JP4901013B2 - 耐汚染性に優れた粉体塗料組成物およびこれを用いた塗膜形成方法 - Google Patents

耐汚染性に優れた粉体塗料組成物およびこれを用いた塗膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粉体塗料組成物、特に耐汚染性に優れた粉体塗料組成物およびこれを用いた塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶剤系塗料にシリケート化合物を添加することで、得られる塗膜に耐汚染性が付与できることはよく知られている。これはシリケート化合物が表面に移行した後、加水分解することにより、表面の親水性を高めていることによるものと考えられる。一方、粉体塗料ではその造膜過程が溶剤系塗料とは異なるため、期待したような耐汚染性を有する塗膜を得ることができなかった。特に塗料中に多量の水酸基が存在する場合には、シリケート化合物がこの水酸基と反応してしまうことにより、表面へ移行することができなくなっているものと考えられる。
【0003】
特開2001−3006号公報では、シリケート化合物を含有する粉体塗料に、特定の沸点、融点およびSP値を有する化合物を添加することで、気泡のない塗膜が形成できることが開示されているが、上記の問題を解決するものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水酸基が系内に多く存在する硬化系であっても、耐汚染性を有する塗膜が得られる粉体塗料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の耐汚染性に優れた粉体塗料組成物は、エチルシリケート化合物、バインダー樹脂および硬化剤を含有する粉体塗料組成物において、
上記バインダー樹脂と硬化剤とからなる硬化系に水酸基が関与するものであり、上記エチルシリケート化合物のアセトンに対する水トレランス値が2ml以下である。ここで上記エチルシリケート化合物の含有量が樹脂固形分に対して、0.2〜10重量%とすることができる。また、上記バインダー樹脂と硬化剤との組み合わせが、水酸基含有アクリル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤の中から選ぶことができる。さらに、上記エチルシリケート化合物は縮合度5〜10のテトラエチルシリケートの縮合体であってよく、エトキシ基の一部は2−ブトキシエトキシ基またはベンジル基で置換されていてもよい。
本発明の耐汚染性に優れた粉体塗料の製造方法は、硬化反応に水酸基を用いる粉体塗料に、アセトンに対する水トレランス値が2ml以下であるシリケート化合物を樹脂固形分に対して0.2〜10重量%添加することを特徴としている。
【0006】
本発明の耐汚染性に優れた粉体塗料組成物は、顔料を実質的に含有しないものである。
本発明の耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物の製造方法は、先の顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物とエナメルタイプの粉体塗料組成物とを混合するものである。本発明の耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物はこの方法で製造されたものである。
本発明の耐汚染性に優れた塗膜の形成方法は、基材に先の粉体塗料組成物を塗布して焼き付けるものである。
本発明の耐汚染性に優れた複層塗膜の形成方法は、エナメルタイプの粉体塗料組成物を用いて着色塗膜を形成した後に、先の顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物を用いてクリア塗膜を形成するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の粉体塗料組成物は、主成分としてエチルシリケート化合物、バインダー樹脂および硬化剤を含有している。ここで上記バインダー樹脂と硬化剤とからなる硬化系に水酸基が関与しているものである。水酸基が硬化に関与する場合、系中に存在する水酸基の量はそれ以外の場合に比べて多い。よって、一般的なシリケート化合物を用いた場合には、シリケート化合物のアルコキシル基が水酸基と反応するため、その機能を充分に発現することができない。
本発明の粉体塗料組成物に含有されるシリケート化合物は、このような水酸基との副反応を回避するため、水酸基を多く含む成分との相溶性および反応性を制御しているところに特徴がある。
【0008】
通常、相溶性はSP値の差で規定されることが多い。このSP値は、試料をアセトンなどに溶解したところに、水とヘキサンとを別々に加えていき、それぞれ白濁した時点での量から計算されるものである。しかし、シリケート化合物はヘキサンに完全溶解するため、SP値を求めることができない。しかし、水酸基を多く含む粉体塗料においては、SP値ではなく、シリケート化合物の水添加によるトレランス値を規定することで上記相溶性を制御できることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明の粉体塗料組成物に含有されるエチルシリケート化合物は、アセトンに対する水トレランス値が2ml以下であることを特徴とする。水トレランス値が2mlを超えると、水酸基を多く含む成分との相溶性が増加して副反応が生じ、目的とする機能が発揮できない。なお、本明細書におけるアセトンに対する水トレランス値は、100mlのビーカーを容器として用いて、シリケート化合物1gを入れ、10mlのアセトンを加えて溶解させた後に、水を徐々に滴下していき、ビーカーの底面に敷いた5号活字が、ビーカー上部から透視して判読できなくなった時点までの水の合計滴下量とする。
