JP4552390B2 - 有機el装置の製造方法 - Google Patents

有機el装置の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4552390B2
JP4552390B2 JP2003172150A JP2003172150A JP4552390B2 JP 4552390 B2 JP4552390 B2 JP 4552390B2 JP 2003172150 A JP2003172150 A JP 2003172150A JP 2003172150 A JP2003172150 A JP 2003172150A JP 4552390 B2 JP4552390 B2 JP 4552390B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
organic
electrode
light emitting
gas barrier
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003172150A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005011573A (ja
Inventor
建二 林
康史 柄沢
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2003172150A priority Critical patent/JP4552390B2/ja
Publication of JP2005011573A publication Critical patent/JP2005011573A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4552390B2 publication Critical patent/JP4552390B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)表示装置などの電気光学装置は、基板上に陽極、正孔注入層、EL特性を持つ有機電気光学材料からなる発光層、及び電子注入層などを含む陰極等が積層された素子構造のものが知られている。このような有機EL装置を構成する有機EL素子では、発光層や電子注入層を形成する材料が大気中の酸素や水分の侵入による変質により、発光素子として寿命が短くなるといった課題があった。
【0003】
そのため、外部環境から酸素や水分の浸透を防止するため、通常、陰極の上を覆うようにガラス板や金属板で覆い、樹脂等のシール材で貼り合せる封止構造を用いているが、シール材も酸素や水分の透過が多く、素子に到達しないように高速で吸湿するゲッター材などを空間を設けて設置する必要があった。さらに、発光材料や画素を隔離する隔壁材料などの有機材料は、外部環境や通電時の発熱による高温環境下での体積膨張が大きく、発生した応力が第2の電極などの無機材料との界面に発生して剥離することで水分などが侵入し、結果として発光素子の耐久性が低下してしまうのである。
【0004】
本発明者は、このような酸素や水分による発光素子の寿命低下について検討した結果、有機材料である発光層及び隔壁と、無機材料である陰極との間の密着性を向上させることで、高温環境下において発生する剥離を防ぎ、さらに剥離がもたらす応力でガスバリア層が損傷するのを防ぐことにより、発光層や電子注入層に水分や酸素が入り込まずに、発光素子の耐久性を向上させる知見を得た。
【0005】
有機EL装置において、特に陰極と発光層との間の密着性を高めるための技術としては、例えばカソード電極(陰極)に電子注入性の高い電子注入層と金属密着層とを積層して設け、この金属密着層を有機EL層(発光層)に接合するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、単に酸素や水分の透過を防止して耐久性の向上を図ったものとしては、ホール輸送層、電子輸送層、カソード電極を覆ってヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンなどからなる有機保護層と金属薄膜とを設けたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−162653号公報
【特許文献2】
特開平9−270296号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の金属密着層を設けた技術では、基本的にこの密着層は金属であり無機材料であることから、有機材料である発光層との密着性が十分良好にならず、したがって陰極と発光層との間の密着性が十分に得られないといった問題があった。
また、前述したように単に酸素や水分の透過を防止して耐久性の向上を図ったものは知られているものの、前記有機保護膜は無機材料と有機材料との間に設けられたものではない。したがって、有機EL装置においては、性質の異なる無機材料と有機材料との間の密着性向上を図る技術は、未だ提供されていないのが実状である。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、無機材料からなる陰極側と有機材料からなる発光素側との間を良好に密着させ、これにより高温環境下においても界面の剥離を起こすことなく、外部環境下からの酸素や水分の侵入を防止して耐久性を向上させた、有機EL装置とその製造方法、及びこれを備えた電子機器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の有機EL装置は、基体上に第1の電極、有機材料からなり少なくとも発光層を有する機能層、第2の電極がこの順に配置されてなる有機EL装置において、前記発光層が有機材料からなる隔壁に囲まれた画素領域に設けられ、前記隔壁及び/又は前記機能層の表面上に、有機珪素化合物又は有機チタン化合物からなる密着層が設けられ、前記密着層の表面上に無機材料からなる前記第2の電極が設けられていることを特徴としている。
この有機EL装置によれば、有機材料からなる前記隔壁及び/又は前記機能層と、無機材料からなる前記第2の電極との間に有機珪素化合物又は有機チタン化合物からなる密着層が設けられているので、この密着層を構成する有機珪素化合物又は有機チタン化合物が、珪素(Si)原子やチタン(Ti)原子を持つ無機質の基と炭素(C)原子を持つ有機質の基とを備えていることにより、前記隔壁及び/又は前記機能層と前記第2の電極との間が前記密着層を介すことで、体積膨張が起きる高温環境下においても剥離することがなくなる。
よって、これらの界面の剥離で生じる応力によって第2の電極やガスバリア層の損傷が起こらなくなり、酸素や水分の侵入透過が防止されることにより、特に機能層における発光層の劣化が防止され、耐久性の向上が得られる。
【0010】
また、前記有機EL装置においては、前記密着層が、前記隔壁及び前記機能層が露出しないように、これらよりも広い範囲で被覆されるように設けられているのが好ましく、さらに、前記密着層及び第2の電極が露出しないようにさらに広い範囲でガスバリア層が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、ガスバリア層により表面及び側面においても密着層及び第2の電極を覆うことで、酸素や水分で変質しやすい前記機能層や前記第2の電極を表面だけでなく側面からも保護することができるため、酸素や水分の侵入に起因する発光素子の劣化がより確実に防止される。
【0011】
なお、この有機EL装置においては、前記ガスバリア層が、無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物のいずれかからなる絶縁性の層であるのが好ましい。
このようにすれば、特に第2の電極が無機材料からなっていることにより、同じく無機材料からなるガスバリア層が第2の電極に対して良好に密着し、欠陥のない緻密な層となり、したがってこのガスバリア層の酸素や水分に対するバリア性がより良好なものとなる。
【0012】
また、前記ガスバリア層が、珪素化合物であってもよい。
このように、ガスバリア層を例えば珪素窒化物や珪素酸窒化物、珪素酸化物などの無機材料である珪素化合物によって形成すれば、やはり無機材料からなる第2の電極に対してガスバリア層が良好に密着し、欠陥のない緻密な層となることにより、ガスバリア層の酸素や水分に対するバリア性がより良好なものとなる。
また、これらの珪素化合物は透明性を有するため、第2の電極を透明なものを選択すれば、封止面から発光を取り出すトップエミッション構造にすることができる。
【0013】
また、前記ガスバリア層が、チタン化合物と珪素化合物とを積層してなる多層膜であってもよい。
チタン化合物として、特に酸化チタンや酸窒化チタン、チタン酸ストロンチウムのように紫外線吸収性を有し、かつ光触媒活性をも有するものを用いることにより、このチタン化合物からなる層が紫外線吸収層として機能し、これにより屋外での使用などの際の耐光性が向上する。また、このチタン化合物層の上に珪素化合物層を形成する際、この形成で発生した紫外線等の光によってチタン化合物層表面が活性化され、その光触媒活性が発揮される。すると、例えばこのチタン化合物層表面に有機物等の不純物が付着しても、この不純物が前記の光触媒の作用によって分解除去され、これによりチタン化合物層の上に珪素化合物が良好に積層する。
【0014】
また、前記有機EL装置においては、前記ガスバリア層の上に保護層が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、ガスバリア層で覆われた第2の電極や機能層を保護層でより確実に保護することができる。
【0015】
なお、この有機EL装置において前記保護層は、機械的衝撃に対する緩衝機能を有しているか、あるいは表面保護機能を有しているのが好ましい。
緩衝機能を有していれば、機械的な外部からの衝撃に対して前記第2の電極や機能層、ガスバリア層を保護することができる。また、表面保護機能として、例えば耐圧性や耐摩耗性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していれば、機能層(例えば発光層)や第2の電極がこの保護層によって保護され、したがって発光素子の耐久性が向上する。さらに、第2の電極及びガスバリア層及び保護層が透明であれば、保護層が光反射防止機能を有することで発光特性が向上する。
【0016】
また、前記有機EL装置においては、前記密着層となる前記有機珪素化合物が、窒素原子を有するアミノシランまたはシラザンであるのが好ましい。
このようにアミノシランまたはシラザンを用いれば、反応性の高いアミノ基やシラザン基などの窒素原子を含む官能基が有機材料表面に対して極めて接着しやすいため、有機材料からなる前記隔壁及び/又は前記機能層と無機材料からなる前記第2の電極との界面が高温環境下でも良好に接着するようになる。
【0017】
また、前記有機EL装置においては、前記機能層がキャリア注入または輸送効果を有する有機キャリア注入/輸送層を少なくとも1層以上備えていてもよく、前記第2の電極が、前記密着層側に電子注入効果を有する無機電子注入層を備えていてもよい。
このようにすれば、発光層に対するキャリア注入性が高まり、発光特性が向上する。また、この電子注入層が無機であることにより、この電子注入性が備えられていない第2の電極の場合と同様に、密着層との間の密着が良好となる。
