JP4187894B2 - 排煙脱硝方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は排ガス中の窒素酸化物を脱硝する方法に係り、より詳しくは、還元剤としてのアンモニアを用いてガスタービン排ガスに含まれる窒素酸化物を脱硝する排煙脱硝方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガスタービン排ガスには有害な窒素酸化物が含まれ、これを大気中にそのまま放出することは環境汚染の原因となることから、許されない。そこで、この窒素酸化物を低減するために排ガスを導入する排熱回収ボイラに脱硝装置が設けられている。この脱硝装置において窒素酸化物と還元物質とを触媒中で反応させ、無害な窒素と水とに還元してある許容されるレベルに低下させるようにしている。通常、還元物質として使用されるのはアンモニアであり、これまで主として反応に有利なガス状のアンモニアが用いられている。
【0003】
ガス状アンモニアは反応を促し易く好ましいものであるが、有毒性があるなどその輸送および貯蔵において若干の問題があり、最近ではアンモニア水が使用されている。このアンモニア水を用いる場合は窒素酸化物と反応させるのに直接排ガス中に吹き出す方法か、もしくはアンモニア水を何らかの熱源で加熱し、蒸発させてガス状のアンモニアを供給する方法が利用されている。
【0004】
図3に熱源として排ガスを利用するアンモニア気化手段を示している。ガスタービンユニットは圧縮機1と、燃焼器2と、ガスタービン3とからなり、圧縮機1で圧縮された空気は燃焼器2に導かれ、そこで燃料と混合されて燃焼生成ガスとなる。この燃焼生成ガスはガスタービン3に供給されて膨張を遂げ、仕事を行う。この仕事で図示しない発電機が駆動され、電気出力が得られる。
【0005】
仕事を終えた燃焼生成ガスは排熱回収ボイラ4に送られ、蒸気サイクルのための熱源ガスとなる。排熱回収ボイラ4には脱硝装置5が設けられ、この脱硝装置5の上流側にアンモニア注入部6が配置されている。アンモニア気化手段は気化器7と、気化器7に排ガスを導く排ガス管8と、アンモニアを供給する供給管9と、気化したアンモニアをアンモニア注入部6に導く導管10とからなる。排ガス管8の経路には調整弁11およびファン12が設けられている。
【0006】
この気化手段を用いて圧力および温度を適切に保たれた排ガスが排ガス管8を通して気化器7に導入され、供給管9を通して気化器7に送られたアンモニア水が加熱される。この加熱によりアンモニア水が蒸発し、ガス状のアンモニアを得ることができる。
【0007】
また、別のアンモニア気化手段の例を図4に示している。この例では気化器7と結ぶ空気管13の経路に空気を加熱する熱交換器14が設けられる。アンモニア水を希釈する空気はファン12で加圧され、さらに熱交換器14において加熱されて高温となって気化器7に導かれる。この高温の空気でアンモニア水が蒸発し、ガス状のアンモニアを得ることができる。
【0008】
この熱交換器14の熱源媒体には排熱回収ボイラ4で発生する蒸気、もしくは補助蒸気などが使用されている。なお、上記図4に示す例では熱交換器14に代えて、電気ヒータを使用することができ、同様に加熱用空気を加熱することが可能である。
【0009】
このようなアンモニア気化手段を用いて得たアンモニアは導管10を通してアンモニア注入部6に供給され、排ガス中に吹き出させて窒素酸化物との反応に供される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法でアンモニア水を気化させた場合、たとえば排ガス中に硫黄分が含まれていると、アンモニアと硫黄とが反応し、硫安および酸性硫安が生成することがある。この硫安および酸性硫安が生成した場合、これらの物質が排熱回収ボイラ4の過熱器、蒸発器などを構成する伝熱管、あるいは脱硝装置5の触媒等に付着し、伝熱性能および脱硝性能に少なからぬ影響を与える。たとえば、伝熱管に付着した場合、伝熱面の汚れにより熱が伝わりにくくなり、伝熱性能は著しく低下してしまう。また、これらの物質は腐食性があり、伝熱管の表面を腐食させてしまう。
【0011】
一方、アンモニア水の気化のために使用する排ガスは300〜400°Cと高温であり、この高温ガスを加圧して気化器7に送るためにはファン12を運転しなければならず、継続して動力費用が発生する。さらに、空気を加熱するのに排熱回収ボイラ4の発生蒸気を使用するものではガスタービン3の起動時には排熱回収ボイラ4からの蒸気が得られないために、これに代わる、たとえば補助蒸気の供給が欠かせなくなり、補助ボイラの運転を強いられることで、大きな動力費用が発生することになる。
