JP5628063B2 - 難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法 - Google Patents

難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は金属水酸化物微粒子の製造方法に関し、特に、結晶性と粒径を制御可能な金属水酸化物微粒子の製造方法に関する。
従来、高分子材料、熱可塑性樹脂は、電気電子機器部品、筐体用材料等の材料として、様々の分野に使用されている。高分子材料がテレビやパソコン等のOA機器の外装剤に用いられる場合、安全性の観点から、用いられる高分子材料には難燃性が求められる。
高分子材料に難燃性を付与する方法として、高分子材料に難燃剤を添加することが行なわれている。難燃剤の代表的なものとして、ハロゲン系、リン系、無機粒子系がある。しかしながら、ハロゲン系難燃剤については、燃焼時のハロゲンガス、黒煙の発生、焼却時のダイオキシンの発生等、環境面での問題が多い。またリン系難燃剤については、やはりホスフィンガスの発生等、環境面での問題があり、更に価格の高さ、原材料であるリン鉱石の供給懸念等の問題がある。
これに対し、無機粒子系難燃剤の代表である金属水酸化物である水酸化マグネシウム微粒子については、無害であり、環境面での問題が少ない。更には安価、原料資源豊富といった特徴もあり、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤それぞれの問題を解決できる。
金属水酸化物である水酸化マグネシウムを製造する方法については、例えば、非特許文献1に開示されている。非特許文献1では、水酸化マグネシウム微粒子の特性を制御するには、マグネシウム塩溶液において、マグネシウムと対になるイオンの選択や反応温度が重要であり、これが結晶のサイズ等に影響を与えること等が開示されている。
Rodorico Giorgi, Claudio Bozzi, Luigi Dei, Chiara Gabbiani, Barry W. Ninham, and Piero Baglioni Langmuir 2005, 2l, 8495.
ここで、金属水酸化物の難燃性を向上させるには、金属水酸化物の結晶性を向上させることが必要である。結晶性が良い場合、結晶は扁平形状となり、脱水反応しやすいからである。また、高分子材料に金属水酸化物を添加するには、金属水酸化物の粒径が小さい方が好ましい。その理由としては、(1)粒子表面積の増加により、粒子表面で起こる脱水吸熱反応が促進されること、(2)樹脂に均一に分散した際、粒子間距離が短くなり、均一な炭化層が形成され、可燃性ガスのシャットダウン能力が上がること、等が挙げられる。
しかしながら、非特許文献1に開示された方法では、得られた水酸化マグネシウムの粒径分布が広くばらつき、粒径の小さなものが得られなかった。また、高温で長時間合成しているため、粒子同士が凝集するという課題もあった。
本発明は、かかる実情に鑑み、結晶性が良好で、粒径も細かい金属水酸化物微粒子を製造することができる金属水酸化物微粒子の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
すなわち、本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法は、溶媒中で金属イオンと水酸化物イオンとを反応させることによる金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記金属イオンと、前記水酸化物イオンと、シランカップリング剤と、を反応場に供給し、混合および反応させる混合反応ステップを備えたことを主要な特徴としている。
これにより、シランカップリング剤が、金属水酸化物析出のための、極めて微小なサイズの核として働き、微小なサイズの粒子形成が可能になるとともに、結晶性の良い微粒子を得ることができる。
また、本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法は、前記シランカップリング剤が、前記金属イオンに対して3.2〜16.2mol%の範囲で反応場に供給されることを主要な特徴として
いる。
これにより、良好な結晶性、微小なサイズの金属水酸化物微粒子を得ることができる。
更にまた、本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法は、前記金属イオンのモル数に対する前記水酸化物イオンのモル数の比の値が、前記金属イオンの価数の値以上になるようにされたことを主要な特徴としている。これにより、反応率の低下を防止し、核形成頻度が低下することによる、粗大粒子や2次凝集粒子の形成を防ぐことができるという効果を有する。
また、本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法は、前記溶媒中において、前記金属イオン濃度が0.2mol/L以上であることを主要な特徴としている。これにより、反応時においてイオン同士の衝突確率を高めることができ、反応率を高めることができる。
更に、本発明の属水酸化物微粒子の製造方法は、前記混合反応ステップの後に、精製処理を行うステップ、表面処理を行うステップ、加熱処理を行うステップ、乾燥処理を行うステップ、をこの順番に実施することを主要な特徴としている。
これにより、生成した微粒子の凝集を防止し、乾燥後の分散処理を不要とすることができる。
更にまた、本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法は、前記金属イオンが、マグネシウムイオンであることを主要な特徴としている。これにより、粒子の分解温度を高くできるので、樹脂混練時の分解懸念が低下し、樹脂の適用範囲が広がるという効果を有する。
