[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1〜図7を参照して説明する。図1は本実施形態の電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図1を参照して、1は電動機、2は電動機1の運転制御を行なう制御装置である。
電動機1は、ロータ3と、2つのステータ4,5と、各ステータ4,5にそれぞれ装着された電機子巻線6,7とを備えたアキシャルギャップ型の電動機である。なお、電動機1は、例えば、電動車両やハイブリッド車両の推進力発生源として該車両に搭載され、力行運転と回生運転とが可能である。
この電動機1のロータ3およびステータ4,5の構造を図2〜図4を参照してさらに詳細に説明する。図2は電動機1のロータ3およびステータ4,5の斜視図、図3はロータ3の分解斜視図、図4はロータ3をその軸心方向で見たときの磁極の配列を示す図である。
ロータ3は、概略円環形状のものであり、図3に示すように、複数の扇板状の主永久磁石8を有する円環形状の主永久磁石層9と、複数の方形板状の副永久磁石10を有する円環形状の第1副永久磁石層11と、複数の方形板状の副永久磁石12を有する円環形状の第2副永久磁石層13とを、両副永久磁石層11,13の間に主永久磁石層9を挟み込むようにして同軸心に積層した構造を有する円環形状の磁性構造体14と、この磁性構造体14の外周面および内周面にそれぞれ装着される外筒枠15および内筒枠16とから構成されている。本実施形態では、主永久磁石8、副永久磁石10、および副永久磁石12のそれぞれの個数は同じ(図示例では12個)である。なお、外筒枠15aおよび内筒枠15bは、該外筒枠15aの内周面と内筒枠15bの外周面との間で放射状に延在する複数(主永久磁石8、副永久磁石10、および副永久磁石12のそれぞれの個数と同数)の連結部16により同軸心に連結されており、該連結部16を含めて非磁性材により一体に構成されている。
主永久磁石層9の複数の扇板状の主永久磁石8は、それらの厚み方向をロータ3の軸心C方向に向けて、ロータ3の周方向に環状に並ぶように配列され、この配列により主永久磁石層9が構成される。
第1副永久磁石層11の複数の方形板状の副永久磁石10は、それらの厚み方向をロータ3の周方向(より詳しくは、ロータ3の軸心C上の点を中心点とする円周の接線方向)に向けて、該周方向に等角度間隔で並ぶように配列されている。従って、これらの副永久磁石10は、ロータ3の軸心C方向で見たとき、図4に示すように放射状に配列されている。この場合、ロータ3の周方向での各副永久磁石10の位置(角度位置)は、ロータ3の周方向で互いに隣り合う主永久磁石8,8の間の位置である。換言すれば、ロータ3の周方向での各主永久磁石8の両端にそれぞれ副永久磁石10が位置するように、該副永久磁石10が配列されている。
また、ロータ3の周方向で互いに隣り合う副永久磁石10,10の間の箇所(各主永久磁石8に、その厚み方向で対向する箇所)には、各々、各主永久磁石8と同形状(扇板形状)の磁性ヨーク17がその厚み方向をロータ3の軸心C方向に向けて装着される。従って、第1副永久磁石層11では、副永久磁石10と磁性ヨーク17とがロータ3の周方向に交互に並ぶにように配列され、この配列により第1副永久磁石層11が構成される。そして、その各磁性ヨーク17は、両側の副永久磁石10,10に固着されると共に、これらの副永久磁石10,10の間の主永久磁石8に重合される。
第2副永久磁石層13の複数の方形板状の副永久磁石12は、第1副永久磁石層11の副永久磁石10と同様に、それらの厚み方向をロータ3の周方向に向けて、該周方向に等角度間隔で並ぶように配列されている。この場合、ロータ3の周方向での各副永久磁石12の位置(角度位置)は、第1副永久磁石層11の副永久磁石10と同じである。従って、第1副永久磁石層11の個々の副永久磁石10と、第2副永久磁石層13の個々の副永久磁石12とが、対となってロータ3の軸心C方向に並ぶ。
また、第1副永久磁石層11と同様に、ロータ3の周方向で互いに隣り合う副永久磁石12,12の間の箇所には、各々、各主永久磁石8と同形状(扇板状)の磁性ヨーク18がその厚み方向をロータ3の軸心C方向に向けて装着される。従って、第2副永久磁石層13においても、副永久磁石12と磁性ヨーク18とがロータ3の周方向に交互に並ぶように配列され、この配列により第2副永久磁石層13が構成される。そして、その各磁性ヨーク18は、両側の副永久磁石12,12に固着されると共に、これらの副永久磁石12,12の間の主永久磁石8に重合される。
このように主永久磁石8、副永久磁石10,12および磁性ヨーク17,18を相互に組付けることにより磁性構造体14が構成さる。そして、この磁性構造体14に前記外筒枠15を同軸心に外挿して、該磁性構造体14の外周面に固着すると共に、磁性構造体14に前記内筒枠16を同軸心に内挿して、該磁性構造体14の内周面に固着することによって、ロータ3が構成されている。この場合、各主永久磁石8が、ロータ3の周方向で互いに隣り合う前記連結部16,16の間の空間に位置し、且つ、ロータ3の軸心方向に並ぶ副永久磁石10,12の間に各連結部16が挟み込まれるようにして、磁性構造体14と外筒枠15aおよび内筒枠15bとが組付けられる。なお、外筒枠15および内筒枠16の軸心C方向の長さは、磁性構造体14の軸心C方向の長さ(厚さ)とほぼ同じである。そして、ロータ3は、その軸心C方向の中心を通って該軸心Cに直交する平面に対して面対称の構造となっている。
さらに各主永久磁石8、各副永久磁石10,12の磁極に関して説明する。各主永久磁石8は厚み方向に磁化されており、その厚み方向の一方の面がN極、他方の面がS極となっている。そして、ロータ3の周方向で互いに隣合う主永久磁石8,8は、それらの磁化の向きが互いに逆向きになっている。従って、ロータ3の軸心C方向における前記主永久磁石層9の各面、例えば、第1副永久磁石層11側の面における主永久磁石8の磁極の配列は、図4に示すように(白抜き四角で囲った「N」、「S」を参照)、ロータ3の周方向でN極と、S極とが交互に並ぶようになっている。主永久磁石層9の第2副永久磁石層13側の面についても同様である。なお、図4は第1副永久磁石層11の磁性ヨーク17を取り外した状態で示している。
また、第1副永久磁石層11の各副永久磁石10および第2副永久磁石層13の各副永久磁石12も、それらの厚み方向(ロータ3の周方向)に磁化されており、その厚み方向の一方の面がN極、他方の面がS極となっている。この場合、各副永久磁石10の厚み方向における各面の磁極は、図4に示すように(白抜き四角を付していない「N」、「S」を参照)、その面側で該副永久磁石10に隣接する主永久磁石8の第1副永久磁石層11側の面の磁極と同一になっている。従って、ロータ3の周方向で互いに隣り合う副永久磁石10,10の互いに対向する面の磁極は、それらの副永久磁石10,10の間の主永久磁石8の第1副永久磁石層11側の面の磁極と同一になっている。第2副永久磁石層13の副永久磁石12についても同様である。この場合、各主永久磁石8の厚み方向の両面のそれぞれの磁極は互いに異なるので、ロータ3の軸心C方向に並ぶ副永久磁石10,12の磁化の向きは互いに逆向きとなる。
このように主永久磁石8、および副永久磁石10,12を有するロータ3は、所謂ハルバッハ型の磁極配列を有するものとなり、ハルバッハ効果によって、ロータ3の軸心C方向の磁束密度を高密度なものとすることができる。
各ステータ4,5は、いずれも同一構造であり、図2に示す如く、各々、円環形状の基体19の軸心方向における一方の面から該基体19の軸心方向に突設された複数のティース20を、該基体19の軸心まわりに等角度間隔で配列した構造のものである。基体19およびティース20は、磁性材により一体に形成されている。なお、図示の例では、各ステータ4,5のティース20の個数は36個である。
この各ステータ4,5には、その周方向で隣り合うティース20,20の間の溝であるスロット21に電機子巻線6,7(図2では図示省略)を収容するようにして、該電機子巻線6,7が装着されている。本実施形態では、各ステータ4,5にそれぞれ装着される電機子巻線6,7は、3相分(U相、V相、W相)の電機子巻線である。また、各ステータ4,5における電機子巻線6,7の装着形態は、互いに同一である。例えば、ステータ4側の各相の電機子巻線6は、ステータ4の軸心方向で見たとき、所定数の巻線ループが、ステータ4の周方向に等角度間隔で形成されるようにステータ4に装着される。ステータ5側の電機子巻線7も同様である。従って、本実施形態ではステータ4および電機子巻線6の構成と、ステータ5および電機子巻線7の構成とは、互いに同じである。
これらのステータ4,5は、電動機1の組立状態では、該ステータ4,5の間にロータ3を挟み込むようにして、ロータ3の軸心C方向の両側に該ロータ3と同軸心に配置され、電動機1の図示しないハウジングに固定される。この場合、各ステータ4,5のティース20の先端面がロータ3に近接して対向される。また、ロータ3の軸心C方向におけるロータ3とステータ4との間の間隙(ロータ3のステータ4側の面とステータ4のティース20の先端面との距離)と、ロータとステータ5との間の間隙(ロータ3のステータ5側の面とステータ5のティース20の先端面との距離)とが等しくなるように、すなわち、両ステータ4,5の間の中央にロータ3が位置するように、ロータ3およびステータ4,5が電動機1に組み付けられる。さらに、本実施形態では、電動機1の組立状態においてロータ3の軸心方向で見たとき、ステータ4の各ティース20の位置(軸心まわりの角度位置)と、ステータ5の各ティース20の位置(軸心まわりの角度位置)とが合致するように、ステータ4,4が電動機1に組み付けられる。すなわち、ステータ4の個々のティース20と、ステータ5の個々のティース20とがロータ3の軸心C方向で正対するようになっている。そして、ステータ4の各相の電機子巻線6と、これと同じ相のステータ5の電機子巻線7とは、各相毎に、ステータ4側の電機子巻線6の巻線ループとステータ5側の電機子巻線7の巻線ループとがロータ3の軸心C方向で互いに対向するように(ロータ3の軸心C方向で見たとき、ステータ4側の巻線ループとステータ5側の巻線ループとが互いに同じ角度位置に存するように)、各ステータ4,5に装着されている。従って、電動機1のロータ3からステータ4側の磁気回路構成と、ロータ3からステータ5側の磁気回路構成とが同じ構成となっている。
