JP3983056B2 - 再生pet樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)を主成分としたPETボトル、PETフィルム、PET繊維等のPET製品を使用した後の使用済みPET製品や成型屑の粉砕品を再利用する技術に関し、更に詳しくは成形加工性、特に、押出成形加工性に優れた再生PET樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PETボトルに代表されるポリエチレンテレフタレートを材料とするPET製容器は、透明で光沢のある良好な外観が得られること、軽くて丈夫であり落としても割れないこと、耐薬品性に優れること、無臭で食品衛生性にすぐれかつガスバリアー性が高く内容物の保存性が良いこと、焼却しても環境問題を生じないことなどから、飲料用容器や医薬用容器などに急速に普及し、その使用量は年々増加の一途を辿っている。一方で、使用後のPETボトルがゴミとして大量に廃棄されることになり、この廃棄PETボトルの回収、リサイクルの問題が深刻な課題となっている。
【0003】
近年、容器包装リサイクル法が施行され、PETボトルの分別収集が行われるようになり、リサイクル商品への転換が進められるようになってきたが、PET樹脂自身が加水分解による物性低下を引き起こしやすいという欠点を有するため、まだその用途が限られているのが実情である。すなわち、PETボトル粉砕後の洗浄工程において吸収された水分が、その後の乾燥工程においても完全に除去することができないため、このPET粉砕品を加熱溶融してペレット状に加工する際に、加水分解反応による著しい分子量低下を引き起こし、このペレットを用いて成形してなる成形品の物性低下を招くからである。特に、溶融張力が必要とされる押出成形やブロー成形においては、溶融樹脂の自重による垂れ下がり現象(いわゆるドローダウン)が激しいため、成形自体が極めて困難である。
【0004】
使用済のPETボトルを回収し、粉砕、洗浄工程等を経て、フレーク状又はペレット状にリサイクルし、これらの原料から再びPETボトルを再生して使用することは、FDA(Food and Drug Administration)の認可を必要としないモーターオイルや洗浄用ボトルなどの一部製品に限られ、またPETボトル以外への再利用の例としては、繊維、衣類、クッションなどのつめ綿、包装用のバンドやフィルムなど、その大半はドローダウンによる成形性への影響が少ない繊維状や薄肉のバンド、フィルム状の押出延伸加工製品が占めている。その他の用途としては、家庭雑貨、植木鉢、ゴミ容器等の射出成形製品がごく一部あるに過ぎない。従って、膨大な廃棄PETボトルの再利用を促すためには、さらなる大量消費につながる厚肉で大型の押出成形品等への利用拡大が望まれている。
【0005】
前記のような要請に呼応するかの如く、一方で、ダイオキシンや環境ホルモンによる環境汚染が問題視されている塩化ビニル樹脂(以下、PVCという)製品の代替材の需要が急速に高まりつつある。PVCは押出加工性に優れ、軟質のフィルム状製品から硬質のパイプ状製品まで自在に作ることができるという特徴を有し、しかも廉価であることから、ビニールハウス、電線被覆材、水道管、住宅資材等に広く用いられてきた。しかし、環境問題に対する関心が高まる中、他の樹脂への置き換えが急務となっており、PVCに代わる押出成形加工性に優れた廉価で新しい樹脂の開発が社会的要請になっている。
【0006】
PETを含むポリエステル樹脂フィラメントの加水分解反応を抑制させる方法として、ポリエステルとエポキシ化合物を反応させること(特開昭57−161124号公報、米国特許第4071504号明細書など)や、ポリエステルにアルコキシでエンドキャップ可能なポリアルキレングリコールを添加する方法(特開平10−130482号公報)などが提案されているが、使用済みのPET製品の粉砕品の様な低分子量化されたPET樹脂にはその効果は不十分である。
【0007】
また、PET系樹脂の溶融粘度特性を改善する方法として、1分子中に2個以上の酸無水物基を有する化合物をPET系樹脂に混合する方法(特公平5−15736号公報)、これと同様の酸無水物基を有する化合物を特定の金属化合物と組み合わせてPET系樹脂に混練する方法(特公平5−47575号公報)、少なくとも3個のカルボキシル基を有する多価カルボン酸を重合触媒とともにPET系樹脂に減圧溶融混練する方法(特開平10−330498号公報)などが提案されている。しかし、これらの技術は押出発泡成形体を安定的に作るのに適した溶融粘度特性を得ることはできるが、未発泡状態での押出成形ではドローダウンが発生しやすい。
【0008】
さらに、ポリエステル系樹脂の溶融張力、耐ドローダウン性を改善し、かつブロー成形性を改良する方法として、例えば、ポリエステル樹脂に対して、エポキシ基含有スチレン系共重合体を配合する方法(特開平5−301273号公報、特開平5−21433号公報など)や、これと同様のエポキシ基含有スチレン系共重合体と特定のグリシジル基含有芳香族ポリアクリルアミド変性ポリオレフィンを併用する方法(特開平6−145481号公報)、ポリオレフィン系樹脂と特定のグリシジル基を有する変性剤及びビニル系単量体とを反応させて得られるグラフト変性ポリオレフィン系樹脂並びにグリシジル基含有ビニル系共重合体を配合して溶融混練する方法(WO96/26981号公報)が提案されている。しかしながら、これらの技術でも押出成形性の改良効果は不十分で、特に、使用済みのPET製品の粉砕品の様な低分子量化されたPET樹脂を用いた場合には、耐衝撃強度も低く、実用的な押出成形は困難であった。
