本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するに先立ち、まず、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図24および図25を参照して説明しておく。
図24は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC−ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、スイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1は、例えば、MOS−FETである。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。また、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、1次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZは、2次側の負荷を1次側に換算したものである。
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと1次側並列共振コンデンサCrの容量(キャパシタンス)とにより共振周波数が支配されるように形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより共振周波数が支配されるように形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
図25は、図24に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。図25では、上段から下段に向かい、スイッチング電圧V1(図24を参照)、電流I1(図24を参照)、電流I2図24を参照)、スイッチング電流IQ1(図24を参照)の各々を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなるオン期間TONにおいて0レベルで、オフとなるオフ期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(ボディダイオードDDをスイッチング素子Q1の要素として含む)に流れる電流であり、オフ期間TOFFでは0レベルで、オン期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流IQ1と、1次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVSおよびZCS動作が得られていることも示される。
また、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10、チョークコイルL11の各々の有するインダクタンスについて、チョークコイルL10のインダクタンスの値>チョークコイルL11のインダクタンスの値となる関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
ここで、上述したように、チョークコイルL10のインダクタンス>チョークコイルL11のインダクタンスとなる関係を設定することで、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が安定して得られ、ターンオンタイミングにおいてZVSおよびZCS動作が安定して得られる事実を、出発点としながらも、本出願の願書に記載の発明者(本願発明者と省略する)は、装置を小型化にし、低価格にするために、L10を小さくしたE級スイッチングコンバータの変形回路を創作し、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングおよびターンオンタイミングにおいてZVS動作が安定におこなえる回路構成を得た。
すなわち、本願発明者の創作に係るコンバータ部(スイッチングコンバータ)は、1次側に電圧共振回路と2つの電流共振回路とを設ける。この電流共振回路の一方は、チョークコイルと1次側直列共振コンデンサとによって1次側第1直列共振周波数が支配される1次側第1直列共振回路であり、他の一方は、コンバータトランスの1次巻線に発生する漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって1次側第2直列共振周波数が支配される1次側第2直列共振回路である。そして、1次側第1直列共振周波数を1次側第2直列共振周波数の略2倍となるようにすることによって、チョークコイルのインダクタンスの値が小さいものであっても良好なるZVS動作が安定して得られるものである。ここで。略2倍とは、中心値である2倍に対して2割の範囲を含むものである。
また、本願発明者によって、1次側並列共振周波数、2次側並列共振周波数、1次側第1直列共振周波数および1次側第2直列共振周波数の相互の関係を以下のように定める場合には、良好なるZVS特性を有することが実験結果から見出された。すなわち、2次巻線に発生する漏れインダクタと2次側並列共振コンデンサとによって2次側並列共振周波数が支配される2次側並列共振周波数と、1次巻線に発生する漏れインダクタと1次側並列共振コンデンサとによって1次側並列共振周波数が支配される1次側並列共振周波数とを略等しくなるように設定する。また、チョークコイルと1次側直列共振コンデンサとによって1次側第1直列共振周波数が支配される1次側第1直列共振回路の共振周波数を、1次側並列共振周波数および2次側並列共振周波数のいずれに対しても1/2以下となるように設定する。また、1次巻線に発生する漏れインダクタと1次側直列共振コンデンサとによって1次側第2直列共振周波数が支配される1次側第2直列共振回路の共振周波数を、1次側並列共振周波数および2次側並列共振周波数のいずれに対しても1/2以下となるように設定する。ここで、略等しくなるように設定するとは、1次側並列共振周波数と2次側並列共振周波数の相互の共振周波数が2割程度の範囲内となることをいうものであり、1次側並列共振周波数および2次側並列共振周波数のいずれに対しても1/2以下となるように設定するとは、好ましくは、1/2以下であって1/3以上の範囲をいうものである。なお、一次側に形成される共振回路として、電圧共振回路である一次側並列共振回路と、電流共振回路である一次側第1直列共振回路および一次側第2直列共振回路と、を結合した電圧・電流共振形のスイッチング回路であって、このような回路構成を採用してZVS動作をさせるものを、I級スイッチング回路と称するものである。
さらに、本願発明者は、このコンバータ部に力率改善部を組み合わせ、良好なる力率改善特性も併せて得ることができるスイッチング電源回路を実現した。力率改善部は、1次側整流素子を介して、1次側直列共振コンデンサに流れる共振電流の一部である、1次側第1直列共振回路に流れる共振電流の一部および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流の一部を交流電源から流すような構成としても良く、また、1次側整流素子を介して1次側直列共振コンデンサに発生する電圧に応じた電流を交流電源から流すようにしても良いものである。すなわち、力率改善回路は、1次側直列共振コンデンサに流れる電流を1次側平滑コンデンサに帰還する電力回生方式力率改善回路として構成しても、1次側直列共振コンデンサに流れる電流に応じた電圧を1次側平滑コンデンサに帰還する電圧帰還方式力率改善回路として構成してもよいものである。以下、これらの具体的な回路構成を実施形態として説明する。
(第1実施形態)
本実施の形態としては、上述したE級スイッチングコンバータを変形して、電源回路に適用する。図1の回路図に示す、第1実施形態のスイッチング電源回路の概要を以下に述べる。すなわち、第1実施形態のスイッチング電源回路は、交流電源ACからの入力交流電力を1次側直流電力に変換する整流平滑部と、整流平滑部からの1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、を備えるスイッチング電源回路である。そして、整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと平滑コンデンサCiとを具備し、コンバータ部は、平滑コンデンサCiから1次側直流電力が供給されるチョークコイルPCCと、チョークコイルPCCからの電力が供給される1次巻線N1とこの1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線N2とを有するコンバータトランスPITと、1次巻線N1に交流電力を供給するスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路2と、2次巻線N2に接続される2次側整流回路を形成する2次側整流素子Diと平滑コンデンサCoとによって出力される2次側直流出力電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を発振・ドライブ回路2に供給する制御回路1と、インダクタL3として機能するチョークコイルPCCと1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第1直列共振周波数が支配される1次側第1直列共振回路と、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第2直列共振周波数が支配され、1次側第1直列共振周波数が1次側第2直列共振周波数の略2倍となるように設定される1次側第2直列共振回路と、電圧クランプ用コンデンサCcと補助スイッチング素子Q2との直列回路であって、スイッチング素子Q1に加わる電圧をクランプするアクティブクランプ回路と、を具備する。ここで、補助スイッチング素子Q2はスイッチング素子Q1と相補的にオンとされる。また、力率改善部は、1次側整流素子Diを介して1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流が交流電源から流れるようになされている。このように共振電流を交流電源から流すために、上述の1次側整流素子Diは高速整流素子で形成されるとともに力率改善用インダクタLoを具備するものである。以下、順に、整流平滑部の概要、コンバータ部の概要、さらに、力率改善部の概要、2次側整流回路の概要を説明する。
整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと平滑コンデンサCiとを有して形成されている。交流電源ACからの入力交流電力を1次側整流素子Diの入力側に入力して、1次側整流素子Diの出力側の一端と平滑コンデンサCiとが接続されて、1次側直流電力を生成する。
