JP4120145B2 - 自動車乗員頭部の保護バッグ、保護装置及び自動車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車乗員頭部の保護バッグに係り、詳しくは自動車の側面衝突時や横転時等にサイドドアの窓及びBピラー等に沿って膨張するバッグに関する。さらに詳しくは、ガス導入口からガスが主気道に導入され、該主気道から複数の小室に導入されるタイプの自動車乗員頭部の保護バッグに関する。また、本発明はこの保護バッグを備えた自動車乗員頭部の保護装置と、この保護装置を備えた自動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のタイプの自動車乗員頭部の保護バッグはWO96/26087に記載されており、とくにそのFIG1及びFIG9に示されている。この公知のバッグの内部は、バッグの上縁に沿ってバッグの車両前方側の端部(前端部)から車両後方側の端部(後端部)まで延在するダクト部(主気道)と、該ダクト部に連なり下方に向って延びる多数のセル部(小室)とからなる。このセル部はバッグの前端から後端にまで多数配列されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
WO96/26087のバッグにあっては、ガスはダクト部の車両後端側からダクト部内に流入し、多数の各セル部に流入するため、すべてのセル部がガスで充満されるまでに要する時間が長い。即ち、バッグの展開終了までに長い時間がかかる。この展開完了に要する時間を短縮するためにはインフレータのガス発生容量を大きくする必要があるが、このようにするとバッグの縫目に過大な応力がかかるようになる。
【0004】
英国特許公報GB2327066Aには、バッグにX字形状の小室を設けることによりバッグの展開完了に要する時間を短くしたカーテンエアバッグが記載されているが、バッグの大部分は小さなセル部で構成されており、バッグの展開完了時間は実際にはそれほど短くはならないものと推察される。
【0005】
本発明は、インフレータの出力を増大させることなく、展開完了に要する時間が十分に短いものとなる自動車乗員頭部の保護バッグと、この保護バッグを備えた保護装置及び自動車を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車乗員頭部の保護バッグは、自動車の室内の天井部と側面部との交叉隅部付近に配置され、ガス導入口から導入されるガスによって該側面部に沿って下方に膨張するバッグであって、該バッグは、自動車の天井部に沿って配置される上辺部と、Aピラーに沿って配置される前辺部と、Cピラー又はDピラーに沿って配置される後辺部とを有しており、該バッグには、該ガス導入口に連なる主気道と、該主気道からガスが導入されて膨張する膨張部とが設けられている自動車乗員頭部の保護バッグにおいて、該膨張部は、Bピラーの上部付近に配置され、該ガス導入口に連通した上部小室と、該上部小室に連なり、Bピラーに重なるようにバッグ下辺部まで下方に延在する中部小室と、該上部小室に連なり、該バッグの前縁と該中部小室との中間付近をバッグ下辺部まで斜め前方に延在する前部小室と、該上部小室に連なり、該バッグの後縁と該中部小室との中間付近をバッグ下辺部まで斜め後方に延在する後部小室との4室からなっており、該保護バッグは、該主気道、該上部小室、該中部小室、該前部小室及び該後部小室以外には膨張する部分を有しておらず、前記主気道は、前記バッグの該前辺部と該上辺部の前部とに沿って延在して、該主気道の延長線方向に延在する前記上部小室に連通しており、該前辺部の下部に前記ガス導入口が設けられており、該主気道と該前部小室との間、前部小室と中部小室との間、中部小室と後部小室との間及び後部小室よりも後方側の4箇所は、膨張しないカーテン部となっており、該カーテン部は、膨張した該上部小室、前部小室、中部小室及び後部小室によって緊張されており、該前部小室の長手方向と該中部小室の長手方向との交叉角度は40〜55°であり、該後部小室の長手方向と該中部小室の長手方向との交叉角度は45〜65°であることを特徴とするものである。
【0007】
かかる本発明のバッグにあっては、その展開終了段階では、膨張した各小室が骨組みのように展開しており、前部小室の前方側、前部小室と中部小室との間、中部小室と後部小室との間及び後部小室よりも後方側のカーテン部がこれらの小室に引張られて所定の張力を与えられている緊張状態(所謂ピンと張った状態)となる。この緊張したカーテン部は自動車の窓に向って移動する乗員の頭部や上半身を受け止める役割を果す。
【0008】
このように、本発明の自動車乗員頭部の保護バッグは、バッグの一部にのみ配置された膨張部を膨張させるものであり、保護バッグの全体の展開完了に要する時間は、すべてのセル部を膨張させる従来例に比べて、著しく短いものとなる。
【0009】
