JP4200689B2 - 癌治療用体外循環カラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、担癌患者の癌の進行を抑制したり、癌患者のQOLの向上を図るための癌治療用体外循環カラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
医学の発達した今日でも、依然として日本人の主たる死亡原因の一つが癌である。その原因は転移巣のある進行癌患者では手術で取りきれない癌細胞が残るためであり、かつ、抗癌剤治療や放射線治療を使っても完全に除去できないためである。しかし、本来、生体には癌細胞を排除する免疫機能が備わっているはずであるので、手術で取りきれなかった癌細胞は免疫機能によって除かれるはずであるが、進行癌患者ではこれが起こらない。この理由については古くから免疫機能を抑制する物質が血液中に増えてくるためと考えられていて、以前は以前は悪疫質と呼ばれていた。現在では具体的にトランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(以下TGFβ)、免疫抑制酸性蛋白、インターロイキン6、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンE2などの種々の物質や、B細胞、マクロファージ等の細胞が免疫を抑制していることが分かってきた(藤原大美著、腫瘍免疫学、p89−112、中外医学社、1998年)。
【0003】
これらの物質は健康な人の血液中にも存在する蛋白質で免疫作用を調整する有用な物質であるが、癌の進行に伴って異常に増え、癌細胞の増殖を助けていると考えられる。これらの物質が癌特異的キラー細胞の誘導や機能発現を阻害していると考えられるので、これらを除去すれば、患者の免疫力が高まり、腫瘍の退縮や増殖の抑制が期待できる。
【0004】
プロスタグランジンE2、TNF、インターロイキン6は分子量が3万以下の比較的小さな分子であるので、除去しやすく、膜濾過法でも除去できる。一方、TGFβは単独では分子量25000程度の蛋白質であるものの、血中では他の蛋白質と結合して10万前後の分子量で存在するため、従来の吸着材では吸着除去が困難な物質である。従って、癌患者の血液中から異常に増えたTGFβを効率よく除去できる吸着材は知られていない。また、免疫抑制酸性蛋白は分子量5万程度の蛋白質で、免疫を抑制すると言われており、癌の悪性度のマーカーとして臨床で利用されている。活性炭カラムでの除去も試みられたが、吸着能力が不十分だったためか治療効果が明確でなかった。また、活性炭は粉が出やすいので、直接、血液と接触する用途には向かない。これら免疫抑制物質の除去には、理論上、血漿交換も有効であるが、除去効率が低く、感染の危険が避けがたい本質的な欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、一般的に普及可能であり、体液中から、直接、TGFβや免疫抑制酸性蛋白などの免疫抑制物質を高い効率で選択的に吸着し、かつ、安全に体外循環できる免疫抑制性蛋白質を吸着する材料を充填したカラムを用いて癌の治療を行うことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成をとる。
【0007】
(1)免疫抑制性蛋白質を吸着する材料を充填してなる癌治療用体外循環カラム。
【0008】
(2)該免疫抑制性蛋白質を吸着する材料が潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータを含む免疫抑制性蛋白質を吸着する材料であることを特徴とする(1)に記載の癌治療用体外循環カラム。
【0009】
(3)担癌哺乳動物に対して使用される癌治療用体外循環カラムであって、該カラムにおける潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータの吸着能力が該担癌哺乳動物の体重1キログラムあたり250ng以上である(1)または(2)に記載の癌治療用体外循環カラム。
【0010】
(4)担癌哺乳動物に対して使用される癌治療用体外循環カラムであって、該担癌哺乳動物の体重1キログラム当たり0.5グラム以上の免疫抑制性蛋白質を吸着する材料を充填してなる(1)〜(3)のいずれかに記載の癌治療用体外循環カラム。
【0011】
(5)該免疫抑制性蛋白質を吸着する材料が親水性アミン残基を結合した水不溶性重合体を膜、繊維、粒状物またはこれらの組み立て品に成型したものである(1)〜(4)のいずれかに記載の癌治療用体外循環カラム。
【0012】
(6)該免疫抑制性蛋白質を吸着する材料にヘパリンを吸着させたものである(1)〜(5)のいずれかに記載の癌治療用体外循環カラム。
【0013】
【発明の実施の形態】
続いて、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明でいう、免疫機能抑制蛋白質とは哺乳動物の免疫機能を抑制する蛋白質であって血液中に存在するものをいい、例えばトランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(以下TGFβ)、免疫抑制酸性蛋白、インターロイキン6、腫瘍壊死因子(TNF)などを指す。
【0015】
