JP3995319B2 - 誘電体材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波領域での誘電率(以下、εrと表す。)が比較的大きく、共振周波数(以下、f0と表す。)の温度係数(以下、τfと表す。)の絶対値が小さく、且つ無負荷品質係数(以下、Quと表す。)が大きい、優れた品質の誘電体材料及びその製造方法に関する。本発明の誘電体材料は、多層回路基板、特に高周波領域において使用される共振器、フィルタなどとして使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
高周波領域で使用することができる誘電体材料として、BaO−ZnO−Ta2O5系やBaO−MgO−Ta2O5系の材料が知られている。このような高周波領域で使用される誘電体材料には、
▲1▼εrが大きいこと、
▲2▼τfの絶対値が小さいこと、及び
▲3▼高周波領域でのQuが大きいこと、
を同時に満たすことが要求されている。
【0003】
上記のBaO−ZnO−Ta2O5系及びBaO−MgO−Ta2O5系の誘電体材料は、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3及びBa(Mg1/3Ta2/3)O3の化学組成式で示され、複合ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物で、一般にBZT及びBMTとの略称によって表されている。このBZT系及びBMT系材料は、高いQuを有する優れた誘電体材料であるが、近年、これら材料が使用される周波数領域がマイクロ波帯から準ミリ波帯へと更に高くなってきており、より高いQuを持つ誘電体材料が求められている。これらの誘電体材料は、一般に、1600℃を越える高温での焼成、長時間焼成或いは超高速昇温焼成等、特殊、且つ工業的には好ましくない方法によって製造されている(例えば、特公平6−25023号公報、特開平4−224161号公報、特公平3−51242号公報)。また、これらの誘電体材料に添加物を加え、焼結性を改善する試みもなされている(例えば、特公平1−18523号公報、特公平3−34164号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、εrが20以上と比較的大きく、τfの絶対値が10ppm/℃以下と小さく、且つ空洞開放型誘電体共振器法によって測定したQuとf0との積Qu×f0が20000GHz以上、特に40000GHz以上と大きい誘電体材料を提供することを目的とする。また、焼成後、大気雰囲気等において、焼成温度を少し下回る特定の温度範囲において熱処理することにより、上記の優れた誘電特性を有する誘電体材料を容易に得ることができる誘電体材料の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1発明の誘電体材料は、金属元素として、Ba、Zn、Ta及びKを含み、複合ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合金属酸化物からなる誘電体材料であって、上記Zn及び上記Taのうちの少なくとも一方の一部又は全部が、Zr及びNbのうちの少なくとも1種の元素によって置換されており、且つ、測定周波数3〜6GHzにおいて、誘電率(εr)が20以上であり、共振周波数(f0)の温度係数(τf)の絶対値が10ppm/℃以下であり、空洞開放型誘電体共振器法によって測定した無負荷品質係数(Qu)と共振周波数(f0)との積(Qu×f0)が20000GHz以上であることを特徴とする。
【0007】
第1発明の誘電体材料は複合ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物である。第1発明において、Baの一部は上記「K」によって置換されているが、この誘電体材料のX線回折の結果では、ペロブスカイト型の結晶構造以外のものは認められず、本発明の誘電体材料においては、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3と同様の複合ペロブスカイト型の結晶構造が保たれているものと推定される。
【0008】
また、第1発明において、Zn及びTaのうちの少なくとも一方と置換される各種の上記「元素」は、Zr及びNbである。これらの元素はZn又はTaとの置換が容易であって、ペロブスカイト型の結晶構造が保たれ、優れた誘電特性を有する材料を容易に得ることができる。
【0013】