本発明の自動車乗員頭部の保護バッグは、前記ガス導入口に連なり、前記上辺部に沿って延在し、前記上部小室に連通した主気道が設けられており、該上部小室は該主気道の延長線方向に延在する。
【0010】
かかる自動車乗員頭部の保護バッグにあっては、導入口から主気道に導入されたガスは、主気道内を急速に進行して上部小室に流入する。この上部小室は主気道の延長線方向に延在しているので、ガスは主気道内から上部小室内に直進して流入する。このガスは、次いで、その他の各小室を膨らませて展開が完了する。
【0011】
本発明にあっては、バッグは自動車のAピラーに沿って配置される前辺部と、Cピラー又はDピラーに沿って配置される後辺部とを有しており、主気道は該前辺部と上辺部とに沿って延在し、該前辺部の下部にガス導入口が設けられている。
【0012】
本発明の自動車乗員頭部の保護装置は、この保護バッグと、この保護バッグのガス導入口に接続されたインフレータとを備えたものである。本発明の自動車は、この保護装置を備えたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1,2は本発明の実施の形態に係る自動車乗員頭部の保護バッグ1を示すものであり、図1(a)はバッグ1の正面図、図1(b)〜(d)は図1(a)のB−B線ないしD−D線に沿う断面図、図2は保護バッグ1の設置状態を示す自動車内部の側面図である。
【0014】
この実施の形態に係る保護バッグ1は、窓側シート2と室内側シート3とを重ね合わせ、これらシート2,3同士を縫糸Sによって縫合することにより、両シート2,3の間に主気道7及び膨張部(小室8〜11)を形成したものである。符号4は、このバッグ1を自動車のルーフサイドレール32、Aピラー31及びCピラー33に取り付けるための突片、5はこの突片4に設けられたリベット等の留付具の挿通孔を示す。34はBピラー、35はフロントドア、36はリヤドアを示す。
【0015】
上記の主気道7はAピラーに沿う前辺部の下端から上辺部の前部にまでバッグ1の縁部に沿って延在しており、バッグ1の前辺部下端にはガス導入口6が設けられ、インフレータ30が接続されている。
【0016】
なお、このシート2,3同士は縫合以外の接着、溶着などのいずれで接合されても良いが、シート2,3が布とくに合成樹脂コート布よりなる場合には縫合が適切である。
【0017】
前部小室9は、バッグ1の前縁と中部小室10との中間付近を前方斜め下方に延在している。この前部小室9の長手方向と中部小室10の長手方向との交叉角度は40〜55°とくに42〜50°程度が好ましい。
【0018】
後部小室11はバッグ1の後縁と中部小室10との中間付近を後方斜め下方に延在している。この後部小室10の長手方向と中部小室11の長手方向との交叉角度は45〜65°とくに50〜65°とりわけ52〜62°程度が好ましい。
【0019】
本発明では、膨張部は上部小室8、前部小室9、中部小室10及び後部小室11によって構成されている。上部小室8はバッグ1の上辺部に沿って主気道7の延長線方向に延在している。前部小室9、中部小室10及び後部小室11は、それらの上端が上部小室8に連通し、バッグ1の下辺部まで延在している。このうち、中部小室10は、Bピラー34をすっぽりと覆うようにBピラーに沿って延在し、且つBピラー34よりも幅大となっている。
【0020】
このバッグ1は主気道7と小室8〜11以外には膨張部は有しておらず、前部小室9と主気道7との間、前部小室9と中部小室10との間、中部小室10と後部小室11との間及び後部小室11とバッグ後縁との間はそれぞれ膨張しないカーテン部12,13,14,15となっている。このカーテン部12〜15はシート2,3を重ね合わせた構成となっているが、一方のシート2又は3を省略しても良い。また、このカーテン部12〜15においては、シート2,3同士を接着してもよい。
【0021】
このバッグ1は、前部が自動車のAピラー31に沿って折り畳まれた状態で設置され、上辺部がルーフサイドレール32に沿って、また、後辺部がCピラー33に沿って折り畳まれた状態で設置される。
【0022】
折り畳まれたバッグ1はカバー(図示略)で覆われる。このカバーは、バッグ1が膨張するときに裂けるよう構成されている。
【0023】
自動車が側面衝突したり横転すると、インフレータ30が作動し、ガス導入口6から主気道7にガスが流入する。このガスは、主気道7から上部小室8内に流入し、さらに各小室9〜11を膨張させる。
【0024】
上部小室8及び下向きの3個の小室9〜11が膨張すると、各カーテン部12〜15はピンと張った緊張状態となる。この膨張した各小室9〜11とカーテン部12〜15は、窓ガラスに接近する乗員の頭部や上半身を受け止め、乗員の頭部等が車外に出ることを防止する。なお、膨張した小室9〜11に引張られることによりカーテン部12〜15は窓ガラスから所定距離だけ離れて存在する。即ち、カーテン部12〜15は、膨張した小室9〜11の厚みの少なくとも半分の厚み分の距離だけ窓ガラスから離れている。従って、カーテン部12〜15に乗員の頭や上半身が突っ込んできても、カーテン部12〜15はこの頭や上半身が高速度で窓ガラスに当ることを抑制する。また、窓ガラスよりも室内側に出っ張っているBピラー34については、中部小室10によってすっぽりと覆われているから、乗員の頭や上半身がBピラー34めがけて高速移動しても中部小室10によって確実に受け止められる。