本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法によれは、結晶性が良好で、サイズの小さい金属水酸化物微粒子を製造することができる。
マイクロリアクターの流路の概略図である。 マイクロリアクターの分解斜視図である。 シランカップリング剤の添加量と体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。 実施例1を基準とした半値全幅の比のグラフである。 反応場へのシランカップリング剤の添加量とMg(OH)2の体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。 図5の一部を拡大したグラフである。 反応場へのシランカップリング剤の添加量とLa(OH)3の体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。 反応場へのシランカップリング剤の添加量とCa(OH)2の体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。 シランカップリング剤添加量と、Mg(OH)2の18.6°の半値全幅との関係を表すグラフである。 図9の一部を拡大したグラフである。 シランカップリング剤添加量と、Mg(OH)2の58.6°の半値全幅との関係を表すグラフである。 図10の一部を拡大したグラフである。 シランカップリング剤添加量と、La(OH)3の15.6°の半値全幅との関係を表すグラフである。 シランカップリング剤添加量と、Ca(OH)2の18°の半値全幅との関係を表すグラフである。 シランカップリング剤添加量と、Ca(OH)2の50.9°の半値全幅との関係を表すグラフである。 金属水酸化物の製造条件と、体積平均粒径、半値全幅の測定結果とをまとめた図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明の実施形態の一例として、反応装置としてマイクロリアクターを用いて、塩化マグネシウム溶液と水酸化ナトリウム溶液から水酸化マグネシウムを析出させる反応を例にして説明するが、本発明は、例えば、バッチ混合法などに用いられる一般的な化学反応装置など、マイクロリアクター以外の装置でも当然に適用することができる。また、本発明は、塩化マグネシウム溶液と水酸化ナトリウム溶液から水酸化マグネシウムを析出させる反応に限定されるものではないことは言うまでもない。
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
<反応装置>
本発明の実施に用いたマイクロリアクターについて図面を参照して説明する。図1は、マイクロリアクターの流路の概略図である。図2は、マイクロリアクターの分解斜視図である。
図1に示すように、本発明に用いたマイクロリアクターの流路は、4つ流路から成る流路124と、同じく4つの流路から成る流路126と、混合部128と、排出流路流路の一部であるボア130とを含んで構成されている。
流路126に塩化マグネシウム溶液を供給し、流路124に水酸化ナトリウム溶液を供給することによって、混合部128でこれらの液が混合され、排出流路の一部であるボア130内で反応が進み、水酸化マグネシウムの析出が始まる。
ここで、図2を参照して更に説明する。図2に示すように、本発明の実施に用いたマイクロリアクター100は、それぞれが円柱状の形態の供給要素102、合流要素104および排出要素106により構成されている。マイクロリアクターを構成するに際しては、これらの要素が円柱状になるように一体に締結して組み立てる。この組み立てには、例えば、各要素の周辺部に円柱を貫通するボア(または、穴、図示せず)を等間隔に設けてボルト/ナットでこれらの要素を一体に締結すればよい。
供給要素102の合流要素104に対向する面には、断面が矩形の環状流路108および110が同心状に形成されている。図示した態様では、供給要素102をその厚さ(または高さ)方向に貫通してそれぞれの環状流路に到るボア112および114が形成されている。
合流要素104には、その厚さ方向に貫通するボア116が形成されている。このボア116は、マイクロリアクターを構成するために要素を締結した場合、供給要素に対向する合流要素の面に位置するボア116の端部120が環状流路108に開口するようになっている。図示した態様では、ボア116は4つ形成され、これらが環状流路108の周方向で等間隔に配置されている。
合流要素104には、ボア116と同様にボア118が貫通して形成されている。ボア118も、ボア116と同様に、環状流路110に開口するように形成されている。図示した態様では、ボア118も環状流路110の周方向で等間隔に配置され、かつ、ボア116とボア118が交互に位置するように配置されている。
合流要素104の排出要素106に対向する面122には、マイクロ流路124および126が形成されている。このマイクロ流路124または126の一端はボア116または118の開口部であり、他方の端部は、面122の中心に位置する混合部128であり、すべてのマイクロ流路はこの混合部128に向かってボアから延在し、混合部128で合流している。マイクロ流路の断面は、例えば矩形であってよい。
排出要素106は、その中心を通過して厚さ方向に貫通するボア130が形成されている。従って、このボアは、一端にて合流要素104の混合部128に開口し、他端にてマイクロリアクターの外部に開口している。
容易に理解できるように、環状流路108および110が、本発明のマイクロリアクターの供給流路に対応し、ボア112および114の端部にてマイクロリアクターの外部からストリームAとして供給される水酸化ナトリウム溶液およびストリームBとして供給される塩化マグネシウム溶液は、それぞれボア112および114を経由して環状流路108および110に流入する。