【0010】
上記水トレランス値は、シリケート化合物の縮合度およびアルコキシ基の種類に影響されることが予想されるが、特に縮合度の影響が大きく、上記溶解性を満たすには、縮合度が5〜20であればよい。なお、この縮合度は平均値であっても構わない。
【0011】
一方、反応性については、シリケート化合物のアルコキシ基の種類が影響するところが大きいと考えられる。メトキシ基が最も反応性が高いこと、および、一般的にアルコキシ基の炭素数が増えていくことによって反応性が低下していくことが知られている。本発明の粉体塗料組成物に含有されるシリケート化合物は、テトラメトキシシランの縮合体であるメチルシリケート化合物ではなく、テトラエトキシシランの縮合体であるエチルシリケート化合物である。なお、本明細書において、エチルシリケート化合物とは、テトラエトキシシランを縮合して得られた化合物(以下、エチルシリケートという)およびこの縮合して得られた化合物の半数以下のエトキシ基が炭素数3〜8のアルコールで置換されたものを含むものとする。
【0012】
本発明の粉体塗料組成物に含有されるエチルシリケート化合物が、炭素数3〜8のアルコールで置換されたアルコキシ基を有する場合の具体的なアルコキシ基としては、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ベンジルオキシ、2−ブトキシエトキシ、3−メトキシプロピルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、オクチルオキシなどを挙げることができる。これらの中で、反応性制御が容易であることから、ベンジルオキシおよび2−ブトキシエトキシが好ましく、2−ブトキシエトキシが特に好ましい。上記アルコールで置換されたアルコキシ基の個数が増加すると、シリケート化合物の反応性はさらに低下する。
【0013】
一方、アルコールで置換されたアルコキシ基の個数の増加につれ、相溶性が増加する傾向がある。上記反応性および相溶性の調節は、上記アルコールで置換されたアルコキシ基の種類および数を選択することにより行うことができる。
【0014】
上記エチルシリケート化合物は種々の方法で得ることができるが、上記要件を満たすものとして、平均縮合度が10である商品名「エチルシリケート48」がコルコート社から市販されており、アルコール置換を行う場合にはこれを利用することが好ましい。
【0015】
上記エチルシリケートのエトキシ基の炭素数3〜8のアルコールによる置換反応を行う場合、エチルシリケート1モルに対して、炭素数3〜8のアルコールが少なくとも1モル以上であればよい。さらに、炭素数3〜8のアルコールの量を目的とする置換の量に合わせて、適宜増量することができる。
【0016】
上記炭素数3〜8のアルコールとしては、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、2−エチルヘキサノール、オクタノールなどを用いることができる。
【0017】
また、炭素数3〜8のアルコールをエチルシリケートに対して過剰量用いることで、溶剤は特に使用しなくてもよい。溶剤を用いる場合には、溶剤の種類および量は特に限定されるものではないが、エチルシリケートと炭素数3〜8のアルコールとの合計重量に対して10倍以下であることが好ましい。
【0018】
溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THFおよびジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルカーボメート、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0019】
上記反応においては触媒として、必要に応じて酸または塩基を用いることができる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、スルホン酸などのブレンステッド酸や有機スズ化合物などのルイス酸が挙げられる。また塩基としては、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジアザビシクロ [2.2.2] オクタン、1,8−ジアザビシクロ [5.4.0] ウンデンセン−7などの3級アミンなどを使用することができる。
【0020】
上記反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。所定量のエチルシリケートと炭素数3〜8のアルコール、ならびに必要に応じて、溶剤および触媒を混合する。これを、180℃まで加熱し、置換反応を進行させる。反応を進行させるため、例えば、反応系を減圧にすることにより、生成したエタノールを系外に留去することが好ましい。反応の終点は、生成したエタノールの量の測定、1H−NMRスペクトルまたはガスクロマトグラフィー分析により、上記アルコキシ基への置換率を求め、これに基づいて決定することができる。反応時間は限定されないが、24時間以内であることが好ましい。反応終了後、必要に応じて分離・精製を行って目的とするシリケート化合物を得ることができる。このようにして得られるシリケート化合物は、一般に無色〜薄黄色の油状物質である。