1次側は、E級スイッチング動作の電圧・電流共振コンバータとしての構成を有するが、図24に示すE級スイッチングコンバータとは、異なる接続を有している。すなわち、図24に示すE級スイッチングコンバータにおいては、チョークコイルL10とチョークコイルL11との接続点からスイッチング素子Q1に直流電力が供給されていたが、本実施形態のコンバータでは、チョークコイルL10に対応するチョークコイルPCCとチョークコイルL11に対応する1次巻線N1に生じる漏れインダクタL1との直列接続回路からスイッチング素子Q1に直流電力が供給されている。このように、E級コンバータとは異なる構成を有しながら、E級コンバータが有する、コンバータ回路への入力電流が直流電流に近いものとなる効果と、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングおよびターンオンタイミングにおいてZVS動作とする効果と、を得ることができる。本実施形態の回路構成を変形E級コンバータと称するものである。このようにして、1次側は、電流・電圧共振回路を有し、また、2次側は、後述する電流共振回路を有し、多重共振形のコンバータ部を構成している。
より具体的には、この多重共振形のコンバータ部は、共振コンバータとして見た場合には、平滑コンデンサCiの一端に一端が接続されるチョークコイルPCCと、チョークコイルPCCの他端に1次巻線N1の一端が接続される、1次巻線N1と2次巻線N2とが疎に結合して巻回されるコンバータトランスPITとを具備している。また、コンバータトランスPITの1次巻線N1(単に1次巻線N1との省略も以下では用いる)の他端がスイッチング素子Q1の一端に接続され、これによってコンバータトランスPITに交流電力を供給する。そして、インダクタL3として機能するチョークコイルPCCとチョークコイルPCCの他端および1次巻線N1の一端に接続される1次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって共振周波数である1次側第1直列共振周波数が支配を受ける1次側第1直列共振回路と、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって共振周波数である1次側第2直列共振周波数が支配を受ける1次側第2直列共振回路と、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1およびインダクタL3として機能するチョークコイルPCCとスイッチング素子Q1に並列に接続される1次側並列共振コンデンサCrとによって共振周波数が支配を受ける1次側並列共振回路と、を具備する。
ここで、1次側第1直列共振周波数と1次側第2直列共振周波数との比は略2:1に設定される。すなわち、1次側第2直列共振周波数を基準とすれば、1次側第1直列共振周波数は略2倍、1次側第1直列共振周波数を基準とすれば、1次側第2直列共振周波数は略1/2倍に設定されている。この値は、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングおよびターンオンタイミングにおいてZVS動作とする効果との関係において重要であり、上述の値から異なる値となるに従い、ZVS動作が得られる負荷電力の可変範囲は狭くなることを本願発明者は見出した。ここで、略2倍、略1/2倍とは、2倍または1/2倍を中心として2割の範囲を含むものである。なお、1次側並列共振回路の周波数は、1次側第1直列共振周波数の略2倍としている。
また、スイッチング素子をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路2と、コンバータトランスPITの2次巻線N2(単に2次巻線N2との省略も以下では用いる)に接続される2次側整流回路によって出力される2次側直流出力電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を上記発振・ドライブ回路2に供給する制御回路1と、を具備しており、2次巻線N2に接続される2次側整流回路は、2次側直列共振コンデンサC4を有して2次側直列共振回路を形成している。
ここで、制御回路1は、入力された2次側直流出力電圧Eoと所定の値の基準電圧値との差に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じて主としてはスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。また、スイッチング周波数とともに一周期におけるスイッチング素子Q1のオンとなる時間の比率である時比率を変化させるようにしても良い。
このようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数が可変制御されることにより、電源回路における1次側、2次側の共振インピーダンスが変化し、コンバータトランスPITの1次巻線N1から2次巻線N2側に伝送される電力量、また、2次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、2次側直流出力電圧Eoの大きさを基準電圧と一致させる動作が得られることになる。つまり、2次側直流出力電圧Eoの安定化が図られるようになされている。
また、電圧クランプ用コンデンサCcと補助スイッチング素子Q2との直列回路でアクティブクランプ回路を形成する。ここで、補助スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と相補的にオンとされる。すなわち、スイッチング素子Q1がオン(導通)となるときには補助スイッチング素子Q2はオンとなることはなく、補助スイッチング素子Q2がオンとなるときにはスイッチング素子Q1はオンとなることはないものである。
さらに、本実施形態のスイッチング電源回路は、力率改善部を備えている。力率改善部は、交流電源ACから平滑コンデンサCiに対して、1次側第1直列共振回路および前記1次側第2直列共振回路に流れる共振電流を加算した電流を一方向に流すための整流素子と機能する1次側整流素子Diおよび力率改善用インダクタLoを具備している。
ここで、力率改善用インダクタLoの一端は、1次側整流素子Diの出力側の一端および1次側直列共振コンデンサC2に接続され、力率改善用インダクタLoの他端は、平滑コンデンサCiに接続されている。
また、フィルタコンデンサCNが、1次側整流素子Diの入力側に接続されている。このフィルタコンデンサCNはノーマルモードノイズを抑制するためのものであり、これによってスイッチング素子Q1のスイッチングに応じて発生する輻射成分が交流電源AC側に流出するのを防ぐことができる。
また、本実施形態のスイッチング電源回路の2次側整流回路は、2次側直列共振コンデンサC4が直列接続された2次巻線N2に対して、高速で働く、2次側整流素子Doおよび平滑コンデンサCoを接続することで、全波整流回路として形成される。すなわち、2次側直列共振コンデンサC4には正負の電流がスイッチング周期で流れ、どちらの極性に電荷がチャージされることもなく、共振回路の一部として機能する。すなわち、2次側整流回路は、2次巻線N2の有する漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC4とで直列共振周波数が支配される2次側直列共振回路を構成する。なお、2次側の整流回路は、2次巻線N2に生じる電圧の等倍となる整流回路のみならず、その2倍の電圧を発生させる倍電圧整流回路とするものであっても良く、さらには、2次側の共振回路については、直列共振回路を形成して多重形のコンバータとするのみではなく、部分電圧共振回路または並列共振回路を形成して多重形のコンバータとするものであっても良く、さらには、2次側に共振回路を形成せず2次側整流回路のみを設けるものであっても良い。これらの2次側整流回路の種々の変形例については後述する。
次に、図1に示す実施形態のスイッチング電源回路について、商用の交流電源AC側から、順に、以下において、その作用を中心として、より詳細に説明する。商用の交流電源ACの2相の入力ラインは、コモンモードチョークコイルCMCとアクロスコンデンサCLおよびフィルタコンデンサCNとからなるコモンモードノイズフィルタを介して1次側整流素子Diに接続される。ここで、コモンモードノイズフィルタは、商用の交流電源ACのラインとスイッチング電源回路の2次側との間に発生するコモンモードノイズを除去する機能を有している。なお、フィルタコンデンサCNはコモンモードノイズフィルタとして機能するのみではなく、上述したように、ノーマルモードフィルタとしても本実施形態においては機能するものである。
コモンモードノイズフィルタを通過した交流電力は、4本の高速型の整流素子(ダイオード)をブリッジ接続して形成した1次側整流素子Diの入力側に加えられて、1次側整流素子Diによって整流され、脈流電圧を発生させる。脈流電圧は、力率改善用インダクタLoを介して平滑コンデンサCiに印加され、平滑コンデンサCiの両端は脈流電圧のピーク値付近の電圧値の直流電圧である直流入力電圧Eiを維持する。ここで、1次側整流素子Diを高速型の整流素子(ダイオード)をブリッジ接続して形成した理由は、1次側整流素子Diを1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流を一方向に流すための整流素子として機能させ力率改善部の一部を構成し回路の簡略化を図るためである。すなわち、力率改善部は両方向に流れる共振電流の一部である一方向の成分を、1次側整流素子Diを介して交流電源ACから流して力率を改善するものである。
ここで、直流入力電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。この直流入力電圧Eiが、後段のE級スイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
多重共振形のコンバータ部は、変形E級スイッチングコンバータとして、E級スイッチングコンバータと略同様に機能するものである。チョークコイルPCC、コンバータトランスPIT、1次側直列共振コンデンサC2、1次側並列共振コンデンサCrおよびスイッチング素子Q1を主要部として形成される。図24を引用して原理説明をしたE級スイッチングコンバータの各部と図1における各部との対応関係を以下に示す。チョークコイルL10がチョークコイルPCCに、チョークコイルL11がコンバータトランスPITの1次巻線N1に生じる漏れインダクタL1に、1次側直列共振コンデンサC11が1次側直列共振コンデンサC2に、1次側並列共振コンデンサCrが1次側並列共振コンデンサCrに、スイッチング素子Q1がスイッチング素子Q1に、負荷となるインピーダンスZが2次側のインピーダンスを1次側に換算したインピーダンスに、各々、相当するものである。
すなわち、図1に示す第1実施形態においては、以下のようにして変形E級スイッチングコンバータを構成する。平滑コンデンサCiの一端にチョークコイルPCCの一方の端子(一端)が接続され、チョークコイルPCCの他方の端子(他端)がコンバータトランスPITの1次巻線N1の一端および1次側直列共振コンデンサC2に接続される。そして、コンバータトランスPITの1次巻線N1の他端とスイッチング素子Q1の一端とが接続される。また、1次側並列共振コンデンサCrがスイッチング素子Q1に並列に接続される。このような構成を採用する場合においても、電流I1が脈流となり、交流電流を平滑コンデンサCiから供給することがなく、平滑コンデンサCiの負担が軽減されるという益を享受できるものとなっている。