また、電動機1には、ロータ3に連結される出力軸1a(図2の仮想線を参照)が備えられ、この出力軸1aは、図2に示すように、ステータ4,5を貫通した状態で、ロータ3の内筒枠16に同軸心に取り付けられる。そして、該出力軸1aは、図示を省略する軸受け(ベアリング)を介して電動機1のハウジング(または各ステータ4,5の基体19)に支持され、ロータ3と一体に回転自在とされる。
なお、以降の説明では、各電機子巻線6,7の相(U相、V相、W相)、あるいは、それぞれの相に対応する構成要素を区別する必要があるときは、それぞれ添え字u,v,wを付する。例えば、ステータ4のU相、V相、W相の電機子巻線6をそれぞれ電機子巻線6u、電機子巻線6v、電機子巻線6wと表記する。そして、それぞれの相を区別する必要が無いときは、添え字u,v,wをしばしば省略する。
図1の説明に戻って、本実施形態では、ステータ4側の電機子巻線6とステータ5側の電機子巻線7とは、次のように接続されている。すなわち、ステータ4の各相の電機子巻線6u,6v,6wのそれぞれと、ステータ5の各相の電機子巻線7u,7v,7wのそれぞれとは各相毎に直列に接続されている。そして、ステータ5の各相の電機子巻線7u,7v,7wの両端のうちの電機子巻線6u,6v,6wと反対側の一端が両ステータ4,5の電機子巻線6,7について共通の(単一の)中性点1Nに接続されている。従って、U相の電機子巻線6u,7uを直列に接続したものと、V相の電機子巻線6v,7vを直列に接続したものと、W相の電機子巻線6w,7wを直列にしたものとがY結線で接続されている。また、ステータ4の各相の電機子巻線6u,6v,6wの両端のうちの電機子巻線7u,7v,7wと反対側の一端は、電動機1の外面部に設けられた3相分の通電用接続端子42u,42v,42wにそれぞれ接続されている。従って、ステータ4の電機子巻線6とステータ5の電機子巻線7とは、各相毎に、通電用接続端子42と単一の中性点1Nとの間で直列に接続されている。そして、各通電用接続端子42u,42v,42wは、それぞれ通電ライン(接続ケーブルやバー状導体など)23u,23v,23wを介して制御装置2の後述するパワードライブユニット31のインバータ回路38に接続され、該インバータ回路38と各相の電機子巻線6,7の間で電流が流れるようになっている。なお、電機子巻線6,7は、各相毎に直列に接続されているので、電機子巻線6に流れる電流と電機子巻線7に流れる電流とは各相毎に、常に同じになる。
また、本実施形態では、電動機1の運転制御のために、電動機1には、ロータ3の回転角度を検出する回転角度検出手段としてのレゾルバ24が付設されている。
以上が電動機1に関する構成である。
次に、制御装置2を図1、並びに図5〜図7を参照して説明する。図5は制御装置2に備える容量性フィルタ41の回路構成を一般化して示す図、図6は制御装置2に備えるPDU制御部32の機能的構成を示すブロック図、図7は制御装置2に備えたパワードライブユニット31のインバータ回路38と、その出力側の回路構成とを示す図である。
図1を参照して、制御装置2は、マイクロコンピュータなどを含む電子回路ユニットにより構成されたものである。この制御装置2は、その機能的構成を大別すると、3相分の前記通電ライン23u,23v,23wが接続されたパワードライブユニット31(以下、PDU31という)と、このPDU31の動作を制御する制御処理を実行するPDU制御部32と、PDU31から各相の通電ライン23u,23v,23wへの出力電流をそれぞれ検出する電流センサ33u,33v,33wと、各電流センサ33u,33v,33wの出力にバンドパス特性のフィルタリングを施してノイズ成分を除去することによりPDU31の各相の出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sを得るBPフィルタ34と、電動機1の各相の電機子巻線6,7に後述するインバータ回路28のスイッチング動作に起因する高周波成分の電流が流れるのを防止するためのフィルタ回路35とを備えている。なお、PDU制御部32には、BPフィルタ34から出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sが入力されると共に、レゾルバ24で検出されるロータ3の回転角度θm_s(以下、ロータ角度検出値θm_sという)が入力される。
補足すると、出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sの総和は0となるので、電流センサ33u,33v,33wのうちのいずれか一つを省略し、その省略した電流センサに対応する出力電流検出値を他の2つの出力電流検出値から算出するようにしてもよい。例えば、電流センサ33vを省略した場合には、Isv_s=−Isu_s−Isw_sとしてIsv_sを算出することができる。
PDU31は、図7に示すように、直列に接続された一対のスイッチ素子36,36(図示例ではIGBT)をそれぞれ有する3相分のアーム37u,37v,37wを並列に接続してなる公知のインバータ回路38を備える。このインバータ回路38は、各アーム37の両端にそれぞれ導通する一対の入力端子39a,39bに図示を省略する直流電源から直流電圧が印加されるようになっている。そして、インバータ回路38は、各相のアーム37u,37v,37wの中点(スイッチ素子36,36の間の箇所)にそれぞれ導通する出力端子40u,40v,40wを備えており、これらの出力端子40u,40v,40wにそれぞれ通電ライン23u,23v,23wが接続されている。このインバータ回路38を有するPDU31は、PDU制御部32から与えられる後述の動作指令(U相、V相、W相の各相の電圧指令値)に応じたPWM制御により、インバータ回路38の各スイッチ素子36のオン・オフを制御することで、インバータ回路38の出力電流を制御する。前記各電流センサ33が検出するPDU31の出力電流は、このインバータ回路38の各相毎の出力電流である。
フィルタ回路35は、ハイパス特性を有するフィルタであり、3相分の容量性フィルタ41u,41v,41wにより構成されている。ここで、各容量性フィルタ41は、それぞれのインピーダンスの虚部(リアクタンス成分)が負の値となるフィルタであり、それぞれのインピーダンスは互いにほぼ同一である。本実施形態では、各容量性フィルタ41は、コンデンサ(キャパシタンス素子)により構成されている。
ただし、各容量性フィルタ41は、必ずしもコンデンサだけで構成する必要はなく、例えば、図5に示すように、抵抗素子43a、コイル43b(インダクタンス素子)、コンデンサ43c,43dを組合わせて構成してもよい。このように各容量性フィルタ41の回路構成は、種々様々の形態が可能である。
前記容量性フィルタ41u,41v,41wは、それぞれの一端が相互に接続されている。つまり、容量性フィルタ41u,41v,41wは、Y結線で接続されている。また、各容量性フィルタ41u,41v,41wの他端は、それぞれ、電流センサ33u,33v,33wと電動機1との間でU相の通電ライン23u,V相の通電ライン23v、W相の通電ライン23wに接続されている。
なお、本実施形態では、各容量性フィルタ41が各相毎に、それぞれ電流センサ33と電動機1との間で通電ライン23に接続されているので、各電流センサ33が検出するインバータ回路38の出力電流は、それぞれに対応する相の電機子巻線6,7に流れる電流と、その相の容量性フィルタ41に流れる電流との合成電流となる。
補足すると、容量性フィルタ41や電流センサ33は、PDU31のインバータ回路38に一体に組み付けられていてもよい。
前記PDU制御部32は、PDU31を介して、各相の電機子巻線6,7の通電電流(相電流)を制御するものである。本実施形態では、PDU制御部32は、いわゆるd−qベクトル制御により電動機1のステータ4,5の各相の電機子巻線6,7の相電流を制御する。すなわち、PDU制御部32は、ステータ4の3相分の電機子巻線6u,6v,6wと、ステータ5の3相分の電機子巻線7u,7v,7wとを合わせて2相直流のd−q座標系での等価回路に変換して取り扱う。その等価回路は、d軸上の電機子巻線(以下、d軸電機子巻線という)と、q軸上の電機子巻線(以下、q軸電機子巻線という)とを有する。そして、d−qベクトル制御では、電機子巻線6,7に流す電流は、d軸電機子巻線に流す電流としてのd軸電流と、q軸電機子巻線に流す電流としてのq軸電流との合成電流として扱われる。なお、d−q座標系は、ロータ3の主永久磁石8および副永久磁石10,12による界磁方向をd軸、d軸と直交する方向をq軸として電動機1のロータ3と一体に回転する回転座標系である。従って、d軸電流およびq軸電流は、それぞれ、所謂、界磁電流、トルク電流を意味する電流である。
そして、PDU制御部32は、電動機1の目標出力トルクとして外部から制御装置2に与えられるトルク指令値Tr_cのトルクを電動機1の出力軸1aから出力させるように、各容量性フィルタ40に流れる電流の影響を補償しつつ、電動機1のステータ4,5の電機子巻線6,7の各相電流をPDU31を介して制御する。
図6を参照して、このような制御を行なうPDU制御部32は、その機能的構成として、レゾルバ24から入力されるロータ角度検出値θm_sを微分することによりロータ3の回転速度の検出値としてのロータ速度検出値ωm_sを算出する微分演算部50と、電機子巻線6,7のd軸電流(界磁電流)の指令値であるd軸電流指令値Imd_c、およびq軸電流(トルク電流)の指令値であるq軸電流指令値Imq_cを決定する電流指令決定部51と、このd軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cを、電機子巻線6,7の電流指令値の複素表現である電機子電流ベクトル指令値Im_co_cに変換する複素電流指令変換部52と、この相電流ベクトル指令値Im_co_c等からインバータ回路38の出力電流の指令値の複素表現であるインバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cを算出するインバータ出力電流指令算出部53と、このインバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cをインバータ回路38の出力電流のd軸電流成分およびq軸電流成分のそれぞれの指令値としてのインバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cの組に変換するdq指令変換部54とを備える。
