JP5197135B2 - 染色プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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[1]所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへ熱硬化性成分を含むプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液を加熱し前記熱硬化性成分の硬化反応を行いプラスチックレンズを得ること、
上記プラスチックレンズを成形型から離型すること、および、
離型されたプラスチックレンズを染色すること、
を含む染色プラスチックレンズの製造方法であって、
前記加熱を、前記硬化反応における重合収縮率が65%未満までは前記プラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃未満の温度で行い、
重合収縮率が65%以上に硬化反応が進行した後かつ前記染色前に、前記プラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃以上の温度に、プラスチックレンズを加熱することを更に含むことを特徴とする染色プラスチックレンズの製造方法。
[2]Tg+20℃以上の温度での加熱は、0.08〜2時間の範囲の加熱時間で行われる[1]に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
[3]前記加熱時間は、0.5〜2時間の範囲である[2]に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
[4]Tg+20℃以上の温度での加熱は、前記キャビティ内のプラスチックレンズに施される[1]〜[3]のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
[5]Tg+20℃以上の温度での加熱は、上記2つのモールドと密着した状態のプラスチックレンズに施される[1]〜[3]のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
(1)所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへ熱硬化性成分を含むプラスチックレンズ原料液を注入すること(以下、「注入工程」ともいう)、
(2)上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液を加熱しプラスチックレンズを得ること(以下、「重合工程」ともいう)、
(3)上記プラスチックレンズを成形型から離型すること(以下、「離型工程」ともいう)、および、
(4)離型されたプラスチックレンズを染色すること(以下、「染色工程」ともいう)。
本発明の染色プラスチックレンズの製造方法では、前記重合工程における加熱を、硬化反応における重合収縮率が65%未満までは前記プラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃未満の温度で行い、更に、重合収縮率が65%以上に硬化反応が進行した後かつ前記染色前に、前記プラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃以上の温度に、プラスチックレンズを加熱する。
しかし本発明者らの検討の結果、上記温度で注型重合したプラスチックレンズは、染色後に色ムラが発生する確率が高いことが判明した。この理由について本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記温度で注型重合したプラスチックレンズの色ムラは、プラスチックレンズの表面に不均一な部分が存在することに起因して発生するとの新たな知見を得た。そこで本発明者らは上記知見に基づき更に検討を重ね、原料液の対流による脈理が発生しないほど硬化反応が進行した後、高温での加熱処理を行うことにより染色ムラのない染色プラスチックレンズが得られることを見出した。本発明者らは、この理由は、高温加熱によりレンズ表面の均一性が高まったことにあると推察している。更に上記加熱を行うことは、レンズの耐候性向上にも有効であることも判明した。
以下、本発明の染色プラスチックレンズの製造方法の各工程について、更に詳細に説明する。
本工程は、注型重合によりレンズ形状の成形体を得るため、成形型内へプラスチックレンズ原料液を注入する工程である。本発明において使用される成形型は、所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型であればよく、通常の注型重合で使用される成形型を何ら制限なく使用することができる。上記間隔は、円筒状のガスケットによって閉塞してもよく、ガスケットの代わりに粘着テープを2つのモールドの側面に巻きつけることによって閉塞してもよい。以下、図1に基づいて本発明において使用可能な成形型について説明するが、本発明において使用される成形型は図1に示す態様に限定されるものではない。
本工程は、前述の注入工程でキャビティ内へ注入されたプラスチックレンズ原料液を加熱することにより、熱硬化性成分の重合反応(硬化反応)を進行させてレンズ形状の成形体を得る工程である。本発明の製造方法では、重合工程における加熱を、硬化反応における重合収縮率が65%未満まではプラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃未満の温度で行う(以下、「第1加熱処理工程」ともいう)。これは、重合収縮率が65%未満と硬化度が十分ではなく流動性を有するプラスチックレンズ原料液をTg+20℃以上に加熱すると、プラスチックレンズ原料液の対流が起こり、成形されるプラスチックレンズ内に脈理が生じるおそれがあるからである。Tg+20℃未満の加熱温度は、好ましくはTg+12℃の範囲である。上記加熱時間は、適宜設定すればよい。
(TMA法)
針入プローブ(先端径0.5〜1.0mm)に、98mNの荷重を加えて試料の変位を測定することでガラス転移点を測定する。測定はφ5mm×3mmの試料を室温から10℃/分の割合で昇温させて、熱機械分析装置で試料の変位を測定することで行う。通常試料は昇温に伴う熱膨張により大きくなる。ところがガラス転移点付近では測定値は試料が膨張から収縮に転じることを示すことがある。これは試料が荷重に耐え切れなくなり前記針入プローブが試料にめり込んだ時に起こる現象であり、このピークトップ温度をガラス転移温度Tgとする。ピークトップが明確でない場合はピークトップ付近の測定値前後の接線が交差する点の温度をガラス転移温度とする。
本発明の製造方法では、重合工程において重合収縮率が65%以上になるまで硬化反応が進行した後であって染色工程前に、Tg+20℃以上の加熱処理(以下、「第2加熱処理工程」ともいう)を行う。第2加熱処理工程は、重合工程終了前に行うことが好ましい。または、重合が完了し、離型工程前の冷却後または保温後のレンズに、Tg+20℃以上の加熱を加えることも好適である。レンズTg+20℃以上の加熱処理を施すことにより、後工程である染色工程における色ムラを低減ないしは防止できることが、本発明者らの検討の結果、新たに見出された。但し、重合反応初期に上記温度で加熱するとプラスチックレンズ原料液の対流による脈理発生のおそれがある。そこで本発明では、本加熱工程を、重合工程において重合収縮率が65%以上になるまで硬化反応が進行した後に開始する。重合収縮率が65%以上になるほど硬化が進行した状態であれば、Tg+20℃以上の加熱処理を施しても脈理の原因となる対流が生じないため、脈理防止と色ムラ低減を両立することができる。また、本加熱工程における加熱温度が過度に高いと、プラスチックレンズが黄変するおそれがあるため、本加熱処理における加熱温度の上限は、例えばTg+50℃とすることができる。但し、染料に補色となる青色染料を多く調合すること(いわゆるブルーイング)により色調整を行い黄変を補正することが可能であるため、Tg+50℃超の温度で加熱する際には黄変補正のための色調整を行うことが好ましい。なお、高濃度染色レンズ(好ましくは視感透過率50%以上の染色レンズ)の場合は高濃度染色により黄変自体が目立たなくなるためその限りではない。前記加熱温度は、好ましくはTg+22℃〜Tg+28℃の範囲である。また、前記加熱を開始するタイミングは、重合収縮率が65%以上になった後であればよく、重合収縮率が70%以上になった後であることが好ましい。前記加熱は、重合収縮率が例えば85%以下、好ましくは80%以下の状態で開始することが効果的である。
本工程では、重合工程により得られたレンズ形状の重合体(プラスチックレンズ)を成形型から離型する。離型は、注型重合によってプラスチックレンズを製造する際、通常行われる方法で行うことができる。なお、成形型を構成するガスケットの耐熱温度が、上記のTg+20℃以上の加熱温度より低い場合には、ガスケットを取り除いた後に上記温度での加熱を行うことが好ましい。ここで、上下モールドの一方または両方がプラスチックレンズ上にある状態で上記加熱を行ってもよく、上下モールドを除去した後に上記加熱を行ってもよい。
本工程では、上記工程で得られたプラスチックレンズを染色し、染色プラスチックレンズを得る。染色方法としては、染色剤を含む染料液(染浴)中にプラスチックレンズを浸漬する方法が好適である。上記染料液は、好ましくは染料を含有する水溶液である。使用する染料は、得られる染色プラスチックレンズの用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば分散染料を挙げることができる。分散染料としては、分散染料としては、アンスラキノン系やアゾ系等の分散染料、具体的にはC.Iディスパーズイエロー3、4、5、7、33、42等、C.Iディスパーズオレンジ1、3、11等、C.Iディスパーズレッド1、4、5、11、17、58等、C.Iディスパーズブルー1、3、7、43等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの染料は、所望の色にプラスチックレンズを染色できるように、単独又は2種以上配合して使用される。染浴中の染料濃度は、所望の色調に応じて設定すればよいが、通常約1〜20g/リットルの範囲である。一般に、染料濃度が高くなるほど色ムラが顕在する傾向があるが、本発明によれば色ムラを効果的に低減できるため、本発明の方法は、特に染色濃度として視感透過率が50〜80%以上の染色レンズを得る方法として好適である。
上型、下型および筒状のガスケットを図1に示すように組み合わせ、内部にキャビティを有する成形型を組み立てた。
上記キャビティ内に熱硬化性ウレタン系モノマーを含むプラスチックレンズ原料液を注入し、完全重合品が得られる条件で加熱重合し、得られたプラスチックレンズの中心肉厚(以下、t0という)を測定した。
その後、後述の実施例で使用する昇温プログラム(室温から昇温開始)の途中段階で加熱を終了して得られた重合体の中心肉厚を測定する操作(t1、t2、t3、…)を繰り返した。成形型のキャビティ中心部の幅(以下、tという)からt0を引いた値(t−t0)を重合収縮率100%とし、測定した各中心肉厚(t1、t2、t3、…)から、加熱重合プログラムの途中における重合収縮率を求めたところ、加熱温度70℃において重合収縮率が65%、80℃で重合収縮率が72%になった。
上記1.で作製した完全重合品について、TMA法によりガラス転移温度を測定したところ、Tg=88℃であった。
上記と同様の成形型のキャビティへ、上記と同様のプラスチックレンズ原料液を注入し、所定の昇温プログラムでキャビティ内の原料液を加熱し、重合反応を進行させた。加熱温度が80℃に達した後、キャビティ内の温度を110℃(Tg+22℃)に昇温し、110℃に2時間保持した。その後、成形型から成形体を取り出しプラスチックレンズを得た。
次いで、分散染料と界面活性剤とを所定量含有する染浴を調製し、染色温度に保ち、ついで染色促進剤として予め染色温度と同じ温度の水に溶かしたベンゾフェノン系化合物を所定量添加して染浴を調製した。前記染浴中に、得られたプラスチックレンズを所定時間浸漬して染色を行った。染色の温度および時間は、必要とする染色濃度によって適宜変更することができ、通常は70〜95℃で1分〜1時間程度である。なお染浴中に加圧を行い圧力を加えた状態での染色も好適である。尚、ベンゾフェノン系化合物は、水に対する溶解性が非常に低い。そのため、使用に際し予めベンゾフェノン系化合物を染浴温度と同じ温度の水に溶かした液を一定量染浴に添加した。または、少量の有機溶媒にベンゾフェノン系化合物を溶かしたものを一定量染浴に添加することもできる。なお、ベンゾフェノン系化合物の使用量は、使用するベンゾフェノン系化合物等により適宜決定することができ、例えば染浴1リットル当たりベンゾフェノン系化合物の染色温度での飽和水溶液10〜300mlとすることが好ましい。ベンゾフェノン系化合物の使用量が染浴1リットル当たり10ml以上であれば、染色促進剤としての効果を効果的に得ることができる。ただしベンゾフェノン系化合物の使用量を染浴1リットル当たり300ml以上としても染色促進剤としての効果は頭打ちとなる。
以上の工程により、染色プラスチックレンズを得た。
110℃での保持時間を1時間に変更した点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度を120℃(Tg+32℃)にした点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度を120℃(Tg+32℃)にした点以外は実施例2と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度を120℃(Tg+32℃)にて3時間保持した点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度を110℃(Tg+32℃)にて3時間保持した点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度を100℃(Tg+32℃)にて3時間保持した点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度を140℃(Tg+52℃)にて5分間保持した点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度110℃を100℃(Tg+12℃)にした点以外は実施例1と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
加熱温度110℃を100℃(Tg+12℃)にした点以外は実施例2と同様の方法により染色プラスチックレンズを得た。
(1)色ムラの評価
以下の評価基準により、色ムラの有無および程度を評価した。結果を表1に示す。
◎:目視で色ムラ識別不可
○:短時間呈示(0.5秒以内での目視による識別)では色ムラ識別不可
×:目視で色ムラ識別可能
黄変の測定は、JIS K7103−1977に規定されているプラスチック黄色度および黄変度試験方法に準じて測定した。測定装置としては、日立製分光光度計U−4100を使用した。結果を表1に示す。例えばYI値が1.7以下であれば、色調整なしに眼鏡レンズとして使用可能なプラスチックレンズと判断することができる。実施例3〜8は、YI値が1.7を超えたが、これらの場合は色調整により黄変を補正可能である。または高濃度染色を施すことにより黄変自体を目立たなくすることもできる。
実施例1〜8で得られたレンズについて脈理の有無を目視により確認したところ、いずれも脈理は観察されず光学的に均質であった。
実施例1と同様の方法で72枚の染色レンズを量産し、上記方法により各染色レンズの色ムラを評価したところ、すべての染色レンズについて、評価結果「◎」であり良品率は100%であった。
比較例1と同様の方法で72枚の染色レンズを量産し、上記方法により各染色レンズの色ムラを評価したところ、評価結果「◎」となった染色レンズは15枚であり良品率は15%と実施例3と比べて大幅に低下した。
実施例9、比較例3で作製した染色レンズから、それぞれ1枚の染色レンズを抽出し、Xenonウェザーメーターにて200時間の暴露試験を実施した。暴露試験後に上記の方法でYI値を測定した。
Claims (5)
- 所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへ熱硬化性成分を含むプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液を加熱し前記熱硬化性成分の硬化反応を行いプラスチックレンズを得ること、
上記プラスチックレンズを成形型から離型すること、および、
離型されたプラスチックレンズを染色すること、
を含む染色プラスチックレンズの製造方法であって、
前記加熱を、前記硬化反応における重合収縮率が65%未満までは前記プラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃未満の温度で行い、
重合収縮率が65%以上に硬化反応が進行した後かつ前記染色前に、前記プラスチックレンズのガラス転移温度Tg+20℃以上の温度に、プラスチックレンズを加熱することを更に含むことを特徴とする染色プラスチックレンズの製造方法。 - Tg+20℃以上の温度での加熱は、0.08〜2時間の範囲の加熱時間で行われる請求項1に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
- 前記加熱時間は、0.5〜2時間の範囲である請求項2に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
- Tg+20℃以上の温度での加熱は、前記キャビティ内のプラスチックレンズに施される請求項1〜3のいずれか1項に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
- Tg+20℃以上の温度での加熱は、上記2つのモールドと密着した状態のプラスチックレンズに施される請求項1〜3のいずれか1項に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
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