コンバータトランスPITの1次巻線N1と2次巻線N2とは、結合係数が0.82の疎結合とされているので、1次巻線N1は漏れインダクタL1を有するものとなっている。そして、チョークコイルPCCのインダクタL3と1次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって1次側第1直列共振周波数が支配を受ける1次側第1直列共振回路が形成される。また、漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって1次側第2直列共振周波数が支配を受ける1次側第2直列共振回路が形成される。また、漏れインダクタL1およびインダクタL3として機能するチョークコイルPCCと1次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとによって1次側並列共振周波数が支配を受ける1次側並列共振回路が形成される。
ここで、共振周波数が「支配を受ける」とは、主としてこれらの要素によって共振周波数が定まることを言うものである。例えば、1次側第1直列共振周波数、1次側第2直列共振周波数および1次側並列共振周波数は、力率改善用インダクタLoのインダクタンス成分、平滑コンデンサCiのキャパシタンス等によっても影響されるが、これらが1次側直列共振周波数、1次側並列共振周波数に与える影響は、より、少ないものである。
具体的には、1次側第1直列共振回路は、1次側整流素子Diの接地点、2個の直列接続された高速整流素子の2組の各々のアノードから各々のカソードを経て、1次側直列共振コンデンサC2、チョークコイルPCC、平滑コンデンサCiに至る経路によって一の方向の電流経路が形成され、1次側直列共振コンデンサC2、力率改善用インダクタLo、チョークコイルPCCに至る経路によって他の方向の電流経路が形成される。また、1次側第2直列共振回路は、1次側整流素子Diの接地点、2個の直列接続された高速整流素子の2組の各々のアノードから各々のカソードを経て、1次側直列共振コンデンサC2、1次巻線N1、スイッチング素子Q1のドレインからソースに至る経路によって一の方向の電流経路が形成され、1次側直列共振コンデンサC2、力率改善用インダクタ、平滑コンデンサCi、ボディダイオードDD1、1次巻線N1に至る経路によって他の方向の電流経路が形成される。
また、上述したように、コンバータトランスの2次巻線N2が2次側直列共振コンデンサC4と接続され、2次側の漏れインダクタンス成分(図1において、インダクタL2で表す)と2次側直列共振コンデンサC4のキャパシタンスとによって共振周波数が支配を受ける2次側直列共振回路を形成する。なお、本実施形態においては、2次側直列共振回路を構成する回路としては、全波整流回路としたが、この他に回路としては、後述する倍電圧半波整流回路または倍電圧全波整流回路として構成しても良く、さらには、2次側としては、2次側直列共振回路のみならず、部分共振回路を用いるものとしても良いものである。なお、2次側の各種の整流回路に用いられるダイオードは、2次側巻線N2に流れる高周波電流に対応して、高周波のスイッチング特性が良好なる高速のダイオードが採用される。
そして、1次側直列共振回路および1次側並列共振回路に交流電力を供給するスイッチング素子Q1が1次巻線N1の他端に接続される。ここで、発振・ドライブ回路2がスイッチング素子Q1を駆動するようになされている。このようにして、1次側は、変形E級スイッチング動作のコンバータとして動作するとともに、電圧・電流共振コンバータとしての構成を有し、また、2次側は、電流共振回路を有して、全体として、2次側直流出力電圧Eoの値を一定とする多重共振形コンバータを構成する。すなわち、本実施形態のスイッチング電源回路は、交流的な観点から見ると1次側直列共振回路、1次側並列共振回路および2次側直列共振回路を備えてなる多重共振形のコンバータ部を具備するものとして構成されている。
次にアクティブクランプ回路について説明する。アクティブクランプ回路は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiとの間に挿入されており、スイッチング素子Q1の両端の電圧をクランプする。
アクティブクランプ回路は、電圧クランプ用コンデンサCcと補助スイッチング素子Q2の直列接続回路によって形成され、補助スイッチング素子Q2として、ボディダイオードDD2を有するMOS―FETが用いられている。このMOS―FETのゲートには、制御巻線Ngからの電圧が抵抗Rg1と抵抗Rg2とで分圧されて印加されている。ここで、制御巻線Ngの極性は、スイッチング素子Q1と補助スイッチング素子Q2とが相補的にオンとなる方向にコンバータトランスPITに巻回されている。抵抗Rg1の値は220Ω(オーム)とし、抵抗Rg2の値は100Ω(オーム)とした。制御巻線Ngに発生する電圧が正弦波に近い波形であるので、この抵抗Rg1と抵抗Rg2の比率を変化させることによって、補助スイッチング素子Q2のゲートとソースの間の電圧を調整でき、スイッチング素子Q1に発生する電圧をクランプする時間の長さを調整することができる。すなわち、抵抗Rg1の値が抵抗Rg2の値に較べて小さくなるに従って補助スイッチング素子Q2がオンとなる時間が長くなるものである。
ここで、電圧クランプ用コンデンサCcのキャパシタンスは、補助スイッチング素子に流れる電流の電荷量によっては、電圧クランプ用コンデンサCcの両端電圧がほとんど変化しない程度に十分に大きいものである。そのために、補助スイッチング素子Q2がオンとなっている時間、すなわち、補助スイッチング素子に電流が流れている時間においては、スイッチング素子Q1に印加される電圧はクランプされ、本来正弦波状となるところが、そのピーク部分は潰されている。そして、スイッチング素子Q1の耐電圧は低いものとできる。
さらに、補助スイッチング素子Q2に電流を流すことによって、ZVS特性を生じる領域が拡大することも実験によって確かめられた。すなわち、アクティブクランプ回路を設けることによって、ZVS特性の領域を広げることができるものである。
また、補助スイッチング素子Q2は制御巻線Ngによって制御され、制御巻線Ngに発生する電圧は、スイッチング素子Q1によって制御されているので、補助スイッチング素子Q2は常にスイッチング素子Q1と同期して動作することとなり、複数のスイッチング周波数が混在して不要なビート(複数の周波数の干渉)の発生等の問題が生じることはない。
次に、力率改善部について、その作用を説明する。力率改善用インダクタLoおよび1次側整流素子Diが1次側直列共振コンデンサC2に接続されることによって、力率改善の効果を生じる。1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流は1次側直列共振コンデンサC2に流れるが、1次側直列共振コンデンサC2に流れる共振電流の一方向の電流は、1次側整流素子Diを構成する2個の整流素子のカソードを介して交流電源ACから流れ込み、整流電流に加算されて電流I1として流れる。この場合において、この共振電流に対して高いインピーダンスを有する力率改善用インダクタLoが平滑コンデンサCiから1次側直列共振コンデンサC2に共振電流が流れることを阻止する。
一方、共振電流の他の方向の電流は、1次側整流素子Diを構成する2個の整流素子のカソードを介して流れることはできず、平滑コンデンサCiに流れ込む電流I2として1次側整流素子Diからの電流に加算されるものとなる。上述したように、共振電流の通過経路を電流の流れる方向に応じて切り替える作用を有するためには、1次側整流素子Diは、1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流の周期の成分およびこの整数倍の高調波に対して十分にスイッチング能力を有する高速型の整流素子によって形成されるものでなければならない。そのようなものではない場合にはスイッチング損失が増加して、スイッチング電源回路の効率が低下するのみならず、熱損失によって1次側整流素子Diの破壊を招く場合もあるからである。
このようにして、共振電流に含まれる共振電流の一部である一の方向の電流が1次側整流素子Diを流れることによって、交流入力電流IACは流通角が拡大されたものとなり、力率の改善が図られる、すなわち、1次側直列共振コンデンサC2が1次側整流素子Diに接続されない場合には、電流I1は、電圧V2のピーク付近でのみ流れるパルス状の波形となるものであるが、共振電流に含まれる一の方向の共振電流が電圧V2のピーク付近以外でも流れることによって導通角を拡大している。このようにして、本実施形態では、1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流を平滑コンデンサCiに帰還して電力回生方式力率改善部を構成する。
さらに、図1に示す実施形態のスイッチング電源回路の重要部分の細部の具体的構成および後述する図3ないし図5の結果を得た各部の諸定数について説明をする。
まず、コンバータトランスPITの詳細について説明する。コンバータトランスPITは、1次側と2次側とを絶縁するとともに電圧の変換を行う機能を有するが、さらに、多重共振方式の変形E級スイッチングコンバータを機能させるための共振回路の一部を構成するインダクタL1としても機能する。ここで、インダクタL1は、コンバータトランスPITによって形成される漏れインダクタである。図2に示すコンバータトランスPITの断面図に沿って、具体的な構造を説明する。
コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1とE型コアCR2とを互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コア(EE字形コア)を備える。そして、1次側と2次側の巻装部については、相互に独立するようにして分割し、例えば樹脂などによって形成されるボビンBが備えられる。そして、1次巻線N1、制御巻線Ngおよび2次巻線N2が巻装されたボビンBをEE字形コアに取り付けることで、1次巻線N1および制御巻線Ngが一の領域に巻装され、2次巻線N2がこの一の領域とは異なる巻装領域に分離され、EE字形コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにしてコンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
このEE字形コアの中央磁脚に対しては、1.2mmのギャップGを形成する。これによって、1次側と2次側との結合係数kの値としては、0.82を得ている。このようにして、大きなインダクタンス値の漏れインダクタL1を得るようにしている。なお、ギャップGは、E型コアCR1およびE型コアCR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成している。また、1次巻線N1の巻数は45T(ターン)、2次巻線N2の巻数は30T(ターン)、制御巻線Ngの巻数は1T(ターン)、コア材は、EER―35(コア材名称)とした。
また、1次側並列共振コンデンサCrの値は1000pFとし、1次側直列共振コンデンサC2の値は0.1μFとし、電圧クランプ用コンデンサCcの値は0.1μFとし、2次側直列共振コンデンサC4の値は0.056μFとした。また、フィルタコンデンサCNの値は1μFとした。
また、チョークコイルPCCおよび力率改善用インダクタLoのいずれもコンバータトランスPITと略同様の構成を採用することができる。インダクタL3として機能するチョークコイルPCCのインダクタンスの値は82μH、力率改善用インダクタLoのインダクタンスの値は82μHとした。
また、1次側整流素子Diは3A/600Vの仕様のものを用い、2次側整流素子Doは5A/200Vの仕様のものを用いた。いずれも高速整流素子で構成されるものである。
