JP4107037B2 - 製膜体 - Google Patents

製膜体 Download PDF

Info

Publication number
JP4107037B2
JP4107037B2 JP2002285362A JP2002285362A JP4107037B2 JP 4107037 B2 JP4107037 B2 JP 4107037B2 JP 2002285362 A JP2002285362 A JP 2002285362A JP 2002285362 A JP2002285362 A JP 2002285362A JP 4107037 B2 JP4107037 B2 JP 4107037B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
refractive index
film
volume
high refractive
fine particles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002285362A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004122364A (ja
Inventor
茂 安藤
雅博 柴戸
敏男 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toto Ltd
Original Assignee
Toto Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toto Ltd filed Critical Toto Ltd
Priority to JP2002285362A priority Critical patent/JP4107037B2/ja
Publication of JP2004122364A publication Critical patent/JP2004122364A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4107037B2 publication Critical patent/JP4107037B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Surface Treatment Of Glass (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスやプラスチックなどの基材に、連続あるいは不連続に分布した波長をもった光の中から特定の波長域の光を反射する波長選択反射などの光学多層膜を形成可能な高屈折率膜を備えた製膜体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学気相反応法を代表とする気相成長法による薄膜成形技術の進歩により、光学的多層干渉膜などの多層膜の研究が活発に行われている。例えば、2色フィルター、コールドミラー、ホットミラーなどには反射または反射防止膜の機能を有する多層干渉膜が用いられている。例えば所望の波長範囲を選択反射するためにガラス基板上に高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜をλ/4なる光学厚みで交互に積層して得られる光の干渉効果を利用した多層膜が知られている。
【0003】
しかしながら例えば、窓ガラスを通して建物の内部に侵入する太陽光中の赤外線を遮断して室内温度の上昇を抑えて省エネルギーを行おうとする利用分野においては遮蔽したい面積が大であることが多く、このような薄膜成形技術を用いた光の干渉効果で実現しようとするならば、非常に高価なものになり経済的に実現することは困難である。
【0004】
また例えば、植物プラントにおいては、赤・遠赤色光可逆的反応の光受容体(フィトクロム)が発芽の生理反応に関与していることが明らかにされており、特定波長を遮蔽することで育成を早めることが期待されている。しかしながら植物プラントなどの利用分野においては遮蔽したい面積が大であることが多く、このような薄膜成形技術を用いた光の干渉効果で実現しようとするならば、非常に高価なものになり経済的に実現することは困難である。
【0005】
また例えば、ビニールハウスではハウス内が高温になりすぎると植物が発病するため、植物育成に必要な青色から赤色波長域は透過し、近赤外域だけを遮蔽することが期待されている。しかしながらビニールハウスなどの利用分野においては遮蔽したい面積が大であることが多く、このような薄膜成形技術を用いた光の干渉効果で実現しようとするならば、非常に高価なものになり経済的に実現することは困難である。
【0006】
また例えば、電子画像表示装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)では、発光体が周辺機器を誤動作させる近赤外線を発生させるため、近赤外域の遮蔽が求められている。しかしながら発光体の近赤外波長を遮蔽して誤動作を抑えるような利用分野においては遮蔽したい面積が大であることが多く、このような薄膜成形技術を用いた光の干渉効果で実現するならば、非常に高価なものになり経済的な負担が大きくなる。
【0007】
以上の例により、光の干渉効果による波長選択反射の機能を有し、利用面積が大であり、経済的に実現可能な製膜体が要望されていることが明らかにされた。この明らかにされた要望を実現するために有用な、高屈折率膜に関する技術提案がいくつもなされている。
【0008】
従来、屈折率が1.7以上の微粒子を含む有機ポリマー樹脂からなる膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では微粒子の添加量が、空気が混入しない65体積%以下が望ましいとし、屈折率が最大2.31の高屈折率被膜が提案されている。特許文献1は提案した膜の構造については言及していないが、記載内容から図1に示すような有機ポリマー101中に微粒子102が散在している状態を提案していると考えられ、図2に示すような微粒子202を含む有機ポリマー201中に空気203が混入した構造は望ましくないとしている。本発明者は屈折率2以上を示した特許文献1に記載の実施例3および5の確認を試行錯誤で試したが再現するに至らなかった。記載とおりの結果が得られなかったのは、本発明者の実験方法に問題があったのではなく、特許文献1に発明の不備があったと考えるに至った。なぜなら特許文献1の実施例3においては屈折率2.7の酸化チタン40体積%と樹脂60体積%に配合したコーティング液を作成し屈折率2.10を得ているが、この実施例3の調合から算術的に求められる屈折率は、熱硬化型アクリル樹脂の屈折率が一般に1.47であるから、式1となり、屈折率1.96にしか成り得ない。
式1 2.7×0.4+1.47×0.6=1.96
さらには、配合表に界面活性剤が酸化チタンに対して2重量%と記載されているが、一般に界面活性剤の比重は1、ルチル型酸化チタンの比重は4.2であるから、体積換算すると8体積%程度となり、式1の結果と合わせると、実施例3の調合から得られる材料の屈折率は1.90を下回る値しか得られない。また実施例5においては屈折率2.2の酸化ジルコニウムと屈折率1.47の紫外線硬化樹脂を配合して屈折率2.14の膜を得ているが、一般に微粒子の最密充填は70%を越えることはなく、式2に示すように、実施例5で得られる材料は最大でも1.98にしか成り得ない。
式2 2.2×0.65+1.47×0.35=1.98
以上、特許文献1の請求項には屈折率2.31の膜を発明したように記載されているが、図1示すような有機ポリマー101中に微粒子102が散在している状態は、以上に述べた理由から、屈折率1.90以上を達成することはできず、特許文献1の発明は未完成であると言わざるをえない。