なお、微分演算部50では、ロータ角度検出値θm_sにロータ3の極対数を乗じてなるロータ3の電気角を微分することによって、ロータ3の電気角の角速度を算出するようにしてもよい。
補足すると、以降の説明では、電機子電流ベクトル指令値Im_co_cや、インバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cの如く、添え字「co」を有する参照符号を付するものは、複素表現によるベクトル量を意味するものとする。
さらにPDU制御部32は、前記BPフィルタ34から入力される各相電流検出値Isu_s,Isv_s,Isd_cをインバータ回路38の出力電流のd軸電流成分およびq軸電流成分のそれぞれの検出値としてのd軸電流検出値Isd_sおよびq軸電流検出値Isq_sの組に変換するdq変換部55と、このd軸電流検出値Isd_sおよびq軸電流検出値Isq_sをそれぞれ前記インバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cに一致させるように前記d軸電機子巻線およびq軸電機子巻線のそれぞれの電圧の指令値としてのd軸電圧指令値Vsd_cおよびq軸電圧指令値Vsq_cを決定する電流フィードバック制御部56と、このd軸電圧指令値Vsd_cおよびq軸電圧指令値Vsq_cの組を、U相、V相、W相の各相の電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1に変換する3相変換部57とを備える。
さらに、PDU制御部32は、インバータ回路38から各相の通電ライン23u,23v,23wに流れる電流の検出値としての前記出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isd_cの直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値をそれぞれ算出する3相分の直流オフセット電流算出部65u,65v,65wから構成される直流オフセット検知部66と、この直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値に応じて電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1をそれぞれ補正することで、補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2を決定する電圧指令補正部67とを備える。該補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2は、PDU31に対する動作指令値である。
なお、前記直流オフセット検知部66は、本発明におけるオフセット検知信号出力手段に相当し、該直流オフセット検知部66の各直流オフセット電流算出部65u,65v,65wで算出される直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値が本発明における直流オフセット検知信号に相当する。また、電圧指令補正部67は、本発明における直流オフセット電流補償手段に相当するものである。
上記したPDU制御部32の各機能部の処理は、所定の制御処理周期で、以下に説明する如く逐次実行される。
電流指令決定部51には、制御装置2に外部から与えられる電動機1のトルク指令値Tr_cが逐次入力されると共に、前記微分演算部50からロータ速度検出値ωm_sが逐次入力される。そして、電流指令決定部51は、これらの入力値から、あらかじめ定められたマップに従って、電機子巻線6,7のd軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cを逐次決定する。すなわち、Imd_c,Imq_cは、トルク指令値Tr_cおよびロータ速度検出値ωm_sに応じて決定されるフィードフォワード指令値である。この場合、基本的にはq軸電流指令値Imq_cは、トルク指令値Tr_cに比例した値に決定される。また、d軸電流指令値Imd_cは、q軸電流指令値Imq_cとd軸電流指令値Imd_cとロータ回転速度ωm_sとに応じて定まるd軸電圧とq軸電圧との合成ベクトルの大きさが、電動機1の電源電圧(インバータ回路38に入力電圧)に対応して定まる所定値を超えないように決定される。該d軸電流指令値Imd_cは、基本的には、ロータ速度検出値ωm_sが高速となる電動機1の運転領域において、電機子巻線6,7に界磁弱め方向の界磁電流成分を流すように決定される指令値である。
なお、電流指令決定部51は、本発明における目標電機子電流決定手段に相当し、そこで決定されるq軸電流指令値Imq_cとd軸電流指令値Imd_cが、本発明における目標電機子電流に相当するものである。
このように決定されるd軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cが複素電流指令変換部52に逐次入力される。本実施形態では、dq座標系のq軸、d軸をそれぞれ複素座標系の実軸、虚軸に一致させるものとする。そこで、該複素電流変換部52は、入力されたq軸電流指令値Imq_cを実部、d軸電流指令値Imd_cを虚部とする複素数を電機子電流ベクトル指令値Im_co_cとして決定する。すなわち、次式(1)によりIm_co_cを決定する。
Im_co_c=Imq_c+j・Imd_c ……(1)
(ただし、j:虚数単位)
なお、Im_co_cを極座標で表現してもよい。この場合には、Im_co_cは、√(Imq_c2+Imd_c2)を動径成分、tan-1(Imd_c/Imq_c)を角度成分とするベクトル量となる。
このように決定された電機子電流ベクトル指令値Im_co_cと、ロータ速度検出値ωm_sとがインバータ出力電流指令算出部53に入力される。
ここで、本実施形態では、前記したように、各電流センサ33が検出するインバータ回路38の出力電流は、それぞれに対応する相の電機子巻線6,7に流れる電流と、その相の容量性フィルタ41に流れる電流との合成電流となる。従って、各相の電機子巻線6,7に電機子電流ベクトル指令値Im_co_cの電流(d軸電流およびq軸電流がそれぞれImd_c、Imq_cに一致するような電流)を流すためには、電機子電流ベクトル指令値Im_co_cの電流に、容量性フィルタ41に流れる電流分を付加した電流をインバータ回路38から出力する必要がある。インバータ出力電流指令算出部53は、このように容量性フィルタ41に流れる電流分を付加したインバータ回路38の出力電流の指令値(1相分の出力電流の指令値)の複素表現をインバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cとして求めるものである。
このインバータ出力電流指令算出部53の処理を図7を参照しつつ詳説する。ここで、以下の説明では、各相の電機子巻線6,7の直列回路は、図7に示す如く、等価的に、インダクタンスLのコイル70と抵抗値rの抵抗素子71とロータ3の回転速度に比例する誘起電圧ベクトルVi_coを発生する電圧源72との直列回路によって表現されるものとする。この場合、誘起電圧ベクトルVi_coは、ロータ3の電気角の角速度をωとし、電動機1の誘起電圧定数(電機子巻線6,7を合わせたトータルの誘起電圧定数)Keとしたとき、図5に記載した如く、Vi_co=Ke・ωとなる。そして、誘起電圧ベクトルVi_coは、d−q座標系のq軸方向に発生するので、q軸およびd軸をそれぞれ複素座標系の実軸、虚軸に一致させた場合、複素表現によるベクトル量としての誘起電圧Vi_coは、実部成分(=Ke・ω)のみを有するベクトル量となる。補足すると、インダクタンスLは、電機子巻線6,7をd−q座標系で取り扱う場合における前記d軸電機子巻線のインダクタンスLdとq軸電機子巻線のインダクタンスLqとの平均値(=(Ld+Lq)/2)である。
また、一般に、電動機には、各相の電機子巻線に直列に接続された誘導性フィルタ(そのインピーダンスのリアクタンス成分が正の値となるフィルタ)が組み込まれることがある。そこで、図7においては、インバータ出力電流指令算出分53の処理の説明を一般化するために、インダクタンスL2のコイル73と抵抗値R2の抵抗素子74との直列回路で表現される誘導性フィルタ75が各相の電機子巻線6,7の直列回路に直列に接続されているものとしてしている。ただし、誘導性フィルタ75は、省略してもよく、その場合には、L2=0,R2=0とすればよい。
また、各容量性フィルタ41のインピーダンスをZe_coとする。この場合、図7に記載した如く、インピーダンスZe_coの虚部Im(Ze_co)、すなわちリアクタンス成分は負の値である。なお、本実施形態では、各容量性フィルタ41はコンデンサにより構成されているので、その容量値をCとおくと、Ze_co=1/(j・ω・C)である。ただし、容量性フィルタ41の回路構成は、前記したように種々様々な形態がある。そこで、図7においては、インバータ出力電流指令算出分53の処理の説明を一般化するために、各容量性フィルタ41を単なる白抜き四角で表現している。この場合、Ze_coは、一般的には、抵抗成分とリアクタンス成分(<0)とを有する。
以上を前提としてインバータ出力電流指令算出分53の処理を以下に説明する。U相、V相、W相のうちの任意の1つの相、例えばU相に着目し、インバータ回路38のU相の出力電流ベクトルをIs_co、U相の容量性フィルタ41uに流れる電流ベクトルをIe_co、U相の電機子巻線6,7に流れる電流ベクトル(以下、電機子電流ベクトルという)をIm_co、U相の電機子巻線6u,7uと誘導性フィルタ75との直列回路の全体に発生する電圧ベクトルをVm_coとおく。なお、Is_co、Ie_co、Im_coの正方向は、図中の矢印の向きであるとする。
また、U相の電機子巻線6u,7uと誘導性フィルタ75とを合わせたインピーダンスをZm_coとおく。この場合、Zm_co≡Rm+j・ω・Lmとおくと、Rm=R2+r、Lm=L2+Lである。なお、インピーダンスZm_coは、より一般的に言えば、各相の容量性フィルタ41の通電ライン23側の一端から、中性点1Nに至る電流路のインピーダンスを意味している。この場合、通電ライン23の抵抗値が無視できない程度に大きい場合には、インピーダンスZm_coに該通電ライン23の抵抗分を含めてもよい。
