JP4480510B2 - 液晶流動現象を利用する物体移動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶層内に配置されている物体を、液晶流動現象を利用することによって移動させる物体移動装置に関する。特に、直線運動のみならず、物体の移動方向を変えることができる物体移動装置に関する。
液晶層内に配置されている物体を液晶流動現象を利用することによって移動させる装置が特許文献1や特許文献2で提案されている。これら物体移動装置は、第1電極と第1ラビング層と液晶層と第2ラビング層と第2電極が順に配置された構造を備えている。特許文献1では、第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向は、逆向きに調整されている。特許文献2では、第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向は、同じ向きに調整されている。この場合、液晶分子は、一対の電極間において180°ねじれた状態で存在している。
一対の電極間に電圧を印加すると、液晶分子は電界方向と一致するまで回転する。電圧をオフすると、液晶分子は元の状態になるまで回転する。液晶分子の回転によって、液晶層内には液晶流動が発生する(背流とも呼ばれる)。一般的に、液晶はラビング方向と反対方向に流動するといわれている。第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向が逆向きに調整されていれば、第1ラビング層の近傍での液晶流動と第2ラビング層近傍での液晶流動は逆向きとなる。
特許文献1の技術では、一対の電極間に矩形波交番電圧を印加する。そのときに、正極パルス電圧が負極パルスの電圧(絶対値)よりも高い状態と低い状態を切換える。この切換えに伴って、液晶層内に配置されている物体は、第1ラビング層の近傍に位置する状態と第2ラビング層の近傍に位置する状態の間で切換えられる。
特許文献1の技術では、液晶層内に配置されている物体をラビング方向に移動させることができる。正極パルス電圧と負極パルスの電圧(絶対値)の大小関係を切換えることによって、物体を往復運動させることもできる。
特開2001−13895(その公報の図7参照) 特開2003−113814(その公報の図1及び図2参照)
上記の物体移動装置では、物体の移動方向が1次元に限られている。一方向には限られず、物体を往復運動させることができるけれども、それでも1次元に限られている。物体の移動可能な方向をX方向とすると、それに交差するY方向に物体を移動させることはできない。
そこで本発明では、物体を2次元に移動可能な物体移動装置を実現する。相互に交差する(典型的には直交する)X,Y方向に物体を移動させることが可能な物体移動装置を実現する。
本発明の物体移動装置は、第1電極と第1ラビング層と液晶層と第2ラビング層と第2電極が順に配置された構造を備えている。本発明の物体移動装置は、第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向が交差する関係に調整されており、さらに液晶層内に移動可能に配置されている物体を、第1ラビング層に接近する位置と第2ラビング層に接近する位置の間で移動させる面直方向移動手段を備えていることを特徴とする。
面直方向移動手段は、物体を第1ラビング層に接近する位置と第2ラビング層に接近する位置の間で移動させることができる任意の手段を採用することができ、典型的には物体に、静電気力、磁気力、レーザトラップ力、音波による力などを加えて物体を面直方向に移動させる任意の手段を採用することができる。後記するように、前記物体と一体に移動して液晶層の側面から液晶層外に伸びる連結部材を備えている場合には、連結部材に力を加えることによって物体を面直方向に移動させる手段を構成することもできる。
上記の物体移動装置によると、第1ラビング層に近接する位置では第1ラビング層のラビング方向(以下では第1方向という)を向く液晶流動現象が得られ、第2ラビング層に近接する位置では第2ラビング層のラビング方向(以下では第2方向という)を向く液晶流動現象が得られる。第1方向と第2方向は並行でなく、交差している。また、物体を第1ラビング層に接近する位置と第2ラビング層に接近する位置の間で移動させることができる面直方向移動手段を備えている。両者を組合わせて用いると、物体を第1方向と第2方向に移動させることができ、物体を2次元に移動させることが可能となる。即ち、面直方向移動手段によって物体が第1ラビング層に接近する位置におき、この状態で第1電極と第2電極の間に電界を加えると、物体は第1方向に移動する。面直方向移動手段によって物体が第2ラビング層に接近する位置におき、この状態で第1電極と第2電極の間に電界を加えると、物体は第2方向に移動する。両者を組合わせて用いると、物体を2次元に移動させることが可能となる。
物体の移動を正確に記述すると、第1方向の移動と、第2方向の移動と、面直方向の移動を組合わせた3次元の移動をしているが、面直方向の移動は微小であり、移動方向を第1方向と第2方向の間で切換えるためのものであるから、実質的には2次元の移動ということができる。
第1ラビング層の第1ラビング方向と第2ラビング層の第2ラビング方向は、平行でなく、交差さえしていれば2次元の移動を実現できるが、第1ラビング方向と第2ラビング層が直交していることが好ましい。
直交座標系を内蔵する物体移動装置を実現することができる。
面直方向移動手段には、前記したように、磁気やレーザや音波等を利用することができるが、第1電極と第2電極の間に加える電圧の極性を切換える手段で構成することもできる。
通常の物体は自然に帯電しており、第1電極と第2電極の間に加える電圧の極性を切換えることによって、第1ラビング層に向けて移動したり第2ラビング層に向けて移動したりする。この現象を活用すると、面直方向移動手段を実現することができる。