【0009】
また、従来、粒径100nm以下の酸化チタンと特定の有機シラン化合物とを主成分としたコーティング膜が提案されている(例えば、特許文献2参照)。第9頁に記載されているように特許文献2で述べる屈折率はWaを微粒子の重量%、Wdをバインダーの重量%、fを空隙率として式3で表される。そして式3から屈折率は空隙率fが0の時に最大となり約2に近い値が設定できるとしている。しかしながら屈折率2.05の微粒子を用いて屈折率2の膜を形成するには、膜に空隙など微粒子以外の成分がない、完全に微粒子で緻密化されている必要があるがそのような膜を形成する手段については明記されておらず、実施例においても最大で1.73に過ぎない。
式3
(2.05Wa+1.48Wd)×(1−f)/100+1.00f
なお、式3に示されるWa、Wdは重量%となっているが、理論上、一般には体積%が正しい。以上、特許文献2は、屈折率が1.90以上の膜を提供するものではなく、また高屈折率膜の構造について知見を与えるものでもない。
【0010】
また、従来、シクロヘキサンを主たる溶媒とする樹脂バインダー中に100nm以下の微粒子を60重量%以内の範囲で分散混合することにより、高い屈折率の膜を得ることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。高屈折率膜を得るための実施例の記載がなく期待できる屈折率ならびにその膜構造は予想するしかないが、特許文献3の提案はバインダーに対する微粒子の量が少なく、屈折率1.9以上の高屈折率膜を得ることはできないと推測される。また特許文献3は構造に関する知見を与えないが、微粒子とバインダーの比率から図1に示す構造が示唆される。
【0011】
また、従来、酸化チタン微粒子と有機ケイ素化合物と多官能アクリル化合物を主成分とする組成物で有機無機ハイブリッド膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。酸化チタンの配合比は40から80重量%が最適とし実施例では屈折率1.89を得ている。本発明者が特許文献4にしたがって試験を行ったところでも実施例に記載されている程度の膜しか得ることはできなかった。特許文献4の提案は特許文献3と同じくバインダーに対する微粒子の量が少なく、本発明者が後述する課題の屈折率1.9以上の高屈折率膜を得ることはできないと推測される。また特許文献4は構造に関する知見を与えないが、微粒子とバインダーの比率から図1に示す構造が示唆される。
【0012】
以上に示したように、多数の詳細な検討が行われ様々な特許が出願されているにもかかわらず、光の干渉効果による波長選択反射の優れた機能を有し、利用面積が大であり、経済的に実現可能な製膜体は未だ実在しない。
【0013】
【特許文献1】
特開平08−110401号公報
【特許文献2】
特開昭63−247702号公報
【特許文献3】
特開2000−26773号公報
【特許文献4】
特開2001−164117号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、これら問題を解決し、ガラスやプラスチックなどの基材に波長選択反射などの機能を有する光学多層膜を形成可能な400nmから1200nmの波長域における屈折率が1.9以上の高屈折率膜を備えた製膜体を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明による製膜体によって上記課題が解消され、上記目標が達成された。
【0016】
すなわち本発明においては、上記課題を解決すべく、基材と、該基材の少なくとも一方の面に直接または他の層を介して高屈折率膜を備えた製膜体において、該高屈折率膜はルチル型の結晶構造を有する酸化チタン微粒子(以下、ルチル型酸化チタン微粒子)と、バインダーと、空気とを含む層であって、該高屈折率膜の全体積に占めるルチル型酸化チタン微粒子の体積が40体積%以上であることを特徴とする製膜体を提供する。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、高屈折率膜全体に占めるバインダーが10体積%以上であって、かつ高屈折率膜全体に占める空気が40体積%以下である。
【0018】
また本発明の好ましい態様においては、ルチル型酸化チタン微粒子が複素環系窒素化合物で表面処理されている。
【0019】
本発明に従えば、窓ガラスを通して建物や車載などの内部に侵入する太陽光に含まれる熱線を効率よく遮断して省エネルギーを行い、また植物プラントにおいては特定波長を遮蔽することで育成を早めたり、またビニールハウスにおいてはハウス内が高温になるのを抑制し植物の発病を抑制したり、また電子画像表示装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)においては発光体からの周辺機器を誤動作させる近赤外線を効果的に遮蔽したりすることになる。
【0020】
本発明は、本発明者が湿式塗工方式により400〜1300nmの波長域での屈折率が1.9以上、望ましくは2.0以上の高屈折率膜が製膜可能となれば、優れた光の干渉効果を有し、経済的に実現可能な製膜体を得られることを見出し、苦慮検討を重ねた結果、実現したものである。
【0021】
図3は太陽が天頂にあるときの太陽直達光の入射スペクトルの例である。このうち赤外域が室内温度上昇に関係し、これを遮蔽することで室内温度の上昇を抑えることができる。日本工業規格JIS R−3106に記載された重価係数をもとに赤外の最短波長(760nm)からの累積エネルギー比率を図4に示す。横軸は波長(nm)、縦軸は波長760nmから最長波長3200nmまでの赤外全域の総エネルギーを100としたときの、760nmから各波長までの累積エネルギーである(単位:無次元)。図4から、760から1300nmのエネルギー合計が赤外域全体の約75%を占めていることが読み取れる。本発明者は、この1300nmまでの波長領域を遮蔽することが熱線遮蔽による省エネルギー効果がもっとも効率がよいと考えた。
【0022】
さらには近赤外域(760〜1300nm)の反射率を最大ピーク値で約80%以上にすると体感温度の低下が官能評価により得られた。たとえば8月の午前中の南東方法を向く窓際での体感温度が近赤外域の反射率を最大ピーク値で約80%にまで遮蔽したとき明確な差がでた。
【0023】
以上、望まれる波長選択性能について説明したが、この機能を発現するのに必要となる多層膜構造を光学シミュレーション(FTG Software Associates Film DESIGN Version 2.23.3700)で求めた結果、1.9以上、望ましくは2.0以上の高屈折率層を利用し、6層以上積層した場合に優れた特性が得られることを見出した。図5から図8は高屈折率層と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に8層積層したモデルのシミュレーション結果であり、横軸は波長、縦軸は反射率を示す。屈折率が1.8では反射率が70%にも達しないが、1.9になると約80%の反射率が得られる。図9から図11は高屈折率層(屈折率=2.2)と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に積層したモデルのシミュレーション結果である。積層数が4では反射率が60%にも達していないが、6層になると約80%の反射率が得られる。
【0024】