【0018】
本発明の有機EL装置の製造方法は、基体上に第1の電極と、有機材料からなり少なくとも有機発光層を有する機能層と、第2の電極とをこの順に形成する有機EL装置の製造方法において、前記発光層を有機材料からなる隔壁に囲まれた画素領域に設ける工程と、前記隔壁及び/又は前記機能層の表面上に、有機珪素化合物又は有機チタン化合物からなる密着層を設ける工程と、前記密着層の表面上に無機材料からなる前記第2の電極を設ける工程と、を備えたことを特徴としている。
この有機EL装置の製造方法によれば、有機材料からなる前記隔壁及び/又は前記機能層と、無機材料からなる前記第2の電極との間に有機珪素化合物又は有機チタン化合物からなる密着層を設けるようにしたので、この密着層を構成する有機珪素化合物又は有機チタン化合物が無機性の基と有機性の基とを備えていることにより、前記隔壁及び/又は前記機能層と前記第2の電極との間が前記密着層を介すことで十分良好に密着する。
よって、これらの間への酸素や水分の透過を防止することにより、特に機能層における発光層の劣化を防止することができ、したがって得られる有機EL装置の耐久性向上を図ることができる。
【0019】
また、前記有機EL装置の製造方法においては、前記第2の電極上にガスバリア層を設ける工程を備えることが好ましい。
このようにすれば、第2の電極に電子注入性の高い吸湿変化しやすい材料が含まれていても耐久性の低下を防ぐことが出来る。
【0020】
また、前記密着層及び前記第2の電極及び前記ガスバリア層が、気相成長法により連続的に形成されるのが好ましい。
このようにすれば、例えば同じ気相成長法で各層を形成することなどにより、生産性の向上を図ることができる。
【0021】
本発明の電子機器は、前記の有機EL装置あるいは前記の製造方法で得られた有機EL装置を備えたことを特徴としている。
この電子機器によれば、前述したように機能層における発光層の劣化が防止され、これにより耐久性向上が図られた有機EL装置を備えているので、この有機EL装置を表示部とすることにより、特に表示部の耐久性に優れた良好なものとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施形態によって詳しく説明する。
まず、本発明の一実施形態としての有機EL装置の、配線構造を図1に参照して説明する。
図1に示す有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下ではTFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。
【0023】
この有機EL装置1は、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101…と信号線102…の各交点付近に、画素領域X…が設けられている。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0024】
さらに、画素領域X各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(第1の電極)23と、この画素電極23と陰極(第2の電極)50との間に挟み込まれた機能層110とが設けられている。画素電極23と陰極50と機能層110により、発光素子(有機EL素子)が構成されている。
【0025】
この有機EL装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極23に電流が流れ、さらに機能層110を介して陰極50に電流が流れる。機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0026】
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な構成を図2〜図5に参照して説明する。ここで図3は図2中A−Bの断面図、図4は図2中C−Dの断面図、図5は図3中の領域4の拡大詳細図を示す。
本実施形態の有機EL装置1は、図2に示すように電気絶縁性を備えた基板20と、スイッチング用TFT(図示せず)に接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素電極域(図示せず)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線(図示せず)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを具備して構成されたアクティブマトリクス型のものである。しかし、陰極50をストライプ状にパターン化したパッシブマトリックス型でも、本実施形態に適用は可能である。なお、本発明においては、基板20と後述するようにこれの上に形成されるスイッチング用TFTや各種回路、及び層間絶縁膜などを含めて、基体と称している。(図3、4中では符号200で示している。)
【0027】
画素部3は、中央部分の実表示領域4(図2中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向およびC−D方向にそれぞれ離間してマトリックス状に配置されている。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80、80が配置されている。これら走査線駆動回路80、80は、ダミー領域5の下層側に配置されたものである。
【0028】
さらに、実表示領域4の図2中上方側には、検査回路90が配置されている。
この検査回路90は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるようになっている。なお、この検査回路90も、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
【0029】
走査線駆動回路80および検査回路90は、その駆動電圧が、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)および駆動電圧導通部340(図4参照)を介して、印加されるよう構成されている。また、これら走査線駆動回路80および検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、この有機EL装置1の作動制御を行う所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)および駆動電圧導通部350(図4参照)を介して、送信および印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0030】
また、この有機EL装置1は、図3、図4に示すように基体200上に、第1の電極(画素電極23)と発光層60を有した機能層と第2の電極(陰極50)とからなる発光素子(有機EL素子)を多数形成したもので、特に機能層の発光層60と陰極50との間に密着層65を設けたものである。また、この有機EL装置1には、前記発光素子を覆ってガスバリア層30が形成されている。
【0031】
基体200を構成する基板20としては、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合、この基板20の対向側であるガスバリア層30側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0032】
また、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置の場合には、基板20側から発光光を取り出す構成であるので、基板20としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。なお、本実施形態では、ガスバリア層30側から発光光を取り出すトップエミッション型とし、よって基板20としては前記した不透明のもの、例えば不透明のプラスチックフィルムなどが用いられる。
【0033】
また、基板20上には、画素電極23を駆動するための駆動用TFT123などを含む回路部11が形成されており、その上に発光素子(有機EL素子)が多数設けられている。発光素子は、図5に示すように、陽極として機能する画素電極(第1の電極)23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、電気光学物質の一つである有機EL物質を備える発光層60と、前記密着層65と、陰極(第2の電極)50とがこの順に形成されて構成されたものである。また、陰極50には、その内面側、すなわち密着層65側に、電子注入効果を有する無機材料製の電子注入層67が設けられている。
このような構成のもとに、発光素子はその発光層60において、正孔輸送層70から注入された正孔と、陰極50から電子注入層67を介して注入された電子とが結合することにより、発光を生じる。
【0034】
なお、本実施形態では、機能層を、後述するように有機材料からなる正孔輸送層70と、同じく有機材料からなる発光層60とから構成している。ただし、本発明の機能層はこれに限定されることなく、例えば正孔注入層や電子注入層、電子輸送層などのキャリア注入層またはキャリア輸送層をさらに設けてもよく、また、正孔阻止層(ホールブロッキング層)や電子阻止層(エレクトロン阻止層)を設けてもよい。
【0035】
画素電極23は、本実施形態ではトップエミッション型であることから透明である必要がなく、したがって適宜な導電材料によって形成されている。例えば、ITO電極を用い、これの裏面(発光層60と反対側の面)に反射層としてアルミニウムやチタンを積層した構造とすることができる。なお、ボトムエミッション型とする場合には、当然ながら透明である必要であり、その場合にはITO等の透明導電性材料が好適に用いられる。
【0036】
正孔輸送層70の形成材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)分散液などが用いられる。
【0037】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、前記の高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。
【0038】
また、本実施形態において正孔輸送層70と発光層60とは、図3〜図5に示すように基体200上にて格子状に形成された親液性制御層25と、本発明における隔壁となる有機バンク層221とによって囲まれて配置され、これにより囲まれた正孔輸送層70および発光層60は単一の発光素子(有機EL素子)を構成する素子層となっている。なお、格子状に形成された親液性制御層25および有機バンク層221にあって、特に最外周を形成する部分、すなわち発光層60の最外周位置のものの外側部を覆った状態でこれを囲む部分が、囲み部材201となっている。
【0039】
ここで、囲み部材201については、特にその上部を形成する有機バンク層221における、外側部を形成する面201aの基体200表面に対する角度θが、110度以上となっている。このような角度としたのは、この上に形成する密着層65、電子注入層67、陰極50、さらにはガスバリア層30のステップカバレージ性を良好にし、外側部上での密着層65、電子注入層67、陰極、ガスバリア層30の連続性を確保するためである。