本発明の癌治療用体外循環カラムに用いられる免疫抑制性蛋白質を吸着する材料としては、免疫抑制性蛋白質を吸着するものであれば良く、吸着能力が大きいほど体外に出す血液量が少なくて済むので、好ましい。その吸着材の吸着能力の目安として、血中のTGFβである潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(以下潜在型TGFβと略記)が基準物質になる。癌治療用体外循環カラムの吸着能力が潜在型TGFβとして、担癌哺乳動物の体重1キログラム当たり250ng以上であることが望ましい。吸着材1グラム当たりの潜在型TGFβ平衡吸着量にカラム充填量グラム数を掛けたものがカラムの吸着能力となる。
【0016】
本発明における潜在型TGFβ平衡吸着量とは担癌ラットの血清1mLに吸着材50mgを入れ、37℃で4時間振とうし、上清中のTGFβ1濃度を測定して、吸着前後の濃度差を吸着材重量(0.05g)で除することにより求めた値である。上清中のTGFβ濃度は、検体血清を酸で前処理して、潜在型TGFβを遊離型のTGFβとした後、抗TGFβ抗体を用いる酵素免疫分析法によって求めることができる。TGFβ1に対しては市販の分析キットが利用できる。
【0017】
本発明の担癌哺乳動物とは、ヒト、猿、牛、馬、犬、猫、豚、羊などの陸生哺乳動物で、腫瘍が出来たものを意味する。
【0018】
本発明の癌治療用体外循環カラムに詰める免疫抑制性蛋白質を吸着する材料の量が少ないほど、体外に出す血液量が少なくて済むので、好ましいが、少なすぎると吸着能力が下がり効果が無くなるし、多すぎると生体への負担が大きくなる。一般に、安全上、体外循環時に体外の回路に回す血液の適正な量は、輸血のための採血が許される200mL以下なら良いとされている。体重60kgのヒトの全血液量は約4.6Lであるので、体外に出す血液量が全血液量の4%以下なら許容されると言うことになる。一方、吸着材をカラムに充填した場合、血液を通すためには空隙率が50%以上必要である。これらの条件から、カラムに詰める免疫抑制性蛋白質を吸着する材料の量は担癌哺乳動物の体重1キログラム当たり0.5グラム以上、3.5グラム以下が好ましい。
【0019】
本発明癌治療用体外循環カラムの調製は、不織布状、編み地、フィラメント、綿、膜などの形態の免疫抑制性蛋白質を吸着する材料を円筒状のカラムに詰めることで達成される。
【0020】
免疫抑制性蛋白質を吸着する材料の調製は、水不溶性担体と親水性アミンを溶媒中で反応させることにより達成される。用いる水不溶性担体の具体例としてはポリスチレンで代表されるポリ(芳香族ビニル化合物)、ポリ(p−フェニレンエーテルスルホン)や−{(p−C6 H4 )−C(CH3)2−(p−C6H4 )−O−(p−C6 H4 )−SO2 −(p−C6 H4 )−O−}n−(ユーデルポリスルホン)などで代表されるポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンサルファイドなどで、かつ、親水性アミンを固定化できるものがあげられる。親水性アミンを固定化するための反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基などをあげることができる。さらに具体的な例としては、クロルアセトアミドメチルポリスチレン、クロルアセトアミドメチル化したユーデル・ポリスルホン、クロルアセトアミドメチル化したポリエーテルイミドなどがあげられる。さらに、これらのポリマーは有機溶媒に対し可溶であると、成型しやすい利点がある。
【0021】
本発明で言う親水性アミン残基とは、単独では水に溶解もしくは水を溶解するアミンがポリマーに化学的に結合した状態のものを意味する。さらに、親水性アミン残基の親水性アミンとしては、炭素数で言うと、窒素原子1個当たり炭素数18以下であるものがこれに相当する。
【0022】
さらに、親水性アミンの中でも、窒素原子1個当たり炭素数3以上18以下、とりわけ、4以上14以下のアルキル基を持つ第3級アミンから得られる第4アンモニウム基を結合したものが優れている。そのような第3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N、N−ジメチルヘキシルアミン、N、N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミンなどがあげられる。さらに、親水性アミンを構成するアルキル基が親水性基である水酸基やエーテル基を含むもの、例えば、N,N−ジメチル−6−ヒドロキシヘキシルアミンやN,N−ジメチル−4−メトキシブチルアミン等も親水性アミンとして好ましく用いうる。
【0023】
本発明における親水性アミン残基の結合の密度は、水不溶性重合体の化学構造および用途により異なるが、少なすぎるとその機能が発現しない傾向にあり、一方、多すぎると、固定化後の重合体の物理的強度が悪くなり、吸着材としての機能も下がる傾向にあるので、該密度は水不溶性重合体の繰り返し単位あたり0.01〜2.0モル、より好ましくは0.1〜1.0モルが良い。
【0024】
本発明の吸着材の表面積は吸着材1グラム当たり0.1平方メートル以上であることが好ましく、より好ましくは、1平方メートル以上である。ただし無限に大きくはできないので、実際上、限界があり、100平方メートル以下が好ましい。この表面積は窒素ガス吸着法(BET法)で求めることができる。
【0025】
本発明の吸着材は、親水性アミン残基を結合した水不溶性重合体を膜、繊維、粒状物またはこれらの組み立て品に成型するか、あるいは親水性アミン残基を結合した水不溶性重合体を、膜、繊維、粒状物のいずれかの基材に被覆せしめるか、あるいは水不溶性重合体の膜、繊維等の成型品に親水性アミンを結合させるか等により得ることができる。
【0026】