以上、高屈折率層の屈折率が1.9以上、望ましくは2.0以上である根拠を説明したが、この特性を大なる面積に対して、経済的に発現するのに必要となる材料を理論と実験の両面から苦慮検討した結果、高屈折率膜は、ルチル型酸化チタン微粒子と、バインダーと、空気とを含む層であって、高屈折率膜の全体積に占めるルチル型酸化チタン微粒子の体積が40体積%以上である高屈折率膜であることを突き止めたので、次に詳細に述べる。
【0025】
得られる膜の屈折率は、光の波長より十分に小さい材料で構成されるとき、その膜を構成する材料の体積比とその屈折率を掛け合した値の合計で決定され、例えば膜Eが材料F(体積比率Vf、屈折率nf),G(体積比率Vg、屈折率ng)、H(体積比率Vh、屈折率nh)で構成されているとすれば、膜Eの屈折率neは式4に従う。
式4 屈折率ne=Vf・nf+Vg・ng+Vh・nh
従って高屈折率を得るには高い屈折率の材料を用いる必要があり、本発明者が検討したところ少なくとも一つの材料の屈折率は2.5以上が必要である。屈折率が2.5未満の材料を利用しても目的の屈折率は得られない。高屈折率材料として代表的なものとしてルチル型の結晶構造を有する酸化チタンがあげられる(屈折率=2.7)。ルチル型は高温型の結晶で焼成工程を経、粉砕により微粒子が造られる。従ってルチル型の微粒子は歪んだ形状をしており、焼成することなく形成される膜は疎に充填され、空隙を少なくとも30%以上含むので、微粒子だけで形成された膜の屈折率は最大でも1.8にしか達し得ない。また焼成することなく形成された膜は粒子同士がファンデルワールス力で結合する膜が形成される。
【0026】
本発明者がこれら課題に対して苦慮検討した結果、図12に示すような、ルチル型の酸化チタン微粒子701により骨格を形成し、ルチル型の酸化チタンで形成された骨格でつくりだされた空間702を空気703を残しながらバインダーで埋めることにより、これら課題を解決するに至った。すなわち屈折率2.7のルチル型酸化チタン微粒子で骨格を形成することにより高屈折率材料の体積分率を高め、骨格で形成される屈折率1の空気層を屈折率約1.5のバインダーに置換することにより屈折率を高め、骨格の隙間をバインダーで埋めることにより微粒子からなる骨格の強度が高められる。
【0027】
図13はルチル型酸化チタンの体積割合と、バインダーの体積割合と、空気の体積割合からなる図である。屈折率1.9以上を示す、本発明の好ましい態様における範囲を網で示した。ルチル型酸化チタンは40%以上あることが望ましい。40体積%未満では屈折率を1.9以上にするのが困難になる。
【0028】
高屈折率膜全体に占めるバインダーは10体積%以上であって、かつ高屈折率膜全体に占める空気が40体積%以下であることが望ましい。バインダーが10体積%未満、もしくは空気が40体積%以上では高屈折率膜の強度が得られない。また空気は5体積%以上が望ましい。屈折率の考え方からは空気がないことが望ましいと一般に考えられているが、歪な微粒子で形成された空間をバインダーで埋める本発明においては、空気を5体積%以下にすることは屈折率を高めるには逆効果であると帰結した。なぜならルチル型酸化チタン微粒子で形成された骨格にはバインダーが入り込まない微細な空間が5体積%以上形成される。この微細な空間をバインダーで埋めるような比率で微粒子とバインダーを混合すると、バインダーが入り込まない微細な空間が5体積%以上残ったまま、つまりバインダーが余った恰好になり、その結果微粒子間にバインダーが入り、微粒子の間隔が広がり、微粒子の密度が低下し、屈折率が低下してしまうと推測される。
【0029】
本発明者が苦慮検討した結果、ルチル型酸化チタン微粒子は有機高分子からなる界面活性剤で表面処理し分散させることなく、例えばピリジンなどの複素環系窒素化合物で表面処理して分散させ、骨格を形成するので、微粒子同士は2nm未満に略近接して骨格を形成している。従って、ルチル型酸化チタン微粒子の体積割合は高くなり、また骨格により形成される空隙は小さくなり、高い屈折率を得やすくなる。なおルチル型酸化チタン微粒子にピリジンが表面処理されたか否かは、例えば、赤外分光法による解析で確認することができる。赤外吸収スペクトルを透過法もしくは反射法で測定し、3020から3080cm−1および1600から1450cm−1のピリジン環由来の吸収スペクトルで知ることができる。(参考文献:色材、Vol.57(8)、Page.447−455、1984)
【0030】
例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン(花王(株)製 アミート320)などで代表されるアミン系界面活性剤などの高分子をルチル型酸化チタン微粒子表面に吸着させ立体構造を形成して分散状態を安定させる従来方法をいくら駆使しても、分散原理が有機高分子からなる立体構造にあり、ルチル型酸化チタン微粒子表面に6nm以上の厚みの有機高分子からなる膜が形成され、その結果屈折率が低下し、目標を達成することができない。なお、有機高分子の厚みは、TEMと分散スラリーの粒子径測定との差から求めることができる。(参考文献:色材、Vol.62(10)、Page.587−593、1989)
【0031】
本発明に利用される微粒子は平均粒子直径D50が50nm以下であることが望ましい。50nm以上ではヘイズが大きくなり、不透明になる。
【0032】
本発明により得られた高屈折率膜は、微粒子により骨格を形成するので、例えば湿式塗工などで所定の膜厚みを得ることが容易であり、また得られた膜の厚みは寸法変化しにくい。従って容易に所定の膜厚みに製膜でき、光の干渉効果が得られる。また得られた膜は機械的強度に優れ、多層化が可能となり、例えば低屈折率膜と交互に積層し波長選択反射膜を得ることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の構成要素について説明する。
【0034】
本発明において使用される基材の材質は、特に限定されない。樹脂であれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、再生セルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ナイロン、等が挙げられる。また透明性のある樹脂基材であれば、トリアセチルセルロース、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルブチラールシートなどが挙げられる。また樹脂に限定されず、例えば、ガラス、金属等が挙げられる。また基材の形態はフィルム、バルク体が使用できる。
【0035】
本発明において使用される微粒子はルチル型の結晶構造を有する酸化チタン微粒子に限定される。本発明には400mμから1300mμの波長域の屈折率が2.5以上の材料が必要と前記した。一般には、高屈折率材料として金属の酸化物,窒化物,炭化物,フッ化物などの誘電体を主成分とした単一材料もしくは複合材料があるが、屈折率2.5以上を示す代表的な材料を列記すれば、硫化アンチモン(n=3〜4)、酸化鉄(n=2.7〜3.2)、硫化カドニウム(n=2.4〜2.5)、酸化チタン(n=2.5〜2.9)、硫化鉛(n=3.91)、酸化鉛(n=2.5)、炭化ケイ素(n=2.6)、チタン酸カルシウム(n=2.34)などが挙げられる。しかしながら安価で実用的な材料としては、図14に示すように400nmから1300nmの波長域の屈折率が2.7以上であるルチル型の結晶構造を有する酸化チタンである。
【0036】
また、防汚目的であるならば、主成分であるルチル型酸化チタンよりも強い光触媒活性を有するアナターゼ型、ブルッカイト型の結晶構造をもつ酸化チタンを1種類または2種類を添加した混合物を用いることもできる。
【0037】