また、第2発明の誘電体材料の製造方法は、第1発明の誘電体材料の製造方法であって、Ba、Zn、Ta、Kの酸化物又はZr及びNbのうちの少なくとも1種の元素の酸化物若しくは加熱によって酸化物となるBa、Zn、Ta、Kの化合物又は少なくとも1種の上記元素の化合物を混合し、成形した後、1300〜1650℃で焼成し、その後、この焼成温度を50〜250℃下回る温度範囲において、酸化雰囲気下、12時間以上熱処理することを特徴とする。
【0014】
第2発明において、その焼成温度が1300℃未満では、十分に緻密化された焼結体を得ることができず、Quが十分に向上しない。一方、焼成温度が1650℃を越えると、カリウムイオンの揮散が激しくなり、焼結体の表面の多孔質な表面層が生成し易く、Quも十分に向上しない。この焼成温度は1350〜1600℃、特に、第3発明のように、「1400〜1600℃」であることが好ましい。
【0015】
また、緻密化のためには、この焼成温度を1500℃以上、特に1550℃以上とすることが好ましい。一方、焼成温度を1600℃以下とすれば、カリウムイオンの揮散を抑えることはできるが、1600℃を5℃以上或いは10℃以上下回る温度とすれば、より効率的にカリウムイオンの揮散を抑制することができる。このように焼成温度の範囲を特定することにより、緻密化は十分に進み、且つカリウムイオンの揮散も僅かとなり、優れた性能の誘電体材料を得ることができる。尚、焼成時間は特に限定されないが、1〜4時間、特に2時間程度とすることが好ましい。更に、焼成の雰囲気は酸化雰囲気、例えば大気雰囲気とすることができ、水素を加えた還元雰囲気としてもよい。
【0016】
また、第2発明において、その熱処理温度が焼成温度を50℃以上下回らず、高温である場合は、粒成長により粗大粒が生成し易くなり、不均質な材料となり易い。一方、この熱処理温度が焼成温度を250℃を越えて下回る低温である場合は、得られる誘電体材料の結晶構造が長周期の超格子構造とならず、Quを十分に向上させることができない。この熱処理温度は焼成温度を70〜200℃、特に70〜150℃下回る温度範囲、更には第4発明のように、「80〜150℃下回る温度」とすることが好ましい。例えば熱処理温度を焼成温度より100℃程度低い温度とすることにより、上記の超格子構造を有する誘電体材料を容易に得ることができる。
【0017】
更に、熱処理の雰囲気は「酸化雰囲気」であり、例えば第5発明のように、「大気雰囲気」とすることができる。大気雰囲気は特別な操作、装置等を要することなく好ましい。しかし、この酸化雰囲気中の酸素の分圧を大気よりも高くすることによって、より優れたQuを有する誘電体材料が得られ、誘電特性の観点からはより酸素分圧の高い酸化雰囲気とすることが好ましい。また、熱処理の時間が12時間未満の場合は、結晶構造の多くの部分を超格子構造とすることができず、Quの向上が不十分となる。熱処理時間は特に15時間以上、更には18時間以上とすれば、所期の目的が十分に達せられる。この熱処理時間は24時間で十分であり、更に長時間、例えば48時間程度とすることもできるが、性能向上の点からはそれほどの意味はない。
【0018】
BZT系誘電体材料に代表される複合ペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物において、KがBaと置換されることにより、何故そのQuが向上するのか、現時点では理由は明確になってはいない。一つの考えとしては、BZT系誘電体材料の複合ペロブスカイト型の結晶構造中に、同じくペロブスカイト型の結晶構造を有するKpTaOqが固溶し、BZT系誘電体材料の結晶構造がより長周期の超格子構造となることで、Quが高くなるものと推測される。また、不定比組成のKpTaOqが結晶構造中に共存した場合は、空孔も規則的に配列し、超格子構造が形成されることに加えて、空孔が存在することにより、焼成工程においてイオン、元素等の移動が速められ、緻密化が促進されていくものと考えられる。この緻密化促進の効果によって、難焼結物質であって、従来、長時間焼成或いは超高速昇温焼成により緻密化させていたBZT系材料及びその置換材料を容易に緻密化させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実験例1〜48
(1) 誘電体材料の製造
表1、表2、表3及び表4に示す実験例1〜48の組成となるように市販のBaCO3、ZnO(又は下記の各酸化物)、Ta2O5及びK2CO3粉末を秤量した。その後、混合粉末をボールミルに投入し、エタノールを加えて湿式混合した。尚、表1、表2、表3及び表4において、混合比率はすべて酸化物換算で示してある。また、ZnO及びTa2O5に代えて、▲1▼実験例13、27及び36〜39ではMgO、▲2▼実験例14及び32、33ではZrO2、▲3▼実験例15ではSnO2、▲4▼実験例28、29ではNiO、▲5▼実験例30、31ではGa2O3、▲6▼実験例34、35ではNb2O5、▲7▼実験例40〜48ではMgO及びSnO2を配合した。更に、実験例11及び12では、K2CO3に代えて、それぞれNa2CO3又はLi2CO3を用いた。
