JP5207116B2 - 潤滑特性に優れた硬質皮膜および、金属塑性加工用工具 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、金型といった治工具においては、その他材と接する作業面に被覆される機能性皮膜について、潤滑性に優れた硬質皮膜に関するものである。そして、これらの硬質皮膜を作業面に被覆してなる金属塑性加工用工具に関するものである。
従来、例えば金属の塑性加工に用いられる治工具の場合、その作業面は被加工材と激しく摺動することによって、表面が著しい損耗を起こす。このため、治工具の作業面には何らかの表面処理を施しておくことで、その耐摩耗性を高める対策が広く行われている。そして、その中でもコーティング(被覆)技術は、ビッカース硬度で1000HVを超えるような硬質皮膜を、基体表面に密着性よく形成できることから、金型や切削工具の寿命改善に大きく寄与している。
しかしながら、このような治工具においては、特に上記の塑性加工用工具の作業環境がそうであるように、表面の耐摩耗性を高めるだけではなく、被加工材が凝着を起こさないよう、その潤滑特性をも高めることが非常に効果的である。この課題においては、例えばチタン(Ti)の炭化物は、高い耐摩耗性と摺動特性を兼ね備えることから、皮膜として治工具の表面に積極的に利用されている。このチタン炭化物の皮膜は、主に化学蒸着法(CVD法)によって形成されるものであるが(非特許文献1)、その他では、物理蒸着法(PVD法)の一種であるアークイオンプレーティング法によっても形成される(非特許文献2)。また、バナジウム炭化物(VC)の皮膜においても、従来のTD処理に加えては、上記のアークイオンプレーティング法による形成手段が提案されている(特許文献1)。
テクノナレッジ・ネットワーク(2006)[独立行政法人産業技術総合研究所が運営する技術情報サイト](インターネット<URL:http://www.techno-qanda.net/dsweb/Get/Document-5294>) 株式会社東洋硬化ホームページ(2003)(インターネット<URL:http://www.toyokoka.com/bumon/arkion/arkion.htm>) 特開2002−371352号公報
非特許文献1,2などで提案される、従来の硬質皮膜は、高い耐摩耗性と摺動特性を兼ね備えるものではある。しかしながら、原価低減のために製造コストの削減が強く要求される昨今の製造業においては、その治工具の使用に際し、より高いレベルの皮膜特性が求められるようになってきた。とりわけ、皮膜の潤滑特性をより一層高め、被加工材の凝着を抑制することが、治工具寿命を更に高めるための大きな課題となっている。
そこで本発明は、従来の方法では得られなかった、より高い潤滑特性を有する硬質皮膜と、その硬質皮膜を作業面に被覆した金属塑性加工用工具を提供するものである。
本発明者らは、現状よりも更に高い潤滑特性を示す硬質皮膜を達成するために、詳細な検討を重ねた。その結果、従来提案されている硬質皮膜であっても、その皮膜中に炭素−炭素の結合構造を一定量以上存在させることで、皮膜の潤滑特性が飛躍的に改善されることを突きとめた。そして、この革新的な知見に併せては、上記皮膜中に存在せしめた炭素−炭素結合の分布状態による作用をも調査したことで、本発明に至った。
すなわち本発明は、他材と接する基体表面に被覆される硬質皮膜において、その硬質皮膜の表面には炭素同士の結合を有する炭素原子が10原子%以上30原子%以下存在し、かつ前記炭素原子の割合は、硬質皮膜の表面から基体表面に向かって漸減していることを特徴とする、潤滑特性に優れた硬質皮膜である。この炭素原子には、spの結晶構造を有した炭素原子と、spの結晶構造を有した炭素原子の両方が含まれていることが望ましい。そして、このとき、硬質皮膜の種類は金属炭化物または金属炭窒化物とすることが好ましく、更には、これらを形成する炭素量が20原子%以上であることが好ましい。そして、この金属炭化物または金属炭窒化物はチタン炭化物またはチタン炭窒化物であることがさらに良い。加えては、硬質皮膜の酸素濃度が15原子%以下であることが好ましい。
また、上記の基体表面と硬質皮膜の間には、金属窒化物、具体的にはチタン窒化物からなる皮膜を形成することが好ましい。そして、本発明は、これらの硬質被膜を作業面に被覆してなることを特徴とする金属塑性加工用工具である。
