本発明の第1の実施形態に係るサイドエアバッグを、図1〜6を用いて説明する。図1は、サイドエアバッグ装置20を備える自動車10を概略的に示す側面図である。サイドエアバッグ装置20は、本発明の一例であるサイドエアバッグ30を備える。自動車10は、サイドエアバッグ装置20を備える車両の一例である。
図1は、自動車10の車内11を示している。車内11には、前席12と、後席13とが設けられている。前席12には、図示しない運転席と、助手席14とが設けられている。図1は、助手席14を示している。
助手席14は、シートクッション15と、シートバック16と、サイドエアバッグ装置20とを備えている。シートクッション15は、車体17のフロアパネル18に図示しないスライド機構を介して車体前後方向Aにスライド可能に支持されている。シートバック16は、シートクッション15の後部に設けられている。シートバック16は、骨格部材16a(図1に一部を点線で示す)と、該骨格部材を覆うクッション材とを備えている。運転席の構造は、助手席14と略同様である。
ここで、車体17の前後、左右、上下を定義する。自動車10が重力が作用する方向に対して垂直な平面上に置かれた状態であって、かつ、自動車10の走行ギヤとしてバックギヤが選択されていない状態において、運転者が操作する操舵部が初期位置にあるときにアクセルペダルが踏み込まれて自動車10が進む方向が車体前後方向Aと平行な方向となる。そして、このとき進む方向を車体前後方向のうちの前方向とし、反対方向を車体前後方向のうちの後方向とする。車体17において車体前後方向Aに沿って前側の部分を前部17aと、車体17においてこれと反対側を後部17bとする。
なお、上記した操舵部としては、例えばステアリングホイールがある。操舵部の初期位置とは、操舵部が運転者によって操作されていないときの位置である。ステアリングホイールでは、当該ステアリングホイールが回転していない状態である。
車体前後方向Aは、車幅方向Bに直交する。車体左右方向は、車幅方向であり、左右は、前後方向Aにならって定義される。車体上下方向Cは、車体前後方向Aと車幅方向Bとに直交する方向であって、前後左右にならって、上部17cと下部17dとする。また、車体上下方向Cは、自動車10が重力が作用する方向に垂直な平面上に置かれたときに、重力が作用する方向に平行な方向である。そして、重力が作用する方向を下方として、重力が作用する方向に逆らう方向を上方向とする。
サイドエアバッグ装置20は、図示しない運転席と、助手席14とに設けられている。なお、運手席に設けられるサイドエアバッグ装置20の構造と、助手席14に設けられるサイドエアバッグ装置20の構造とは、互いに同じであってよい。このため、助手席14に設けられるサイドエアバッグ装置20を代表して説明する。助手席14は、本発明で言うシートの一例である。
まず、助手席14の車内11での位置を具体的に説明する。図2は、図1に示されるF2―F2線に沿って示す自動車10の断面図である。図2は、自動車10において前席12の近傍を車幅方向Bに沿って断面しており、助手席14の近傍を示している。図2に示すように、車体17は、助手席14の車幅方向外側に、乗降用の開口5が形成されている。開口5は、ドア部材6によって開閉可能に覆われている。助手席14は、ドア部材6に対して車幅方向内側に配置されている。なお、運転席の近傍も、助手席14の近傍の構造と同様であって、乗降用の開口と、当該開口を覆うドア部材が設けられている。
図1,2に示すように、サイドエアバッグ装置20は、シートバック16に設けられている。具体的には、サイドエアバッグ装置20は、シートバック16の骨格部材16aの、ドア部材6に対向する部位に設けられている。サイドエアバッグ装置20は、サイドエアバッグ30と、ケース40と、インフレータ50と、イグナイタ60と、衝撃検出センサ70となどを備えている。
ケース40は、骨格部材16aに固定されている。サイドエアバッグ30は、ケース40内に収容されている。サイドエアバッグ30は、後で詳細に説明する。インフレータ50は、サイドエアバッグ30内にガスを噴射可能である。イグナイタ60は、インフレータ50を動作させる。衝撃検出センサ70は、自動車10に入力される衝撃を検知し、該衝撃に基づいて、イグナイタ60を動作させる。なお、図1中では、衝撃検出センサ70は、車体17の外側に図示されているが、実際には、車体17のいずれかに設けられている。