本発明に好ましいルチル型酸化チタンの形態、および大きさは、粒子直径1〜100nmの微粒子である。より好ましくは、1〜50nm、さらに好ましくは5〜35nmの微粒子である。また、これら平均粒子径D50が異なる2種以上の微粒子を混合させても構わない。そのような成分を用いた場合、製膜構造が緻密であり、透明であり、かつ1.9以上の高い屈折率を有する製膜を実現できる。なお、粒子形状については、球状、またはそれに近い形状であることが望ましい。針状などのアスペクト比が大きな形状である場合、製膜内部の緻密性が低下し高い屈折率の製膜は得られない場合がある。
【0038】
本発明において使用される複素環系窒素化合物は、特に限定されない。ピリジン、3−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンメタノール、ピリジンN−オキシド、4−t−ブチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、2H−ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾールなどが挙げられる。特に、分散性向上に優れ、安価で、入手しやすいピリジンが望ましい。
【0039】
本発明において使用されるバインダーは、特に限定されない。例えば、テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシランがある。また、高重合体としては、メチルシリケート51、エチルシリケート40、コルコート(株)社製のHAS−1、HAS−10などのHASシリーズ、三菱化学(株)社製のMCKシリケートシリーズなどがある。
【0040】
またルチル型酸化チタン微粒子と基材、及びルチル型酸化チタン微粒子同士を強固に結合させ、かつ空隙による屈折率の低下を抑え、かつ必要な柔軟性、可撓性を付与する働きをするバインダーとして、放射線、電子線、紫外線、赤外線、熱のいずれか1種または2種以上のエネルギーを与えることによって、架橋反応を示すような反応性官能基を有する有機ケイ素化合物であることが望ましい。前述した塗膜の物理的・光学的な物性向上のためのバインダーとしての役割以外に、放射線、電子線、紫外線、赤外線、熱などを利用した一般的な湿式硬化システムで架橋反応を起こすような反応性官能基を有する化合物であることが望ましい。このような反応性官能基は、ラジカル反応を起こす官能基、縮合反応を起こす官能基、カチオン性、またはアニオン性反応を示す官能基などであり、化合物の分子構造中に架橋反応の種類が異なる反応性官能基を1種類、または2種類以上の反応性官能基を含有しても構わない。ルチル型酸化チタンの光(紫外線)エネルギーを受けると活性を帯び、強い酸化分解力により有機物を分解するという特性を有する(以下、光触媒活性と称す)ため、その光触媒活性の分解力に耐えうる結合エネルギーを有するSi−O結合を含有する分子構造内に含有する有機ケイ素化合物であることが望ましい。そして、Si−O結合を分子構造中に含む含有率は、これを硬化させた塗膜に含まれるSi−OをすべてSiO2に換算した値で表せば、1〜70wt%であることが望ましい。
【0041】
またバインダーは、一般式(R a-R -Si-X (4-a-b))で表される有機ケイ素化合物(式中、R1は重合可能な反応基を有する炭素数が3以上の有機基を表し、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、X2は加水分解性基、または水酸基を表す。aは1〜3、bは0〜3の整数、0≦a+b≦4である。)および/またはその高重合体であることが望ましい。バインダーは、前述したようにルチル型酸化チタンの光触媒活性の分解力に耐えうる結合エネルギーを有するSi−O結合を含有する分子構造内に含有し、かつ一般的な湿式硬化システムで架橋反応を示すような反応性官能基を有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。その構造で、特にR1の重合可能な反応性官能基には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基などであることが好ましい。特に好ましいのは、(メタ)アクリル基である。これら反応性官能基による重合構造部分が塗膜に必要な柔軟性、可撓性を付与する。また、Xは加水分解可能な官能基、または水酸基である。加水分解可能な官能基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、もしくは、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、もしくは、アシルオキシ基等があげられる。特に好ましいのは、水酸基、またはメトキシ基である。このR、X2の数は塗膜の柔軟性、可撓性や硬度、耐候性などの諸物性のバランスを考慮して好適に決められる。
【0042】
前記有機ケイ素化合物からなるバインダーの具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等がある。
【0043】
本発明には、シロキサン結合のネットワークとビニルポリマー鎖とを結合させて被膜を形成させるために、紫外線や電子線等の高エネルギー線照射によるビニル重合が可能な(メタ)アクリル官能性置換基、及び、架橋反応することが可能な、アルコキシ基等に代表される加水分解性基やシラノール基等とを、同一分子中に含有してもよい。
【0044】
本発明には、架橋剤として作用し、接着性を向上させるために、ケイ素原子を含有しない多官能(メタ)アクリル化合物を含有させても良い。
【0045】
本発明において使用される溶媒は、特に限定されない。具体例としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、t−アミノアルコールブチルセロソルブ、3−メチル−3−メトキシブタノール、ダイアセトンアルコール(DAA)等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類などが挙げられる。好ましい溶媒は、アルコール類、ケトン類であり、特にイソプロパノールが好ましい。またイソプロパノールを主成分とし他のアルコール類、ケトン類、または/およびエステル類を混合した溶媒も好適に用いられる。
【0046】
本発明は、得られる塗膜の着色、製膜性改善のために、別添加剤を添加・分散させることもできる。特に本発明の組成物の耐候性、耐久密着性を向上させる目的で、有機系紫外線吸収剤、紫外線安定剤、光安定剤などを添加してもよい。有機系紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系などが挙げられる。また、紫外線安定剤としては、ピペリジン系などが挙げられる。また、光安定剤としては、ヒンダートアミン系などが挙げられる。
【0047】
次に、本発明の成膜体を用いた波長選択反射膜の製法について低屈折率層を形成する主たる物質がシリカ、高屈折率層を形成する主たる物質がルチル型酸化チタンである場合を例にとり以下に説明する。
まず、基材表面を第1層目として本発明の根幹をなす高屈折率層で被覆する。その方法には以下のような方法がある。例えば、ルチル型酸化チタン微粒子の分散スラリーを湿式成膜方式(例えば、前計量系のリバースロールコータ法、正回転ロール法、グラビアコート法、キスコータ法、ロールディップコータ法、スロットオリフィルコータ法など、後計量系のブレード法、ロッド法、スピンコーティング法、スクリーンコート法など)のいずれかの方法により基材の表面に塗布し、基材の耐熱性に合わせた処理温度で乾燥する。
【0048】