また、インバータ出力電流指令算出部53の処理では、容量性フィルタ41u,41v,41wの相互の接続箇所(容量性フィルタ41u,41v,41wのY結線の中性点)と、前記電機子巻線6,7の中性点1Nとが、図7に二点鎖線で示す如く、仮想的に導通されている(それらの中性点が同電位である)とみなす。従って、電圧ベクトルVm_coは、U相の容量性フィルタ41に発生する電圧ベクトルと同じであるとみなす。
このとき、図7を参照して判るように、次式(2)、(3)、(4)が成立する。
Is_co=Ie_co+Im_co ……(2)
Vm_co=Zm_co・Im_co+Vi_co ……(3)
Ie_co=Vm_co/Ze_co ……(4)
これらの式(2)〜(4)から、次式(5)が得られる。
Is_co=((Zm_co・Im_co+Vi_co)/Ze_co)+Im_co
=Im_co・(1+(Zm_co/Ze_co))+(Vi_co/Ze_co)……(5)
さらに、前記したようにVi_co=Ke・ωであるから、式(5)は次式(6)となる。
Is_co=Im_co・(1+(Zm_co/Ze_co))+(Ke・ω/Ze_co)……(6)
これらの式(5)、(6)は、1つの相についての前記インピーダンスZe_co,Zm_coと、電機子巻線6,7の誘起電圧Vi_co(=Ke・ω)と、出力電流ベクトルIs_coと、電機子電流ベクトルIm_coとの関係を表す演算式である。
ここで、容量性フィルタ41のインピーダンスZe_coは、該容量性フィルタ41を構成する素子の回路定数値(容量値、インダクタンス値、抵抗値)とロータ3の電気角の角速度ωとに応じて定まる。この場合、容量性フィルタ41を構成する素子の回路定数値は、既知の値とすることができるので、Ze_coは、ロータ3の角速度ωに応じて一義的に定まる。
同様に、電動機1側のインピーダンスZm_coは、前記誘導性フィルタ75および電機子巻線6,7の直列回路の回路定数値(R2、L2、r、Lの値)とロータ3の電気角の角速度ωとに応じて定まる。そして、その回路定数値は、既知の値とすることができるので、Zm_coは、ロータ3の角速度ωに応じて一義的に定まる。
さらに、電動機1の誘起電圧定数Keも、実測などにより既知の値とすることができる。
従って、ロータ3の角速度ωと、電機子電流ベクトルIm_coとを決めれば、式(6)によって、インバータ回路38の出力電流ベクトルIs_coが一義的に決まることとなる。
そこで、インバータ出力電流算出部53は、入力される前記電機子電流ベクトル指令値Im_co_cとロータ速度検出値ωm_sとから、上記式(6)に基づいて、インバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cを算出する。
より具体的には、ロータ速度検出値ωm_sは、ロータ3の機械角の角速度であるので、ωm_sにロータ3の極対数を乗じてなる値(これはロータ3の電気角の角速度の検出値に相当する)を、式(6)の右辺のωの値として用いる。また、前記電機子電流ベクトル指令値Im_co_cを、式(6)の右辺のIm_coの値として用いる。そして、インバータ出力電流算出部53は、このようにして式(6)の右辺の演算を行なうことにより求められるIs_coを、インバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cとして算出する。
この場合、インピーダンスZe_co,Zm_coを決定するために必要な回路定数値は、あらかじめ図示しないメモリに記憶された値が使用される。また、この場合、前記式(4)、ひいては、式(6)は、容量性フィルタ41u,41v,41wのY結線の中性点と、前記電機子巻線6,7の中性点1Nとが同電位であることを前提としているので、Is_co_cは、それらの中性点が同電位になるように求められることとなる。
以上がインバータ出力電流算出部53の処理の詳細である。
なお、上記したインバータ出力電流算出部53の処理の説明では、誘導性フィルタ75を備える場合や、各容量性フィルタ41がコンデンサ以外の素子を含む場合を考慮して一般化して説明したが、本実施形態では、実際には、誘導性フィルタ75は省略している。また、各容量性フィルタ41は、本実施形態では、コンデンサにより構成されている。この場合、容量性フィルタ41よりも電動機1側のインピーダンスZm_coは、Zm_co=r+j・ω・Lとなる。また、各容量性フィルタ41のインピーダンスZe_coは、前記した通り、Ze_co=1/(j・ω・C)となる。
このようにしてインバータ出力電流算出部53で算出されたインバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cが、dq指令変換部54に入力される。そして、該dq指令変換b部54は、入力されたインバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cを、インバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cの組に変換する。この場合、本実施形態では、前記したように、複素座標系の実軸および虚軸をそれぞれdq座標系のq軸、d軸に一致させているので、Is_co_cの実部、虚部をそれぞれインバータq軸電流指令値Isq_c、インバータd軸電流指令値Isd_cとする。すなわち、Isq_c=Isq+j・Isdと表されるとした場合、Isq_c=Isq、Isd_c=Isdとする。
これにより、電動機1の電機子巻線6,7にd軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cに対応する電流を流すために必要なインバータ回路38の出力電流のd軸電流成分およびq軸電流成分の指令値が容量性フィルタ41に流れる電流分を加味して決定されることとなる。
なお、前記インバータ出力電流算出部53およびdq指令変換部54は、それらを併せて、本発明におけるインバータ目標出力電流決定手段を構成するものである。そして、前記インバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cが、本発明におけるインバータ目標出力電流に相当する。
一方、前記した電流指令決定部51などの処理と並行して、前記出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sと、ロータ角度検出値θm_sとがdq変換部55に入力され、該dq変換部55の処理が実行される。該dq変換部55は、出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sを、ロータ3の電気角に応じて座標変換することにより、d軸電流検出値Isd_sおよびq軸電流検出値Isq_sを算出する。この場合、ロータ3の電気角は、ロータ角度検出値θm_sにロータ3の極対数を乗じることにより求められる。
次いで、dq指令変換部54でより求められたインバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cと、dq変換部55で求められた前記d軸電流検出値Isd_sおよびq軸電流検出値Isq_sとが、電流フィードバック制御部56に入力される。なお、電流フィードバック制御部56には、ロータ速度検出値ωm_sも入力される。
この電流フィードバック制御部56では、まず、インバータd軸電流指令値Isd_cとd軸電流検出値Isd_sとの偏差ΔIsd(=Isd_c−Isd_s)を求める演算部58の処理と、インバータq軸電流指令値Isq_cとq軸電流検出値Isq_sとの偏差ΔIsq(=Isq_c−Isq_s)を求める演算部59の処理とが実行される。
次いで、それぞれの偏差ΔIsd,ΔIsqから、それぞれフィードバック制御則としてのPI制御則(比例・積分制御則)により該偏差ΔIsd,ΔIsqを0に近づけるようにd軸電圧の基本指令値Vsd1_cおよびq軸電圧の基本指令値Vsq1_cを各々算出するPI制御部60,61の処理と、d軸およびq軸間で互いに干渉し合う速度起電力を打ち消すためのd軸電圧の補正量Vsd2_cおよびq軸電圧の補正量Vsq2_cを求める非干渉制御部62の処理とが実行される。なお、非干渉制御部62は、d軸側の補正量Vd2_cをインバータq軸電流指令値Isq_cとロータ速度検出値ωm_sとから算出し、q軸側の補正量Vq2_cをインバータd軸電流指令値Isd_cとロータ速度検出値ωm_sとから算出する。
次いで、d軸電圧の前記基本指令値Vsd1_cに補正量Vsd2_cを加えることで、最終的なd軸電圧指令値Vsd_cを求める演算部63の処理と、q軸電圧の前記基本指令値Vsq1_cに補正量Vsq2_cを加えることで、最終的なq軸電圧指令値Vsq_cを求める演算部64の処理とが実行される。
以上説明した電流フィードバック制御部56の処理により、インバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cに、d軸電流検出値Isd_sおよびq軸電流検出値Isq_sをそれぞれ一致させるように、d軸電圧指令値Vsq_cおよびq軸電圧指令値Vsq_cが決定されることとなる。
なお、この電流フィードバック制御部56は、本発明におけるインバータ制御手段に相当する。
このようにして電流フィードバック制御部56により決定されたd軸電圧指令値Vsd_cおよびq軸電圧指令値Vsq_cと、ロータ角度検出値θm_sとが3相変換部57に入力される。そして、該3相変換部57は、d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cを、ロータ角度検出値θm_sにロータ3の極対数を乗じてなるロータ3の電気角に応じて座標変換することにより、前記各相の電圧指令値Vsu_c,Vsv_c,Vsw_c(以下、相電圧指令値Vsu_c,Vsv_c,Vsw_cという)を算出する。
さらに、3相変換部57の処理と並行して、前記出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sがそれぞれ直流オフセット検知部66の直流オフセット電流算出部65u,65v,65wに入力され、該直流オフセット電流算出部65u,65v,65wの処理が実行される。この場合、U相の直流オフセット電流算出部65uは、例えば移動平均処理などにより、入力された出力電流検出値Isu_s(これは正弦波状のものである)の1周期または複数周期分の平均値を該出力電流検出値Isu_sの直流成分Iu_dcの値として算出する。V相、W相の直流オフセット電流算出部65v,65wの処理も同様である。