【0021】
本発明の粉体塗料組成物における、バインダー樹脂および硬化剤のいずれかはメインの反応性基として水酸基を有している。このようなバインダー樹脂の具体的なものとしては、水酸基含有アクリル樹脂またはポリエステル樹脂が挙げられ、硬化剤ではβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤を挙げることができる。一方、バインダー樹脂と硬化剤との組み合わせの具体例としては、水酸基含有アクリル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤またはメラミン硬化剤との組み合わせ、水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤またはメラミン硬化剤との組み合わせ、カルボキシル基含有アクリル樹脂またはカルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤との組み合わせを挙げることができる。これらの中で、実際の粉体塗料として汎用性が高いものは、水酸基含有アクリル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物の組み合わせであり、さらに好ましいものは、水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤の組み合わせである。これらをさらに複数組み合わせて使用することも可能である。
【0022】
水酸基含有アクリル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との組み合わせにおいて、エチルシリケート化合物が上記「エチルシリケート48」を基にした、アルコールで置換されたアルコキシ基を有するものである場合には、好ましいエチルシリケート化合物としては、3〜15個の2−ブトキシエトキシ基で置換されたものおよび1〜3個のベンジル基で置換されたものであり、3〜12個の2−ブトキシエトキシ基で置換されたものが特に好ましい。
【0023】
上記バインダー樹脂はいずれも室温で固体状態であり、そのガラス転移温度が40〜80℃であることが好ましく、50〜70℃であることがさらに好ましい。40℃未満ではブロッキング性が低下し、80℃を超えると得られる塗膜の平滑性が低下する恐れがある。上記バインダー樹脂が水酸基含有アクリル樹脂である場合、その水酸基価が5〜200であることが好ましく、10〜100がさらに好ましい。また、数平均分子量は1000〜20000であることが好ましく、2000〜10000であることがさらに好ましい。水酸基価が5未満だと硬化性が不十分であり、200を超えると得られる塗膜がもろくなる恐れがある。また、数平均分子量が1000未満だと得られる塗膜の物性が低下する恐れがあり、20000を超えると塗膜の平滑性が低下する。
【0024】
上記バインダー樹脂がカルボキシル基含有アクリル樹脂である場合、酸価が5〜100であることが好ましく、10〜50であることがさらに好ましい。また、数平均分子量が1000〜20000であることが好ましく、2000〜10000であることがさらに好ましい。酸価が5未満だと硬化性が不十分であり、100を超えると得られる塗膜がもろくなる恐れがある。
【0025】
一方、上記バインダー樹脂が水酸基含有ポリエステル樹脂である場合、その水酸基価が5〜200であることが好ましく、10〜100がさらに好ましく、20〜40が特に好ましい。また、重量平均分子量は5000〜200000であることが好ましく、7000〜20000がさらに好ましい。
【0026】
上記バインダー樹脂がカルボキシル基含有ポリエステル樹脂である場合、酸価が5〜200であることが好ましく、10〜100がさらに好ましく、20〜40が特に好ましい。また、重量平均分子量は5000〜200000であることが好ましく、7000〜20000がさらに好ましい。なお、これらのポリエステル樹脂の特数値が上記範囲を外れた場合の不具合点は、先のアクリルの場合と同様である。
【0027】
上記アクリル樹脂は、一般的によく知られたアクリルモノマーを、上記官能基当量およびガラス転移点となるようにモノマー配合を計算して決定し、さらに上記分子量となるように、重合開始剤の種類および量、ならびに重合条件を調節することにより得ることができる。
【0028】
また、上記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸を主とした酸成分と、多価アルコールを主としたアルコール成分とを原料として通常の方法により縮重合することにより得ることができる。それぞれの成分の配合や縮重合の条件を選択することにより、上記の物性値および特数値を有するポリエステル樹脂を得ることができる。なお、上記酸成分にイソフタル酸が50重量%以上、好ましくは80重量%以上含まれることで、耐候性が高いポリエステル樹脂を得ることができる。
【0029】
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、粉体塗料用として市販されているものをそのまま使用してもよく、例えば、日本ユピカ社から市販されている商品名「GV−545」、大日本インキ化学工業社から市販されている商品名「ファインディックM−8020」やカルボキシル基含有ポリエステル樹脂として、ダイセルユーシービー社から市販されている商品名「クリルコート7630」、「クリルコート7642」などを使用することができる。これらの中で、「GV−545」および「クリルコート7642」が、酸成分中のイソフタル酸の含有率が高く、耐候性に優れているため好ましい。