本発明によれば、従来よりも高い潤滑特性を有する硬質皮膜と、それを適用した金属塑性加工用工具を提供することが可能となる。
本発明の最大の特徴は、硬質皮膜に炭素同士の結合を有する炭素原子を存在させることで、皮膜の潤滑特性を飛躍的に向上できた点にある。そして、硬質皮膜の厚さ方向に亘っては、この炭素同士の結合を有する炭素原子の濃度分布が、硬質皮膜トータルとしての機能を発揮させるためには重要であることをも、知見した点にある。
最初に、本発明の硬質皮膜に導入する「炭素同士の結合を有する炭素原子」の構成であるが、これはいわゆる、炭素原子のspおよび/またはsp結合構造からなる、ダイヤモンドやグラファイト(黒鉛)、あるいはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)のことを言う。そして、sp構造のダイヤモンドは高硬度にも優れる一方では、sp構造のグラファイトは特に潤滑性に優れることから、これらの結合構造を構成する炭素原子を、例えば従来の金属炭化物/窒化物/炭窒化物といった改質皮膜中に分散させれば、その基本特性の上に更なる高潤滑特性を付加することができる。この中でもチタン炭化物(TiC)等の金属炭化物皮膜は、3000HVにも及ぶ高硬度と共に、優れた潤滑特性を達成できる形態として好ましい。
そして、本発明においては、この炭素同士の結合を有する炭素原子は、硬質皮膜の表面に10原子%以上を存在せしめることが、十分な潤滑特性を得るために必要である。なお、基地皮膜自体の特性を害しない範囲としては30原子%以下とする。この定性および定量測定においては、例えばラマン分光法とX線光電子分光法(以下、XPS)を併用することよる皮膜表面の分析が利用できる。つまり、通常の硬質皮膜では表れない、それぞれの分析スペクトルピークにおいて、ラマン分光法ではspやspの炭素−炭素結合構造の存在を正確に把握することができる。ここで、本発明においては、この分析スペクトルピークにはspおよびspの両方の結晶構造が出現していること、すなわち、炭素同士の結合を有する炭素原子の全量のうちでは、sp構造のグラファイトとsp構造のダイヤモンドの両方が含まれているか、あるいは、spとspの両構造を有するDLCが含まれていることが望ましい。
そして、上記構造の炭素原子の存在を確認した上では、その結合エネルギーに該当するXPSスペクトルから、皮膜中に占める炭素−炭素結合を有する炭素原子量を定量すればよい。ここで、XPSを行うにおいては、硬質皮膜の表面は少なからず汚染されていることも考えられるから、表面情報の損なわれない範囲で、事前のスパッタリングによる清浄面の露出を行う作業を伴うのが望ましい。本発明では、高純度SiO標準試料にて1nm/分のスパッタを基準としての、10分間のスパッタリングで掘り下げた面を“硬質皮膜の表面”として差支えない。
さらに、本発明の特徴となるのが、硬質皮膜の厚さ方向に亘っての、上記の炭素同士の結合を有する炭素原子の濃度分布である。つまり、硬質皮膜が形成される基体表面に対しては、硬質皮膜中に炭素―炭素結合を有する炭素原子が過多に含まれると、皮膜内部の残留圧縮応力が大きくなり、その硬質皮膜の密着性が低下する。しかし、硬質皮膜の密着性を向上させるため、硬質皮膜中に含まれる同炭素原子を少なくすると、今度は硬質皮膜の表面(作業面)側において、その潤滑特性が劣ってしまう。そこで、硬質皮膜の表面側から基体側に向かっては、炭素同士の結合を有する炭素原子量を漸減させることで、硬質皮膜の表面側では摺動特性が向上し、基体側では密着性の良好な硬質皮膜にすることができる。
ここで、本発明の“炭素同士の結合を有する炭素原子が漸減している状態”の定性および定量においても、それは前記に同様、硬質皮膜の表面に存在する同炭素量の測定要領に従えばよい。つまり、spやspの炭素−炭素結合構造の存在確認は、ラマン分光法によればよい。そしてまず、高純度SiO標準試料にて1nm/分のスパッタを基準にして10分間のスパッタリングで掘り下げた“硬質皮膜の表面”では、XPSによる同炭素原子量を定量した後には、更に掘り下げた面で同様のXPS分析を行い、これを適当回繰返せばよい。そして、本発明においては、硬質皮膜の最表面から基体に向かい、10分、100分の2スパッタ面について測定し、これらの2データが漸減していることが確認されれば、上記した潤滑特性と密着性の両立効果は十分に発揮される。10分、100分、200分の3スパッタ面で上記の漸減が確認されれば、より確実である。