そして、このように算出された各相の直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値と、前記3相変換部57で求められた相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1とが、電圧指令補正部67に入力され、該電圧指令補正部67の処理が実行される。該電圧指令補正部67の処理では、入力された各相の直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値にそれぞれ所定のゲインK(<0)を乗じた値を、それぞれ、相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1に加算することにより、補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が決定される。すなわち、Vsu_c2=Vsu_c1+K・Iu_dc、Vsv_c2=Vsv_c1+K・Iv_dc、Vsw_c2=Vsw_c1+K・Iw_dcにより、Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が決定される。
このように補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が決定することにより、例えば、U相の直流成分Iu_dcの値が正の値であるときには、それを打ち消すための負の値の電圧成分K・Iu_dcが、U相の相電圧指令値Vsu_c1に重畳されることとなる。逆に、U相の直流成分Iu_dcの値が正の値であるときには、それを打ち消すための正の値の電圧成分K・Iu_dcが、U相電圧指令値Vsu_c1に重畳されることとなる。V相、W相についても同様である。
このように電圧指令補正部67で決定された補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が前記PDU31に入力される。
このとき、PDU31は入力された補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2の電圧をインバータ回路38の出力側に発生させるように、PWM制御によってインバータ回路38の各スイッチ素子36のオン・オフを制御する。これにより、インバータ回路38の各相の出力電流が、基本的には、前記インバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cに対応する各相の電流指令値(Isd_cおよびIsq_cの組をロータ3の電気角に応じて3相に座標変換してなる各相の電流指令値)に一致するように制御される。このとき、インバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cには、各容量性フィルタ41に流れる電流分が加味されているので、結果的に、電動機1の各相の電機子6,7の通電電流が、前記電流指令決定部51により決定されるd軸電流指令値Isd_cおよびq軸電流指令値Isq_cに対応する各相の電流指令値に一致するように制御されることとなる。ひいては、トルク指令値Tr_cのトルクが電動機1の出力軸1aに発生するように電動機1の運転制御がなされる。
以上説明した第1実施形態によれば、インバータ回路38の出力電流に含まれる高周波の電流成分は、各容量性フィルタ41に流れるので、電機子巻線6,7に高周波の電流成分が流れるのを防止できる。また、容量性フィルタ41と電機子巻線6,7との間での共振現象などに起因して、インバータ回路38の各相の出力電流が相間でアンバランスなオフセットを生じるような事態が発生すると、各相の出力電流の直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcに応じて、それを0に近づけるように各相の相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1が補正されてインバータ回路38の出力電流が調整されるので、当該アンバランスなオフセットの発生を抑制することができる。
このため、電動機1における銅損や鉄損を低減でき、電動機1のエネルギー効率を高めることができる。また、電機子巻線6,7を流れる電流が相間でアンバランスなオフセットを生じるような事態が発生するのを抑制することができることから、ロータ3に備えた永久磁石8,10,12の減磁を防止できる。また、インバータ回路38の出力電圧を容量性フィルタ41によって降下させることなく、電動機1の電機子巻線6,7に印加できるので、電動機1が発生可能な出力の最大値が低下するのを防止することができる。
さらに、各容量性フィルタ41に流れる電流分を加味して、インバータ回路38の出力電流の指令値としてのインバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cを決定し、これらのインバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cに、d軸電流検出値Isd_sおよびq軸電流検出値Isq_sをそれぞれ一致させるように、インバータ回路38の出力電流がフィードバック制御される。これにより、容量性フィルタ41と電機子巻線6,7との間での共振現象などに各容量性フィルタ41に流れる電流に依存することなく、電動機1にトルク指令値Tr_cのトルクを安定に発生させることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8を参照して説明する。図8は本実施形態の電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
図8を参照して、1は電動機、80は制御装置である。電動機1は前記第1実施形態のものと同一である。
制御装置80は、マイクロコンピュータなどを含む電子回路ユニットにより構成されたものであるが、その構成の一部が第1実施形態の制御装置2と相違しており、その相違点を以下に説明する。本実施形態における制御装置80は、電動機1の電機子巻線6,7の中性点Nと、各相の通電ライン23u,23v,23wとの間の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nをそれぞれ検出する電圧センサ81u,81v,81wを備えている。各電圧センサ81u,81v,81wは、それぞれの一方の入力端がPDU31とフィルタ回路35との間で通電ライン23u,23v,23wにそれぞれ接続され、他方の入力端が電機子巻線6,7の中性点1Nに接続されている。なお、本実施形態では、各電圧センサ81u,81v,81wは、PDU31とフィルタ回路35との間で、電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nをそれぞれ検出するようにしているが、フィルタ回路35と電動機1との間で、電動機1の電機子巻線6,7の中性点Nと、各相の通電ライン23u,23v,23wとの間の電位差を検出するようにしてもよい。
そして、制御装置80は、前記第1実施形態のPDU制御部32と一部の機能的構成のみが相違するPDU制御部82を備えており、このPDU制御部82に、電流センサ33u,33v,33wからBPフィルタ34を介して得られる出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sと、レゾルバ24によるロータ角度検出値θm_sと、電圧センサ81u,81v,81wにより検出された電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nとが入力されるようになっている。
PDU制御部82は、その機能的構成のうち、オフセット検知信号出力手段としての直流オフセット検知部84と直流オフセット電流補償手段としての電圧指令補正部85のみが、第1実施形態のPDU制御部32と相違するものである。そこで、図8では、PDU制御部82の機能的構成のうち、直流オフセット検知部84および電圧指令補正部85のみを記載し、他の機能的構成は図示を省略している。
PDU制御部82の直流オフセット検知部84は、入力された各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nのそれぞれの直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値をそれぞれ算出する3相分の直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wから構成されている。また、電圧指令補正部85は、各相の直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wでそれぞれ算出された直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値を、第1実施形態で説明した前記3相変換部57(図8では図示省略)で算出される相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1からそれぞれ減じる3相分の演算部86u,86v,86wから構成されている。
以上説明した以外の制御装置80の構成は、前記第1実施形態と全く同一である。
なお、本実施形態では、前記直流オフセット検知部84の直流オフセット電圧算出部65u,65v,65wで算出される直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値が本発明における直流オフセット検知信号に相当するものである。
本実施形態におけるPDU制御部82の処理は、所定の制御処理周期で、以下に説明する如く逐次実行される。
前記第1実施形態と全く同様に、電圧指令補正部85による補正を施す前の相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1が決定される。そして、これと並行して、前記電圧センサ81u,81v,81wから、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの検出値が直流オフセット検知部84に入力され、該直流オフセット検知部84の各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wの処理が実行される。
この場合、U相の直流オフセット電圧算出部83uは、例えば移動平均処理などにより、入力された電位差Vu_nの1周期または複数周期分の平均値を該電位差Vu_nの直流成分Vu_dcの値として算出する。V相、W相の直流オフセット電圧算出部83v,83wの処理も同様である。