【0030】
一方、上記硬化剤として、ブロックイソシアネート硬化剤およびメラミン硬化剤については公知の粉体塗料用のものが使用できる。ここで上記ブロックイソシアネート硬化剤には、2つのイソシアネート基を反応させて得られるウレトジオン化合物も含まれる。
【0031】
上記ブロックイソシアネート硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキサンイソシアネートなどの芳香族、脂環式を含む脂肪族のイソシアネートおよびこれらをプレポリマー化したもののイソシアネート基をラクタム化合物またはオキシム化合物でブロックしたものを用いることが好ましい。このようなものとして、ε−カプロラクタムをブロック剤として用いたイソホロンジイソシアネート系のベスタゴンB1530(クレアノバ社製)を挙げることができる。また、上記ウレトジオン化合物としては、イソホロンジイソシアネート系のベスタゴンBF1540(クレアノバ社製)を挙げることができる。
【0032】
一方、β−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤は、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルとβ−ヒドロキシアルキルアミンとを、ナトリウムやカリウム等のアルコキシドの触媒存在下で反応させることにより得られるものである。上記カルボン酸やカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチルなどが挙げられる。また、β−ヒドロキシアルキルアミンとしては、例えば、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミンなどが挙げられる。上記β−ヒドロキシアルキルアミド化合物として好ましい構造は、(HO(R)CHCH22NCO(CH2nCON(CH2CH(R)OH)2であり、ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、nが4〜8である。なお、上記β−ヒドロキシアルキルアミド化合物は、EMS−PRIMD社から「プリミド」シリーズとして市販されており、これを用いることができる。
【0033】
本発明の粉体塗料組成物において、エチルシリケート化合物は、バインダー樹脂と硬化剤とを合計した樹脂固形分に対して、0.2〜10重量%であることが好ましい。0.2重量%未満だと、耐汚染性に優れた塗膜を得ることができず、10重量%を超えても、それに見合う効果が認められず、さらに貯蔵安定性や得られる塗膜の物性に悪影響を及ぼす恐れがある。さらに好ましい範囲は、1〜5重量%である。
【0034】
また、バインダー樹脂と硬化剤とは、水酸基当量とこれと反応する官能基の当量とが0.5〜2.0の比率になるように配合されることが好ましい。これらの範囲外では、硬化が充分に進行せず、塗膜物性に劣る場合がある。より好ましい比率は、0.7〜1.5である。
【0035】
本発明の粉体塗料組成物は、必要に応じて表面調整剤、硬化触媒、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワキ防止剤、帯電制御剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0036】
本発明の粉体塗料組成物は、顔料を実質的に含有しない、いわゆるクリアタイプでもよく、あるいは顔料を含有した、いわゆるエナメルタイプであってもよい。ここで顔料を実質的に含有しないとは、透明性を維持したまま着色できるような顔料を含有する場合を含めるものとする。顔料を含有する場合、上記バインダー樹脂と硬化剤との合計量100重量部に対して、顔料が30〜100重量部含まれていることが好ましい。上記顔料としては、特に限定されず、具体的には、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料などの着色顔料、各色のメタリック顔料、各色のパール顔料、金属粉末およびそれに表面処理を施したもの、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料などを挙げることができる。また、光沢を低下させる場合には、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、長石、ワラストナイト等の無機系艶消し剤や、有機微粒子からなる有機系の艶消し剤を含むことができる。上記艶消し剤の体積平均粒径は、3〜30μmであることが好ましい。なお、顔料およびシリケート化合物の種類によっては、顔料表面にシリケート化合物が吸着して、充分に機能が発現しない場合がある。この場合には、後述するような、顔料を含まずシリケート成分を含む粒子と顔料を含みシリケート成分を含まない粒子を混合する方法、または2コート方式を採用することが好ましい。
【0037】
