JP4370381B2 - 有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化合物および多環芳香族などの有害有機化合物をマイクロ波照射加熱を行い、沸点以上の温度にすると共に沸騰させないように加圧する条件下、すなわちソルボサーマル条件下で連続的に高速分解・無害化する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機ハロゲン化合物などの有害物質は毒性が強いだけでなく、極少量でも生殖などに大きく影響する内分泌ホルモン撹乱物質(環境ホルモン)として処理技術の開発が急がれており、地球規模での汚染が大きな社会問題となっている。
【0003】
最近、湿式分解法による有機ハロゲン化合物の分解、特に、超臨界水分解法が注目され、盛んに研究されている。これらの方法では、温度が400〜500℃、圧力100〜300気圧の高温高圧の条件で処理するものである。山崎らはPCBやTCEなどの有機塩素化合物を200から350℃、100気圧程度の低温・低圧の条件で水熱分解している〔N.Yamasaki et al. Env. Sci. Tech., 14(5),550(1990)〕。亜臨界・超臨界水は腐食性が大きく、かつ、有機ハロゲン化合物では腐食性のガスが発生し、耐圧、耐熱、耐食性の良い反応装置が必要である。また、脱塩素剤としてアルカリが用いられるが、超臨界水中は共溶媒性となり、イオン性の物質の溶解度が小さくなり、塩化ナトリウムなどの塩類が析出するため、塩析対策が必要である。
【0004】
炭化ケイ素などの触媒を充填した反応管をマイクロ波照射して所定温度に加熱し、有機塩素化合物などを連続的に注入することにより、有機塩素化合物が効率よく分解されることが知られている。例えば、特開平8−99018、US DOE Report LA-UR-90-3159、LA-12121-MSにおいて、炭化ケイ素をマイクロ波加熱で600℃程度に加熱し、有機ハロゲン化合物などを注入することにより、迅速に塩化水素と二酸化炭素まで分解されることが認められている。この方法は有害有機物の処理などの高濃度分解処理に適しているが、水を多量に含む水溶液系には多量のエネルギーを要し適さない。また、活性炭および銅やクロムを担持した活性炭層に有害有機物質を吸着させた後、マイクロ波を照射して400℃程度に加熱して分解する方法(US DOE Report DOE-HWP-28、AD Report AD-A-253631)等が報告されている。水蒸気などに気体中の有害物質を吸着させてから、マイクロ波照射して分解する方法であり、連続分解および水溶液中の有害物質の分解には適していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、より穏和な条件、すなわち、低温低圧、省エネルギー型で、連続的、かつ、安全性の高いクローズドシステムの開発を目指すものである。さらに、高濃度溶液中の有害有機ハロゲン化合物の分解から希薄な水溶液中の有機ハロゲン化合物並びに油など有機溶媒中の有機ハロゲン化合物を効率よく、分解・無害化する方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
有機ハロゲン化合物とアルカリ水溶液を混合し、マイクロ波を照射して沸点以上の温度(180℃以下)、10気圧以下の圧力下で処理すると、有機ハロゲン化合物が分解され、生成する塩化水素はアルカリにより捕捉され、無害化されることを見いだした。しかし、回分法の場合、気相と液相が存在すると加熱により、溶液が沸騰し、気相部分に有害ハロゲン化合物が蒸発するため、100%処理することが困難であった。
【0007】
このような状況で鋭意研究した結果、有機ハロゲン化合物あるいは有機ハロゲン化合物を含む溶液とアルカリ水溶液を混合して連続的に反応部に送液する。マイクロ波を連続的に出力を調製しながら照射することにより、沸騰させないで加熱加圧するソルボサーマル条件で連続処理し、室温まで冷却することにより、有害な気体を発生することなく、100%分解・無害化できることを見いだした。 本発明は、有害有機化合物およびそれらを含む溶液をアルカリ水溶液と混合し、反応装置へ連続的に注入し、マイクロ波を照射して沸点以上の温度に加熱すると共に沸騰させないように加圧するソルボサーマル反応条件で連続的に分解・無害化することを特徴とする有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法を要旨としている。
【0008】
さらに、反応部に酸化チタンなどの触媒を用いることにより、より低温低圧の条件で効率よく処理されることを見いだした。触媒としては酸化チタンの他、酸化鉄、酸化銅、アルミナ、酸化マンガンなどの酸化物およびそれらの複合酸化物、さらには活性炭や粘土鉱物などの多孔質体に酸化物を担持した複合材料などが用いられる。触媒としてはこれらに規定されるものでなく、マイクロ波吸収性を有するものが効果的である。
すなわち本発明は、有害有機化合物およびそれらを含む溶液をアルカリ水溶液と混合し、反応装置の反応部にマイクロ波吸収性および反応分解性の触媒、より具体的には金属酸化物あるいはそれらの複合酸化物、または多孔性物質の表面に当該酸化物をコーティングした複合材料の触媒を装填した当該反応装置へ連続的に注入し、マイクロ波を照射して沸点以上の温度に加熱すると共に沸騰させないように加圧するソルボサーマル反応条件で連続的に分解・無害化することを特徴とする有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法を要旨としている。
【0009】
マイクロ波照射法として連続照射下に出力調整を行って温度制御する方法およびパルス照射しながら出力調整して温度コントロールする方法がある。連続照射法で効果的に有機塩素化合物の無害化ができるが、パルス照射の方がより効果的で、効率よく分解できることを見いだした。
すなわち本発明は、有害有機化合物およびそれらを含む溶液をアルカリ水溶液と混合し、反応装置の反応部にマイクロ波吸収性および反応分解性の触媒、より具体的には金属酸化物あるいはそれらの複合酸化物、または多孔性物質の表面に当該酸化物をコーティングした複合材料の触媒を装填した当該反応装置へ連続的に注入し、マイクロ波を連続あるいはパルス照射して沸点以上の温度に加熱すると共に沸騰させないように加圧するソルボサーマル反応条件で連続的に分解・無害化することを特徴とする有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法を要旨としている。
【0010】
以上のとおり、本発明は、有機ハロゲン化合物等有害有機化合物を加圧条件下でマイクロ波照射して分解し、無害化する技術を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
有害有機化合物の代表例としてはジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエタンなどのパラフィン系およびクロルベンゼン、ジクロルベンゼンやPCB、ダイオキシン等の芳香族系などの有機塩素化合物および有機臭素化合物や有機フッ素化合物などの有機ハロゲン化合物のマイクロ波−ソルボサーマル分解による無害化処理があげられるが、それに限定されるものではなく、多環芳香族などの有害有機化合物の分解・無害化にも適用が可能である。
【0012】
有機ハロゲン化合物などの有害有機化合物の廃棄物、有害有機化合物の含まれる廃水・廃油のみならず、焼却炉飛灰などの無害化に適用するものである。
有機ハロゲン化合物等の有害有機化合物を含む廃液とアルカリ水溶液を混合したもの、あるいは両溶液を反応部に連続的に送液し、沸騰させない加圧条件下(温度:120〜180℃、圧力:数気圧〜10気圧、滞留時間:数分〜数十分)でマイクロ波照射処理を行うものである。マイクロ波照射は連続照射でも効果的であるが、パルス照射がより効果的である。
【0013】
有機ハロゲン化合物の濃厚廃液とアルカリ水溶液を連続的に混合しながら反応部に送液し、マイクロ波照射して分解・無害化する。
有害有機化合物を含む廃油処理の場合、炭酸ナトリウムなどの粉末状アルカリを混合してマイクロ波反応装置に送液し処理する。
【0014】
有機塩素化合物はアルカリ水溶液中でマイクロ波加熱により分解され、無害化するが、濃厚廃液の場合、排水基準以下にするためには滞留時間を長くする必要がある。酸化チタンなどの触媒を添加することにより、短時間に効率よく分解・無害化される。
触媒の添加方法として粉末状のものを溶液中に懸濁させて送液処理した後、沈殿分離する方法、粒状、繊維状、ハニカム状の充填した反応管をマイクロ波照射装置内に設置し、反応溶液を送給して処理するものである。
【0015】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものでない。
【0016】
実施例1
試作したマイクロ波−ソルボサーマル連続反応装置はマイクロ波出力1.5kWのオーブン型の装置である。反応部は耐圧ガラス製の蛇管(耐圧:10気圧)でオーブンの上部にガラス製蛇管冷却器を付け、その先にフラクションコレクターを取り付けて流出液を分取した。反応部の容積は100ml、送水管、反応部、冷却部を含めた系全体の容積は400mlである。マイクロ波の最大出力は1.5kWで、連続照射の他パルス照射が可能であり、パルス間隔は自由に設定できる。
この反応装置に1N水酸化ナトリウム水溶液にジクロルメタンを溶解し、100ppmの試料溶液を調整したものを反応部に所定速度で試料溶液を連続的に送水し、マイクロ波出力50%、温度180℃、圧力10気圧の条件で流速を変えてマイクロ波処理した。流速は20ml/minおよび5ml/minで、それぞれの反応部の滞留時間は5分および20分である。
得られた結果を図1に示す。装置容積分(400ml)が流出した時の流出液中の濃度は滞留時間5分では、2ppm、滞留時間5分の場合は0.2ppm以下となり、分解率は98%、99.8%以上に達した。従来の水熱分解法(250℃)に比べ、低い反応温度で分解できることが分かった。
【0017】
比較例1
回分式反応容器にジクロルメタン試料溶液(100ppm)100mlを充填し、反応温度150℃、4気圧および180℃、10気圧の条件で所定時間マイクロ波照射処理を行った。反応終了後、反応溶液中の残存濃度をGC-MSで分析した。
その結果、表1および図2に示すように、連続法では反応温度150℃、滞留時間20分で残存濃度が排水基準の0.2ppm以下になり、分解率は99.8%であったが、回分式では150℃では分解率が75%であり、180℃においても20分で残存濃度10ppmであり、分解率は90%にとどまった。
【0018】
【表1】
Figure 0004370381
【0019】
実施例2
ジクロルメタンのマイクロ波−ソルボサーマル連続分解における反応温度および滞留時間の影響を調べた。ジクロルメタン試料水溶液を連続的にマイクロ波照射装置の反応部に送液した。ジクロルメタン濃度:100ppm、1000ppm、水酸化ナトリウム濃度:0.5、1N、反応温度120、150、170℃、滞留時間10、20、30分の条件で実験した。本実験では反応中沸騰させないために、若干加圧条件で処理した。流出量が送液部、反応部、冷却部の容積の1.5倍程度になったときの濃度を測定し、分解率を求めた結果を表2および表3に示す。反応温度120℃においてもジクロルメタンは滞留時間20分で93%以上分解した。本実験のアルカリの濃度が0.5Nから1N、滞留時間20分から30分では分解率に大差なく、安定的な運転条件ではほぼ100%分解できた。試料濃度100ppm、1000ppmでも分解率ではほぼ等しかった。
【0020】
【表2】
ジクロルメタンの分解率(ジクロルメタン濃度100ppm)
Figure 0004370381
【0021】
【表3】
ジクロルメタンの分解率(ジクロルメタン濃度1000ppm)
Figure 0004370381
【0022】
実施例3
ジクロルメタン100ppm試料溶液100ml(NaOH1N)を回分式反応容器の充填し、二酸化チタンをゾルゲル法で表面に沈積させた管状に成形した粘土鉱物を装填し、マイクロ波照射してジクロルメタンの分解率を求めた。結果を表4に示す。触媒を添加することにより、分解率が20%程度向上することが認められた。
【0023】
【表4】
触媒添加の効果
Figure 0004370381
【0024】
実施例4
ジクロルメタン1000ppmの試料溶液を連続的に反応装置に滞留時間10分になるように送液し、マイクロ波を連続的あるいは2秒間隔のパルス照射を行い、ジクロルメタン分解のパルス照射効果を調べた。NaOH濃度1N、反応温度120℃、圧力10気圧の条件で実験を行った。結果を図3に示すようにパルス照射の方が分解率が高く、残存濃度が著しく低くなった。
【0025】
実施例5
トリクロルエチレン(CHCl=CCl2)100ppmのアルカリ水溶液(NaOH:1N)を連続的に反応部に送液し、流速を変えて、マイクロ波連続照射処理を行った。結果、120℃においても図4に示すように滞留時間10分で分解率99.2%に達した。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、マイクロ波−ソルボサーマル連続反応処理により、ジクロルメタンやトリクロルエチレンなどの有機塩素化合物が低温、低圧の条件で簡単に分解することは明らかである。本発明法の特徴は連続反応処理法であること、反応部に必要に応じて触媒を共存させ、マイクロ波を連続、好ましくはパルス照射して処理するものであり、実用化に適した処理方法である。 本発明の実験では120〜180℃、10気圧、アルカリ濃度0.5〜2Nの条件で実証試験を行ったが、それにとらわれるものではなく、反応温度およびアルカリ濃度の高い方が高速、大容量処理が可能となり、残存濃度を低減できることは言うまでもないが、低温・低圧の条件でも触媒添加およびパルス照射により、高速分解処理が可能と考えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のジクロルメタンの連続分解の結果を説明する図面である。
【図2】 比較例1のジクロルメタンの回分処理の結果を説明する図面である。
【図3】 MWパルスの照射効果を説明する図面である。
【図4】 MW−ST法によるトリクロロエチレンの分解結果を説明する図面である。

Claims (4)

  1. 有害有機化合物およびそれらを含む溶液をアルカリ水溶液と混合し、反応装置へ連続的に注入し、マイクロ波を照射して沸点以上の温度に加熱すると共に沸騰させないように加圧するソルボサーマル反応条件で連続的に分解・無害化することを特徴とする有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法。
  2. 上記の反応装置の反応部にマイクロ波吸収性および反応分解性の触媒を装填する請求項1の有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法。
  3. 触媒として金属酸化物あるいはそれらの複合酸化物、または多孔性物質の表面に当該酸化物をコーティングした複合材料を用いる請求項1または2の有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法。
  4. マイクロ波を連続あるいはパルス照射する請求項1、2または3の有害有機化合物のマイクロ波−ソルボサーマル連続処理法。
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