【0025】
本発明では、主気道7と各小室8〜11のみを膨張させるため、バッグ1の膨張完了に要する時間が短い。また、インフレータ30の発生ガス圧が小さくてもバッグ1は十分に速く膨張するので、ガスからシート2,3同士の結合部(例えば、縫合部)に加えられる応力が小さくなる。従って、バッグ1に要求される強度が小さくて済むようになり、縫合等の結合が簡単になると共に、シート2,3として薄手で強度が低い素材のものを用いることが可能となる。シート2,3が薄くなると、バッグ1の折り畳んだ収納ボリュームも小さくなる。
【0026】
上記実施の形態にあっては、バッグの後辺部をCピラーに沿って配置しているが、バッグの後辺部をDピラーに沿って配置しても良い。
【0027】
また、本発明にあっては、バッグのガス導入口及びインフレータを車両の後部側例えばCピラー又はDピラーに配置しても良い。
【0028】
本発明では主気道を図示よりも短かくしたり、省略してもよい。例えば、インフレータをBピラーに設け、ガス導入口が直接に上部小室に臨むように設けられてもよい。
【0029】
本発明では、乗員頭部の側方に膨張部が位置するように車種に合わせて該膨張部の位置や大きさを設計するのが好ましい。
【0030】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の自動車乗員頭部の保護バッグは、従来のものに比べ全体として急速に膨張する。また、このため、インフレータとして小容量のものを用いることも可能となる。本発明によると、バッグに加えられる応力を緩和し、バッグの縫合部等の結合部や構成材料の必要強度を低減することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)図は実施の形態に係る自動車乗員頭部の保護バッグの正面図である。(b)〜(d)図は(a)図のB−B,C−C及びD−D線に沿う断面図である。
【図2】実施の形態に係る保護バッグを備えた自動車内部の側面図である。
【符号の説明】
1 自動車乗員頭部の保護バッグ
2 窓側シート
3 室内側シート
4 取付用突片
5 孔
6 ガス導入口
7 主気道
8 上部小室
9 前部小室
10 中部小室
11 後部小室
12〜15 カーテン部
30 インフレータ
31 Aピラー
32 ルーフサイドレール
33 Cピラー
34 Bピラー
Claims (3)
- 自動車の室内の天井部と側面部との交叉隅部付近に配置され、ガス導入口から導入されるガスによって該側面部に沿って下方に膨張するバッグであって、
該バッグは、自動車の天井部に沿って配置される上辺部と、Aピラーに沿って配置される前辺部と、Cピラー又はDピラーに沿って配置される後辺部とを有しており、
該バッグには、該ガス導入口に連なる主気道と、該主気道からガスが導入されて膨張する膨張部とが設けられている自動車乗員頭部の保護バッグにおいて、
該膨張部は、Bピラーの上部付近に配置され、該ガス導入口に連通した上部小室と、
該上部小室に連なり、Bピラーに重なるようにバッグ下辺部まで下方に延在する中部小室と、
該上部小室に連なり、該バッグの前縁と該中部小室との中間付近をバッグ下辺部まで斜め前方に延在する前部小室と、
該上部小室に連なり、該バッグの後縁と該中部小室との中間付近をバッグ下辺部まで斜め後方に延在する後部小室との4室からなっており、
該保護バッグは、該主気道、該上部小室、該中部小室、該前部小室及び該後部小室以外には膨張する部分を有しておらず、
前記主気道は、前記バッグの該前辺部と該上辺部の前部とに沿って延在して、該主気道の延長線方向に延在する前記上部小室に連通しており、該前辺部の下部に前記ガス導入口が設けられており、
該主気道と該前部小室との間、前部小室と中部小室との間、中部小室と後部小室との間及び後部小室よりも後方側の4箇所は、膨張しないカーテン部となっており、該カーテン部は、膨張した該上部小室、前部小室、中部小室及び後部小室によって緊張されており、
該前部小室の長手方向と該中部小室の長手方向との交叉角度は40〜55°であり、
該後部小室の長手方向と該中部小室の長手方向との交叉角度は45〜65°であることを特徴とする保護バッグ。 - 請求項1の自動車乗員頭部の保護バッグと、該保護バッグのガス導入口に接続されたインフレータとを備えた自動車乗員頭部の保護装置。
- 請求項2の自動車乗員頭部の保護装置を備えた自動車。
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