【0009】
一方、廃棄された成形加工製品からリサイクル用樹脂を回収する方法として、例えば、PET樹脂製品の廃棄物を粉砕した後、その粉砕品にポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、アスファルトなどの熱可塑性材料や改質材料を混合し、スクリュー式押出機で複合材を得る方法(特開平2−215514号公報)が提案されている。しかし、かかる方法で得られた樹脂組成物は溶融張力が低いため、押出成形法により所望の形状の成形品を得ることは実質的に不可能である。また、PET等の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物からなる成形加工製品の粉砕片に、エポキシ基含有エチレン共重合体を溶融混練する方法(特開平6−298991号公報)が提案されている。しかしながら、この方法では押出成形時の流動性が不安定となり、一部ゲル状物が生成するなどして、成形品の外観不良や衝撃強度等の低下を生じるなどの問題があった。
【0010】
また、ポリエチレン樹脂に回収PET製品の粉砕片を任意の相溶化剤とともに溶融混練してなる樹脂組成物が提案されているが(特開2000−256517号公報)、ポリエチレン樹脂が主要成分であり、かつフィルム用途であることから、回収PET製品の大量消費に対する寄与は小さく、またその成形体は、PETが主要成分である場合に比べ耐熱性や剛性が低下するため、その用途は大幅に限定される。
【0011】
加えて、一般的に押出成形においては、吐出速度が遅く、さらに金型口から溶融樹脂が出て冷却工程に至るまでにサイジング工程を経るために、射出成形等に比べ徐冷される傾向にある。このためPET樹脂を用いた場合には徐冷効果による結晶化が進行しやすく、特に厚肉成形品の場合には耐衝撃強度の低下が起こりやすい、という問題点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、廃棄PETボトル等の粉砕品又はその粉砕品を原料として溶融混練された樹脂組成物は、概して溶融張力が低く、特に厚さが1mmを越えるような厚肉で大型の中空パイプやスノコ形状に押出成形をする場合には、ドローダウンが激しく、かかる成形法では所望の形状の成形品を得ることはできなかった。すなわち、廃棄PETボトル等の回収されたPET製品を実用に耐える製品に再利用でき、かつその回収PET製品を十分に消化できるだけの有効な技術は未だ確立されていない状況にある。
【0013】
従って、本発明は、上記PET樹脂組成物の押出成形性や加水分解の問題に鑑み、使用済みの廃棄PETボトル等のPET製品の粉砕品の再利用を拡大するべく検討されたものであって、その目的は、廃棄PETボトル等のPET製品の粉砕品を用い、加水分解による劣化を抑制し、押出成形に好適でかつ機械的特性に優れた再生PET樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、使用済みの廃棄PET製品のPET粉砕品に、ポリオレフィン系樹脂、特定のビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体ということがある)及びエポキシ基含有オレフィン共重合体とビニル系(共)重合体のグラフト共重合体を特定の割合で配合して、PET粉砕品の融点未満の温度で混練することにより、PETの加水分解を抑制することができ、結果として再生PET樹脂組成物の溶融粘度及び溶融張力を押出成形に好適とすることができ、更に再生PET樹脂組成物の安定したモルフォロジーを得ることができるために、再生PET樹脂組成物の成形品が良好な機械的特性を呈することを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明に従えば、(A)使用済みの廃棄PET製品のPET粉砕品100重量部、(B)ポリオレフィン系樹脂3〜60重量部、(C)少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体から成るブロック及び少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体からなるブロックを有するブロック共重合体2〜80重量部並びに(D)エポキシ基含有オレフィン共重合体とビニル系(共)重合体をグラフト共重合体せしめた多層構造重合体1〜50重量部を混練装置を用いて、(B)成分であるポリオレフィン系樹脂の融点以上であって、(A)成分であるPET粉砕品の融点未満の温度で混練することによって得られる再生PET樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0016】
この樹脂組成物は、(A)成分が連続相をなし、その(A)成分の連続相中に(B)成分が分散相として粒状分散され、そしてその(B)成分の分散相中に(C)成分が更に分散した相形態(モルフォロジー)を有する。
【0017】
