050%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の石炭船または石炭・鉱石兼用船の船倉用耐食鋼。
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