次に、第2層目として低屈折率層で被覆する。その方法は高屈折率層と同様の方法で行うことができるが、例えば分散状態をコントロールすることにより擬凝集にしたシリカゾルスラリーを湿式成膜方式(例えば、前計量系のリバースロールコータ法、正回転ロール法、グラビアコート法、キスコータ法、ロールディップコータ法、スロットオリフィルコータ法など、後計量系のブレード法、ロッド法、スピンコーティング法、スクリーンコート法など)のいずれかの方法により基材の表面に塗布し、基材の耐熱性に合わせた処理温度で乾燥させることにより形成される。このように擬凝集にしたシリカゾルスラリーを用いることで、層中に導入する100nm以下の大きさの空隙量を適宜調整できる。尚、100nm以下の大きさの空隙を導入するにはゾル中のシリカ粒子の平均粒径を100nm以下にする方法を好適に用いることができる。
【0049】
以上に示した膜の形成を繰り返し、6層以上にすることにより、本発明の製膜体を用いた波長選択反射膜が得られる。
【0050】
以上、太陽光の熱線遮蔽を例にとり、760から1300nmの波長を効率よく反射する波長選択反射膜について説明したが、本発明の製膜体はこれに用いることに限定するものではない。
【0051】
例えば、ビニールハウスにおいては、750nm以下の植物の育成に必要な波長域を透過し、ハウス内が高温になり植物の発病を抑制する目的で750nm以上の波長を遮蔽する有益な手段にもなる。
【0052】
例えば、植物プラントにおいては、約700nm近傍を中心に透過と反射をコントロールすることで育成を早められるといわれており、特定波長を80%以上反射し遮蔽することは有益な手段になる。
【0053】
例えば、電子画像表示装置であるプラズマディスプレイパネル(PDP)においては、発光体から発生する近赤外による周辺機器の誤動作を防止するために近赤外域の波長を80%以上反射し遮蔽する有益な手段になる。
【0054】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また本発明では以下の測定手段を用いた。
(平均粒子径)
動的光散乱法によって確認される平均粒子径D50のことであり、例えば、日機装(株)の“マイクロトラップUPA150”によって測定される。
(分散粒子径)
動的光散乱法によって確認される平均粒子径D50のことであり、例えば、日機装(株)の“マイクロトラップUPA150”によって測定されるコロイド状態での粒子を指し、一次粒子,二次粒子は問わない。
(屈折率)
基材の屈折率は多波長アッベ屈折計(例えば、アタゴ製DR―M2)、低屈折率層および高屈折率層は分光エリプソメーター(例えば、JOVIN YVON)などの薄膜屈折率測定手段により測定されるナトリウムD線(波長589nm)に対する値である。
(光学厚み)
分光エリプソメーター(例えば、JOVIN YVON)などの薄膜厚み測定手段により測定される膜厚みに屈折率を乗じた値である。
(反射率)
分光光度計(例えば、日立製U−4000)により測定される入射角度5°に対する値である。
(透過率)
分光光度計(例えば、日立製U−4000)により測定される入射角度0°に対する値である。
(全体積に占めるルチル型酸化チタン微粒子の体積比率)
蛍光X線で得られるルチル型酸化チタンの緻密体換算の厚みを分光エリプソメーターで得られる膜厚みで割った値である。
(全体積に占めるバインダーの体積比率)
前記体積比率と、ルチル型酸化チタンとバインダーの組成比率から算出される値(全体積に占める空気層の体積比率)
100からルチル型酸化チタン微粒子の体積比率とバインダーの体積比率を引いた値である。
(密着性)
クリーニングクロスで1kg加重、10回後、膜厚みに変化がないか確認する。
【0055】
(実施例1)
表1のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で20nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400、有効成分30重量%)1.5重量部、触媒(信越化学工業製DX−2400)0.15重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で16nmに達したのを確認し、これを高屈折率コーティング液Aとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を表2に、断面の電子顕微鏡観察結果を図16に示す。微粒子が40体積%以上、バインダーが10体積%以上、空気が40体積%以下になり、透明性(ヘイズ1.4)、密着性に優れた、屈折率2.17の製膜体が得られた。
【0056】
【表1】
Figure 0004107037
【0057】
【表2】
Figure 0004107037
【0058】
表2と表3に基づいて原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で50nm以下に達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)1.5重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.15重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で50nm以下に達したのを確認し、これを高屈折率コーティング液Bとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を表2に示す。いずれも微粒子が40体積%以上、バインダーが10体積%以上、空気が40体積%以下になり、透明性(ヘイズ2以下)、密着性に優れた、屈折率1.90以上の製膜体が得られた。
【0059】
【表3】
Figure 0004107037
【0060】
(実施例9)
表4のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で20nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)1.8重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.09重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で20nm以下に達したのを確認し、これを高屈折率コーティング液Cとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を表2に示す。微粒子が40体積%以上、バインダーが10体積%以上、空気が40体積%以下になり、透明性(ヘイズ2以下)、密着性に優れた、屈折率2.02の製膜体が得られた。
【0061】
【表4】
Figure 0004107037
【0062】
(実施例10)
表5のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で20nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)1.8重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.09重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で20nm以下に達したのを確認し、これを高屈折率コーティング液Dとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を表2に示す。使用したルチル型酸化チタン微粒子150Wは略直方体の形状をしていたが、微粒子が40体積%以上、バインダーが10体積%以上、空気が40体積%以下になり、透明性(ヘイズ2以下)、密着性に優れた、屈折率1.90の製膜体が得られた。