そして、このように算出された各相の直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値と、前記3相変換部57で求められた相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1とが、電圧指令補正部85に入力され、該電圧指令補正部85の演算部86u,86v,86wの処理が実行される。各演算部86u,86v,86wでは、U相、V相、W相の相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1から、それぞれ、U相の電位差Vu_nの直流成分Vu_dc、V相の電位差Vv_nの直流成分Vv_dc、W相の電位差Vw_nの直流成分Vw_dcを減算することによって、補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が決定される。これにより、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcを0に近づけるように、ひいては、各相の通電ライン23u,23v,23wを流れる電流の直流成分を0に近づけるように、相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1を補正してなるVsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が決定される。
そして、このように電圧指令補正部85で決定された補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が前記PDU31に入力され、前記第1実施形態と同様に、インバータ回路38の出力電流が制御されることとなる。
かかる本実施形態においても第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図9および図10を参照して説明する。図9は本実施形態の電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図、図10は本実施形態の制御装置87に備えた中性点電位生成回路88の回路構成を示す図である。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態または第2実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態または第2実施形態と同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
図9を参照して、1は電動機、87は制御装置である。電動機1は前記第1実施形態のものと同一である。
制御装置87は、マイクロコンピュータなどを含む電子回路ユニットにより構成されたものであるが、その構成の一部が第2実施形態の制御装置80と相違しており、その相違点を以下に説明する。前記第2実施形態では、電動機1の電機子巻線6,7の中性点1Nの電位が各電圧センサ81u,81v,81wに直接的に入力されるようになっているので、該中性点1Nを制御装置80に接続する接続線等を必要とする。これに対して、本実施形態では、電機子巻線6,7の中性点1Nの電位と同等の電位を生成する中性点電位生成回路88を制御装置87に備え、中性点1Nと制御装置87との接続を不要としている。
中性点電位生成回路88は、PDU31とフィルタ回路35との間で各相の通電ライン23u,23v,23wに接続され、各相の通電ライン23u,23v,23wの電位Vu,Vv,Vwが入力されるようになっている。なお、中性点電位生成回路88と各通電ライン23との接続は、フィルタ回路35と電動機1の間で行なうようにしてもよい。
図10に示すように、この中性点電位生成回路88は、各相の通電ライン23u,23v,23wの電位Vu,Vv,Vwがそれぞれ入力される入力端子89u,89v,89wと、入力端子89u,89v間に直列に接続された複数の分圧抵抗90uと、入力端子89v,89w間に直列に接続された複数の分圧抵抗90vと、入力端子89w,89u間に直列に接続された複数の分圧抵抗90wとを備える。分圧抵抗90uの個数、分圧抵抗90v個数、および分圧抵抗90wの個数は、いずれも同一(図示例では3個)である。また、それらの抵抗値もいずれも同一である。分圧抵抗90uは、VuとVvとの電位差Vu−Vv(通電ライン23u,23v間の電位差)に比例した電圧信号Vu-vを生成し、分圧抵抗90vは、VvとVwとの電位差Vv−Vw(通電ライン23v,23w間の電位差)に比例した電圧信号Vv-wを生成し、分圧抵抗90wは、VwとVuとの電位差Vw−Vu(通電ライン23w,23u間の電位差)に比例した電圧信号Vw-uを生成する。
また、中性点電位生成回路88は、前記電圧信号Vu-v,Vv-w,Vw-uをそれぞれ所要の振幅レベルの電圧信号に変換して出力する差動増幅器91uv,91vw,91wuと、各差動増幅器91uv,91vw,91wuの出力をそれぞれ反転増幅する反転増幅器92uv,92vw,92wuと、これらの反転増幅器92uv,92vw,92wuの出力を加え合わせる反転増幅器93とを備える。なお、差動増幅器91uv,91vw,91wuは、入力側と出力側とが電気的に絶縁された絶縁アンプを使用して構成されている。
このように構成された中性点電位生成回路88では、反転増幅器93が前記電圧信号Vu-v,Vv-w,Vw-uにそれぞれ比例する信号を加え合わせることとなるので、該反転増幅器93の出力が、電機子巻線6,7の中性点1Nの電位Vnに相当するものとなる。なお、中性点電位生成回路88が出力する中性点1Nの電位Vnは、電機子巻線6,7の各相の電圧が相互にバランスしている場合には0となるが、各相の電圧に瞬時的なアンバランスが生じる場合などに電位Vnが0でない値となる。
本実施形態では、電圧センサ81u,81v,81wのそれぞれの一方の入力端が各相の通電ライン23u,23v,23wにそれぞれ接続され、他方の入力端が前記中性点電位生成回路88の出力側に接続されている。これにより、各電圧センサ81u,81v,81wは、各相の通電ライン23u,23v,23wと中性点1Nとの間の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nを検出するようにしている。
以上説明した以外の制御装置87の構成は、前記第2実施形態と全く同一である。
本実施形態におけるPDU制御部82の処理は、所定の制御処理周期で、以下に説明する如く逐次実行される。
前記第1実施形態と全く同様に、電圧指令補正部85による補正を施す前の相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1が決定される。そして、これと並行して、前記電圧センサ81u,81v,81wから、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの検出値が直流オフセット検知部84に入力され、該直流オフセット検知部84の各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wの処理が前記第2実施形態で説明した如く実行される。
そして、各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wで算出された各相の直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値と、前記3相変換部57で求められた相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1とが、電圧指令補正部85に入力され、該電圧指令補正部85の演算部86u,86v,86wの処理が前記第2実施形態で説明した如く実行される。これにより、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcを0に近づけるように、ひいては、各相の通電ライン23u,23v,23wを流れる電流の直流成分を0に近づけるように、相電圧指令値Vsu_c1,Vsv_c1,Vsw_c1を補正してなる補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が決定される。
そして、このように電圧指令補正部85で決定された補正後相電圧指令値Vsu_c2,Vsv_c2,Vsw_c2が前記PDU31に入力され、前記第1実施形態と同様に、インバータ回路38の出力電流が制御されることとなる。
かかる本実施形態においても第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図11および図12を参照して説明する。図11は本実施形態の電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図、図12は本実施形態の制御装置100に備えたPDU制御部101の機能的構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
図11を参照して、1は電動機、100は制御装置である。電動機1は第1実施形態のものと同一である。
制御装置100は、第1実施形態の制御装置2と同様に、マイクロコンピュータなどを含む電子回路ユニットにより構成されたものである。そして、この制御装置100は、前記第1実施形態のものと同じパワードライブユニット(PDU)31、電流センサ33u,33v,33w、BPフィルタ34、フィルタ回路35を備える。ただし、本実施形態においては、フィルタ回路35の各容量性フィルタ41u,41v,41wの、互いに接続された一端(容量性フィルタ41u,41v,41wのY結線の中性点)と反対側の他端は、それぞれ、電流センサ33u,33v,33wとPDU31との間で通電ライン23u,23v,23wに接続されており、この点で、前記第1実施形態と相違している。従って、本実施形態では、各電流センサ33が検出する電流は、それに対応する相の電機子巻線6,7に流れる電流と同じ電流である。その電流は、換言すれば、PDU31のインバータ回路38の各相の出力電流から、その相に対応する容量性フィルタ41に流れる電流を差し引いた電流である。以降、本実施形態において各電流センサ33u,33v,33wの出力からBPフィルタ34を介して得られる各相の電流検出値を、それぞれ電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sという。