物体を2次元に移動させるのに必要な電極と電圧を利用して、面直方向移動手段を実現することができ、装置構成を簡単化することができる。
液晶中に配置する微小物体は、例えば点状の微小物体であってもよい。たとえば透過型プロジェクタに組込めば、物体の影の位置が2次元に制御できる投射像を実現することができる。
物体に加える移動力を大きくするためには、メッシュが形成された板状の物体を利用することが好ましい。
この場合には物体と液晶の接触面積が増大し、液晶流動が物体に加える力が増大する。物体を強い力で移動させることができる。
第1ラビング層と第2ラビング層の間隔が微小な場合、即ち、液晶層が薄い場合、液晶層は表面張力によって第1ラビング層と第2ラビング層の間隔に閉じ込められ、側壁がなくてもその間隔外に流出しない。この性質を利用すると、間隔内にある物体の移動を間隔外に伝達することが可能となる。
このためには、第1ラビング層と第2ラビング層によって流出が防止されている液晶層の側面から液晶層外に伸びている連結部材を利用する。この連結部材は、物体と一体に移動するものであればよく、部材の一部が間隔外に伸びていてもよいし、間隔外に伸びる連結部材と物体が固着されていてもよい。
上記態様の物体移動装置は、物体の移動力を装置外部に取出し、他の物体を駆動するアクチュエータとして利用することができる。極めて扁平な、2次元アクチュエータを実現することができる。
液晶層の側面から液晶層外に伸びている連結部材を利用して装置外部に駆動力を取出す構造は、積層するのに適しており、積層すれば液晶層外に伸びる連結部材が積層されている構造が得られる。この場合、液晶層外に伸びて積層されている連結部材を、液晶外で一体化することが好ましい。
上記によると、積層枚数を増加することによって、駆動力を大きくすることができる。
物体を極座標によって2次元に移動させることも可能である。この場合には、第1ラビング層のラビング方向を放射状とし、第2ラビング層のラビング方向を同心円状とする。
上記の移動装置では、物体を第1ラビング層に接近させることによって物体を半径方向に移動させることができ、第2ラビング層に接近させることによって物体を周方向に移動させることができる。極座標によって物体を2次元に移動させることができる。
物体を2次元に移動させるという場合、その面は平面に限られず、円筒面であることがある。円筒面内において、物体を周方向と軸方向の2次元に移動する必要があることがある。上記必要は、下記の条件を満たす物体移動装置で、実現することができる。
第1電極は、その内面が円筒状であり、周方向に分割されている。
第1ラビング層は、第1電極の内面に沿って配置されている。
第2電極は、その外面が円柱状であり、周方向に分割されており、第1電極と同心に配置されている。
第2ラビング層は、第2電極の外面に沿って配置されている。
第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向は、一方が周方向であり、他方が軸方向である。
物体は、長径が第1ラビング層の直径にほぼ等しく、短径が第2ラビング層の直径にほぼ等しい楕円状であることが好ましい。あるいは、第1電極と第2電極のそれぞれの分割電極に選択的に電圧が加わったときに、前記楕円状に変形可能な柔らかい材料で形成されていてもよい。上記の移動装置では、物体は長径部において第1ラビング層に接近し、短径部において第2ラビング層に接近する。
最初に、第1ラビング方向が周方向であり、第2ラビング方向が軸方向であるとする。この場合、物体の長径部に対応する分割電極に電圧を加えると、物体は周方向に移動して回転する。物体の回転に追従して電圧を加える分割電極を切換えれば、物体を回転させ続けることができる。物体の短径部に対応する分割電極に電圧を加えると、物体は軸方向に移動する。組合わせて用いれば、周方向の回転と軸方向の移動が複合した螺旋状の移動を実現することができる。
第1ラビング方向が軸方向であり、第2ラビング方向が周方向である場合には、物体の長径部に対応する分割電極に電圧を加えると、物体は軸方向に移動する。物体の短径部に対応する分割電極に電圧を加えると、物体は周方向に移動して回転する。物体の回転に追従して電圧を加える分割電極を切換えれば、物体を回転させ続けることができる。組合わせて用いれば、周方向の回転と軸方向の移動が複合した螺旋状の移動を実現することができる。
第1電極と第2電極の間に矩形波電圧を印加する電圧印加手段を備えており、その矩形波電圧のデューティ比を制御する制御手段を備えていることが好ましい。
ディーティ比を調整することによって、液晶流動速度を増減し、流動方向の正負を反転することができる。前者によって、物体の移動速度が可変な物体移動装置を実現することができる。後者によって、放射状に広がる任意の方向に物体を移動させることができる物体移動装置を実現することができる。第1移動方向について正負両方向に移動させることができ、それに交差する第2移動方向について正負両方向に移動させることができることから、放射状に広がるうちの任意の方向に物体を移動させることが可能となる。
本発明によると、物体を2次元に移動させることができる極めて扁平な物体移動装置をを実現することができる。
最初に実施例の主要な特徴を列記する。
(第1形態) 物体移動装置は、矩形波電圧の極性、デューティ比、電圧強度、周波数を変動したときの、液晶流動の方向と速度に関するデータを記憶する手段をさらに備えているのが好ましい。
(第2形態) 物体移動装置の使用者が、所望する移動方向と移動速度を入力すると、それを実現する矩形波電圧の極性、デューティ比、電圧強度、周波数を選択する手段を備えている。
(第3形態) 物体移動装置の使用者が、物体の移動後の位置を指定すると、現在位置を参照して移動経路を決定し、その経路に沿って物体を移動させるのに必要な、矩形波電圧の極性、デューティ比、電圧強度、周波数の経時的変化を計算する手段を備えている。
(第4形態) 少なくとも第1電極と第1ラビング層は透明であり、移動する物体を外部から観測できる。