【0040】
密着層65は、前記発光層60および有機バンク層221を覆ってこれらの表面上に形成されたもので、有機珪素化合物又は有機チタン化合物からなるものである。具体的には、有機珪素化合物としてメチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のSi−O−R(R:アルキル)基を有するアルコキシシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン(Si−N)基を有するシラザン化合物、また、有機チタン化合物としてテトライソプロポキシチタン、メチルトリエトキシチタン等のTi−O−R基を有するチタンアルコキシド化合物が好適に用いられる。特に、有機珪素化合物の中でも、窒素原子を有するアミノ基(−NH、−NH2など)やシラザン基などの窒素原子を有するアミノシラン及びシラザンが好適とされている。
このような材料からなる密着層65は、その厚さが、0.1〜10nm程度とされ、特に薄い方が、陰極50側からの電子を通し易くなるため好ましい。すなわち、この密着層65は、少なくとも単分子からなる層が発光層60および有機バンク層221の表面に設けられていればよく、その場合に、この密着層65は完全に連続しておらず、例えば網目状のようにミクロ的に抜けている部分があってもよい。
【0041】
このように完全には連続していなくとも、各分子が有機性の基と無機性の基を有していることから、密着層65はその有機性の基が発光層60および有機バンク層221の表面に良好に密着し、無機性の基が電子注入層67に良好に密着するようになる。したがって、この密着層65は、発光層60および有機バンク層221の表面上に電子注入層67を良好に密着させるものとなる。なお、前記材料からなる密着層65は、後述する成膜時の加熱処理などによって一部分解し、材料の分子形態とは異なる分子形態となっていることも考えられる。しかし、その場合にも、珪素(Si)原子及びチタン(Ti)原子を有する無機質の基と炭素(C)原子を有する有機性の基が混在した状態で密着層65を形成していることから、この密着層65は、有機材料層からなる発光層60および有機バンク層221と、無機材料からなる電子注入層67とを良好に密着させる機能を有したものとなっている。
また、この密着層65は、図3〜図5に示したように本実施形態では実表示領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されたもので、前記発光層60と有機バンク層221及び囲み部材201の上面、さらには囲み部材201の外側部を形成する面201aを全て覆った状態で基体200上に形成されたものとなっている。
【0042】
電子注入層67は、前記密着層65上に形成されたもので、少なくともその下側の発光層60を覆って形成されたものである。この電子注入層67は、前述したように無機材料からなるもので、具体的には、リチウムやカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、バリウムなどの1族及び2族金属原子からなる低仕事関数の金属やこれらの合金、また、フッ化リチウム(LiF)や酸化ナトリウムなどの金属フッ化物や金属酸化物などによって形成されている。このような材料からなる電子注入層67は、その厚さが0.1〜50nm程度とされる。
【0043】
陰極50は、本実施形態では前記密着層65および電子注入層67が露出しないように、これらよりも広い範囲を被覆して形成されたものである。ただし、本発明はこれに限定されることなく、前記密着層65および電子注入層67の端部が露出するように、これらよりも狭い範囲を被覆して形成されたものであってもよい。この陰極50は、無機材料からなるもので、アルミニウムや銀、銅などの金属やこれらの合金、酸化亜鉛や酸化スズ、酸化チタン、酸化タングステンなどの金属酸化物、窒化チタンなどの金属窒化物または金属酸窒化物、さらにはITO(インジウムスズ酸化物)やインジウムセリウム酸化物等の複合酸化物などによって形成されている。また、これら材料が、単層でなく多層に成膜されて構成されたものであってもよい。このような材料からなる陰極50は、その厚さが5〜300nm程度とされる。
【0044】
なお、本実施形態の有機EL装置1はトップエミッション型であることから、この陰極50は光透過性を有している必要があり、したがって材料としては透明導電性のITO等が好適に用いられる。また、CaやAlなどの他の材料を用いる場合には、十分に透明となるような厚さで形成される。
また、本実施形態では、スイッチング素子として薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置であるため、この陰極50及び前記電子注入層67は、画素電極23とは異なり単純にエリア領域を覆う形態の膜となっている。
【0045】
また、この陰極50は、図4に示すように前記囲み部材201の面201aの外側で基体200の外周部に形成された陰極用配線202に接続されている。この陰極用配線202にはフレキシブル基板203が接続されており、これによって陰極50は、陰極用配線202を介してフレキシブル基板203上の図示しない駆動IC(駆動回路)に接続されたものとなっている。
【0046】
このような陰極50の上には、発光層60及び有機バンク層221及び囲み部材201が露出しないように広い範囲で被覆している密着層65と陰極50が、基体200上で露出しないようにさらに広い範囲で被覆してガスバリア層30が設けられている。このガスバリア層30は、その内側に酸素や水分が浸入するのを防止するためのもので、これにより陰極50や発光層60への酸素や水分の浸入を防止し、酸素や水分による陰極50や発光層60の変質等を抑えるようにしたものである。
【0047】
このガスバリア層30は、例えば無機化合物からなるもので、好ましくは珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物、珪素酸化物などによって形成されている。ただし、珪素化合物以外でも、例えばアルミナや酸化タンタルなどからなっていてもよい。このようにガスバリア層30が無機化合物で形成されていれば、特に陰極50がITOからなっていることにより、ガスバリア層30とこの陰極50との密着性がよくなり、したがってガスバリア層30が欠陥のない緻密な層となって酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。
【0048】
また、このガスバリア層30としては、例えば前記の珪素化合物の範囲で異なる層を積層した構造としてもよく、具体的には、陰極50側から珪素窒化物、珪素酸窒化物の順に形成し、あるいは陰極50側から珪素酸窒化物、珪素酸化物の順に形成してガスバリア層30を構成するのが好ましい。また、このような組み合わせ以外にも、組成比の異なる珪素酸窒化物を2層以上積層した場合に、陰極50側の層の酸素濃度がこれより外側の層の酸素濃度より低くなるように構成するのが好ましい。
このようにすれば、陰極50側がその反対側より酸素濃度が低くなることから、ガスバリア層30中の酸素が陰極50を通ってその内側の発光層60に到り、発光層60を劣化させてしまうといったことを防止することができ、これにより発光層60の長寿命化を図ることができる。
【0049】
また、ガスバリア層30としては、積層構造とすることなく、その組成を不均一にして特にその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよく、その場合にも、陰極50側の酸素濃度が外側の酸素濃度より低くなるように構成するのが、前述した理由により好ましい。
また、このようなガスバリア層30の厚さとしては、30nm以上、500nm以下であるのが好ましい。30nm未満であると、膜の欠陥や膜厚のバラツキなどによって部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、500nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
【0050】
また、このガスバリア層30としては、下地層としてチタン化合物層を形成し、これの上に前記の珪素化合物からなる層を積層させた多層膜としてもよい。
チタン化合物としては、特に酸化チタンや酸窒化チタン、チタン酸ストロンチウムのように紫外線吸収性を有し、かつ光触媒活性をも有するもの好適に用いられる。このようなチタン化合物からなる層は、紫外線吸収層として機能することにより、有機EL装置1を屋外で使用したときなどにその耐光性を向上させるものとなる。また、前記したようにこのチタン化合物層の上に珪素化合物層を形成した際、この形成で発生した紫外線等の光によってチタン化合物層の表面が活性化し、その光触媒活性を発揮する。すると、例えばこのチタン化合物層表面に有機物等の不純物が付着しても、この不純物が前記の光触媒の作用によって分解除去され、これによりチタン化合物層の上に珪素化合物が良好に積層するようになる。
なお、本実施形態ではトップエミッション型としていることから、ガスバリア層30は透光性を有する必要があり、したがってその材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
【0051】
ガスバリア層30の外側には、これの上を覆って保護部204が設けられている。この保護部204は、本実施形態では硬度の異なる二つの保護層、すなわちガスバリア層30側に設けられた緩衝層205と、この上に設けられた表面保護層206とから構成されている。なお、これら二つの保護層は、いずれも本発明における保護層を構成するものとなる。
緩衝層205は、前記ガスバリア層30に密着し、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有するもので、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系、シリコーン系、フッ素樹脂系などの、柔軟でガラス転移点が低い樹脂材料からなる接着剤によって形成されたものである。また、この緩衝層205は、表面保護層206より硬度が低く形成されたものである。
【0052】
このような緩衝層205としては、その硬度を低くするため、例えば発泡材料を用いることなどによって微細な空孔を有した多孔質体に形成してもよい。このように多孔質体に形成すれば、クッション性が高められて緩衝機能が一層高くなり、また、この緩衝層205を透過する光の取出し効率、すなわち光透過率も高くなり、トップエミッション型にした場合に有利になる。
なお、緩衝層205を形成するための接着剤には、前記有機珪素化合物を1%程度添加しておくのが好ましく、このようにすれば、形成される緩衝層205とガスバリア層30との密着性がより良好になり、したがって機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。また、特にガスバリア層30が珪素化合物で形成されている場合などでは、有機珪素化合物によってこのガスバリア層30の欠陥を修復することができ、したがってガスバリア層30のガスバリア性を高めることができる。
【0053】