また、制御装置100は、前記第1実施形態のものと一部の制御処理が相違するPDU制御部101を備えている。このPDU制御部101には、第1実施形態のPDU制御部32と同様にトルク指令値Tr_cと、レゾルバ24によるロータ角度検出値θm_sとが入力される一方、第1実施形態における前記出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sの代わりに、前記電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sが入力される。
そして、PDU制御部101は、図12に示すように、第1実施形態のものと同一の処理を実行する電流指令決定部51、dq変換部55、電流フィードバック制御部56、3相変換部57、直流オフセット検知部66および電圧指令補正部67を備える。ただし、本実施形態においては、dq変換部55と直流オフセット検知部66とには、第1実施形態における前記出力電流検出値Isu_s,Isv_s,Isw_sの代わりに、前記電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sが入力される。また、電流フィードバック制御部56には、前記第1実施形態におけるインバータd軸電流指令値Isd_cおよびインバータq軸電流指令値Isq_cの代わりに、電流指令決定部51で決定されるd軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cがそのまま入力される。このように、本実施形態のPDU制御部101では、dq変換部55と直流オフセット検知部66と電流フィードバック制御部56とに対する一部の入力値が前記第1実施形態のPDU制御部32と相違している。そして、これ以外は、PDU制御部101の機能的構成は、第1実施形態のPDU制御部32と同じである。
本実施形態におけるPDU制御部101の処理は、所定の制御処理周期で、以下に説明する如く逐次実行される。
まず、第1実施形態と同様に、電流指令決定部51によって、トルク指令値Tr_cと、ロータ速度検出値ωm_sとに応じてd軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cが決定される。また、前記電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sと、ロータ角度検出値θm_sとがdq変換部55に入力され、該dq変換部55の処理が実行される。このとき、dq変換部55は、電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sを、ロータ角度検出値θm_sに対応するロータ3の電気角に応じて座標変換することにより、d軸電流検出値Imd_sおよびq軸電流検出値Imq_sを算出する。なお、dq変換部55で求められるd軸電流検出値Imd_sおよびq軸電流検出値Imq_sは、それぞれ電機子巻線6,7の実際のd軸電流の検出値、q軸電流の検出値としての意味を持つ。
次いで、前記d軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cと、軸電流検出値Imd_sおよびq軸電流検出値Imq_sが電流フィードバック制御部56に入力される。なお、電流フィードバック制御部56には、ロータ速度検出値ωm_sも入力される。
このとき、電流フィードバック制御部56は、第1実施形態と同様の処理を実行する。具体的には、まず、d軸電流指令値Imd_cとd軸電流検出値Imd_sとの偏差ΔImd(=Imd_c−Imd_s)が演算部58により算出されると共に、q軸電流指令値Imq_cとq軸電流検出値Imq_sとの偏差ΔImq(=Imq_c−Imq_s)が演算部59により算出される。
次いで、PI制御部60,61の処理が実行され、偏差ΔImd,ΔImqからそれぞれPI制御則によりd軸電圧の基本指令値Vmd1_cおよびq軸電圧の基本指令値Vmq1_cが算出される。さらに、非干渉制御部62の処理が実行され、d軸およびq軸間で互いに干渉し合う速度起電力を打ち消すためのd軸電圧の補正量Vmd2_cおよびq軸電圧の補正量Vmq2_cが求められる。これらのPI制御部60,61および非干渉制御部62の処理は、第1実施形態と同じである。
次いで、演算部63で、d軸電圧の基本指令値Vmd1_cに補正量Vmd2_cを加えることによって、最終的なd軸電圧指令値Vmd_cが求められると共に、演算部64で、q軸電圧の基本指令値Vmq1_cに補正量Vmq2_cを加えることによって、最終的なq軸電圧指令値Vmq_cが求められる。
このようにして電流フィードバック制御部56により決定されたd軸電圧指令値Vmd_cおよびq軸電圧指令値Vmq_cと、ロータ角度検出値θm_sとが3相変換部57に入力される。そして、該3相変換部57は、d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cを、ロータ角度検出値θm_sに対応するロータ3の電気角に応じて座標変換することにより、相電圧指令値Vmu_c,Vmv_c,Vmw_cを算出する。
さらに、3相変換部57の処理と並行して、前記電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sがそれぞれ直流オフセット検知部66の直流オフセット電流算出部65u,65v,65wに入力され、該直流オフセット電流算出部65u,65v,65wの処理が第1実施形態と同様に実行される。すなわち、各直流オフセット電流算出部65u,65v,65wにより、それぞれ、Imu_s,Imv_s,Imw_sのそれぞれの1周期分または複数周期分の平均値が、U相のImu_sの直流成分Iu_dcの値、V相のImv_sの直流成分Iv_dcの値、W相のImw_sの直流成分Iw_dcの値として算出される。
そして、このように算出された各相の直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値と、前記3相変換部57で求められた前記相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1とが、電圧指令補正部67に入力され、該電圧指令補正部67の処理が第1実施形態と同様に実行される。すなわち、各相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1に、それぞれ、Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcの値に所定のゲイン(<0)を乗じた値が加算され、これにより、Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1をそれぞれ補正してなる補正後相電圧指令値Vmu_c2,Vmv_c2,Vmw_c2が決定される。そして、このように決定された補正後相電圧指令値Vmu_c2,Vmv_c2,Vmw_c2が電圧指令補正部67からPDU31に入力される。
このとき、PDU31は入力された相電圧指令値Vmu_c,Vmv_c,Vmw_cの電圧をインバータ回路38の出力側に発生させるように、PWM制御によってインバータ回路38の各スイッチ素子36のオン・オフを制御する。これにより、基本的には、電機子巻線6,7に流れる電流の検出値としての前記d軸電流検出値Imd_sおよびq軸電流検出値Imq_sがそれぞれ前記d軸電流指令値Imd_cおよびq軸電流指令値Imq_cに一致するように、インバータ回路38の出力電流が制御される。従って、各容量性フィルタ41に流れる電流に依存することなく、電動機1の各相の電機子6,7の通電電流が、前記電流指令決定部51により決定されるd軸電流指令値Isd_cおよびq軸電流指令値Isq_cに対応する各相の電流指令値に一致するように制御されることとなる。ひいては、トルク指令値Tr_cのトルクが電動機1の出力軸1aに発生するように電動機1の運転制御がなされる。
以上説明した第4実施形態によれば、インバータ回路38の出力電流に含まれる高周波の電流成分は、各容量性フィルタ41に流れるので、電機子巻線6,7に高周波の電流成分が流れるのを防止できる。また、容量性フィルタ41と電機子巻線6,7との間での共振現象などに起因して、電機子巻線6,7を流れる電流が相間でアンバランスなオフセットを生じるような事態が発生すると、各相の電流の直流成分Iu_dc,Iv_dc,Iw_dcに応じて、それを0に近づけるように各相の相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1が補正されてインバータ回路38の出力電流が調整されるので、当該アンバランスなオフセットの発生を抑制することができる。
このため、電動機1における銅損や鉄損を低減でき、電動機1のエネルギー効率を高めることができる。また、電機子巻線6,7を流れる電流が相間でアンバランスなオフセットを生じるような事態が発生するのを抑制することができることから、ロータ3に備えた永久磁石8,10,12の減磁を防止できる。また、インバータ回路38の出力電圧を容量性フィルタ41によって降下させることなく、電動機1の電機子巻線6,7に印加できるので、電動機1が発生可能な出力の最大値が低下するのを防止することができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を図13を参照して説明する。図13は本実施形態の電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の説明において、第2実施形態または第4実施形態と同一の構成要素については、第2実施形態または第4実施形態と同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
図13を参照して、1は電動機、110は制御装置である。電動機1は前記第4実施形態のもの(第1実施形態のもの)と同一である。