環状流路108とボア116が連通し、環状流路108に流入した水酸化ナトリウム溶液は、ボア116を経由してマイクロ流路124に入る。また、環状流路110とボア118が連通し、環状流路110に流入した塩化マグネシウム溶液は、ボア118を経由してマイクロ流路126に入る。明らかなように、水酸化ナトリウム溶液および塩化マグネシウム溶液は、合流要素104において4つに分割され、それぞれマイクロ流路124および126に流入し、その後、混合部128に向かって流れる。
マイクロ流路124の中心軸とマイクロ流路126の中心軸は、混合部128にて交差する。合流した流体は、ボア130を経由してマイクロリアクターの外部にストリームCとして排出される。従って、ボア130は、本発明のマイクロリアクターの排出チャンネルに対応する。
なお、図示するマイクロリアクター100の製造、特に各要素の製造には、半導体加工技術、特にエッチング(例えばフォトリソエッチング)加工、超微細放電加工、光造 型法、鏡面仕上げ加工技術、拡散接合技術等の精密機械加工技術を利用でき、また、汎用的な旋盤、ボール盤を用いる機械加工技術も利用でき、当業者であれば 容易に製造できる。
マイクロリアクター100に使用する材料は、特に限定されるものではなく、上述の加工技術を適用できる材料であって、合流させるべき流体によって影響を受けないものであればよい。具体的には、金属材料(鉄、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、各種の合金等)、樹脂材料(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(シリコン、石英等)を用いることができる。
このマイクロリアクターの各寸法は以下の通りである:
環状流路108の断面形状、幅、深さ、直径:
矩形断面、1.5mm、1.5mm、25mm
環状流路110の断面形状、幅、深さ、直径:
矩形断面、1.5mm、1.5mm、20mm
ボア112の直径、長さ:1.5mm、10mm(円形断面)
ボア114の直径、長さ:1.5mm、10mm(円形断面)
ボア116の直径、長さ:0.5mm、4mm(円形断面)
ボア118の直径、長さ:0.5mm、4mm(円形断面)
マイクロ流路124の断面形状、幅、深さ、長さ:
矩形断面、200μm、200μm、12.5mm
マイクロ流路126の断面形状、幅、深さ、長さ:
矩形断面、200μm、200μm、10mm
ボア130の直径、長さ:500μm、10mm(円形断面)
<金属水酸化物微粒子の製造方法>
次に本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法の一実施形態について、水酸化ナトリウム溶液と塩化マグネシウム溶液とから水酸化マグネシウムを製造する場合を例にとって説明する。
図1を参照して説明すると、塩化マグネシウム溶液とシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)との混合液を流路126に供給し、水酸化ナトリウム溶液を流路124に供給する。流路126と流路124に供給された液は、混合部128で混合され、排出流路であるボア130を通って、マイクロリアクターの外に排出される。これにより、混合部128およびボア130で反応が進み、水酸化マグネシウムのスラリーが得られる。
次に、本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法について更に説明する。本発明の金属水酸化物微粒子の製造方法は、例えば塩化マグネシウムのようなマグネシウム塩と、水酸化ナトリウムのような水酸化物塩をそれぞれ溶媒に予め溶解し、それを混合する、苦汁・海水法を用いることができる。この苦汁・海水法において、反応場にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等の、俗に表面処理剤と呼ばれる水酸基を有する低分子化合物(本発明においては、表面処理剤と称する)を供給することが本発明の特徴である。
このような表面処理剤は、反応生成物である金属水酸化物と非常に親和性が高く、表面処理剤分子を足場として結晶成長が起こると考えられる。従って、導入する表面処理剤分子の量によって、反応初期の核の数を制御でき、粒径と結晶性の両方を制御することが可能となる。上記表面処理剤は反応場へ単独で導入しても良いし、マグネシウム塩が溶解した溶媒に事前に投入しても構わない。
上記のマイクロリアクターを使用して溶液を混合し、反応させることによって、より微細な水酸化マグネシウムを得ることができる。この場合、例えば図1に示すように流路126に塩化マグネシウム溶液を導入し、流路124に水酸化ナトリウム溶液を導入することで、混合部128で混合され、排出流路であるボア130内で反応が進み水酸化マグネシウムの析出が始まる。
このように、マイクロリアクターを用いることによって、排出流路内において一方向の流れ場を実現することができるので、凝集を防ぐ効果を得ることができる。なお、1例として図1に記載の構造で本発明を説明したが、本発明で用いるマイクロリアクターについては、特定の構造になんら限定されるものではない。また、反応装置として、上述したようにマイクロリアクターを好適に使用することができるが、本発明は、マイクロリアクターに限定されるものではなく、例えばバッチ混合法などで使用されるような一般的な化学反応装置を用いることも可能であり、それらを使用しても十分な効果を得ることができる。
反応工程において、塩化マグネシウムと水酸化ナトリウムの混合比は、モル比で1:2以上の水酸化ナトリウムを混合した比とすることが好ましい。これは、マグネシウムイオンの価数が2であるのに対し、水酸化物イオンの価数は1であるため、マグネシウムイオンに対し、水酸化物イオンが2倍以上合成時に存在しないと、極端に反応率が低下し、核形成頻度の低下に繋がって、粗大粒子や2次凝集粒子が形成されるためである。