(第5形態) 第1電極と第1ラビング層と第2ラビング層と第2電極は透明であり、移動する物体の影を外部に投射できる。
(第6形態) 第1電極と第1ラビング層と第2ラビング層と第2電極には開口が形成されていない。それにもかかわらず、液晶層中に配置されている物体の移動が外部に取出される。
(第7形態) 液晶層中に配置されている物体はフィルムであり、そのフィルムは第1ラビング層と第2ラビング層の間に閉じ込められている液晶層の側面から間隔外に飛び出している。そのフィルムは、面内で2次元に移動する。
図面を参照して以下に各実施例を詳細に説明する。
(第1実施例) 図1に、物体移動装置10の要部断面図を模式的に示す。
この物体移動装置10は、透明な下側ガラス基板12と、下側電極22(第1電極の一例)と、下側ラビング層32(第1ラビング層の一例)と、ネマティック液晶層42(液晶層の一例)と、上側ラビング層34(第2ラビング層の一例)と、上側電極24(第2電極の一例)と、透明な上側ガラス基板14が順に積層されている。下側電極22と上側電極24は、一対の透明なガラス基板(12、14)の内面に、ITO(Indium Tin Oxide)を塗布して形成されている。一対のガラス基板(12、14)間の距離は20μmで形成されており、両者は平行に伸びている。この一対のガラス基板(12、14)及び一対の電極(22、24)を平面視すると、その形状は面状に広がった矩形で形成されている。なお、この一対のガラス基板(12、14)間の距離を一定に維持するために、所定間隔を置いて図示しないスペーサーが介在していてもよい。
ネマティック液晶42の材料は、5CB(4-ciano-4'-n-pentylbiphenil)が用いられている。ラビング層(32、34)の材料は、ポリビニルアルコールが用いられている。下側ラビング層32のネマティック液晶層42と接する面32aと、上側ラビング層34のネマティック液晶層42と接する面34aには、ラビングが施されている。このラビング方向は、図2に示すように、下側ラビング層32の面32aのラビング方向32bと、上側ラビング層34の面34aのラビング方向34bが直交する関係で処理されている。
図1に示すように、本物体移動装置10はさらに、ネマティック液晶層42内を移動可能に配置されている球状のポリマービーズ52(移動させる物体一例)を備えている。このポリマービーズ52は、自然な状態で負に帯電しており、その粒径は10μmである。
一対の電極(22、24)に、ファンクションジェネレータ92(電圧印加手段の一例)が接続されている。ファンクションジェネレータ92は、一対の電極(22、24)間に矩形波電圧を印加する。ファンクションジェネレータ92は、CPU94(制御手段の一例)から電気信号を入力する。なお、このCPU94は、ファンクションジェネレータ92の一部として組み込まれていてもよい。このCPU94は、一対のラビング層(32、34)のラビング方向を記憶している第1メモリー96と、ポリマービーズ52の移動先を記憶している第2メモリー98を備えている。
ネマティック液晶層42を構成する液晶分子(本実施例では5CBである)は、上下のラビング層面(32a、34a)のラビング方向(32b、34b)に沿って配向する。したがって、ネマティック液晶層42を構成する液晶分子は、一対のラビング層(32、34)間において90°ねじれた状態で存在している(一般的に、TN型液晶と呼ばれる状態である)。
ネマティック液晶層42を構成する液晶分子は、液体としての流動性と、結晶の誘電率異方性の両者の特性を有している。したがって、一対の電極(22、24)間にファンクションジェネレータ92を用いて矩形波電圧を印加すると、矩形波電圧の立ち上がり時に、ネマティック液晶層42の液晶分子は、誘電率異方性に基づいてその分子の長軸方向が電界方向と一致するまで回転する(一般的に、フレデリクス転移と呼ばれる)。一方、矩形波電圧の立ち下がり時に、ネマティック液晶層42の液晶分子は、元の配向状態まで回転する。これら回転に基づいて、ネマティック液晶層42内に液晶流動が発生する。
図3に、ネマティック液晶層42内の液晶流動方向と流速分布を示す。なお、Z軸の原点は、下側ラビング層32とネマティック液晶層42との接触界面の位置と一致しており、X軸、Y軸、Z軸の各方向は図1のそれと一致している。
図3(A)は、矩形波電圧の立ち上がり時に発生する液晶流動方向と流速分布を示す。図に示すように、矩形波電圧の立ち上がり時に発生する液晶流動方向は、下側ラビング層32側において、下側ラビング層32のラビング方向32bと反対向き(−Y方向)に発生している。一方、上側ラビング層34側において、上側ラビング層34のラビング方向34bと反対向き(−X方向)に発生している。即ち、液晶流動方向は、一対の電極(22、24)間の上下側において、直交している。
また、図3(B)は、矩形波電圧の立ち下がり時に発生する流動方向と流速分布を示す。図に示すように、矩形波電圧の立ち下がり時に発生する液晶流動方向は、下側ラビング層32側において、下側ラビング層32のラビング方向32bと一致する向き(Y方向)である。一方、上側ラビング層34側において、上側ラビング層34のラビング方向34bと一致する向き(X方向)である。即ち、液晶流動方向は、一対の電極(22、24)間の上下側において、直交している。
なお、Z軸方向において、流速分布が生じているのは、上下のラビング層面(32a、34a)のラビング処理によって液晶分子が拘束されるからである。これにより、矩形波電圧の立ち上がり時、あるいは立ち下がり時の液晶分子の回転が規制されるからである。したがって、このラビング層面(32a、34a)近傍では、流速が小さくなっている。
ポリマービーズ52の移動は、図3(A)と図3(B)に示す、矩形波電圧の立ち上がり時と立ち下がり時に発生する液晶流動が合計された現象として得られる。矩形波電圧の立ち上がり時に発生する液晶流動が優勢であれば、その液晶流動方向に液晶流動が発生する。矩形波電圧の立ち下がり時に発生する液晶流動が優勢であれば、その液晶流動方向に液晶流動が発生する。