表面保護層206は、緩衝層205上に設けられることにより、保護部204の表面側を構成するものであり、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性、レンズ性などの機能の少なくとも一つを有してなる層である。具体的には、ガラスや高分子層(プラスチックフィルム)、DLC(ダイアモンドライクカーボン)層、酸化珪素等の無機酸化物層などによって形成されるもので、前述したように緩衝層205より硬度が高い材料で形成され、あるいは硬度が高くなるよう形成されたことにより、緩衝層205より硬度が高いものとされたものである。なお、ここでいう硬度とは、押し込み硬さとして、一般にプラスチック材料に対して適用されるロックウェル硬さや、反発硬さとして、プラスチック材料やゴム材料などに適用されるショアー硬さ、さらには引っ掻き硬さとして鉱物に適用されるモース硬さなど、種々の試験法による硬さによって規定されるが、本発明においては特に押し込み硬さや反発硬さによって規定される硬さとするのが好ましい。
また、この例の有機EL装置においては、トップエミッション型にする場合に前記表面保護層206、緩衝層205を共に透光性のものにする必要があるが、ボトムエミッション型とする場合にはその必要はない。
【0054】
前記の発光素子の下方には、図5に示したように回路部11が設けられている。この回路部11は、基板20上に形成されて基体200を構成するものである。すなわち、基板20の表面にはSiO2 を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2 および/またはSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0055】
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線101の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2 を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0056】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、前述した電源線103(図1参照、図5においてはソース電極243の位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0057】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁層284によって覆われている。この第2層間絶縁層284は、アクリル系の絶縁膜以外の材料、例えば、SiN、SiOなどを用いることもできる。そして、ITOからなる画素電極23が、この第2層間絶縁層284の表面上に形成されるとともに、該第2層間絶縁層284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0058】
なお、走査線駆動回路80および検査回路90に含まれるTFT(駆動回路用TFT)、すなわち、例えばこれらの駆動回路のうち、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型のTFTは、画素電極23と接続されていない点を除いて前記駆動用TFT123と同様の構造とされている。
【0059】
画素電極23が形成された第2層間絶縁層284の表面には、画素電極23と、前記した親液性制御層25及び有機バンク層221とが設けられている。親液性制御層25は、例えばSiOなどの親液性材料を主体とするものであり、有機バンク層221は、アクリル樹脂やポリイミド、COC(環状オレフィン共重合樹脂)などからなるものである。そして、画素電極23の上には、親液性制御層25に設けられた開口部25a、および有機バンク221に囲まれてなる開口部221aの内部に、正孔輸送層70と発光層60とがこの順に積層されている。なお、本実施形態における親液性制御層25の「親液性」とは、少なくとも有機バンク層221を構成するアクリル、ポリイミドなどの材料と比べて親液性が高いことを意味するものとする。
以上に説明した基板20上の第2層間絶縁層284までの層が、回路部11を構成するものとなっている。
【0060】
ここで、本実施形態の有機EL装置1は、カラー表示を行うべく、各発光層60が、その発光波長帯域が光の三原色にそれぞれ対応して形成されている。例えば、発光層60として、発光波長帯域が赤色に対応した赤色用発光層60R、緑色に対応した緑色用発光層60G、青色に対応した青色用有機EL層60Bとをそれぞれに対応する表示領域R、G、Bに設け、これら表示領域R、G、Bをもってカラー表示を行う1画素が構成されている。また、各色表示領域の境界には、金属クロムをスパッタリングなどにて成膜した図示略のBM(ブラックマトリクス)が、例えば有機バンク層221と親液性化制御層25との間に形成されている。
【0061】
次に、本実施形態の有機EL装置1の製造方法の一例を、図6〜図10を参照して説明する。なお、本実施形態においては、有機EL装置1がトップエミッション型である場合について説明する。また、図6〜図10に示す各断面図は、図2中のA−B線の断面図に対応した図である。
まず、図6(a)に示すように、基板20の表面に、下地保護層281を形成する。次に、下地保護層281上に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層501を形成した後、レーザアニール法又は急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層とする。
【0062】
次いで、図6(b)に示すように、ポリシリコン層をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、島状のシリコン層241、251および261を形成する。これらのうちシリコン層241は、表示領域内に形成され、画素電極23に接続される駆動用TFT123を構成するものであり、シリコン層251、261は、走査線駆動回路80に含まれるPチャネル型およびNチャネル型のTFT(駆動回路用TFT)をそれぞれ構成するものである。
【0063】
次に、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、シリコン層241、251および261、下地保護層281の全面に厚さが約30nm〜200nmのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁層282を形成する。ここで、熱酸化法を利用してゲート絶縁層282を形成する際には、シリコン層241、251および261の結晶化も行い、これらのシリコン層をポリシリコン層とすることができる。
【0064】
また、シリコン層241、251および261にチャネルドープを行う場合には、例えば、このタイミングで約1×1012/cmのドーズ量でボロンイオンを打ち込む。その結果、シリコン層241、251および261は、不純物濃度(活性化アニール後の不純物にて算出)が約1×1017/cmの低濃度P型のシリコン層となる。
【0065】
次に、Pチャネル型TFT、Nチャネル型TFTのチャネル層の一部にイオン注入選択マスク502を形成し、この状態でリンイオンを約1×1015/cmのドーズ量でイオン注入する。その結果、図6(c)に示すように、シリコン層241及び261中に高濃度ソース領域241Sおよび261S並びに高濃度ドレイン領域241Dおよび261Dが形成される。
【0066】
次に、ゲート絶縁層282の表面全体に、ドープドシリコンやシリサイド膜、あるいはアルミニウム膜やクロム膜、タンタル膜という金属膜からなるゲート電極形成用導電層を形成する。この導電層の厚さは概ね500nm程度である。その後、フォトリソ法により、図6(d)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用TFTを形成するゲート電極252、画素用TFTを形成するゲート電極242、Nチャネル型の駆動回路用TFTを形成するゲート電極262を形成する。
また、駆動制御信号導通部320(350)、陰極電源配線の第1層121も同時に形成する。なお、この場合、駆動制御信号導通部320(350)はダミー領域5に配設するものとされている。
【0067】
続いて、ゲート電極242,252および262をマスクとして用い、シリコン層241,251および261に対してリンイオンを約4×1013/cmのドーズ量でイオン注入する。その結果、ゲート電極242,252および262に対してセルフアライン的に低濃度不純物が導入され、図6(d)に示すように、シリコン層241および261中に低濃度ソース領域241bおよび261b、並びに低濃度ドレイン領域241cおよび261cが形成される。また、シリコン層251中に低濃度不純物領域251Sおよび251Dが形成される。
【0068】
次に、図7(e)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用TFT以外の部分を覆うイオン注入選択マスク503を形成する。このイオン注入選択マスク503を用いて、シリコン層251に対してボロンイオンを約1.5×1015/cmのドーズ量でイオン注入する。結果として、Pチャネル型駆動回路用TFTを構成するゲート電極252もマスクとして機能するため、シリコン層251中にセルフアライン的に高濃度不純物がドープされる。したがって、低濃度不純物領域251Sおよび251Dはカウンタードープされ、P型チャネル型の駆動回路用TFTのソース領域およびドレイン領域となる。
【0069】
次いで、図7(f)に示すように、基板20の全面にわたって第1層間絶縁層283を形成するとともに、フォトリソグラフィ法を用いて該第1層間絶縁層283及びゲート絶縁層282をパターニングすることにより、各TFTのソース電極およびドレイン電極に対応する位置にコンタクトホールCを形成する。
【0070】
次に、図7(g)に示すように、第1層間絶縁層283を覆うように、アルミニウム、クロム、タンタルなどの金属からなる導電層504を形成する。この導電層504の厚さは概ね200nmないし800nm程度である。この後、導電層504のうち、各TFTのソース電極およびドレイン電極が形成されるべき領域240a、駆動電圧導通部310(340)が形成されるべき領域310a、陰極電源配線の第2層が形成されるべき領域122aを覆うようにパターニング用マスク505を形成するとともに、該導電層504をエッチングして、図8(h)に示すソース電極243、253、263、ドレイン電極244、254、264を形成する。
【0071】
次いで、図8(i)に示すように、これらが形成された第1層間絶縁層283を覆う第2層間絶縁層284を、例えばアクリル系樹脂などの高分子材料によって形成する。この第2層間絶縁層284は、約1〜2μm程度の厚さに形成されることが望ましい。なお、SiN、SiOにより第2層間絶縁膜を形成することも可能であり、SiNの膜厚としては200nm、SiOの膜厚としては800nmに形成することが望ましい。
【0072】
次いで、図8(j)に示すように、第2層間絶縁層284のうち、駆動用TFTのドレイン電極244に対応する部分をエッチングにより除去してコンタクトホール23aを形成する。
その後、基板20の全面を覆うように画素電極23となる導電膜を形成する。