また、イオン同士の衝突確率という観点からは、合成時の濃度は高い方が好ましい。合成時の濃度が低いと合成場におけるマグネシウムイオンと水酸化物イオンとの衝突確率が低下し、反応率の低下を招くからである。具体的には、金属イオンであるマグネシウムイオンの合成時の溶媒中の濃度が、0.2mol/L以上であることが好ましく、0.5mol/L以上であることが更に好ましい。反応後の水酸化マグネシウム濃度で表現すれば、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.1mol/L以上であることが好ましく、0.3mol/L以上であることが更に好ましい。
反応場に供給する表面処理剤としては、具体的には、高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ金属塩、多価アルコール高級脂肪酸エステル、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、オルガノシラン、オルガノシロキサンおよびオルガノシラザンから選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を合成時に導入することで、本発明の目的を達成することができる。
特に、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤が処理剤と粒子との密着性の観点でより好ましく、シランカップリング剤が様々な官能基を選択できる点で特に好ましい。反応場への表面処理剤の供給量は、目的とする金属水酸化物微粒子に対して、0.1〜100重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜80重量%の範囲、もっとも好ましくは2〜50重量%の範囲である。これにより、目的とする金属水酸化物微粒子の粒径の微細化、および高い結晶性を達成することができる。
また、別の表現をすれば、反応場への表面処理剤の供給量は、溶媒中の金属イオンに対して、3.2〜16.2mol%の範囲が好ましく、より好ましくは6.5〜16.2mol%の範囲、もっとも好ましくは、6.5〜9.7mol%の範囲である。これにより、目的とする金属水酸化物微粒子の粒径の微細化、および高い結晶性を達成することができる。ここで記載した、表面処理剤の供給量の範囲は、水酸化ナトリウム溶液と塩化マグネシウム溶液とから水酸化マグネシウムを生成させる反応だけでなく、金属イオンと水酸化物イオンの反応により金属水酸化物を得る反応に一般的に適用できる。
本発明で得られた水酸化マグネシウム微粒子などの金属水酸化物微粒子は、加熱処理することによって、特に水中で高温に熱することで、難燃性を向上させることができる。その理由は、水酸化マグネシウム微粒子を加熱処理することにより、水酸化マグネシウム微粒子の結晶化が進み、平板化するため、粒子の表面積が増大し、燃焼時の吸熱脱水反応を促進することができるからである。加熱処理の温度・時間は特に限定されないが、120℃、8時間以上が好ましく、80℃、8時間がより好ましい。これは、一定以上温度を上げても結晶性に変化はなく、エネルギー、コストの観点で温度が低い方が好ましいからである。
ここで、加熱処理の際には、粒子が凝集する。そのため、金属水酸化物微粒子が析出した後、加熱処理を行う前に精製処理を行うことが好ましい。すなわち、従来は、反応→加熱処理→表面処理→精製→乾燥の順番で行ってきたが、反応→精製→表面処理→加熱処理→乾燥の順番で行うことにより、凝集を防止し、乾燥後の分散処理が不要となる。
ここで、精製処理とは、反応で発生する副生成物である塩を除去する工程のことを言う。精製の方法としては、膜を使用した濾過法、遠心力を利用した沈降法、静電気力を利用した電気透析法等がある。
また、表面処理とは、金属水酸化物微粒子の表面を安定化させる工程のことを言う。表面処理剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ金属塩、多価アルコール高級脂肪酸エステル、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、オルガノシラン、オルガノシロキサンおよびオルガノシラザンから選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、粒子との密着性の観点から、好ましくは、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤を使用できる。特に、好ましくは、様々な官能基を選択できるので、シランカップリング剤を使用できる。
表面処理方法としては、粒子が溶媒に懸濁したスラリー状態の溶液中に、シランカップリング剤を投入する湿式法、乾燥状態の粒子を高速で攪拌する中にシランカップリング剤を投入する乾式法等が挙げられるが、粒子表面を均一に処理できる湿式法が特に好ましい。
更にまた、加熱処理とは、金属水酸化物微粒子を水熱処理し、金属水酸化物微粒子の結晶化を促進する工程のことを言う。これにより金属水酸化物微粒子が扁平化し、その比表面積が増加し、難燃剤として使用した時の難燃性の向上を期待できる。具体的な加熱方法は、粒子が懸濁したスラリー状態の溶液を攪拌下で、長時間高温に熱することにより行われる。
また、乾燥とは、金属水酸化物微粒子が溶媒中に懸濁した状態から、溶媒を除去する工程のことを言う。溶媒を除去することで、輸送コストの低減や、樹脂の適用範囲拡大が期待できる。乾燥方法としては、加熱乾燥、真空乾燥、遠心乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥法等の一般的な方法を用いることができるが、特に乾燥時に昇華により溶媒と粒子を分離できる凍結乾燥法を用いると、乾燥時の溶媒の表面張力を抑制でき、再分散性が向上するため、より好ましい。