本実施例では、矩形波電圧のデューティ比(1周期あたりの矩形波電圧のオン時間の割合)を制御することで、立ち下がり時あるいは立ち下がり時に発生する液晶流動のいずれかを優勢にすることができる。これにより、一対の電極(22、24)の上下側において、所望する方向に液晶流動を発生させることができる。
本実施例のポリマービーズ52は負に帯電している。したがって、印加する矩形波電圧の極性に基づいて、このポリマービーズ52に静電気力が作用する。例えば、正極性の矩形波電圧を上側電極24に印加すると、ポリマービーズ52に静電引力が作用し、ポリマービーズ52は上側電極24側(上側ラビング層34側でもある)に引き寄せられる。一方、負極性の矩形波電圧を上側電極24に印加すると、ポリマービーズ52に斥力が作用し、ポリマービーズ52は下側電極22側(下側ラビング層32側でもある)に引き寄せられる。即ち、ポリマービーズ52は、印加する矩形波電圧の極性によって、上側ラビング層34に接近する位置と下側ラビング層32に接近する位置の間で移動することができる(Z軸方向に移動することができる)。Z軸方向に移動したポリマービーズ52は、上述したように、矩形波電圧のデューティ比に基づいて発生する流動方向に沿って±X方向(あるいは±Y方向)に移動する。この現象を利用して、ポリマービーズ52を、一対の電極(22、24)に直交する面内において、2次元で移動させることができる。
より詳細には、物体移動装置10の使用者は、次の手順に沿ってポリマービーズ52を移動させることができる。
まず、使用者は、ポリマービーズ52の移動先を図示しないインタフェースを介して第2メモリー98に入力する。CPU94は、第1メモリー96に記憶されているラビング処理方向(本実施例では、上側がX方向であり、下側がY方向である)と、入力された移動先を照らし合わせて、印加する矩形波電圧の、デューティ比、電圧、周波数、極性などを決定する。決定された値に基づいて、ファンクションジェネレータ92を作動させ、ポリマービーズ52を所望する移動先に移動させる。具体的には、まずポリマービーズ52を上側ラビング層34側に引き寄せ、所望するX方向の位置まで移動する。次に、ポリマービーズ52を下側ラビング層32側に引き寄せ、所望するY方向の位置まで移動する。次に、ポリマービーズ52を電極(22、24)間の中心付近に移動させる。なお、ポリマービーズ52は、一対のガラス基板(12、14)間距離の半分の大きさを使用しているので、Z軸方向の移動は微小である。Z軸方向の移動は、X方向とY方向への移動を切り替えるためのものであり、Z軸方向の移動は実質的に移動していないとしてもよい。これにより、ポリマービーズ52を、一対の電極(22、24)間に直交する面内で、2次元で移動させることができる。
次に、図4〜図6を参照し、本実施例の物体移動装置10におけるポリマービーズ52の粒子速度と矩形波電圧との関係を説明する。なお、各データの粒子速度は、5個のポリマービーズ52が10秒間に移動する距離を測定し、その平均を算出している。また、本実施例では、正極矩形波電圧を上側電極24に印加し、X軸方向のポリマービーズ52の移動の観測結果のみを示しているが、矩形波電圧の極性を変えて、Y軸方向のポリマービーズ52の移動を観測しても、同様の結果が得られることに留意されたい。
図4は、ポリマービーズ52の粒子速度と矩形波電圧のデューティ比との関係を示す。矩形波電圧の周波数は100Hz、電圧は40Vである。
粒子速度は、デューティ比が略20%のときに+X方向に最大となる。デューティ比を20%よりも大きくすると、粒子速度は序々に減少する。これは、デューティ比を大きくすると、立ち上がり時に発生する液晶流動の効果(図3(A)で示すように、液晶流動方向が−X方向である)が大きくなり、逆に立ち下がり時に発生する液晶流動の効果(図3(B)で示すように、液晶流動が+X方向)が小さくなるためだと考えられる。デューティ比が略55%のときに、粒子速度は0となる。この粒子速度が0となるデューティ比が50%と一致しないのは、立ち下がり時の液晶流動の緩和時間が、立ち上がり時の液晶流動の緩和時間よりも長いためだと考えられる。デューティ比が55%を超えると、液晶流動方向は−X方向となる。デューティ比が70%を超えると、流れが強くなり過ぎて、粒子の運動が不安定となった。
この結果から、矩形波電圧のデューティ比を調整するだけで、液晶流動方向を容易に逆転させ得ることが分かる。
図5は、ポリマービーズ52の粒子速度と矩形波電圧の電圧強度との関係を示す。矩形波電圧の周波数は100Hz、デューティ比は20%である。
電圧強度が10Vまでは、粒子の移動は発生しない。これは液晶分子がラビング処理によって拘束されているので、ある程度の大きさの電圧を印加しないと液晶分子の回転が発生しないためである(閾値を持つということである)。電圧強度をさらに大きくすると、略40V以上において、粒子速度は略一定となる。電圧強度が60Vを超えると乱流現象が発生し、粒子が一方向のみに移動しなくなる。このため見かけ上の粒子速度は減少する。
この結果から、矩形波電圧の電圧強度を調整するだけで、液晶流動の速度を容易に調整し得ることが分かる。
図6は、ポリマービーズ52の粒子速度と矩形波電圧の周波数との関係を示す。矩形波電圧の電圧強度は40Vであり、デューティ比は20%である。
周波数が略800Hzにおいて粒子速度は最大となる。周波数が50Hz以下では、粒子の運動が不安定である。周波数が2kHzを超えると、粒子の移動は観測されなかった。これは、矩形波電圧の変動に、液晶分子の回転が追随できないためだと考えられる。
この結果から、矩形波電圧の周波数を調整するだけで、液晶流動の速度を容易に調整し得ることが分かる。
図4〜図6に示す結果は、例えば、別個に設けられたメモリー(第1メモリー96や第2メモリー98にこの機能を兼用させてもよい)に記憶するのが好ましい。これら結果に基づいて、印加する矩形波電圧のデューティ比、電圧強度、周波数が決定されるのが好ましい。ポリマービーズ52のより正確な移動を可能にする。