インフレータ50によってガスが噴射されるとサイドエアバッグ30が膨張し、展開する。このため、ケース40は、サイドエアバッグ30が膨張した際に割れるなどして、サイドエアバッグ30を外部に展開可能にしている。シートバック16は、膨張して展開したサイドエアバッグ30をシート外に展開可能とするために、シートバック16においてドア部材6に対向する部位、または該部位の近傍には、切れ込みなどが形成されている。展開したサイドエアバッグ30は、この切れ込みを通ってシート外に展開する。
サイドエアバッグ30を具体的に説明する。図3は、サイドエアバッグ30が展開した状態を車体前側から見た概略図である。図4は、図3中に示されるF4―F4線に沿って示す車体17の断面図である。図4は、サイドエアバッグ30を展開した状態を、車体前後方向Aに沿って断面した状態を示す。図4は、助手席14の近傍を示している。図5は、展開したサイドエアバッグ30を、図4に示されるF5−F5線に沿って断面した状態を示している。なお、図5はサイドエアバッグ30のみを図示しており、助手席14および助手席14に着座している乗員Hは図示していない。
ここで、サイドエアバッグ30の前後方向A1、幅方向B1と、上下方向C1とを定義する。サイドエアバッグ30の各種方向は、サイドエアバッグ30が膨張してシート側方に展開した状態での姿勢で定義される。
サイドエアバッグ30において上記各種方向は、助手席14(サイドエアバッグ装置20が取り付けられるシート)に設定される方向と同じである。本実施形態では、助手席14に設定される前後方向、幅方向、上下方向は、車体17に定義される車体前後方向A、車幅方向B、車体上下方向Cと同じである。このため、本実施形態では、サイドエアバッグ30の前後方向A1はAと同じであり、幅方向B1はBと同じであり、上下方向C1はCと同じである。方向A1、B1、C1は、互いに直交する。
なお、サイドエアバッグ30の各種方向は、シートクッション15に対してシートバック16を前後方向にリクライニング可能な構造である場合では、シートバック16をリクライニングしていない状態を基準にして設定されている。図2〜4は、シートバック16は、リクライニングしていない。
図5に示すように、サイドエアバッグ30は、車体側基布となる第1の基布31,乗員側基布となる第2の基布32,上側基布となる第3の基布33と、仕切布34と、テザー35とを備えている。第1,2の基布31,32は、幅方向Bに互いに対向しており、略同様の形状、大きさである。第1,2の基布31,32は、互いの周縁31a,32aにおいて上縁を除いた範囲が全域互いに連結されている。この連結構造の一例として、互いに縫い合わされている。互いに縫い合わされた第1,2の基布31,32によってサイドエアバッグ本体36が形成される。サイドエアバッグ本体36は、上端が開口する袋状である。サイドエアバッグ本体36は、上端が開口する袋状である。
第3の基布33は、サイドエアバッグ本体36の上端の開口を塞ぐように設けられている。第3の基布33の周縁33aの全域は、サイドエアバッグ本体36の開口縁に連結されている。この連結構造の一例として、互いに縫い合わされている。図中、サイドエアバッグ本体36と第3の基布33とが互いに縫い合わされる縫目(連結箇所)を符号37で示す。図4に示すように、縫目37は、前後方向A1にそって所定長さ延びている。ここでいう所定長さとは、後述される腕対向部38が腕部H2を支えるに充分な長さである。
仕切布34は、サイドエアバッグ30内を上部屋45と下部屋46とに分ける。下部屋46は、サイドエアバッグ30が展開した状態において、乗員Hの腰部H1に対向する。仕切布34の全周縁34aは、サイドエアバッグ30が展開した状態で腰部H1に対向する部位近傍において、第1,2の基布31,32の内面に全周にわたって縫い付けられており、サイドエアバッグ30内を上、下部屋45,46に区画している。
テザー35は、紐状であって、一端35aが第3の基布33の幅方向B1にそって中心であってかつ前後方向A1の中心に固定されている。この固定は、一例として互いに縫い付けられている。テザー35の他端35bは、仕切布34において、幅方向B1の中心であって前後方向A1に一端35aよりも後方の位置に固定されている。この固定構造の一例として、互いに縫い合わせられている。テザー35の長さは、サイドエアバッグ30が膨張して展開すると第3の基布33の幅方向にそって中央を下方に向かって引っ張り、図5に示すように、下方に向かって凹むように設定されている。なお、テザー35の他端35bが仕切布34に固定されることによりテザー35の長さを短くすることができ、後述する腕対向部38を早期に形成することができる。テザーは、本発明で言う紐部材の一例である。
ここで、サイドエアバッグ30の位置、大きさ、テザー35の一端35aの位置について、さらに具体的に説明する。なお、本実施形態では、乗員Hは、一例として、日本人の成人の平均的な体型に設定されている。