そして、この導電膜をパターニングすることにより、図9(k)に示すように、第2層間絶縁層284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成すると同時に、ダミー領域のダミーパターン26も形成する、なお、図3、4では、これら画素電極23、ダミーパターン26を総称して画素電極23としている。
【0073】
ダミーパターン26は、第2層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされている。すなわち、ダミーパターン26は、島状に配置され、実表示領域に形成されている画素電極23と同一の形状を有している。もちろん、表示領域に形成されている画素電極23の形状と異なる構造であってもよい。なお、この場合、ダミーパターン26は少なくとも前記駆動電圧導通部310(340)の上方に位置するものも含むものとする。
【0074】
次いで、図9(l)に示すように、画素電極23、ダミーパターン26上、および第2層間絶縁膜上に絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25a(図3も参照)において画素電極23からの正孔移動が可能とされている。逆に、開口部25aを設けないダミーパターン26においては、絶縁層(親液性制御層)25が正孔移動遮蔽層となって正孔移動が生じないものとされている。続いて、親液性制御層25において、異なる2つの画素電極23の間に位置して形成された凹状部にBM(図示せず)を形成する。具体的には、親液性制御層25の前記凹状部に対して、金属クロムを用いスパッタリング法にて成膜する。
【0075】
次いで、図9(m)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは前記BMを覆うように有機バンク層221を形成する。具体的な有機バンク層の形成方法としては、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機質層を形成する。なお、有機質層の構成材料は、後述するインクの溶媒に溶解せず、しかもエッチングなどによってパターニングし易いものであればどのようなものでもよい。
【0076】
続いて、有機質層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機質層にバンク開口部221aを形成することにより、開口部221aに壁面を有した有機バンク層221を形成する。ここで、この有機バンク層221にあたっては、特にその最外周を形成する部分、すなわち前述した本発明における囲み部材201の外側部を形成する面201aについて、その基体200表面に対する角度θを110度以上となるように形成するのが好ましい。このような角度に形成することにより、この上に形成する陰極50、さらにはガスバリア層30のステップカバレージ性を良好にすることができる。
なお、この場合、有機バンク層221は、少なくとも前記駆動制御信号導通部320の上方に位置するものを含むものとする。
【0077】
次いで、有機バンク層221の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成する。具体的には、該プラズマ処理を、予備加熱工程と、有機バンク層221の上面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、親液性制御層25の上面をそれぞれ親液性にする親液化工程と、有機バンク層221の上面および開口部の壁面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とで構成する。
【0078】
すなわち、基材(バンクなどを含む基板20)を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親液化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(Oプラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CFプラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0079】
なお、このCFプラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび親液性制御層25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび親液性制御層25の構成材料であるSiO、TiOなどはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0080】
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70の形成を行う。この正孔輸送層形成工程では、例えばインクジェット法等の液滴吐出法や、スピンコート法などにより、正孔輸送層材料を電極面23c上に塗布し、その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層材料を例えばインクジェット法で選択的に塗布する場合には、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔輸送層材料を充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを親液性制御層25に形成された前記開口部25a内に位置する電極面23cに対向させ、インクジェットヘッドと基材(基板20)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面23cに吐出する。
次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
【0081】
ここで、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、親液性制御層25の開口部25a内に満たされる。その一方で、撥液処理された有機バンク層221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からはずれて有機バンク層221の上面に吐出されたとしても、該上面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が親液性制御層25の開口部25a内に転がり込む。
なお、この正孔輸送層形成工程以降は、正孔輸送層70および発光層60の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うのが好ましい。
【0082】
次いで、発光層形成工程によって発光層60の形成を行う。この発光層形成工程では、例えば前記のインクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機バンク層221に形成された開口部221a内に発光層60を形成する。この発光層形成工程では、正孔輸送層70の再溶解を防止するため、発光層形成材料に用いる溶媒として、正孔輸送層70に対して不溶な無極性溶媒を用いる。
なお、この発光層形成工程では、前記のインクジェット法によって例えば青色(B)の発光層形成材料を青色の表示領域に選択的に塗布し、乾燥処理した後、同様にして緑色(G)、赤色(R)についてもそれぞれその表示領域に選択的に塗布し、乾燥処理する。
【0083】
次いで、図10(n)に示すように、密着層形成工程によって密着層65の形成を行う。この密着層形成工程では、例えば蒸着法等の物理的気相成長法や化学的気相成長法(CVD法)が好適に採用され、特にその処理雰囲気としては、乾燥不活性ガス雰囲気下でかつ大気圧下または減圧下であるのが好ましい。すなわち、前記したアミノシランまたはシラザンなどの密着層形成材料を、乾燥不活性ガス雰囲気下でかつ大気圧下または減圧下で蒸着し、あるいは気相成長させることにより、密着層65を形成する。このように乾燥不活性ガス雰囲気下とすることにより、製造中での酸素や水分による発光層60の密着に関与する反応性の低下を防止することができる。蒸着法としては、室温での蒸着や抵抗加熱法による蒸着、ランプ加熱法による蒸着などが採用される。
【0084】
ここで、室温での蒸着とは、前記密着層形成材料の蒸気を加熱しないで生成させ、これを密着層の形成箇所に接触させることで行う方法である。例えば、形成材料としてシラザンの一種であるヘキサメチルジシラザンを用いた場合、その沸点が約126℃であることから、このヘキサメチルジシラザンは室温でも約1.3kPaという比較的大きな蒸気圧を持つ。したがって、この蒸気を前記形成箇所に接触させるだけで、所定の薄膜(密着層65)を形成することができる。また、例えばこのヘキサメチルジシラザンに窒素等の不活性ガスをバブリングさせ、このヘキサメチルジシラザン蒸気を含有した不活性ガスを前記形成箇所にあてることにより、密着層65を形成することもできる。さらに、スプレー法によってヘキサメチルジシラザンを霧状に吹き付けることにより、密着層65を形成することもできる。なお、前記したように、抵抗加熱やランプ加熱によって前記形成材料を例えば100℃以下に加熱することにより、蒸着を行うようにしてもよい。
【0085】
また、化学的気相成長法としては、熱CVD法やプラズマCVD法が好適に採用される。なお、特にプラズマCVD法を採用した場合、プラズマの作用によって形成材料が分解する可能性が高いが、その場合にも、無機質の珪素原子またはチタン原子、有機質の炭素原子は必須原子として共存した状態で密着層65を構成するようになる。したがって、得られた密着層65は、本発明における密着層65としての機能が損なわれることなく、密着性を高める機能を良好に発揮するものとなる。
なお、この密着層65については、前記発光層60と有機バンク層221及び囲み部材201の上面全てを覆うのはもちろん、囲み部材201の外側部を形成する面201aについてもこれを覆った状態となるように形成する。
【0086】
次いで、電子注入層形成工程によって電子注入層67の形成を行う。この電子注入層形成工程では、例えば蒸着法等の物理的気相成長法が採用され、例えばLiFを成膜されることにより、電子注入層67が形成される。ここで、物理的気相成長法としては、例えば抵抗加熱蒸着や電子線加熱蒸着等の蒸着法、イオンプレーティング法、さらに高周波スパッタやECR(電子サイクロトロン共鳴)方式などのマイクロ波スパッタ等のスパッタ法などが好適に採用される。なお、この電子注入層67については、少なくとも前記発光層60の上面側を覆った状態となるようにして密着層65上に形成する。ただし、密着層65と同様に、前記発光層60及び有機バンク層221の上面、さらに囲み部材201の上面及び外側部形成面201a全てを覆った状態となるようにして、形成してもよく、本実施形態では密着層65と同様に形成するものとする。
【0087】