更に、分散処理とは、合成から乾燥までの工程の中で凝集してしまった金属水酸化物微粒子の二次凝集体を解砕し、粒径を微細化する工程を言う。通常、金属水酸化物微粒子の一次粒径が微細な程、表面エネルギーが増大するため、その凝集体を樹脂混練時のせん断力だけで分散することが難しくなる。そのため、2次凝集体に予め高エネルギーを加え、凝集を解すことで、樹脂への、凝集なく均一な分散が可能となる。
分散方法としては、金属水酸化物粒子と無機粒子の存在下で高せん断を掛け、無機粒子が金属水酸化物粒子を粉砕するミリング法、金属水酸化物粒子をジェット流で同伴し、粒子或いは固体壁に衝突させて粉砕する高圧分散法、金属水酸化物粒子に超音波を照射して粉砕する超音波法等がある。
分散処理は、高圧、高せん断の高い分散エネルギーを必要とするので、分散処理が不要になることにより、高エネルギーの供給が不要になり、コスト低減が可能になる。
また、反応時に導入した表面処理剤は、反応において消費されるので、表面処理剤を表面処理工程において更に追添することにより、凝集を効果的に防ぐことができる。
[評価1]
次に評価1として、添加するシランカップリング剤の量を変化させて、マイクロリアクターを用いて水酸化マグネシウム微粒子を製造する実験を行った。以下に、詳細に説明する。
<実施例1−1>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを、マグネシウムイオンに対して3.2mol%混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムaを得た。
<実施例1−2>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランをマグネシウムイオンに対して6.5mol%混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とをそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムbを得た。
<実施例1−3>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランをマグネシウムイオンに対して9.7mol%混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とをそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネ
シウムcを得た。
<実施例1−4>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランをマグネシウムイオンに対して12.9mol%混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とをそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムdを得た。
<実施例1−5>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランをマグネシウムイオンに対して16.2mol%混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とをそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムeを得た。
<比較例1−1>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とをそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムfを得た。
<粒径・分布の測定>
マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)を使用して、実施例1−1から実施例1−5、比較例1−1で得られた水酸化マグネシウム微粒子の粒径・分布を測定した。
・粒径・分布測定条件
溶媒:水(屈折率パラメータ:1.33)
粒子:Mg(OH)2(屈折率パラメータ:1.57、密度パラメータ:2.36g・m/cm3
Loading index:0.1〜1の範囲に調整
得られた体積平均粒径(MV)をY軸に、反応場へのシランカップリング剤の添加量をX軸に表したグラフである図3を作成した。図3は、反応場へのシランカップリング剤の添加量と体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。
<結晶性の測定>
X線回折装置RINT2000(株式会社リガク製)を使用して、実施例1−1から実施例1−5、比較例1−1で得られた水酸化マグネシウム微粒子のX線回折を測定した。
・X線回折条件
線源:CuKα1(λ=1.54056)
電圧:55kV
電流:280mA
測定範囲:10〜80°@2θ
得られた結果の半値全幅を、(001)面と(110)面とで求め、比較例1−1で作製した水酸化マグネシウムfを基準とした比のグラフを作成し、図4とした。図4は、比較例1−1を基準とした半値全幅の比のグラフである。
<結果>
次に、実施例と比較例の実験結果について図を参照して説明する。図3に示すように、シランカップリング剤の添加量を6.5〜16.2mol%にすることで、体積平均粒径が30nm〜40nmという小さい範囲で安定化した。よって、粒径の観点からは、反応場へのシランカップリング剤の添加量は、6.5〜16.2mol%が好ましい。
図4を参照すると、比較例1−1の水酸化マグネシウムを基準としたX線回折の半値全幅が、実施例1−5の水酸化マグネシウムeと、実施例1−4の水酸化マグネシウムdとが、(001)面も、(110)面も、ほぼ1となった。すなわち、実施例1−5の水酸化マグネシウムeと、実施例1−4の水酸化マグネシウムdとは、比較例1−1の水酸化マグネシウムfとほぼ同等の結晶性(もしくはほんの少し悪く、アモルファスがほんの少し多く含まれている)といえる。しかしながら、実施例1〜3の水酸化マグネシウムa〜cは、比較例よりも値が小さいので、実施例1−1〜実施例1−3はすべて比較例1−1よりも結晶性がよいと言える。