【0012】
一方、空気を加熱するのに電気ヒータを用いるものではヒータの消費電力が著しく大きいために送電端効率の低下が避けられなくなり、好ましくない。
【0013】
そこで、本発明の目的はアンモニア水を気化するのに硫安等の好ましくない物質が生成するのを回避し、かつ外部からのエネルギの投入量を抑制するようにした排煙脱硝方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る排煙脱硝方法は供給された空気を圧縮して吐出する空気圧縮機と、この圧縮機から吐出した空気により燃料を燃焼させる燃焼器と、この燃焼器の燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、このガスタービンの排ガスを導くダクト内にアンモニア注入部および脱硝触媒を配置した排熱回収ボイラと、アンモニア注入部に供給するアンモニアを気化させる気化器とからなり、空気圧縮機からアンモニア水を気化するに足る熱量を有する空気を抽気し、この抽気された空気を気化器内に供給して気化器内のアンモニア水を気化させ、この気化したアンモニアを排熱回収ボイラ中のアンモニア注入部を介して排ガス中に導き、触媒の存在下で窒素と反応させて脱硝することを特徴とする。
【0015】
本発明方法においては空気圧縮機からアンモニア水を気化するに足る熱量を有する空気を抽気し、この抽気された空気を気化器内に供給して気化器内のアンモニア水を気化させ、この気化したアンモニアを排熱回収ボイラ中のアンモニア注入部を介して排ガス中に導き、触媒の存在下で窒素と反応させて脱硝する。
【0016】
このような方法によれば、アンモニア水を圧縮空気で気化させるので、硫安等が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラの過熱器、蒸発器等の伝熱管に付着するのを回避することができ、伝熱性能が低下するのを防ぐことが可能になる。さらに、ユニット内の機器自身で生成する圧縮空気を供給するので、外部からエネルギを投入する必要がなく、過大な動力費用が発生するのを抑えることが可能になる。
【0017】
さらに、本発明の上記と異なる排煙脱硝方法は供給された空気を圧縮して吐出する空気圧縮機と、この圧縮機から吐出した空気により燃料を燃焼させる燃焼器と、この燃焼器の燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、このガスタービンの排ガスを導くダクト内にアンモニア注入部および脱硝触媒を配置するとともに、プラントの運転中に温水が蓄えられる蒸気ドラムを備えた排熱回収ボイラと、アンモニア注入部に供給するアンモニアを気化させる気化器とからなり、気化器に導入されるアンモニア希釈空気を蒸気ドラムから送られるブロー水により加熱し、この加熱された希釈空気により前記気化器内のアンモニア水を気化させ、この気化したアンモニアを排熱回収ボイラ中のアンモニア注入部を介して排ガス中に導き、触媒の存在下で窒素と反応させて脱硝することを特徴とする。
【0018】
本発明方法においては気化器に導入されるアンモニア希釈空気を蒸気ドラムから送られるブロー水により加熱し、この加熱された希釈空気により前記気化器内のアンモニア水を気化させ、この気化したアンモニアを排熱回収ボイラ中のアンモニア注入部を介して排ガス中に導き、触媒の存在下で窒素と反応させて脱硝する。
【0019】
このような方法によれば、アンモニア水を空気で気化させるので、硫安等が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラの過熱器、蒸発器等の伝熱管に付着するのを回避することができ、伝熱性能が低下するのを防ぐことが可能になる。また、アンモニア水の気化のために外部からエネルギを投入する必要がなく、エネルギ消費量を大きく減少させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1において、アンモニア気化手段は気化器7と、空気圧縮機1と気化器7との間を連絡する空気管15と、この空気管15の経路に設けられる調整弁16とを備えている。空気管15はアンモニア水を気化する圧縮空気を抽気して気化器7に導く。調整弁16は供給される空気量を調節する。