次いで、陰極層形成工程によって陰極50の形成を行う。この陰極層形成工程では、例えば蒸着法等の物理的気相成長法や化学的気相成長法(CVD法)が採用され、例えばITOを成膜されることにより、陰極50が形成される。ここで、物理的気相成長法としては、例えば抵抗加熱蒸着や電子線加熱蒸着等の蒸着法、イオンプレーティング法、さらに高周波スパッタ、ECR方式などのマイクロ波スパッタ等のスパッタ法などが好適に採用され、また、化学的気相成長法としては、ヘリコン波プラズマやICP(誘導結合型プラズマ)、ECRプラズマ、表面波プラズマなどの高密度プラズマCVD等が好適に採用される。なお、この陰極50についても、前記電子注入層67と同様に、少なくとも前記発光層60の上面側を覆った状態となるようにして密着層65上に形成すればよいが、本実施形態では、やはり密着層65と同様に形成するものとする。このように電子注入層67、陰極50を密着層65と同様に前記囲み部材201の外側部形成面201aまで覆って形成することにより、これら電子注入層67、陰極50で前記発光層60を確実に覆ってこれを封止することになり、したがって酸素や水分に起因する発光層60の劣化をより確実に防止できるようになる。
【0088】
その後、図10(o)に示すように陰極50を覆って、すなわち基体200上にて陰極50が露出しないように、さらに広い範囲を覆った状態でガスバリア層30を形成する。ガスバリア層30の形成方法としては、例えば蒸着法等の物理的気相成長法や化学的気相成長法がその形成材料に応じて適宜に採用される。物理的気相成長法としては、例えば電子線加熱蒸着等の蒸着法、イオンプレーティング法、さらに高周波スパッタ、ECR方式などのマイクロ波スパッタ等のスパッタ法などが好適に採用される。また、化学的気相成長法としては、ヘリコン波プラズマやICP(誘導結合型プラズマ)、ECRプラズマ、表面波プラズマなどの高密度プラズマCVD法が好適に採用される。
【0089】
ここで、このガスバリア層30の形成については、前述したように同一の材料によって単層で形成してもよく、また異なる材料で複数の層に積層して形成してもよく、さらには、単層で形成するものの、その組成を膜厚方向で連続的あるいは非連続的に変化させるようにして形成してもよい。
異なる材料で複数の層に積層して形成する場合、例えば、内側の層(陰極50側の層)を珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物などとし、外側の層を珪素酸窒化物あるいは珪素酸化物などとするのが好ましい。
【0090】
なお、本発明においては、特に前記発光層60の上に形成される無機材料からなる層、すなわち電子注入層67、陰極50、及びガスバリア層30を、気相成長法によって連続的に形成するのが好ましい。このようにすれば、例えば同じ気相成長法で各層を形成することなどにより、その処理雰囲気を共通化し、あるいは処理雰囲気の調整を容易にすることができ、したがって生産性の向上を図ることができる。また、発光層60までを形成した基体200を大気に晒すことなく連続して形成することができ、これによって酸素や水分による発光層60の劣化を防止することができる。
【0091】
このようにして基板20上にガスバリア層30までを形成したら、これとは別に、無アルカリガラス(日本電気硝子製OA10、0.5mm厚)からなる表面保護層206を用意する。そして、この表面保護層206に対し、緩衝層205の形成材料として例えば2液硬化型のエポキシ接着剤を、シルクスクリーン印刷法等によって接着面形状にパターン塗布する。
その後、この表面保護層206の緩衝層形成材料側を、別にガスバリア層30までを形成した前記のもののガスバリア層30側に圧着し、必要に応じて加熱を行うことなどにより該材料を硬化させ、緩衝層205とする。これにより、図3、図4に示した、保護部204を有してなる有機EL装置1を得る。
なお、複数個取りの基板上に複数の有機EL装置1を形成した場合には、これに対応して複数個の保護部204となる基板(表面保護層206)を用意し、これらを圧着した後、スクライブを行って個々の有機EL装置1を得るようにする。
【0092】
このようにして得られた有機EL装置1にあっては、有機材料からなる発光層60及び有機バンク層221(隔壁)と、無機材料からなる電子注入層67との間に密着層65が設けられているので、この密着層30を構成する有機珪素化合物又は有機チタン化合物が無機性の基と有機性の基とを備えていることにより、前記発光層60及び有機バンク層221と電子注入層67との間が密着層65を介すことで十分良好に密着するようになる。よって、これらの間への酸素や水分の透過(浸透)が防止されることにより、特に発光層60の劣化が防止され、これにより耐久性向上を図ることができる。
【0093】
また、陰極50上に、前記密着層65を覆った状態でガスバリア層30を設けているので、このガスバリア層30によって酸素や水分の浸透を防止し、前記発光層60及び有機バンク層221と電子注入層67との間をさらに良好に封止することができることから、酸素や水分の浸透に起因する発光層の劣化をより確実に防止し、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0094】
また、例えば機械的衝撃が保護部204側に加わった場合、加わった衝撃に対し特に高い硬度の保護層である表面保護層206がこれに耐する応力、例えば耐圧性や耐摩耗性を発揮し、また低い高度の保護層である緩衝層205が機械的衝撃を吸収緩和する機能を発揮するようになり、したがって保護部204が機械的衝撃に対し十分に保護機能を発揮するようになる。よって、有機EL装置1にあっては、素子性能が損なわれるのを確実に防止することができる。
また、特に表面保護層206が耐圧性や耐摩耗性、光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していることにより、発光層60や陰極50、さらにはガスバリア層もこの表面保護層206によって保護することができ、したがって発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0095】
なお、前記有機EL装置1では陰極50の内面側、すなわち密着層65側に無機材料からなる電子注入層67を設けたが、本発明はこれに限定されることなく、この電子注入層67を設けずに陰極50を直接密着層65の表面に設けるようにしてもよい。その場合にも、陰極50が無機材料からなることにより、この陰極50が密着層65に良好に密着し、したがって有機材料からなる発光層60及び有機バンク層221(隔壁)と、無機材料からなる陰極50との間が密着層65によって十分良好に密着するようになる。
【0096】
また、電子注入層については、前記の無機材料からなるものでなく、有機材料からなるものを設けてもよい。その場合には、図11に示すようにこの有機材料からなる電子注入層67を、本発明の機能層の構成要素として発光層60の上に形成することができる。この電子注入層67の形成材料としては、アルミニウムキノリノール錯体やアセチルアセトン錯体、クラウンエーテル錯体などの金属錯体、安息香酸ナトリウムなどの有機金属化合物、さらにポリアセチレンやポリフェニルなどの導電性有機物が用いられる。このような形成材料は、室温蒸着や抵抗加熱蒸着、ランプ加熱蒸着などの物理的気相成長法や、熱CVDやプラズマCVD等の化学的気相成長法などによって厚さが例えば1〜50nm程度に成膜され、電子注入層67とされる。なお、このように気相成長法で形成されることから、この電子注入層67は、図11に示したように発光層60の直上だけでなく、有機バンク層221の上にもこれを覆って形成されるようになる。
【0097】
そして、このようにして発光層60の上に有機材料からなる電子注入層67を形成した場合、密着層65はこの電子注入層67の表面上に形成し、さらにこの密着層65の上に陰極50を形成する。このような構成としても、密着層65は有機材料からなる電子注入層67と無機材料からなる陰極50との間に設けられることにより、これらの間を十分良好に密着させ、これにより酸素や水分に起因する発光層60の劣化を防止して発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0098】
また、前記有機EL装置1ではトップエミッション型を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、ボトムエミッション型にも、また、両側に発光光を出射するタイプのものにも適用可能である。特にボトムエミッション型とした場合、陰極50には透明電極を用いる必要はないが、その場合にも、この陰極50の少なくともガスバリア層30と接する面側を、無機酸化物によって形成するのが好ましい。
このようにすれば、陰極50のガスバリア層30と接する面側が無機酸化物からなっているので、無機化合物あるいは珪素化合物などからなるガスバリア層30との密着性がよくなり、したがってガスバリア層30が欠陥のない緻密な層となって酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。
【0099】
また、ボトムエミッション型、あるいは両側に発光光を出射するタイプのものとした場合、基体200に形成するスイッチング用TFT112や駆動用TFT123については、発光素子の直下ではなく、親液性制御層25および有機バンク層221の直下に形成するようにし、開口率を高めるのが好ましい。
また、前記有機EL装置1では、保護部204を表面保護層206と緩衝層205との二層によって構成したが、本発明はこれに限定されることなく、三層以上で保護部204を構成するようにしてもよい。
【0100】
次に、本発明の電子機器を説明する。本発明の電子機器は、前記の有機EL装置を表示部として有したものであり、具体的には図12に示すものが挙げられる。
図12は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記の有機EL装置を用いた表示部を示している。
この電子機器は、発光素子の長寿命化が図られた前記有機EL装置を表示部として備えているので、この電子機器自体も表示の信頼性に優れたものとなる。
なお、本発明の電子機器としては、前記の携帯電話に限定されることなく、例えば携帯型情報処理装置や腕時計型電子機器などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】 本発明の有機EL装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】 図2のA−B線に沿う断面図である。
【図4】 図2のC−D線に沿う断面図である。
【図5】 図3の要部拡大断面図である。
【図6】 有機EL装置の製造方法を工程順に説明する断面図である。
【図7】 図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】 図7に続く工程を説明するための断面図である。
【図9】 図8に続く工程を説明するための断面図である。
【図10】 図9に続く工程を説明するための断面図である。
【図11】 本発明の他の有機EL装置の要部拡大断面図である。
【図12】 は本発明の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…有機EL装置(電気光学装置)、23…画素電極(第1の電極)、
30…ガスバリア層、50…陰極(第2の電極)、60…発光層(機能層)、
65…密着層、67…電子注入層、200…基体、201…囲み部材、
204…保護部、205…緩衝層(保護層)、
206…表面保護層(保護層)、221…有機バンク層(隔壁)