制御装置110は、マイクロコンピュータなどを含む電子回路ユニットにより構成されたものであるが、その構成の一部が第4実施形態の制御装置100と相違しており、その相違点を以下に説明する。本実施形態における制御装置110は、前記第2実施形態と同様に、電動機1の電機子巻線6,7の中性点Nと、各相の通電ライン23u,23v,23wとの間の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nをそれぞれ検出する電圧センサ81u,81v,81wを備えている。各電圧センサ81u,81v,81wは、それぞれの一方の入力端がフィルタ回路35と電動機1との間で通電ライン23u,23v,23wにそれぞれ接続され、他方の入力端が電機子巻線6,7の中性点1Nに接続されている。なお、本実施形態では、各電圧センサ81u,81v,81wは、フィルタ回路35と電動機1との間で、電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nをそれぞれ検出するようにしているが、第2実施形態と同様に、PDU31とフィルタ回路35との間で、電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nをそれぞれ検出するようにしてもよい。
そして、制御装置110は、前記第4実施形態のPDU制御部101と一部の機能的構成のみが相違するPDU制御部111を備えており、このPDU制御部111に、電流センサ33u,33v,33wからBPフィルタ34を介して得られる電機子電流検出値Imu_s,Imv_s,Imw_sと、レゾルバ24によるロータ角度検出値θm_sと、電圧センサ81u,81v,81wにより検出された電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nとが入力されるようになっている。
PDU制御部111は、第4実施形態のPDU制御部101の直流オフセット検知部66および電子指令補正部67の代わりに、それぞれ前記第2実施形態で示した直流オフセット検知部84および電圧指令補正部85を備えており、この点でのみ、第4実施形態のPDU制御部101と相違している。そこで、図13では、PDU制御部111の機能的構成のうち、直流オフセット検知部84および電圧指令補正部85のみを記載し、他の機能的構成は図示を省略している。
以上説明した以外の制御装置110の構成は、前記第4実施形態と全く同一である。
本実施形態におけるPDU制御部111の処理は、所定の制御処理周期で、以下に説明する如く逐次実行される。
前記第4実施形態と全く同様に、電圧指令補正部85による補正を施す前の相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1が決定される。そして、これと並行して、前記電圧センサ81u,81v,81wから、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの検出値が直流オフセット検知部84に入力され、該直流オフセット検知部84の各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wの処理が前記第2実施形態で説明した如く実行される。
そして、各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wで算出された各相の直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値と、前記3相変換部57で求められた相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1とが、電圧指令補正部85に入力され、該電圧指令補正部85の演算部86u,86v,86wの処理が前記第2実施形態で説明した如く実行される。これにより、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcを0に近づけるように、ひいては、各相の通電ライン23u,23v,23wを流れる電流の直流成分を0に近づけるように、相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1を補正してなる補正後相電圧指令値Vmu_c2,Vmv_c2,Vmw_c2が決定される。
そして、このように電圧指令補正部85で決定された補正後相電圧指令値Vmu_c2,Vmv_c2,Vmw_c2が前記PDU31に入力され、前記第4実施形態と同様に、インバータ回路38の出力電流が制御されることとなる。
かかる本実施形態においても第4実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態を図14を参照して説明する。図14は本実施形態の電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の説明において、第3実施形態または第5実施形態と同一の構成要素については、第3実施形態または第5実施形態と同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
図14を参照して、1は電動機、120は制御装置である。電動機1は前記第4実施形態のもの(第1実施形態のもの)と同一である。
制御装置120は、マイクロコンピュータなどを含む電子回路ユニットにより構成されたものであるが、その構成の一部が第5実施形態の制御装置100と相違しており、その相違点を以下に説明する。本実施形態では、前記第3実施形態と同様に、電機子巻線6,7の中性点1Nの電位と同等の電位を生成する中性点電位生成回路88を制御装置120に備え、中性点1Nと制御装置120との接続を不要としている。中性点電位生成回路88は、前記第3実施形態のものと同一である。
そして、本実施形態では、電圧センサ81u,81v,81wのそれぞれの一方の入力端が各相の通電ライン23u,23v,23wにそれぞれ接続され、他方の入力端が前記中性点電位生成回路88の出力側に接続されている。これにより、各電圧センサ81u,81v,81wは、各相の通電ライン23u,23v,23wと中性点1Nとの間の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nを検出するようにしている。
以上説明した以外の制御装置120の構成は、前記第5実施形態と全く同一である。
本実施形態におけるPDU制御部111の処理は、所定の制御処理周期で、以下に説明する如く逐次実行される。
前記第4実施形態と全く同様に、電圧指令補正部85による補正を施す前の相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1が決定される。そして、これと並行して、前記電圧センサ81u,81v,81wから、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの検出値が直流オフセット検知部84に入力され、該直流オフセット検知部84の各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wの処理が前記第5実施形態と同様に実行される。
そして、各直流オフセット電圧算出部83u,83v,83wで算出された各相の直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcの値と、前記3相変換部57で求められた相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1とが、電圧指令補正部85に入力され、該電圧指令補正部85の演算部86u,86v,86wの処理が前記第5実施形態と同様に実行される。これにより、各相の電位差Vu_n,Vv_n,Vw_nの直流成分Vu_dc,Vv_dc,Vw_dcを0に近づけるように、ひいては、各相の通電ライン23u,23v,23wを流れる電流の直流成分を0に近づけるように、相電圧指令値Vmu_c1,Vmv_c1,Vmw_c1を補正してなる補正後相電圧指令値Vmu_c2,Vmv_c2,Vmw_c2が決定される。
そして、このように電圧指令補正部85で決定された補正後相電圧指令値Vmu_c2,Vmv_c2,Vmw_c2が前記PDU31に入力され、前記第1実施形態と同様に、インバータ回路38の出力電流が制御されることとなる。
かかる本実施形態においても第4実施形態と同等の効果を奏することができる。
なお、以上説明した各実施形態では、電機子巻線6,7を各相毎に直列に接続するようにしたが、図15に示す如く、各相の通電用接続端子42と両電機子巻線6,7に共通の中性点1Nとの間で、各相の電機子巻線6,7を並列に接続するようにしてもよい。
このようにした場合であっても、前記各実施形態と同様の制御処理によって、電動機の運転を制御できる。なお、第1〜第3実施形態において、各相の電機子巻線6,7を並列に接続するようにした場合には、前記インピーダンスZm_coは、各相の電機子巻線6,7の並列回路(または該並列回路と誘導性フィルタとの直列回路)のインピーダンスとなり、その値は、一般には、第1〜第3実施形態の場合と異なるものとなる。
また、前記各実施形態では、3個の容量性フィルタ41u,41v,41wをY結線で通電ライン23u,23v,23wに接続したが、所謂Δ結線で通電ライン23u,23v,23wに接続するようにしてもよい。この場合において、前記第1〜第3実施形態において、容量性フィルタを通電ライン23u,23v,23wにΔ結線で接続した場合には、前記インバータ出力電流ベクトル指令値Is_co_cを算出するために必要なインピーダンスZe_coは、Δ結線の各容量性フィルタのインピーダンスから、等価変換により求めるようにすればよい。
また、前記各実施形態では、ロータ3の磁極配列をハルバッハ型の磁極配列にしたが、必ずしもそのようにする必要はない。例えば、ロータ3に備える永久磁石を前記主永久磁石8のみにしてもよい。
1…電動機、1N…中性点、2,80,87,100,110,120…制御装置、3…ロータ、4,5…ステータ、6,7(6u,6v,6w,7u,7v,7w)…電機子巻線、8,10,12…永久磁石、23(23u,23v,23w)…通電ライン、33(33u,33v,33w)…電流センサ、38…インバータ回路、41(41u,41v,41w)…容量性フィルタ、42(42u,42v,42w)…通電用接続端子、51…電流指令決定部(目標電機子電流決定手段)、53…インバータ出力電流指令算出部(インバータ目標出力電流決定手段)、54…dq変換部(インバータ目標出力電流決定手段)、56…電流フィードバック制御部(インバータ制御手段)、66,84…直流オフセット検知部(オフセット検知信号出力手段)、67,85…電圧指令補正部(直流オフセット電流補償手段)。