これより、結晶性に関しては、実施例1−1から実施例1−5は、比較例1−1よりも同等以上の結晶性と言え、実施例1−1から実施例1−3(水酸化マグネシウムaからc)は特に結晶性が良いといえる。すなわち、結晶性の観点からは、反応場に添加するシランカップリング剤の量は、3.2〜16.2mol%であることが好ましく、3.2〜9.7mol%であることが更に好ましい。
上記より、粒径および結晶性の両方を考慮すると、反応場に添加するシランカップリング剤量は、3.2〜16.2mol%であることが好ましく、6.5〜16.2mol%であることが更に好ましく、6.5〜9.7mol%であることがもっとも好ましい。
なお、この効果は、金属水酸化物微粒子とシランカップリング剤とが同じ水酸基を持つため、非常に強い親和性を生じ、結果として合成時の金属水酸化物微粒子の粒子形成時にシランカップリング剤が大きく寄与しているために起こるものであるから、水酸化ナトリウム溶液と塩化マグネシウム溶液とから水酸化マグネシウムを生成する場合に限らず、金属イオンと水酸化物イオンとから金属水酸化物微粒子を形成する場合一般に成り立つと考えられる。
このように、反応場にシランカップリング剤を添加することにより、微細かつ結晶性の良い金属水酸化物微粒子を製造することができる。結晶性の良い金属水酸化物は、結晶が扁平しているので脱水反応を起こしやすい。そのため、結晶性を良くすることにより、難燃性を向上させることができる。
[評価2]
次に、評価2として、添加するシランカップリング剤の量を変化させ、バッチ式またはマイクロリアクター方式を使用して、金属水酸化物微粒子(水酸化マグネシウム微粒子、水酸化ランタン微粒子、水酸化カルシウム微粒子)を製造する評価を行った。以下に、詳細に説明する。
(1)金属水酸化物微粒子の製造
以下の条件により、金属水酸化物微粒子を製造した。実施例2−1から実施例2−9、および比較例2−1、2−2では、水酸化マグネシウム微粒子を製造した。実施例2−10から2−14では、水酸化ランタンの微粒子を製造した。実施例2−15から2−18では、水酸化カルシウムの微粒子を製造した。
(a)バッチによる水酸化マグネシウム粒子の形成(反応場に表面処理剤添加)
<実施例2−1から実施例2−4>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを、マグネシウムイオンに対して所定の割合で混合した水溶液200重量部と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液100重量部を用意した。
ここで、前記所定の割合とは、0.03mol%(実施例2−1)、0.3 mol%(実施例2−2)、3.2 mol%(実施例2−3)、12.9 mol%(実施例2−4)の4種類の割合である。
水酸化ナトリウム水溶液を容器中で500rpmの速度で攪拌し、そこに内径0.8mmのノズルにて、塩化マグネシウム水溶液を200cc/minの添加速度で、室温で投入することで、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムを得た。
(b)マイクロリアクターによる水酸化マグネシウム粒子の形成(反応場に表面処理剤添加)
<実施例2−5から実施例2−9>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを、マグネシウムイオンに対して所定の割合で混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。
ここで、前記所定の割合とは、0.02mol%(実施例2−5)、0.3 mol%(実施例2−6)、3.2 mol%(実施例2−7)、6.4mol%(実施例2−8)、12.9 mol%(実施例2−9)の5種類の割合である。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムを得た。
(c)マイクロリアクターによる水酸化ランタン粒子の形成(反応場に表面処理剤添加)
<実施例2−10から実施例2−14>
予め0.5モル/Lに調整した塩化ランタン水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを、ランタンイオンに対して所定の割合で混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。
ここで、前記所定の割合とは、0.01mol%(実施例2−10)、1.1mol%(実施例2−11)、10.6mol%(実施例2−12)、21.2mol%(実施例2−13)、31.8 mol%(実施例2−14)の5種類の割合である。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化ランタン微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化ランタン粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化ランタンを得た。
(d)マイクロリアクターによる水酸化カルシウム粒子の形成(反応場に表面処理剤添加)
<実施例2−15から実施例2−18>
予め0.5モル/Lに調整した塩化カルシウム水溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを、カルシウムイオンに対して所定の割合で混合した水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化カルシウムのスラリーを得た。