【0063】
【表5】
Figure 0004107037
【0064】
(比較例1)
表6のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させた。分散粒子径がD50で150nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製X−12−2400)1.8重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.09重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で150nmに達したのを確認し、これをコーティング液Eとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を表2に示す。微粒子が40体積%以下、空気が40体積%以上になり、透明性に欠け(ヘイズ11)、密着性に劣った、屈折率1.70の製膜体が得られた。
【0065】
【表6】
Figure 0004107037
【0066】
(比較例2)
表7のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で100nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)1.8重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.09重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で100nm以下に達したのを確認し、これをコーティング液Fとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を表2に示す。バインダーが10体積%以下、空気が40体積%以上になり、透明性に欠け(ヘイズ8)、密着性に劣る、屈折率1.73の製膜体が得られた。
【0067】
【表7】
Figure 0004107037
【0068】
(実施例11から14)
表8と表9に基づき原料を配合し、ボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で50nm以下に達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)1〜10重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.1〜1重量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で20nm以下に達したのを確認し、これを高屈折率コーティング液Hとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を図17に示す。いずれも微粒子が40体積%以上、バインダーが10体積%以上、空気が40体積%以下になり、透明性(ヘイズ2以下)、密着性に優れた、屈折率1.90以上の製膜体が得られた。
【0069】
【表8】
Figure 0004107037
【0070】
【表9】
Figure 0004107037
【0071】
(比較例3)
表10のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で500nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製X−12−2400)10重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)1重量部配合し、ボールミルにて5時間分散させ、分散粒子径がD50で480nmに達したのを確認し、これを屈折率コーティング液Jとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm2)し、硬化させ、屈折率を測定した。その結果を図17に示す。微粒子が40体積%以下になり、空気が40体積%以下になり、透明性に劣り(ヘイズ21)、密着性に劣る、屈折率1.59の製膜体が得られた。
【0072】
【表10】
Figure 0004107037
【0073】
(実施例15)
本実施例では、低屈折率層、高屈折率層を積層し透明層を形成した。
(基材)
厚み50μm、幅1000mm、長さ500mのPET(帝人ジュポン製 「テイジンテトロン」フィルム 高透明グレード)(以下、#0基材)を用いた。表面はスラリーの濡れ性をよくするためにコロナ放電処理を施した。屈折率は1.62であった。
(低屈折率層のスラリー組成)
粒子径10〜20nm(平均粒子径15nm)のシリカゾル(日産化学工業製「IPA−ST」)1重量部、溶媒としてイソプロピルアルコール(和光純薬製 試薬特級)を10重量部、バインダーとして紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)3〜10重量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.3〜1部を配合しスターラー攪拌し低屈折率層用溶液(#1溶液)を得た。シリカゾル(屈折率1.45)の1次粒子径はほぼ揃っており、また分散粒子径D50が45nmのスラリーを得た。形成される膜はシリカがほぼ充填され、径が15nm以下の気孔を約26%含んだ膜(平均気孔径11nm)を形成し、屈折率が1.35を示した。
(高屈折率層のスラリー組成)
高屈折率コーティング液A(#2溶液)を利用した。
(積層条件)
#0基材にバーコーターにより#2溶液、#1溶液を交互に8層塗布した。各層は、塗布後ただちに100℃で乾燥し、紫外線硬化処理した。
【0074】
得られた製膜体の近赤外波長域(760〜1300nm)、可視光領域(400〜750nm)それぞれの反射率を求めると0.81、0.11が得られる。吸収率が3%程度あり、すなわち近赤外波長域(760〜1300nm)の透過率は16%、可視光領域(400〜750nm)の透過率は86%であった。実施例6で得られた光学多層膜を有するPETフィルムをフロート板ガラス(旭硝子製、厚み3mm)からなる窓ガラスに貼着したところ、室温上昇を貼着前に比較し3℃抑えることができた。また視界良好であり、十分な採光がとれ省エネに役立つことがわかった。
【0075】
【発明の効果】
本発明に従えば、経済的に実現可能な、ガラスやプラスチックなどの基材に波長選択透過、あるいは波長選択反射などの光学多層膜形成可能な高屈折率膜を備えた製膜体および波長選択膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来技術の断面模式図
【図2】 従来技術の参考模式図
【図3】 太陽スペクトル特性を示す図
【図4】 赤外の最短波長(760nm)からの累積エネルギー比率を示す図
【図5】 高屈折率層の屈折率と波長選択反射特性を示す図
【図6】 高屈折率層の屈折率と波長選択反射特性を示す図
【図7】 高屈折率層の屈折率と波長選択反射特性を示す図
【図8】 高屈折率層の屈折率と波長選択反射特性を示す図
【図9】 積層数と波長選択反射特性を示す図
【図10】 積層数と波長選択反射特性を示す図
【図11】 積層数と波長選択反射特性を示す図
【図12】 本発明の高屈折率層の構造を説明する模式図
【図13】 ルチル型酸化チタンとバインダーと空気の体積割合と屈折率1.9以上の領域の関係を示す図
【図14】 ルチル型酸化チタンの400mμから1300mμ波長領域の屈折率を示す図
【図15】 実施例1の断面の電子顕微鏡観察結果を示す図