親水性アミン残基を結合した水不溶性担体の成型品の製造には、水不溶性重合体の成型品に親水性アミンの溶液を接触させる不均一系反応の方法と水不溶性重合体の溶液と親水性アミンの溶液を混合して反応させた後、成型する均一系反応の方法とがある。不均一系反応の方法の一例としては、クロルアセトアミドメチル化ポリスルホンの繊維または中空糸などの成型品をジメチルヘキシルアミンやポリアルキレンイミン等のイソプロパノール溶液中に浸し、0〜100℃の温度で反応させることにより、容易に達成される。均一系反応による方法の一例を述べると、クロルアセトアミドメチル化ポリスルホンの溶液中に対応したポリアミンを加えて、0〜100℃の温度で反応させることにより、達成される。その量には特に制限はないが、可溶性のポリマーを得るためにはハロアセトアミドメチル基に対し1倍モル以上用いるのが望ましい。とりわけ、ポリアミンの場合は、可溶性の重合体を得るためには親水性アミンを大過剰用いるのが好ましい。
【0027】
また、反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性の高い溶媒の方が反応が速く進む利点がある。不均一系反応では、親水性アミンが溶ける溶媒であれば良く、特に制限はない。均一系で反応させる場合には、水不溶性担体と親水性アミンの両方が溶解する溶媒、具体的にはテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが好ましく用いらる。また、成型品を表面処理する方法も可能で、そのためには水、メタノール、エタノールなどの、ポリスルホンを溶かさずに親水性アミンを溶かす溶媒が好ましく用いられる。
【0028】
本発明の吸着材のポリマーをポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維などの成型品の表面にコーティングすると、簡単且つ安価に表面積の大きな高次の成型品が得られる利点がある。コーティングは、本発明の吸着材を塩化メチレンやテトラヒドロフランなどの低沸点溶媒に溶かしたものにナイロンの編み地や織物を浸したのち、溶媒を蒸発することにより容易に達成できる。また、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶かしたものを水などのポリマーの貧溶媒に入れる湿式コーティング法も利用できる。コーティングされる成型品のポリマーはポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなど、本発明吸着材ポリマーとの接着性の良いものであれば何でも良く、その種類には特に制限はないが、ナイロン、ポリエーテルイミドなどのアミド系のポリマーが接着性が特に良いので、好ましく用いられる。
【0029】
上記の成型や基材への被覆において、成型品や基材の形態に採用する繊維として、中空糸を用いることも好ましい。この場合、濾過の機能を具備した吸着材が作れるので、人工透析器として、あるいは、血漿分離器として使用しながら免疫抑制物質を除去できる利点がある。
【0030】
本発明の吸着材カラムは癌患者の治療やQOLの向上の目的で、進行癌患者の体外循環治療に用いられる。また、本発明吸着材は、癌切除手術時に出血した血液を返えす際に、免疫抑制性蛋白質を除去しておく目的にも用いることができる。
【0031】
【実施例】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0032】
なお、本実施例中の評価方法は、以下に従った。
1.血液中の成分の分析
TGFβ1濃度はゼンザイム・テクネ社のヒトTGF−β1免疫分析キットを使用して求めた。また免疫抑制酸性蛋白の濃度は、三光純薬社製のラットIAPプレートを使用して求めた。アルブミン濃度はアルブミン分析キットであるアルブミンB−テストワコーで求めた。
2.吸着材のTGFβ平衡吸着能
5匹の担癌ラットの血清を集めて担癌ラット血清30mLを調製した。この血清1mLに吸着材50mgを入れ、37℃で4時間振とうした。上清中のTGFβ1濃度を測定して、吸着前後の濃度差を吸着材重量(0.05g)で除した値をTGFβ平衡吸着能とした。
3.吸着材の調製
(水不溶性担体)
次の成分配置と、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件によって、36島の海島複合繊維であって、かつ、各島が更に芯鞘複合によりなる複合繊維を製造した。
【0033】
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90%、ポリプロピレン10%
海成分;5−ナトリウムスルホイソフタル酸を3%共重合したポリエチレンテレフタレート
複合比率;芯:鞘:海=40:40:20。
この複合繊維の海成分を熱苛性ソーダ水溶液で溶解・除去し、直径4μmの芯鞘型のポリプロピレン補強ポリスチレン繊維(原糸1)を得た。
【0034】
(中間体)
ニトロベンゼン600mLと硫酸390mLの混合溶液にパラホルムアルデヒド3gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、75.9gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、溶解した。この間、温度を5℃以下に保った。得られた溶液に10gの上記で調製した原糸1を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取りだし、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。繊維をメタノールで良く洗った後、水洗し、乾燥して、15.0gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体1)を得た。