なお、図4〜図6に示す結果は、本実施例における結果であり、物体移動装置の形状や材料等が異なれば、異なる結果が得られるのは当然である。
上記実施例は、次の変形例であってもよい。
上記実施例のポリマービーズ52は、一対のガラス基板(12、14)間距離の半分の大きさを使用している。したがって、移動先に関しては、Z軸方向を実質的に考慮しなくてもよい。xy平面の移動先を設定し、その移動を実現する。ポリマービーズ52が一対のガラス基板(12、14)間の距離に比して十分に小さい場合、移動先に関しては、必要に応じてZ軸方向を考慮してもよい。この場合、ポリマービーズの3次元の移動を得ることができる。また、この場合、必要に応じて、Z軸方向の流速分布を考慮するのが好ましい。電極(22、24)方向において流速分布が存在することを考慮して、印加する矩形波電圧のデューティ比、電圧、周波数などを設定するのが好ましい。このZ軸方向の流速分布は、別個に設けられたメモリー(第1メモリー96や第2メモリー98にこの機能を兼用させてもよい)に記憶するのが好ましい。この流速分布も考慮することで、ポリマービーズ52のより正確な移動を可能にする。
また、一対のラビング層(32、34)に施されている一対のラビング方向(32b、34b)は、直交する場合に限定されず、要は交差(非平行)であれば、ポリマービーズ52の2次元の移動、あるいは3次元の移動を実現できる。必要に応じて、一対のラビング方向(32b、34b)が交差した関係であってもよい。
(第2実施例) 図7に、物体移動装置100の概略的な斜視図を示す。図8に、図7のVIII−VIII線に対応する断面図を示す。なお、本実施例では、物体の移動力を外部に取出し、他の物体を駆動するアクチュエータとしての利用を説明する。したがって、物体の移動力を外部に取り出す機構を中心に説明するので、液晶層やラビング層など第1実施例と略同一の構成要素は省略されていることに留意されたい。
この物体移動装置100は、面状に広がる下側電極122、図示しない下側ラビング層と、図示しないネマティック液晶層と、図示しない上側ラビング層と、上側電極124が順に配置されている。下側ラビング層のラビング方向と上側ラビング層のラビング方向は、直交している。
図示しないネマティック液晶層内に、可動フィルム152(移動部材の一例)が移動可能に配置されている。この可動フィルム152の材料は、ポリスチレンなどが好適に用いられる。この実施例の電極(122、124)間の距離は極めて微小に構成されている。したがって、この間に介在するネマティック液晶層の側面に側壁が存在しないが、表面張力によって外部に流出することは防止されている。これにより、可動フィルム152は、ネマティック液晶層の側面からネマティック液晶層外に伸びることが実現されている。なお、この装置外部に伸びている部分は、連結部材と評価してもよい。
可動フィルム152には、それぞれの伸縮する方向が直交する位置関係となる第1弾性部材162と第2弾性部材164が連結している。それぞれの弾性部材(162、164)の他端は、可動フィルム152の周囲に直交して設けられている第1外壁172と第2外壁174に連結している。この弾性部材(162、164)は、例えば、ポリスチレンなどの高分子材料やタングステン細線などが好適に利用される。これら第1弾性部材162と第2弾性部材164の伸縮するそれぞれの方向は、ラビング層に施されているラビング方向のそれぞれと平行である。弾性部材(162、164)は、可動フィルム152を初期位置に付勢している。
なお、弾性部材(162、164)は、場合によって省略してもよい。この弾性部材(162、164)の主な機能は、可動フィルム252をたるませないためのものである。したがって、この弾性部材(162、164)を省略しても、原理上は双方向に移動させることが可能である。
この可動フィルム152が、液晶流動に沿って移動する現象のメカニズムは、基本的には第1実施例のそれと同一である。即ち、一対の電極(122、124)間に印加する矩形波電圧の極性によって、可動フィルム152を上下のラビング層に近接する位置に移動させるとともに、一対の電極(122、124)間に印加する矩形波電圧のデューティ比、電圧、周波数などを制御することで、下側ラビング層側に近接する位置と、上側ラビング層側に近接する位置で直交して発生している液晶流動の方向と速度を制御して、可動フィルム152を所望の位置へと移動させる。
この実施例では、可動フィルム152がネマティック液晶層の側面からネマティック液晶層外に突出している。この突出している部分の上側面154に、ある種の物体を載置、あるいは連結すると、その物体は可動フィルム152の移動に追随して駆動することになる。即ち、可動フィルム152の移動力を利用して、載置あるいは連結された物体を駆動させることができる。この物体移動装置100は、アクチュエータとして機能することができる。可動フィルム152の移動は、極めて微小距離で制御可能であるので、ひいては、その物体も微小距離で移動させることができる。本実施例では、可動フィルム152が一対の電極(122、124)間方向に直交する面内で移動可能であるので、載置あるいは連結されている物体もその面内で移動させることができる。即ち、載置あるいは連結されている物体を、2次元で微小距離移動させることができる。なお、第1弾性部材162と第2弾性部材164は、印加する矩形波電圧をオフしたときに、可動フィルム152を初期位置に移動させ、物体移動装置100を初期状態に戻す。
第2実施例は、次の特徴を有している。
可動フィルム152を、ネマティック液晶層の側面から外部に突出させているので、一対の電極(122、124)間方向の物体移動装置100の大きさは、ほとんど大きくならない。扁平構造が望まれる場面で、好適に利用することができる。