ここで、前記所定の割合とは、2.1mol%(実施例2−15)、4.1mol%(実施例2−16)、8.3mol%(実施例2−17)、16.5mol%(実施例2−18)の4種類の割合である。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化カルシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化カルシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化カルシウムを得た。
(e)バッチによる水酸化マグネシウム粒子の形成(反応場に表面処理剤添加せず)。
<比較例2−1>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液200重量部と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液100重量部を用意した。表面処理剤である3-アミノプロピルトリメトキシシランは、添加していない。
水酸化ナトリウム水溶液を容器中で500rpmの速度で攪拌し、そこに内径0.8mmのノズルにて、塩化マグネシウム水溶液を200cc/minの添加速度で、室温で投入することで、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムを得た。
(f)マイクロリアクターによる水酸化マグネシウム粒子の形成(反応場に表面処理剤添加せず)。
<比較例2−2>
予め0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。表面処理剤である3-アミノプロピルトリメトキシシランは、添加していない。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散して、水酸化マグネシウムを得た。
(g)マイクロリアクターによる水酸化ランタン粒子の形成(反応場に表面処理剤添加せず)。
<比較例2−3>
予め0.5モル/Lに調整した塩化ランタン水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化ランタンのスラリーを得た。表面処理剤である3-アミノプロピルトリメトキシシランは、添加していない。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化ランタン微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化ランタン粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散を試みたが分散しなかった。
(h)マイクロリアクターによる水酸化カルシウム粒子の形成(反応場に表面処理剤添加せず)。
<比較例2−4>
予め0.5モル/Lに調整した塩化カルシウム水溶液と、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液と、をそれぞれ200cc/minと100cc/minの流量比で、マイクロリアクターにて室温で混合させ、水酸化カルシウムのスラリーを得た。表面処理剤である3-アミノプロピルトリメトキシシランは、添加していない。
得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、水酸化カルシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3-アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化カルシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下で120℃2時間加熱し、乾燥後再分散を試みたが分散しなかった。
(2)粒径・分布の測定
マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)を使用して、実施例2−1から実施例2−18、比較例2−1、比較例2−2で得られた金属水酸化物微粒子の粒径・分布を測定した。
・粒径・分布測定条件
溶媒:水(屈折率パラメータ:1.33)
粒子:Mg(OH)2、La(OH)3、Ca(OH)2
Loading index:0.1〜1の範囲に調整
得られた体積平均粒径(MV)をY軸に、反応場へのシランカップリング剤の添加量をX軸に表したグラフである図5〜図8を作成した。図5は、反応場へのシランカップリング剤の添加量とMg(OH)2の体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。図6は、図5の一部を拡大したグラフである。図7は、反応場へのシランカップリング剤の添加量とLa(OH)3の体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。図8は、反応場へのシランカップリング剤の添加量とCa(OH)2の体積平均粒径(MV)の関係を表すグラフである。
(3)結晶性の測定
X線回折装置RINT2000(株式会社リガク製)を使用して、実施例2−1から実施例2−18、比較例2−1、比較例2−2で得られた金属水酸化物微粒子のX線回折を測定した。
・X線回折条件
線源:CuKα1(λ=1.54056)
電圧:55kV
電流:280mA
測定範囲:10〜80°@2θ
得られた結果の半値全幅を求め、この半値全幅をY軸に、シランカップリング剤をX軸に表したグラフを作成し、図9〜図15とした。図9は、シランカップリング剤添加量と、Mg(OH)2の18.6°の半値全幅との関係を表すグラフである。図10は、図9の一部を拡大したグラフである。図11は、シランカップリング剤添加量と、Mg(OH)2の58.6°の半値全幅との関係を表すグラフである。図12は、図10の一部を拡大したグラフである。図13は、シランカップリング剤添加量と、La(OH)3の15.6°の半値全幅との関係を表すグラフである。図14は、シランカップリング剤添加量と、Ca(OH)2の18°の半値全幅との関係を表すグラフである。図15は、シランカップリング剤添加量と、Ca(OH)2の50.9°の半値全幅との関係を表すグラフである。