【0020】
湿式混合により得られたスラリーを乾燥させ、1100℃で2時間仮焼した後、この仮焼粉末にワックス系バインダ、ポリカルボン酸系とアミン系の混合分散剤及びエタノールを加え、再びボールミルにより粉砕し、混合した。次いで、得られたスラリーを乾燥させ、造粒した後、1GPaの圧力下、直径23mm、厚さ12mmの円柱状に成形した。その後、この円柱状の成形体を15GPaの圧力下、等方静水圧プレス(CIP)処理した。次いで、このCIP処理後の成形体を大気雰囲気下、実験例24、27〜48では1600℃、実験例25では1650℃、実験例26では1700℃、その他の実験例では1550℃でそれぞれ2時間保持して、焼成し、引き続いて温度を1450℃に下げ、24時間熱処理した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
(2) 誘電体特性の評価
上記のようにして得られた誘電体材料を、粒度#200のレジンボンド砥石を用いて平面研削或いは鏡面研磨した後、平行導体板型誘電体共振器法(TE011モード)及び空洞開放型誘電体共振器法(TE01δモード)により、測定周波数3〜6GHzにおいて、εr、Qu及びτf(温度範囲:25〜80℃)を測定した。その結果を表5、表6、表7及び表8に示す。尚、これらの各表において誘電損失に関する特性の結果はQu×f0で表した。f0はQuを測定する際の共振周波数であるが、Quの測定毎に多少の変動がある。そのため、このQuとf0との積による表現がより正確に誘電損失を表すものである。また、表1〜8において、ApTaOqのAはアルカリ金属、即ちK、Na又はLiを表す。また、表5、表6、表7及び表8において、平研は平面研削を、鏡研は鏡面研磨を意味する。
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【表7】
【0029】
【表8】
【0030】
これらの各表の結果によれば、pは1.00であるものの、KpTaOqの量比が0.25モル%と低い実験例2では、τfの絶対値は非常に小さいものの、Qu×f0は30000GHz程度とやや低い。しかし、Kを含まない実験例1に比べれば、τfとともにQu×f0も大きく向上している。また、pが1.00〜1.70であって、KpTaOqの量比が0.5モル%以上である実験例3〜4、8〜10、13〜16、21〜35、37〜39及び41〜48では、1700℃で焼成した実験例26を除いて、Qu×f0は37700〜143700GHzの範囲となっており、優れた誘電特性を有する誘電体材料が得られていることが分かる。特に、母材組成としてBZTを選択した場合、pが1.25〜1.70の実験例9〜10、14〜16、24〜26及び28〜35では、Qu×f0は71100〜112600GHzとなっており、より優れた誘電特性を有するものであることが分かる。
【0031】
一方、Kを含まない実験例1、36及び40では、同じ母材組成で且つKを含む系に比べてQu×f0は非常に劣っていることが分かる。即ち、実験例1と24、実験例36と27及び実験例40と47を比較すれば明らかなように、Kを添加した系では母材組成にかかわりなくQu×f0が向上していることが分かる。尚、母材組成により、KpTaOqの最適添加量及びp値は多少異なる。
【0032】
また、pが1.00未満である実験例5〜7では、τfの絶対値は小さいが、TE01δモードによるQu×f0(以下、Qu×f0はTE01δモードによる値とする。)は15000〜20000GHz程度であり、十分な性能ではないことが分かる。更に、pが2.00である実験例17では、τfの絶対値は非常に小さいが、Qu×f0は5000GHz未満と非常に低く、εrも比較的小さくなっている。尚、pが3.00である実験例18では、共振微弱のため誘電特性の測定ができず、pが4.00である実験例19とpが5.00である実験例20では、焼成中にクラックが発生し、いずれも評価に値しない結果となっている。
【0033】
更に、同様の組成で焼成温度の異なる実験例9及び24〜26においては、1600℃で焼成した実験例24のQu×f0が最も高く、100000GHz以上と極めて高い値となっており、1550℃で焼成した実験例9のQu×f0も90000GHzを越えている。一方、焼成温度が1700℃と高い実験例26では、焼結体の表面が溶融する現象がみられ、1650℃で焼成した実験例25では、Qu×f0は高いものの、焼結体の焼き肌面にKが揮発したことによるものと考えられる微細なクラックが生じた。これらの結果から、焼成温度は1550〜1600℃の範囲が好ましいことが分かる。