Claims (8)

  1. 基体上に第1の電極と、有機材料からなり少なくとも有機発光層を有する機能層と、第2の電極とをこの順に形成する有機EL装置の製造方法において、
    前記発光層を有機材料からなる隔壁に囲まれた画素領域に設ける工程と、
    前記隔壁及び/又は前記機能層の表面上に、有機チタン化合物からなる密着層を設ける工程と、
    前記密着層の表面上に無機材料からなる前記第2の電極を設ける工程と
    前記第2の電極上に、ガスバリア層を設ける工程と、を備え、
    前記密着層及び前記第2の電極及びガスバリア層を、気相成長法により連続的に形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
  2. 前記密着層を、前記隔壁及び前記機能層のうちの少なくとも前記隔壁の表面上に設けることを特徴とする請求項記載の有機EL装置の製造方法。
  3. 前記ガスバリア層を、無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物のいずれかからなる絶縁性の層で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
  4. 前記ガスバリア層を、珪素化合物で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
  5. 前記ガスバリア層を、チタン化合物と珪素化合物とを積層してなる多層膜で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
  6. 前記ガスバリア層上に、保護層を設ける工程を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  7. 前記保護層として、機械的衝撃に対する緩衝機能を有する緩衝層を形成することを特徴とする請求項6記載の有機EL装置の製造方法。
  8. 前記保護層として、表面保護機能を有する表面保護層を形成することを特徴とする請求項6記載の有機EL装置の製造方法。
JP2003172150A 2003-06-17 2003-06-17 有機el装置の製造方法 Expired - Fee Related JP4552390B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003172150A JP4552390B2 (ja) 2003-06-17 2003-06-17 有機el装置の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003172150A JP4552390B2 (ja) 2003-06-17 2003-06-17 有機el装置の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005011573A JP2005011573A (ja) 2005-01-13
JP4552390B2 true JP4552390B2 (ja) 2010-09-29