(4)結果
実施例2−1から実施例2−18、比較例2−1から比較例2−4の製造条件と、体積平均粒径、半値全幅(FWHM)の測定結果とをまとめた表を図16に示す。図16は、金属水酸化物の製造条件と、体積平均粒径、半値全幅の測定結果とをまとめた表である。
図5、図6、図16から分かるように、反応場にシランカップリング剤をマグネシウムイオンに対して3.2mol%以上添加することにより、水酸化物マグネシウム微粒子の体積平均粒径は、シランカップリング剤を添加しない場合よりも小さくなった。これは、バッチで反応させた場合も、ケミカルリアクターで反応させた場合でも同様の結果が得られた。また、ケミカルリアクター方式の方が、バッチ式よりも小さい体積平均粒径を有する微粒子が得られた。
評価1よりも、評価2の方が、より小さい体積平均粒径を有する微粒子が得られたが、これは、ケミカルリアクターに溶液を供給するポンプが異なるためだと思われる。評価1で使用したポンプは、脈動が大きかったので、反応においてその影響が出たものと思われる。
また、図7、図8、図16を参照すると、水酸化ランタン微粒子、水酸化カルシウム微粒子の製造においても、反応場に添加するシランカップリング剤の量が増加するにつれて、製造される微粒子の体積平均粒径が小さくなっている。
水酸化ランタン微粒子と、水酸化カルシウム微粒子の製造においては、反応場にシランカップリング剤を添加しなかった場合、水酸化ランタンも、水酸化カルシウムも凝集力が大きいために凝集してしまい、ナノサイズの微粒子を得ることができなかった。
以上より、金属イオンと水酸化物イオンとを反応させることによって金属水酸化物微粒子を製造する方法においては、金属イオンと水酸化物イオンとの反応場に、シランカップリング剤を供給することにより、ナノサイズの金属水酸化物微粒子を製造することが可能になる。
また、反応場に供給するシランカップリング剤の量を調整することにより、製造する金属水酸化物微粒子のサイズを調整することが可能になる。更に、水酸化ランタン、水酸化カルシウムのように凝集力の大きい金属水酸化物のナノサイズの微粒子を形成するためには、反応場にシランカップリング剤を供給することが必須と考えられる。
次に、図9−図16を参照すると、シランカップリング剤を反応場に添加する量が増加するにつれて、半値全幅がほんの少し増加する傾向が見られる。しかしながら、増加している数値を見れば、増加している値は、極めて小さいものであり、結晶性自体は、数値を見る限り悪くなっていないと言える。
このように、反応場にシランカップリング剤を添加することにより、結晶性をほとんど悪化させることなくナノサイズの金属水酸化物微粒子を製造することが可能になった。
100:マイクロリアクター、102:供給要素、104:合流要素、106:排出要素、108:環状流路、110:環状流路、112:ボア、114:ボア、116:ボア、118:ボア、120:端部、122:面、124:流路、126:流路、128:混合部、130:ボア

Claims (4)

  1. 溶媒中で金属イオンと水酸化物イオンとを反応させることによる難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法であって、
    前記金属イオンとしてマグネシウムイオンと、前記水酸化物イオンと、シランカップリング剤とを、前記シランカップリング剤を、前記マグネシウムイオンに対して3.2〜16.2mol%の範囲で反応場に供給し、混合および反応させることによって金属水酸化物微粒子を生成する混合反応ステップと、
    前記混合反応ステップで発生した副生成物である塩を除去する精製処理ステップと、
    表面処理剤を前記金属水酸化物微粒子に適用する表面処理ステップと、
    前記金属水酸化物微粒子を水熱処理する加熱処理ステップと、
    前記金属水酸化物微粒子を含む溶媒から溶媒を除去する乾燥ステップと、
    前記混合反応ステップ、精製処理ステップ、表面処理ステップ、加熱処理ステップ、乾燥ステップが、この順番で実施される難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法。
  2. 溶媒中で金属イオンと水酸化物イオンとを反応させることによる難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法であって、
    前記金属イオンとしてランタンイオン又はカルシウムイオンと、前記水酸化物イオンと、シランカップリング剤と、を反応場に供給し、混合および反応させることによって金属水酸化物微粒子を生成する混合反応ステップと、
    前記混合反応ステップで発生した副生成物である塩を除去する精製処理ステップと、
    表面処理剤を前記金属水酸化物微粒子に適用する表面処理ステップと、
    前記金属水酸化物微粒子を水熱処理する加熱処理ステップと、
    前記金属水酸化物微粒子を含む溶媒から溶媒を除去する乾燥ステップと、
    前記混合反応ステップ、精製処理ステップ、表面処理ステップ、加熱処理ステップ、乾燥ステップが、この順番で実施される難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法。
  3. 前記金属イオンのモル数に対する前記水酸化物イオンのモル数の比の値が、前記金属イオンの価数の値以上になるようにされた、請求項1または2に記載の難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法。
  4. 前記溶媒中において、前記金属イオンの濃度が0.2mol/L以上である、請求項1から3のいずれか一つに記載の難燃剤用金属水酸化物微粒子の製造方法。
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