コンバータトランスPITの2次側では、1次巻線N1により誘起された交番電圧に相似した電圧波形が2次巻線N2に発生する。この2次巻線N2に対しては、2次側直列共振コンデンサC4を直列に接続している。これにより、2次巻線N2側から見た漏れインダクタL2と2次側直列共振コンデンサC4とによって2次側直列共振回路を形成する。この2次側直列共振回路の共振周波数は、上述した1次側直列共振コンデンサC2と漏れインダクタL1およびインダクタL3として機能するチョークコイルPCCとによって支配を受ける1次側直列共振周波数の周波数とほぼ等しくなるように本実施形態では設定されているが、2次側直列共振回路の共振周波数は、1次側直列共振周波数との関係では適宜、定め得るものである。また、2次側直列共振回路を設けることなく、部分電圧共振回路を2次側に設けるものとしても良いものである。
スイッチング素子Q1は、上述したようにMOS−FETが選定され、ソース−ドレイン間に並列にボディダイオードDD1を内蔵する。
制御回路1は、入力された2次側直流出力電圧Eoと所定の値の基準電圧値との差に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じて主としてはスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。また、スイッチング周波数とともに一周期におけるスイッチング素子Q1のオンとなる時間の比率である時比率を変化させるようにしても良い。
このようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数が可変制御されることにより、電源回路における1次側、2次側の共振インピーダンスが変化し、コンバータトランスPITの1次巻線N1から2次巻線N2側に伝送される電力量、また、2次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、2次側直流出力電圧Eoの大きさを基準電圧と一致させる動作が得られることになる。つまり、2次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。ここで、2次側直流出力電圧Eoの値は175Vとしている。
(第1実施形態の要部の動作波形と測定データ)
以上、本実施形態のスイッチング電源回路の構成および作用の説明をおこなって来たが、図1に示す実施形態のスイッチング電源回路の要部の動作波形を図3および図4に示し、測定データを図5に示す。
図3は、交流入力電圧100V、最大負荷電力の300Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図1を参照)、交流入力電流IAC(図1を参照)、電流I1(図1を参照)、電圧V2(図1を参照)、電流I2(図1を参照)、2次側直流出力電圧Eoのリップル成分ΔEoの各々を示す。図3の電流I1、電圧V2、および電流I2の斜線を施した部分の各々は、スイッチングしていることを示すものである。
また、図4は、交流入力電圧230V、最大負荷電力の300Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図1を参照)、交流入力電流IAC(図1を参照)、電流I1(図1を参照)、電圧V2(図1を参照)、電流I2(図1を参照)、2次側直流出力電圧Eoのリップル成分ΔEoの各々を示す。図4の電流I1、電圧V2、および電流I2の斜線を施した部分の各々は、スイッチングしていることを示すものである。
図5は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から300Wの範囲での負荷変動に対する直流入力電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCおよびスイッチング素子Q1のオン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
図5から読み取れる代表特性の一部を紹介すると、例えば、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.992であり、負荷電力Poが75Wのときの力率PFの値は0.85の高力率となっている。また、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は91.6%の高効率である。また、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲で直流入力電圧Eiの値は157Vないし170Vである。
また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.930であり、負荷電力Poが75Wのときの力率PFの値は0.76の高力率となっている。また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は93.5%の高効率である。また、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲で直流入力電圧Eiの値は353Vないし374Vである。以上の力率の数値は、交流入力電圧VACの値が100V、230Vのいずれの場合にもIEC61000−3−2に規定される75W以上の規格値を満たしている。
このような実施形態のスイッチング電源回路では、図28に背景技術として示すスイッチング電源回路の場合よりも電力変換効率ηAC→DCが向上している。また、実施形態のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまりアクティブフィルタは、図28を参照した説明からも分かるように、スイッチング素子Q103と、これらを駆動するための力率・出力電圧制御用IC120等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、フィルタコンデンサCN、力率改善用インダクタLoおよび1次側整流素子Diとして高速整流素子を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。これにより、力率改善機能を有する電源回路として、図28に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。ここで、力率改善用インダクタLoのインダクタンスの値は82μH、チョークコイルPCCのインダクタンスの値は82μHと小さなものであり、装置の小型軽量化が図れる。
また、実施形態のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図28に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。特に、E級スイッチングコンバータに入力される電流を直流電流に近づけることができるのでスイッチングノイズのレベルは非常に小さなものとできる。
さらに加えて、実施形態のスイッチング回路においては、1次側の直列共振回路および1次側の並列共振回路とともに2次側の直列共振回路を備えるので極めて僅かな周波数の変化によって2次側直流出力電圧Eoを所定電圧に維持することができ、ノイズフィルタの設計も容易なものとできる。このような理由から、1個のコモンモードチョークコイルCMCと2個のアクロスコンデンサCLから成る1段のノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、1個のフィルタコンデンサCNのみにより十分な対策が可能である。
また、スイッチング素子Q1と2次側の整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4などもスイッチング素子Q1に同期して動作するものである。したがって、アース電位としては、図28の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
さらに、アクティブクランプ回路を備えることによって、スイッチング素子Q1の耐電圧を低いものとするとともに、オン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFの値の変化範囲を縮小できる。さらに、スイッチング素子Q1の耐電圧を低いものにして、ZVS領域を拡大して、交流入力電圧VACの値が85Vから264Vと広い、いわゆるワイドレンジ化が可能となっている。
(第2実施形態)
図6に示す第2実施形態のスイッチング電源回路は、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略するが、多くの部分において第1実施形態におけると同様の構成を採用するものである。第1実施形態と異なる点は、1次側整流素子Diとして低速整流素子を用い、高速整流素子D1を1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流を一方向に流すための整流素子と機能させるものである。そして、高速整流素子D1に流れる共振電流を一方向に流すために、高速整流素子D1のカソードおよび力率改善用インダクタLoの一端を1次側直列共振コンデンサC2に接続し、高速整流素子D1のアノードを1次側整流素子Diの出力側に接続し、力率改善用インダクタLoの他端を平滑コンデンサCiに接続し、平滑コンデンサCiと高速整流素子D1のアノードとの間にフィルタコンデンサCNを接続するものである。
このような構成とすることによって、力率改善の目的で使用する高速整流素子を第1実施形態における4個から1個に減らし、低価格化を図ることができるものである。また、フィルタコンデンサCNは、交流電源AC側から見て1次側整流素子Diより以降に配されているので安全規格承認部品ではない通常の部品を使用できる。これ以外の他の部分の構成は第1実施形態と異なる点はなく、奏する作用効果は略同一のものである。
(第3実施形態)
図7に示す第3実施形態のスイッチング電源回路は、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略するが、多くの部分において第1実施形態におけると同様の構成を採用するものである。第1実施形態と異なる点は、力率改善部は、1次側整流素子を介して1次側直列共振コンデンサに発生する電圧に応じた電流を前記交流電源から流す点である。また、コンバータ部に関しての第1実施形態との差異は、1次側整流素子Diの出力側にコンバータトランスPITの1次巻線N1が接続されている点である。このような構成を採用することによって、第1実施形態において必要とされた力率改善用インダクタLoを用いないものとしている。