図3に示すように、膨張して展開したサイドエアバッグ30は、助手席14の車幅方向外側に位置し、助手席14に乗員Hが着座している状態では、乗員Hとドア部材6(車体11)との間において乗員Hの直ぐ横に配置される。また、膨張して展開するサイドエアバッグ30は、シートバック16において乗員Hの腕部H2と対向する部位から外部に出る。そして、サイドエアバッグ30が完全に展開した状態では、サイドエアバッグ30が乗員Hの腕部H2を下方から上方に向かって押し上げるとともに、上部を構成する第3の基布33が腕部H2に下方から対向する。第3の基布33によって構成されるサイドエアバッグ30の上部30aは、腕対向部38となっている。腕対向部38は、本発明で言う腕対向部の一例である。第3の基布33は、本発明で言う、腕対向部を形成する基布の一例である。
テザー35の一端35aは、第3の基布33において腕部H2の幅方向の中心と対向する部位に連結されている。腕部H2の幅方向とは、腕部H2においてサイドエアバッグ20の幅方向B1に平行な方向である。本実施形態では、第3の基布33の幅方向にそって中心の位置が、腕部H2の幅方向の中心に対向している。このため、テザー35の一端35aは、第3の基布33の幅方向B1にそって中心に連結されている。
図4に示すように、膨張して展開したサイドエアバッグ30は、乗員Hの腰部H1と、胸部H3の全域とを覆う大きさを有している。また、膨張して展開したサイドエアバッグ30は、凹む形状の腕対向部38によって押し上げられる腕部H2が、図4に示すように、前後方向A1に平行または略平行になるような大きさを有している。なお、本実施形態では、腕部H2は、前後方向に平行または略平行になるように設定されているが、これに限定されない。サイドエアバッグ30の大きさは、膨張して展開した際に胸部H3とサイドエアバッグ30との間に腕部H2が位置しない大きさであればよい。このため、腕部H2は、前後方向に平行となる位置よりも上方に押し上げられてもよい。これは、本発明で言う、胸部と重ならない位置の一例である。
サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態では、サイドエアバッグ本体36と第3の基布33との縫目37が外側に向かって突出しようとするとともに、テザー35によって第3の基布33の中心が引っ張られることによって、腕対向部38が凹む形状となる。凹みの谷の位置をPとする。本実施形態では、Pは、幅方向B1にそって第3の基布の中心である。図4中に、谷の位置Pを点線で示す。谷の位置Pは、前後方向A1にそって延びている。
図4に示すように、縫目37と位置Pが前後方向A1に延びていることによって、腕対向部38の凹み形状は、前後方向A1に保たれている。乗員Hの腕部H2は、この凹みに収容される。第3の基布33の幅は、腕部H2を収容できるように設定されている。一端35aよりも他端35bが後方に位置することによって、腕対向部38の凹みは、主に前側に形成されるようになる。これは、腕部H2が肩H4よりも前方に位置するためである。言い換えると、一端35a、35bの位置は、凹み形状が、少なくとも乗員Hの肩H4より前に形成されるように設定されている。
また、上部30aに第3の基布33が設けられるため、膨張して展開した状態のサイドエアバッグ30は、下方から上方に向かって幅Wが大きくなる。つまり、サイドエアバッグ30は、胸部H3に対向する部位の幅を大きくすることができるので、胸部H3へ向かって入力される衝撃を吸収する吸収代を大きくすることができる。幅Wは、腕部H2がない分、大きく設定されている。
つぎに、サイドエアバッグ装置20の動作を説明する。自動車10に側方から衝撃が入力されると、衝撃検出センサ70が該衝撃を検出する。なお、本実施形態では、例えば衝撃検出センサ70は、予め設定される値以上の衝撃を検出するように設定されている。衝撃検出センサ70が衝撃を検出すると、イグナイタ60が動作される。イグナイタ60が動作されることによって、インフレータ50がガスを放出する。この結果、サイドエアバッグ30が膨張し、展開する。
サイドエアバッグ30が膨張して展開する過程で、サイドエアバッグ30の腕対向部38が乗員Hの腕部H2を上方に押し上げる。このとき、サイドエアバッグ30は、腕部H2を、乗員Hの胸部H3と幅方向B1に重ならない上方の位置まで押し上げる。図4中、押し上げられる前の腕部H2を2点鎖線で示す。図6は、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態を、より概略的に示す概略図である。図6は、一例として助手席を前方から見ている。図6に示すように、膨張して展開したサイドエアバッグ30は、乗員Hの胸部H3の側方に配置される。サイドエアバッグ30が腕部H2を押し上げることによって、腕部H2は、胸部H3とサイドエアバッグ30との間に収容されない。図6は、ドア部材6がサイドエアバッグ30にぶつかるまで移動した状態を示している。