【0034】
また、実験例14、27〜35及び41〜45のように、Zn及びTaのうちの少なくとも一方の一部又は全部を前記の他の元素によって置換することにより、高いQu×f0を維持しつつ、τfをある程度任意の値に調整することができる。即ち、Zn及びTaの一部をZrで置換し(実験例14及び32〜33)、若しくはTaの一部をNbで置換する(実験例34〜35)ことによって、τfを置換量に応じて正の側へシフトすることができる。尚、Znの一部をNiで置換し(実験例28〜29)、若しくはZn及びTaの一部をGaで置換する(実験例30〜31)ことによって、τfを置換量に応じて負の側へシフトすることができる。更には、実験例27及び41〜45のように、Mg、Sn、Taの比率を調整することにより、τfを制御することもできる。
【0035】
更に、実験例13、27、37〜39及び41〜48のように、Zn及びTaのうちの少なくとも一方の全部を前記の他の元素によって置換することにより、高いQu×f0を維持しつつ、εrをある程度任意の値に調整することもできる。即ち、実験例13、27及び37〜39では、Znの全部をMgで置換することによって、εrをシフトさせることができることが分かる。また、実験例41〜48のように、Znの全部及びTaの一部をMg及びSnで置換した場合にもεrをシフトさせることができる。更に、本発明では、Zn及びTaの一部をZr、Ga等、価数の異なる元素で置換することもでき、その場合もまったく同様に優れた性能の誘電体材料を得ることができる。
【0036】
また、Baと置換する元素をKから同じアルカリ金属であるNa又はLiに代えた実験例11及び12では、pはいずれも1.44であり、ApTaOqの量比も2.50モル%と好ましい範囲であるにもかかわらず、Qu×f0は非常に低い。このように同じアルカリ金属とはいえ、Kのみが所期の効果を奏するものであり、Na及びLiは用いても効果を奏さないことが分かる。尚、平面研削と鏡面研磨とでは、多くの場合、鏡面研磨した試片のQu×f0が若干高いようである。しかし、必ずしもそうではない場合もある。
【0037】
(3) pとQu×f0及びτfとの相関
上記の表5及び表6において、母材組成がBa(Zn1/3Ta2/3)O3であって、pが0.50〜2.00の範囲にあり、KpTaOqが2.50である実験例5〜10及び16〜17について、pとQu×f0との相関を図1に示す。また、同様にpとτfとの相関を図2に示す。図1によれば、pが1.20〜1.40近傍でQu×f0は極大となり、pが1.00未満及び1.70を越える領域では急激に低下していることが分かる。更に、図2によれば、τfはpが1.20〜1.70の範囲で、その絶対値が1.0未満程度と非常に良好であることが分かる。尚、このτfの場合は、pが小さくなるに連れてその絶対値が大きくなるが、pが2.00の場合も非常に小さな値となっている。また、実験例13、27、37及び38のように、BZT以外の他の母材組成に対しKpTaOqを添加した場合においても、最適値はBZT母材と異なるが、Qu×f0はpの値により変化し、1≦p≦2の間で最高値をとる。
【0038】
(4) BaをKによって置換した場合としない場合のX線回折図形の比較
Kを含有しない実験例1と、pが1.44であり、KpTaOqの量比が2.50モル%である実験例10の誘電体材料について、そのX線回折の結果を図3に比較して示す。その結果、KpTaOqの固溶により回折ピークは若干シフトしているものの、BaがKによって置換された部分を有する実験例10の誘電体材料においても、複合ペロブスカイト型以外の結晶相は生成していないことが裏付けられた。
【0039】
(5) 密度及び収縮率の測定
上記のようにして得られた誘電体材料について、下記の方法によって密度及び収縮率を測定した。
▲1▼密度;アルキメデス法
▲2▼収縮率;{(CIP処理前の成形体の外径−焼結体の外径)/CIP処理前の成形体の外径}×100(%)
結果を表9、表10及び表11に示す。
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
表9、表10及び表11の結果によれば、密度は、共振微弱により誘電特性の測定ができなかった実験例18及びKが添加されていない実験例40が特に低い。収縮率は、Kを含有しない実験例1では、かなり小さな値であり、これはBZT系材料が難焼結物質であり、焼結助剤を用いない普通の焼成では十分に緻密化することが難しいからである。また、Mgを置換導入した実験例13、27及び36〜48では収縮率が大きい。これは出発原料のMgOが微細で嵩高い粉末であったことによる。これら実験例1、13、27及び36〜48以外の各実験例では収縮率にそれほど大きな差はなく、Qu×f0の結果との相関も特にないようである。