Claims (6)

  1. 基材と、該基材の少なくとも一方の面に直接または他の層を介して高屈折率膜を備えた製膜体において、該高屈折率膜はルチル型の結晶構造を有する酸化チタン微粒子(以下、ルチル型酸化チタン微粒子)と、有機ケイ素化合物からなるバインダーと、空気とを含む層であって、
    該高屈折率膜の全体積に占めるルチル型酸化チタン微粒子の体積が40体積%以上であり、
    該高屈折率膜の全体積に占めるバインダーの体積が10体積%以上であり、
    該高屈折率膜の全体積に占める空気の体積が5体積%以上40体積%以下である
    ことを特徴とする製膜体。
  2. 前記高屈折率膜全体に占めるルチル型酸化チタン微粒子の体積が40体積%以上85体積%であり、
    前記高屈折率膜の全体積に占めるバインダーの体積が10体積%以上55体積%以下であり、
    前記高屈折率膜の全体積に占める空気の体積が5体積%以上40体積%以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の製膜体。
  3. さらに複素環系窒素化合物を含んでなる、請求項1または2に記載の製膜体。
  4. 前記複素環系窒素化合物はピリジンである、請求項3に記載の製膜体。
  5. 前記複素環系窒素化合物で前記ルチル型酸化チタン微粒子が表面処理されている、請求項3または4に記載の製膜体。
  6. 基材と、該基材の少なくとも一方の面に直接または他の層を介して高屈折率膜を備えた製膜体の製造方法において、該高屈折率膜の形成は、
    ルチル型の結晶構造を有する酸化チタン微粒子と、複素環系窒素化合物と、有機ケイ素化合物からなるバインダーとを含む分散体を塗布する工程と、塗布後に乾燥する工程とを備えてなる、製膜体の製造方法。
JP2002285362A 2002-09-30 2002-09-30 製膜体 Expired - Fee Related JP4107037B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002285362A JP4107037B2 (ja) 2002-09-30 2002-09-30 製膜体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002285362A JP4107037B2 (ja) 2002-09-30 2002-09-30 製膜体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004122364A JP2004122364A (ja) 2004-04-22
JP4107037B2 true JP4107037B2 (ja) 2008-06-25