本発明の粉体塗料組成物の製造は、粉体塗料分野において周知の製造方法を用いて行うことができる。例えば、上記バインダー樹脂、硬化剤、および、上記エチルシリケート化合物を必須として、上記各種添加剤や顔料を準備した後、スーパーミキサーやヘンシェルミキサーなどを使用してこれらを予備的に混合し、さらにニーダーやエクストルーダーなどの混練機を用いて原料を溶融混練する。この時の加熱温度は、少なくとも原料の一部が溶融し、全体を混練することができる温度〜後述する焼付けするの硬化温度の間に設定され、一般に60〜150℃、好ましくは80〜130℃の範囲内で溶融混練される。次にこのようにして得られた溶融物は冷却ロールや冷却コンベヤー等で冷却して固化され、粗粉砕および微粉砕の工程を経て所望の粒径に粉砕される。
【0038】
このようにして得られる本発明の粉体塗料組成物の体積平均粒子径は、巨大粒子や微小粒子を除去して粒度分布を調整するために分級を行い、5〜50μmに設定することが好ましい。薄膜塗装の塗装に用いる場合には5〜40μm、特に薄膜で平滑な塗膜を得ようとする場合には、5〜30μmに設定することがより好ましい。
【0039】
本発明の耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物の製造方法は、顔料を実質的に含有しない先の粉体塗料組成物とエナメルタイプの粉体塗料組成物を混合するものである。この方法によれば、粉体塗料粒子中でシリケート化合物と顔料とが接触することがないため、顔料表面にシリケート化合物が吸着する問題点を有している場合に有効である。
【0040】
上記エナメルタイプの粉体塗料組成物は、シリケート化合物を含有していなければ特に限定されないが、バインダー樹脂および硬化剤は、上記顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物中のバインダー樹脂および硬化剤と同じ種類および同じ量比であることが好ましい。なお、上記エナメルタイプの粉体塗料における顔料の含有量は、例えば、樹脂固形分に対して30〜100重量%である。
【0041】
上記顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物とエナメルタイプの粉体塗料組成物との量比は、耐汚染性の機能が発現し、エナメル塗料としての隠蔽が可能な限り、任意に設定できる。また、これらの粉体塗料組成物の体積平均粒子径をほぼ同じにしておくことが、この製造方法で得られる粉体塗料組成物の塗着性から好ましい。さらに、この製造方法により得られるエナメル粉体塗料組成物の色ムラを防止する観点から、エナメルタイプの粉体塗料組成物および顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物の体積平均粒子径は、10〜25μmの範囲でほぼ同じことが好ましい。この他、上記色ムラは、エナメルタイプの粉体塗料組成物の体積平均粒子径よりも顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物の体積平均粒子径を小さくすることによっても防止することができる。
このようにして得られる耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物の体積平均粒子径は、先に述べた範囲であることが好ましい。この耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物も本発明の粉体塗料組成物の1つである。
【0042】
本発明の粉体塗料組成物は、さらに流動性付与剤を含んでいてもよい。これらは、上述のようにして得られた粉体塗料に後で添加することで粉体塗料組成物の1成分とすることができる。上記流動性付与剤は、粉体塗料自体に流動性を与えるだけでなく、耐ブロッキング性も向上させることができる。上記流動性付与剤としては、疎水性シリカ、親水性シリカや酸化アルミニウム、酸化チタン等が適用できる。このような、流動性付与剤の市販品として、例えば、AEROSIL130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSILR−972、AEROSIL R−812、AEROSIL R−812S、二酸化チタンT−805、二酸化チタンP−25、Alminium Oxide C(日本アエロジル社製)、カープレックスFPS−1(塩野義製薬社製)などを例示することができる。上記流動性付与剤の添加量は、付与される効果と塗膜の平滑性の観点から、粉砕後の粉体塗料100重量部に対して、0.05〜2重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。0.05重量部未満であると効果が小さくなり、2重量部を越えると塗膜の平滑性が低下や艶引けが発生する恐れがある。
【0043】
本発明の耐汚染性に優れた塗膜の形成方法は、先の粉体塗料組成物を基材に対して塗布した後、焼き付けることにより耐汚染性に優れた塗膜を得るものである。上記基材としては、塗布後の焼き付けにより変形などの不具合が生じないものであれば特に限定されず、具体的には、鉄板、鋼板、アルミニウム板等およびそれらを表面処理したもの等を挙げることができる。本発明の粉体塗料組成物から得られる塗膜が耐汚染性に優れていることから、上記基材は屋外に設置される自動販売機、配電盤、建築外装材などに適用されるものが好ましい。なお、上記基材には、プライマーなどの下塗り塗料から得られる下塗り塗膜が形成されていてもよい。本発明の塗膜の形成方法は、耐汚染性に優れた塗膜を得ることを目的とするため、最上層に位置する塗膜を形成するのに用いられる。
【0044】