すなわち、第3実施形態のスイッチング電源回路は、交流電源ACからの入力交流電力を1次側直流電力に変換する整流平滑部と、整流平滑部からの1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、を備えるスイッチング電源回路である。そして、整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと平滑コンデンサCiとを具備し、コンバータ部は、平滑コンデンサCiから1次側直流電力が供給されるチョークコイルPCCと、チョークコイルPCCからの電力が供給される1次巻線N1と、1次巻線N1と1次巻線と磁気的に疎結合とされる2次巻線N2とを有するコンバータトランスPITと、1次巻線N1に交流電力を供給するスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路2と、2次巻線N2に接続される2次側整流回路を形成する2次側整流素子Diと平滑コンデンサCoとによって出力される2次側直流出力電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を発振・ドライブ回路2に供給する制御回路1と、インダクタL3として機能するチョークコイルPCCと1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第1直列共振周波数が支配される1次側第1直列共振回路と、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第2直列共振周波数が支配され、1次側第1直列共振周波数が1次側第2直列共振周波数の略2倍となるように設定される1次側第2直列共振回路と、電圧クランプ用コンデンサCcと補助スイッチング素子Q2との直列回路であって、スイッチング素子Q1に加わる電圧をクランプするアクティブクランプ回路と、を具備する。ここで、補助スイッチング素子Q2はスイッチング素子Q1と相補的にオンとされる。また、力率改善部は、1次側整流素子Di(高速整流素子)を介して1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流を前記交流電源から流すために、上述の1次側整流素子Diは高速整流素子で形成されるものである。なお、1次側並列共振回路の周波数は、1次側第1直列共振周波数の略2倍としている。
以下において、第1実施形態および第2実施形態と異なる第3実施形態の特徴部についてのみ説明し、第1実施形態および第2実施形態と同様部分の説明は省略する。
まず、1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路について説明する。1次側第1直列共振回路は、チョークコイルPCC、平滑コンデンサCi、接地点、1次側直列共振コンデンサC2に至る経路によって電流経路が形成される。また、1次側第2直列共振回路は、1次側直列共振コンデンサC2、1次巻線N1、スイッチング素子Q1のドレインからソース、接地点に至る経路によって一の方向の電流経路が形成され、1次側直列共振コンデンサC2、ボディダイオードDD1、1次巻線N1に至る経路によって他の方向の電流経路が形成される。
力率改善部に流れる力率改善のための電流は電流I1に重畳される1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流の一部である。すなわち、1次側直列共振コンデンサC2を1次側整流素子Diに接続することによって、1次側直列共振コンデンサC2に発生する共振電圧に応じた共振電流を交流電源ACから2個の高速整流素子の各々のアノードからカソードを経由して流す。この力率改善のための共振電流と交流電源ACからの商用交流電力を整流した電流とが加算されたものが電流I1として流れる。
すなわち、力率改善部がない場合には、電流I1は、電圧V2のピーク付近でのみ流れるパルス状の波形となるものであるが、このようにして1次側直列共振コンデンサC2に発生する共振電圧に応じた共振電流を電圧V2のピーク付近以外でも流すことによって導通角を拡大している。このようにして、本実施形態では、1次側直列共振コンデンサC2に発生する共振電圧を、チョークコイルPCCを介して平滑コンデンサCiに帰還して電圧帰還方式力率改善部を構成する。
第3実施形態における各部の具体的な定数は以下のように定めた。まず、2次側直流出力電圧Eoは、175Vとされ、負荷電力Poの変動に応じてスイッチング素子Q1のTOFF期間は変化し、TON期間は負荷電力Poの減少と交流入力電圧VACの上昇に伴って減少して、スイッチング周波数が上昇することによって、2次側直流出力電圧Eoの値は定電圧化されている。
コンバータトランスPITのフェライト材は、EER―35とされ、ギャップは1.2mm、コンバータトランスPITの結合係数は0.82、1次巻線N1の巻数は45T(ターン)、2次巻線N2の巻数は30T(ターン)、制御巻線Ngの巻数は1T(ターン)とした。
また、1次側並列共振コンデンサCrの値は1000pFとし、1次側直列共振コンデンサC2の値は0.1μFとし、電圧クランプ用コンデンサCcの値は0.1μFとし、2次側直列共振コンデンサC4の値は0.056μFとした。また、フィルタコンデンサCNの値は1μFとした。
また、チョークコイルPCCおよび力率改善用インダクタLoのいずれもコンバータトランスPITと略同様の構成を採用することができる。インダクタL3として機能するチョークコイルPCCのインダクタンスの値は82μHとした。
また、1次側整流素子Diは3A/600Vの仕様のものを用い、2次側整流素子Doは5A/200Vの仕様のものを用いた。いずれも高速整流素子で構成されるものである。
第3実施形態における主要部の波形は図3および図4に示すものと略同様であるので省略する。図8は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から300Wの範囲での負荷変動に対する直流入力電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCおよびスイッチング素子Q1のオン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
図8から読み取れる代表特性の一部を紹介すると、例えば、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.995であり、負荷電力Poが75Wのときの力率PFの値は0.86の高力率となっている。また、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は89.7%の高効率である。また、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲で直流入力電圧Eiの値は158Vないし167Vである。
また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.945であり、負荷電力Poが75Wのときの力率PFの値は0.77の高力率となっている。また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は91.7%の高効率である。また、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲で直流入力電圧Eiの値は360Vないし375Vである。以上の力率の数値は、交流入力電圧VACの値が100V、230Vのいずれの場合にもIEC61000−3−2に規定される75W以上の規格値を満たしている。
このような実施形態のスイッチング電源回路では、図28に背景技術として示すスイッチング電源回路の場合よりも電力変換効率ηAC→DCが向上している。また、実施形態のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまりアクティブフィルタは、図28を参照した説明からも分かるように、スイッチング素子Q103と、これらを駆動するための力率・出力電圧制御用IC120等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、フィルタコンデンサCN、1次側整流素子Diとして高速整流素子を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。これにより、力率改善機能を有する電源回路として、図28に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。ここで、チョークコイルPCCのインダクタの値は82μHと小さなものであり、装置の小型軽量化が図れる。
また、実施形態のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図28に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。特に、E級スイッチングコンバータに入力される電流を直流電流に近づけることができるのでスイッチングノイズのレベルは非常に小さなものとできる。
さらに加えて、実施形態のスイッチング回路においては、1次側の直列共振回路および1次側の並列共振回路とともに2次側の直列共振回路を備えるので極めて僅かな周波数の変化によって2次側直流出力電圧Eoを所定電圧に維持することができ、ノイズフィルタの設計も容易なものとできる。このような理由から、1個のコモンモードチョークコイルCMCと2個のアクロスコンデンサCLから成る1段のノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、1個のフィルタコンデンサCNのみにより十分な対策が可能である。
また、スイッチング素子Q1と2次側の整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4などもスイッチング素子Q1に同期して動作するものである。したがって、アース電位としては、図28の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
また、アクティブクランプ回路の採用によって、オン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFの値はアクティブクランプ回路がない場合に較べてその変化範囲は縮小している。さらに、スイッチング素子Q1の耐電圧を低いものにして、ZVS領域を拡大して、交流入力電圧VACの値が85Vから264Vと広い、いわゆるワイドレンジ化が可能となっている。
(第4実施形態)
図9に示す第4実施形態のスイッチング電源回路は、第3実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略するが、多くの部分において第3実施形態におけると同様の構成を採用するものである。第3実施形態と異なる点は、コンバータ部の1次側第1直列共振回路の電流経路はチョークコイルPCCと1次側直列共振コンデンサC2のみで構成され、1次側第2直列共振回路の一の方向の電流経路は、平滑コンデンサCiから1次側直列共振コンデンサC2、1次巻線N1、スイッチング素子Q1のドレインからソースに至る経路とされ、1次側第2直列共振回路の他の方向の電流経路は、スイッチング素子Q1のボディダイオードDD1から1次巻線N1、1次側直列共振コンデンサC2、平滑コンデンサCiに至る経路とされている。また、力率改善部は、1次側整流素子Diとして低速整流素子を用い、高速整流素子D1をこの1次側整流素子Diの出力側に接続して、この高速整流素子D1を介して1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流を交流電源ACから流すものである。
この第4実施形態におけるコンバータ部は、1次側第1直列共振回路の共振周波数を1次側第2直列共振回路の共振周波数の略2倍としてZVS動作とする点では第1実施形態ないし第3実施形態と同様である。
(第5実施形態)
図10に示す第5実施形態のスイッチング電源回路は、図7に示す第3実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略するが、第3実施形態を変形したものである。第3実施形態と異なる点は、コンバータ部については第3実施形態において用いたチョークコイルPCCに替えてチョークトランス1次巻線NC1とチョークトランス2次巻線NC2とが疎結合に磁気結合されたチョークトランスVFTを用いるものであり、チョークコイルPCCの機能をチョークトランス1次巻線NC1に生じる漏れインダクタL3によって生じさせるものである。また、力率改善部については、力率改善部の1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流は、このチョークトランスVFTのチョークトランス2次巻線NC2を流れるものとされている。
すなわち、第5実施形態のスイッチング電源回路は、交流電源ACからの入力交流電力を1次側直流電力に変換する整流平滑部と、整流平滑部からの1次側直流電力を交流電力に変換しさらに2次側直流電力に変換するコンバータ部と、力率を改善する力率改善部と、を備えるスイッチング電源回路である。そして、整流平滑部は、交流電源ACからの入力交流電力を入力して整流する1次側整流素子Diと平滑コンデンサCiとを具備し、コンバータ部は、平滑コンデンサCiから1次側直流電力が供給されるチョークトランスVFTのチョークトランス1次巻線NC1と、チョークトランス1次巻線NC1からの電力が供給される1次巻線N1と、1次巻線N1と磁気的に疎結合とされる2次巻線N2とを有するコンバータトランスPITと、1次巻線N1に交流電力を供給するスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する発振・ドライブ回路2と、2次巻線N2に接続される2次側整流回路を形成する2次側整流素子Diと平滑コンデンサCoとによって出力される2次側直流出力電圧Eoの値を所定の値とするような制御信号を発振・ドライブ回路2に供給する制御回路1と、チョークトランス1次巻線NC1に生じるインダクタL3と1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第1直列共振周波数が支配される1次側第1直列共振回路と、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第2直列共振周波数が支配され、1次側第1直列共振周波数が1次側第2直列共振周波数の略2倍となるように設定される1次側第2直列共振回路と、電圧クランプ用コンデンサCcと補助スイッチング素子Q2との直列回路であって、スイッチング素子Q1に加わる電圧をクランプするアクティブクランプ回路と、を具備する。ここで、補助スイッチング素子Q2はスイッチング素子Q1と相補的にオンとされる。また、力率改善部は、1次側整流素子Di(高速整流素子)を介して1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流を交流電源から流すために、上述の1次側整流素子Diは高速整流素子で形成されるものである。ここで、1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧はチョークトランス1次巻線NC1に印加され、チョークトランス1次巻線NC2に1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧と相似の電圧が発生して1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流を交流電源から流すようになされている。なお、1次側並列共振回路の周波数は、1次側第1直列共振周波数の略2倍としている。
以下において、第1実施形態ないし第4実施形態とは異なる第5実施形態の特徴部についてのみ説明し、第1実施形態ないし第4実施形態と同様部分の説明は省略する。
まず、1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路について説明する。1次側第1直列共振回路は、チョークトランス1次巻線NC1に生じる漏れインダクタL3、平滑コンデンサCi、接地点、1次側直列共振コンデンサC2に至る経路によって電流経路が形成される。また、1次側第2直列共振回路は、1次側直列共振コンデンサC2、1次巻線N1、スイッチング素子Q1のドレインからソース、接地点に至る経路によって一の方向の電流経路が形成され、1次側直列共振コンデンサC2、ボディダイオードDD1、1次巻線N1に至る経路によって他の方向の電流経路が形成される。
ここで、チョークトランスVFTは、図2に示すコンバータトランスPITと略同様の構造を有して、チョークトランス1次巻線NC1とチョークトランス2次巻線NC2とが磁気的に疎結合とされている。これによって、チョークトランス1次巻線NC1に漏れインダクタL3を生じさせることができる。また、チョークトランス2次巻線NC2に漏れインダクタL3’を生じさせることとなる。そして、チョークトランス1次巻線NC1とチョークトランス2次巻線NC2との各々に生じる電圧の比は各々の巻数の比と等しいものとなる。このような、構造を有するチョークトランスVFTを用い、巻線比を最適化することによって、1次側第1直列共振周波数と、力率改善部に流す電流である1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流とを、別個に調整することができ、その各々について、最適化をすることができる。
力率改善部に流れる力率改善のための電流は電流I1に重畳される1次側第1直列共振回路および1次側第2直列共振回路に流れる共振電流の一部である。すなわち、1次側直列共振コンデンサC2をチョークトランス1次巻線NC1に接続し、チョークトランス2次巻線NC2を1次側整流素子Diに接続することによって、1次側直列共振コンデンサC2に発生する共振電圧に応じた共振電流を交流電源ACから2個の高速整流素子の各々のアノードからカソードを経由して流すことができる。この力率改善のための共振電流と交流電源ACからの商用交流電力を整流した電流とが加算されたものが電流I1として流れる。
すなわち、力率改善部がない場合には、電流I1は、電圧V2のピーク付近でのみ流れるパルス状の波形となるものであるが、このようにして1次側直列共振コンデンサC2に発生する共振電圧に応じた共振電流を電圧V2のピーク付近以外でも流すことによって導通角を拡大している。一方、平滑コンデンサCiからの1次側直流電力はチョークトランス1次巻線NC1を介してコンバータトランスPITの1次巻線N1に供給される。このようにして、本実施形態では、1次側直列共振コンデンサC2に発生する共振電圧を、チョークトランスVFTのチョークトランス2次巻線NC2を介して平滑コンデンサCiに帰還して電圧帰還方式力率改善部を構成する。
第5実施形態における各部の具体的な定数は以下のように定めた。まず、2次側直流出力電圧Eoは、175Vとされ、負荷電力Poの変動に応じてスイッチング素子Q1のTOFF期間は変化し、TON期間は負荷電力Poの減少と交流入力電圧VACの上昇に伴って減少して、スイッチング周波数が上昇することによって、2次側直流出力電圧Eoの値は定電圧化されている。
コンバータトランスPITのフェライト材は、EER―35とされ、ギャップは1.2mm、コンバータトランスPITの結合係数は0.82、1次巻線N1は45T、2次巻線N2は30T、1次側並列共振コンデンサCrの値は6800pF、1次側直列共振コンデンサC2の値は0.1μF、電圧クランプ用コンデンサCcの値は0.1μF、2次側直列共振コンデンサC4の値は0.056μF、フィルタコンデンサCNの値は1μF、チョークトランス1次巻線NC1に生じる漏れインダクタL3の値は82μH、チョークトランス2次巻線NC2に生じる漏れインダクタL3’の値は82μH、1次側整流素子Diの仕様は3A/600V、2次側整流素子Doの仕様は5A/200Vとし、1次側整流素子Diおよび2次側整流素子Doのいずれも高速整流素子とした。
第5実施形態における主要部の波形は図3および図4に示すものと略同様であるので省略する。図11は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から300Wの範囲での負荷変動に対する直流入力電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCおよびスイッチング素子Q1のオン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
図11から読み取れる代表特性の一部を紹介すると、例えば、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.990であり、負荷電力Poが75Wのときの力率PFの値は0.84の高力率となっている。また、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は90.1%の高効率である。また、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲で直流入力電圧Eiの値は154Vないし176Vである。
また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.935であり、負荷電力Poが75Wのときの力率PFの値は0.76の高力率となっている。また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は92.1%の高効率である。また、負荷電力Poが300Wから0Wの範囲で直流入力電圧Eiの値は356Vないし376Vである。以上の力率の数値は、交流入力電圧VACの値が100V、230Vのいずれの場合にもIEC61000−3−2に規定される75W以上の規格値を満たしている。
このような実施形態のスイッチング電源回路では、図28に背景技術として示すスイッチング電源回路の場合よりも電力変換効率ηAC→DCが向上している。また、実施形態のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまりアクティブフィルタは、図28を参照した説明からも分かるように、スイッチング素子Q103と、これらを駆動するための力率・出力電圧制御用IC120等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、フィルタコンデンサCN、1次側整流素子Diとして高速整流素子を備え、チョークコイルPCCに替えてチョークトランスVFTを用いればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。これにより、力率改善機能を有する電源回路として、図28に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
ここで、チョークトランス1次巻線NC1に生じる漏れインダクタL3の値は82μHと小さなものであり、さらにスイッチング素子Q1の1個のみをスイッチング素子として備えれば良いので装置の小型軽量化が図れる。さらに、チョークトランスVFTのチョークトランス1次巻線NC1とチョークトランス2次巻線NC2との比を調整することによって、漏れインダクタL3の値を最適な値(1次側第1直列共振周波数を1次側第2直列共振周波数とするような漏れインダクタL3のインダクタンスの値)としながら、力率改善部の最適化(力率を1に近づけること)ができる。
また、実施形態のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図28に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。特に、E級スイッチングコンバータに入力される電流を直流電流に近づけることができるのでスイッチングノイズのレベルは非常に小さなものとできる。
さらに加えて、実施形態のスイッチング回路においては、1次側の直列共振回路および1次側の並列共振回路とともに2次側の直列共振回路を備えるので極めて僅かな周波数の変化によって2次側直流出力電圧Eoを所定電圧に維持することができ、ノイズフィルタの設計も容易なものとできる。このような理由から、1個のコモンモードチョークコイルCMCと2個のアクロスコンデンサCLから成る1段のノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、1個のフィルタコンデンサCNのみにより十分な対策が可能である。
また、スイッチング素子Q1と2次側の整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4などもスイッチング素子Q1に同期して動作するものである。したがって、アース電位としては、図28の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
また、アクティブクランプ回路の採用によって、オン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFの値はアクティブクランプ回路がない場合に較べてその変化範囲は縮小している。さらに、スイッチング素子Q1の耐電圧を低いものにして、ZVS領域を拡大して、交流入力電圧VACの値が85Vから264Vと広い、いわゆるワイドレンジ化が可能となっている。
(第6実施形態)
図12に示す第6実施形態のスイッチング電源回路は、第5実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略するが、多くの部分において第5実施形態におけると同様の構成を採用するものである。第5実施形態と異なる点は、コンバータ部の1次側第1直列共振回路の電流経路はチョークトランス1次巻線NC1と1次側直列共振コンデンサC2のみで構成され、1次側第2直列共振回路の一の方向の電流経路は、平滑コンデンサCiから1次側直列共振コンデンサC2、1次巻線N1、スイッチング素子Q1のドレインからソースに至る経路とされ、1次側第2直列共振回路の他の方向の電流経路は、スイッチング素子Q1のボディダイオードDD1から1次巻線N1、1次側直列共振コンデンサC2、平滑コンデンサCiに至る経路とされている。また、力率改善部は、1次側整流素子Diとして低速整流素子を用い、高速整流素子D1をこの1次側整流素子Diの出力側に接続して、この高速整流素子D1を介して1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流を交流電源ACから流すものである。
この第6実施形態におけるコンバータ部は、1次側第1直列共振回路の共振周波数を1次側第2直列共振回路の共振周波数の略2倍としてZVS動作とする点では第1実施形態ないし第5実施形態と同様であり、この第6実施形態における力率改善部は、高速整流素子D1を介して1次側直列共振コンデンサC2に発生する電圧に応じた電流を交流電源ACから流す点では第4実施形態と同様である。
(2次側回路の変形例)
第1実施形態および第6実施形態において置き換え可能な2次側回路の変形例を図13ないし図25に示す。
図13に示す2次側整流回路は、倍電圧全波整流回路を構成する。すなわち、2次巻線についてセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にして2次巻線部N2A、2次巻線部N2Bに2分割する。2次巻線部N2A、2次巻線部N2Bには、同じ巻数(ターン数)が設定される。2次巻線N2のセンタータップは、2次側アースに接続される。また、2次巻線N2における2次巻線部N2A側の端部に対しては2次側直列共振コンデンサC4Aを直列に接続し、2次巻線N2における2次巻線部N2B側の端部に対しても同一容量の2次側直列共振コンデンサC4Bを直列に接続する。これにより、2次巻線部N2Aの漏れ成分と2次側直列共振コンデンサC4Aのキャパシタンスとによって共振周波数が支配を受ける第1の2次側直列共振回路と、2次巻線部N2Bの漏れインダクタンス成分と2次側直列共振コンデンサC4Bのキャパシタンスとによって共振周波数が支配を受ける第1の2次側直列共振回路と略等しい共振周波数を有する第2の2次側直列共振回路とが形成される。
そして、2次巻線N2における2次巻線部N2A側の端部を、2次側直列共振コンデンサC4Aの直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続する。また、2次巻線N2における2次巻線部N2B側の端部を、2次側直列共振コンデンサC4Bの直列接続を介して、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードとの接続点に対して接続する。そして、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo3の各カソードは、平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は2次側アースに接続される。また、整流ダイオードDo2、整流ダイオードDo4の各アノードの接続点は2次側アースに接続する。
このようにして、2次巻線部N2A,2次側直列共振コンデンサC4A、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、および平滑コンデンサCoから成る、第1の2次側直列共振回路を備える第1の倍電圧半波整流回路と、2次巻線部N2B,2次側直列共振コンデンサC4B、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、および平滑コンデンサCoから成る、第2の2次側直列共振回路を備える第2の倍電圧半波整流回路とが形成されることになる。このようにして平滑コンデンサCoに対しては、2次巻線N2の交番電圧の、一方の極性の半周期では、2次巻線部N2Bの誘起電圧と2次側直列共振コンデンサC4Bの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われ、他方の極性の半周期では、2次巻線部N2Aの誘起電圧と2次側直列共振コンデンサC4Aの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われることとなる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧である2次側直流出力電圧Eoとしては、2次巻線部N2A、2次巻線部N2Bの誘起電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られる。
図14に示す2次側整流回路は、倍電圧半波整流回路を構成する。すなわち、2次巻線N2の漏れ成分と2次側直列共振コンデンサC4のキャパシタンスとによって共振周波数が支配を受ける2次側直列共振回路とが形成される。そして、2次巻線N2に発生される一方の極性の電圧は、整流ダイオードDo2を介して2次側直列共振コンデンサC4を充電し、他方の極性の電圧は、整流ダイオードDo1を介して平滑コンデンサCoを充電する。2次側直列共振コンデンサC4に充電された電圧と平滑コンデンサCoに充電された電圧とは加算されるので、2次巻線N2の誘起電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られる。
図15に示す2次側整流回路は、2次側部分電圧共振コンデンサC3と2次巻線N2の漏れインダクタL2とで部分電圧共振回路を形成するとともに、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4で構成される全波整流回路である。ここで、2次側部分電圧共振コンデンサC3の値を大きくする場合には、この2次側部分電圧共振コンデンサC3は、並列共振コンデンサとして機能して、2次側整流回路は、2次側並列共振コンデンサC3と2次巻線N2の漏れ漏れインダクタL2とで並列電圧共振回路を形成して動作することとなる。
図16に示す2次側整流回路は、2次側部分電圧共振コンデンサC3と2次巻線部N2Aおよび2次巻線部N2Bの漏れインダクタンス成分によって形成される漏れインダクタとで部分電圧共振回路を形成するとともに、整流ダイオードDo1および整流ダイオードDo2で構成されるセンタータップ両波整流回路である。ここで、2次側部分電圧共振コンデンサC3の値を大きくする場合には、この2次側部分電圧共振コンデンサC3は、並列共振コンデンサとして機能して、2次側整流回路は、2次側並列共振コンデンサC3と2次巻線N2の漏れインダクタL2とで並列電圧共振回路を形成して動作することとなる。
図17に示す2次側整流回路は、2次側部分電圧共振コンデンサC3と2次巻線N2に発生する漏れインダクタL2とで部分電圧共振回路を形成するとともに、整流ダイオードDo1および整流ダイオードDo2と平滑コンデンサCoAおよび平滑コンデンサCoBとで構成される倍電圧整流回路である。ここで、2次側部分電圧共振コンデンサC3の値を大きくする場合には、この2次側部分電圧共振コンデンサC3は、並列共振コンデンサとして機能して、2次側整流回路は、2次側並列共振コンデンサC3と2次巻線N2の漏れインダクタL2とで並列電圧共振回路を形成して動作することとなる。
(第7実施形態)
図18に示す第7実施形態のスイッチング電源回路は、1次側は第2実施形態におけると同様の接続態様を有し、2次側に関しては、2次側並列共振回路を備えるものである、第1実施形態ないし第6実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。第7実施形態の特徴部分は、1次側並列共振周波数、2次側並列共振周波数、1次側第1直列共振周波数および1次側第2直列共振周波数の相互の関係を第1実施形態ないし第6実施形態とは異なる以下のように定めて、良好なるZVS特性を有するものである。
すなわち、2次巻線N2に発生する漏れインダクタL2と2次側並列共振コンデンサC3とによって2次側並列共振周波数が支配される2次側並列共振周波数と、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1と1次側並列共振コンデンサCrとによって1次側並列共振周波数が支配される1次側並列共振周波数とを略等しくなるように設定する。また、チョークコイルPCCと1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第1直列共振周波数が支配される1次側第1直列共振回路の共振周波数を、1次側並列共振周波数および2次側並列共振周波数のいずれに対しても1/2以下となるように設定する。また、1次巻線N1に発生する漏れインダクタL1と1次側直列共振コンデンサC2とによって1次側第2直列共振周波数が支配される1次側第2直列共振回路の共振周波数を、1次側並列共振周波数および2次側並列共振周波数のいずれに対しても1/2以下となるように設定する。