【0044】
更に、組成が同じで焼成温度が異なる実験例9及び24〜26においては、焼成温度が高いほど密度が低下する。これは、焼成温度が高くなるにつれてKが揮発し易くなり、焼結体の外周部に多孔質な層が形成され易くなるためである。また、結晶の粒成長によって緻密化が阻害されるためであるとも考えられる。この密度の結果からも、上記の(2) 誘電体特性の評価、の項におけると同様に、焼成温度としては1550〜1600℃の範囲が好ましいことが分かる。
【0045】
(6) Kの分析
実験例8及び23において得られた誘電体材料について、元素の構成をICP分析によって分析した。結果を表12に示す。尚、表12において、理論値は混合比と同じである。また、Kの欄の括弧内は揮散したKの割合である。
【0046】
【表12】
【0047】
表12の結果によれば、Kの分析値及び誘電特性の結果から考え、化学量論的に過剰(p>1.00)に添加されたKが、焼成工程において揮散し、ほぼ化学量論のKTaO3となった場合(p=1.00)に、特にQu×f0の高い誘電体材料が得られるものと推察される。
【0048】
(7) 本発明の誘電体材料を用いて製作した誘電体共振器の一例
図4は、本発明の誘電体材料からなる共振器本体1を備える誘電体共振器の一例を示す説明図である。共振器本体1は、アルミナ基焼結体などからなる支持台2の一端にエポキシ樹脂系接着剤等によって接合されている。また、一体となった共振器本体1と支持台2とは、両端面が密閉された円筒状の金属容器4の内部に収納され、支持台2の他端は金属容器4の底面4aの中央部にPTTFによって接合され、固定されている。
【0049】
【発明の効果】
第1発明の特定の結晶構造を有する誘電体材料は、εrが比較的大きく、τfの絶対値が小さく、且つQu×f0が大きい。また、第2〜5発明の誘電体材料の製造方法によれば、上記の優れた誘電特性を有する誘電体材料を、特に、長時間焼成、超高速昇温焼成などの特殊な、且つ工業的に不利な焼成方法を用いずとも容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】KpTaOqのpと空洞開放型誘電体共振器法によって測定したQu×f0との相関を表すグラフである。
【図2】KpTaOqのpとτfとの相関を表すグラフである。
【図3】実験例1と実験例10の誘電体材料のX線回折の結果を比較して示したチャートである。
【図4】本発明の誘電体材料を用いて製作した誘電体共振器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1;共振器本体、2;支持台、3;接着剤層、4;円筒状の金属容器、4a;金属容器4の底面、5;固定部。
Claims (5)
- 金属元素として、Ba、Zn、Ta及びKを含み、複合ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合金属酸化物からなる誘電体材料であって、
上記Zn及び上記Taのうちの少なくとも一方の一部又は全部が、Zr及びNbのうちの少なくとも1種の元素によって置換されており、
且つ、測定周波数3〜6GHzにおいて、誘電率(εr)が20以上であり、共振周波数(f0)の温度係数(τf)の絶対値が10ppm/℃以下であり、空洞開放型誘電体共振器法によって測定した無負荷品質係数(Qu)と共振周波数(f0)との積(Qu×f0)が20000GHz以上であることを特徴とする誘電体材料。 - 請求項1に記載の誘電体材料の製造方法であって、
Ba、Zn、Ta、Kの酸化物又はZr及びNbのうちの少なくとも1種の元素の酸化物若しくは加熱によって酸化物となるBa、Zn、Ta、Kの化合物又は少なくとも1種の上記元素の化合物を混合し、成形した後、1300〜1650℃で焼成し、その後、この焼成温度を50〜250℃下回る温度範囲において、酸化雰囲気下、12時間以上熱処理することを特徴とする誘電体材料の製造方法。 - 上記焼成温度が1400〜1600℃である請求項2記載の誘電体材料の製造方法。
- 上記熱処理の温度が上記焼成温度を80〜150℃下回る請求項2又は3に記載の誘電体材料の製造方法。
- 上記酸化雰囲気が大気雰囲気である請求項2乃至4のいずれか1項に記載の誘電体材料の製造方法。
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