図3に示すように、側方から入力される衝撃によってドア部材6が車幅方向内側に突出してきた場合は、サイドエアバッグ30によって吸収される。
このように構成されるサイドエアバッグ装置20では、サイドエアバッグ30が乗員Hの腕部H2を押し上げて、腕部H2を胸部H3とサイドエアバッグ30との間に収容しない。この結果、サイドエアバッグ30の衝撃吸収代である幅Wを充分に確保することができるので、乗員Hへ伝わる衝撃をより一層小さくすることができる。さらに、腕部H2が押し上げられることによって、腕部H2が胸部H3へ押し付けられることがないので、腕部H2を介して胸部H3へ衝撃が入力されることがない。
また、腕対向部38が凹んだ形状であることによって、膨張して展開する過程において、腕部H2が凹みの中に収容されるので、腕部H2がサイドエアバッグ30から外れることなくスムーズに押し上げられる。
なお、本実施形態では、サイドエアバッグ装置20は、助手席14に設けられる場合を一例に説明された。しかしながら、サイドエアバッグ装置20は、運転席や、後席13に用いられてもよい。この場合であっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るサイドエアバッグを、図7,8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、サイドエアバッグ30の構造が、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様である。上記異なる構造を、具体的に説明する。なお、本実施形態では、エアバッグ装置20においてエアバッグ30以外の構造は、第1の実施形態と同じである。
図7は、本実施形態のサイドエアバッグ30が膨張して展開した状態において、幅方向B1にそって断面された状態を示す断面図である。図7に示すように、本実施形態では、サイドエアバッグ30は、第1〜3の基布31〜33に代えて、第4,5の基布80,81から構成される。第4,5の基布80,81は、幅方向B1に互いに対向しており、互いの周縁80a,81aの全域が互いに連結されている。互いの連結構造の一例として、互いに縫い合わされている。第4、5の基布80、81は、本発明で言う2つの基布の一例である。
本実施形態では、一例として、第4,5の基布80,81の周縁80a,81aが互いに連結されることによって形成される連結部は、前後方向A1と上下方向C1とによって規定される仮想平面上に位置している。言い換えると、第4,5の基布80,81とを連結する縫い目は、前後方向A1と上下方向C1とによって規定される仮想平面上に位置している。
図8は、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態を、幅方向B1の外側からみた状態を示す側面図である。図8に示すように、第4,5の基布80,81の上縁どうしが縫い合わされて連結部となる縫目82は、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態において前後方向A1に延びており、腕部H2の中心と対向するように設定されている。縫目82は、第1の実施形態と同様に、腕部H2を支えるに充分な長さである。
テザー35の一端35aは、縫目82に連結されている。この連結構造の一例として、互いに縫い合わされている。仕切布34は、膨張して展開した状態において下部屋46と上部屋45とを仕切るように、第4,5の基布80,81において乗員Hの腰部H1の近傍に連結されている。仕切布34の連結構造および位置は、第1の実施形態と同様である。テザー35の他端35bは、第1の実施形態と同様に、仕切布34に連結されている。一端35aと、他端35bの相対位置関係は、第1の実施形態と同様である。具体的には、一端35aよりも他端35bが後側に配置されている。このことによって、第1の実施形態と同様に、腕対向部38の凹みは、主に前側に形成されるようになる。一端35aと他端35bとは、腕対向部38の凹み形状が、少なくとも乗員Hの肩H4よりも前に形成されるように設定されている。