【0021】
本実施の形態においては上記アンモニア気化手段を用いてアンモニア水を気化する。プラントの運転中、空気圧縮機1において空気が圧縮される。この圧縮空気は燃焼器2に供給されるが、この圧縮空気の一部を抽気し、空気管15を通して気化器7に導く。この圧縮空気の状態はアンモニア水を気化させるのに必要な次の条件を満たすようにする。すなわち、圧力は約19,613Pa(0.2ata)、温度は約350°C以上に調整される。通常、圧縮機1は無負荷定格速度運転時でアンモニア水を気化可能な状態に到達することから、ガスタービン起動当初より熱源を確保することが可能である。
【0022】
さらに、気化器7においては圧縮空気が保有する熱エネルギで気化器7内のアンモニア水を加熱する。この加熱によりアンモニア水が気化する。発生したガス状のアンモニアを導管10を通して排熱回収ボイラ4内のアンモニア注入部6に供給し、そこを流れる排ガス中に吹き出して窒素酸化物の反応させる。
【0023】
このような圧縮空気を使用する方法においてはアンモニア水を気化する熱源が空気であるので、硫安および酸性硫安が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラ4に流れて伝熱管等に付着するのを回避することができ、伝熱性能が低下するのを防ぐことが可能になる。また、圧縮空気を送るのに圧力を高める必要はなく、ファンなどの加圧手段を用いることなく、必要とされる量の空気を供給することができる。
【0024】
一方、圧縮空気を利用することによるガスタービン出力への実質的な影響は殆どない。たとえば、1300°C級ガスタービンにおいて25wt%濃度のアンモニア水を気化する場合を想定した値を示すと、次のように算定することができる。すなわち、25wt%濃度のアンモニア水の気化潜熱は2,737,644J(654kcal)/kgである。これに対し、圧縮機1の出口における圧縮空気の状態は温度350〜400°C、圧力1,078,731〜1,569,064Pa(11〜16ata)である。
【0025】
この条件における脱硝に必要なアンモニア水流量を0.1kg/sと仮定すると、アンモニア水を気化するのに必要な圧縮空気の流量は0.6kg/sとなる。この流量は圧縮機1の出口における総空気流量400〜600kg/sに対して約0.1%に相当し、圧縮空気の抽気によるガスタービン出力への影響は極めて小さく、実質的に殆どないといえる。
【0026】
本実施の形態によれば、アンモニア水を圧縮空気で気化させるので、硫安等が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラ4の過熱器、蒸発器等の伝熱管に付着するのを回避することができ、伝熱性能が低下するのを防ぐことが可能になる。さらに、ユニット内の機器自身で生成する圧縮空気を供給するので、外部からエネルギを投入する必要がなく、過大な動力費用が発生するのを抑えることができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図2を参照して説明する。アンモニア気化手段は気化器7と、この気化器7に希釈空気を導く空気管13の経路に空気を加熱すための熱交換器17とを備えている。この熱交換器17には熱源としての温水を導く、排熱回収ボイラ4の高圧蒸気ドラム18と結ぶ温水管19が接続されている。この温水管19の経路には供給元弁20が設けられる。また、温水管19に熱源としての蒸気を導く補助蒸気管21が接続されている。補助蒸気管21の経路には供給元弁22が設けられる。
【0028】
本実施の形態では上記アンモニア気化手段を用いて次のようにアンモニア水を気化する。プラントの運転中、排熱回収ボイラ4の高圧蒸気ドラム18に温水が蓄えられている。温水の一部、たとえばブロー水を温水管19の供給元弁20を開き、熱交換器17に供給する。このブロー水をファン12で熱交換器17内に送り、伝熱管内を流動する希釈空気を加熱する。
【0029】
供給されるブロー水の条件はアンモニア水を気化させるのに必要な次の条件を満たすようにする。すなわち、圧力は10,787,315〜12,748,645Pa(110〜130ata)、温度は310〜330°Cである。この条件は1300°C級ガスタービンにおけるブロー水に相当し、空気を加熱するのに十分な熱量を有する。
【0030】