Family

ID=32278688

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002285362A Expired - Fee Related JP4107037B2 (ja) 2002-09-30 2002-09-30 製膜体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4107037B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012014607A1 (ja) 2010-07-24 2012-02-02 コニカミノルタホールディングス株式会社 近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011175861A (ja) * 2010-02-24 2011-09-08 Kyocera Corp 屋内照明集中制御システム
BE1022168B1 (nl) * 2013-10-11 2016-02-23 A. Schulman Plastics Specifiek gebruik van een bijzonder fijnverdeeld materiaal

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012014607A1 (ja) 2010-07-24 2012-02-02 コニカミノルタホールディングス株式会社 近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004122364A (ja) 2004-04-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4300567B2 (ja) 製膜体
KR101485891B1 (ko) 다공성 층, 그 제조 프로세스와 응용
US9221976B2 (en) Antireflective coatings with self-cleaning, moisture resistance and antimicrobial properties
JP3628692B2 (ja) 高屈折率を有する複合材料、該複合材料の製造方法及び該複合材料を含む光学活性材料
JP5228376B2 (ja) 赤外線遮蔽微粒子およびその製造方法、赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽体、ならびに赤外線遮蔽基材
KR101887245B1 (ko) 무기 산화물 코팅
CN101765791B (zh) 防反射层叠体
JP2004123766A (ja) コーティング用組成物
WO2010055570A1 (ja) 赤外線遮蔽微粒子及びその製造方法、並びにそれを用いた赤外線遮蔽微粒子分散体、赤外線遮蔽基材
JP6274283B2 (ja) 熱線遮蔽分散液、熱線遮蔽分散体、および熱線遮蔽体
WO2005085913A1 (ja) 反射防止フィルムおよびその製造方法
JP4058822B2 (ja) 選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜
CN102135635A (zh) 用于光学带通滤波器的复合颗粒
TW201012882A (en) Coating liquid, cured film, resin multilayer body, method for producing the cured film and method for producing the resin multilayer body
JP4107037B2 (ja) 製膜体
JP6617699B2 (ja) ガラス物品
US11987520B2 (en) Surface-treated infrared absorbing fine particle dispersion liquid and infrared absorbing transparent substrate
JP6171733B2 (ja) 熱線遮蔽分散体形成用塗布液および熱線遮蔽体
JP5471825B2 (ja) 熱線反射積層体及び熱線反射層形成用塗布液
JP2003215328A (ja) 日射遮蔽用微粒子とこの微粒子を含む日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜
JP4415953B2 (ja) 選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜
JP2002053772A (ja) 光触媒を担持してなる構造体
JP2015044922A (ja) 熱線遮蔽分散体、熱線遮蔽分散体形成用塗布液および熱線遮蔽体
Ju et al. Durable Self-Cleaning Radiative Cooling Coatings for Building Energy Efficiency
JP4035702B2 (ja) 熱線遮断材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050308

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070604

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070611

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070809

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080311

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080324

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110411

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120411

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130411

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130411

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140411

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees