JP4337156B2 - アルミナ焼結体の製造方法およびアルミナ焼結体用アルミナ粉末 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結体密度が高く、ポアが少なく、耐食性に優れたアルミナ焼結体およびその製造方法に関し、主として、耐食部材セラミックス、半導体製造用治具等において異物の付着や吸着を嫌う製品、例えば、シリコンウェハーの洗浄、移動、表面処理等の操作時に使用される真空チャック、ピンセット、ハンド等の製品として、また、ポアのないことが要求される製品(例えば、ハードディスク用の基板や磁気ヘッド用基板等の材料、各種工業用ミラー等の材料)として、また、腐食性の溶液、ガスと接触するため耐食性が必要な部材等に、好適なアルミナ焼結体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程におけるシリコンウェハーの洗浄、移動、表面処理等の操作時に使用される真空チャック、ピンセット、ハンド等は、シリコンウェハーへの金属元素の混入、汚染を避けるため、一般にセラミックス材料が使用されている。このセラミックス材料として、多くの場合アルミナや炭化珪素の焼結体が用いられている。
【0003】
従来のアルミナや炭化珪素の原料粉末は、粒度分布が広い、凝集粒が多い、形状が不均一なため、焼結体密度が低い、ポアが多い等の問題があった。
ポアを低減する改良方法として焼結助剤を添加する方法は一般的に用いられているが、上記原料の問題点を完全に改良することはできておらず、従ってポアがなく耐食性に優れた焼結体の開発が期待されている。
【0004】
こうした問題に対し、例えば特開平9−2864号公報には、焼結助剤としてMgO等を0.01〜1重量%添加する方法が開示されているが、実施例ではアルミナ原料はバイヤー法により生産されたものであり、純度、粒度分布に問題があり、焼結体密度は低く、ポアが多く、このようなセラミックス材料では熱拡散炉、プラズマエッチング処理、CVD装置での使用の際に、ポア近傍の粒子の脱落が起こるという問題があった。
特開平5−279114号公報にはSiO2、周期表第2a族元素化合物を添加してポアの発生を抑制することができるアルミナ焼結体が記載されているが、まだ十分な密度を有する焼結体は得られていない。
特開平10−67554号公報では、アルミナにMgOを3%添加した耐食性焼結体が開示されているが、焼結体密度、ポアに関する記載はなく、また、プラズマエッチングにより表面が曇る現象が観察されており、十分なものではない。
また、特開昭60−204807号公報及び特開昭61−42730号公報に開示されているように熱間静水圧プレス(ホット アイソスタテイック プレス)によりポアの少ない焼結体が得られることが知られているが、高温高圧での焼結であり、工業的に問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特定のアルミナ粒子と、焼結助剤を用い常圧大気雰囲気中で焼結する生産性に優れた製造方法を確立することにより、焼結体密度が高く、またポアが極めて少ないアルミナ焼結体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ある特定のアルミナ粉末と焼結助剤を用いることにより、常圧焼結によりポアが極めて少ないアルミナ焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(4)を提供する。
【0007】
(1)実質的に破砕面を有さない、多面体粒子よりなり、六方最密格子であるαアルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上3.0以下であるαアルミナ粒子からなり、該αアルミナ粒子の数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であり、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたときにD90/D10の値が7以下の粒度分布である純度99.99%以上のアルミナ粉末に焼結助剤を酸化物換算で10ppm以上70ppm以下添加し成形後、該成形体を常圧で大気雰囲気中で1400℃〜1800℃の温度範囲で焼結することを特徴とする焼結体純度99.99%以上のアルミナ焼結体の製造方法。
(2)焼結体のポアの最大径が10μm以下であり、単位面積当たり存在する最大径1μm以上10μm以下のポアの数が1mm2当り10個以下である上記1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
(3)焼結体密度が3.975g/cm3以上である上記1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
(4)実質的に破砕面を有さない、多面体粒子からなり、六方最密格子であるαアルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上3.0以下であるαアルミナ粒子からなり、該αアルミナ粒子の数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であり、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたときにD90/D10の値が7以下の粒度分布を有し、目開き5μmのフィルターを用いた湿式篩別を行った場合、篩上残留物が100ppm以下である純度99.99%以上のアルミナ粉末からなることを特徴とする焼結体純度99.99%以上のアルミナ焼結体用アルミナ粉末。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、原料とするアルミナ粉末は、実質的に破砕面を有さない、多面体粒子からなり、六方最密格子であるαアルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上3.0以下であるαアルミナ粒子からなり、該αアルミナ粒子の数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であり、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたときにD90/D10の値が7以下の粒度分布を有し、目開き5μmのフィルターを用いた湿式篩別を行った場合、篩上残留物が100ppm以下である純度99.99%以上のアルミナ粉末である。
本発明において、原料とするアルミナ粉末は純度99.99%以上のものであるが、原料中に含まれている0.01重量%未満のアルミニウム以外の元素の酸化物あるいは塩類、または1000℃以下の加熱により原料中より除去できる1重量部未満の水、有機物、ハロゲン元素は本発明のアルミナ焼結体の特徴を損うものではなく、許容されるものである。
【0009】
本発明のアルミナ原料として、例えば、住友化学工業(株)製のスミコランダムのAA03(1次粒径0.3μm)、AA04(一次粒径0.4μm)、AA05(一次粒径0.5μm)、AA07(一次粒径0.7μm)が挙げられる。これらの純度はすべて99.99wt%以上である。
【0010】
本発明は、アルミナ純度が99.99%以上の高純度であり、一次粒子が均質で内部に欠陥を有さず、多面体形状の、D/H比が0.5以上3.0以下の粒子で、粒度分布がシャープな粉末を原料とし、これに焼結助剤を添加することにより、成形体中の粒子配列が均一で成形体密度が高く、粒成長が成形体全体で均一に進行するため、焼結体粒内あるいは粒界にポアが取り残されにくく、また原料中の不純物による局所的な異常粒成長が進行しポアが残留することがない、また助剤の効果により焼結の終期において、粒界の成長を抑制しポアが除去される等の効果が発現するため、焼結体密度が従来の常圧焼結品の約3.960g/cm3に比べ、より高い3.975g/cm3以上の高密度が達成できる。
【0011】
本発明において、原料とするアルミナ粒子の一次粒子の平均粒径が1.0μmを越えると、焼結性が低下し、焼結体中にポアが残存するので好ましくない。また、粒度分布が前記に規定したようにシャープでなければ成形体中の粒子配列が不均一になり、局所的な粒成長が生じ、ポアが残存するので好ましくない。さらには純度が99.99%未満では半導体製品へ不純物が混入する原因となる、あるいは不純物により局所的な異常粒成長が進行しポアが残留するため、好ましくない。また、一次粒径が0.1μm以下のアルミナ粉末では、粒子間の相互作用が強く凝集粒子を形成し、これがポアの原因となるため好ましくない。
【0012】
焼結助剤としては、アルカリ土類金属化合物及び珪素化合物から選ばれる少なくとも1種以上を混合する。化合物としては、酸化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、塩化物等が挙げられるが、大気中での焼結時、1200℃以下で酸化物になる化合物であればよくこれに限定されない。アルカリ土類金属では、具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。焼結助剤としては、特にマグネシウム化合物が好ましく、さらには酸化マグネシウムが好ましい。これらは、大気中での焼結時に酸化物となり焼結助剤として効果を発現する。通常、該アルミナ粉末に焼結助剤を酸化物換算で10以上2000ppm以下添加する。また、用途により高純度の焼結体、例えば、99.99wt%以上が必要な場合、該アルミナ粉末に焼結助剤を酸化物換算で10〜150ppm、さらには、10〜70ppm添加することが好ましい。
これらの焼結助剤が密度を上げる機構としては、明らかではないが粒界に異相として存在し粒界の成長を抑制、ポアが除外されやすくなる、また、液相を形成、それを通じてポアが除外されやすくなる等が考えられる。
【0013】
本発明により得られた焼結体に存在するポアは最大径が10μm以下であり、単位面積当たり存在する最大径1μm以上10μm以下のポアの数が1mm2当り10個以下であり、好ましくは5個以下である。高密度のアルミナ焼結体が得られる。ポアが少ないため、本発明のアルミナ焼結体は半導体製造部品として熱拡散炉、プラズマエッチング処理、CVD装置での使用の際、ポア近傍の粒子の脱落、溶出が起きにくい、また、腐食性の溶液、ガスと接触する部材として良好な耐食性を有する。
【0014】
焼結体密度はポアの大きさおよび数で決定される。本発明のアルミナ焼結体の焼結体密度は、焼結助剤の添加により1μm以下の小さいが数の多いポアを除去し、また、特定の原料アルミナを用いていることから、1μm以上の大きなポアが少ないため、3.975g/cm3以上と高い値になっている。
【0015】
本発明のアルミナ焼結体の製造方法について説明する。
本発明では、必要に応じ上記アルミナ原料粉末に焼結助剤、水もしくは有機溶媒、有機バインダー、可塑剤、分散剤を混合し、スラリーを調製する。次に該スラリーを用いて成形し、得られた成形体を大気雰囲気中、1400〜1800℃の温度範囲で焼結して目的とするアルミナ焼結体を製造する。
【0016】
有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、各種アクリル系ポリマー、メチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール系、各種ワックス、各種多糖類を用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0017】
溶媒は使用するバインダーの種類や成形方法によって異なり、例えばスプレードライヤーにより顆粒を製造する場合は水が主に用いられる。またドクターブレード法によりシートを作製する場合はバインダーにより有機溶媒または水が用いられるが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0018】
分散剤としては、溶媒が水の場合は例えばポリアクリル酸のアンモニウム塩(例えば、商品名;SN−D5468、サンノプコ(株)品)が用いられる。また、有機溶媒の場合にはオレイン酸エチル、ソルビタンモノオレート、ソルビンタントリオレート、ポリカルボン酸、ポリエステル系を用いることができる。例えば、ポリエステル系では、商品名;テキサホール3012、サンノプコ(株)品等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0019】
可塑剤は用いる有機バインダーによって異なるが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、各種エステル系等が用いられる。特に有機溶媒を用いる場合には、ジブチルフタレート、フタル酸ジエチルヘキシル等が用いられるが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0020】
また、本発明において、その他の添加剤として、離型剤や凝集剤やpH調整剤を添加することもできる。
【0021】
次に、スラリーの調製法および成形法について説明すると、まず前記アルミナ原料粉末、溶媒、分散剤を適量配合し、機械的な撹拌混合をおこなう。このとき一般的なボールミルによる混合を利用できるが、本発明においては原料とするアルミナ粉末は、凝集が少なく粒子形状ならびに粒子径が揃った多面体の粒子であるため、超音波槽を用いて外部より超音波を照射すること、あるいは超音波ホモジナイザーにより超音波を照射することによって、溶媒中で容易に分散し、均一なスラリーにすることができる。セラミックスボール等のメディアを使用しない分散方法は、アルミニウム以外の酸化物あるいは塩類の混入を避けることができ好ましい。印加する超音波出力は槽容量40リットルの場合、出力1000ワット以上、周波数10キロヘルツ以上好ましくは25キロヘルツ以上が好ましい。撹拌混合時間は該スラリーの容量によって異なるが、例えばスラリー量が10リットルの場合、30分以上おこなうことが望ましい。このように原料粉末を充分に分散させた後、有機バインダーを混合する。この混合は、例えば、スラリー量が10リットルの場合、1時間以上おこなうことが望ましい。
【0022】
調製したスラリーを必要に応じ減圧下において、脱泡してもよい。また各種消泡剤を用いてもよい。またその後の成形方法によって、各種pH調整剤や凝集剤の添加により粘度を50〜10000センチポイズとしてもよい。たとえばスプレードライヤーによる造粒では球形の顆粒を作製するために、アルミナスラリーの粘度は塩酸水溶液やアンモニア水等によるpH調整で、200〜400センチポイズに調整することが好ましい。さらには静置沈降や遠心分離やロータリーエバポレーター等による減圧濃縮等により、スラリー中のアルミナ濃度を高めることもできる。たとえばドクターブレード法による成形ではロータリエバポレーターによりスラリー中の有機溶媒を揮発させることにより粘度を3000〜20000センチポイズとすることが好ましい。
【0023】
成形方法としては、前記スラリーを用いて、スリップキャスト法、遠心キャスト成形法、テープキャスト法、押出し成形法、射出成形等の方法を用いることができる。また前記スラリーをスプレードライ等により顆粒状とした後、プレス成形や冷間静水圧プレス成形することができる。
【0024】
冷間静水圧プレス成形の場合、前記スラリーをスプレードライ等により顆粒状とし、この顆粒を50〜500Kg/cm2、好ましくは200〜300kg/cm2の圧力で一軸プレス成形した後、冷間静水圧プレス成形機にて0.5〜3t/cm2、好ましくは0.8〜1.5t/cm2で等方的に加圧し、得られた成形体を所定の形状に加工する。
また、例えば、20mm径以下の小さい成形体では原料アルミナ粉末を、そのまま成形型に充填し、上記の圧力で一軸プレス成形もしくは冷間静水圧プレス成形することもできる。
【0025】
上記の成形法で得られた成形体は大きさによるが、例えば、直径約300mmφ、厚さ約30mmの場合、500〜1000℃の温度範囲で1時間以上、好ましくは800〜900℃の範囲で3時間以上焼成し、脱脂する。その後、空気中で1400〜1700℃の範囲、好ましくは1550〜1650℃の範囲で焼結して目的とするアルミナ焼結体を製造する。焼結温度が1400℃より低いと充分緻密化せず、また、1800℃よりも高い温度で焼結すると、焼結体粒径が大きくなり、ポアが残存するため好ましくない。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、、原料粉末の特性を表1に、焼結体の評価結果を表2にまとめた。
【0027】
本発明に於ける各種の測定は次のようにして行った。
一次粒子径の数平均粒径の測定
走査電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社:T−300)を使用して粉末粒子の写真を撮影し、その写真から50〜100個の粒子を選択して画像解析をおこない、その平均値として求めた。
(2)D10、D90の測定(重量累積粒度分布の測定)
マスターサイザー(マルバーン社製)を使用し、レーザー回折散乱法により測定した。測定のために準備したアルミナスラリーは、アルミナ粉末2.5gに対し、ヘキサメタリン酸ナトリウムの0.5重量%水溶液を25g添加し、該混合溶液をホモジナイザーにより超音波を2分間照射し調製した。
【0028】
(3)湿式ふるい
アルミナ1000gに対し、蒸留水を1000g添加した後、容量6リットルの超音波槽(周波数28kHz、出力200W)で30分間攪拌しながら超音波を照射しスラリーを調製した。蒸留水を満たしたビーカーに、袋状にした目開き5μmのナイロンメッシュを浸漬し、このナイロンメッシュ袋の中にさきに調製したアルミナスラリーを全量流し込み、ビーカー全体に超音波槽を用いて超音波を照射した。これによりアルミナ粒子がナイロンメッシュを通過しビーカーの中に移動する。20分後ナイロンメッシュ袋を引き上げ、袋外側を十分洗浄したのち、乾燥し重量増加を測定した。その重量増加をアルミナ仕込み量1000gで除し、5μm篩上残査量とした。
【0029】
(4)D/H比の測定
走査電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社:T−300)を使用して粉末粒子の写真を撮影し、その写真から5個ないし10個の粒子を選択して画像解析をおこない、その平均値として求めた。
【0030】
(5)アルミナ焼結体研磨面のポア数ならびにポア径の測定
ポア数は光学顕微鏡(株式会社オリンパス光学工業;BH−2)を使用して焼結体の鏡面研磨面の写真(倍率50倍)を撮影し、その写真に黒点としてあらわれるポアの数を目視で計数し、1mm2当りの個数に換算した。鏡面研磨はアルミナ焼結体を♯800のダイヤモンド砥石で粗削りし、平面とした後、3μmの多結晶ダイヤモンドスラリーと銅定盤研磨器(日本エンギス社ハイプレスラッピングシステム)を用いておこなった。研磨時の面圧は300g/cm2以上とし、60分間以上研磨した。さらに当該表面のスクラッチを除くために1μmの多結晶ダイヤモンドスラリーで30分間以上研磨をおこなった。ポア径は円ではない、楕円や不定形である場合、該ポアの最大径あるいは対角線の長軸をポア径として計測した。
【0031】
(6)腐食試験
腐食試験は上記方法で得られた表面を研磨した焼結体を80℃の硝酸に浸し、50hr処理する。その後、表面のポアを光学顕微鏡で観察、画像解析装置によりポアの面積増加量を測定した。
アルミナ焼結体の純度分析
アルミナ焼結体を約0.5mm厚さに切断し、窒化ボロンの乳鉢で粉砕し、ICP発光法で純度分析を行った。
【0032】
参考例1
本参考例1では住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA03)を原料とした。該アルミナ粉末は実質的に破砕面を有しない、8〜20面の多面体粒子よりなり、SEM写真により測定した一次粒子径は0.3μmであった。重量累積粒度分布を測定した結果、 D90/D10は6であった。湿式による目開き5μmの篩別をでは、篩上残留物が10ppmであった。上記αアルミナ粉末AA03;5Kg、水(溶媒);3Kg、SN−D5468[サンノプコ(株)品;分散剤];62.5g焼結助剤:硝酸マグネシウム;7.2gを超音波を照射しながら、30分間撹拌混合をおこなった。その後有機バインダーとしてポリビニルアルコール[(株)クラレ品;商品名PVA205c]の10重量%溶液を750g、可塑剤としてポリエチレングリコール(試薬;重合度400)を25g、滑剤としてステアリン酸エマルジョン[中京油脂(株)品;商品名セロゾール920]を140gを全量、同時に添加し、60分間撹拌混合してスラリーを調製した。
【0033】
このスラリーを1規定の塩酸水溶液110mlを添加することにより、粘度を350センチポイズに調整し、スプレードライヤーにより噴霧乾燥し、顆粒を作製した。この顆粒粉末を金型に充填し、静水圧プレス成形機で1000Kg/cm2の荷重で、直径;20mm、高さ;10mmの円柱成形体を作製した。次にこの成形体を900℃で3時間脱脂し、引続き大気中にて1550℃で2時間焼結した。
【0034】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.984g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアの数は1mm2あたり7個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.02%であった。
その結果を表2に示した。
【0035】
参考例2
住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA04)を原料とした。該アルミナ粉末は実質的に破砕面を有しない、8〜20面の多面体粒子よりなり、SEM写真により測定した一次粒子径は0.4μmであった。重量累積粒度分布を測定した結果、 D90/D10は4.8であった。湿式による目開き5μm以上の篩別では篩上残留物が5ppmであった。
成形焼結は参考例1と同様に行った。
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.982g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアの数は1mm2あたり4個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.01%であった。
その結果を表2に示した。
【0036】
参考例3
参考例2に記載のαアルミナ粉末AA04;100g、水(溶媒);60g、SN−D5468[サンノプコ(株)品;分散剤];1.3g、マグネシア(宇部マテリアル、500A):0.01gを超音波を照射しながら、30分間撹拌混合をおこなった。マグネシアはスリップキャスト時、約1/2が石膏型に流れ出るため、添加量の2倍の1000ppm添加した。このスラリーを減圧下に30分間静置し、脱泡した。さらに石膏型を利用したスリップキャスト成形により横;30mm、縦;50mm、高さ;5mmの成形体を作製した。この成形体を大気中1600℃で2時間焼結した。
【0037】
この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.983g/cm3であった。また、この焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアの数は1mm2あたり4個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.02%であった。
その結果を表2に示した。
【0038】
参考例4
本参考例2と同様の住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA04)を原料とした。成形焼結は、焼結助剤の硝酸マグネシウムの添加量をマグネシア換算で1000ppmにした以外は参考例1と同様の方法で行った。この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.98g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアは1mm2あたり5個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.01%であった。
その結果を表2に示した。
【0039】
参考例5(テープ成形)
住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA05)を原料とした。該アルミナ粉末は実質的に破砕面を有しない、8〜20面の多面体粒子よりなり、SEM写真により測定した一次粒子径は0.5μmであった。重量累積粒度分布を測定した結果、 D90/D10は4.5であった。湿式による目開き5μm以上の篩別では篩上残留物が5ppmであった。
α−アルミナ粉末99.95重量%、酸化マグネシウム0.05重量%、粉末100重量部に対してトルエン61.5重量部、エタノール17.9重量部、シクロヘキサノン8.6重量部、テキサホール3112(サンノプコ(株)製:ポリエステル系分散剤)2重量部をボールミルで16時間混合し、さらにポリビニルブチラール(積水化学(株)製:商品名BL−S)を7.2重量部、ジブチルフタレート3.6重量部を添加し、ボールミルで6時間混合し、均質なスラリーを得た。溶媒除去によりスラリーの粘度を調整した後、ドクターブレード法により製膜した。
【0040】
空気中、室温で96時間乾燥した後、所定の大きさに切断した。これを電気炉で空気雰囲気で焼成した。500℃で1時間の脱脂を行い、その後1550℃で1時間焼成した。
得られたアルミナ焼結体の密度は3.982g/cm3で、焼結体表面を50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアは1mm2あたり6個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.02%であった。
その結果を表2に示した。
【0041】
参考例6
住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA07)を原料とした。該アルミナ粉末は実質的に破砕面を有しない、8〜20面の多面体粒子よりなり、SEM写真により測定した一次粒子径は0.7μmであった。重量累積粒度分布を測定した結果、D90が2.08μm、D10が0.57μmであり、D90/D10は3.6であった。湿式による目開き5μm以上の篩別では篩上残留物が4ppmであった。
上記αアルミナ粉末AA07を用い、参考例1と同様の方法で顆粒を作製した
この顆粒粉末を金型に充填し、油圧式一軸プレス成形機で1500Kg/cm2の荷重で、直径;20mm、高さ;10mmの円柱成形体を作製した。次にこの成形体を大気中にて900℃で3時間脱脂し、引続き大気中にて1700℃で2時間焼結した。
【0042】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.980g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアは1mm2あたり8個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.02%であった。
その結果を表2に示した。
【0043】
実施例7
本参考例2と同様の住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA04)を原料とした。成形焼結は、焼結助剤の硝酸マグネシウムの添加量をマグネシア換算で50ppmにした以外は参考例1と同様の方法で行った。この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.981g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアは1mm2あたり7個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.01%であった。
その結果を表2に示した。
また、焼結体の純度は99.99wt%以上であった。
【0044】
実施例8
本参考例2と同様の住友化学工業株式会社製αアルミナ粉末(商品名スミコランダムAA04)を原料とした。成形焼結は、焼結助剤の硝酸マグネシウムの添加量をマグネシア換算で25ppmにした以外は参考例1と同様の方法で行った。この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.982g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアは存在せず、最大径1μm以上10μm以下のポアは1mm2あたり8個であった。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.01%であった。
その結果を表2に示した。
【0045】
実施例9
焼結助剤としてSi,Ca、Ma、Baから少なくとも1種を10〜1000ppm添加し。参考例1と同様な方法で成形、焼結することにより、焼結体密度が3.975g/cm3以上の、耐久性に優れたアルミナ焼結大が得られる。
【0046】
比較例1
比較例1では、純度99.990%、一次粒子径0.2μmのアルミナ原料粉末、明礬法アルミナを使用した。このアルミナ粉末の一次粒子は多面体形状ではない不定形粒子であり、D/Hが3より大きかった。このアルミナ粉末の重量累積粒度分布はD90/D10は5.8であった。目開き5μmの湿式篩別での篩上残留物は120ppmであった。
上記のアルミナ原料粉末を用い参考例1と同様の方法で成形・焼結を行った。
【0047】
この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.97g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアが1mm2あたり34個であり、最大径10μm以下のポアは無数に存在した。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.5%であった。
その結果を表2に示した。
【0048】
比較例2
アルミナ原料粉末として住友化学工業(株)社製、スミコランダムAA2を用いた。該アルミナ粉末は実質的に破砕面を有しない、8〜20面の多面体粒子よりなり、SEM写真により測定した一次粒子径は2μmであった。重量累積粒度分布を測定した結果、D90が2.08μm、D10が0.57μmであり、D90/D10は3.6であった。湿式による目開き5μm以上の篩別では篩上残留物が50ppmであった。このアルミナ粉末を用い、参考例1と同様の方法で成形、1700℃で焼結を行った。
【0049】
この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.9g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアが1mm2あたり46個であり、最大径10μm以下のポアは無数に存在した。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.7%であった。
その結果を表2に示した。
【0050】
比較例3
アルミナ原料粉末として住友化学工業(株)社製、スミコランダムAA04を用い、1400℃で熱処理した粉末を原料に用いた。このアルミナは形状は多面体あるが粒度分布は広くD90/D10は10であった。湿式による目開き5μm以上の篩別では篩上残留物が209ppmであった。本アルミナを用い、参考例1と同様の方法で成形、焼結を行った。
この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.9g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアが1mm2あたり69個であり、最大径10μm以下のポアは無数に存在した。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は0.9%であった。
その結果を表2に示した。
【0051】
比較例4
比較例4では、純度99.5%、一次粒子径0.6μmのアルミナ原料粉末、バイヤーアルミナを使用した。このアルミナ粉末の一次粒子は多面体形状ではない不定形粒子であり、D/Hが3より大きかった。このアルミナ粉末の重量累積粒度分布はD90/D10は7であった。目開き5μmの湿式篩別での篩上残留物は380ppmであった。
上記のアルミナ原料粉末を用い参考例1と同様の方法で成形・焼結を行った。
【0052】
この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.870g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポアおよび、最大径10μm以下のポアともに多数、存在した。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は2.1%であった。
その結果を表2に示した。
【0053】
比較例5
比較例5では、有機アルミニウム化合物の加水分解により水酸化アルミニウムを調製、1000℃で焼成した純度99.99%、一次粒子径0.05μmのアルミナ原料粉末を用いた。このアルミナ粉末の一次粒子は多面体形状ではない不定形粒子であり、D/Hが5であった。このアルミナ粉末の重量累積粒度分布はD90/D10は5.8であった。目開き5μmの湿式篩別は不可能だった。
上記のアルミナ原料粉末を用い参考例1と同様の方法で成形・焼結を行った。
【0054】
この焼結体の密度をアルキメデス法により計測したところ、3.80g/cm3であった。またこの焼結体を鏡面研磨し、50倍の光学顕微鏡で観察したところ、最大径10μmより大きなポア、最大径10μm以下のポアはともに無数に存在した。
熱硝酸中での腐食試験後では、ポア面積は2.3%であった。
その結果を表2に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
本発明は、不純物やポアが極めて少ないことから、例えば、半導体産業におけるアルカリ金属およびアルカリ土類金属等の混入、ゴミ等の付着や吸着を避けたい製品(例えば、シリコンウェハーの洗浄、移動、表面処理等の操作時に使用される真空チャック、バキュームピンセット、ハンド等の製品の材料、さらには磁性材料の研磨用治具)として、また、ポアの存在自体を避けたい製品の材料(例えば、ハードディスク基板や磁気ヘッド用基板などの材料、各種工業用ミラー等の材料、ダミーウェハー)として、また腐食性溶液、ガス等と接触する耐食性を必要とする部材に好適なアルミナ焼結体を提供することができる。
Claims (7)
- 実質的に破砕面を有さない、多面体粒子よりなり、六方最密格子であるαアルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上3.0以下であるαアルミナ粒子からなり、該αアルミナ粒子の数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であり、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたときにD90/D10の値が7以下の粒度分布である純度99.99%以上のアルミナ粉末に焼結助剤を酸化物換算で10ppm以上70ppm以下添加し成形後、該成形体を常圧で大気雰囲気中で1400℃〜1800℃の温度範囲で焼結することを特徴とする焼結体純度99.99%以上のアルミナ焼結体の製造方法。
- アルミナ粉末が、目開き5μmのフィルターを用いた湿式篩別を行った場合、篩上残留物が100ppm以下であるアルミナ粉末である請求項1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
- 焼結助剤がアルカリ土類金属化合物及び珪素化合物から選ばれる1種以上である請求項1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
- 焼結助剤がマグネシウム化合物である請求項1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
- 焼結体のポアの最大径が10μm以下であり、単位面積当たり存在する最大径1μm以上10μm以下のポアの数が1mm2当り10個以下である請求項1〜4のいずれかに記載のアルミナ焼結体の製造方法。
- 焼結体密度が3.975g/cm3以上である請求項1〜4のいずれかに記載のアルミナ焼結体の製造方法。
- 実質的に破砕面を有さない、多面体粒子からなり、六方最密格子であるαアルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上3.0以下であるαアルミナ粒子からなり、該αアルミナ粒子の数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であり、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたときにD90/D10の値が7以下の粒度分布を有し、目開き5μmのフィルターを用いた湿式篩別を行った場合、篩上残留物が100ppm以下である純度99.99%以上のアルミナ粉末からなることを特徴とする焼結体純度99.99%以上のアルミナ焼結体用アルミナ粉末。
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