上記塗布する方法としては、特に限定されず、静電塗装法や流動浸漬法等の当業者によってよく知られた方法を用いることができるが、塗着効率の点から静電塗装法が好ましい。上記静電塗装法における帯電方法としては、コロナ帯電方式や摩擦帯電方式を挙げることができる。これらの方法は組み合わせて用いることも可能である。塗装膜厚は特に限定されないが、例えば20〜200μmとすることができる。塗布後、含有されているバインダー樹脂および硬化剤の種類に基づき、140〜220℃で5〜40分焼き付けを行い、耐汚染性に優れた塗膜を得ることができる。
【0045】
一方、本発明の耐汚染性に優れた複層塗膜の形成方法は、エナメルタイプの粉体塗料組成物を用いて着色塗膜を形成した後に、先の顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物を用いてクリア塗膜を形成するものである。これは、先に述べた顔料表面にシリケート化合物の吸着が起こる場合に有効である。
【0046】
本発明の複層塗膜の形成方法に用いられるエナメルタイプの粉体塗料組成物としては、先の顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物に影響されず、種々のバインダー樹脂および硬化剤を使用することができる。上記エナメルタイプの粉体塗料組成物は、基材表面を着色して隠蔽することができる程度の塗装膜厚で塗布され、その上に上記顔料を実質的に含有しない粉体塗料組成物を平滑性が得られる塗装膜厚で塗布する。それぞれの塗装膜厚は、粉体塗料粒子の体積平均粒子径に依存する場合があるが、通常ともに20〜200μmであることが好ましい。
【0047】
それぞれの粉体塗料の塗布には上記の公知の方法が利用でき、焼き付けは別々に行っても同時に行っても構わない。焼き付けを同時に行う場合には、それぞれの粉体塗料組成物のバインダー樹脂と硬化剤とが同じ種類および量比であることが好ましい。異なる場合には、着色塗膜とクリア塗膜との間でハジキが起こる恐れがある。このようにして、耐汚染性に優れた複層塗膜が得られる。
【0048】
【実施例】
製造例1 アルコールで置換されたエチルシリケート化合物の製造その1
エチルシリケート48(コルコート社製のテトラエトキシシランの平均縮合度が10の縮合体)713gに2−ブトキシエタノール186gおよびトリエチルアミン5.06gを加え、90℃で1時間、120℃で2時間、生成したエタノールを除去しながら加熱撹拌した。放冷後、残存する2−ブトキシエタノールを減圧下で除去し、2−ブトキシエタノールで置換されたエチルシリケート化合物785gを得た。なお、1H−NMRから求めた、このエチルシリケート化合物の2−ブトキシエトキシ基の個数は3個であった。
【0049】
また、100mlのビーカー中で、得られたエチルシリケート化合物1gをアセトン10mlに溶かし、ここに水を1.07ml加えた時点でビーカー底面に敷いた5号活字が白濁して判読できなくなったため、水トレランス値を1.07mlと決定した。
【0050】
製造例2 アルコールで置換されたエチルシリケート化合物の製造その2
エチルシリケート48 504gに2−ブトキシエタノール396gおよびトリエチルアミン5.06gを加え、90℃で1時間、120℃で2時間、さらに140℃で2時間、生成したエタノールを除去しながら加熱撹拌した。放冷後、残存する2−ブトキシエタノールを減圧下で除去し、2−ブトキシエタノールで置換されたエチルシリケート化合物696gを得た。なお、1H−NMRから求めた、このエチルシリケート化合物の2−ブトキシエトキシ基の個数は9個であった。また、製造例1と同様にして、水トレランス値を求めたところ、0.95mlであった。
【0051】
製造例3 アルコールで置換されたエチルシリケート化合物の製造その3
エチルシリケート48 432gにベンジルアルコール69gおよびトリエチルアミン1.02gを加え、90℃で1時間、120℃で2時間、さらに140℃で2時間、生成したエタノールを除去しながら加熱撹拌した。放冷後、残存するベンジルアルコールを減圧下で除去し、ベンジルアルコールで置換されたエチルシリケート化合物434gを得た。なお、1H−NMRから求めた、このエチルシリケート化合物のベンジルオキシ基の個数は2個であった。また、製造例1と同様にして、水トレランス値を求めたところ、0.97mlであった。
【0052】
製造例4 アルコールで置換されたエチルシリケート化合物の製造その4
エチルシリケート40(コルコート社製のテトラエトキシシランの平均縮合度が5の縮合体)595gに2−ブトキシエタノール283gおよびトリエチルアミン6.5gを加え、90℃で1時間、120℃で2時間、さらに140℃で3時間、生成したエタノールを除去しながら加熱撹拌した。放冷後、残存する2−ブトキシエタノールを減圧下で除去し、2−ブトキシエタノールで置換されたエチルシリケート化合物662gを得た。なお、1H−NMRから求めた、このエチルシリケート化合物の2−ブトキシエトキシ基の個数は3個であった。また、製造例1と同様にして、水トレランス値を求めたところ、1.95mlであった。
【0053】
実施例1 水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを含有する粉体塗料組成物の製造その1