また、上記の通りの、硬質皮膜の基本物質を金属炭化物または金属炭窒化物とすれば、使用中の様々な機械的特性に優れるので、潤滑特性だけではない、硬質皮膜としてのトータル要求特性においても十分な作用効果を発揮できる。具体的には金属炭化物または金属炭窒化物を形成する炭素量が20原子%以上を占める硬質皮膜であれば十分であるが、好ましくは25原子%以上である。
そして、この炭化物または炭窒化物を構成する金属としてはチタンが好ましい。チタンは炭化物(炭窒化物)の形成能が高い上に、形成されたチタン炭化物(TiC)や同炭窒化物(TiCN)も硬度が非常に高いため、このチタン炭化物(炭窒化物)中に炭素−炭素結合を担う炭素原子が存在することによって、潤滑特性と高硬度を併せ持つ皮膜とすることができる。そして、これらのうちでも、金属炭化物(チタン炭化物)であれば、3000HVにも及ぶ高硬度と共に、優れた潤滑特性を達成できる形態としてより好ましい。
なお、硬質皮膜中に過多の酸素が混入すると、それは皮膜中に金属酸化物を多量に形成して皮膜が脆くなってしまう。よって、本発明では、不純物であることも含め、硬質皮膜の酸素濃度を15原子%以下に規制することが望ましい。
また、本発明においては、上記の基体表面と硬質皮膜の間には、金属窒化物からなる中間皮膜を形成することが、それら相互間の更なる密着性の向上の点で好ましい。そしてこの場合、金属窒化物としては、チタンやクロムなどの金属元素が主体の窒化物が適用できるが、それ自体の硬度にも配慮すれば、チタン窒化物であることが望ましい。そして、これについては、硬質皮膜が金属炭化物や金属炭窒化物であるのであれば、それを構成する金属元素種に合わせることが、更なる密着性の向上に好ましい。
さらに、上記の中間皮膜にチタン窒化物を適用すれば、それは金色という特別な色を呈していることから、その上の硬質皮膜には異なる色の皮膜を被覆することで、使用中に硬質皮膜が摩耗すると金色の層が露出してくるため、皮膜自体の摩耗状況(寿命)を色で判断することができる。このような理由からも、基体表面と硬質皮膜との間には、チタン窒化物を適用することが好ましい。そして、その中でも、銀色を呈したチタン炭化物を硬質被膜に採用する組合わせが、皮膜特性と色判断能の両機能を向上させる上で、より望ましい。
表面処理を行う基体として、硬さ64HRCに調整したJIS高速度工具鋼SKH51の板状試験片(幅15mm×長さ18mm×厚さ2mm)と、同円盤状試験片(直径20mm×厚さ5mm)を準備した。板状試験片はコーティングした皮膜の分析用、円盤状試験片は潤滑特性の評価試験用である。また、これら加えては、皮膜の密着性を評価するための試験片(被覆面30mm×30mm)も準備した。そして、これらの平面を鏡面機械研磨した後、アルカリ超音波洗浄を行った。
次に、これら3種の基体を一組とした試料No.1に対し、チャンバ容積が1.4m(処理品の挿入空間は0.3m)のアークイオンプレーティング装置内において、温度773K、1×10−3Paの真空中で加熱脱ガスを行った後、723Kの温度においてArプラズマによるクリーニングを行った。そして、装置内に各種の反応ガスを導入し、純Tiターゲット上にアーク放電を発生させて、723Kのもとでアークイオンプレーティングによるコーティングを行った。コーティング時の基体には−100Vのバイアス電圧を印加して、基体直上に形成されるチタン窒化物である中間皮膜の厚さがおよそ1〜2μm、そして、その上に形成されるチタン炭化物である硬質皮膜の厚さがおよそ2〜3μmとなる様、コーティング時間を調整した。コーティング条件を表1に示す。なお、参考試料として、CVD法により皮膜を基体直上に形成した試料No.2と、TD法により皮膜を基体直上に形成した試料No.3を載せておく。
最初に、板状試験片の表面に形成されたコーティング皮膜を使って、その構成を分析した。まず、ラマン分光法により皮膜表面(試料No.1においては硬質皮膜の表面)に存在する炭素の結合構造の同定を行った。装置は日本電子株式会社製・型式JRS−System2000を使用した。そして、事前に高純度Si標準試料の測定を行って、He−Neレーザ(波長633nm)によって520cm−1のラマンシフトに現れるSiのラマンピーク強度が70,000から80,000の範囲内に収まることを確認した上で、その時のレーザ光出力を100とした場合の25%出力のレーザ光で測定を行い、1000cm−1から2000cm−1までのラマンシフト範囲を、40秒かけて1回スキャンした。この結果、本発明の試料No.1では、炭素同士の結合を示す、spとspの両結合ピークが現れた。なお、参考試料である試料No.2およびNo.3では、炭素同士の結合を示すピーク自体が現れなかった。