【0035】
(親水性アミンの不均一系反応による固定)
N,N−ジメチルヘキシルアミン50gとヨウ化カリウム8gを360mLのDMFに溶かした溶液に5gの中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。繊維を1モル/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥して、7.3gのジメチルヘキシルアンモニウム化繊維(吸着材1)を得た。TGFβ平衡吸着能は500ng/gであった。
【0036】
(スルホン化繊維:比較繊維)
また、パラホルムアルデヒド500mgを溶解した硫酸50mLに、5gの原糸1を浸し、95℃で1時間加熱した後、水洗、1モル/L濃度の食塩水での洗浄、水洗、乾燥を逐次行って、7.3gのスルホン化繊維(比較繊維1)を得た。TGFβ平衡吸着能は0ng/gであった。
【0037】
(担癌ラットの調製)
12週令のWKAH:Hkmラット(雄)の背部皮下に4−ジメチルアミノアゾベンゼン誘発肝癌細胞KDH−8{矢野 諭、北海道医誌、68巻5号、654−664(1993)}を2×108個接種した。癌細胞は100%の確率で生着した。(通常接種1週間後から腫瘍が大きくなり、接種後、5.5週間で死亡する。)
(担癌ラットの調製と体外循環治療)
内径1cm内容積2mlのポリプロピレン製円筒形カラムに吸着材1、比較繊維1またはポリエチレンテレフタレート繊維の不織布を充填して、癌治療用体外循環カラムを調製した。吸着材1を0.46g、0.40g、0.38g、0.21g、0.16g充填したものをそれぞれを実施例1、2、3、4、比較例1とした。また比較繊維1を0.43g充填したものを調製し、比較例2とし、さらに単糸の直径が3.5μmのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布を0.43g充填したカラムを二つ作製し、比較例3、4とした。癌治療用体外循環カラムは体外循環前に1000単位のヘパリンナトリウムを含む生理食塩水で予備洗浄し、さらに500mLの生理食塩水で洗浄して用いた。
【0038】
KDH細胞接種2週間後に2ml/mlの血流で、30分間、体外循環した。大腿動脈から採血し、吸着材カラムを通した後大腿静脈に返血した。体外循環中はヘパリンナトリウム注射液(武田薬品工業(株))を100U/hの速度で持続注入した。
【0039】
体外循環前と後のラットの血液を採取し、血清中のTGFβ1濃度を測定すると共に、癌細胞接種後の生存日数を観察し表1の結果を得た。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1〜4はTGFβ1の血中濃度が低下しており、比較例に比べ寿命も延びている。実施例1〜4と比較例1では体外循環後のTGFβ1の血中濃度と癌細胞接種後寿命が反比例することが分かる。また、TGFβ1の血中濃度の低下は吸着材の使用量に比例して起きることが分かる。比較例ではTGFβ1の血中濃度が下がらず、癌細胞接種後寿命も短かかった。また、治療しない場合の寿命は5.5週であるので、比較例1〜4からTGFβの吸着能の低いカラムで体外循環すると、かえって寿命が短くなることがわかった。
【0042】
【発明の効果】
本発明により、進行癌の治療または患者の延命およびクオリティ・オブ・ライフの向上が可能である。
Claims (6)
- 潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータを吸着する、親水性アミン残基を結合した材料を充填してなる、癌治療用体外循環カラム。
- 担癌哺乳動物に対して使用される癌治療用体外循環カラムであって、該癌治療用体外循環カラムにおける前記潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータの吸着能力が前記担癌哺乳動物の体重1キログラムあたり250ng以上である、請求項1記載の癌治療用体外循環カラム。
- 前記潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータを吸着する材料が、水不溶性重合体を膜、繊維、粒状物またはこれらの組み立て品に成型したものである、請求項1又は2に記載の癌治療用体外循環カラム。
- 前記潜在型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータを吸着する材料にヘパリンを吸着させたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の癌治療用体外循環カラム。
- 前記親水性アミン残基は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N , N−ジメチルヘキシルアミン、N , N−ジメチルオクチルアミン、N , N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミン、N , N−ジメチル−6−ヒドロキシヘキシルアミン、N , N−ジメチル−4−メトキシブチルアミンからなる群から選ばれる親水性アミンから構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の癌治療用体外循環カラム。
- 肝癌治療用である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の癌治療用体外循環カラム。
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