GV−545(日本ユピカ社製の水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基価33、酸価2.5、数平均分子量5000、重量平均分子量56100、ガラス転移点56℃)600部、B1530(ヒュルス社製のブロックイソシアネート硬化剤)100部、製造例1のアルコールで置換されたエチルシリケート化合物10部、表面調整剤としてのベンゾイン5部をヘンシェルミキサーで混合した後、100〜110℃に加熱しながらニーダーで混練し、冷却後、粉砕・分級して体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物を得た。
【0054】
実施例2〜4 水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを含有する粉体塗料組成物の製造その2〜4
実施例1において、製造例1のエチルシリケート化合物に代えて、製造例2〜4のアルコールで置換されたエチルシリケート化合物を表1に示す量を用いた以外は同様にして、それぞれ体積平均粒子径35〜36μmの粉体塗料組成物を得た。
【0055】
比較例1
実施例1において、製造例1のエチルシリケート化合物に代えて、エチルシリケート40(水トレランス値2.68ml)を表1に示す量を用いた以外は同様にして、体積平均粒子径34μmの粉体塗料組成物を得た。
【0056】
実施例5 カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤とを含有する粉体塗料組成物の製造
クリルコート7642(ダイセルユーシービー社のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、酸価35、重量平均分子量7800、ガラス転移点63℃)600部、プリミドXL552(EMS−PRIMD社製の1,1,8,8−テトラ(2−ヒドロキシエチル)アジポアミド)30部、製造例1のアルコールで置換されたエチルシリケート化合物9部、表面調整剤としてのベンゾイン5部をヘンシェルミキサーで混合した後、100〜110℃に加熱しながらニーダーで混練し、冷却後、粉砕・分級して体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物を得た。
【0057】
実施例6〜8 カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤とを含有する粉体塗料組成物の製造その2〜4
実施例5において、製造例1のエチルシリケート化合物に代えて、製造例2〜4のアルコールで置換されたエチルシリケート化合物を表1に示す量を用いた以外は同様にして、それぞれ体積平均粒子径34〜36μmの粉体塗料組成物を得た。
【0058】
比較例2
実施例5において、製造例1のエチルシリケート化合物に代えて、エチルシリケート40を表1に示す量を用いた以外は同様にして、体積平均粒子径36μmの粉体塗料組成物を得た。
【0059】
<耐汚染性の評価>
得られた粉体塗料組成物をリン酸亜鉛処理鋼板に膜厚が約60μmになるようにコロナ帯電型塗装ガンにより静電塗装し、180℃×20分の条件で焼き付けて塗膜を得た。得られた塗膜は、湿度85%以上および温度50℃に保った環境下で24時間置かれた後、協和界面科学社製CA−A型接触角測定装置を用いて、表面の水接触角を測定した。60度未満であれば、充分に表面が親水化されており、耐汚染性に優れている。
【0060】
【表1】
Figure 0004901013
【0061】
本発明のシリケート化合物としての要件を満たす実施例1〜8では、得られた塗膜の水接触角が全て60度未満だったのに対し、水トレランス値が本発明で規定した値から外れたシリケート化合物を用いた比較例1および2では、シリケートの含有量を増やしても、塗膜の水接触角は60度を上回っており、耐汚染性に優れた塗膜を得ることができなかった。
【0062】
実施例9 エナメルタイプの粉体塗料組成物の製造
実施例6と同様にして、体積平均粒子径25μmのクリア粉体塗料組成物を得た。また、この実施例6において、エチルシリケート化合物を用いず、その代わりにCR−90(石原産業社製の二酸化チタン)495部を加えた以外は同様にして、体積平均粒子径25μmの白色顔料を含有する粉体塗料組成物を得た。上記クリア粉体塗料組成物200部と顔料を含有する粉体塗料組成物844部とをヘンシェルミキサーで混合して、エナメル粉体塗料組成物を得た。このエナメル粉体塗料組成物の樹脂固形分に対する、顔料含有量は63.5重量%であり、シリケート化合物の含有量は1.4重量%であった。
【0063】
比較例3 シリケート化合物を含有するエナメル粉体塗料組成物の製造
実施例2において、原料成分としてCR−90 400部を加えた以外は同様にして、体積平均粒子径25μmのシリケート化合物を含有するエナメル粉体塗料組成物を得た。
【0064】
<ブロッキング性評価>
実施例9および比較例3で得られた粉体塗料組成物について、35℃×1週間でのブロッキング性を目視でそれぞれ評価したところ、比較例3の粉体塗料組成物では、ブロッキングが起こっているのが確認された。実施例9の粉体塗料組成物には特に異常は認められなかった。
【0065】
<光沢および耐汚染性の評価>
実施例9および比較例3の製造してすぐの粉体塗料組成物を、それぞれリン酸亜鉛処理鋼板に膜厚が約40μmになるようにコロナ帯電型塗装ガンにより静電塗装し、180℃×20分の条件で焼き付けて塗膜を得た。この塗膜の光沢を測定したところ、実施例9では94と高い値が得られたのに対し、比較例3では塗膜に平滑性がなく、30と低い値であった。また、光沢測定後、先の方法を用いて塗膜表面の水接触角を測定した。実施例9では53度と60度未満の値を示し、充分に表面が親水化されており、耐汚染性に優れていることが確認された。