Family

ID=34096390

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003172150A Expired - Fee Related JP4552390B2 (ja) 2003-06-17 2003-06-17 有機el装置の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4552390B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006261058A (ja) * 2005-03-18 2006-09-28 Sony Corp 有機el素子、表示装置、有機el素子の製造方法
JP4945981B2 (ja) * 2005-09-22 2012-06-06 凸版印刷株式会社 印刷物及びその製造方法。
KR100695169B1 (ko) 2006-01-11 2007-03-14 삼성전자주식회사 평판표시장치
WO2008117351A1 (ja) * 2007-03-22 2008-10-02 Pioneer Corporation 有機エレクトロルミネッセンス(el)素子及びその製造方法
JP2008288012A (ja) 2007-05-17 2008-11-27 Seiko Epson Corp エレクトロルミネッセンス装置とその製造方法
JP2009049001A (ja) * 2007-07-20 2009-03-05 Canon Inc 有機発光装置及びその製造方法
KR101155907B1 (ko) * 2009-06-04 2012-06-20 삼성모바일디스플레이주식회사 유기 발광 표시 장치 및 그 제조 방법
JP2011076795A (ja) * 2009-09-29 2011-04-14 Sumitomo Chemical Co Ltd 有機el装置
KR102038817B1 (ko) * 2013-06-28 2019-11-01 엘지디스플레이 주식회사 유기전계 발광소자 및 이의 제조 방법
EP3928162B1 (en) * 2019-02-19 2023-04-19 Ricoh Company, Ltd. Photoelectric conversion element, organic photoconductor, image forming method, image forming apparatus, and organic el element

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000228287A (ja) * 1999-02-04 2000-08-15 Mitsubishi Chemicals Corp 有機電界発光素子およびその製造方法
JP2001237064A (ja) * 2000-02-24 2001-08-31 Seiko Instruments Inc 有機el発光素子
JP2002083689A (ja) * 2000-06-29 2002-03-22 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 発光装置
JP2002289362A (ja) * 2001-01-17 2002-10-04 Tokai Rubber Ind Ltd 有機エレクトロルミネッセンス素子

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06325871A (ja) * 1993-05-18 1994-11-25 Mitsubishi Kasei Corp 有機電界発光素子

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000228287A (ja) * 1999-02-04 2000-08-15 Mitsubishi Chemicals Corp 有機電界発光素子およびその製造方法
JP2001237064A (ja) * 2000-02-24 2001-08-31 Seiko Instruments Inc 有機el発光素子
JP2002083689A (ja) * 2000-06-29 2002-03-22 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 発光装置
JP2002289362A (ja) * 2001-01-17 2002-10-04 Tokai Rubber Ind Ltd 有機エレクトロルミネッセンス素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005011573A (ja) 2005-01-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4138672B2 (ja) 電気光学装置の製造方法
JP3997888B2 (ja) 電気光学装置、電気光学装置の製造方法及び電子機器
KR100638160B1 (ko) 전기 광학 장치의 제조 방법, 전기 광학 장치 및 전자기기
JP4561201B2 (ja) 電気光学装置、電気光学装置の製造方法、及び電子機器
JP4539547B2 (ja) 発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器
JP4631683B2 (ja) 発光装置、及び電子機器
JP4792717B2 (ja) 電気光学装置、電気光学装置の製造方法、及び電子機器
JP2006222071A (ja) 発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器
JP2008218423A (ja) 電気光学装置及び電子機器
JP4465951B2 (ja) 電気光学装置の製造方法
JP2004127606A (ja) 電気光学装置及び電子機器
JP4552390B2 (ja) 有機el装置の製造方法
JP4678124B2 (ja) 電気光学装置、電気光学装置の製造方法及び電子機器
JP4701580B2 (ja) 電気光学装置およびその製造方法、電子機器
JP4736544B2 (ja) 電気光学装置及び電子機器
JP4428005B2 (ja) 電気光学装置、電気光学装置の製造方法、及び電子機器
JP4613700B2 (ja) 電気光学装置及び電子機器
JP2004303671A (ja) 電気光学装置の製造方法、電気光学装置、電子機器
JP2009187962A (ja) 電気光学装置及び電子機器
JP5003808B2 (ja) 電気光学装置および電子機器
JP4466479B2 (ja) 電気光学装置及び電子機器
JP2005276756A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその製造方法、並びに電子機器
JP2013084618A (ja) 電気光学装置及び電子機器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20051124

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080903

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080909

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20081105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091110

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100112

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100113

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100426

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100427

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20100520

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100622

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100705

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130723

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4552390

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees