JP4323572B2 - トルシン、トルシン遺伝子、及び使用法 - Google Patents

トルシン、トルシン遺伝子、及び使用法 Download PDF

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Description

連邦政府に援助された研究及び開発の下でなされた発明に対する権利に関する記載
この発明の開発中に行われた研究の一部は、米国政府資金を利用した。米国政府は、この発明において一定の権利を有する。
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般に、トルシン遺伝子、好ましくは、トルシンジストニア遺伝子、DYT1をコードするトルシンAに関する。特に、本発明は、トルシンタンパク質をコードする核酸分子;精製されたトルシンタンパク質及びポリペプチド;組換え核酸分子;組換え核酸分子を含む細胞;トルシンタンパク質及びポリペプチドに特異的な結合親和性を有する抗体;抗体を含むハイブリドーマ;トルシンタンパク質をコードする核酸の検出用の核酸プローブ;試料中のトルシンタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸の検出方法;核酸プローブ又は抗体を含むキット;捻転ジストニア(torsion dystonia)に罹患した哺乳類を診断、評価又は予知するための、この発明の核酸配列、タンパク質又は抗体を用いるバイオアッセイ;治療的使用;並びに動物(好ましくは、ヒト)における捻転ジストニアの予防法に関する。
関連技術
運動障害は、脳幹神経節における異常な神経伝達が、ハンチントン病における舞踏病、パーキンソン病における振せん及び硬直,並びに捻転ジストニアにおける捩じり収縮(twisting contraction)等の制御不可能な身体運動に関連するヒト神経学的疾患の群を構成する。ジストニアの症状は、多くの神経学的症状、及び薬物又は脳に対する外傷的障害に対し続発性であることがあるが、初期又は捻転ジストニアは、他の神経学的関与の欠如により区別され(ファーン(Fahn),S.,Adv Neurol 50:1−8(1988);チュトリアン(Chutorian),A.H.、Acta Neuropediatricia 2:33−45(1996))、これらの他の2つの神経変性疾患とは対照的に、顕著な神経病理学は何もない。ジストニアの臨床的兆候は、関与する身体領域に加えて年齢及び発症部位において幅広い多様性を示す。初期ジストニアのすべての形態の罹患率は、北アメリカにおいて3/10,000であると見積もられる(ナット(Nutt),J.G.ら、Mov Disord 3:188−194(1988))。
初期発症の、汎発性のジストニアは、初期ジストニアの最も障害性の形である。症状は、通常、12年程(4〜44歳)で、腕又は脚から始まり、約5年以内に他の肢部が関与して広がる(ブレスマン(Bressman),S.B.ら、Annal Neurol 36:771−777(1994b);グリーン(Greene),P.ら、Mov Disord 10:143−152(1995))。初期発症ジストニアの臨床的スペクトルは、すべての民族群において類似しており、創始突然変異(オゼリウス(Ozelius),L.ら、Am.J.Hum.Genet.50:619−628(1992);リッシュ(Risch),N.J.ら、Am J Hum Genet 46:533−538(1990)及びリッシュ(Risch),N.ら、Nature Genetics 9:152−159(1995))により、アシュケナージ系ユダヤ人(本明細書ではAJと称する)群に最も多くみられる(ゼーマン(Zeman),W.,&ディーケン(Dyken),P.、Psychiatr Neurol Neurochir 10:77−121(1967);コークジン(Korczyn),A.D.ら、Ann Neurol 8:387−391(1980);エルドリッジ(Eldridge),R.、Neurology 20:1−78(1970))。初期発症ジストニアは、30〜40%浸透度の遺伝の常染色体優性最頻値(mode)を伴う(ブレスマン(Bressman),S.B.ら、Ann Neurol 26:612−620(1989);リッシュ(Risch),N.J.ら、Am J Hum Genet 46:533−538(1990))。ユダヤ人及び非ユダヤ人家族における原因遺伝子は、ヒト染色体9q34にマッピングされている(オゼリウス(Ozelius),L.ら、Neuron 2:1427−1434(1989);クラマー(Kramer),P.L.ら、Ann Neurol 27:114−120(1990)及びクラマー(Kramer),P.ら、Am J Hum Gen 55:468−475(1994))。AJ家族における創始突然変異のハプロタイプ分析により、第9染色体上のASS遺伝子座の1−2cMインターバルセントロメアにDYT1遺伝子の位置を決め(オゼリウス(Ozelius),L.ら、Am.J.Hum.Genet.50:619−628(1992))、隣接するマーカー、D9S62a/b及びD9S63により、最も高いロッドスコアが得られた(リッシュ(Risch),N.ら、Nature Genetics 9:152−159(1995))。
発明の要約
本発明は、一般に、トルシン、好ましくは、トルシンジストニア遺伝子、DYT1をコードするトルシンAをコードする単離された核酸分子を提供する。
さらに、本発明は、トルシンタンパク質をコードするアミノ酸配列を含有する精製されたポリペプチドを提供する。
また、本発明は、試料中のトルシンタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸の存在の特異的検出用の核酸プローブを提供する。
さらに、本発明は、試料中のトルシンタンパク質をコードする核酸の検出方法を提供する。
また、本発明は、試料中のトルシンタンパク質をコードする核酸の存在の検出用キットを提供する。
さらに、本発明は、5’から3’に、宿主細胞で転写を開始するのに有効なプロモーターと、上記の単離された核酸分子とを含有してなる組換え核酸分子を提供する。
また、本発明は、ベクターと上述の単離された核酸分子とを含有してなる組換え核酸分子を提供する。
さらに、本発明は、上述のポリペプチドに対応するアミノ酸配列をコードするRNA配列に相補的な配列を含有してなる組換え核酸分子を提供する。
また、本発明は、上述の組換え核酸分子を含む細胞を提供する。
さらに、本発明は、上述の組換え核酸分子を含む非ヒト生物を提供する。
また、本発明は、トルシンタンパク質又はポリペプチドに特異的結合親和性を有する抗体を提供する。
さらに、本発明は、試料中のトルシンタンパク質又はポリペプチドの検出方法を提供する。
また、本発明は、試料中のトルシンタンパク質又はポリペプチドの量の測定方法を提供する。
さらに、本発明は、トルシンタンパク質又はポリペプチドに特異的な結合親和性を有する抗体の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、上記の抗体を含む第1容器手段、並びにモノクローナル抗体の結合パートナーと標識とを含有してなるコンジュゲートを含む第2容器手段を含有してなる診断用キットを提供する。
また、本発明は、上記のモノクローナル抗体を産生するハイブリーマを提供する。
さらに、本発明は、ヒト疾患、特に捻転ジストニアの診断方法を提供する。好ましくは、患者における捻転ジストニアの発症の存在又は素因の診断方法が、本明細書において提供される。より好ましくは、方法は、
(a) 患者から試料を採取する工程、
(b) 試料におけるGAGGAG領域(配列番号:5のヌクレオチドの位置946〜951)を検出する工程を含む、試料中のトルシンA核酸の特性を評価する工程;並びに
(c) 患者における捻転ジストニアの発症の存在又は素因を診断する工程、ここで、GAGGAG領域にGAGが存在しないことは、捻転ジストニアの発症の存在又は素因を示す、
を含む。
また、本発明は、(1)トルシンタンパク質をコードする核酸配列、又は(2)トルシンタンパク質のすべて又は一部に関する治療的使用のための方法を提供する。
本発明のさらなる目的及び利点は、以下の記載から明らかになるであろう。
定義
以下の説明では、組換えDNA(rDNA)技術で使用されるいくつかの用語を広範囲にわたって使用する。本明細書と請求の範囲が、それらの用語に与えられる範囲を含めて、明解に矛盾なく理解されるように、次の定義を行う。
単離された核酸分子:一般に理解され本明細書で使用されるところの「単離された核酸分子」とはヌクレオチドのポリマーを指し、DNAとRNAを包含するが、これらに限るわけではない。「単離された」核酸分子はその天然のインビボの状態から精製される。
組換えDNA:起源の異なるDNAセグメントを結合することによって形成され、組換えDNA技術(分子遺伝子操作ともいう)を使って製造される任意のDNA分子。
DNAセグメント:一般に理解され本明細書で使用されるところの「DNAセグメント」とは、直線的な一連のヌクレオチドからなる分子を指し、ここにそれらのヌクレオチドは、タンパク質、タンパク質断片又はポリペプチドと呼ばれるアミノ酸残基の一次配列からなる分子を遺伝暗号によってコードできる配列に存在する。
遺伝子:一つのポリペプチド鎖又はタンパク質に関係するDNA配列であり、本明細書で使用される場合には、5’及び3’非翻訳末端を含む。そのポリペプチドは、そのタンパク質の機能的活性が保たれる限り、全長配列又はそのコード配列の任意の部分によってコードされうる。
相補DNA(cDNA):メッセンジャーRNA(「mRNA」)の逆転写によって合成される組換え核酸分子。
構造遺伝子:mRNAに転写されるDNA配列であり、そのmRNAは次いで特定のポリペプチドに特有なアミノ酸の配列に翻訳される。
制限エンドヌクレアーゼ:制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素ともいう)は、DNA分子中の特定の塩基配列(通常4、5又は6塩基対の長さ)を認識し、この配列が現れるすべての位置でそのDNA分子を切断する能力を持つ酵素である。例えばEcoRIはGAATTC/CTTAAGという塩基配列を認識する。
制限断片:制限エンドヌクレアーゼによる消化で生成するDNA分子は制限断片と呼ばれる。任意の得られたゲノムは特定の制限エンドヌクレアーゼにより制限断片の離散集合に消化できる。
アガロースゲル電気泳動:制限断片の長さの多形性を検出するには、二本鎖DNA分子をサイズに基づいて分画する分析方法が必要である。このような分画を達成するために最も一般的に使用される技術(ただし唯一の技術というわけではない)がアガロースゲル電気泳動である。この方法の原理は、DNA分子がゲルの中を、あたかもそれが、最も大きい分子の移動を最も強く遅延させ、最も小さい分子の移動を最も弱く遅延させる篩であるかのように移動することにある。小さいDNA断片ほどアガロースゲルでの電気泳動時に移動度が高いことに注意されたい。
アガロースゲル電気泳動によって分画されたDNA断片は、そのパターンに含まれる断片数が少ない場合は、染色操作によって直接的に視覚化できる。ゲノムのDNA断片は、うまく視覚化され得る。しかしほとんどのゲノムは、ヒトゲノムを含めて、あまりにも多くのDNA配列を含有するので、単純な制限断片パターンをもたらさない。例えばヒトゲノムはEcoRIによって約1,000,000種類の種々のDNA断片に消化される。これらの断片の小さい部分集合を視覚化するには、サザンハイブリダイゼーション法と呼ばれる方法論を適用できる。
サザントランスファー法:サザントランスファー法(ブロット法ともいう)の目的は、アガロースゲル電気泳動で分画されたDNAを、ニトロセルロース製ろ紙又は他の適当な表面もしくは手段に、分画操作によって得られたDNA断片の相対位置を維持したまま、物理的に移すことである。アガロースゲルからニトロセルロースへのトランスファーを達成するために使用される方法論には、毛管現象によるゲルからニトロセルロース紙へのDNAの引き抜きが伴う。
核酸ハイブリダイゼーション:核酸ハイブリダイゼーションは、相補的な塩基配列を持つ2本の一本鎖核酸分子が適切な条件で混合されると、それらが熱力学的に有利な二本鎖構造を再形成するという原理に基づいている。2つの相補的一本鎖核酸の間には、たとえ一方がニトロセルロースフィルターに固定化されても、二本鎖構造が形成される。サザンハイブリダイゼーション法では、後者の状況が生じる。既に述べたように、試験される個体のDNAは制限エンドヌクレアーゼで消化され、アガロースゲル電気泳動によって分画され、一本鎖型に変換され、ニトロセルロース紙に移されて、ハイブリダイゼーションプローブへの再アニーリングに利用できるようにされる。ハイブリダイゼーション条件の例はAusubel,F.M.ら,Current Protocols in Molecular Biology(John Wily & Sons社、ニューヨーク州ニューヨーク(1989))に見出すことができる。ニトロセルロースフィルターは、50%ホルムアミド、高塩濃度緩衝液(5×SSC[20×:3M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム]又は5×SSPE[20×:3.6M NaCl/0.2M NaH2PO4/0.02M EDTA、pH7.7])、5×デンハート液、1%SDS及び100μg/ml変性サケ***DNAを含む溶液中、標識されたプローブとともに68℃で終夜インキュベートされる。次に、所望するストリンジェンシーに基づいて選択される温度[室温(低ストリンジェンシー)、42℃(中等度ストリンジェンシー)又は68℃(高ストリンジェンシー)]の0.2×SSC/0.1%SDS中で数回洗浄される。選択される温度は、そのDNAハイブリッドの融解温度(Tm)に基づいて決定される。
ハイブリダイゼーションプローブ:サザンハイブリダイゼーション法で特定のDNA配列を視覚化するために、標識されたDNA分子又はハイブリダイゼーションプローブを、ニトロセルロースフィルターに結合している分画済DNAに反応させる。標識されたDNAプローブに相補的なDNA配列を持つそのフィルター上の領域は、再アニーリング反応の結果として、それら自体が標識された状態になる。そのような標識化を示すフィルターの領域が視覚化される。ハイブリダイゼーションプローブは、一般的には、特定DNA配列の分子クローニングによって作製される。
オリゴヌクレオチド又はオリゴマー:2個以上の(好ましくは3個を超える)デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドからなる分子。その正確なサイズは多くの要因に依存し、それらの要因もまたオリゴヌクレオチドの最終的な機能又は用途に依存する。オリゴヌクレオチドは合成によるものでも、クローニングによるものでもよい。
配列増幅:大量の標的配列を生成する方法。一般に、1以上の増幅プライマーを核酸配列にアニールさせる。適当な酵素を用いることにより、プライマーに隣接して見出される配列又はプライマー間に見出される配列が増幅される。
増幅プライマー:核酸鎖に相補的なプライマー伸張産物の合成が開始される条件下に置いたときに、標的配列に隣接してアニーリングし、DNA合成の開始点として働くことができるオリゴヌクレオチド。
ベクター:そこにDNAを挿入してクローニングすることができるプラスミド又はファージDNAもしくは他のDNA配列。ベクターは宿主細胞内で自律的に複製でき、またさらに、その位置でそのDNA配列を決定できる様式で切断してそこにDNAを挿入することができる1又は少数のエンドヌクレアーゼ認識部位を特徴とする。ベクターはさらに、そのベクターで形質転換された細胞の同定に使用するのに適したマーカーを含有できる。マーカーは、例えばテトラサイクリン耐性やアンピシリン耐性などである。「ベクター」という意味で「クローニング媒体」という用語をときどき使用する。
発現:発現とは構造遺伝子がポリペプチドを生産する過程をいう。これは遺伝子のmRNAへの転写と、そのmRNAのポリペプチドへの翻訳を伴う。
発現ベクター:クローニングベクターに似ているが、宿主への形質転換後に、そこにクローニングされている遺伝子を発現させうるベクター又は媒体。クローン化遺伝子は通常、プロモーター配列などの一定の制御配列の制御下に置かれる(すなわちそれら制御配列に作動可能に連結される)。
発現制御配列は、そのベクターが作動可能に連結された遺伝子を原核宿主中で発現させるように設計されるのか真核宿主中で発現させるように設計されるのかに依存して変化し、エンハンサーエレメント、終結配列、組織特異性エレメントなどの転写配列及び/又は翻訳開始部位と翻訳終結部位をさらに含みうる。
機能的誘導体:タンパク質であれ核酸であれ、ある配列の「機能的誘導体」とは、そのタンパク質又は核酸配列の生物学的活性と実質上類似する(機能上又は構造上の)生物学的活性を有する分子をいう。タンパク質の機能的誘導体は共有結合された炭水化物などの翻訳後修飾を、特定機能の性能に関するそのような修飾の必要性に応じて含有しうる。「機能的誘導体」という用語は、分子の「断片」「セグメント」「変異体」「類似体」又は「化学誘導体」を包含する。
本明細書では、ある分子が通常はもう一つの分子の一部でない追加の化学部分を含有する場合、それをそのもう一つの分子の「化学誘導体」であるという。そのような部分は、その分子の溶解性、吸収性、生物学的半減期などを改善できる。あるいは、それらの部分はその分子の毒性を減少させたり、その分子の何らかの望ましくない副作用を排除又は減弱することもできる。そのような効果を媒介できる部分はRemington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されている。そのような部分を分子に結合する方法は当該技術分野でよく知られている。
変異体:あるタンパク質又は核酸の「変異体」とは、そのタンパク質又は核酸に構造と生物学的活性が実質的に類似する分子を指すものとする。したがって、2つの分子が共通する活性を持ち、互いに代用できるのであれば、たとえそれら分子の一方の組成又は二次、三次もしくは四次構造が他方に見出されるものと同一でなくても、もしくはアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が同一でなくても、それらは本明細書にいうところの変異体であるとみなされる。
対立遺伝子:「対立遺伝子」とは、染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子の対立型である。
突然変異:「突然変異」は、娘細胞に伝達され、さらには次の世代にも伝達されて、突然変異型細胞又は突然変異型個体をもたらしうる、遺伝物質中の何らかの検出可能な変化である。突然変異型細胞の子孫が多細胞生物中の体細胞のみをもたらす場合は、細胞の突然変異スポット又は突然変異領域が生じる。有性生殖する生物の生殖細胞系列における突然変異は、配偶子によって次の世代に伝達されて、その体細胞と生殖細胞の両方に新しい突然変異条件を持つ個体をもたらしうる。突然変異は、化学的又は物理的構造、易変性、複製、表現型機能に影響を及ぼす任意の検出可能な人為的変化(又はその組み合わせ)もしくは1以上のデオキシリボヌクレオチドの組換えでありうる。ヌクレオチドは付加したり、欠失させたり、置換したり、逆位したり、逆位を伴って及び逆位を伴わずに新しい位置に転移させることができる。突然変異は自発的に起こることができ、突然変異原の適用によって実験的に誘発することもできる。核酸分子の突然変異型変異体は突然変異によってもたらされる。突然変異型ポリペプチドは突然変異型核酸分子からもたらされうる。
種:「種」とは、実際に又は潜在的に交配する自然個体群の一群である。核酸分子又はタンパク質内での種間変異は、種間で起こり、問題の分子のDNA配列決定によって決定することができる核酸配列又はアミノ酸配列中の変化である。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE):サイズに基づくポリペプチドの分画を達成するために最も一般的に使用される技術(ただし唯一の技術というわけではない)がポリアクリルアミドゲル電気泳動である。この方法の原理は、ポリペプチド分子がゲル中を、あたかもそれが、最も大きい分子の移動を最も強く遅延させ、最も小さい分子の移動を最も弱く遅延させる篩であるかのように移動することにある。小さいポリペプチド断片ほどポリアクリルアミドゲルでの電気泳動時に移動度が高いことに注意されたい。電気泳動前と電気泳動中に、通例、ポリペプチドは界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に継続的にさらされ、その条件下ではポリペプチドが変性される。非変性ゲルはSDSの非存在下で実行される。ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分画されたポリペプチドは、ポリペプチド成分の数が少なければ、染色操作によって直接的に視覚化できる。
ウェスタントランスファー法:ウェスタントランスファー法(ブロット法ともいう)の目的は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分画されたポリペプチドを、ニトロセルロース製ろ紙又は他の適当な表面もしくは手段に、分画操作によって得られたポリペプチドの相対位置を維持したまま、物理的に移すことである。次に、そのブロットは、興味あるポリペプチドに特異的に結合する抗体でプローブされる。
精製(された):「精製(された)」タンパク質又は核酸とは、細胞成分から分離されているタンパク質又は核酸をいう。「精製(された)」タンパク質又は核酸は天然には見られないレベルの純度まで精製されている。
実質上純粋な:「実質上純粋な」タンパク質又は核酸とは、他の全ての細胞成分を欠如したタンパク質又は核酸調製物をいう。
【図面の簡単な説明】
図1:DYT1標的領域を横切るコスミドコンティグと転写産物マップ。水平の線はコスミドを表し、垂直の線は制限部位X=XhoI、E=EcoRI及びN=NotI(Nv、Xv、Ev=ベクター末端)を表し、数字は断片のサイズをキロベースの単位で示す。垂直の点線は各cDNAの5’末端と3’末端及び組換えマーカーD9S2161とD9S63の位置を示す。一番下にある黒い水平の矢印は転写産物を表し、その矢印の向きは転写の方向を示す。cDNA上の枠は捕捉されたエキソンの一部を示す。マップの作成に使用したコスミドを両側に記載する。LLが続くコスミド名はローレンスリバーモア第9染色体特異ライブラリーに由来するもので、指定された名称の前にすべてLL09NC01が付く。また、LAが続くものはロスアラモス第9染色体特異ライブラリーに由来する。CENはセントロメアを、TELはテロメアを意味し、染色体9qに関してこのマップの向きを示す。
図2:DYT1領域におけるcDNA間の配列変異。図はその臨界領域における4つのcDNA転写産物それぞれの縮尺図である。斜線を引いた黒い枠は5’非翻訳配列を示し、斜線を引いた白い枠は推定されるオープンリーディングフレームを示し、波線は3’非翻訳配列を示す。cDNA DQ2とDQ3のオープンリーディングフレームの5’末端にある破線は、最初の予想メチオニン(M)の5’側に停止コドンが見つかっていないことを示す。オープンリーディングフレームを示す枠の傍らにある数字はcDNAの始まりと終わり及び予想される開始コドンと停止コドンのヌクレオチド位置を示す。SSCPシフトをもたらす領域を転写産物図の上に示す。+はそのヌクレオチド変化がまだ決定されていないものを示し、*はSSCPシフトに対応する既知のヌクレオチド変化の位置を示し、^はcDNA DQ2中のGAG欠失を示す。ヌクレオチド変化とその結果起こるアミノ酸変換を各cDNAの下に記載する。転写産物のサイズはノーザンブロット分析で見積もった。
図3:DQ2及びDQ1転写産物のノーザンブロット分析。ヒトRNAのノーザンブロット(Clontech社)(左から右に向かって順に)−胎児:1)脳、2)肺、3)肝臓及び4)腎臓と、成人:1)心臓、2)脳、3)胎盤、4)肺、5)肝臓、6)骨格筋、7)腎臓及び8)膵臓。ブロットを、パネルAではcDNA DQ2のヌクレオチド149−1307に対応するPCRプローブに、パネルBではcDNA DQ1のヌクレオチド28−728に対応するPCRプローブにハイブリッド形成させた。マーカーのサイズを線で示す。
図4:トルシン遺伝子ファミリーの各メンバーの予想アミノ酸配列の比較
A.トルシンとtorpの整列。トルシンAとトルシンBはそれぞれcDNA DQ2とDQ1によってコードされる。torpCelはC.エレガンス(C.elegans)ゲノム配列由来の予想アミノ酸配列である。torp−1とtorp−2は、それぞれヒト及びマウス由来のオーバーラップ発現配列標識cDNAに相当する。黒ぬりの三角形はトルシンA中のGAG(E)欠失部位を表す。保存されたシステイン残基を*で表す。暗い影付きの残基はコンセンサス配列と同一であり、明るい影付きの残基は類似している。プロテインキナーゼ(PKC)とカゼインキナーゼ2(CK2)に関する保存された可能リン酸化部位を枠で囲んである。
B.各トルシンAドメインを示す略図。N末端領域(左)は、2つの塩基性残基(K、R)が前にあって極性残基と酸性残基(Q、E)によって二分されている約40個の疎水性アミノ酸を含有する。ATP結合ドメインがその保存されたA及びBモチーフと共に示されている。HSP100ファミリーで保存されているさらに2つのモチーフ(SNとIV)に影をつけてある。
C.トルシン及びtorpと、HSP100ファミリーの2つの代表的メンバーとの比較。マウス由来のSKD3はクラス2MのHSP100ファミリーメンバーであり、ダイズ由来のHSP101はクラス1Bの熱ショックタンパク質である(Schirmer,E.C.ら,TIBS 21:289−296(1996))。影つきの残基はコンセンサス配列と同一である。保存されたモチーフ(A、B、SN及びIV)は7つのタンパク質全てに存在する。
図5:初期発症ジストニアに関係するGAG欠失の分離
A.配列.プライマー6419を使った増幅ゲノムDNA由来の突然変異配列と正常配列を示す配列決定ゲルのオートラジオグラフ。下から上に5’から3’の向きに示された配列は、罹患した患者の一方の対立遺伝子上に見出されるGAG欠失を明らかにしている。この突然変異はコード領域のヌクレオチド946−948で起こり、このタンパク質からのGlu残基の欠失をもたらす。
B.断片のSSCP分析.患者と対照者から得たゲノムDNAのPCR−SSCP分析を示すオートラジオグラフ。プライマー(6418と6419)を使って250bpの断片を作り、それを非変性アクリルアミドゲルで分離した。レーン1、3及び5は典型的な初期発症ジストニアを患っている患者であり、レーン2と4は患っていない患者である。黒ぬりの三角形はGAG欠失に関係するシフトしたバンドを示し、中空の三角形は正常な対立遺伝子に関係する2本のバンドを示す。
C.BseRIによるPCR断片の消化,プライマー6419とH48でゲノムDNAからPCR産物を作り、その200bp産物をBseRIで消化した。対照DNAからは120bpと70bpのバンドが生成したが(レーン2)、GAG欠失を持つ患者からはBseRI部位の喪失により130bpの新しいバンドが生成した(レーン1)。レーン3と4はマーカーである:3)特定サイズのPCR産物(50、100及び130bp)、4)100bpラダー(Pharmacia社)。
D.GAG欠失周辺の配列。プライマーの位置(矢印)を示すトルシンAの正常なゲノム/cDNA配列;GAG欠失が起こるGAGGAG配列(括弧でくくった部分)とBseRI部位(*、欠失の結果として失われる部位欠失)。
図6:年齢の関数としての初期発症ジストニアへのニューロンの関与の仮説モデル.ジストニア症状は大脳基底核におけるニューロンの機能不全によって起こると考えられる。脳のこの領域のニューロンは、体内でそれらが補助する行動に対応する解剖学的パターニングを持ち、それは倒立した人体模型で大雑把に表すことができる。初期発症ジストニアでは、年齢の関数としての症状の物理的発生部位と全身性化する傾向を、年齢と共に大脳基底核中を腹側に移動する感受性ゾーン(平行線模様の領域)として表すことができる。AJ創始変異のキャリアの臨床分析(Bressman,S.B.ら,Annal Neurol.36:771−777(1994b))により、症状の発症が早いほど、それらが下肢に始まる可能性が高く、全身性化して(太い黒い矢印)身体の上部に影響を及ぼす傾向が強いことが明らかである。発症年齢が上昇するにつれて、症状は徐々により高い身体部分に影響を及ぼす傾向を示し、なお下方に進行する傾向がある。28歳を超える年齢までには、初期発症遺伝子のキャリアは感受性年齢を通り過ぎており、症状が顕性化する可能性はわずかしか残っていない。それでもなお、遺伝子キャリアとして、これらの「脱出者」が、冒された子供を持つ危険性は、冒された遺伝子キャリアと同等である。
好ましい態様の詳細な説明
開示の明確さの目的のため、限定するものではなく、本発明の詳細な記載は、以下のサブセクションに分けられる。
I. トルシンポリペプチドをコードする単離された核酸分子
II. 精製されたトルシンポリペプチド
III. トルシン核酸の特異的検出用核酸プローブ
IV. 試料中のトルシン核酸の存在の検出方法
V. 試料中のトルシン核酸の存在の検出用キット
VI. トルシン核酸分子を含有するDNA構築物及びこれらの構築物を含む細胞
VII. トルシンポリペプチドに結合親和性を有する抗体及び抗体を含むハイブリドーマ
VIII. 試料中のトルシンポリペプチド又は抗体の検出方法
IX. トルシンタンパク質又は抗体を含有する診断用キット
X. 診断的スクリーニング及び治療
XI. トランスジェニックトルシン「ノックアウト」マウス
XII. HSV−1アンプリコン構築物
I.トルシンポリペプチドをコードする単離された核酸分子
一態様として、本発明は、以下からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一(より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一)なポリヌクレオチド配列を含有してなる単離された核酸分子に関する:
(a)配列番号:2又は4の全アミノ酸配列を含有してなるトルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(b)ATCC寄託番号98454又は98455に含まれるポリヌクレオチドクローンによってコードされる全アミノ酸配列を含有してなるトルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;並びに
(c)(a)又は(b)のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列。
トルシン核酸は1997年6月12日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(米国、20852 メリーランド州、ロックビル、パークローンドライブ 12301)に、ATCC寄託番号98454及び98455として寄託された。
好ましい一態様として、単離された核酸分子は、配列番号:1又は3に記載のヌクレオチド配列に対して90%を超える(好ましくは95%、96%、97%、98%、99%を超える、もしくは100%の)同一性又は類似性を持つトルシンヌクレオチド配列を含有してなる。他の一つの好ましい態様として、単離された核酸分子は、配列番号:1又は3に記載のトルシンヌクレオチド配列を含有してなる。他の一つの態様として、単離された核酸分子は配列番号:2又は4に記載のトルシンアミノ酸配列をコードする。
また、本明細書に記載される単離された核酸分子とその誘導体の機能的均等物も本発明の範囲に含まれる。例えば、配列番号:1又は3に記載の核酸配列は、機能的に均等な分子を与える置換、付加又は欠失によって改変できる。ヌクレオチドコード配列の縮重ゆえに、本発明の実施には、配列番号:2又は4に記載するものと実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を使用することができる。これらには、配列内で機能的に均等なアミノ酸残基をコードする異なるコドンへの置換によって改変された配列番号:1又は3に記載のトルシン核酸の全部又は一部を含有してなるヌクレオチド配列を含むが、これらに限るわけではない。
また、本核酸配列は、配列番号:1又は3に示す核酸式又はその誘導体の5’末端及び/又は3’末端への少なくとも一つのヌクレオチドの付加、欠失又は置換によってもたらされるヌクレオチド配列を含有してなり得る。これに関して、その付加、欠失又は置換がそのヌクレオチド配列によってコードされる配列番号:2又は4のアミノ酸配列を実質上変化させないのであれば、任意のヌクレオチド又はポリヌクレオチドを使用できる。さらに、本発明の核酸分子は、必要に応じて、その5’末端及び/又は3’末端に付加された制限エンドヌクレアーゼ認識部位を持つことができる。したがって、遺伝暗号によって許されるトルシン遺伝子のヌクレオチド配列とその断片のあらゆる変異体は本発明に含まれる。
さらに、構造的に修飾されたポリペプチドであるが、非修飾核酸分子によって生産されるポリペプチドと実質的に同じ有用性又は活性を持つものを生産するのに、コドンを欠失させるか、1以上のコドンを縮重コドン以外のコドンで置換することができる。技術上認識されているように、2つのポリペプチドは機能的に均等であり、それらの生産を引き起こす2つの核酸分子も、たとえそれら核酸分子間の相違が遺伝暗号の縮重に関係しないものであっても同様である。
A.核酸の単離
本発明の一側面として、トルシンに対応するアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供される。具体的には、本核酸分子は、トルシンRNA又はDNAを含む生物学的試料から単離できる。
本核酸分子は、cDNAクローニングと差引きハイブリダイゼーションの技術を用いてトルシンRNAを含む生物学的試料から単離できる。本核酸分子はcDNAライブラリーから相同プローブを用いて単離することもできる。
本核酸分子は、ゲノムDNAを含む生物学的試料又はゲノムライブラリーから単離できる。好適な生物学的試料には、全生物、器官、組織、血液、細胞を含むが、これらに限るわけではない。生物学的試料を得る方法は、その試料の性質に依存して変動するだろう。
ゲノムが個体間でわずかな対立遺伝子変異を伴いうることは当業者には理解されるだろう。したがって、単離された核酸分子は、その配列がトルシンコード配列の機能的誘導体である限り、対立遺伝子変異体も包むものとする。トルシン対立遺伝子が配列番号:1又は3に見出されるものと同一な配列をコードしない場合は、本明細書において使用したものと同じ技術を用いて、具体的にはPCR法を使って本明細書に開示する配列に基づくプライマーで適切な遺伝子を増幅することにより、それをトルシンとして単離及び同定できる。
当業者は、ヒト以外の生物(例えば、真核生物;より具体的には、哺乳動物、齧歯動物、線虫類(例えば、シー・エレガンス(C.elegans))、昆虫(好ましくは、ミバエ、ショウジョウバエ(Drosophila))、鳥、魚、酵母、及び植物;さらに具体的には、ゴリラ、アカゲザル、及びチンパンジー)もトルシン遺伝子を含むであろうことを理解するだろう。本発明は、上記の生物から単離されるトルシン核酸分子を包含むものとするが、それらに限らない。
B.核酸の合成
本発明の単離された核酸分子には、化学的に合成されたものも含まれるものとする。例えば、トルシン遺伝子の発現産物をコードするヌクレオチド配列を持つ核酸分子を設計し得、必要であれば、より小さい適当な断片に分割することができる。次に、その核酸分子又は分割した断片のそれぞれに対応するオリゴマーを合成できる。そのような合成オリゴヌクレオチドは、例えばMatteucciら,J.Am.Chem.Soc.103:3185−3191(1981)のトリエステル法か、自動DNA合成装置を使用することによって調製できる。
オリゴヌクレオチドは合成的に又はクローニングによって得ることができる。必要であれば、オリゴマーの5’末端をT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン酸化できる。アニーリングに先立つ又は標識化のための一本鎖のキナーゼ処理は、過剰の当該酵素を使用して達成できる。キナーゼ処理がプローブを標識するためである場合、ATPは比活性の高い放射性同位体を含み得る。次に、そのDNAオリゴマーをアニーリングとT4リガーゼなどによるライゲーションにかけることができる。
II.精製されたトルシンポリペプチド
もう一つの態様として、本発明は、トルシンに対応するアミノ酸配列を持つ精製されたポリペプチド(好ましくは実質的に純粋なもの)又はその機能的誘導体に関する。好ましい態様として、本ポリペプチドは、配列番号:2又は4に記載のアミノ酸配列又はその突然変異体もしくは種変異体、又はそれと少なくとも80%の同一性か少なくとも90%の類似性(好ましくは、その少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性か、少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の類似性)、又はその少なくとも6つの連続するアミノ酸(好ましくは、その少なくとも10、15、20、25又は50個の連続するアミノ酸)を持つ。
好ましい態様として、本発明はトルシンエピトープに関する。これらポリペプチドのエピトープは免疫原性又は抗原性エピトープである。免疫原性エピトープは、そのタンパク質全体が免疫原である場合、そのタンパク質のうち抗体反応を引き起こす部分である。抗原性エピトープは、抗体反応を引き起こし得るタンパク質の断片である。抗原性エピトープ断片を選択する方法は技術上よく知られている。Sutcliffeら,Science 219:660−666(1983)を参照のこと。本発明の抗原性エピトープ保持ペプチドと抗原性エピトープ保持ポリペプチドは、そのポリペプチドを特異的に認識する免疫応答を生じさせるのに役立つ。本発明の抗原性エピトープ保持ペプチドと抗原性エピトープ保持ポリペプチドは、本発明タンパク質の少なくとも7アミノ酸(好ましくは9、10、12、15又は20個のアミノ酸)を含んでなる。抗原性ポリペプチド又は抗原性ペプチドの例には下記表1に挙げるものが含まれる。
Figure 0004323572
トルシンのアミノ酸配列変異体は、そのDNA中の突然変異によって製造できる。そのような変異体には、例えば、配列番号:2又は4に示すアミノ酸配列からの欠失や、該アミノ酸配列内での残基の挿入又は置換が含まれる。最終構築物が所望の活性を有するのであれば、欠失、挿入及び置換をどのように組み合わせて最終構築物に到達してもよい。
アミノ酸配列変異を導入する部位は前もって決定されるが、突然変異そのものを前もって決定しておく必要はない。例えば、所定の部位における突然変異の成果を最適化するために、標的コドン又は標的領域でランダム突然変異誘発を行い、発現されたトルシン変異体を所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングすることができる。既知の配列を持つDNA中の前もって決定した部位に置換突然変異を作る技術、例えば、部位特異的突然変異誘発法はよく知られている。
本発明のトルシン変異体の製造は、好ましくは、先に製造されたそのタンパク質の変異体又は非変異型タンパク質をコードするDNAの部位特異的突然変異誘発によって達成される。部位特異的突然変異誘発は、所望の突然変異のDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列を使用したトルシン変異体の生産を可能にする。Adelmanら,DNA 2:183(1983)やAusubelら「Current Protocols in Molecular Biology」(J.Wiley & Sons社、ニューヨーク州ニューヨーク、1996)などの刊行物が示すように、一般的に、部位特異的突然変異誘発法は技術上よく知られている。
アミノ酸配列欠失は一般に約1ないし30残基、より好ましくは1ないし10残基の範囲であり、通例は連続的である。
アミノ酸配列挿入には、1又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入の他に、1残基から基本的に無制限な長さのポリペプチドまでのアミノ及び/又はカルボキシル末端融合が含まれる。配列内挿入(すなわち全トルシン配列内での挿入)は一般に約1ないし10残基、より好ましくは1ないし5残基に及びうる。
第3の変異体群は、トルシン分子内の少なくとも一つのアミノ酸残基(好ましくは一つのみ)が除去され、その位置に異なる残基が挿入されているものである。トルシンの特徴を細かく調節したい場合、そのような置換は好ましくは次の表2に従って施される。
Figure 0004323572
機能的又は免疫学的特性の本質的な変化は、表2に記載したものよりも保存性の低い置換を選択することによって、すなわち、(a)置換領域のポリペプチド主鎖の構造(例えばシート又はらせんコンフォメーション)、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性もしくは(c)側鎖の嵩高さを維持する効果がより有意に異なる残基を選択することによって起こる。一般的に予想される置換は、(a)グリシン及び/又はプロリンを別のアミノ酸で置換するか、それらを欠失又は挿入したもの、(b)親水性残基(例えばセリル又はスレオニル)で(を)疎水性残基(例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル又はアラニルを(で)置換したもの、(c)システイン残基で(を)他の任意の残基を(で)置換したもの、(d)正電荷側鎖を持つ残基(例えばリジル、アルギニル又はヒスチジル)で(を)負電荷を持つ残基(例えばグルタミル又はアスパルチル)を(で)置換したもの、又は(e)嵩高い側鎖を持つ残基(例えばフェニルアラニン)で(を)そのような側鎖を持たない残基(例えばグリシン)を(で)置換したものである。
一部の欠失と挿入及び置換はトルシンの特徴に根本的な変化をもたらさないと予想される。しかし置換、欠失又は挿入の正確な影響を前もって予測することが困難な場合、その影響が慣用のスクリーニングアッセイで評価されることは、当業者には理解されるだろう。例えば、変異体は通例、天然トルシンコード核酸の部位特異的突然変異誘発、その変異体核酸の組換え細胞培養における発現、及び随意に例えばカラムへの免疫アフィニティー吸着(少なくとも一つの残存免疫エピトープにそれを結合させることによって変異体を吸収するため)などによるその細胞培養からの精製によって製造される。次に、細胞溶解物又は精製トルシン分子変異体の活性を、所望の特徴に関する適当なスクリーニングアッセイでスクリーニングする。例えば、与えられた抗体に対する親和性など、トルシン分子の免疫学的特徴の変化が競争型免疫アッセイで測定される。免疫調節活性の変化は適切なアッセイで測定される。酸化還元安定性や熱安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、又は担体との会合傾向、多量体への会合傾向などといったタンパク質特性の変化は、通常の当業者によく知られる方法でアッセイされる。
本発明のペプチドを得るには、技術上知られている様々な方法論を利用できる。一態様として、本ペプチドは本来そのペプチドを産生する組織又は細胞から精製される。あるいは、上述の単離された核酸断片を使って、任意の生物中でトルシンタンパク質を発現させることができる。本発明の試料には細胞、細胞のタンパク質抽出物又は膜抽出物、又は生物学的液体が含まれる。試料はアッセイの形式、検出方法、試料として使用する組織、細胞又は抽出物の性質によって変動するだろう。
本発明のペプチドの起源としては、その起源生物が天然にそのようなペプチドを含有する限り、どのような生物でも使用できる。本明細書で用いる「起源生物」とは、そのサブユニットが発現され最終的にそこから単離される生物がなんであれ、そのサブユニットのアミノ酸配列が由来する元の生物を指す。
当業者は、天然の夾雑物を含まないペプチドを得るために、容易に既知のタンパク質単離法に従うことができる。これらには、免疫クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、及び免疫アフィニティークロマトグラフィーが含まれるが、これらに限るわけではない。
好ましい態様として、その精製法は、イオン交換クロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィーからなる。技術上知られている多数のイオン交換樹脂は、例えばモノQ、セファロースQ、マクロ−プレップQ、AG1−X2又はHQを含み、いずれも使用できる。好適なサイズ排除樹脂の例にはスーパーデックス200、スーパーロース12、及びセファクリル200があるが、これらに限るわけではない。溶出は0.01Mから2.0Mにわたる濃度の塩化カリウム又は塩化ナトリウムの水溶液で達成できる。
III.トルシン核酸の特異的検出用核酸プローブ
もう一つの態様として、本発明は、上述の核酸分子又は少なくともストリンジェント条件でトルシン核酸に結合するその断片を含む、試料中のトルシン核酸の存在を特異的に検出するための核酸プローブに関する。
好ましい一態様として、本発明は、トルシンのRNA又はDNAと優先的にハイブリッド形成するが、トルシンと無関係なRNA又はDNAにはハイブリッド形成しない10〜100ヌクレオチド(好ましくは10〜500、10〜100、10〜50、10〜35、20〜1000、20〜500、20〜100、20〜50又は20〜35)からなる単離された核酸プローブに関し、ここに前記核酸プローブは、以下からなる群より選ばれる配列と少なくとも90%同一なポリヌクレオチド配列を含有してなる核酸分子に由来する少なくとも10(好ましくは15、18、20、25又は30)個の連続するヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であるか、それに相補的なものである:
(a)配列番号:2又は4の全アミノ酸配列を含有してなるトルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(b)ATCC寄託番号98454又は98455に含まれるポリヌクレオチドクローンによってコードされる全アミノ酸配列を含有してなるトルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(c)(a)又は(b)のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、並びに
(d)上述したようなヌクレオチド配列。
本発明で使用できる特異的核酸プローブの例を下記表3に示す。
Figure 0004323572
本核酸プローブは、もう一つの本発明の核酸分子を得るべく、通常のハイブリダイゼーション法によって適当な染色体ライブラリー又はcDNAライブラリーをプローブするために使用できる。染色体DNAライブラリー又はcDNAライブラリーは、技術上知られている方法に従って適当な細胞から調製できる(Sambrook,Fritsch,& Maniatis編「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(コールドスプリングハーバー研究所、1989)を参照のこと)。
別法として、トルシンアミノ酸配列のN末端及びC末端部分に対応するヌクレオチド配列を持つ核酸プローブを得るのに化学合成を行う(表3参照のこと)。したがって、合成された核酸プローブは、本発明の断片を得るのに、適当な染色体、cDNA又は細胞株ライブラリーを用い、基本的にMichaelら編「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications」(Academic Press社、1990)に準じて、認識されているPCR技術に従って行われるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で、プライマーとして使用できる。
当業者は、本明細書に開示される配列に基づき、技術上知られているコンピュータによるアラインメント及び配列分析法を用いて、そのようなプローブを容易に設計できる(Sambrook,Fritsch,& Maniatis編「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(コールドスプリングハーバー研究所、1989)を参照のこと)。
本発明のハイブリダイゼーションプローブは、標準的な標識技術により、放射標識、酵素標識、蛍光標識、ビオチン−アビジン標識、化学発光などで標識できる。ハイブリダイゼーション後に、プローブは既知の方法で視覚化できる。
本発明の核酸プローブにはDNAプローブの他にRNAプローブも含まれ、それらのプローブは技術上知られている方法で作成される。
上述した方法の一態様として、核酸プローブを固体支持体に固定化する。そのような固体支持体の例にはポリカーボネートなどのプラスチック、アガロースやセファロースなどの複合糖質、ポリアクリルアミドやラテックスビーズなどのアクリル樹脂があるが、これらに限るわけではない。核酸プローブをそれら固体支持体に結合する技術は技術上よく知られている。
本発明の核酸プローブ法に適した試験試料には、例えば細胞、細胞の核酸抽出物又は生物学的液体が含まれる。上述の方法で使用される試料は、アッセイの形式、検出方法、アッセイしようとする組織、細胞又は抽出物の性質によって変わるだろう。細胞の核酸抽出物を調製する方法は技術上よく知られており、使用する方法に適合する試料を得るのに容易に適応させることができる。
IV.試料中のトルシン核酸の存在の検出方法
他の一つの態様として、本発明は、試料中のトルシン核酸の存在を検出する方法であって、a)試料を上述の核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起こるように特異的ハイブリダイゼーション条件で接触させる工程、並びにb)核酸分子に結合したプローブの存在を検出する工程を含む方法に関する。当業者は、上述のように、技術上知られている方法に従って核酸プローブを選択するだろう。試験される試料としては、ヒト組織由来のRNA又はDNA試料があるが、これらに限るわけではない。
V.試料中のトルシン核酸の存在の検出用キット
他の一つの態様として、本発明は、上述の核酸プローブが配置された少なくとも一つの容器手段を含有してなる、試料中のトルシン核酸の存在を検出するためのキットに関する。好ましい態様として、本キットはさらに、以下の1以上を含有してなる他の容器を含有してなる:洗浄試薬、及び結合した核酸プローブの存在を検出できる試薬。検出試薬の例には、放射標識プローブ、酵素標識プローブ(セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)及びアフィニティーラベルプローブ(ビオチン、アビジン又はステプトアビジン(steptavidin))が含まれるが、これらに限るわけではない。
詳しく述べると、区画化されたキットには、試薬類が独立した容器に含まれている任意のキットが含まれる。そのような容器としては、小さいガラス製容器、プラスチック製容器又はプラスチック製もしくは紙製のストリップが含まれる。そのような容器は、試料と試薬が相互汚染されず、各容器の薬剤又は溶液をある区画から別の区画へ定量的に加えることができるように、ある区画から別の区画への試料の効率のよい移送を可能にする。そのような容器としては、試験試料を受け入れる容器、そのアッセイに使用するプローブ又はプライマーを含む容器、洗浄試薬(例えばリン酸緩衝化生理的食塩水、トリス緩衝液など)を含む容器並びにハイブリッド形成したプローブ、結合した抗体、増幅産物などを検出するのに使用される試薬を含む容器が含まれるであろう。
本発明で記述される核酸プローブを、技術上よく知られている確立されたキット形式の一つに容易に組み込みうることは、当業者には容易に認識されるだろう。
VI.トルシン核酸分子を含有するDNA構築物及びこれらの構築物を含む細胞
他の一つの態様として、本発明は、5’から3’に、宿主細胞で転写を開始するのに有効なプロモーターと上述の核酸分子とを含有してなる組換えDNA分子に関する。他の一つの態様として、本発明は、ベクターと上述の核酸分子とを含有してなる組換えDNA分子に関する。
他の一つの態様として、本発明は、細胞内で機能する転写制御領域、上述のポリペプチドに対応するアミノ酸配列をコードするRNA配列に相補的な配列、及び細胞内で機能する転写終結領域を含有してなる核酸分子に関する。
上述の分子は単離及び/又は精製されたDNA分子であることが好ましい。
他の一つの態様として、本発明は、上述の核酸分子を含有する細胞又は非ヒト生物に関する。
他の一つの態様として、本ペプチドが、本ペプチドを発現するように改変された細胞から精製される。
本明細書では、細胞が遺伝子操作によってその細胞が通常は産生しないか通常は低レベルに産生するタンパク質を産生するようにされる場合、その細胞は「目的のペプチドを発現するように改変される」という。当業者は、ゲノム、cDNA又は合成配列を真核又は原核細胞に導入して発現させるような方法を容易にとることができる。
DNAなどの核酸分子は、それが転写及び翻訳調節情報を含むヌクレオチド配列を含み、それらの配列があるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結」されている場合、そのポリペプチドを「発現させることができる」という。作動可能な連結とは、調節DNA配列と発現させようとするDNA配列が、遺伝子配列の発現を可能にするように連結されている連結である。遺伝子配列の発現に必要な調節領域の正確な性質は生物ごとに異なりうるが、一般的には、原核生物では、プロモーター(これはRNA転写の開始を指示する)と、RNAに転写されたときに合成開始のシグナルを出すDNA配列の両方を含むプロモーター領域が含まれるだろう。そのような領域は通常、転写と翻訳の開始に関与するTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの5’非コード配列を含むだろう。
所望であれば、トルシンコード配列の3’側にある非コード領域を上述の方法で得ることができる。この領域は、終結やポリアデニル化などの、その転写終結調節配列ゆえに残しておくことができる。このように、トルシン遺伝子をコードするDNA配列に本来隣接している3’領域を保持しておくことによって、転写終結シグナルを提供できる。転写終結シグナルが発現宿主細胞でうまく機能しない場合は、その宿主細胞で機能する3’領域に置換できる。
2つのDNA配列(例えば、プロモーター領域配列とトルシンコード配列)は、それら2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入を招かず、(2)トルシンコード配列の転写に向かわせるそのプロモーター領域配列の能力を妨害せず、又は(3)そのプロモーター領域配列によって転写されるというトルシンコード配列の能力を妨害しないのであれば、作動可能に連結されているという。したがって、あるプロモーター領域があるDNA配列の転写を達成できるのであれば、そのプロモーター領域はそのDNA配列に作動可能に連結されていることになる。
本発明は、原核細胞又は真核細胞におけるトルシンコード配列(又はその機能的誘導体)の発現を包含する。一般に原核宿主は組換えタンパク質の生産に最も効率的で便利であり、したがってトルシンコード配列の発現にとって好ましい。
原核生物は様々な大腸菌株によって代表されることが最も多い。しかし、他の細菌株を含む他の微生物株も使用できる。原核生物系では、その宿主に適合する種に由来する複製部位と制御配列を含むプラスミドベクターを使用できる。好適なプラスミドベクターの例には、pBR322、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119などが含まれる;好適なファージ又はバクテリオファージベクターには、λgt10、λgt11などが含まれる;好適なウイルスベクターには、pMAM−neo、pKRCなどが含まれる。選択された本発明のベクターは、選択された宿主細胞内で複製する能力を持つことが好ましい。
認識されている原核宿主には、大腸菌、バチルス(Bacillus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)などの細菌が含まれる。しかし、そのような条件では、ペプチドはグリコシル化されないであろう。原核宿主は発現プラスミド中のレプリコン及び制御配列と適合しなければならない。
原核細胞でトルシンを発現させるには、トルシンコード配列を機能的原核プロモーターに作動可能に連結する必要がある。そのようなプロモーターは構成的であってもよいし、また、より好ましくは調節可能(すなわち誘導性又は抑制解除できるもの)であってもよい。構成的プロモーターの例にはバクテリオファージλのintプロモーター、pBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター、pBR325のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーターなどが含まれる。誘導性原核プロモーターの例には、バクテリオファージλの主要右及び左プロモーター(PL及びPR)、大腸菌のtrp、recA、lacZ、lacI及びgalプロモーター、枯草菌(B.subtilis)のαアミラーゼプロモーター(Ulmanenら,J.Bacteriol.162:176−182(1985))とσ−28−特異的プロモーター(Gilmanら,Gene Sequence 32:11−20(1984))、バチルスのバクテリオファージのプロモーター(Gryczan「The Molecular Biology of the Bacilli」、Academic Press社、ニューヨーク(1982))、並びにストレプトミセス・プロモーター(Wardら,Mol.Gen.Genet.203:468−478(1986))が含まれる。原核プロモーターについては、Glick(J.Ind.Microbiol.1:277−282(1987));Cenatiempo(Biochimie 68:505−516(1986));及びGottesman(Ann.Rev.Genet.18:415−442(1984))による総説がある。
原核細胞における適切な発現には、遺伝子配列コード配列の上流にリボソーム結合部位が存在することも必要である。そのようなリボゾーム結合部位は、例えばGoldら(Ann.Rev.Microbiol.35:365−404(1981))によって開示されている。
制御配列、発現ベクター、形質転換法などの選択は、遺伝子の発現に使用する宿主細胞のタイプに依存する。本明細書では「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」とは、互換的に使用でき、このような呼称は全て子孫を含む。したがって「形質転換体」又は「形質転換細胞」には、初代対象細胞と、継代数に関わらずそこから派生する培養とを含む。意図的な突然変異又は偶然の突然変異により、全ての子孫がDNAの内容に関して精密に同一なわけではありえないと理解される。しかし、定義として、突然変異型子孫は、元の形質転換細胞と同じ機能性を持つ。
本発明の発現系で使用できる宿主細胞は、それらが目的のトルシンペプチドを発現させるのに適しているのであれば、厳密に限定されるわけではない。好適な宿主には真核細胞が含まれる。
好ましい真核宿主には、例えば酵母、カビ、昆虫細胞、生体内又は組織培養中の哺乳類細胞が含まれる。好ましい哺乳類細胞には、HeLa細胞、VEROやCHO−K1などの線維芽細胞起源の細胞、又はリンパ起源の細胞とそれらの誘導体が含まれる。
また、植物細胞も宿主として利用でき、カリフラワーモザイクウイルス35S及び19S、ノパリンシンターゼのプロモーター並びにポリアデニル化シグナル配列など、植物細胞に適合する制御配列が入手できる。
他の一つの好ましい宿主は、昆虫細胞、例えばショウジョウバエの幼虫である。昆虫細胞を宿主として使用する場合、ショウジョウバエ・アルコールデヒドロゲナーゼプロモーターを使用できる(Rubin,Science 240:1453−1459(1988))。あるいは、大量のトルシンを昆虫細胞で発現させるのに、バキュロウイルスベクターを操作することができる(Jasny,Science 238:1653(1987);Millerら、Setlow,J.Kら編「Genetic Engineering(1986)」(Plenum社)第8巻の227−297頁)。
異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳及び翻訳後のプロセッシングと修飾(例えばグリコシル化、切断)に特徴的で特異的な機構をもつ。適切な細胞株又は宿主系を選択することにより、発現される外来タンパク質の望ましい修飾とプロセッシングを保証することができる。
糖分解酵素をコードする活発に発現される遺伝子配列に由来するプロモーターと終結配列を組み込んだ一連の酵母遺伝子配列発現系はいずれも利用できる。酵母をグルコースに富む培地で生育させると、これらの酵素は大量に生産される。既知の糖分解遺伝子配列は、極めて効率的な転写制御シグナルも提供できる。
酵母には翻訳後ペプチド修飾を行い得るという重要な利点がある。酵母における目的タンパク質の生産に利用できる高コピー数のプラスミドと強力なプロモーター配列を利用する多くの組換えDNA法がある。酵母はクローン化された哺乳類遺伝子配列産物上のリーダー配列を認識し、リーダー配列を保持するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌させる。哺乳類宿主には、トルシンの発現に利用できるベクター系がいくつかある。
宿主の性質に応じて、多種多様な転写及び翻訳調節配列を使用できる。転写及び翻訳調節シグナルは、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルスなどのウイルス起源のものとすることができ、それらの調節シグナルは高い発現レベルを持つ特定の遺伝子配列に関係する。あるいは、アクチン、コラーゲン、ミオシンなどの哺乳類発現産物に由来するプロモーターを使用できる。遺伝子配列の発現を調整することができるように、抑制又は活性化が可能な転写開始調節シグナルを選択できる。温度感受性であって温度を変えることによって発現を抑制するか開始することができる調節シグナルや、化学的(例えば代謝産物)調節を受ける調節シグナルが興味深い。
上述のように、真核宿主におけるトルシンの発現には、真核調節領域を使用する必要がある。そのような領域は一般に、RNA合成の開始を指示するのに十分なプロモーター領域を含むだろう。好ましい真核プロモーターには、例えばマウスメタロチオネインI遺伝子配列のプロモーター(Hamerら,J.Mol.Appl.Gen.1:273−288(1982));ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight,Cell 31:355−365(1982));SV40初期プロモーター(Benoistら,Nature(London)290:304−310(1981));酵母gal4遺伝子配列プロモーター(Johnstonら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79:6971−6975(1982);Silverら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)81:5951−5955(1984))及びCMV極初期遺伝子プロモーター(Thomsenら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)81:659−663(1984)が含まれる。
広く知られているように、真核mRNAの翻訳は最初のメチオニンをコードするコドンで開始される。そのため、真核プロモーターとトルシンコード配列の間の連結がメチオニンをコードできる介在コドン(すなわちAUG)を決して含まないようにすることが好ましい。そのようなコドンの存在は融合タンパク質の形成(AUGコドンがトルシンコード配列と同じ読み枠にある場合)か、フレームシフト突然変異(AUGコドンがトルシンコード配列と同じ読み枠にない場合)をもたらす。
トルシン核酸分子及び実施可能に連結されたプロモーターは、直鎖状分子であるか、より好ましくは閉環状共有結合分子でありうる非複製DNA(又はRNA)分子として受容原核細胞又は受容真核細胞に導入されうる。そのような分子は、自律的に複製できないので、遺伝子の発現は、導入配列の一過性の発現によって起こりうる。あるいは、導入DNA配列の宿主染色体への組み込みにより、永続的な発現も起こりうる。
一態様として、目的の遺伝子配列を宿主細胞染色体に組み込みうるベクターを使用する。導入DNAをその染色体に安定に組み込んでいる細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカーをも導入することによって選択できる。前記マーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性を与えたり、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質、又は銅などの重金属など)を与えることができる。選択可能なマーカー遺伝子配列は、発現対象のDNA遺伝子配列に直接連結してもよいし、同じ細胞にコントランスフェクションによって導入することもできる。一本鎖結合タンパク質mRNAの最適な合成には、追加のエレメントが必要な場合もある。これらのエレメントとしては、スプライスシグナルならびに転写プロモーター、エンハンサーシグナル配列及び終止シグナルが挙げられる。かかるエレメントを組み込んだcDNA発現ベクターとしては、Okayama,Molecular Cell.Biol.3:280(1983)に記載のものがが挙げられる。
好ましい態様では、導入核酸分子が、受容宿主中で自律的に複製できるプラスミド又はウイルスベクターに組み込まれるだろう。この目的には、多種多様なベクターのいずれも使用できる。特定のプラスミド又はウイルスベクターを選択する際に重要な因子としては、ベクターを含む受容細胞を認識し、該ベクターを含有しない受容細胞から選択する際の容易性;特定の宿主中におけるベクターの目的のコピー数;ベクターを異種宿主細胞間で「シャトル」できることが望ましいかどうか、などが挙げられる。好ましい原核生物ベクターとしては、大腸菌で複製できるもの(例えば、pBR322、ColE1、pSC101、pACYC184、πVXなど)などのプラスミドがある。かかるプラスミドは、例えば、Sambrookによって開示されている(Sambrook、Fritsch及びManiatis編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989を参照のこと)。バチルスのプラスミドとしては、pC194、pC221、pT127などが挙げられる。かかるプラスミドは、Gryczanによって開示されている(The Molecular Biology of the Bacilli、Academic Press、ニューヨーク(1982)の307−329頁)。好適なストレプトミセス・プラスミドとしては、pIJ101(Kendallら,J.Bacteriol.169:4177−4183(1987))と、φC31などのストレプトミセス・バクテリオファージ(Chaterら、Sixth International Symposium on Actinomycetales Biology、Adademiai Kaido、ハンガリー・ブダペスト(1986))の45−54頁)が挙げられる。シュードモナス・プラスミドは、Johnら(Rev.Infect.Dis.8:693−704(1986))及びIzaki(Jpn.J.Bacteriol.33:729−742(1978))により、総説される。
好ましい真核生物のプラスミドとしては、例えば、BPV、ワクシニア、SV40、2ミクロン環状プラスミドなど、又はそれらの誘導体が挙げられる。そのようなプラスミドは当該技術分野でよく知られている(Botsteinら,Miami Wntr.Symp.19:265−274(1982);Broach,The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces: Life Cycle and Inheritance、コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1981)、445−470頁;Broach,Cell 28:203−204(1982);Bollonら,J.Clin.Hemetol.Oncol.10:39−48(1980);Maniatis、Cell Biology: A Comprehensive Treatise, Vol.3, Gene Sequence Expression、Academic Press社、ニューヨーク(1980))、563−608頁)。
発現のために、1又は複数の構築物を含むベクター又は核酸分子を調製し、該1又は複数のDNA構築物を、種々の好適な手段、すなわち形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿法、直接マイクロインジェクション法などのいずれかによって、適当な宿主細胞に導入できる。ベクターの導入後、ベクター含有細胞の生育を選択する選択培地中で、受容細胞を生育する。1又は複数のクローン化遺伝子分子の発現は、トルシンの生産をもたらす。このことは、形質転換細胞そのもので起こりうるか、又は(例えば神経芽腫細胞などへのブロモデオキシウラシルの投与により)それら細胞の分化誘導後に起こりうる。
VII.トルシンポリペプチドに結合親和性を有する抗体及び抗体を含むハイブリドーマ
別の態様として、本発明は、前記トルシンポリペプチドに対して特異的な結合親和性又はトルシンポリペプチド結合断片に対して特異的な結合親和性を持つ抗体に関する。抗体は、それが非トルシンポリペプチドに結合しないのであれば、トルシンポリペプチド(polpeptide)又はその結合断片に特異的に結合する。トルシンに選択的に結合するものは、限定されないが、トルシンを含む組織におけるトルシン発現変化の分析を含みうる方法への使用のために選択されるだろう。
本発明のトルシンタンパク質は、抗体の生産、医薬組成物の同定、DNA/タンパク質相互作用の研究などの様々な操作と方法とに使用されうる。
本発明のトルシンペプチドは、抗体又はハイブリドーマを生産するために使用できる。抗体を望む場合、そのようなペプチドが本明細書に記載されるように作成され、それが免疫原として使用されるであろうことを、当業者は認識するだろう。
本発明の抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体ならびにこれらの抗体断片が挙げられる。本発明は、さらに単鎖抗体を包む。分子のイディオタイプを含む抗体断片は、公知の技術で作成できる。例えば、そのような断片としては、限定されないが、F(ab’)2断片;Fab’断片;Fab断片、Fv断片が挙げられる。
ヒトにおいて産生される、又は組換え技術もしくは他の技術によって「ヒト化」された(すなわちヒトにおいて免疫原性でない)、トルシンに対する抗体は、本発明にとって特に興味深い。ヒト化抗体は、例えば、抗体の免疫原性部分を、それに対応するが免疫原性ではない部分で置換することによって生産できる(すなわちキメラ抗体)(Robinson,R.R.ら、国際特許出願公開PCT/US86/02269;Akira,K.ら、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi,M.、欧州特許出願第171,496号;Morrison,S.L.ら、欧州特許出願第173,494号;Neuberger,M.S.ら、PCT出願WO86/01533;Cabilly,S.ら、欧州特許出願第125,023号;Better,M.ら、Science 240:1041−1043(1988);Liu,A.Y.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443(1987);Liu,A.Y.ら,J.Immunol.139:3521−3526(1987);Sun,L.K.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218(1987);Nishimura,Y.ら,Canc.Res.47:999−1005(1987);Wood,C.R.ら,Nature 314:446−449(1985);Shawら,J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559(1988))。「ヒト化」キメラ抗体に関する総説としては、Morrison,S.L.(Science,229:1202−1207(1985))とOi,V.T.ら(BioTechniques 4:214(1986))により提供される。好適な「ヒト化」抗体は、CDR又はCEA置換法によって二者択一的に作出することもできる(Jones,P.T.ら,Nature 321:552−525(1986);Verhoeyanら,Science 239:1534(1988);Beidler,C.B.ら,J.Immunol.141:4053−4060(1988))。
別の態様として、本発明は、前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関する。ハイブリドーマは、特定のモノクローナル抗体を分泌できる不死化細胞株である。
一般に、モノクローナル抗体とハイブリドーマとを調製する技術は、当該技術分野でよく知られている(Campbell、Monoclonal Antibody Technology:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、Elsevier Science Publishers、オランダ・アムステルダム(1984);St.Grothら,J.Immunol.Methods 35:1−21(1980))。
抗体を産生することが知られている、いかなる動物(マウス、ウサギなど)も選択したポリペプチドで免疫できる。免疫法は、当該技術分野でよく知られている。かかる方法としては、ポリペプチドの皮下又は腹腔内注射が挙げられる。当業者は、免疫化に使用するポリペプチドの量が、免疫する動物、該ポリペプチドの抗原性及び注射の部位に基づき変動するであろうことを認識するであろう。
ペプチド抗原性を増加させるために、ポリペプチドを修飾するか、アジュバントに入れて投与できる。ポリペプチドの抗原性を増加させる方法は、当該技術分野でよく知られている。かかる手法としては、抗原と異種タンパク質(グロブリン又はβ−ガラクトシダーゼなど)とカップリングすることや、免疫化中にアジュバントを含めることなどが挙げられる。
モノクローナル抗体に関して、免疫動物から脾臓を取り出し、骨髄腫細胞と融合し、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞にする。
目的の特徴を持つ抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定するには、当該技術分野でよく知られているいくつかの方法をいずれかを使用できる。これらには、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット解析又はラジオイムノアッセイによるハイブリドーマのスクリーニングが含まれる(Lutzら,Exp.Cell.Res.175:109−124(1988))。
当該技術分野で知られている方法を用いて、目的の抗体を分泌するハイブリドーマをクローン化し、クラスとサブクラスを決定する(前出Campbell、Monoclonal Antibody Technology:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、(1984))。
ポリクローナル抗体に関して、抗体含有抗血清を免疫動物から単離し、目的の特異性を持つ抗体の存在を前記方法の1つを用いてスクリーニングする。
本発明の別の態様では、前記抗体を検出可能に標識する。抗体は放射性同位体、アフィニティーラベル(ビオチン、アビジンなど)、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光標識(FITC又はローダミンなど)、常磁性原子などを使って検出可能に標識できる。かかる標識を達成する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、〔Sternbergerら,J.Histochem.Cytochem.18:315(1970);Bayerら,Meth.Enzym.62:308(1979);Engvalら,Immunol.109:129(1972);Goding,J.Immunol.Meth.13:215(1976)〕を参照のこと。本発明の標識抗体は、特定のペプチドを発現させる細胞又は組織を同定するためのインビトロ、インビボ及びインサイチュアッセイに使用できる。
本発明の別の態様では、前記抗体を固体支持体に固定化する。そのような固体支持体の例示としては、ポリカーボネートなどのプラスチック、アガロースやセファロースなどの複合糖質、ポリアクリルアミドやラテックスビーズなどのアクリル樹脂がある。抗体をかかる固体支持体にカップリングする技術は、当該技術分野でよく知られている(Weirら「Handbook of Experimental Immunology」第4版(Blackwell Scientific Publications、イングランド・オックスフォード、第10章(1986);Jacobyら,Merh.Enzym.34、Academic Press、ニューヨーク、(1974))。本発明の固定化抗体はインビトロ、インビボ及びインサイチュアッセイと免疫クロマトグラフィーに使用できる。
さらに、当業者は、現在利用可能な手法、ならびに抗体に関して上述した技術、方法及びキットを、合理的に設計された抗ペプチド・ペプチドを作成するために、特定のペプチド配列に結合できるペプチドが生成するよう、容易に適合させることができる。例えば、Synthetic Peptides,A User s Guide、W.H.Freeman、ニューヨーク、289−307頁、Hurbyら、「合成ペプチドの応用:アンチセンスペプチド」(1992)やKaspczakら,Biochemistry 28:9230−8(1989)を参照のこと。
抗ペプチドペプチドは、2つの方法で1つで作成できる。まず、抗ペプチドペプチドは、トルシンペプチド配列中に見出される塩基性アミノ酸残基を酸性残基で置換し、疎水性基と非電荷極性基を維持しておくことによって作成できる。例えば、リジン、アルギニン及び/又はヒスチジンをアスパラギン酸やグルタミン酸で置換し、グルタミン酸残基をリジン、アルギニン又はヒスチジンで置換する。
VIII.試料中のトルシンポリペプチド又は抗体の検出方法
別の態様として、本発明は、a)試料を、前記抗体(又はタンパク質)と、免疫複合体が形成されるような条件下で接触させる工程、及びb)前記ポリペプチドに結合した前記抗体の存在を検出する工程を含む、試料中のトルシンポリペプチドを検出する方法に関する。詳細に述べると、この方法は、試験試料と1以上の本発明抗体とをインキュベートする工程及び抗体が試験試料に結合したかどうかをアッセイする工程を含む。正常なレベルと比較して変化した試料中のトルシンレベルは、特定の疾患を示しうる。
さらなる態様として、本発明は、a)試料と前記トルシントルシンタンパク質とを、免疫複合体が形成するような条件で接触させる工程及びb)該抗体に結合したタンパク質又はタンパク質に結合した抗体の存在を検出する工程を含む、試料中のトルシン抗体を検出する方法に関する。詳細に述べると、この方法は、試験試料と1以上の本発明タンパク質とをインキュベートする工程及び抗体が試験試料に結合したかどうかをアッセイする工程を含む。
抗体と試験試料とをインキュベートする条件は様々である。インキュベーション条件は、そのアッセイで使用する形式、使用する検出方法、そのアッセイで使用する抗体のタイプと性質に依存する。当業者は、一般に利用可能な免疫アッセイの形式(ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、拡散型オクタロニー法、ロケット免疫蛍光アッセイなど)は、いずれも本発明の抗体を使用するように容易に適応させうることを認識するであろう。かかるアッセイの例示は、Chard「An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techcniques」、Elsevier Science Publishers、オランダ・アムステルダム、(1986);Bullockら、Techniques in Immunocytochemistry、Academic Press、フロリダ州オーランド、第1巻(1982)、第2巻(1983)、第3巻(1985);Tijssen、Practice and Theory of Enzyme Immunoassays: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology」、Elsevier Science Publishers社(オランダ・アムステルダム)(1985)に見い出すことができる。
本発明の免疫学的アッセイの試験試料には、細胞、細胞のタンパク質又は膜抽出物、血液、血清血漿、尿などの生体液がある。前記方法で使用される試験試料は、アッセイの形式、検出法の性質、試験されるべき試料として使用する組織、細胞又は抽出物によって変化するだろう。細胞のタンパク質抽出物又は膜抽出物を調製する方法は、当該技術分野でよく知られており、使用する系で有効な試料を得るために容易に適合させることができる。
IX.トルシンタンパク質又は抗体を含有する診断用キット
本発明の別の態様として、先に記述した検出方法を行うための全ての必要な試薬類を含むキットが提供される。
本キットは、i)前記抗体を含む第1容器手段と、ii)抗体の結合パートナーと標識とを含有したコンジュゲートを含む第2容器手段とを含みうる。
本キットは、i)前記タンパク質を含有する第1容器手段と、好ましくはii)該タンパク質の結合パートナーと抗体とを含有したコンジュゲートを含む第2容器手段とを含有しうる。より具体的には、診断用キットは、感染した可能性がある動物又は人の血清中の抗体を検出するために、前記トルシンタンパク質を含有する。
別の好ましい態様として、本キットは、下記:洗浄試薬及び結合した抗体の存在を検出できる試薬の1以上を含有した1以上の他の容器をさらに含有する。検出試薬の例示としては、限定されないが、標識二次抗体、あるいは一次抗体が標識されている場合は、標識抗体と反応できる発色試薬、酵素試薬又は抗体結合試薬などが挙げられる。区画化されたキットは、核酸プローブキットについて前記した通りでありうる。
本発明で記載された抗体を当該技術分野でよく知られている確立されたキット形式の一つに容易に組み込みうることは、当業者には容易に理解されるだろう。
X.診断的スクリーニング及び治療
下記の議論は特にヒト患者に向けられたものであるが、それが教示するところはトルシンを発現させるどの動物にも適用できると理解すべきである。
本発明の診断及びスクリーニング法は、家族歴に基づくトルシン発現量の変化に関係する疾患を発症する危険があると疑われる患者、又はトルシン関連疾患を診断することが望まれる患者にとりわけ有用である。
好ましくは、DNA診断を、ジストニアの様々な形の鑑別診断の手段として使用する。次に、遺伝相談や、個別化された治療法に関して患者を分類する際に、この情報を使用する。
本発明によれば、そのようなスクリーニングを必要とする個体の前兆(presymptomatic)スクリーニングが、本発明のトルシンタンパク質をコードするDNAを使って、ここに可能になった。本発明のスクリーニング法は、個体における欠落した又は異常なトルシン遺伝子の存在の、出生前診断を含む前兆診断を可能にし、したがって、そのような個体がトルシン関連疾患を発症する可能性又は発症している可能性に関する見解を可能にする。これは、例えばトルシン関連疾患の家族歴を持つ個体から、変異した又は欠落したトルシン遺伝子のキャリアの同定にとりわけ価値がある。また、初期診断は、適切で時宜を得た介入を最大限増加させるためにも望ましい。
症状発症前の遺伝子キャリアの同定は、症状の発症を誘発する遺伝的、及び環境的要因の評価を可能にする。変更遺伝的要因としてはトルシン(特にトルシンA)における多形変異、又は関連する若しくは付随するタンパク質における突然変異が含まれ得、環境的要因には乱用や外傷によって引き起こされるような、感受性ニューロンによって促進される身体の部分に対する感覚過負荷(Gasser,T.ら、Mov Disord 11:163−166(1996));高体温;又は毒物へのばく露が含まれる。
本スクリーニング法の好ましい一態様において、組織試料をそのような個体から採取し、(1)「正常な」トルシン遺伝子の存在、(2)トルシンmRNAの存在及び/又は(3)トルシンタンパク質の存在についてスクリーニングするであろう。正常なヒト遺伝子は、例えば、本発明が教示するトルシン配列(又はその機能的断片)に対して調製したDNAプローブを使った、RFLP分析を含む、患者のDNAに対する「正常」なDNAの制限消化パターンの検出に基づいて特徴づけることができる。同様に、トルシンmRNAを、類似のプローブを使って特徴づけ、トルシン関連疾患を発症する危険のないヒト集団に見出されるような正常なトルシンmRNAの(a)量及び/又は(b)サイズと比較できる。最後に、トルシンタンパク質は、トルシン活性に関する生物学的アッセイを使って、又は免疫学的アッセイ及びトルシン抗体を使って、(a)検出及び/又は(b)定量できる。トルシンタンパク質をアッセイする場合は、その速さゆえに免疫学的アッセイが好ましい。(1)異常なトルシンDNAサイズパターン、及び/又は(2)異常なトルシンmRNAサイズもしくは量及び/又は(3)異常なトルシンタンパク質量は、その患者がトルシン関連疾患を発症する危険にさらされていることを示すだろう。
より具体的には、患者における捻転ジストニアの発症の存在は又は素因の診断方法が、本明細書において提供される。その方法は:
a)その患者から試料を採取する工程、
b)その試料におけるGAGGAG領域(配列番号:5のヌクレオチド位置946〜951)を検出する工程を含む、前記試料中のトルシンA核酸の特性を評価する工程;並びに、
c)患者における捻転ジストニアの発症の存在又素因を診断する工程、ここで、GAGGAG領域にGAGが存在しないことは、捻転ジストニアの発症の存在又は素因を示す、を含む。
本発明のスクリーニング及び診断法では、トルシンDNAコード配列全体をプローブとして使用する必要はない。むしろ、正常な又は罹患した個体由来のDNA調製物中のトルシン遺伝子の存在、そのような遺伝子の非存在又はそのような遺伝子の物理的性質の変化(電気泳動移動パターンにおける変化など)を検出するのに十分な核酸の断片又は長さを使用するだけでよい。
所望により、羊水穿刺、絨毛穿刺(CVS)、胎児鏡検査を含む、胎児細胞を得るための任意の公知の方法を使って、出生前診断を行うことができる。出生前染色体分析は、正常なトルシン遺伝子を保有する染色体の部分がヘテロ接合状態で存在するかどうかを決定するために使用できる。
トルシン関連疾患の治療を必要とする患者におけるトルシン関連疾患の治療法では、機能的トルシンDNAを、そのような遺伝子によって提供されるトルシンタンパク質がそのような患者を治療するのに十分な時間と量で発現できるような方法と量で、そのような患者の細胞に提供することができる。細胞から欠落している遺伝子又はタンパク質を必要とするヒト患者へのそのような送達を行うための多くのベクター系が当該分野において知られている。例えば、レトロウイルス系、特に修飾レトロウイルス系、また、特に単純ヘルペスウイルス系を使用することができる。そのような方法は、例えば、Breakefield,X.A.ら,The New Biologist 3:203−218(1991);Huang,Q.ら,Experimental Neurology 115:303−316(1992)、WO93/03743及びWO90/09441の教示に提供されている。機能的トルシンタンパク質をコードするDNA配列の送達は、欠失した、又は突然変異した本発明のトルシン遺伝子を効果的に置き換える(replace)だろう。
本発明の別の態様では、トルシン遺伝子が細胞内で組換え遺伝子として発現されるので、その細胞を哺乳類、好ましくは遺伝子治療を必要とするヒトに移植できる。ある個体に遺伝子治療を施すには、トルシン遺伝子の全部又は一部をコードする遺伝配列をベクターに挿入し、宿主細胞に導入する。遺伝子治療に適しうる疾患の例には、神経変性疾患、又は障害、初期ジストニア(好ましくは汎発性ジストニアと捻転ジストニア)が含まれるが、これらに限るわけではない。
本発明のトルシンコード配列を患者に移入するのに使用できる遺伝子治療法は、Chatterjee及びWong、Current Topics in Microbiol.and Immuno.,218:61−73(1996);Zhang,J.Mol.Med.74:191−204(1996);Hematotherapy 4:551−561(1995)のSchmidt−Wolf及びScmidt−Wolf,J.;Shaughnessyら、Seminars in Oncology 23(1):159−171(1996);Dunbar,Annu.Rev.Med.47:11−20(1996)に記述されている。
遺伝子治療に使用しうるベクターの例には、欠損レトロウイルス、アデノウイルス又は他のウイルスベクターが含まれるが、これらに限るわけではない(Mulligan,R.C.,Science 260:926−932(1993))。遺伝子を有するベクターを細胞に導入し得る手段としては、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、形質導入、又はDEAE−デキストラン、リポフェクション、リン酸カルシウム又は当業者に知られている他の方法を用いたトランスフェクションが含まれるが、これらに限るわけではない(Sambrookら編「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州プレーンヴュー(1989))。
トルシンのアンタゴニスト及びアゴニストがトルシンの活性を妨害又は増進する能力は、トルシンを含む細胞により評価できる。細胞内のトルシン活性のアッセイは、アンタゴニスト又はアゴニストとして作用し得るかもしれない薬剤の存在下でトルシンタンパク質の機能を決定するために使用でき、それによりトルシンの活性を妨害又は増進する薬剤が同定される。
このアッセイでスクリーニングされる薬剤は、ペプチド、炭水化物、ビタミン誘導体又は他の医薬薬剤でありうるが、これらに限るわけではない。これらの薬剤は、1)無作為に、2)合理的選択により、又は3)例えばタンパク質又はリガンドモデリング技術(好ましくはコンピューターモデリング)などを使った設計によって、選択しスクリーニングできる。
ランダムスクリーニングの場合、ペプチド、炭水化物、医薬薬剤などの薬剤が無作為に選択され、トルシンタンパク質に結合、又はその活性を刺激/ブロックする能力についてアッセイされる。
また、薬剤を合理的に選択又は設計してもよい。本明細書では、トルシンタンパク質の立体配置に基づいてある薬剤が選択される場合、その薬剤は「合理的に選択又は設計される」という。
一態様において、本発明は、トルシンの活性を刺激又はブロックするアンタゴニスト又はアゴニストをスクリーニングする方法であって、
(a)トルシンを発現する細胞を、試験しようとする薬剤と共にインキュベートする工程;並びに、
(b)トルシンのATP結合に対するその薬剤の効果を測定することによって、その細胞をトルシンタンパク質の活性についてアッセイする工程、
を含む方法に関する。
上記のアッセイでは、その細胞が機能的な形のトルシンを発現させ、トルシン活性を測定できる限り、任意の細胞を使用できる。好ましい発現細胞は真核細胞又は真核生物である。そのような細胞は、当該分野において知られている慣用の方法を用いて、トルシンをコードするDNA配列を含むように改変できる。あるいは、当業者は、トルシンタンパク質をコードするmRNAを、細胞に直接導入することもできる。
別の態様では、本発明は、突然変異型トルシンタンパク質の発現を打ち消すことができる医薬品(すなわち薬物)のスクリーニングに関する。好ましくは,ニューロン培養を、本明細書に記載するベクター技術を用いてトルシンAの突然変異型の過剰発現に用いる。ニューロンの形態とタンパク質分布の変化を評価し、定量手段を使用する。次に、そのバイオアッセイを、表現型を改善できる薬物のスクリーニングに使用する。
本発明はさらに、トルシンリガンド(上述のようなアンタゴニストとアゴニストを含む)を用いて、細胞内のトルシンタンパク質の活性を調整する方法を提供する。一般に、トルシンの活性をブロック又は刺激することが確認されている薬剤(アンタゴニストとアゴニスト)は、その薬剤をインビボでトルシンタンパク質を発現する細胞と接触させうるように処方できる。そのような細胞とそのような薬剤との接触は、トルシンタンパク質の活性のインビボ調整をもたらす。処方上の障害又は毒性上の障害が存在しない限り、上述のアッセイで同定された薬剤はインビボ使用に有効だろう。
別の態様において、本発明は、トルシン又はトルシンリガンド(トルシンのアンタゴニスト及びアゴニストを含む)を動物(好ましくは哺乳動物(特にヒト))に、その動物におけるトルシンの量を変化させるのに十分な量で投与する方法に関する。投与されたトルシン又はトルシンリガンドは、トルシン関連機能を特異的に果たしうる。さらに、トルシンは脳組織で発現されるので、トルシン又はトルシンリガンドの投与は脳内のトルシン量を変化させるのに使用できるだろう。
任意の特定治療プロトコルについて投与すべき量を容易に決定できることは、当業者には理解されるだろう。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投与量は患者の年齢、状態、性別、疾患の程度、もしあれば禁忌症、及び個々の医師によって調節されるべき他の同様の変数と共に変動する。投与量は、毎日一回以上の投与で、1日又は数日間で、トルシン又はトルシンリガンドの.001mg/kg〜50mg/kgまでで変わり得る。トルシン又はトルシンリガンドは注射によって、又は時間をかけた緩やかな灌流によって、非経口的に投与できる。静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮下に投与できる。
非経口投与用の製剤には、滅菌若しくは水性若しくは非水性の溶液、懸濁液及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理的食塩水や緩衝化媒質を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液が含まれる。非経口用賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース及び塩化ナトリウム液、乳酸加リンゲル液又は不揮発油が含まれる。静脈内用賦形剤には、リンゲルデキストロース液などに基づくものなど、液性の栄養素補充物、電解質補充物が含まれる。保存剤及び他の添加物、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどが存在してもよい。一般的にはRemington’s Pharmaceutical Science(第16版、Mack社編(1980))を参照のこと。
別の態様において、本発明は、トルシン関連活性を変化させるのに十分な量のトルシン又はトルシンリガンドと、製薬上許容できる希釈剤、担体又は賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。適当な濃度と用量単位サイズは、上述のように当業者によって容易に決定されうる(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、Osol,A.編、Mack社、ペンシルヴァニア州イーストン(1980))とWO91/19008参照のこと)。
XI.トランスジェニックトルシン「ノックアウト」マウス
トランスジェニック非ヒト動物の作出方法
本発明の非ヒト動物は、内在遺伝子のトランスジーンによる妨害又は改変を有する任意の動物(ノックアウト動物)及び/又はそのゲノムにヒトトルシンの発現を指示する1以上のトランスジーンが導入されている任意の動物を含む。
そのような非ヒト動物には、齧歯動物、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、両生類、爬虫類などが含まれる。好ましい非ヒト動物は、動物の非ヒト哺乳動物種から選択され、最も好ましくはラットとマウスを含む齧歯類系の動物、最も好ましくはマウスである。
本発明のトランスジェニック動物は、本来その動物には存在しない1以上の遺伝子、例えば、外来遺伝子、遺伝子操作された内在遺伝子などが、非自然的手段(すなわち人為的操作)によって導入されている動物である。トランスジーンとして知られる非自然的に導入された遺伝子は、その動物と同じ又は異なる種に由来しうるが、そのトランスジーンによって付与される、配置及び/又は染色体座には、その動物に天然には認められないものである。トランスジーンは、外来DNA配列、すなわち宿主動物のゲノムに通常は見出されない配列を含有しうる。他方又はさらに、トランスジーンは、その遺伝子の発現の正常なインビボパターンを変化させるため、又はその遺伝子によってコードされる内在遺伝子産物の生物学的活性を変化させるか排除するために、それらがインビトロで再配列又は突然変異されている点で異常な内在DNA配列を含有しうる(Watson,J.D.ら、Recombinant DNA、第2版、W.H.Freeman & Co.社、ニューヨーク(1992)、255〜272頁;Gordon,J.W.、Intl.Rev.Cytol.115:171−229(1989);Jaenisch,R.、Science 240:1468−1474(1989);Rossant,J.、Neuron 2:323−334(1990))。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、非ヒト動物の生殖細胞系にトランスジーンを導入することによって作出される。様々な発生段階にある胚標的細胞を、本発明のトランスジーンを導入するのに使用する。胚標的細胞の発生段階に応じて様々な方法を使用できる。
1.接合体のマイクロインジェクションは、本発明を実施する際に動物のゲノムにトランスジーンを組み込むための好ましい方法である。接合体、前核融合又はその後の細胞***を起こしていない受精卵は、形質転換DNA配列のマイクロインジェクションにとって好ましい標的細胞である。マウス雄性前核は、直径が約20マイクロメーターのサイズに達し、形質転換DNA配列を含む1〜2ピコリットルの溶液の再現性ある注入を可能にするのが特徴である。トランスジーンの導入に接合体を使用することには、ほとんどの場合、注入された形質転換DNA配列が、最初の細胞***の前に宿主動物のゲノムに組み込まれるという利点がある(Brinsterら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:4438−4442(1985))。その結果、得られたトランスジェニック動物(創始動物)の全ての細胞は、トランスジェニック対立遺伝子と呼ばれる、特定の遺伝子座に組み込まれたトランスジーンを安定に保持する。トランスジェニック対立遺伝子は、メンデル遺伝を示す;トランスジェニック動物と非トランスジェニック動物との交配によって生じる子孫の半数は、任意組み合わせのメンデルの法則にしたがって、そのトランスジェニック対立遺伝子を受け継ぐだろう。
2.ウイルスの組込みも、動物に本発明のトランスジーンを導入するのに使用できる。発生中の胚を、未分化胚芽細胞として知られる発生段階までインビトロ培養する。この時点で、その割球を適当なレトロウイルスに感染させることができる(Jaenich,R.、Proc.Natl.Sci.(USA)73:1260−1264(1976))。割球の感染は透明帯の酵素的除去によって増進される(Hoganら,Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1986))。トランスジーンは、通例複製欠損性であるが、そのようなウイルス配列に連結された形質転換DNA配列を含む、ウイルス関連DNA配列の組み込みに対してコンピテントであるウイルスベクターを介して宿主動物ゲノムへ導入される(Jahnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:6927−6931(1985);Van der Puttenら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:6148−6152(1985))。トランスフェクションは、トランスジーン含有ウイルスベクターを産生する細胞の単層上での割球の培養によって容易に効率よく達成される(Van der Puttenら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:6148−6152(1985);Stewartら,EMBO Journal 6:383−388(1987))。他方、割腔などの、もっと後の段階で感染を行ってもよい(Jahner,D.ら,Nature 298:623−628(1982))。いずれにせよ、ウイルス組込み法によって作出されるほとんどのトランスジェニック創始動物は、トランスジェニック対立遺伝子に関してモザイクになる;すなわち、トランスジーンはトランスジェニック創始動物を形成するすべての細胞の部分集合にしか組み込まれない。さらにまた、複数のウイルス組込み事象が単一の創始動物で起こって、後の子孫世代で分離する複数のトランスジェニック対立遺伝子が生じうる。この方法による生殖系細胞へのトランスジーンの導入は可能であるが、それは低い頻度で起こるだろう(Jahner,D.ら,Nature 298:623−628(1982))。しかしながら、この方法によっていったんトランスジーンが生殖系細胞に導入されると、トランスジェニック対立遺伝子がその動物の細胞のすべて、すなわち体細胞と生殖系細胞の両方に存在する子孫が作出されうる。
3.胚幹細胞(ES)細胞も本発明のトランスジーンの動物への導入用の標的細胞として役立ちうる。ES細胞はインビトロ培養された着床前の胚から得られる(Evans,M.J.ら,Nature 292:154−156(1981);Bradley,M.O.ら,Nature 309:255−258(1984);Gosslerら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)83:9065−9069(1986);Robertsonら,Nature 322:445−448(1986);Robertson,E.J.,「Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach」(Robertson,E.J.編,IRL Press,オックスフォード(1987))の71−112頁)。(例えばGenome Systems社(ミズーリ州セントルイス)から)市販されているES細胞は、確立された方法によって、1以上のトランスジーンで形質転換できる(Lovell−Badge,R.H.,「Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach」(Robertson,E.J.編,IRL Press,オックスフォード(1987)、153〜182頁)。形質転換されたES細胞は動物未分化胚芽細胞と混合することができ、その後、そのES細胞はその胚に移入して、キメラ(2以上の動物に由来する細胞からなる)である得られた動物の生殖細胞系に寄与する(Jaenisch,R.,Science 240:1468−1474(1988);Bradley,A.,Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach、Robertson,E.J.編,IRL Press,オックスフォード(1987)、113〜151頁)。ここでも、いったんトランスジーンが、この方法によって生殖系細胞に導入されると、トランスジェニック対立遺伝子がその動物の細胞のすべて、すなわち体細胞と生殖系細胞の両方に存在する子孫が作出されうる。
どんなふうに起こるにせよ、トランスジーンの最初の導入はラマルク(非メンデル)事象である。しかしながら、本発明のトランスジーンは、生殖系細胞に安定に組み込まれ、メンデル遺伝子座としてトランスジェニック動物の子孫に伝達されうる。他のトランスジェニック技術は、一部の細胞はトランスジーンを保有し、他の細胞はそれを保有しないモザイクトランスジェニック動物をもたらす。生殖系細胞がトランスジーンを保有しないモザイクトランスジェニック動物では、トランスジーンの子孫への伝達が起こらない。それでも、モザイクトランスジェニック動物は、トランスジーンに関連する表現型を現すことができる。
トランスジーンは、ヒトの疾患の動物モデルを提供するのに、非ヒト動物に導入してもよい。そのような動物モデルをもたらすトランスジーンには、例えばヒトの遺伝病における先天性代謝異常に関連する突然変異型遺伝子産物をコードするトランスジーン及びヒト病原体(すなわち細菌、ウイルス又は他の病原性微生物)への感染性を付与するのに必要なヒト因子をコードするトランスジーンが含まれる(Lederら,米国特許第5,175,383号(1992年12月29日);Kindtら,米国特許第5,183,949号(1993年2月2日);Smallら,Cell 46:13−18(1986);Hooperら,Nature 326:292−295(1987);Staceyら,Nature 332:131−136(1988);Windleら,Nature 343:665−669(1990);Katzら,Cell 74:1089−1100(1993))。遺伝子導入的に導入される突然変異は、非ヒト動物にとって通常内在性の遺伝配列が、選択可能及び/又は検出可能なマーカーをコードするDNA配列に置き換わっているヌル(「ノックアウト」)対立遺伝子を含有する。その結果得られる、ある疾患にかかりやすくなった、又はそのトランスジーンがある疾患を引き起こすトランスジェニック非ヒト動物は、その疾患を誘発する組成物を同定するため、及びその疾患を誘発することがわかっているか、若しくは疑われる組成物の病原性を評価するために(Berns,A.J.M.、米国特許第5,174,986号(1992年12月29日))、あるいは疾患を治療するか、又はその症状を改善するために使用できる組成物を評価するために(Scottら、WO94/12627(1994))使用してもよい。
本発明のトランスジーンを受け継いだ子孫は、トランスジーンを受け継いでいない同腹仔から、本発明のトランスジーンの配列に対応するか又はそれによってコードされる非反復配列を含む生体分子の存在についての子孫由来遺伝物質の分析によって区別される。例えば、本発明のトランスジーンの選択可能マーカーによって独特にコードされるポリペプチドを含む生物学的液体を、ポリペプチドの存在について免疫学的アッセイしてもよい。より簡単で信頼できるトランスジェニック子孫同定手段は、動物の肢部、例えば尾から組織試料を得る工程、及びその試料を、その選択可能マーカーなどの本発明のトランスジーンの一又は複数の非反復部分のDNA配列に対応する核酸配列の存在について分析する工程を含む。そのような核酸配列の存在は、例えば、トランスジーンの非反復部分に対応するDNA配列によるハイブリダイゼーション(「サザン」)分析、基質としての試料中のDNA配列と、トランスジーンのDNA配列に由来するオリゴヌクレオチドとを使用するPCR反応の産物の分析などによって決定できる。
XII.HSV−1アンプリコン構築物
別の態様として、本発明は、HSV−1アンプリコンと少なくとも一つの上記トルシン核酸分子を含有した組換えDNA分子に関する。
いくつかの特徴がHSV−1をベクター開発の理想的な候補にしている:(i)HSV−1は基本的に汎親和性であり、ニューロン、肝細胞などの***細胞と非***細胞の両方に感染できる;(ii)HSV−1ゲノムは、ニューロン中に少なくとも多少の転写活性を伴って長期間留まることができる;(iii)HSV−1ゲノムは75個を超える遺伝子をコードし、そのうち38個は細胞培養におけるウイルス複製にとって重要でない(必須でない)(Ward,P.L.及びRoizman,B.,Trends Genet.10:267−274(1994))。これは、前記ゲノムの大部分を、1以上の目的の治療用遺伝子を含む外来DNAで置換する機会を与える。
組換えHSV−1ベクターを構築する技術は、10年より前に開発された(Mocarski,E.S.ら,Cell 22:243−255(1980);Post,L.E.及びReizman,B.,Cell 25:2227−2232(1981);Roizman,B.及びJenkins,F.J.,Science 229:1208−1214(1985))。プロトタイプHSV−1/HSV−2組換えワクチンを作成する目的で、ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子などの神経毒性を担ういくつかの遺伝子座を除去するため、及び単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)糖タンパク質D、G及びIをコードするDNAを挿入するスペースを創成するために、HSV−1ゲノムに一定のドメインで欠失が作られた(Meignier,B.ら,J.Inf.Dis.158:602−614(1988))。現在、組換えヘルペスウイルスベクターは、主として神経変性疾患と脳腫瘍の遺伝子治療用の数多くのプロトコールで評価されている(Breakefield,X.O.ら,Cancer Gene Therapeutics(1995)41−56頁;Kaplitt,M.G.及びLoewy,A.D.編「Viral vectors: Gene therapy and neuroscience applications」(Academic Press社、ニューヨーク州ニューヨーク(1995))中、Glorioso,J.C.ら著「中枢神経系用の遺伝子送達ベクターとしての単純ヘルペスウイルス」1−23頁」)。
第二のタイプのHSV−1ベクター、いわゆるHSV−1「アンプリコン」ベクター(Spaete及びFrenkel,1982)の開発は、天然に存在する欠損HSV−1ゲノムのキャラクタリゼーションに基づいて行われた(Frenkel,N.ら,J.Virol.20:527−531(1976))。アンプリコンは、次の3タイプの遺伝子エレメントを持っている:(i)大腸菌のDNA複製開始点と抗生物質耐性遺伝子とを含む、細菌におけるプラスミドDNAの増殖用の原核生物配列;(ii)ヘルパーウイルス機能の存在下に哺乳類細胞における複製とHSV−1粒子へのパッケージングとを支持するori及びpacシグナルを含む、HSV−1由来の配列;(iii)1以上の目的の遺伝子を含む転写単位(Ho,D.Y.,Meth.Cell.Biol.43:191−210(1994);Kaplitt,M.G.及びLoewy,A.D.編、Academic Press社、ニューヨーク州ニューヨーク(1995))「Viral vectors: Gene therapy and neuroscience applications」中の25−42頁、Kwong,A.D.及びFrenkel,N.「単純ヘルペスウイルス(HSV)欠損ウイルスの生物学とアンプリコン系の開発」)。
哺乳類細胞におけるアンプリコンDNAの複製は、HSV−1のDNA複製開始点(oriSまたはoriL)の、ヘルパーウイルスによってトランスに提供されるタンパク質との相互作用によって媒介される。これらには、(i)ヘリカーゼ−プライマーゼ活性を有する複合体を形成するUL5、8及び52遺伝子の産物;(ii)oriに直接結合するUL9遺伝子産物;(iii)UL42の産物と複合体を形成する一本鎖DNA結合タンパク質(UL29の産物)、二本鎖DNA結合タンパク質、及びウイルスがコードするDNAポリメラーゼであるUL30遺伝子産物が含まれる(Ward,P.L.及びRoizman,B.,Trends Genet.10:267−274(1994))。oriL配列(144bp)は、そのダイアド対称性ゆえに細菌中で不安定な高A+Tパリンドロームであり(Weller,S.K.ら,Mol.Cell.Biol.5:930−942(1985))、したがってアンプリコンベクターの作成には有用でないことがわかっている(Kaplitt,M.G.及びLoewy,A.D.編、Academic Press社、ニューヨーク州ニューヨーク(1995)「Viral vectors: Gene therapy and neuroscience applications」中の25−42頁、Kwong,A.D.及びFrenkel,N.著「単純ヘルペスウイルス(HSV)欠損ウイルスの生物学とアンプリコン系の開発」)。対照的に、より短い高A+T配列及び不完全なパリンドロームを有するoriS配列(90bp)は、細菌中でより安定であることがわかっており(Stow,N.D.及びMcMonagle,E.C.,Virology 130:427−438(1983))、通例、アンプリコンに組み込まれる。HSV−1(Ho,1994)とHSV−2(Kaplitt,M.G.ら,Mol.Cell.Neurosci.2:320−330(1991))と由来のoriS配列は、HSV−1のものが最も一般的ではあるものの、どちらも使用されている。HSV−1のoriSは、極初期(IE)3遺伝子と4/5遺伝子とのプロモーター間に位置する(図2A)。これらのプロモーターは、ビリオンテグメントタンパク質VP16に反応するTAATGARAT配列並びにSP1エンハンサー配列を含むが(Stern,S.,Nature 341:624−630(1989))、それらはDNA複製の効率も増加させる(Wong,S.W.及びSchaffer,P.A.,J.Virol.65:2601−2611(1991))。したがって、哺乳類細胞における効率よいアンプリコン複製と、IE3及び/又はIE4/5プロモーターからのトランスジーンの発現を指示することの両方に、oriを保持する、さらに大きな断片(0.5〜1kb)を使用できる。しかしながら、細胞特異的又は誘導性プロモーターに対するこれらウイルス調節エレメントの非特異的な影響を減少させるために、いくつかのグループが、アンプリコンベクターの効率のよい生成を損なうことなく、最小限のoriSエレメント(237−295bp)を使用している(Kaplitt,M.G.ら,Mol.Cell.Neurosci.2:320−330(1991);Ho,D.Y.,Meth.Cell.Biol.43:191−210(1994);Lu,B.及びFederoff,H.J.,Hum.Gene Ther.6:419−428(1995))。
HSV−1ヘルパーウイルスと共形質導入された細胞におけるアンプリコンDNAの複製は、アンプリコンDNA配列の直線状コンカテマーを生成するローリングサークル機構により進行する。ビリオンキャプシドへのパッケージングのため、約152kbのDNAを保持するキャプシドの充填後に、コンカテマーゲノムが反復配列のペアの間で切断される(Deiss,L.P.及びFrenkel,N.,J.Virol.59:605−618(1986);Fields,B.N.ら編Virology第3版、(Lippincott−Raven、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア(1996)の2231−2295頁中、Roizman,B.及びSears,A.E.「単純ヘルペスウイルスとその複製」)。反復配列内のpac配列は、切断点を規定し、次に示す配置の250〜500bp(ウイルス株に依存)の交互する反復配列と特有配列からなる:直列反復配列(DR)1(20bp)−特有配列(U)b(65bp)−DR2(12bp×19−23)−DR4(37bp×2−3)−Uc(58bp)−DR1(Davison,A.J.及びWilkie,N.M.,J.Gen.Virol.55:315−331(1981))。これらの配列の反復性は、細菌におけるそれらの不安定性の一因になりうることに加えて、それらは哺乳類細胞のHSV−1感染に関連して組換えホットスポットとして働きうるエレメントを含有する(Umene、K.,J.Virol.67:5685−5691(1993))。また、反復配列中に位置するγ34.5遺伝子のプロモーターは、アンプリコンベクターによって媒介されるトランスジーン発現に潜在的に影響を与えうる。
現行のベクターは、1ないし2個のトランスジーンカセットを含有する(Kaplitt,M.G.ら,Mol.Cell.Neurosci.2:320−330(1991);Ho,D.Y.,Meth.Cell.Biol.43:191−210(1994);Linnik,M.D.ら,Stroke 26:1670−1674(1995);Lawrence,M.S.ら,Blood Flow Metab.16:181−185(1996);New,K.及びRabkin,S.,Mol.Brain Res.37:317−323(1996);Pechan,P.A.ら,Hum.Gene Ther.7:2003−2013(1996))が、15kbの限度内で、3以上の遺伝子をトランスジーンのサイズに応じて含めることができる。
哺乳類細胞におけるトランスジーン発現を調節するために、HSV−1IEプロモーターと細胞特異的プロモーターを含む、いくつかの異なるプロモーターエレメントが使用されてきた(Smith,R.L.ら,J.Virol.69:4593−4599(1995))。IEプロモーターは、ビリオンによって核内に運搬されるテグメントタンパク質VP16によって誘導されるので、それらは感染後の最初の数日間に旺盛な発現を与えた後、細胞によってVP16が分解されるにつれて劇的に減少する傾向がある。しかしながら、IEプロモーターは、HSV−1での重感染によって再活性化されうる(Starr,P.A.ら,Gene Ther.3:615−623(1996))。例えば、hCMV IE1やSV40 Tなどの他のウイルスプロモーターも、ほとんどの細胞で、強力ではあるが一過性のトランスジーン発現を指示する(Ho.D.Y.ら,Proc.Acad.Natl.Sci.USA 90:3655−3659(1993);Pechan,P.A.ら,Hum.Gene Ther.7:2003−2013(1996))。いくつかのグループが、アンプリコンベクターに関連して、細胞特異的プロモーター、例えば、プレプロエンケファリン(Kaplitt,M.G.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8979−8983(1994))、ニューロフィラメント軽鎖及び重鎖遺伝子(Fraefel,C.ら,21st Intl.Herpesvirus Workshop,イリノイ州ディカルブ(1996))、チロシンヒドロキシラーゼ(TH;Oh,Y.J.ら,Mol.Brain Res.35:227−236(1996);Jin,B.K.ら,Hum.Gene Ther.7:2−15−2024(1996);Fraefel,C.ら,21st Intl.Herpesvirus Workshop,イリノイ州ディカルブ(1996))、ニューロン特異的エノラーゼ、ナトリウムチャネル、アルブミン、α1−アンチトリプシン(C.Fraefel,未公表)のものなどを使用している。発現レベルは、ウイルスプロモーターより低くなる傾向はあるものの、これらのプロモーターの一部は、アンプリコン配列に関してそれらの細胞特異性を残しているようである。さらに、培地中とインビボでの神経細胞における転写調節の変化や、インビボでの神経細胞タイプを同定することの困難性を考慮すると、特異性の程度は、評価することが難しい。2つの報文のみがアンプリコンベクターによって媒介される誘導性発現を実証している。LuとFederoff(Lu,B.及びFederoff,H.J.,Hum.Gene Ther.6:419−428(1995))は、最小oriS配列(234bp)を用い、5コピーのタンデムリピートラットチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)グルココルチコイド応答エレメントGREを使用して、初代ラット肝細胞における50倍にのぼるlacZ発現のデキサメタゾン誘導を達成できた(Jantzen,H.M.ら,Cell 49:29−38(1987)。
レトロウイルスベクターなどの一定の他のベクターの無ヘルパーウイルスパッケージングを可能にする細胞株が開発されている(Mann,R.ら,Cell 33:153−159(1983))。しかしながら、同様のアプローチでHSV−1アンプリコンベクターを作成するには、おそらく少なくとも38個のHSV−1の必須遺伝子の発現(Ward,P.L.及びRoizman,B.,Trends Genet.10:267−274(1994);「Virology」第3版Fields,B.N.ら編、(Lippincott−Raven,ペンシルヴァニア州フィラデルフィア(1996)、2231−2295頁、Roizman,B.及びSears,A.E.著「単純ヘルペスウイルスとその複製」)と、いくつかの後期遺伝子の発現に必須なHSV−1ゲノムの複製(Mavromara−Nazos,P.及びRoizman,B.,Virology 161:593−598(1989))の両方が必要だろう。これらの課題を回避するために、全HSV−1ゲノムにオーバーラップし、それを表すがpacシグナルを不活化する突然変異が導入されている1組の5コスミドとのアンプリコンDNAの一過性コトランスフェクションを利用する無ヘルパーウイルスパッケージング系が開発され(Fraefel,C.ら,J.Virol.70:7190−7197(1996);Cunningham,C.Davison,A.J.,Virology 197:116−124(1993))、細胞のトランスフェクション後に、HSV−1コスミドセットがオーバーラップ配列間の相同組換えを介して完全な複製コンピテントウイルスゲノムを形成し、感染性ウイルス粒子を産生しうることが実証されている。しかしながら、pacシグナルを欠失させることにより、これらのウイルスゲノムは、パッケージングできず、それでもなお、コトランスフェクトされたアンプリコンDNAの複製とパッケージングとに必要なヘルパー機能をすべて提供する(Fraefel,C.ら,J.Virol.70:7190−7197(1996))。得られるベクターストックは、検出可能なヘルパーウイルスを含まず、培養培地1ミリリットルあたり106〜107感染性ベクター粒子の力価を持つ。さらに、ヘルパーウイルスの非存在下に、これらのベクターストックは、最小限の細胞障害効果を引き起こすだけで、培地中及びインビボでの神経細胞と肝細胞とを含む数多くの異なる細胞タイプを効率よく形質導入できる(Fraefel,C.ら,J.Virol.70:7190−7197(1996);Fraefel,C.ら,21st Intl.Herpesvirus Workshop,DeKalb IL(1996);Johnston,K.M.ら,Hum.Gene Ther.8:359−370(1997))。
アンプリコンベクターの基本構造は、比較的不変のままであり、かつ複製とHSV−1ビリオンへのパッケージングを担うHSV−1のoriSエレメントとpacエレメントとを含む。安定で細胞特異的な発現の必要に応じて新しい変異体が発展している。これらには、(i)異なるプロモーター、(ii)複数のトランスジーン、及び(iii)他のウイルスベクター由来のエレメント、の使用が含まれる。
中枢神経系(CNS)では、hCMVIE1プロモーターやHSV−1IE4/5プロモーターなどのウイルスプロモーターが、アンプリコンによって送達されるトランスジーンの強力な発現を支持している(Ho,D.Y.ら,Proc.Acad.Natl.Sci.USA 90:3655−3659(1993);Smith,R.L.ら,J.Virol.69:4593−4599(1995))。しかしながら、一般的には、発現の期間は、よくわかっていないプロモーターの不活化により、比較的短寿命である。CNSにおける細胞タイプ特異的発現は、いくつかのプロモーターを用いて試みられており、とくにアンプリコンとの関連で、ニューロンプレプロエンケファリン(PPE)プロモーター(Kaplitt,M.G.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8979−8983(1994))とTHプロモーター(Jin,B.K.ら,Hum.Gene Ther.7:2−15−2024(1996))とを用いて報告されている。これらの報文では、細胞特異性は、これら哺乳類遺伝子の最小プロモーターエレメントの上流にある大きい5’調節配列の組み込みによる。ラット脳へのアンプリコンベクターの送達後に、2.7kbのPPEプロモーター及び調節領域が、形態学的にニューロンに似た細胞における大腸菌lacZマーカー遺伝子の発現を2ヶ月間支持した。トランスジェニックマウスでは、9.0kbのTHプロモーター/調節配列が、lacZマーカー遺伝子の細胞及び領域特異的発現を効率よく行なう(Min,N.ら,Mol.Brain Res.27:281−289(1994))。この大きい上流領域の重要性は、最小HSV−1IE4/5プロモーター又は9.0kbTHプロモーターのいずれかによって制御されるlacZマーカー遺伝子を持つ2つのアンプリコンの比較分析によって確認された(Jin,B.K.ら,Hum.Gene Ther.7:2−15−2024(1996))。両方のアンプリコンが接種部位でのβ−ガラクトシダーゼの一過性合成を支持した。しかしながら、THアンプリコンは、接種後2週間まで、見かけ上同様のレベル、同じ細胞数で、lacZ遺伝子を発現させつづけた。二重標識実験によって確認されるように、発現は、解剖学的に内因性カテコールアミンが合成される黒質(SN)と青斑(LC)のニューロンに限定された。これらの報告は、細胞特異性と長期発現に寄与する遺伝子エレメントが最小プロモーター配列の上流にある5’領域に含まれることを示す他の研究を強く支持している(Jin,B.K.ら,Hum.Gene Ther.7:2−15−2024(1996))。HSV−1アンプリコンがこれらの大きな調節配列を保持できることは、これをCNSにおける細胞特異的遺伝子発現用の価値のある系にする。
2シストロン性遺伝子又は多数の発現カセットを用いて多数のトランスジーンを導入するHSV−1アンプリコンが設計されている。ピコルナヴィニス(picornavinis)5’リボソーム結合領域が内部エントリー部位として使用されることにより、2つのコード領域の発現が一つのプロモーターに連動している。このアプローチは、治療用遺伝子の発現をマーカー遺伝子で「タグする」ために使用されている。例えば、内部リボソームエントリー部位(IRES)によって大腸菌lacZ遺伝子に連結されたラット脳グルコーストランスポーター(GLUT−1)を過剰発現させるアンプリコンがいくつかの実験モデルで使用されている(Ho,D.Y.ら,J.Neurochem.65:842−850(1995);Dash,R.ら,Exp.Neurol.137:43−48(1996))。これらの著者らは、低血糖、グルタミン酸及び3−ニトロプロピオン酸に対するニューロン死の防護を実証した。GLUT−1/lacZ2シストロン性構築物により、著者らは、カイニン酸誘導性てんかんモデルにおいて、送達されたトランスジーンの発現と海馬ニューロン喪失の程度の間には逆相関関係があると結論づけることができた(Lawrence,M.S.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7247−7251(1995);Lawrence,M.S.ら,Blood Flow Metab.16:181−185(1996))。NewとRabkin(1996)は、2つの独立したマーカー遺伝子lacZとアルカリホスファターゼ(AP)とを、どちらもヒトサイトメガロウイルス(hCMV)IE1プロモーターの制御下に組み込んだ。培地中の様々な細胞株と初代ニューロン及びインビボのニューロンで、このベクターは、両トランスジーン産物の発現を標識された細胞の約40%で支持した。残りの標識細胞では、AP又はβ−ガラクトシダーゼのみがほぼ同じ割合(約30%)で検出された。
いわゆる「ピギーバック」系は、アンプリコンパッケージング効率を向上させるために設計された(Pechan,P.A.ら,Hum.Gene Ther.7:2003−2013(1996))。従来のパッケージング系では、ヘルパーウイルスのみに感染した細胞は、より多くのヘルパーウイルスを生成し、アンプリコンプラスミドをトランスフェクトしたものはヘルパーウイルスに感染させた場合にのみベクター粒子を生成できるため、結果としてそれらはヘルパーウイルスも産生する。この矛盾は、ヘルパーウイルスの産生に有利に働き、ヘルパーウイルスに対するアンプリコンベクターの比率が低いまま(通常<1)であることを保証する。「ピギーバック」アンプリコンは、IE3内に欠失を持つ複製不能なヘルパーウイルスを補完できる複製に必須なHSV−1遺伝子(IE3)をコードする。この系では、複製欠損ヘルパーウイルスを補完する必要がないので、パッケージングを任意の感受性細胞株で行うことができる。パッケージングは、ヘルパーウイルスとアンプリコンとの両方が存在する細胞でのみ起こるので、アンプリコンと独立して増殖するヘルパーウイルスが排除される。この系は、1mlあたり6×107形質導入単位(t.u./ml)の高いアンプリコン力価を支持し、高力価のベクターストックを作成するのにより少ない継代培養で済み、ヘルパーウイルスに対するアンプリコンベクターの見かけ上の比率は3〜5である。
最も新しい世代のアンプリコンベクターには複数のトランスジーンと他のウイルス系ベクターから採取された複数の遺伝配列がどちらも組み込まれている。これらの「ハイブリッド」アンプリコンはHSV−1ビリオンにパッケージングされるので、CNSへの遺伝子送達に関するこのウイルスの利点を保っているが(下記参照)、形質導入された細胞での長期遺伝子発現を支持できる安定な状態にそのベクターを維持すると予想される配列を含む。WangとVos(1996)は、複製とパッケージングのためのHSV−1エレメントと、Epstein−Barrウイルス(EBV)の核抗原1(EBNA−1)遺伝子とoriP及びハイグロマイシン耐性遺伝子(HygR)を含むアンプリコンベクターを構築した。EBVエレメントは、ベクターゲノムの自律複製を支持し、それを宿主細胞核中に安定なエピソームとして維持するために含められた。細胞へのアンプリコンのトランスフェクション後に、安定なコロニーがハイグロマイシン選択によって単離され、パッケージングされたベクターが、これらのコロニーを複製不能なヘルパーHSV−1で重感染させることによって生成された。全ての細胞がハイブリッドアンプリコンを含むので、パッケージングは、ピギーバック系に匹敵するほど効率的であり(4×106t.u./ml)、ヘルパーウイルスに対する高い比率のアンプリコンベクターをもたらした。このベクターを使って、いくつかの培養ヒト細胞株と、インビボの2つのヒト腫瘍株、肝腫瘍株HepG2と神経膠腫株T98Gを感染させることが成功している。lacZトランスジーンの発現は、送達後、少なくとも2週間は認められた(Wang,S.及びVos,J.,J.Virol.70:8422−8430(1996))。
第二のハイブリッドアンプリコン系は、HSV−1複製及びパッケージングエレメントに加えて、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復配列(ITR)とAAV rep遺伝子が組み込んでいる(図2B)。AAV Repイソ酵素は、ウイルスゲノムの複製とそれに続くヒト染色体19q13への部位特異的な組込みのためのITRの認識を含めて、いくつかの機能を持つ(Samulski,R.J.ら,EMBO J.10:3941−3950(1991);Fields,B.N.ら編、Lippincott−Raven,ペンシルヴァニア州フィラデルフィア(1996)「Fields Virology」第3版中の2173−2197頁、Berns,K.I.「パルボウイルス科(Paravoviridae):ウイルス及びそれらの複製」)。これらの機能は、ITRに隣接しているトランスジーンがハイブリッドベクターから増幅され、ついで、形質導入された細胞中にこの非必須遺伝子座に指向的に組み込まれて安定なプロウイルスとして残留することを可能にすると推測されている(Johnston,K.M.ら,Hum.Gene Ther.8:359−370(1997))。これらの事象は、***細胞と有糸***後の細胞の両方で起こりうるはずである(Fields,B.N.ら編「Fields Virology」第3版(Lippincott−Raven,ペンシルヴァニア州フィラデルフィア(1996)の2173−2197頁、Berns,K.I.著「パルボウイルス科(Paravoviridae):ウイルス及びそれらの複製」)。これらのハイブリッドアンプリコンは、HSV−1ヘルパーウイルスと無ヘルパーウイルス系との両方を使ってパッケージングされている(Johnston,K.M.ら,Hum.Gene Ther.8:359−370(1997))。前記ハイブリッドアンプリコンに関連するAAV ITRの複製機能及びパッケージング機能は、ハイブリッドアンプリコンを、AAVヘルパー機能を保持するプラスミドと、アデノウイルス又はHSV−1ヘルパーウイルスの存在下に、コトランスフェクトすることによって確認された。これらの条件で、ITR隣接マーカーlacZトランスジーンは、HSV/AAVアンプリコンから効率よく切り出され、複製され、組換えAAVにパッケージングされた。前記HSV/AAVアンプリコンベクターは、従来のHSV−1アンプリコンと比較して、***中のヒトU87神経膠腫細胞における長期間にわたるトランスジーン発現を支持した。感染後15日の時点で、ヘルパーウイルスでパッケージングされたHSV/AAVアンプリコンは従来のアンプリコンよりも約100倍多いβ−ガラクトシダーゼ陽性細胞を産生した。興味深いことに、無ヘルパーウイルスパッケージHSV/AAVアンプリコンベクターは明白な毒性を持たなかったものの、遺伝子発現量は、従来のアンプリコンの場合より10倍高いに過ぎず、ヘルパーウイルスがHSV/AAVによって媒介される遺伝子発現を増加させることが示唆された。PCR分析により決定されたように、形質導入後15日の時点で、ハイブリッドアンプリコンを形質導入された細胞は、従来のアンプリコンで形質導入された細胞よりも有意に多いlacZトランスジーンDNAを含んだ。ここで議論した2つのハイブリッドアンプリコン系は、標的細胞におけるベクターゲノムの安定な保持を支持する他のベクター系からの遺伝子エレメントを加えることにより、トランスジーン発現を延長させようとするものである。これらのハイブリッドアンプリコンベクターの欠損ビリオンとしてのパッケージングは、宿主細胞の核へのトランスジーンの効率的かつ安全な送達を確保する。
a.ニューロンへの遺伝子導入用のアンプリコンベクター
別の態様として、本発明は、トルシン核酸分子をニューロンに導入するための前記アンプリコンベクターの使用に関する。
HSV−1は、CNSへの遺伝子導入ベクターとしてのその使用を容易にするいくつかの生物学的特性をもっている。それらには:(i)大きいトランスジーン能(理論的に150kbまで)、(ii)インビボでのCNSへの親和性、(iii)***細胞と非***細胞とにおける核局在、(iv)組織培養における広い宿主域、(v)一群の神経弱毒化複製不能突然変異体の利用性、(vi)比較的高いウイルス力価を生成する可能性、を含む。
CNS用のHSV−1由来ベクター系のもう一つの重要な特性は、それらのビリオンが軸索に沿って逆行的に輸送されうることである。細胞膜との融合後に、ウイルスキャプシド及び関連するテグメントタンパク質が細胞質中に放出される。これらのキャプシドは、微小管に沿った細胞株へのエネルギー依存的逆行性輸送を媒介するダイニン複合体と結合する(Topp,K.S.ら,J.Neurosci.14:318−325(1994);Sodeik,B.ら「進入したHSV−1キャプシドの核への微小管及びダイニン媒介性輸送」21st Intl.Herpes Virus Workshop,イリノイ州ディカルブ(1996))。lacZ遺伝子を発現させる複製不能な組換えアンプリコンHSV−1ベクターは、注入後のベクターの局在と広がりを決定するために使用されている。尾状核、歯状回、小脳皮質を含む数多くの領域への単回注入後に、β−ガラクトシダーゼ陽性細胞の分布が決定された(Chiocca,E.A.ら,N.Biol.2:739−746(1990);Fink,D.J.ら,Hum.Gene Ther.3:11−19(1992);Huans,Q.ら,Exp.Neurol.115:303−316(1992);Wood,M.ら,Exp.Neurol.130:127−140(1994))。ニューロンとグリアは注射の部位で形質導入され、活性は、遠位の二次的脳領域で、最初の注入部位の細胞と求心性に関係するニューロンにも検出された。二次的部位への逆行性輸送は、神経解剖学的経路に選択的であり、ウイルスキャプシドの経シナプス移動が示唆される。アンプリコンベクターの逆行性輸送は、線条体注入後に、黒質緻密部と青斑の両方で実証されている(Jin,B.K.ら,Hum.Gene Ther.7:2−15−2024(1996))。HSV−1が逆行性輸送によって求心性経路のニューロンへ移動できることは、これらのベクターによる遺伝子の送達が、元の注入部位を越えて神経解剖学的に重要な他の領域に広がりうることを示唆している。
ニューロンへのアンプリコン媒介遺伝子送達に関する最初の報告では、培養初代細胞が使用された(Geller,A.I.及びBreakefield,X.O.,Science 241:1667−1669(1988))。アンプリコンベクターは、ニューロン生理学(例えば、ニューロン細胞の形態と成長に対するGAP43又は低親和性神経成長因子(NGF)レセプターの発現の効果)を調べるために使用されている(Neve,R.L.ら,Mol.Neurobiol.5:131−141(1991);Battleman,D.ら,J.Neurosci.13:941−951(1993))。アンプリコンは、海馬スライス培養で迅速かつ安定なトランスジーン発現を指示でき(Bahr,B.ら,Mol.Brain Res.26:277−285(1994))、これはカイニン酸レセプター媒介毒性(Bergold,P.J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6165−6169(1993))とグルコーストランスポーターによって媒介されるニューロンの保護(Ho,D.Y.ら,J.Neurochem.65:842−850(1995))の両方をモデル化するために利用されている。インビボでは、CNS疾患の様々なモデルにいくつかの候補治療遺伝子を送達するために、アンプリコンが使用されている。例えば、グルコーストランスポーターの発現は誘発性てんかんモデルでニューロンを保護し(Ho,D.Y.ら,J.Neurochem.65:842−850(1995));Lawrence,M.S.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7247−7251(1995);Lawrence,M.S.ら,Blood Flow Metab.16:181−185(1996))、bcl−2は、ニューロンを局所性虚血から救い(Linnik,M.D.ら,Stroke 26:1670−1674(1995))、THの発現はパーキンソンラットにおける行動変化を媒介する(During,M.J.らScience 266:1399−1403(1994))。したがって、アンプリコンは、CNSでの数多くのトランスジーンの機能発現に有用であることが判明している。
最近、宿主遺伝子の発現が空間的及び発生的に調節された様式で活性化されるマウス体細胞モザイクを作出するためにアンプリコンが使用されている。トランスジェニックマウスは、loxP部位に隣接するプロモーターと転写物との間に不活化挿入エレメントを含む生殖細胞系伝達NGF遺伝子で操作された。アンプリコンベクターによるcreリコンビナーゼの体細胞送達は、これらの動物におけるNGFの発現をうまく活性化した(Brooks,A.I.ら,Nat.Biotech.15:57−62(1997))。発生の様々な時点に特定の細胞で遺伝子を発現させる能力は、特に、それに関する生殖細胞系欠失(「ノックアウト」)が条件致死突然変異体である遺伝子に関して広範な用途を持つ。
従来、形質導入後のトランスジーン発現の安定性と、ヘルパーウイルスの細胞変性効果は、アンプリコンによるCNSの細胞への遺伝子送達の制限的特徴だった。最近の進歩は主としてこれらの制約に対処している。プレプロエンケファリンやチロシンヒドロキシラーゼなどのいくつかのプロモーターエレメントは、上流調節配列を含めると、アンプリコンベクターからの長期トランスジーン発現を制御できる(Kaplitt,M.G.,ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8979−8983(1994);Jin,B.K.ら,Hum.Gene Ther.7:2−15−2024(1996))。潜在的に部位特異的に組み込まれうるか(Johnston,K.M.ら,Hum.Gene Ther.8:359−370(1997))、安定な複製エピソームを形成できる(Wang,S.及びVos,J.,J Virol.70:8422−8430(1996))非HSV遺伝配列を含むハイブリッドアンプリコンの開発は、導入されたトランスジーンを遺伝的に安定な配置に保つはずである。最後に、ヘルパーウイルスの混入が全くないパッケージング系の開発(Fraefel,C.ら,J.Virol.70:7190−7197(1996))は、培地中及びインビボでのアンプリコンベクターの細胞変性効果を有意に減少させた。容易に操作されるプラスミド系アンプリコンと無ヘルパーウイルスパッケージング系とは、HSV−1の生物学的利点を保っているが、ウイルスに基づく遺伝子治療に伴う危険性を減少させる事実上合成的なベクターの構築を可能にする。
b.肝細胞への遺伝子導入用のアンプリコンベクター
別の態様として、本発明は、肝細胞にトルシン核酸分子を導入するための上記アンプリコンベクターの使用に関する。前章で議論したように、HSV−1アンプリコンベクターは神経系の細胞への遺伝子導入について広く評価されている。しかしながら、アンプリコンベクターは肝臓などの他の組織への効率的な遺伝子送達手段でもありうる。
ある種の遺伝性肝障害は、酵素/タンパク質補充か肝臓移植によって治療できる。しかしタンパク質の注入はその欠損症を一時的に回復させるに過ぎず、多くの細胞内タンパク質については有効でない。肝臓移植は、移植用提供器管の入手可能と、その患者の生涯にわたって免疫抑制が必要なことによって制限されている。したがって肝臓への遺伝子導入が著しく望ましく、それゆえ、アデノウイルスベクター(Stratford−Perricaudet,L.D.ら,Hum.Gene Ther.1:241−256(1990);Jaffe,A.H.ら,Nat.Genet.1:372−378(1992);Li,Q.ら,Hum.Gene Ther.4:403−409(1993);Herz,J.及びGerard,R.D.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2812−2816(1993))、レトロウイルスベクター(Hafenrichter,D.G.ら,Blood 84:3394−3404(1994))、バキュロウイルスベクター(Boyce,F.M.及びBucher,N.R.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:2348−2352(1996); Sandig,V.ら,Hum.Gene THer.7:1937−1945(1996))、HSV−1に基づくベクター(Miyanohara,A.ら,New Biologist 4:238−246(1992);Lu,B.ら,Hepatology 21:752−759(1995);Fong,Y.ら,Hepatology 22:723−729(1995);Tung,C.ら,Hum.Gene Ther.7:2217−2224(1996))などの様々なウイルスベクター系が、培養肝細胞と実験動物の肝細胞とへの遺伝子導入について評価されてきた。組換えHSV−1ベクターは、感染マウス肝で、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAG)、大腸菌P−ガラクトシダーゼ、イヌ第IX因子(CFIX)を発現させるために使用されている(Miyanohara,A.ら,New Biologist 4:238−246(1992))。ウイルスストックは肝実質に直接注射されるか、門脈を通して適用された。どちらの経路でも、遺伝子導入は極めて効率的であることがわかり、循環中に高レベルのHBsAG又はCFIXをもたらし、多数のP−ガラクトシダーゼ陽性肝細胞をもたらした。検出可能な遺伝子発現は一過性だったが、かなりの数のベクターゲノムが遺伝子導入後最大2ヶ月間持続することが実証された。長期遺伝子発現の効率は、トランスジーンの発現を指示するためのHCMVIE1プロモーターをHSV−1LATプロモーターで置換することによって、いくらか増加させることができた(Miyanohara,A.ら,New Biologist 4:238−246(1992))。
2つの異なるエクスビボ試験で、初代マウス又はヒト肝細胞が、それぞれ大腸菌β−ガラクトシダーゼ又はヒト成長ホルモンを発現させるHSV−1アンプリコンベクターでうまく形質導入された(LU,B.ら,Hepatology 21:752−759(1995);Fong,Y.ら,Hepatology 22:723−729(1995))。形質導入された初代マウス肝細胞のマウス肝臓への再移植後、最大2週間にわたって、β−ガラクトシダーゼ陽性細胞を示すことができた(Lu,B.ら,Hepatology 21:752−759(1995))。
組換えHSV−1とアンプリコンベクターとの両方が癌治療に使用できる(Breakefield,X.O.ら,Cancer Gene Therapeutics,(1995),41−56頁)。肝腫瘍細胞の免疫原性を高め、その結果として宿主防御系によるそれらの排除を増進するという目的で、Tung,C.ら,Hum.Gene Ther.7:2217−2224(1996)は、ヒトインターロイキン−2遺伝子(HSV−IL−2)を発現させるアンプリコンベクターを構築した。マウス肝腫瘍細胞(HEPA1−6)をHSV−IL−2か、大腸菌β−ガラクトシダーゼを発現させる対照アンプリコンベクター(HSVlac)で形質導入し、照射した後、マウスの免疫化に使用した。次に、この方法で前処置された動物が、106個の生腫瘍細胞の門脈内注射によって攻撃された。対照群(HSVlac)では、10匹中8匹が肝腫瘍を発達させたが、HSV−IL−2形質導入肝腫瘍細胞で前処置された10匹の群では、1匹が対照群のものと比較してはるかに小さいサイズの腫瘍を発達させたに過ぎなかった。同様のアンプリコンベクターを本発明で使用できる。
本発明を、以下の非限定的な実施例において、より詳細に記載する。
実施例
以下のプロトコル及び実験の詳細は、以下の実施例において言及する。
臨床基準及び患者検体
コロンビア・プレスビテリアン・メディカル・センター(Columbia Presbyterian Medical Center)の運動障害グループ(Movement Disorders Group)、及びマウント・シナイ・メディカル・センター(Mount Sinai Medical Center、(ニューヨーク))の運動障害部門(Movement Disorders Division)の構成員により診断及び治療された患者のデータベースにより、また、ジストニア・メディカル・リサーチ・ファウンデーション(Dystonia Medical Research Foundation)の会報の広告を通して、個体及び家族をつきとめた。初期捻転ジストニアに診断基準及び評価方法は、先に記載のものと同じであった(Bressman,S.B.ら、Annal Neurol 36:771−777(1994))。すべての被験者は、試験に参加する前に、インフォームド・コンセントを与えた。
2群の初期ジストニアである個体を考慮した。第1群は、以前に染色体9q34に関連した4つの非ユダヤ人家族からの既知のDYT1遺伝子キャリアで構成した(Kramer,P.ら、Am J Hum Gen 55:468−475(1994))。これらの4つの家族は、9q34マーカーにおける個々の家族のロッドスコアが>+2であることに基づき、先述の7つの家族から選択された。この群には、9q34対立遺伝子の創始ハプロタイプを保有するアシュケナージ個体も含まれた(Bressman,S.B.ら、Annal Neurol 36:771−777(1994b)。第2群の個体は、初期ジストニアを有するが、それらの関連状態は未知である、すなわち、小家族からの非ユダヤ人及び非アシュケナージ系ユダヤ人個体及び創始ハプロタイプを有しないアシュケナージ系ユダヤ人個体であった。この後者の群は、DYT1表現型を明確にする先の試験に基づいて、3つの臨床的亜群にさらに再区分した(Bressman,S.B.ら、Annal Neurol 36:771−777(1994b);Bressman,S.B.ら、Neurology 44:283−287(1994a);Kramer,P.ら、Am J Hum Gen 55:468−475(1994))。これらの亜群は:1)典型的な又は推定されるDYT1表現型:すなわち、ジストニアが少なくとも1つの他の肢部に広がるが、頭部筋(cranial muscle)に広がっていない初期(<28歳)肢部発症;2)異例な又は推定されないDYT1表現型;すなわち、あらゆる年齢での、病巣又は分節の頸部−頭部ジストニアの発症、又は44歳以降に始まる書痙;3)不明確なDYT1表現型;すなわち、45歳前に始まる書痙、肢部に下方に広がる頸部若しくは頭部で発症のジストニア、又は頭部筋に上方に広がる肢部発症等の、これらの他のカテゴリーのいずれにもあてはまらないジストニアである。また、初期発症ジストニアに典型的な症状を有する患者も、まぎらわしい神経学的異常を有する場合には、不明確として分類した。
GAG−欠失を保有する、4つの不明確な症例を以下に記載する。1例は、DYT1に典型的な臨床的表現型を有したが、子供の時にポリオを有し、おそらく分類を混乱させるため、不明確として分類した。別のキャリアも、DYT1の典型ではあったが、頭部振せんの併発と、頭部及び腕部の振せんの家系のため、不明確として分類した。残り2例のキャリアは、初期発症ジストニアの典型的な特徴を有していた;一方は、初期の肢部での発症が他の肢部に広がって頭部筋にも広がり、他方は、腕部での発症が首に広がった。
多数の罹患者の関連状態が未知である家族では、家族内のすべての罹患者に対して単一の分類を割当てた。家族に不明確及び典型的な両表現型の者がいる場合は、典型的として分類した;家族に不明確及び異例な両表現型の者がいる場合は、異例として分類した;また、家族に異例及び典型的な両表現型の者がいる場合は、不明確として分類した。
また、広範囲の民族的及び地理的家系の個体についても、含めるために調査した。この試験は、両協会の調査委員会により認可された。
DNA単離、リンパ芽球系及びサザンブロット
静脈血試料を参加した個体から得た。DNAを、全血(Gusella,J.ら、Proc Natl Acad Sci USA 76:5239−5242(1979))から、又はEBV形質転換による血液リンパ球から樹立したリンパ芽球系(Anderson,M.&Gusella,J.In Vitro 29:856−858(1984))から抽出した。CEPH系DNAを、CEPH(セントレ・デチューデ・ドゥ・ポリモルフィズム・ヒューメイン(Centre d’Etude du Polymorphisms Humain)、パリ、フランス)から入手した。サザンブロットのため、ゲノムDNAを、PstI、HindIII及びEcoRI(NEB)で、製造者使用説明書に従って消化した。消化したDNAを、1%アガロースゲル上で、70Vで、16時間、分離した。サザンブロットを、標準技術を用いて行ない、フィルターをcDNAにハイブリダイズさせた(下記参照のこと)。
RNAの単離、ノーザンブロット、RT−PCR
細胞質RNAを、患者及び対照から樹立したリンパ芽球及び線維芽細胞から単離した(Molecular Cloning. A Laboratory Mannual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989)、Sambrook,J.ら)。全RNAを、剖検で得たヒト成人及び胎児組織から、グアニジニウムチオシアネート法を用いて抽出した(Chirgwin,J.M.ら、Biochem 18:5294−5300(1979))。組織を、対照及びDYT1キャリア個体の両方から得、それらには、脳皮質、小脳、海馬、肺、肝臓、筋肉、胎盤、脾臓、甲状腺、腸及び目が含まれた。このRNAから、標準的方法に従ってノーザンブロットを調製した(Molecular Cloning. A Laboratory Mannual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989)、Sambrook,J.ら)。さらに、8種の異なる成人ヒト組織及び4種の異なる胎児ヒト組織由来のポリ(A+)RNA2μgを含むノーザンブロットフィルターを使用した(クローンテック(Clontech))。第1cDNA鎖の合成を、リンパ芽球RNA試料上で、オリゴdT及びランダムプライマーにより、SuperscriptII逆転写酵素を用いて行った(ギブコ(Gibco);ニューマン(Newman),P.J.ら、J Clin Invest 22:739−743(1988))。反応を42℃で90分間行った後、遺伝子特異的PCR増幅を行い、患者及び対照の必須のDYT1領域において種々のcDNAを合成した。
コスミド・コンティグ
2つのヒト第9染色体−特異的ライブラリー:第9染色体のみの体細胞ハイブリッド由来のDNAを用いてローリスト(Lawrist) 16に構築したローレンス リバーモア(Lawrence Livermore)ライブラリー(Van Dilla,M.A.,&Deaven,L.L.Cytometry 11:208−218(1990));及びフロー・ソート(flow−sorted)中期ヒト染色体由来のsCos(ストラタジーン(Stratagene))において構築したロス アラモス(Los Alamos)ライブラリー(Deaven,L.L.ら、Symp Quant Biol 51:159−167(1986))からコスミドを単離した。記載のようにして、コスミドコロニーのグリッドフィルターを、ハイブリダイゼーションのために、スタンピングし、調製した(McCormick,M.K.ら、Genomics 18:553−558(1993));Murrell,J.ら、Genomics 25:59−65(1995))。フィルターを、400kbの必須の領域由来のゲル精製YAC DNAによりスクリーニングし、800を超えるポジティブコロニーを、ハイブリダイゼーションのために取り出し、格子状にし、スタンピングした。コスミド歩行(cosmid walk)を、コスミドLL09NC0150H11及び数個のD9S63ポジティブコスミド(18D5LA、37H5LA)の末端クローンから始まる必須の領域の両端から開始した。ハイブリダイズさせるコスミドの末端配列を、PCRプライマーを合成するのに使用し、グリッドを再スクリーニングすることにより歩行を継続した。得られた約60のコスミドの組を、EcoRIで消化し、断片をアガロースゲル電気泳動により分離し、類似及び新規な領域を区別した。次に、11個のコスミドの重複するサブセットを、EcoRI、XhoI及びNotIにより切断し、一連の一回消化物及び二回消化物を並べた。断片を、1%アガロースゲルでの電気泳動により分離し、サザンブロットに移し、PCR又は20bpの合成オリゴヌケレオチドにより生成した、コスミド末端、エキソン及び領域内の非反復配列にハイブリダイズさせた。
ハイブリダイゼーション
プローブ(ゲル精製YAC DNA、コスミド末端、エキソンクローン、PCR産物及びcDNA)を、ランダムプライム法(ファインベルグ(Feinberg),A.P.,&ボゲルステイン(Vogelstein),B.、Anal Biochem 137:266−267(1984))により、[32P]dATP(3000Ci/mmol;NEN)を用いて標識した。オリゴヌクレオチドを、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEB)により、[32P]dATP(6000Ci/mmol;NEN)を用いて末端標識した。繰り返し配列を飽和させる必要がある場合には、プローブをCotI DAN、ヒト胎盤DNA及びベクターDNAでプレアニーリングした。
ハイブリダイゼーションを、チャーチ−ギルバート(Church−Gilbert)緩衝液中で、55℃で一晩行った。ノーザンフィルターを、5×SSPE、50%ホルムアミド、5×デンハート液、0.5%SDS及び300μg/mlサケ***DNA中、42℃で一晩ハイブリダイズさせた。フィルターを、記載のようにして、洗浄、オートラジオグラフフィルムに露光した(ミュレル(murrell),J.ら、Genomics 25:59−65(1995))。
エキソン増幅、cDNAライブラリースクリーニング及び伸長