【0066】
実施例10 複層塗膜の形成方法
実施例4および実施例8において、エチルシリケート化合物を用いず、その代わりにCR−90(石原産業社製の二酸化チタン)400部を加えた以外は同様にして、体積平均粒子径35μmのエナメル粉体塗料組成物4−Eおよび8−Eをそれぞれ得た。
次に、リン酸亜鉛処理鋼板上に、まず上記エナメル粉体塗料を用いて着色塗膜を形成し、さらに実施例4または実施例8のクリア粉体塗料を用いてクリア塗膜を形成して複層塗膜を得た。表2に、塗膜形成条件である、使用したエナメル粉体塗料およびクリア粉体塗料の種類と着色塗膜およびクリア塗膜の焼き付け方法とを示した。なお、塗装は、1回の塗装膜厚が約60μmになるよう、コロナ帯電型塗装ガンを用いて静電塗装して行われ、焼き付け条件は180℃×20分であった。
【0067】
<塗膜の評価>
得られた複層塗膜について、その光沢および表面の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
また、実施例4および実施例8の製造時に、CR−90 400部を加えて塗料化したものは、35℃×1週間でのブロッキング性の目視評価において、ともにブロッキングが起こっているのが確認された。これら2種のシリケート化合物と顔料を含有する粉体塗料組成物4−SEおよび8−SEについて、その製造直後に同様の条件で塗膜を得、光沢および水接触角を測定した。これらの結果をそれぞれ比較例として、表2に示す。
【0068】
【表2】
Figure 0004901013
【0069】
本発明の複層塗膜の形成方法により得られた塗膜は、外観および耐汚染性に優れたものであった。これに対して、シリケート化合物と顔料を含有する粉体塗料組成物は、ブロッキング性に劣るものであるとともに、基材に対する着色と耐汚染性の付与とを行うことができなかった。
【0070】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料組成物は水酸基が系内に多く存在する硬化系でも耐汚染性を有する塗膜を得ることができる。これは、特定の水トレランス値を有するエチルシリケート化合物を用いているため、水酸基との副反応が進行することなくシリケート化合物が表面に移行して加水分解が進行し、親水化が充分に行われるためであると考えられる。水酸基との副反応の防止は、水酸基を多く含む成分との相溶性およびシリケート化合物そのものの反応性の制御によって行われるが、特に相溶性に関しては、粉体塗料に用いられる水酸基含有成分のSP値が種類により大きく異ならない性質を利用して、濁度法という簡便な測定方法による規定が可能であることを発見した。
【0071】
また、シリケート化合物が顔料に吸着してその機能を発現することができない場合には、本発明のクリアタイプの粉体塗料組成物とエナメルタイプのものとを混合することや、エナメル塗膜の上にこのクリアタイプの粉体塗料組成物によるクリア塗膜を形成することにより、それぞれ、この問題を解決することができる。

Claims (7)

  1. エチルシリケート化合物、バインダー樹脂および硬化剤を含有する粉体塗料組成物において、
    前記バインダー樹脂と硬化剤とからなる硬化系に水酸基が関与するものであり、
    前記エチルシリケート化合物のアセトンに対する水トレランス値が2ml以下であり、
    前記エチルシリケート化合物の含有量が樹脂固形分に対して、0.2〜10重量%であり、
    前記エチルシリケート化合物はテトラエトキシシランを縮合して得られた化合物であって、当該化合物のエトキシ基の半数以下が炭素数3〜8のアルコール由来のアルコキシ基で置換されており
    顔料を含有しない
    耐汚染性に優れた粉体塗料組成物。
  2. 前記バインダー樹脂と硬化剤との組み合わせが、水酸基含有アクリル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート硬化剤、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤の中から選ばれるものである請求項1記載の耐汚染性に優れた粉体塗料組成物。
  3. 前記エチルシリケート化合物が縮合度5〜10のテトラエトキシシランの縮合体であり、エトキシ基の半数以下が2−ブトキシエトキシ基またはベンジルオキシ基で置換されている請求項1または2に記載の耐汚染性に優れた粉体塗料組成物。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物とエナメルタイプの粉体塗料組成物とを混合する耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物の製造方法。
  5. 請求項記載の方法で製造された耐汚染性に優れたエナメルタイプの粉体塗料組成物。
  6. 基材に請求項1から、およびのいずれか1つに記載の粉体塗料組成物を塗布して焼き付ける耐汚染性に優れた塗膜の形成方法。
  7. エナメルタイプの粉体塗料組成物を用いて着色塗膜を形成した後に、請求項1から3のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物を用いてクリア塗膜を形成する耐汚染性に優れた複層塗膜の形成方法。
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