また、可動フィルム152を、ネマティック液晶層の側面から外部に突出させることで、外部において載置あるいは連結されている物体の移動範囲を大きくすることができる。
なお、第2実施例は、次の変形例であってもよい。
可動フィルム152の厚みが、一対の電極(122、124)間の距離に比して十分に薄い場合は、3次元での移動を実現することができる。ひいては、載置あるいは連結されている物体を、3次元で移動させることができる。
一対のラビング層のラビング方向は、逆向きに形成してもよい。この場合、可動フィルムは、そのラビング方向と平行方向の直線往復運動となる。この場合でも、物体移動装置の扁平化というメリットを得ることができる。
また、図9に示すように、メッシュ252aが多数形成された可動フィルム252を利用してもよい。この場合、ネマティック液晶と可動フィルム252が接する面積が増大するので、液晶流動が可動フィルム252に加える力が増大し、可動フィルム252を強い力で移動させることができる。したがって、載置あるいは連結される物体の重量が重い場合でも、その物体を駆動させることができる。
次に、強い駆動力を得るための工夫の一例を図10に示す。
図10に示す物体移動装置300は、図7に示す物体移動装置100を単位として、その物体移動装置100が複数積層されていると評価することができる。実際には、本実施例の物体移動装置300は、積層方向に隣接する下側電極と上側電極は兼用して用いられている。この場合も、単位となる物体移動装置が複数積層されていると評価する。
この物体移動装置300は、複数積層された電極(322、323、324、325、326、327)を備えている。それぞれの電極(322、323、324、325、326、327)間にネマティック液晶が介在している。それぞれの電極(322、323、324、325、326、327)とそれぞれのネマティック液晶との間に、ラビング層が介在している。ラビング層面(322a、324b、324a、326b、326a)のラビング方向は一致している。一方、ラビング層面(323b、323a、325b、325a、327b)のラビング方向は一致している。そして、両者のグループのラビング方向が直交している。各ネマティック液晶層内に、可動フィルム(352a、352b、352c、352d、352e)が移動可能に配置されている。その可動フィルム352a、352b、352c、352d、352e)はネマティック液晶層の側面からネマティック液晶層外に伸びるとともに、その外部において一体化されている。これにより、一体の可動フィルム群352を構成している。可動フィルム群352の突出部分の上側面354には、ある種の物体を載置、あるいは連結可能になっている。この可動フィルム群352に弾性部材362が連結しており、この弾性部材362の他端は外壁372と連結している。なお、図示しない図面奥行き方向に、もう一つの弾性部材が備えられており、この弾性部材は可動フィルム群352と図示しない外壁とを連結している。この弾性部材362は、可動フィルム群352を所定の初期位置に付勢している。
電極(322、323、324、325、326、327)のうち、電極(322、324、326)はファンクションジェネレータ392の一方の端子に接続しており、電極(323、325、327)は、ファンクションジェネレータ392の他方の端子に接続している。ファンクションジェネレータ392は、CPU394(制御手段の一例)から電気信号を入力する。なお、このCPU394は、ファンクションジェネレータ392の一部として組み込まれていてもよい。このCPU394は、それぞれのラビング層のラビング方向を記憶している第1メモリー396と、可動フィルム群352の移動先を記憶している第2メモリー398を備えている。
ファンクションジェネレータ392から、電極(323、325、327)に正極矩形波電圧を印加すると、可動フィルム(352a、352b、352c、352d、352e)に静電引力が作用し、可動フィルム(352a、352b、352c、352d、352e)は前記電極(323、325、327)に引き寄せられる(可動フィルムの材料によっては、斥力が働く場合もある)。可動フィルム群352は、柔らかい素材が用いられているので、変形するとともに、前記電極(323、325、327)に引き寄せられる。この電極(323、325、327)のラビング層面(323b、323a、325b、325a、327b)には、同一方向のラビングが施されている。したがって、可動フィルム352a、352b、352c、352d、352e)は、そのラビング方向に沿って移動する。それぞれの可動フィルム352a、352b、352c、352d、352e)は一体で構成されているので、可動フィルム郡352全体としての駆動力は、それぞれの可動フィルム352a、352b、352c、352d、352e)の合計として得ることができる。強い駆動力を得ることができ、ひいては、載置あるいは連結されている物体の重量が重い場合でも、その物体を移動させることができる。
また、印加する矩形波電圧の極性、デューティ比、電圧強度、周波数などを制御することで、この可動フィルム352を2次元、あるいは3次元で自在に移動させることができる。したがって、載置あるいは連結されている物体の重量が重い場合であっても、その物体を2次元、あるいは3次元で自在に移動させることができる。
(第3実施例) 図11に第3実施例の物体移動装置400の概略的な平面図を示す。この物体移動装置400は、電極間方向から可動フィルム452の移動力を利用して駆動力を得るタイプである。一対の電極間方向の厚みがそれほど問題とならない場面などは、この種のタイプを採用してもよい。
図示424は上側電極であり、その略中心に開口425が形成されている。なお、図示しない下側電極は、上側電極424と対向する位置に設けられており、それぞれが面状に広がる下側電極と、下側ラビング層と、ネマティック液晶と、上側ラビング層と、上側電極424がこの順で配置されている。一対のラビング層のそれぞれのラビング方向は直交している。可動フィルム452は、略矩形の面状で形成されており、各々の角に弾性部材(462、463、464、465)が連結している。この弾性部材(462、463、464、465)の他端は、外壁(472、473、474、475)に連結している。弾性部材(462、463、464、465)は、可動フィルム452を所定の初期位置に付勢している。なお、弾性部材(462、463、464、465)の数は、必要に応じて増減させてもよい。上側電極452の開口425を介して、可動フィルム452と連結する図示しない連結部材がネマティック液晶層外に伸びている。
この可動フィルム452が、液晶流動に沿って移動する現象のメカニズムは、基本的には第1実施例のそれと同一である。即ち、一対の電極間に印加する矩形波電圧の極性によって、可動フィルム452を上下のラビング層に近接する位置に移動させるとともに、一対の電極間に印加する矩形波電圧のデューティ比、電圧、周波数などを制御することで、下側ラビング層側に近接する位置と、上側ラビング層側に近接する位置で直交して発生している液晶流動の方向と速度を制御して、可動フィルム452を所望の位置へと移動させる。
これにより、可動フィルム452は、2次元で移動することができる。この可動フィルム452の2次元の移動は、開口部425を介して図示しない連結部材を2次元で駆動させることができる。
なお、必要に応じて、可動フィルム452のネマティック液晶層外に伸びている部分を利用して、連結部材を構成してもよい。この場合、開口425は不要となる。
(第4実施例) 第4実施例は、可動フィルム552を極座標によって2次元で移動させる例である。図12に、物体移動装置500の一対のラビング層面(522a、524a)に施されているラビング方向(522b、524b)を示す。図13に、物体移動装置500の概略的な平面図を示す。なお、本実施例の一対の電極は円形状である。
図12に示すように、上側ラビング層面524aのラビング方向524bは、放射状に伸びて処理されている。下側ラビング層面522aのラビング方向522bは、同心円状に伸びて処理されている。放射状の中心と同心円状の中心は、一対のラビング層面(522a、524a)間方向に一致している(以下、座標中心という)。したがって、放射状のラビング方向524bと、同心円状のラビング方向522bは、直交する位置関係である。即ち、この一対のラビング層面(522a、524a)間の図示しないネマティック液晶の液晶分子は、90°ねじれた状態で存在している。
なお、図示されないが、上側電極552は下側電極と対向しており、それぞれが面状に広がる下側電極と、下側ラビング層と、ネマティック液晶層と、上側ラビング層と、上側電極424がこの順で配置されている。
この可動フィルム552が、液晶流動に沿って移動する現象のメカニズムは、基本的には第1実施例のそれと同一である。本実施例の液晶流動は、一対のラビング層面(522a、524a)のそれぞれのラビング方向(522b、524b)に沿って、上側ラビング層に近接する位置では座標中心から放射状に発生し、下側ラビング層に近接する位置では座標中心周りに回転する方向に発生する。印加する矩形波電圧の極性を利用して、可動フィルム524を上側ラビング層に近接する位置に移動させると、図13に示すように、可動フィルム552を、座標中心を通る直線上で移動させることができる。座標中心から伸びる直線往復運動を得ることができる。また、印加する矩形波電圧の極性を利用して可動フィルム524を下側ラビング層側に移動させると、図13に示すように、可動フィルム552を上側電極524の周縁方向に沿って移動させることができる。座標中心周りの回転運動を得ることができる。両者の移動を組合わせることで、可動フィルム552を極座標によって2次元で移動させることができる。
(第5実施例) 図14に、第5実施例の物体移動装置600の概略的な斜視図を示す。なお、この図14の紙面右側に円筒状の可動フィルム652が示されているが、実際は、この可動フィルム652は、紙面左側の一対の電極(1620、1640)間に配置されていることに留意されたい。図の明瞭化のために、敢えて別に図示している。図15と図16は、図14のXV−XV線と、XVI−XVI線に対応する断面図である。
図14に示すように、この物体移動装置600は、その内面が円筒状であり、周方向に4つの電極(622、623、624、625)に分割された外側円筒電極1620(第1電極の一例)を備えている。図示しない外側ラビング層(第1ラビング層の一例)は、外側円筒電極1620の内面に沿って配置されている。さらに、その外面が円柱状であり、周方向に沿って4つの電極(626、627、628、629)に分割された内側円柱電極1640(第2電極の一例)を備えている。図示しない内側ラビング層(第2ラビング層の一例)は、内側円柱電極1640の外面に沿って配置されている。
それぞれの分割電極(622〜629)間は、絶縁材(682、684、686)によって電気的に隔てられている。外側円筒電極1620と内側円筒電極1640に設けられて分割電極は、それぞれ対を成して対向している。外側円筒電極1620と内側円筒電極1640の間には図示しないネマティック液晶層が介在している。
外側ラビング層は、その周方向を一巡してラビングが施されている。一方、内側ラビング層は、その円柱の軸方向に沿ってラビングが施されている。したがって、一対のラビング層間の図示しないネマティック液晶層の液晶分子は、90°ねじれた状態で存在している。
この可動フィルム652が、液晶流動に沿って移動する現象のメカニズムは、基本的には第1実施例のそれと同一である。本実施例の液晶流動は、外側円筒電極1620の外側ラビング層側に近接する位置において、その周方向を一巡する方向に沿って発生している。一方、内側円柱電極1640の内側ラビング層に近接する位置において、液晶流動は、その円柱の軸方向に沿って発生している。