力率改善回路に関しては、第2実施形態におけると同様である。すなわち、力率改善回路は、フィルタコンデンサCN、高速整流素子D1、力率改善用インダクタLoによって形成されており、フィルタコンデンサCNと力率改善用インダクタLoとの接続点が平滑コンデンサCiおよびインダクタL3として機能するチョークコイルPCCの一方の端部に接続され、フィルタコンデンサCNと高速整流素子D1のアノードとの接続点が1次側整流素子Diに接続され、力率改善用インダクタLoと高速整流素子D1のカソードとの接続点が1次側直列共振コンデンサC2の一方の端部に接続されている。そして、1次側直列共振コンデンサC2の他方の端子は、インダクタL3として機能するチョークコイルPCCの他方の端部および1次巻線N1とに接続されている。
このような接続態様によって、1次側直列共振コンデンサC2を流れる共振電流は、インダクタL3、1次側直列共振コンデンサC2、力率改善用インダクタLoの経路およびインダクタL1、1次側直列共振コンデンサC2、力率改善用インダクタLoの経路を流れて、高速整流素子D1のカソード電位がスイッチング周期で振動して高速整流素子D1がスイッチング動作して、電流I1を断続的に平滑コンデンサCiに流し込み、交流入力電流IACの流通角を拡大して力率を改善する。
第7実施形態における各部の具体的な定数は以下のように定めた。まず、2次側直流出力電圧Eoは、175Vとされ、負荷電力Poの範囲は、300Wから0Wの範囲、交流入力電圧VACの範囲は90Vから288Vの範囲、としてこの範囲でZVS動作をするようにした。スイッチング素子Q1の時比率(TON/TOFF)は、最大負荷において2以上に設定した。
コンバータトランスPITのフェライト材は、EER―40とされ、ギャップは1.4mm、コンバータトランスPITの結合係数は0.7、1次巻線N1の巻数は60T、2次巻線N2の巻数は45Tとした。
また、1次側並列共振コンデンサCrの値は2200pFとし、1次側直列共振コンデンサC2の値は0.033μFとし、電圧クランプ用コンデンサCcの値は0.1μFとし、2次側並列共振コンデンサC3の値は0.015μFとした。また、フィルタコンデンサCNの値は1μFとし、平滑コンデンサCiの値および平滑コンデンサCoの値はいずれも1000μFとした。
また、チョークコイルPCCおよび力率改善用インダクタLoのいずれもコンバータトランスPITと略同様の構成を採用することができる。インダクタL3として機能するチョークコイルPCCのインダクタンスの値は350μHとし、力率改善用インダクタLoのインダクタンスの値は39μHとした。
図18に示す第7実施形態のスイッチング電源回路の要部の動作波形を図19および図20に示し、測定データを図21に示す。
図19は、交流入力電圧100V、最大負荷電力の300Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC(図18を参照)、交流入力電流IAC(図18を参照)、電流I1(図18を参照)、電圧V2(図18を参照)、電流I1(図18を参照)、電圧V3(図18を参照)、電流I2(図18を参照)の各々を示す。図19の電流I1、電圧V3、および電流I2の斜線を施した部分の各々は、スイッチングしていることを示すものである。
また、図20は、交流入力電圧230V、最大負荷電力の300Wにおける主要部の動作波形を商用の交流電源周期により示している。上段より下段に向かって、交流入力電圧VAC、交流入力電流IAC、電流I1、電圧V2、電流I1、電圧V3、電流I2の各々を示す。図20の電流I1、電圧V3、および電流I2の斜線を施した部分の各々は、スイッチングしていることを示すものである。
図21は、交流入力電圧VACの値が100Vまたは230Vの入力電圧条件下において負荷電力Poの値が、0W(無負荷)から300Wの範囲での負荷変動に対する直流入力電圧Ei、力率PF、および交流入力電力に対する直流出力電力の電力変換効率ηAC→DCを示している。実線は交流入力電圧VACの値が100Vの特性、破線は交流入力電圧VACの値が230Vの特性を示すものである。
図21から読み取れる代表特性の一部を紹介すると、例えば、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.92であり、力率PFの値が0.75以上となる負荷電力Poの範囲は300Wから25Wである。また、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は91.0%である。
また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの力率PFの値は0.80であり、力率PFの値が0.75以上となる負荷電力Poの範囲は300Wから75Wである。また、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、負荷電力Poが300Wのときの電力変換効率ηAC→DCの値は91.5%である。以上の力率の数値は、交流入力電圧VACの値が100Vの場合には、国内の電源高調波歪規制値クラスAをクリアし、交流入力電圧VACの値が230Vの場合には、欧州の規格値クラスAをクリアしている。
このような実施形態のスイッチング電源回路では、図28に背景技術として示すスイッチング電源回路の場合よりも電力変換効率ηAC→DCが向上している。また、実施形態のスイッチング電源回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品の点数削減が図られる。つまりアクティブフィルタは、図28を参照した説明からも分かるように、スイッチング素子Q103と、これらを駆動するための力率・出力電圧制御用IC120等を始め、多くの部品により構成される。これに対し、実施形態のスイッチング電源回路においては、力率改善のために必要な追加部品として、フィルタコンデンサCN、高速整流素子D1、力率改善用インダクタLoを備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。これにより、力率改善機能を有する電源回路として、図28に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
また、実施形態のスイッチング電源回路では、多重共振形のコンバータ部および力率改善部の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図28に示したアクティブフィルタを用いる回路と比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。特に、E級スイッチングコンバータに入力される電流を直流電流に近づけることができるのでスイッチングノイズのレベルは非常に小さなものとできる。
また、スイッチング素子Q1と2次側の整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4などもスイッチング素子Q1に同期して動作するものである。したがって、アース電位としては、図28の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無く、スイッチング周波数の変化に関わらず安定させることができる。
また、アクティブクランプ回路の採用によって、オン期間TONとオフ期間TOFFとの比TON/TOFFの値はアクティブクランプ回路がない場合に較べてその変化範囲は縮小している。さらに、スイッチング素子Q1の耐電圧を低いものにして、ZVS領域を拡大して、交流入力電圧VACの値が90Vから288Vと広い、いわゆるワイドレンジ化が可能となっている。負荷電力についても、300Wと大電力に対応可能となっている。
高調波歪規制値をクリアする領域は、交流入力電圧が100Vでは、負荷電力が300Wから25Wの範囲であり、交流入力電圧が230Vでは、負荷電力が300Wから75Wの範囲であり、いずれも広範囲である。
(第7実施形態の変形例)
図23、図24のいずれもが、図18に示す第7実施形態の変形例であり、力率改善回路と2次側の回路が第7実施形態と異なるものである。
図23に示す第7実施形態の変形例は、力率改善回路については、チョークコイルPCCは、さらに、チョークコイルPCCの3次巻線N3を設けている。そして、力率改善部は、チョークコイルPCCの3次巻線N3に生じる電圧を平滑コンデンサCiに電圧帰還して、1次側整流素子Diを介して、1次側直列共振コンデンサC2に流れる共振電流の一部を交流電源ACから流すものである。また、2次側は両波整流回路としている。
図24に示す第7実施形態の変形例は、チョークコイルPCCに加えて、力率改善回路については、チョークトランス1次巻線NC1とチョークトランス2次巻線NC2とが磁気的に疎結合とされてなるチョークトランスVFTを設けている。チョークトランスVFTの1次巻線NC1に接続される1次側直列共振コンデンサC2に流れる電流に応じてチョークトランスVFTの2次巻線NC2に生じる電圧を平滑コンデンサCiに電圧帰還して、1次側整流素子Diを介して、1次側直列共振コンデンサC2に流れる共振電流の一部を交流電源ACから流すものである。また、2次側は半波整流回路としている。
なお、これまでに説明した実施形態の電源回路の具体的設計例は、交流入力電圧VACは、100Vの商用の交流電源が入力されることを前提としているのであるが、本発明は、交流入力電圧VACの値として、特に限定があるものではない、例えば、200Vの商用の交流電源入力に対応した設計として場合にも、本願発明に基づいた構成とすることで同様の効果が得られる。また、例えば、1次側電圧共振形コンバータの細部の回路形態や、2次側直列共振回路を含んで形成する2次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。また、スイッチング素子については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、AC 商用の交流電源、Cr 1次側並列共振コンデンサ、C2 1次側直列共振コンデンサ、C3 2次側部分電圧共振コンデンサ(2次側並列共振コンデンサ)、C4、C4A、C4B 2次側直列共振コンデンサ、CL アクロスコンデンサ、CMC コモンモードチョークコイル、CN フィルタコンデンサ、Ci、Co、CoA、CoB 平滑コンデンサ、Cc 電圧クランプ用コンデンサ、CR1、CR2 コア、D1 高速整流素子、Do1、Do2、Do3,Do4 整流ダイオード、DD、DD1、DD2 ボディダイオード、Di 1次側整流素子、Do 2次側整流素子、Ei 整流平滑電圧、Eo 2次側直流出力電圧、G、 ギャップ、IAC 交流入力電流、PCC チョークコイル、Lo 力率改善用インダクタ、N1 1次巻線(コンバータトランス1次巻線)、N2 2次巻線(コンバータトランス2次巻線)、N2A、N2B 2次巻線部、N3 3次巻線(チョークコイルの3次巻線)、NC1 チョークトランス1次巻線、NC2 チョークトランス2次巻線、Ng 制御巻線、PIT コンバータトランス、PCC チョークコイル、Q1 スイッチング素子、Q2 補助スイッチング素子、Rg1、Rg2 抵抗、VFT チョークトランス