エキソン増幅を、その領域を含む(spanning)コスミド上で、ベクターpSPL1(バックラー(Buckler),A.J.ら、Proc Natl Acad Sci USA 88:4005−4009(1991))及びpSPL3−IV(チャーチ(Church),D.M.ら、Nat Genet 6:98−105(1994))を用いて行った。RT−PCR産物を、BstX1で消化し、ベクターのみの産物を除いた(チャーチ(Church),D.M.ら、Nat Genet 6:98−105(1994))。クローン化エキソン断片を、コロニーハイブリダイゼーションによるヒト胎児及び成人cDNAライブラリーのスクリーニングに使用した((サンブルック(Sambrook),J.ら)Molecular Cloning.A Laboratory Mannual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989))。ライブラリーを、ストラタジーン(Stratagene)のZAPにおいて作製し、それは、成人ヒトの線条体、海馬、黒質、尾形被核(caudate Putamen)、脳幹、心臓、脾臓及び肝臓、並びにヒト胎児の脳及び網膜を含んだ。これらのcDNAクローンから生じた配列を、直線状に並べ、シークエンチャープログラム(ジーン・コーヅ(Gene Codes))を用いて編集した。2通りの方法−ライブラリーをコンティグの末端から生じたPCR断片で再スクリーニングすることにより、及びクロンテック(Clontech)により改変された、5’及び3’RACE並びにMARATHON PCRシステム(フローマン(Frohman),M.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA 85:8998−9002(1988);アプテ(Apte),A.N.,&シーベルト(Siebert),P.D.Biotechniques 15:890−893(1993))を用いることにより、cDNAコンティグを伸長させた。
シークエンシング
シクイサーム・ロング・リード・サイクル・シークエンシング・キット(Sequitherm Long Read Cycle Sequencing Kit)(エピセンター・テクノロジーズ(Epicenter Technologies))を用い、LICOR配列分析装置用の赤外標識ベクタープライマー、又は標準シークエンシング用の33P−dATP(2000Ci/mmol;NEN)で標識した特異的プライマーのいずれかにより、ジデオキシシークエンシングを行った。PCR産物の直接シークエンシングを、酵素的クリンナップ(enzymatic cleanup)法を用い、エキソヌクレアーゼI及びエビアルカリ性ホスファターゼ(USB)により、37℃で15分、及び85℃で15分行った後、シークエナーゼ(USB)でシークエンシングを行った。LICOR配列を、データ収集及び画像分析ソフトウェアを含むBaseImagIRソフトウェア・パッケージ(LICOR)を用いて読み取った。33P−dATPゲルを、3MM Whatmanに移し、乾燥させ、オートラジオグラフィーフィルムに一晩露光した後、読み取り、手動でGCGプログラムにかけた(ウィスコンシン・パッケージ・バージョン9.0(Wisconsin Package Version 9.0)、ジェネティクス.コンピューター・グループ(Genetics Computer Group)、マジソン、ウィスコンシン州)。
SSCP分析
DNA配列を、100〜300bpの断片のPCRにより、突然変異についてスクリーニングした後、患者及び対照のリンパ芽球RNA及びゲノムDNAから合成した第1cDNA鎖を用いてSSCP分析を行った。PCR反応を、オゼリウス(Ozelius),L.ら、Am J.Hum.Genet.50:619−628(1992)に記載のようにして、全反応容量10μlで行った。PCR増幅産物のSSCP分析を記載のようにして行った(オリタ(Orita),Mら、Genomics 5:874−879(1989);(ハヤシ(Hayashi),K.,&ヤンデル(Yandell),D.W.、Hum Mutation 2:338−346(1993))。異なる移動度のすべての断片を直接配列決定し、遺伝を確認するため家族において評価し、また、それらが通常の多形性を示すか否かを決定するために対照において評価した。単一の塩基対の変化で制限部位が変わった場合、PCR産物の制限切断物を用い、SSCP分析にかえた。この場合、標準PCRを、放射能なしで終容量25μlで行った。PCR産物を、製造者使用説明書(NEB)に従って消化し、2〜3.5%アガロースゲルで電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色することにより可視化した。
実施例1
コスミドコンティグ及び転写物地図
遺伝子の同定を容易にするため、コスミドコンティグを、多形性マーカー、D9S2161とD9S63との間の染色体9q34上の150kbにわたる標的領域において構築した。2つの第9染色体−特異的ライブラリー由来のコスミドのグリディッド配列(gridded arrays)を、まず、この領域に広がる4種のYAC:8H12、183D9、251H9及び22A4でスクリーニングした。コスミドのポジティブサブセットを、コスミドの末端配列により、順次スクリーニングし、YAC8H12にハイブリダイズするコスミドLL09NC0150H11の末端によりセントロメア側から開始し、テロメア末端では、他の3種のYACにハイブリダイズするD9S63ポジティブコスミド、37F5LA及び18D5LAにより行った。新しいオーバーラップコスミドを、制限消化及びゲル電気泳動により比較し、末端配列を新規な断片から得て、2次コスミドグリッドの再スクリーニングに使用した。3倍を超える重複性を有するコスミドコンティグを、LL09NC0150H11と37F5LAとの間のゲノム領域において作製した。11のオーバーラップコスミドの代表的なサブセットを用い、制限酵素、EcoRI、XhoI及びNotIを用いた一本鎖及び二本鎖の切断物のゲル電気泳動後の断片のサイズを決定することにより、制限地図を構築した。断片を、サイズ及びハイブリダイゼーションパターンにより、マーカーD9S2161及びD9S63、コスミド末端クローン、クローン化エキソン及び非反復領域由来のオリゴヌクレオチドを用いて直線状に並べた(図1)。所定のマーカー間のコンティグの推定される長さは150kbである。
この領域における遺伝子を、エキソン増幅により同定し、これは、スプライシングベクターにより発現されたRNAの細胞性プロセッシングの間、ゲノムDNAにおけるフランキング・スプライス部位により、エキソンのクローニングを可能にする(バックラー(Buckler),A.J.ら、Proc Natl Acad Sci USA 88:4005−4009(1991);チャーチ(Church),D.M、ら、Nat Genet 6:98−105(1994))。必須の領域由来のコスミドのサブセットを、PstI若しくはSacI、又はBamHI及びBgIIIの両方で切断し、これらのベクターでクローニングした。トラッピングされた60を超える推定エキソンのうち、28は、独立した配列を生じた。次いで、これらのエキソンクローンを、種々のヒト成人及び胎児組織由来のヒトcDNAライブラリーのスクリーニングに使用し、エキソンクローンは、オリゴdT又はランダムプライマーによるプライミングにより生成させておいた。多数のオーバーラップクローンにおいて、5つのcDNA:胎児脳、成人前頭皮質及び成人肝臓由来のDQI;成人の黒質、海馬及び前頭皮質由来のDQ2;成人前頭皮質由来のDQ3;成人前頭皮質及び胎児脳由来のDQ4及び;成人の後頭皮質、黒質及び前頭皮質由来のDQ5が示された。28の非反復推定エキソンのうち3つ以外はすべて、これらのcDNAで説明された。多くの成人ヒト組織(クロンテック(Clontech))のノーザンブロットに対するこれら3つのハイブリダイゼーションでは、対応するメッセージ種(message species)は示されなかった。さらに、これらの推定されるエキソンによるcDNAライブラリーのスクリーニングでは、ポジティブクローンは得られなかった。したがって、これらの3種は、クリプティックスプライシング部位の結果であるか、又は低発生量のメッセージを表すかもしれない。
5種のcDNAを、5’及び3’RACEにより、両方向に伸長し(フローマン(Frohman),M.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA 85:8998−9002(1988))、多数のクローンにおいてシークエンシングした。次いで、転写物を、限定分解したコスミドDNAのサザンブロットをハイブリダイズすることにより、5’及び3’cDNA末端、エキソンクローン及びcDNA配列(図1)に対応するオリゴヌクレオチドで、コスミドコンティグに直線状に並べた。これらの遺伝子により包含される推定ゲノム領域は、DQ1が8kb、DQ2が13kb、DQ3が10kb、DQ4が52kb及びDQ5が>40kbである。cDNA DQ5の3’非翻訳領域だけは、必須のインターバル(interval)と重複したため、この遺伝子をこの試験から排除した。広範囲のエキソントラッピングがこの領域で行なわれ、各cDNAに対して2〜10のエキソンが同定された事実を考慮すれば、これらの転写物は、必須の領域におけるすべての遺伝子であると説明することができる。しかしながら、数個の大きな領域(各々>10kb)、DQ1に動原体的な1つ、DQ4の最初の2つのイントロン内の2つは、他の遺伝子、特に、エキソン増幅により失われたのであろうイントロンを1つ含有するか、又は含有しない遺伝子を含む可能性がある。
実施例2
cDNAの配列
DQ1(トルシンB配列、配列番号:4をコードする)及びDQ2(トルシンA配列、配列番号:2をコードする)は、高度に相同な転写物であり、推定されるタンパク質の配列において、ヌクレオチドレベルで72%の同一性及び69%アミノ酸同一性を有する。これらの遺伝子は、ゲノムにおいて、反対方向にそれらの3’末端に12kb未満離れている(図1)。DQ2の最長の転写物は、2,072bpからなり、図2のヌクレオチド43〜1041までの998bpの断定されたオープンリーディングフレーム(配列番号:5)を有する。ゲノム及びcDNA配列からなるトルシンA遺伝子の複合ヌクレオチド配列を、配列番号:1に記載する。cDNA配列からなるトルシンA遺伝子の複合ヌクレオチド配列を、配列番号:5に記載する。
推定されるATG翻訳開始部位の周囲の配列は、必須−3プリン残基を含有するが、コザック(Kozak),M.、Nucleic Acids Res 15:8125−8148(1987)コンセンサス配列の他の特徴は何も有しない。このcDNAの5’末端の365bp上流から始まるコスミド23GILA由来のオーバーラップゲノム配列には、インフレーム(in−frame)終止コドンがある。3’非翻訳部分は、1031bp長であり、2つのポリA+付加部位、一方はヌクレオチド1390のATTTAAA、他方はクレオチド2054のAATAAAを含み、いくつかのcDNAクローンにおいては、ポリA尾部がそれらの各々から約20bp下方に存在する。
クローン化されたDQ2 cDNAは、対応する転写物のサイズに基づいて実質的に全長のようである。クローンH4、ATCC寄託番号98454は、配列番号:5に記載のように、ヌクレオチド99〜1377を含む。成人及び胎児のヒトRNAのノーザンブロットは、cDNAのコード部分由来のプローブにハイブリダイズする、約1.8kb及び2.2kbの2つの遍在メッセージを示した(図3A)。2.2kbのメッセージだけは、最初のポリA+付加部位に対して3’の配列にハイブリダイズし、これは、より大きな種が第2ポリA+付加部位の利用を示すかもしれないことを示す。成人の脳、心臓及び膵臓の他に、胎児の脳、肺及び腎臓では、約5kbの別のメッセージ種が、低存在量で存在した。胎児の脳、筋肉、脾臓、腸、目、肺及び肝臓に加え、成人のリンパ芽球、線維芽細胞及び小脳を含む、創始突然変異を保有するAJ個体由来の剖検組織において、1.8kb及び2.2kbのメッセージが見られたが、新規な種はなかった。転写物DQ2のオープンリーディングフレームにより、計算される分子量が37,813Dで、332個のアミノ酸からなる6.81pIポリペプチドが予測され、これをトルシンAと称する(図4)(配列番号:2)。
cDNA DQ1は、802bpのオープンリーディングフレームを有する2504bpであり(図2)(配列番号:6及び7)、ATCCに寄託番号98455で寄託された。cDNA DQ1とDQ2との間、及びコスミド54A5LAのcDNA DQ1の5’のゲノム配列とcDNA DQ2の5’コード末端との間の高類似性に基づき、DQ1メッセージについてのメチオニン開始部位はおそらく既存のDQ1クローンにはない。配列番号:3に記載されたヌクレオチド配列及び配列番号:4に記載の対応アミノ酸配列を、ゲノム及びcDNA配列の組み合わせから生成させた。3’非翻訳部は、1702bp長で、位置2483にポリA+付加部位、AATAAA、及び約20bp下流にポリA尾部を有する(配列番号:6)。ノーザンブロット分析により、遍在的に発現された約2.8kbのメッセージが、成人の脳に低量存在するが、胎児の脳には検出されないとが明らかになった(図3B)。既存のクローンのオープンリーディングフレームは、290個のアミノ酸をコードし、我々がトルシンBと命名した対応タンパク質が32,000Dをこえる分子量を有することを示す(図4)(配列番号:4)。
実施例3
突然変異分析
この優性疾患において、突然変異の2つの可能な機構:タンパク質を失活させ、コードされたハプロイン十分なタンパク質が結果として生じるかもしれない破壊的な突然変異;及び正常タンパク質の機能を無効にしたり、又は他のタンパク質を障害するタンパク質の突然変異型の「機能の獲得(gain−of−function)」又は「ドミナントネガティブ」効果を引き起こすかもしれないミスセンス突然変異を考察した。
配列の大幅な変更は、異なる民族的背景の30名のジストニア患者由来で、4つのcDNAにハイブリダイズしたゲノムDNAを用い、サザンブロット分析により排除した。次いで、必須の領域の転写物を、捻転ジストニアに罹患し、DYT1遺伝子(D9S62aからASS)周囲の拡張した領域において12の独特のハプロタイプを表わす異なる家族から14名の個体、並びに2名の対照、1名はAJ、1名は非ユダヤ人のリンパ芽球RNAを用い、配列変異体をスクリーニングした。これらの12の独特のハプロタイプのうち、4つは、明らかな第9染色体関連を示した家族に由来した。これらは、4つの非ユダヤ人家族(クラマー(Kramer),P.ら、Am J Hum Gen 55:468−475(1994))を含み、そのうち2つはフランス系カナダ人であり、共通のハプロタイプ及びAJ創始突然変異を共有した。これらの6家族における4つの異なる疾患関連ハプロタイプは、当初は、DYT1における独立した突然変異を表わすと思われた。転写物の3’及び’5’末端におけるプライマーによる最初のRT−PCRの後、ネスティッドPCRを、150〜300bpのオーバーラップ断片において行った。断片をSSCPにより解析し、すべての突然変異体バンドを、両方向においてシークエンスした。すべての転写物は、コード領域及び非コード領域の両方において多くの変異体を示した(図2)。これらのほとんどは、コードされたアミノ酸が変わらないような、5’及び3’非翻訳領域に、又はトリプレットコドンの第3の位置に、単一の塩基対置換を含む「サイレント」であった。これらの変化のうち3つだけは、アミノ酸配列に影響した:1)DQ4におけるバリンイソロイシン;2)DQ2におけるアスパラギン酸ヒスチジン;及び3)DQ2におけるグルタミン酸の欠失。コード領域におけるすべての配列変異体は、コスミドDNA内のエキソン/イントロン構造を決定した後、ゲノムDNAにおいて分析した。これらのヌクレオチドの変化のすべては、DQ2におけるGAG−欠失(配列番号:5の946〜948位のヌクレオチド)−の1つを除き、対照試料におけるそれらの存在により、多形性として確認された。驚くべきことに、DQ2におけるGAG−欠失は、4つの確認されたDYT1関連ハプロタイプを表わす6名の個体すべてにおいて存在した。
この所見を追究するため、多くのAJ及び非ユダヤ人対照と同様に、すべての第9染色体関連家族における保有状態により、GAG−欠失の相互分離を検査した。このGAG−欠失を、ゲノムDNA試料から生じたPCR産物を用い、3通りの方法:SSCP、ダイレクトシークエンシング又は正常なGAGGAG配列の10bp下流を切断するがGAG−欠失配列は切断しないBseRIによる消化で分析した(図5)。GAG−欠失と第9染色体関連家族における保有状態との関連性は完全であった。68に第9染色体関連家族における、すべての261名の罹患又は非罹患絶対遺伝子キャリアは、この欠失に対して異型接合性であった(創始ハプロタイプを保有する64のAJ家族及び4つの非ユダヤ人家族を含む)(表1)。驚くべきことに、260のAJ及び274の非ユダヤ人家族の対照染色体には欠失はみられず、いずれの個体においても異型接合状態で観察されなかった。
初期ジストニアにおけるこの欠失の役割をさらに評価するため、さらに155名の、種々の臨床的兆候を有する、関連分析には小さすぎる家族由来の個体を類別した。初期発症捻転ジストニアの典型的な兆候の関連性は、これらの家族において非常に高かった。19の異なる家族に由来の典型的な初期発症ジストニアの41症例のうち、14の家族において、すべての罹患した個体は、GAG−欠失を保有したが、他の5家族由来の罹患した個体は保有しなかった。これら5家族のうちの2家族由来の罹患率は、DYT1の表現型に非常に類似するドーパ応答性ジストニアを有する疑いがあるが、確認されなかった。GAG−欠失を保有しないいくつかの典型的な症例は、他に、まだ同定されていないが、DQ2における突然変異、又は他の遺伝子における突然変異を有するかもしれず;例えば、DYT1表現型の特徴が第8染色体上に突然変異を保有する何人かの個体において起こる。38症例(11AJ、27非ユダヤ人家族)、これらについては初期発症ジストニアの診断は不確定であり、このうち、4例はGAG−欠失を保有した(1AJ、3非ユダヤ人)が、残り34例は保有しなかった。(これらの4例の不明確なキャリアの臨床的記載については、方法を参照。)初期発症ジストニアに典型的な特徴を有しない異例と分類された76個体のうち(36AJ、2セファルディーユダヤ人[SJ]及び38非ユダヤ人家族)、GAG−欠失を保有した者はいなかった。総合すると、これらの観察は、GAG−欠失が、典型的な初期発症ジストニアの症例の非常に大多数に起因するという説得力のある証拠を提供する。これらは、多様な民族的背景のほとんどの非ユダヤ人症例の他に、創始突然変異が95%を超える症例を引き起こすAJファミリーの個体を含む(リッシュ(Risch),N.ら、Nature Genetics 9:152−159(1995))。
典型的な初期発症ジストニアの症例のほとんどすべてに起因する、罹患した染色体の単一の突然変異(GAG−欠失)の同定は、注目すべきである。この驚くべき所見を説明し得る2つの可能な説明は、:1)これらすべての症例は、家系的に関連するかもしれず、この突然変異のAJ群への導入よりも先に起こった独自の創始突然変異を表わすか;又は2)同じ突然変異が独立して生じ、それは結果的に初期発症ジストニア表現型に現れる唯一の変化(又は、おそらく数個のうちの1個)である。これらの可能性を区別するため、3つの多形性配列変異体(A、B及びC、表2)をGAG−欠失周囲の5kb領域に同定し、これらをさらに詳細な対立遺伝子分析に使用した。4の確認されたDYT1連鎖ハプロタイプを保有する罹患した個体において、対立遺伝子の異なる2種のパターン、疾患保有染色体(家族5、9及び16)の3つにおける1、1、2、並びに疾患保有染色体(家族1、表2)の1つにおける1、2、1が観察された。この所見は、同じ突然変異(GAG−欠失)が1回を越えて生じたという認識をはっきりと裏付ける。60のAJ及び60の非ユダヤ人の対照固体も、これらのマーカーにより類別され、異なる対立遺伝子パターンに対する頻度を測定した。対照のうち、3つのパターンのみが、遺伝子座A、B、C:1、1、2(AJ対照=68%;非ユダヤ人対照=55%);1、2、1(AJ=20%;非ユダヤ人=34%);及び2、1、2(AJ=12%;非ユダヤ人=11%)に観察され、これは、これらの多形性が互いに強い連鎖不平衡であることを示している。9関連家族におけるGAG−欠失染色体における高頻度の1、1、2パターンは、対照におけるこのパターンの高発生度に一致するが、独立した突然変異には矛盾しない。関連状態が未知の患者における他の18のGAG−欠失染色体を、A、B及びC対立遺伝子に類別した場合、1、1、2を保有する15(家族2〜4、6〜8、10〜15及び17〜22)、1、2、1パターンを有する1(家族2)及びその他の2(家族3、4)は、不安定な状態であったが、1、2、1パターンを有するようである(下記参照)(表2)。これらの観察は、少なくとも2の独立した突然変異があるという結論を裏付けるが、正常な群における高頻度の1、1、2パターンが、我々のさらなる独立した事象を識別する能力を妨げるかもしれない。
マーカーA、B及びCに同一の対立遺伝子パターンを保有する個体が、共通の先祖のさらなる証拠を示すか否かを検討するため、彼らのハプロタイプをフランキングマイクロサテライトマーカー(D9S159、D9S2160、D9S2161、D9S63及びD9S2162)において調査した。この分析により、共通でない(1、2、1)パターンをA、B、Cに保有する4名の個体が、共通の先祖を共有するであろうことが明らかになった(家族1〜4、表2)。これらの家族のすべては、ノースカロライナ及びバージニアの同じ地域出身であり、英国人の先祖を有し、並びに、罹患した個体は、GAG−欠失の周囲に200kb以上にわたる対立遺伝子を共有する。すべて同じ(1、1、2)ハプロタイプを保有する残り18の染色体の検査でも、2つのカテゴリーに分類される、いくつかの興味深い共通性が明らかになっている。まず、3家族は、AJ創始突然変異に特徴的な対立遺伝子の一部を共有する。SJ個体(家族6、表2)は、4つの遺伝子座に、アシュケナージ創始ハプロタイプ(家族5)と同一のハプロタイプを有する。当然の疑問は、このセファルディー個体における疾患染色体が、未確認のアシュケナージ先祖を通じて最近導入されたのか否か、あるいはまた、この前駆突然変異が、約1000年前にアシュケナージ系からセファルディー系への分離以前に、ユダヤ人群に存在したか否かということである。英国系及びオーストリア−ハンガリー系の先祖が混ざった非ユダヤ人であると報告された家族7における罹患した個体は、全500kbのハプロタイプ領域にわたる創始AJ染色体を保有することで一致した。この個体は、DYT1遺伝子を、最近のアシュケナージ先祖から受け継いだようである。第3の、おそらく関連する染色体が、イタリア人家族(家族8)において見出された。この個体は、GAG−欠失に90kb以上のセントロメアAJ創始対立遺伝子を共有した。このことは、この突然変異が、そのアシュナケージ系ユダヤ人群への導入よりも先に起こったことから、地中海起源の興味深い可能性を生じさせる。また、先のように、染色体はより最近のアシュナケージ系先祖のものであるかもしれない。第2に、3の共通のハプロタイプが他の家族にも見られ、AJ創始ハプロタイプとは異なる:1)家族9(ドイツ人起源)は家族10(アイルランド人起源)と、そして見かけ上、家族11(アシュナケージ系ユダヤ人;しかし不安定な状態である)と、420kb以上にわたるハプロタイプを共有した。これらの個体により共有されるDNAの長い範囲は、その多様な民族性にもかかわらず、共通の起源を示す。2)2のフランス系カナダ人家族(12及び13)も、より小さい領域、130kb以上にわたる共有のハプロタイプを保有する。したがって、この場合も同様に、もっと遠い過去においてだが、共有の先祖があるかもしれない。3)他の2家族、14(ドイツ人起源)及び15(アイルランド人起源)は、320kb以上にわたる同じハプロタイプを共有した。残りの家族には、さらに7のハプロタイプがあるようである。全部で、少なくとも12の異なるハプロタイプのクラスがあるようであり、同じ突然変異が少なくともその数だけ起こったことを表わすが、1、1、2パターンを有する染色体のすべては、はるか遠い過去において家系的に関連する可能性が残る。
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考察
ポジショナルクローニングを、ヒト染色体9q34上の、初期ジストニアの初期発症形に起因するDYT1遺伝子の強力な候補を同定するのに使用した。突然変異分析により、疾患保有染色体上に同定された唯一の非多形性変化である、転写物のコード部における3−bp欠失が明らかになった。この突然変異は、初期発症ジストニアの典型的な症例に独自に関連しており、多くの民族群において異なるハプロタイプに独立して生じたようである。したがって、見かけ上、コードされたタンパク質における唯一又は数個のうちの1つの変異体が、この特定の表現型を生じ得る。欠失により、トルシンAと称する新規タンパク質のカルボキシ末端付近の1対のグルタミン酸残基の1つを欠損させる。これらのグルタミン酸及びフランキングシステイン残基は、隣接する相同な、トルシンBと称するタンパク質をコードするヒト遺伝子、及び関連するマウス及びラット配列に保存される。トルシンA及びBは、タンパク質のHSP100/Clpファミリーとの関連性はうすいATP−結合タンパク質の新しいファミリーを構成する(シュイルマー(Schirmer),E.C.ら、TIBS 21:289−296(1996))。
タンパク質の関連性及びトルシンAの可能な機能における洞察が、GenBankのタンパク質データベースの調査により明らかになった。非常に関連性のある推定タンパク質の配列は、本明細書ではC.elegans(torpCel)におけるトルシン関連タンパク質と称するCaenorhabditis elegans由来のコスミドによりコードされる。また、ESTは、他の2つの関連タンパク質、torp1及びtorp2に加えて、ヒト、マウス及びラットのトルシンA及びトルシンBに対応して同定された。図4Aは、これらの予想されるタンパク質のアミノ酸のアラインメントを示す。グルタミン酸対は、罹患した個体において欠失を有し、すべてのヒト、ラット及びマウスのトルシンA及びトルシンB転写物に保存され、これは、機能的ドメインの一部であることを示す。torpにグルタミン酸対が存在しない場合、隣接のアミノ酸残基は、かなりよく保存され、この領域にフランキングするシステイン酸基を含む。系統発生分析により、トルシンA及びトルシンBが互いに非常に密に関連しており(約70%のアミノ酸配列同一性)、それら及びtorpは、同じ程度に遠類である(約50%の同一性)ことが示唆される。
公知のタンパク質に対するより低い類似性は、潜在的な機能に対するいくらかの洞察:トルシン及びtorpの中程度の約200個のアミノ酸は、タンパク質のHSP100/Clpファミリーにおける保存ドメインに類似する(シュイルマー(Schirmer),E.C.ら、TIBS 21:289−296(1996);ペリー(Perier),F.ら、Gene 152:157−163(1995))を提供する。HSP100/C1pファミリーのメンバーは、シャペロン機能又はタンパク質分解活性を有し、これは熱耐性を賦与し、タンパク質の正確な折りたたみを許容し、タンパク質のシグナリングを制御する(パーセル(Parsell),D.A.,&リンドクイスト(Lindquist),S.、Annu Rev Genet 27:437−496(1993))。HSP100/Clpタンパク質は、2つの特徴:それらが、ATPに結合、及び/又はATPアーゼ活性を有すること;並びに、それらが、1以上の別のタンパク質種とのオリゴマー性複合体を生ずることにより区別される。図4Cでは、トルシンファミリーと、HSP100タンパク質ファミリーの2つの代表的なメンバー:HSP101、HSP100サブファミリー1Bの大豆由来の熱ショックタンパク質;及びSKD3、サブファミリー2Mの遍在マウスタンパク質とを比較している(ペリエ(Perier),F.ら、Gene 152:157−163(1995);シュイルマー(Schirmer),E.C.ら、TIBS 21:289−296(1996))。最も確固とした特徴は、2つのモチーフ:約60個のアミノ酸が後に続くヌクレオチド−結合部位”A”(GxTGxGKT/S)、その後ろにMg++−結合部位”B”(ShhhFDEhEKxH)、ここでxは種々の残基を示し、hは疎水性残基を示す、を含有する保存ATP/GTP−結合配列である(ウォーカー(Walker),J.E.ら、EMBO J 1:945−950(1982);コンファロニエリ(Confalonieri),F.,&デュグエット(Duguet),M,、Bioessays 17:639−650(1995))。ヌクレオチド結合ドメインを含む140個のアミノ酸からなる保存ストレッチにおいて、トルシンファミリーのメンバーは、HSP100ファミリータンパク質と25〜30%同一である。また、HSP100コンセンサス部位IVの重要な残基(シュイルマー(Schirmer),E.C.ら、TIBS 21:289−296(1996))及び別の部位(SN;図4C)も保存されるが、コンセンサス部位Vはトルシンに存在しない。興味深いことに、このファミリーの大腸菌HSIV/Clp Yのカルボキシ領域における突然変異は、そのコンパニオン(companion)タンパク質への結合を阻害する(ミッシアカス(Missiakas),D.ら、EMBO J 15:6899−6909(1996))。トルシンAのカルボキシ末端における別個のグルタミン酸欠失が、突然変異体タンパク質の他のサブユニットの結合及び活性を阻害する能力に一致するかもしれない。同じスーパーファミリーのトルシンAを、多重結合性複合体の崩壊により仲介されるドミナントネガティブ効果に一致するかもしれないため、それを熱ショック/タンパク質分解性タンパク質とみなすことは興味を引かれることである。
この新しいと思われる、その機能に洞察を生じるクラスのタンパク質の推定タンパク質の配列から、他にいくつかの手掛かりがある。トルシンAの推定されるN末端の41個のアミノ酸は、2つの20個のアミノ酸疎水性ドメインからなる。これらの最初は2個の塩基性アミノ酸から始まり、極性及び酸性アミノ酸で終わり;貫膜又は膜輸送タンパク質のリーダー配列の基準を満たす(ボイド(Boyd),D.,&(ベックウィズ(Beckwith),J.、Cell 62:1031−1033(1990))。トルシンA及びトルシンBの両方に保存される可能なリン酸化部位が、N−ミリスチン酸化(myristylation)部位(Prosite分析)の他にいくつかある:プロテインキナーゼCに2個、カゼインキナーゼIIに1個。6個のシステイン残基は、他のトルシンファミリーのメンバーとともに保存される(図4B)。
典型的な初期発症ジストニアの症例のほとんどにおけるヘテロ接合状態の同じ3−bp突然変異の所見は、驚くべきことであるが、まだはっきりしていない。優性な遺伝的症状を引き起こす、頻発性突然変異の例はほんのわずかしかない。これらには、低カリウム血症性周期性麻痺を引き起こす、発見された突然変異の唯一の型でありL−型電圧感受性カルシウムチャネルのサブユニットの第4貫膜ヘリックスにおける正電荷アルギニンの欠損(グロッソン(Grosson),C.L.ら、Neuro.Disord 6:27−31(1995));フォンテイン(Fontaine),E.ら、Nat Genet 6:267−272(1994));軟骨発育形成不全症のほどんどすべての症例においてみられる線維芽細胞成長因子受容体−3(FGFR3)の膜貫通ドメインにおけるグリシンのアルギニンとの置換(ベラス(Bellus),G.A.ら、Am J Hum Genet 56:368−373(1995));肥大型心筋症にみられる共通のミスセンス突然変異(ワトキンス(Watkins),H.ら、Am J Hum Genet 53:1180−1185(1993);及び神経変性疾患を引き起こす多くの遺伝子のコード領域におけるCAG拡大(expansions)(総説としては、グセラ(Gusella),J.ら、Proc Natl Acad Sci USA 76:5239−5242(1979);ポールソン(Paulson),H.L.,&フィッシュベック(Fishbeck),K.H.、Ann Rev Neurosci 19:79−107(1996)を参照のこと)が含まれる。これらの症例すべてにおいて、同じ突然変異が独立した事象として繰り返し起こるが、同じ遺伝子における他の突然変異は、異なる症候群を引き起こし、表現型を有さず、又は生命に不適合であるようである。
初期発症ジストニア(DYT1)は、遺伝性ジストニアの最も重度で最も一般的な形を表す。ジストニアのこれ及び他の遺伝の形は、通常、浸透度の低下した(30〜40%)遺伝の常染色体優性パターンを伴う。非変性形のジストニアを引き起こす6個の遺伝子は、ヒト染色体上:14q21〜22にドーパ応答性−優性(ニガード(Nygaad),T.ら、Nature Genetics 5:386〜391(1993);Monographs in Neural Sciences Age−related dopamine−dependent disordersにおけるエンドウ(Endo),K.ら、セガワ(Segawa),M&ノムラ(Nomura),Y.編、カーガー・パブリッシャーズ(Karger Publishers)、ニューヨーク(1995)、第120〜125頁)及び11p11.5に劣性(ルデッケ(Ludecke),B.ら、Hum Genet 95:123〜125(1995);ナップスコグ(Knappskog),P.M.ら、Hum Mol Genet 4:1209〜1212(1995));2qに発作(フィンク(Fink),J.K.ら、Am J Hum Genet 59:140−145(1996);フォアード(Fouad),G.T.ら、Am J Hum Genet 59:135−139(1996));18pに後期発症、病巣(ロイベ(Leube),B.ら、Hum Mol Genetics 5:1673−1678(1996));8に混在表現型;及び染色体9q34上のDYT1遺伝子(オゼリウス(Ozelius),L.ら、Neuron 2:1427−1434(1989))にマッピングされている。これらの他のジストニア遺伝子の2個は同定されており、両方とも、ジストニアにおけるドーパミン作用性伝達(transmission)の低下を意味する。ドーパ応答性ジストニアは、その割合がドーパ合成における酵素を制限するチロシンヒドロキシラーゼの分解(ルデッケ(Ludecke),B.ら、Hum Genet 95:123−125(1995);ナップスコグ(Knappskog),P.M.ら、Hum Mol Genet 4:1209〜1212(1995))により、及びチロシンヒドロキシラーゼの補因子、ビオプテリンの合成に必要なGTPシクロヒドロラーゼIのハプロインサフィシエンシー(フルカワ(Furukawa),Y.ら、Adv Neurol 69:327−337(1996))により、引き起こされ得る。これまでに報告された唯一の遺伝的齧歯類モデル−ジストニア(dystonic)(dt)ラット(レドックス(LeDoux),M.S.ら、Brain Res 697:91−103(1995))、マウス突然変異体、変形性筋ジストニア(dystonia musculorum)(dMd)(ブラウン(Brown),A.ら、Nat Genet 10:301−306(1995))及び発作性(paroxysmal)ジストニア(d+52)のハムスター(ノブレガ(Nobrega),J.N.ら、Neurosci 64:229−239(1995)及びノブレガ(Nobrega),J.N.ら、Neurosci 71:927−937(1996);プラット(Pratt),G.D.ら、J Neurochem 1995:2153−2158(1995))−は、ヒトジストニアの遺伝的又は神経生物学的特徴に一致しない。
初期ジストニアには、神経病理学的特徴はない(ヘドリーン(Hedreen),J.C.ら、Adv Neurol 50:123−132(1988);ゼーマン(Zeman),W.,&ディーケン(Dyken),P.、Psychiatr Naurol Neurochir 10:77−121(1967))が、続発性ジストニアの症例では、視床下部及び吻側の(rostral)脳の他に、尾状核、被殻及び淡蒼球における病変を示すので、この症状は、脳幹神経節における神経伝達の不均衡に起因すると考えられている(ドゥーリング(Dooling),E.C.,&アダムス(Adams),R.D.Brain 98:29−48(1975);バチア(Bhatia),K.P.,&マースデン(Marsden),C.D.Brain 117:859−876(1994);クリセフスキー(Kulisevsky),J.ら、Movement Disorder 8:239−240(1993))。ジストニアは、ドーパ応答性ジストニアにおいて欠く遺伝子がドーパミン経路(上記)におけるタンパク質をコードする場合、特に、ドーパミン作用性神経伝達の破壊に起因するかもしれない;D2受容体を介するドーパミン作用性伝達をブロックする薬物は、急性又は遅発性ジストニア症状を誘発し得(クリスチャン(Christian),C.D.,&ポールソン(Paulson),G.、N Eng J Med 259:828−830(1958);ブルケ(Burke),R.E.ら、Neurology 32:1335−1346(1982))、そして、異常に低い量のドーパミン作用性代謝物が、数名のジストニア患者の脳髄液に認められている(タバドール(Tabaddor),K.ら、Neurology 28:1249−1253(1978);ウルフソン(Wolfson),L.I.ら、Adv Neurol 50:177−181(1988);ブラシェア(Brashear),A.ら、Mov Disord 2:151−156(1996))。初期発症ジストニアの臨床的特徴は、脳幹神経節における発症及び体性局在パターンを反映する(図6)。実験動物における神経形態学的及び生理学的試験によれば、神経細胞接着分子における出生後モデリングの解剖学的な勾配(スゼレ(Szele),F.G.ら、Neurosci 60:133−144(1994))及び線条のドーパミン作用性神経交配(グレイビール(Graybiel),A.M.,Neuroscience 13:1157〜1187(1984))が示されている。この発症の勾配は、異なる身体部分の脳幹神経節性運動におけるニューロンの体性局在崩壊と重なり(クラッチャー(Crutcher),M.D.,&デロング(DeLong),M.R.、Exp Brain Res 53:233−243(1984))、およそ逆さの解剖実験用人体模型に対応する。AJ創始突然変異を有するジストニア患者において、約6〜24歳の間で症状の発症が早いほど、それらは下肢に起こり他の上半身部に広がりやすくなる(ブレスマン(Bressman),S.B.ら、Annal Neurol 36:771−777(1994b))。これらの年齢では、罹患性の発症時期が明確なようである;28年までに何も症状を示さない同じ突然変異のキャリアは、通常、一生症状がないためである。ジストニアにおけるニューロン性併発の発症モデルは、脳幹神経節における微妙な神経形態学的及び生理学的変化を評価する基盤を提供する。トルシンA転写物を発現する細胞を同定するための能力は、ジストニアに関与するニューロンを同定するための助けとなるはずである。
初期発症ジストニアにおけるニューロン変性の見かけ上の欠如は、治療的介在の望みを提供する。実際、ジストニアのこの型における症状の発症の遅滞でさえ、結果として、より穏やかな表現型をもたらす。臨床的にDYT1に類似する症状を有するドーパ応答性ジストニアの患者のほとんどは、レボドパの投与により実際に治癒し、この治療は患者の生涯にわたって有効である。典型的なジストニアの発症を示す少数派の患者は、高投与量の抗コリン作用薬、ドーパミンアゴニスト及びアンタゴニスト、並びにGABA作用性(GABAergic)剤を含む、種々の薬物療法により改善を示しており、いくつかの症例においては、罹患性の年齢を過ぎた後、例外なしに、薬物を停止している(Movement Disorders 2,マースデン(Marsden),C.D.&ファーン(Fahn),S.編、ロンドン:バターワーズ(Butterworths)(1987)、第332〜358頁のファーン(Fahn),S.ら);プランツァテッティ(Pranzatetti),M.R.、J Child Neurol 11:355−369(1996);ブレスマン(Bressman),S.B.,&グリーン(Greene),P.E.Neurol Clin 8:51−75(1990))。さらに、抗コリン作用薬に最もよく応答した患者は、疾患の過程の初期に治療される人である傾向がある(グリーン(Greene),P.ら、Mov Disord 2:237−254(1988))。
本明細書で言及されたすべての刊行物は、参照により、そのすべてにおいて本明細書中に取り込まれる。
前記発明は、明確さ及び理解の目的のために、ある程度詳細に記載しているが、当業者は、この開示を読むことにより、本発明及び添付の請求の範囲の真の範囲を逸脱せずに、形態及び詳細の種々の変更を行い得ることを理解するであろう。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人/発明者:オゼリウス,ローリー
ブレークフィールド,ザンドラ
(ii)発明の名称:トルシン、トルシン遺伝子、及び使用法
(iii)配列の数:8
(iv)連絡先住所:
(A)宛名:ステルン,キースラー,ゴールドスタイン&フォックス
ピー.エル.エル.シー.
(B)ストリート:1100 ニューヨーク アヴェニュー,スイート
600
(C)市:ワシントン
(D)州:ディーシー
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:20005−3934
(v)コンピュータ可読フォーム:
(A)媒体型:フロッピーディスク
(B)コンピュータ:IBM PC 互換機
(C)オペレーティングシステム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:パテントイン リリース ♯1.0,
バージョン ♯1.30
(vi)本願データ:
(A)出願番号:未付与
(B)出願日:同日
(C)分類:
(vii)先願データ:
(A)出願番号:US 60/050,244
(B)出願日:1997年6月19日
(C)分類:
(viii)代理人情報:
(A)氏名:ゴールドスタイン,ジョルジ エー.
(B)登録番号:29,021
(C)リファレンス/ドケット番号:0609.438PC01
(ix)テレコミュニケーション情報:
(A)電話番号:(202)371−2600
(B)テレファックス:(202)371−2540
(2)配列番号:1の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:2597塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:Genomic DNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表わす記号:CDS
(B)存在位置:568..1563
(xi)配列:配列番号:1:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
(2)配列番号:2の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:332アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号:2:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
(2)配列番号:3の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:3568塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:Genomic DNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表わす記号:CDS
(B)存在位置:994..1863
(xi)配列:配列番号:3:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
(2)配列番号:4の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:290アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号:4:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
(2)配列番号:5の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:2072塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:43..1038
(xi)配列:配列番号:5:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
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Figure 0004323572
(2)配列番号:6の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:332アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号:6:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
(2)配列番号:7の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:2504塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:2..799
(xi)配列:配列番号:7:
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
Figure 0004323572
(2)配列番号:8の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:266アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号:8:
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Claims (20)

  1. (a) 配列番号:2又は4の全アミノ酸配列を含有してなるトルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
    (b) ATCC寄託番号98454又は98455に含まれるポリヌクレオチドクローンによりコードされる全アミノ酸配列を含有してなるトルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び
    (c) (a)又は(b)のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、
    からなる群より選ばれるポリヌクレオチド配列を含有してなる、単離された核酸分子。
  2. 分子が、配列番号:2又は4に記載の全アミノ酸配列を含有してなるポリペプチドをコードするものである、請求項1記載の単離された核酸分子。
  3. トルシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、ATCC寄託番号98454又は98455に含まれるポリヌクレオチドクローンによりコードされる全アミノ酸配列を含有してなる、請求項1記載の単離された核酸分子。
  4. トルシンタンパク質をコードするRNA又はDNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする20〜50個のヌクレオチドからなり、請求項1記載のヌクレオチド配列由来の、少なくとも20個の連続したヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であるか、又はそれに相補的である、単離された核酸分子。
  5. (a) 患者から採取された試料におけるGAGGAG領域(配列番号:5のヌクレオチドの位置946〜951)を検出する工程を含む、前記試料中のトルシンA核酸の特性を評価する工程;及び
    (b) 患者における捻転ジストニアの発症の存在又は素因を検出する工程、ここで、前記GAGGAG領域にGAGが存在しないことは、捻転ジストニアの発症の存在又は素因を示す、
    を含む、患者における捻転ジストニアの発症の存在又は素因の検出方法。
  6. 配列番号:5のヌクレオチド位置946〜951の少なくとも1つの変異を検出する工程を含み、変異がグルタミン酸の欠失を生じ、変異の存在がジストニア障害の存在を示す、ヒトにおけるジストニア障害の存在の検出方法。
  7. 変異が配列番号:5のヌクレオチド946〜948の欠失である請求項記載の方法。
  8. 変異が配列番号:5のヌクレオチド949〜951の欠失である請求項記載の方法。
  9. a) 配列番号:5のヌクレオチド位置946〜951の少なくとも1つの変異について配列番号:5を含むジストニア遺伝子を含む生物学的試験試料を分析する工程、ここで変異はグルタミン酸の欠失を生じる;
    b) 生物学的試料の分析の結果と対照試料の分析の結果とを比較する工程、ここで対照試料は変異を有さないジストニア遺伝子を含む;および
    c) 対照試料中に変異が存在しないことと比較し試験試料中の変異の有無を決定する工程、
    を含み、試験試料中の変異の存在がジストニア障害の存在を示す、生物学的試料中の核酸の変異の有無を検出する方法。
  10. 変異が配列番号:5のヌクレオチド946〜948の欠失である請求項記載の方法。
  11. 変異が配列番号:5のヌクレオチド949〜951の欠失である請求項記載の方法。
  12. 分析する工程が、DYT1遺伝子の領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いて核酸増幅反応を行うことをさらに含み、増幅領域が配列番号:5の位置946〜951のヌクレオチドを含む、請求項記載の方法。
  13. a) ヒトから得られた生物学的試験試料と、少なくとも配列番号:5の相補体を含む核酸プローブとを接触させる工程、ここで核酸プローブは配列番号:5のヌクレオチド位置946〜951の少なくとも1つの変異を検出し、変異がグルタミン酸の欠失を生じる;
    b) 生物学的試験試料および核酸プローブをハイブリダイゼーションに適切な条件下で維持する工程;
    c) 生物学的試験試料と核酸プローブとの間のハイブリダイゼーションを検出する工程;および
    d) ヒト由来の生物学的試験試料中のハイブリダイゼーションと対照試料とを比較する工程、
    を含み、対照試料と比較した、生物学的試験試料と核酸プローブとの間のハイブリダイゼーションの存在がヒトにおけるジストニア障害の存在を示す、ヒトにおけるジストニア障害の存在を決定する方法。
  14. 核酸が標識される請求項13記載の方法。
  15. 標識が蛍光標識、放射標識、又は酵素標識を含む請求項14記載の方法。
  16. a) 配列番号:5を含む核酸を含む生物学的試験試料を、ヌクレオチド位946〜951の少なくとも1つの変異について分析する工程、ここで変異がグルタミン酸の欠失を生じる;
    b) 生物学的試料の分析の結果と対照試料の分析の結果とを比較する工程、ここで対照試料は変異を有さない配列番号:5を含む;および
    c) 対照試料中に変異が存在しないことと比較し試験試料中の変異の有無を決定する工程、
    を含み、対照試料中に変異が存在しないことと比較した試験試料中の変異の存在が変異の存在を示す、配列番号:5を含む生物学的試料中の核酸の変異の有無を検出する方法。
  17. 変異が配列番号:5の位置949〜951のヌクレオチドの欠失である請求項16記載の方法。
  18. 変異が配列番号:5の位置946〜948のヌクレオチドの欠失である請求項16記載の方法。
  19. 配列番号:5の位置946〜948にヌクレオチドの欠失を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
  20. 配列番号:5の位置949〜951にヌクレオチドの欠失を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
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