JP5255557B2 - 魚釣用スピニングリール - Google Patents
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特許文献1では、ばねを利用して、ばねにドラグ調節体が引っ掛かるように構成して脱落防止を図り、ドラグ調節体を強く引くことによってドラグ調節体の引っ掛かりを解除してドラグ調節体をスプール軸から取り外せるように構成している。
一方、特許文献2では、ドラグ調節体にワッシャーを設け、スプール軸に対するドラグ調節体の螺合が解除された後もワッシャーがスプール軸のねじに螺合するように構成して脱落防止を図り、さらにワッシャーの螺合を解除することでドラグ調節体をスプール軸から取り外せるように構成している。
しかしながら、特許文献1,2では、このような侵入に対して工夫がなされていなかった。
そこで、公知のドラグ機構の防水技術を特許文献1,2に記載の脱落防止技術に組み合わせることが考えられる。しかしながら、そのようにすると、部品点数の増加や設計構造の観点からの制約が多くなってしまい、実現には至っていない。
さらに、防水シール部材の先端周部は、スプール軸に対するドラグ調節体の螺合を解除した状態で、係止突部に係脱可能に係止されるので、ドラグ調節体の螺合が解除された後も、スプールに対してドラグ調節体を弾性力の作用で係止させることができる。
また、ドラグ調節体の螺合が解除され始めた後も、防水シール部材を介して、スプールにドラグ調節体を弾性力の作用で係止させることができるので、ドラグ調節体の脱落を好適に防止することができる。これにより、誤ってドラグ調節体を落下させてしまうことがなくなり、スプール交換時等の取り扱いが容易になる。
また、先端周部と係止突部との係止状態を解除することによりスプールからドラグ調節体を取り外すことができるので、ドラグ調節体の脱落を好適に防止することができる構成でありながら、スプールの交換やメンテナンス等も簡単に行うことができる。
そして、Ln<L1を満足する範囲においては、螺合状態を解除した後に防水シール部材が傾斜することなく係止突部に係止されることとなるので、防水シール部材が傾斜した状態で係止突部に係止される場合に比べて、係止突部の対向面からの突出高さを低くすることができるようになり、設計の自由度が高まる。
また、傾斜した状態で先端周部と係止突部との係止状態が維持されることとなるので、スプール周りの各寸法の設計の自由度が高まる。
さらに、防水シール部材は、傾斜しながらその先端周部が係止突部に係止されるようになっているので、前記した長さL1を可及的に短くすることができ、その分、ドラグ機構をなす制動部材の制動板やライニング材の数を増やすことができる。これにより、ドラグ機構の高性能化に対応可能な魚釣用スピニングリールが得られる。
図1に示すように、主として、魚釣用スピニングリールは、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール3とを有して構成される。
これらの部材からなる制動部材10は、ドラグ調節体20が締め付けられた際に、図2(a)に示すように、後記する押圧部材25の摺動によるドラグスプリング23の付勢力によりスプール側部材21の後面21d’によって押圧され、スプール3の前端面3fとの間に圧接される。これによって、スプール3に対して所望のドラグ力を生じさせる。
収容室3dの開口には、弾性変形可能な防水シール部材30が取り付けられている。防水シール部材30は、合成ゴム等の材料(例えば、ブチレンゴム)からなる円環状の部材であり、スプール3側からドラグ調節体20側に向けて突設され、スプール3とドラグ調節体20(スプール側部材21の胴部21b)との間に形成される空間をスプール軸9の軸方向に塞ぐようになっている。
防水シール部材30は、収容室3dの前端開口に取り付けられる断面略コ字形状の取付部31と、取付部31に一体的に設けられた円板状の可動部32とを備え、可動部32の先端周部33(内周部)が対向面となる胴部21bの外周面21cの周方向の全体に摺接されるようになっている。
つまり、ドラグ調節体20の締め付けを緩めてドラグ調節体20の螺合状態を解除すると、係止突部24が防水シール部材30の先端周部33に当接して係止され、図3(b)に示すように、取り外し方向に移動する係止突部24に先端周部33が引っ張られて、ドラグ調節体20の取り外し方向に係止状態を維持しつつ傾斜する。したがって、ドラグ調節体20とスプール軸9との螺合状態が解除された後も、防水シール部材30を介してスプール3にドラグ調節体20が保持されるようになっている。
つまり、ドラグ調節体20を取り付ける際に締め付けていくと、係止突部24が防水シール部材30の先端周部33に当接し、取り付け方向に移動する係止突部24により、図4(a)に示すように、先端周部33が押圧されてドラグ調節体20の取り付け方向に可動部32が略円錐状に傾斜するようになっている。そして、ドラグ調節体20がさらに締め付けられることによって、先端周部33が係止突部24を乗り越えて、先端周部33と係止突部24との押圧状態(係止状態)が解除されることとなる。
なお、このような可動部32の傾斜の詳細については後記する。
また、段差32aがアール状に形成されているので、可動部32がドラグ調節体20の取り外し方向(スプールの前方)に向けて略円錐状に傾斜する(折れ曲がる)際に、折れ曲がり部分を仕切壁3hの先端部側に押し付けるように作用し、折れ曲がり部分(取付部31)がバタつくことが抑制されるようになっている。
なお、段差32aを形成する位置は、防水シール部材30の径方向において任意に設定することができ、折れ曲がる位置を変更することによって可動部32の長さ(折れ曲がりの長さ)を変更することができる。
本実施形態においては、ドラグ調節体20の取り外し方向に可動部32が傾斜する長さL2と、取り付け方向に可動部32が傾斜する長さL21とが同じ長さ(L2=L21)となるように設定されている(図3(a)(b)、図4(a)(b)参照)。
本実施形態では、凹部22bが六角形等の角穴中空とされており、押圧部材25は、この角穴中空に対応する外形状を備えて構成されて、凹部22bに対して軸方向に移動可能に、かつ回り止め嵌合されて配置されている。
これによって、調節操作部材22を回動操作すると、押圧部材25は、スプール軸9に沿って回動しながら、図2(a)に示すように、凹部22b内を移動することとなり、その移動に伴って、ドラグスプリング23の付勢力を調節して、所望の制動力を制動部材10に与えるようになっている。
本実施形態では、スプール軸9とドラグ調節体20の押圧部材25との螺合可能な長さをLn(図1(a)参照)とし、ドラグ調節体20を略最大に締め付けた位置(略最大のドラグ力が得られるように絞め付けた位置)からドラグ調節体20の締め付けを緩めて先端周部33に係止突部24が当接する位置までドラグ調節体20(スプール側部材21)が移動する長さをL1としたときに(図2(b)参照)、Ln>L1となるように設定されている。
つまり、ドラグ調節体20の締め付けを緩めていくと、押圧部材25の雌ねじ部25aとスプール軸9の雄ねじ部9aとの螺合が解除される前に、先端周部33に係止突部24が当接するように設定されている。したがって、押圧部材25とスプール軸9との螺合が解除され始めた時点で、防水シール部材30の可動部32は、ドラグ調節体20の取り外し方向に傾斜した状態となる。
すなわち、図3(b)に示すように、防水シール部材30において傾斜可動する部分となる可動部32の長さをL2とし、防水シール部材30の可動部32がドラグ調節体20の取り外し方向に傾斜する際の傾斜角度をθ1とし、係止突部24における外周面21cからの突出高さをL3とし、先端周部33が係止突部24に係止しているときの高さをLaとしたときに、次式(1)〜(3)を満足するように設定している。
La = L2−L2cosθ1 = L2(1−cosθ1)・・・(1)
sinθ1 = (Ln−L1)/L2 ・・・(2)
L3>L2(1−cosθ1) ・・・(3)
ここで、0°<θ1<45°
そこで、ドラグ調節体20が略最大に締め付けられる位置まで移動した際(好ましくは、ドラグ調節体20のスプール側部材21の後面21d’が制動部材10に当接する位置まで移動した際)に、係止突部24から先端周部33が外れるようにする必要がある。そのため、本実施形態では、各部の関係を次のように設定している。
La’= L2−L2cosθ2 = L2(1−cosθ2)・・・(4)
sinθ2 = L4/L2 ・・・(5)
L3<L2(1−cosθ2) ・・・(6)
これによって、先端周部33がスプール側部材21の胴部21bの外周面21cに当接し、スプール3とドラグ調節体20との間が防水シール部材30によって塞がれる状態となる(図2(a)参照)。
さらに、防水シール部材30の先端周部33は、スプール軸9に対するドラグ調節体20の螺合を解除した状態で、係止突部24に係脱可能に係止されるので、ドラグ調節体20の螺合が解除された後も、スプール3に対してドラグ調節体20を弾性力の作用で係止させることができ、引き続き、制動部材10の防塵、防水を図ることができる。