次に、上記のラマン分光分析の結果を確認した後には、続けて同コーティング皮膜(試料No.1においては硬質皮膜)のXPSによる表面分析を行った。装置はKratos Analytical Limited社製・AXIS−HSを使用した。X線源にはAlを用い、加速電圧15kV、エミッション電流は7mAとした。測定領域は0.5mm×0.2mmで、測定直前にスパッタリングによって、まず最表層から10分(約10nm;高純度SiO標準試料にて1nm/分のスパッタを基準としている)掘り下げた、表層不純物を除去した部位を測定した。そして、本発明の試料No.1については、続けて、50分、100分、150分、200分、300分掘り下げた各部位についても、測定した。
そして、板状試験片のものと同条件で形成した、円盤状試験片表面のコーティング皮膜により、相手材をJIS軸受鋼SUJ2とした時の動摩擦係数の測定を行って、潤滑特性を評価した。試験条件は、ボールオンディスク型摩擦試験機(CSM Instruments社製Tribometer)を使用し、常温、大気中にて、コーティング皮膜にSUJ2球(直径6mm)を2Nの荷重で押し付けながら、円盤状試験片を150mm/秒の速度で回転させた。試験距離は100mとし、摩擦係数は試験距離10m,20m,30m,40m,50m,60m,70m,80m,90m,100mでの値の平均値をとった。
更には、やはり上記と同条件で形成した、密着性評価試験片の表面のコーティング皮膜に対し、ロックウェル硬さ試験機(ミツトヨ製AR−10)にて被覆面(30mm×30mm)にCスケールで圧痕をつけ、その部分を光学顕微鏡にて観察し、図1に示す基準で圧痕の周囲に発生する剥離を評価した。
表2に各試験片にコーティングされた硬質皮膜の組成(構成)と摩擦係数、そして密着性の評価結果を示す。表中のC量については、C−OとはO(酸素)と結合している炭素原子、C−Cとは本発明の根幹をなす炭素同士の結合をしている炭素原子であり、またC−Tiとは金属Tiと炭化物を構成している炭素原子を、それぞれ表す。CVD法およびTD法で成膜した、試料No.2および3については、その皮膜表面(スパッタリング10分)での、炭素同士の結合を有する炭素原子量を、参考表記しておく。
アークイオンプレーティングによって皮膜を形成した試料No.1は、その最表に位置する硬質皮膜表面においては存在する炭素−炭素結合が十分多く、低い摩擦係数が得られている。そして、この炭素−炭素結合の量は、基体に向かっては傾斜を伴って減少しておりかつ、その基体との間にはチタン窒化物の中間層をも形成していることから、基体との密着性にも優れる。
一方、CVD法により形成された皮膜である試料No.2は、皮膜表面の炭素−炭素結合が少ないことに加えては、そもそも十分な密着性が得られない。そして、TD法によって形成された皮膜である試料No.3は、V炭化物を主体とする皮膜であるが、この場合も皮膜表面の炭素−炭素結合量が少なく、十分な潤滑特性からして得られていない。
次に、プレート加工用パンチを準備して、その作業面に表1の試料No.1,2と同じ被覆条件による皮膜をそれぞれ形成し、実金型試験による寿命評価を行った。パンチ母材には、硬さを58HRCに調節したSKD11(JIS−G−4404)を用いた。パンチ形状は、直径75mm、高さ110mmである。試験は、パンチを500tプレス機にセットして、引張り強さ530MPa、厚み9.3mmの高張力鋼板(ハイテン)に冷間プレスを行ったものである。表3に各パンチの寿命を示す。
作業面に本発明の硬質皮膜を適用したパンチは、参考例を適用したパンチに比べて、工具寿命が2倍以上に向上している。なお、参考例を適用したパンチは、早期に焼付きが発生し、寿命となった。
表面処理を行う基体としては、実施例1で用いた通りの3種を一組とした試験片を、試料No.4として新たに準備した。
そして、これらの試料No.4に対し、チャンバ容積が1.4m(処理品の挿入空間は0.3m)のアークイオンプレーティング装置内において、温度773K、1×10−3Paの真空中で加熱脱ガスを行った後、723Kの温度においてArプラズマによるクリーニングを行った。そして、装置内に反応ガスを導入し、純Tiターゲット上にアーク放電を発生させて、723Kのもとでアークイオンプレーティングによるコーティングを行った。コーティング時の基体には−100Vのバイアス電圧を印加して、基体直上に硬質皮膜を形成した。硬質皮膜の厚さは、およそ2〜3μmとなる様、コーティング時間を調整した。コーティング条件を表4に示す。
最初に、実施例1に従ったラマン分光法によって、試料No.4の硬質皮膜表面に存在する炭素の結合構造の同定を行った。その結果、炭素同士の結合を示すspとspの両結合ピークが現れた。
そして、上記に続けては、やはり実施例1に従ったXPSにより、硬質皮膜の表面分析を行った。また同様に、実施例1で行った動摩擦係数の測定による潤滑特性評価と、ロックウェル圧痕試験機による密着性評価も行った。表5に硬質皮膜の組成(構成)と摩擦係数、そして密着性の評価結果を示す。表5には、実施例1で評価した参考試料である、試料No.2および3の結果も併記しておく。
実施例1に同様、アークイオンプレーティングによって皮膜を形成した本発明の試料No.4は、その硬質皮膜の表面においては存在する炭素−炭素結合が十分多く、低い摩擦係数が得られている。そして、この炭素−炭素結合の量は、基体に向かっては傾斜を伴って減少しており、基体との密着性にも優れる。
本発明は、冷間ならびに温熱間における鍛造およびプレス加工など、金属の塑性加工に用いる工具の作業面に使用できる。また、その摺動特性を考慮すれば、ダイカストおよび鋳造に使用される金型、もしくは鋳抜きピンや、ダイカストの射出機に使用されるピストンリング等の、溶融金属に接して使用される鋳造用部材としても、その作業面への転用が可能である。更に、金型以外の治工具として、例えば機械の摺動部品や、切断刃などに適用することも可能である。
実施例1,3で用いた、ロックウェル硬さ試験機を応用した密着性評価試験の、剥離発生状況の評価基準を示す図である。 本発明例No.1の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。 参考例No.2の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状況)を示した顕微鏡写真である。 参考例No.3の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状況)を示した顕微鏡写真である。

Claims (9)

  1. 他材と接する基体表面に被覆される硬質皮膜において、その硬質皮膜の表面には炭素同士の結合を有する炭素原子が10原子%以上30原子%以下存在し、かつ、前記炭素原子の割合は、硬質皮膜の表面から基体表面に向かって漸減していることを特徴とする潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  2. 炭素同士の結合を有する炭素原子には、spの結晶構造を有した炭素原子と、spの結晶構造を有した炭素原子の両方が含まれることを特徴とする請求項1に記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  3. 硬質皮膜は、金属炭化物または金属炭窒化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  4. 金属炭化物または金属炭窒化物を形成する炭素量が20原子%以上であることを特徴とする請求項に記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  5. 金属炭化物または金属炭窒化物は、チタン炭化物またはチタン炭窒化物であることを特徴とする請求項またはに記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  6. 酸素濃度が15原子%以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  7. 基体表面と硬質皮膜の間には、金属窒化物からなる皮膜を形成することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  8. 金属窒化物は、チタン窒化物であることを特徴とする請求項に記載の潤滑特性に優れた硬質皮膜。
  9. 請求項1ないしのいずれかに記載の硬質被膜を作業面に被覆してなることを特徴とする金属塑性加工用工具。
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