図7に示すように、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態では、第4,5の基布80,81の上部83が腕対向部38となる。テザー35の長さは、腕対向部38が凹むように設定されている。
第4,5の基布80,81の上部の縫目82の近傍には、前後方向A1に延びる縫目84,85が形成されている。なお、ここで言う縫目84、85は、互いに異なる基布を連結するものではなく、糸を縫いつけるものである。
サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態では、縫目84,85は、乗員Hの腕部H2の幅方向B1(B)にそって外縁86と対向する。言い換えると、縫目84、85は、外縁86と対向するように設定されている。縫目84,85は、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態において、第4,5の基布80,81が折り返されるように考慮して形成される屈曲部の一例である。
サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態では、縫目82においてテザー35が連結される部位が引っ張られるとともに、縫目84,85で第4,5の基布80,81が折り返されることによって、上部が凹む形状に形成される。谷の位置Pと縫目84、85は、前後方向A1に延びているので、腕対向部38の凹む形状は、第1の実施形態の図4に示すように、前後方向A1に維持される。
なお、縫目84、85は、屈曲部の一例である。他の構造によって、第4、5の基布80、81において腕部の外縁と対向する位置、または腕部の外縁と対向する位置の近傍、または腕部の外縁と対向する位置の近傍において外側の位置が折り返されるように形成されてもよい。この構造によって、第1の実施形態と同様に、腕対向部38に腕部H2を収容することができる。
膨張して展開した状態のサイドエアバッグ30の大きさ、形状は、第1の実施形態の第1〜3の基布31〜33を用いて構成されるサイドエアバッグ30と同様である。サイドエアバッグ装置20は、上記したサイドエアバッグ30以外、第1の実施形態と同様である。サイドエアバッグ30が展開する動作は、第1の実施形態と同様である。展開した本実施形態のサイドエアバッグ30は、第1の実施形態と同様に、乗員Hの腕部H2を幅方向B1に胸部H3に重ならない上方の位置まで押し上げる。
本実施形態であっても、第1の実施形態と同様の作用と効果とを得ることができる。
つぎに、本発明の第3の実施形態に係るサイドエアバッグを、図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、サイドエアバッグ30の構造が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様である。上記異なる構造を、具体的に説明する。なお、本実施形態では、サイドエアバッグ装置20においてサイドエアバッグ30以外の構造は、第1の実施形態と同じである。
図9は、本実施形態のサイドエアバッグ30が膨張して展開した状態において幅方向B1に断面された状態を示す断面図である。図8に示すように、サイドエアバッグ30は、第1〜3の基布31〜33に代えて、第6〜9の基布90、91,92、93と、テザー35とから構成されている。
第6,7の基布90,91は、幅方向B1に互いに対向している。第6,7の前縁どうし、後縁どうしは、互いに連結されている。連結構造の一例として、互いに縫い合わさっている。第8の基布92の全周縁は、第6,7の基布90,91の上縁90a,91aに連結されている。連結構造の一例として、互いに縫い合わさっている。第9の基布93の全周は、第6,7の基布90,91の下縁90b,91bに連結されている。連結構造の一例として、互いに縫い合わさっている。
第6の基布90と第8の基布92との縫目100は、前後方向A1に延びている。第7の基布91と第8の基布92との縫目101は、前後方向A1に延びている。縫目100,101の長さは、腕部H2を支えるに充分な長さである。
上記のように第6〜9の基布90〜93が縫い合わされることによって、サイドエアバッグ30が袋状に形成される。第8の基布92は、腕対向部38となる。第8の基布92において乗員Hの腕部H2の中心に対向する部位(本実施形態では一例として腕の幅方向B1にそって中心)には、テザー35の一端35aが連結される。テザー35の他端35bは、第9の基布93に連結される。テザー35の長さは、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態において、腕対向部38が腕部H2を収容可能となるように凹むように設定されている。谷の位置Pは、前後方向A1に延びている。第8の基布92は、腕部H2を収容するに充分な大きさを有している。
サイドエアバッグ30は、膨張して展開すると、テザー35で引っ張られるとともに、第9の基布93と第6、7の基布90,91との縫目100,101が外側に突出するので、腕対向部38が第1の実施形態と同様に凹む形状となる。凹む形状は、前後方向A1に保たれている。
本実施形態では、サイドエアバッグ30内は、上、下部屋45,46に仕切られない。さらに、第6,7の基布90,91の下縁90b、91bと第9の基布93とが連結される構造である。このため、サイドエアバッグ30が膨張して展開した状態において、乗員Hの腰部H1に対向する部位の幅wを充分確保することができる。言い換えると、腰部H1へ向かう衝撃に対する衝撃吸収代を大きくすることができる。
サイドエアバッグ装置20は、上記したサイドエアバッグ30以外、第1の実施形態と同様である。サイドエアバッグ30が展開する動作は、第1の実施形態と同様である。本実施形態のサイドエアバッグ30は、第1の実施形態と同様に、展開したときに乗員Hの腕部H2を、幅方向B1に胸部H3と重ならない上方の位置まで押し上げる。
また、テザー35の一端35aと他端35bとの前後方向の位置関係は、第1の実施形態と同様である。具体的には、一端35aよりも他端35bが後側に配置されている。このことによって、第1の実施形態と同様に、腕対向部38の凹みは、主に前側に形成されるようになる。一端35aと他端35bとは、腕対向部38の凹み形状が、少なくとも乗員Hの肩H4よりも前に形成されるように設定されている。
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果に加えて、乗員Hの腰部H1へ向かって入力される衝撃をより一層吸収することができる。
つぎに、本発明の第4の実施形態に係るサイドエアバッグを、図10を用いて説明する。なお、第2の実施形態と同様の機能を有する構成は、第2の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、サイドエアバッグ30の構造が第2の実施形態と異なる。サイドエアバッグ装置20においてサイドエアバッグ30以外の構造は、第2の実施形態と同様である。上記異なる構造を、具体的に説明する。
本実施形態のサイドエアバッグ30は、第2の実施形態で説明されたサイドエアバッグ30に対して、仕切布34を備えていない点と、テザー35の他端35bの固定される部位とが、異なる。本実施形態のサイドエアバッグ30において上記以外の構造は、第2の実施形態のサイドエアバッグ30と同じである。
図10は、本実施形態のサイドエアバッグ30を、第1の実施形態の図5と同様に切断した状態を示す。図10に示すように、本実施形態のサイドエアバッグ30は、仕切布34を備えていない。テザー35の一端35aは、第2の実施形態と同じに、第4,5の基布80,81の周縁80a,81aの上縁どうしの連結部である縫い目82に連結されている。この連結構造の一例として、互いに縫い合わされている。
テザー35の他端35bは、図10に示すように、第4,5の基布80,81の周縁80a,81aを互いに連結する連結部である縫い目において、周縁80a,81aの下縁どうしを縫い合わせる縫い目82aに連結されている。言い換えると、他端35bは、第4,5の基布80,81の両方に連結されている。この連結構造の一例として、互いに縫い合わされている。
なお、本実施形態でも、一端35aの位置と他端35bとの前後方向A1にそう相対位置関係は、第1,2の実施形態と同様である。具体的には、一端35aよりも他端35bが後側に配置されている。このことによって、第1の実施形態と同様に、腕対向部38の凹みは、主に前側に形成されるようになる。一端35aと他端35bとは、腕対向部38の凹み形状が、少なくとも乗員Hの肩H4よりも前に形成されるように設定されている。
本実施形態のサイドエアバッグ30は、第1の実施形態と同様に、展開したとき、乗員Hの腕部H2を、幅方向B1に胸部H3と重ならない上方位置まで押し上げる。
また、本実施形態では、テザー35の他端35bは、第4,5の基布80,81の連結部である縫い目82aに連結されることによって、第4,5の基布80,81の両方に連結されている。しかしながら、これに限定されない。他端35bは、第4の基布80だけに固定されてもよい。この場合、他端35bは、第4の基布80において、一端35aよりも下側の位置に固定されればよい。または、他端35bは、第5の基布81だけに連結されてもよい。この場合、他端35bは、第5の基布81において、一端35aよりも下側の位置に固定されればよい。また、第2の実施形態の図7のように他端35bが仕切布34を介して第4,5の基布80,81の両方に連結されてもよい。
このように、他端35bは、本発明で言う車体側基布の一例である第4の基布80と、本発明で言う乗員側基布の一例である第5の基布81との少なくとも一方に固定されればよい。なお、他端35bが、第4,5の基布80,81の少なくとも一方に固定される場合であっても、一端35aと他端35bとは、腕対向部38の凹み形状が、少なくとも乗員Hの肩H4よりも前に形成されるように設定されることが好ましい。
なお、第1〜4の実施形態においては、乗員Hは、日本人の成人の平均的な体型に設定されている。そして、サイドエアバッグ30は、乗員Hに合わせて形成されている。しかしながら、乗員Hは、日本人の成人の平均的な体型に合わせて形成されることに限定されない。サイドエアバッグ30の形状は、サイドエアバッグ装置20が搭載される装置(車両、自動車)が用いられる国の人の体型に合わせて形成されてよい。この場合であっても、サイドエアバッグ30は、展開したときに乗員Hの腕部H2を、幅方向B1に胸部H3と重ならない位置まで押し上げる。
また、第1,2の実施形態では、1つの仕切布34が用いられて、サイドエアバッグ30内は、上部屋45と下部屋46との2つに分けられた。しかしながら、これに限定されない。仕切布は、サイドエアバッグ30内を少なくとも上部屋と下部屋とに分けるものであればよい。言い換えると、仕切布は、サイドエアバッグ内を、例えば、上部屋と下部屋とに加えて、さらに1つ以上の部屋に分けてもよい。この場合は、サイドエアバッグ30内は、上部屋45と下部屋46と、さらに1つ以上の部屋に分けられる。このようにサイドエアバッグ30内が3つ以上の部屋に分けられる構造においても、テザー35の他端35bは、仕切布に固定されていればよい。または、サイドエアバッグ30内を上記のように3つ以上の部屋に分けるために複数の仕切布が用いられてもよい。この場合では、テザー35の他端部35bは、これら複数の仕切布の少なくとも1つに固定される。
なお、上記のようにサイドエアバッグ30内が3つ以上の部屋に分けられる構造であっても、テザー35の一端35aと他端35との前後方向A1での相対位置関係が第1,2の実施形態と同じであることによって、第1,2の実施形態と同様の効果が得られる。
また、第1〜4の実施形態では、サイドエアバッグ装置20は、一例として助手席に設けられている。しかしながら、これのみに限定されない。サイドエアバッグ装置20は、車体17に設けられてもよい。例えば、第1〜4の実施形態で説明されたサイドエアバッグ装置20がドア部材6に設けられてもよい。
なお、サイドエアバッグ装置20が車体17に設けられた場合であっても、展開したサイドエアバッグ30のシートに対する位置、姿勢は、第1〜4の実施形態と同じとなる。この場合では、サイドエアバッグ30の前後、上下、幅方向は、展開したサイドエアバッグ30に対向するシートの前後、幅、上下方向と同じである。
第1〜4の実施形態で説明されたサイドエアバッグ30が車体17、例えばドア部材6に設けられる場合では、サイドエアバッグ30の前後方向、上下方向、幅方向は、助手席14の前後、幅、上下方向と同じとなり、つまり、車体前後、車幅方向、車体上下方向と同じになる。
また、第1の実施形態では、エアバッグ本体36と、第3の基布33とによってエアバッグ体200が形成される。このため、第1の実施形態では、サイドエアバッグ30は、エアバッグ体200と、テザー35と、仕切布34とを備える構造となる。第4の実施形態では、サイドエアバッグ30は、エアバッグ体200と、テザー35とを備える。
第2,4の実施形態では、第4,5の基布80,81によってエアバッグ体200が形成されている。このため、第2の実施形態では、エアバッグ30は、エアバッグ体200と、仕切布34と、テザー35とを備える。
第3の実施形態では、第6,7,8,9の基布90〜93によって、エアバッグ体200が形成される。このため、第3の実施形態では、エアバッグ本体30は、エアバッグ体と、テザー35とを備える。
上記したエアバッグ体200とは、エアバッグ30の外郭を規定するものである。エアバッグ本体200内にガスが噴射されることによって、エアバッグ30が展開する。
なお、エアバッグ30が、テザー35や仕切布34を備えず、エアバッグ30の外郭を形成する基布などの部材によってのみ形成される場合では、エアバッグとエアバッグ体は同じものになる。
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。