また、先端周部33と係止突部24との係止状態を解除することによりスプール3からドラグ調節体20を取り外すことができるので、ドラグ調節体20の脱落を好適に防止することができる構成でありながら、スプール3の交換やメンテナンス等も簡単に行うことができる。
したがって、ドラグ機構を介してスプール3が回転する際に防水シール部材30を介して生じる抵抗を可及的に小さくすることができ、魚等の引きによる釣糸の繰り出しがスムーズになる。したがって、ドラグ機構を介したスプール3の回転フィーリング性が向上する。
また、傾斜した状態で先端周部33と係止突部24との係止状態が維持されることとなるので、スプール3の周りの各寸法の設計の自由度が高まる。
さらに、防水シール部材30は、傾斜しながらその先端周部33が係止突部24に係止されるようになっているので、前記した長さL1を可及的に短くすることができ、その分、ドラグ機構をなす制動部材10の制動板11a〜11cやライニング材12の数を増やすことができる。これにより、ドラグ機構の高性能化に対応可能な魚釣用スピニングリールが得られる。
本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、防水シール部材30の先端周部33に保持手段を設けた点にある。
図5(a)(b)に示すように、防水シール部材30の先端周部33には、係止突部24aに当接する側となる後側に保持手段として機能する突起部33aが形成されている。この突起部33aは、断面半球状とされており、図5(b)に示すように、係止突部24aの対向面24bに対して引っ掛かり易く係止状態が維持され易い形状とされている。また、係止突部24aの対向面24bは、平らに形成されており、第1実施形態で示した係止突部24に比べて突起部33aが引っ掛かり易くなっている。
したがって、このような突起部33aや対向面24bが形成されていない場合に比べて、これらの間の係止状態が好適に維持されるようになり、ドラグ調節体20の脱落をより一層好適に防止することができるようになる。
したがって、このように押圧時の対向面同士がアール状に形成されていない場合に比べて、係止突部24aと先端周部33との係止状態が解除され易くなり、ドラグ調節体20のスムーズな取り付けが実現される。
本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、防水シール部材30の可動部分となる可動部32の長さ(折れ曲がり長さ)が、ドラグ調節体20の取り外し方向と取り付け方向とで異なるように設けた点にある。
このような当接部34を設けることによって、ドラグ調節体20が取り外し方向に向けて傾斜する際の可動部32の長さL2よりも、ドラグ調節体20が取り付け方向に向けて傾斜する際の可動部32の長さL2’が短くなる。
したがって、前記第1実施形態で示した例に比べて、係止突部24を先端周部33が乗り越えやすくなり、ドラグ調節体20のスムーズな取り付けを実現することができる。
本実施形態が前記第1〜第3実施形態と異なるところは、ドラグ調節体20側からスプール3側に向けて防水シール部材30Aが突設されており、先端周部(外周部)33Aの対向面となるスプール3の内周面35に先端周部33Aが摺接するように構成されている点である。
なお、図7(b)では、簡単のため、ドラグ調節体20に対して相対的にスプール3側が移動するように示してある。
また、可動部32Aは、ドラグ調節体20の取り付け時に、先端周部33Aが係止突部36に当接して、ドラグ調節体20を取り付ける方向と逆の方向に同様に傾斜するようになっている。
したがって、このような変則的な折れ曲がりが生じない場合に比べて、本実施形態では、係止突部24と先端周部33Aとの押圧状態が解除され易くなり、ドラグ調節体20のスムーズな取り付けを実現することができる。
この魚釣用スピニングリールでは、スプール軸9にドラグ調節体20を螺合した状態において、スプール軸9とドラグ調節体20との螺合可能な長さをLnとし、スプール側部材21の胴部21bの外周面21cにおける先端周部33の当接位置から係止突部24までの長さをL1としたときに、Ln<L1となるように設定されている。
したがって、ドラグ調節体20の脱落を確実に防止することができる。
3 スプール
3d 収容室
9 スプール軸
10 制動部材
20 ドラグ調節体
21 スプール側部材
21b 胴部
21c 外周面
22 調節操作部材
24,24a,36 係止突部
30 防水シール部材
30A 防水シール部材
32,32A 可動部
33,33A 先端周部
33a 突起部(保持手段)
Claims (7)
- リール本体に前後動可能に支持されたスプール軸に取り付けられ、ドラグ機構をなす制動部材を内側に収容可能な円筒状のスプールと、前記スプール軸の先端に螺合され、螺合による締め付け力により前記制動部材に当接して当該制動部材の摩擦結合力を調整可能とするドラグ調節体と、を備えた魚釣用スピニングリールにおいて、
前記スプールまたは前記ドラグ調節体の一方の側から他方の側へ向けて突設され、前記スプールと前記ドラグ調節体との間に形成される空間を塞ぐようにして、先端周部が前記他方の側の対向面に摺接される弾性変形可能な防水シール部材と、
前記他方の側の対向面から前記一方の側へ向けて突設され、前記防水シール部材の前記先端周部が係脱可能に係止される係止突部と、を備え、
前記防水シール部材の前記先端周部は、前記スプール軸に対する前記ドラグ調節体の螺合を解除した状態で、前記係止突部に係止可能であることを特徴とする魚釣用スピニングリール。 - 前記防水シール部材は、前記スプール側から前記ドラグ調節体側へ向けて突設されており、前記先端周部が前記ドラグ調節体の対向面に摺接されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
- 前記スプール軸に前記ドラグ調節体を螺合した状態において、
前記スプール軸と前記ドラグ調節体との螺合可能な長さをLnとし、
前記他方の側の対向面における前記先端周部の当接位置から前記係止突部までの長さをL1としたときに、
次式を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
Ln<L1 - 前記防水シール部材は、前記ドラグ調節体の締め付けを緩めて前記スプール軸から前記ドラグ調節体を取り外す際に、前記先端周部が前記係止突部に係止した状態で前記ドラグ調節体の取り外し方向に傾斜可能であり、
前記スプール軸と前記ドラグ調節体との螺合可能な長さをLnとし、
前記ドラグ調節体を最大に締め付けた位置から、前記ドラグ調節体の締め付けを緩めて前記先端周部に前記係止突部が当接する位置まで前記ドラグ調節体が移動する長さをL1とし、
前記防水シール部材が前記ドラグ調節体の取り外し方向に傾斜する際の当該防水シール部材の傾斜可動する部分の長さをL2とし、
前記防水シール部材が前記ドラグ調節体の取り外し方向に傾斜する際の前記傾斜可動する部分の傾斜角度をθ1とし、
前記係止突部における前記他方の側の対向面からの突出高さをL3としたときに、次式、
Ln>L1
sinθ1 = (Ln−L1)/L2
L3>L2(1−cosθ1)
を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。 - 前記先端周部および前記係止突部の少なくとも一方には、当該先端周部と当該係止突部との係止を保持するための保持手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
- 前記防水シール部材は、前記スプール軸に前記ドラグ調節体を螺合して取り付ける際に、前記ドラグ調節体の取り付け方向に移動する前記係止突部に前記先端周部が押圧されて、前記ドラグ調節体の取り付け方向に傾斜可能であり、その傾斜角度は、前記ドラグ調節体を取り外す際に傾斜する際の傾斜角度に比べて小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の魚釣用スピニングリール。
- 前記防水シール部材は、前記スプール軸に前記ドラグ調節体を螺合して取り付ける際に、ドラグ調節体の締め付け方向に移動する前記係止突部に前記先端周部が当接して押圧されて、締め付け方向に傾斜可能であり、
前記先端周部に前記係止突部が当接した位置から、締め付け方向にさらに前記ドラグ調節体が締め付けられて、前記先端周部が前記係止突部を乗り越えるようにして係止状態が解除される位置までの前記ドラグ調節体の移動する長さをL4とし、
前記防水シール部材が前記ドラグ調節体の取り付け方向に傾斜する際の当該防水シール部材の傾斜可動する部分の長さをL21とし、
前記防水シール部材が前記ドラグ調節体の取り付け方向に傾斜する際の前記傾斜可動する部分の傾斜角度をθ2とし、
前記係止突部における前記他方の側の対向面からの突出高さをL3としたときに、次式、
sinθ2 = L4/L21
L3<L21(1−cosθ2)
を満足することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
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