さらに、加熱により温度上昇した空気を気化器7内のアンモニア水中に導き、アンモニア水を加熱する。この加熱によりアンモニア水が気化する。発生したガス状のアンモニアを導管10を通して排熱回収ボイラ4内のアンモニア注入部6に供給し、そこを流れる排ガス中に吹き出して窒素酸化物と反応させる。
【0031】
このような希釈空気を使用する方法においてはアンモニア水を気化する熱源が空気であるので、硫安および酸性硫安が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラ4に流れて伝熱管等に付着するのを回避することができ、伝熱性能が低下するのを防ぐことが可能になる。また、本来廃棄されるブロー水を熱源として利用することから、アンモニア水の気化のために外部からエネルギを投入する必要がなく、エネルギ消費量を大きく減少させることができる。
【0032】
なお、ガスタービン起動時など、必要な量のブロー水の確保が困難であるとき、またはブロー水のみでは気化のために十分な熱量の確保が難しいとき、供給元弁22を開き、外部から補助蒸気管21を通して熱交換器17に補助蒸気を供給するようにする。
【0033】
本実施の形態によれば、アンモニア水を空気で気化させるので、硫安等が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラ4の過熱器、蒸発器等の伝熱管に付着するのを回避することができ、伝熱性能が低下するのを防ぐことが可能になる。また、アンモニア水の気化のために外部からエネルギを投入する必要がなく、エネルギ消費量を大きく減少させることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、アンモニア水を空気で気化させるので、硫安等が生成することがなく、こうした物質が排熱回収ボイラの過熱器、蒸発器等の伝熱管に付着するのを回避することが可能で、伝熱性能が低下するのを防ぐことができる。さらに、アンモニア水の気化のために外部からエネルを投入する必要がなく、過大な動力費用の発生を抑えることができ、またエネルギ消費量を大きく減少させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るアンモニア気化手段を示す系統図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るアンモニア気化手段を示す系統図。
【図3】従来のアンモニア気化手段の一例を示す系統図。
【図4】従来のアンモニア気化手段の他の例を示す系統図。
【符号の説明】
1 圧縮機
3 ガスタービン
4 排熱回収ボイラ
6 アンモニア注入部
7 気化器
15 空気管
17 熱交換器
19 温水管
21 補助蒸気管
Claims (2)
- 供給された空気を圧縮して吐出する空気圧縮機と、この圧縮機から吐出した空気により燃料を燃焼させる燃焼器と、この燃焼器の燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、このガスタービンの排ガスを導くダクト内にアンモニア注入部および脱硝触媒を配置した排熱回収ボイラと、前記アンモニア注入部に供給するアンモニアを気化させる気化器とからなり、前記空気圧縮機からアンモニア水を気化するに足る熱量を有する空気を抽気し、この抽気された空気を前記気化器内に供給して気化器内のアンモニア水を気化させ、この気化したアンモニアを前記排熱回収ボイラ中の前記アンモニア注入部を介して排ガス中に導き、触媒の存在下で窒素と反応させて脱硝することを特徴とする排煙脱硝方法。
- 供給された空気を圧縮して吐出する空気圧縮機と、この圧縮機から吐出した空気により燃料を燃焼させる燃焼器と、この燃焼器の燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、このガスタービンの排ガスを導くダクト内にアンモニア注入部および脱硝触媒を配置するとともに、プラントの運転中に温水が蓄えられる蒸気ドラムを備えた排熱回収ボイラと、前記アンモニア注入部に供給するアンモニアを気化させる気化器とからなり、前記気化器に導入されるアンモニア希釈空気を前記蒸気ドラムから送られるブロー水により加熱し、この加熱された希釈空気により前記気化器内のアンモニア水を気化させ、この気化したアンモニアを前記排熱回収ボイラ中の前記アンモニア注入部を介して排ガス中に導き、触媒の存在下で窒素と反応させて脱硝することを特徴とする排煙脱硝方法。
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