分割電極(623、625、626、628)に正極矩形波電圧を印加すると、図15と図16に示すように、可動フィルム652に静電引力が作用し、可動フィルム652は分割電極(623、625、626、628)側に引き寄せられる。なお、この可動フィルム652は柔らかい材料(例えば、ポリスチレンなどが材料として好適に用いられる)で形成されているので、変形した状態で引き寄せられる。この状態の可動フィルム652の断面形状は楕円形状であり、その長径は外側ラビング層の直径に略等しく、その短径は内側ラビング層の直径に略等しくなる。
図15に示すように、外側円筒電極1620側の分割電極(623、625)に引き寄せられた可動フィルム652は、周方向を一巡する方向に沿って発生する液晶流動から力を受けて、その周方向を一巡する方向に移動し回転する。図15では、紙面垂直方向に移動する。一方、図16に示すように、内側円柱電極1640側の分割電極(626、628)に引き寄せられた可動フィルム652は、円柱の軸方向に沿って発生する液晶流動から力を受けて、その円柱の軸方向に沿って移動する。図16では、紙面上下方向に沿って移動する。可動フィルム652のこれら移動方向が複合すると、図14に示すように、螺旋状の移動を得ることができる。
なお、可動フィルム652にもともと楕円形状に加工された可動フィルムを用いてもよい。同様の作用効果を得ることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、印加する電圧は交番電圧であってもよい。典型的には、矩形波の交番電圧や、サイン波の交番電圧や、三角波の交番電圧や、鋸波の交番電圧を挙げることができる。
また、本明細書で記載される技術は、例えば、バイオチップ、μ−TAS(マイクロ化学分析システム)、クロマトグラフィー、顕微鏡用の微小物***置決め装置、内部粒子を動かすことによって表示するディスプレイなどに利用され得る。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
第1実施例の物体移動装置の要部断面図を示す。 第1実施例のラビング方向を示す。 第1実施例の液晶における、矩形波電圧の立ち上がり時(A)と立ち下がり時(B)の液晶流動方向と流速分布を示す。 第1実施例の粒子速度と矩形波電圧のデューティ比との関係を示す。 第1実施例の粒子速度と矩形波電圧の電圧強度との関係を示す。 第1実施例の粒子速度と矩形波電圧の周波数との関係を示す。 第2実施例の物体移動装置の斜視図を示す。 第2実施例の要部断面図を示す。 可動フィルムの変形例を示す。 積層構造の物体移動装置を示す。 第3実施例の物体移動装置の平面図を示す。 第4実施例のラビング方向を示す。 第4実施例の物体移動装置の平面図を示す。 第5実施例の物体移動装置の斜視図を示す。 第5実施例の物体移動装置の要部断面図を示す(1)。 第5実施例の物体移動装置の要部断面図を示す(2)。
符号の説明
12、14:ガラス基板
22:下側電極
24:上側電極
32:下側ラビング層
32a:下側ラビング面
32b:下側ラビング方向
34:上側ラビング層
34a:上側ラビング面
34b:上側ラビング方向
42:ネマティック液晶層
52:ポリマービーズ
92:ファンクションジェネレータ
94:CPU
96:第1メモリー
98:第2メモリー
152:可動フィルム

Claims (9)

  1. 第1電極と第1ラビング層と液晶層と第2ラビング層と第2電極が順に配置されおり、
    第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向が交差する関係に調整されており、
    液晶層内に移動可能に配置されている物体を、第1ラビング層に接近する位置と第2ラビング層に接近する位置の間で移動させる面直方向移動手段を備えている物体移動装置。
  2. 第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向が直交することを特徴とする請求項1の物体移動装置。
  3. 面直方向移動手段は、第1電極と第2電極の間に加える電圧の極性を切換えることによって、第1ラビング層に接近する位置と第2ラビング層に接近する位置の間で物体を移動させることを特徴とする請求項1又は2の物体移動装置。
  4. 前記物体は、メッシュが形成された板状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの物体移動装置。
  5. 前記物体と一体に移動し、第1ラビング層と第2ラビング層によって流出が防止されている液晶層の側面から液晶層外に伸びる連結部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの物体移動装置。
  6. 請求項5の物体移動装置の複数が積層されており、単位となる物体移動装置のそれぞれの液晶層から外に伸びる連結部材が、液晶層外で一体化されていることを特徴とする物体移動装置。
  7. 第1ラビング層のラビング方向は放射状であり、第2ラビング層のラビング方向は同心円状であることを特徴とする請求項1の物体移動装置。
  8. 第1電極は、その内面が円筒状であり、周方向に分割されており、
    第1ラビング層は、第1電極の内面に沿って配置されており、
    第2電極は、その外面が円柱状であり、周方向に分割されており、第1電極と同心に配置されており、
    第2ラビング層は、第2電極の外面に沿って配置されており、
    第1ラビング層と第2ラビング層のラビング方向は、一方が周方向であり、他方が軸方向であることを特徴とする請求項1の物体移動装置。
  9. 第1電極と第2電極の間に矩形波電圧を印加する電圧印加手段をさらに備え、
    その電圧印加手段は、矩形波電圧のデューティ比を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの物体移動装置。
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