一般に押出機等を用いた樹脂の混練は、樹脂を高温下で溶融させた状態で行う、いわゆる溶融混練を指すのが常識であるが、本発明者らは、使用済みの廃棄PETボトルなどのPET製品の粉砕品を用いた押出混練方法を検討している中で、適当な剪断力を加えることができさえすれば、PETが融点未満の未溶融状態(固相状態)でも十分に混練をすることができ、また、これによってPETの加水分解反応も抑えられることを見出し、この知見を本発明に応用した。一方、使用済みの廃棄PETボトルの粉砕品から得られる樹脂組成物の耐衝撃特性の改良についての検討を行っている中で、PETボトル粉砕品とポリオレフィン系樹脂、特定のビニル芳香族化合物重合体と共役ジエン化合物重合体のブロック共重合体及びエポキシ基含有オレフィン共重合体とビニル系(共)重合体のグラフト共重合体を特定の割合で組み合わせることにより、耐衝撃性の向上のみならず、溶融安定性の向上にも効果的であることを見出し、両者を結びつけることによって、本発明を完成させた。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明で用いられる(A)成分の使用済みの廃棄PETボトル等のPET製品の粉砕品としては、廃棄物として回収されたPET製品であるボトル、シート、衣類、それにこれら成形品を成形した時に出た成形屑や繊維屑などを、適当な大きさに粉砕したものであれば特に限定はされない。これらの中でも、量的に多い飲料用ボトルの粉砕品を好適に使用することができ、特に、残存飲料のない洗浄された粉砕品が好ましい。粉砕された粉砕品の大きさは、一般に10mm以下であるのが好ましい。混練前の予備乾燥も特に必要としない。また、本発明においては、PETをその融点未満の温度で混練せしめるため、粉砕品の形状は低剪断力でも効率良く変形を受け易いフレーク状又は短繊維状であるのが好ましい。更に粉砕品を溶融混練して再度ペレット状に加工して得られるリペレットも使用することができるが、形状的に混練装置に負荷がかかりやすく、過負荷を避けるために、原材料投入量を少なく制御する必要があり、結果として加工処理能力が低減する。勿論粉砕品の形状をこれらに限定するものでないことはいうまでもない。
【0019】
本発明の(B)成分であるポリオレフィン系樹脂は、本発明の樹脂組成物の溶融粘度の増幅及び(C)成分であるビニル芳香族化合物重合体と共役ジエン化合物重合体のブロック共重合体を(A)成分であるPET樹脂中に粒状分散させる仲介物質として必要な成分であって、その製法や物性には特に限定はなく、エチレン、プロピレン、ブテン−1,3−メチルブテン−1,4−メチルペンテン−1、オクテン−1などのα−オレフィンの単独重合体やこれらの共重合体、不飽和有機カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン、又はこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体などを使用することができる。具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度又は高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのポリエチレン系樹脂。ポリプロピレン単独重合体、マレイン酸などの不飽和有機カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体やランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などが挙げられる。これらは単独でも、二種類以上の組み合わせでも使用することができる。本発明においては、これらの中で、特にHDPEやLLDPE等のポリエチレン系樹脂が好適に使用できる。このポリエチレン系樹脂は、特に制限はなく、広範囲の分子量のものを使用できるが、本発明の樹脂組成物の押出溶融粘度の観点から、JIS−K7210で規定される190℃及び2.16kgf 荷重におけるメルトフローレート(MFR)が好ましくは0.01〜10g/10分、更に好ましくは0.01〜5g/10分のものがよい。さらに、前記ポリエチレン系樹脂の成形加工製品や成形屑等の粉砕品又はそれらを溶融混練して得られるリペレットも好適に使用することができる。なお、ポリオレフィン系樹脂は、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン系化合物共重合体ゴム(例えばEPDMなど)、エチレン−芳香族モノビニル化合物−共役ジエン系化合物共重合体ゴム、これらの水素添加物などのゴム類を含有してもよい。
【0020】
(B)成分であるポリオレフィン系樹脂は、(A)成分である使用済み廃棄PETボトル等のPET粉砕品100重量部に対し、3〜60重量部、好ましくは5〜50重量部配合する。(B)成分の配合量が3重量部未満では溶融粘度が低く、ドローダウンしやすいため、押出成形性が損なわれ、また(B)成分の配合量が60重量部よりも多いと、得られる樹脂組成物の曲げ強度や弾性率等の機械強度が低下するので好ましくない。
【0021】
本発明で(C)成分として使用するブロック共重合体は、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性付与のために必要な成分であって、少なくとも1個のビニル芳香族化合物の重合体から成るブロックと少なくとも1個の共役ジエンの重合体から成るブロックを有するもので、好ましくは、共役ジエン化合物重合体ブロックの少なくとも一部が水素添加により飽和されているブロック共重合体である。
【0022】
本発明のブロック共重合体の構成単位であるビニル芳香族化合物としては、芳香族部が単環でも多環でもよく、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の1種又はそれ以上をあげることができ、中でもスチレン及び/又はα−メチルスチレンが好ましい。
【0023】
また、本発明のブロック共重合体の構成単位である共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(通称、イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の1種又はそれ以上をあげることができ、これらの中でも1,3−ブタジエン、イソプレン及びこれ等の組み合わせが好ましい。前記ブロックにおけるミクロ構造は任意に選ぶことができ、例えばポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ビニル結合含有量が好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは25〜40重量%である。
【0024】
本発明のブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとの結合形態は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、これらの中でも直鎖状の結合形態が好ましい。ブロック共重合体の例としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックをXで、共役ジエン化合物重合体ブロックをYで表したときに、X(YX)m、(XY)n又はY(XY)p(ここでm,n及びpは1又はそれ以上の整数である)で示される結合形態を有するブロック共重合体を挙げることができる。その中でも、2個又はそれ以上のビニル芳香族化合物重合体ブロックXを1個又はそれ以上の共役ジエン化合物重合体ブロックYが直鎖状に結合したブロック共重合体、特にX−Y−X型のトリブロック共重合体を用いるのが好ましい。
【0025】
上記したブロックYにおいては、共役ジエン化合物に基づく残留不飽和結合の水素添加による飽和は特に必要ではないが、加熱溶融時の熱安定性や成形加工品の耐熱性、耐候性低下防止の観点から、その少なくとも一部が水素添加されたものが好ましい。残留する不飽和結合の50%以上、好ましくは80%以上が水素添加され、共役ジエン化合物を主体とする重合ブロックを形態的にオレフィン性化合物重合体ブロックに変換させたものを好適に使用することができる。具体的には、例えば部分水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、部分水添スチレン−イソプレンブロック共重合体、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体)、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)等が挙げられ、これらの中でもSEBSやSEPS等の直鎖状のX−Y−X型結合形態のブロック共重合体が最も好ましい。また、ビニル芳香族化合物又は共役ジエン化合物に基づく残留不飽和結合が水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を有する化合物又はそれらの誘導体で変性されたブロック共重合体であってもよい。
【0026】
本発明のブロック共重合体においては、全構造単位に対して、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量が10〜60重量%(共役ジエンに由来する構造単位の含有量が90〜40重量%)であることが好ましく、15〜40重量%(同85〜60重量%)であることが更に好ましい。この好ましい範囲を逸脱すると、本発明の樹脂組成物のモルフォロジーが不安定化し耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0027】
成分(C)のブロック共重合体の数平均分子量は、小さすぎるとブロック共重合体自体の破断時の強度、伸度等の機械的性質が低下し、組成物とした場合にその強度を低下させるおそれがあり、また大きすぎると加工性が悪くなり、十分な性能を有する組成物が得られないおそれがあるので、数平均分子量は30,000〜500,000の範囲にあるのが好ましく、更に好ましくは50,000〜300,000の範囲である。
【0028】
これらブロック共重合体の製造方法としては上記した構造を有するものであれば、どのような製造方法で得られるものであってもよく、また成分(C)は、上記のブロック共重合体を一種又はそれ以上含むことができる。
【0029】
成分(C)のブロック共重合体は成分(A)の使用済みの廃棄PETボトル等のPET製品の粉砕品100重量部に対し、2〜80重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部の範囲で配合される。成分(C)の配合量が少な過ぎると、得られる樹脂組成物の耐衝撃強度が十分でなく、逆に多過ぎると、得られる樹脂組成物が柔軟化し、機械的強度、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0030】
次に、本発明で(D)成分として用いられるエポキシ基含有オレフィン共重合体とビニル系(共)重合体とをグラフト共重合せしめた多層構造重合体について説明する。この(D)成分は、(A)成分であるPET樹脂の増粘作用と、(A)成分中への(B)成分分散の安定化及び(B)成分中への(C)成分の分散安定化のために必要なものである。この多層構造重合体を構成するエポキシ基含有オレフィン共重合体は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、高圧ラジカル重合によるオレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との二元共重合体及び更に他の不飽和単量体が加わった三元又は多元の共重合体が挙げられる。この重合体において、オレフィンとしては特にエチレンが好ましく、エチレン60〜99.5重量%、グリシジル基含有単量体0.5〜40重量%、他の不飽和単量体0〜39.5重量%という構成であることが好ましい。また不飽和グリシジル基含有単量体としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル及びα−クロロアリル、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸等のグリシジルエステル類又はビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、p−グリシジルスチレン等が挙げられるが、特に好ましいものとしては、メタクリル酸グリシジル、アクリルグリシジルエーテルを挙げることができる。他の不飽和単量体としては、オレフィン類、ビニルエステル類、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸又はその誘導体から選ばれた少なくとも一種の単量体で、具体的にはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のオレフィン類、スチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルベンゾエート等のビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、2−エチルヘキシル−、シクロヘキシル−、ドデシル−、オクタデシル−等のエステル類、マレイン酸、マレイン酸無水物、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸モノ及びジ−エステル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類及びアクリル酸アミド系化合物が挙げられ、これらの中でアクリル酸エステルが特に好ましい。
【0031】
上記エポキシ基含有オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−一酸化炭素−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。これらの中でもエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましい。これらは一種に限らず二種以上を混合して使用することもできる。
【0032】
その他の好ましいエポキシ基含有オレフィン共重合体としては、従来のオレフィン単独重合体又は共重合体に不飽和グリシジル基含有単量体を付加反応させた変性体を挙げることができる。この場合のオレフィン単独重合体又は共重合体としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等の単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等のエチレンを主成分とする他のα−オレフィンとの共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のプロピレンを主成分とする他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸のメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、ブチル−等のエステルとの共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、更にはエチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン−共重合ゴム等のゴム状共重合体も挙げることができる。
【0033】
本発明において(D)成分として使用される多層構造重合体中のもう一つの構成要素であるビニル系(共)重合体としては、具体的には、スチレン、核置換スチレン、例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン、α−置換スチレン、例えばα−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のビニル芳香族単量体、アクリル酸若しくはメタクリル酸の炭素数1〜7のアルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸のメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、ブチル−等の(メタ)アクリル酸エステル単量体、アクリロニトリル若しくはメタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸及びそのアミド、イミド、エステル、無水物等の誘導体のビニル単量体の一種又はそれ以上を重合して得られた(共)重合体である。これらの中でも、ビニル芳香族単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体及びビニルエステル単量体が好ましく使用される。本発明においては、ビニル芳香族単量体が最も好ましく用いられ、その数平均分子量は10〜15000、好ましくは50〜10000である。数平均分子量が10未満であると、本発明の樹脂組成物の耐熱性が低下し、また数平均分子量が15000を超えると、成形性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0034】
前記の多層構造重合体を製造する際のグラフト化法は、一般によく知られている連鎖移動法、電離性放射線照射法等のいずれの方法を用いることもできるが、例えば特公平6−51767号公報や特公平6−102702号公報に記載の製造方法を用いるのが好ましい。即ち、エポキシ基含有オレフィン共重合体100重量部を水に懸濁せしめ、別に少なくとも一種のビニル単量体5〜400重量部に、特定のラジカル重合性有機過酸化物をビニル単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部と、10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃であるラジカル(共)重合開始剤をビニル単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100重量部に対して0.01〜5重量部とを溶解せしめた溶液を加え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で過熱し、ビニル単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤をエポキシ基含有オレフィン共重合体に含浸せしめ、その含浸率が初めの50重量%以上に達したとき、この水性懸濁液の温度を上昇せしめ、ビニル単量体とラジカル重合性有機過酸化物とをエポキシ基含有オレフィン共重合体中で共重合せしめて、グラフト化前駆体を得、このグラフト化前駆体を100〜300℃で溶融混練することにより、本発明の多層構造重合体を得る方法である。この方法によれば、グラフト効率が高く、熱による二次凝集が起こらないため、性能の発現がより効果的になる。
【0035】
本発明の多層構造重合体には、特に制限はないが、エポキシ基含有オレフィン共重合体が10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%で、ビニル系(共)重合体が90〜10重量%、好ましくは80〜20重量%である。エポキシ基含有オレフィン共重合体が10重量%未満であると、本発明の樹脂組成物の溶融粘度の増粘効果が不十分であり、また、エポキシ基含有オレフィン共重合体が90重量%を超えると、(C)成分のブロック共重合体との親和性が低下し、ゲル化物が生じやすくなる。
【0036】
本発明において(D)成分として用いられる多層構造重合体の配合量は、(A)成分100重量部当り、1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部である。多層構造重合体の配合量が少な過ぎると、溶融粘度が不十分であり、逆に多過ぎると機械物性や耐熱性が低下するため好ましくない。
【0037】
本発明で用いられる混練装置としては、上記樹脂成分(A)〜(D)を剪断混練りできるものであれば特に制限は無く、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。例えば押出機では、単軸押出機、二軸押出機などのスクリュー押出機、エラスティック押出機、ハイドロダイナミック押出機、ラム式連続押出機、ロール式押出機、ギア式押出機などを挙げることができるが、これらの中でスクリュー押出機、特に二軸押出機が好ましく、より好ましくは脱気効率のよいベント(脱気口)を1つ以上備える二軸押出機である。成分(A)〜(D)の混合順には特に限定はない。
【0038】
本発明に係る樹脂組成物は、上記成分(A)〜(D)の混合物を前記混練装置を用いて(B)成分であるポリオレフィン系樹脂の融点以上であって、(A)成分であるPET粉砕品の融点未満の温度で混練することによって得られる。ここで融点とは、それぞれの成分の示差走査熱量計(DSC)による昇温測定時に発現する結晶融解吸熱ピークの終点温度のことをいう。混練温度が(B)成分の融点未満では(D)成分の反応効率が低下し、(A)成分中への(B)及び(C)成分の分散性が悪くなるので好ましくない。混練温度が(A)成分の融点以上では、PETの加水分解劣化反応が急速に進行し、本発明における樹脂組成物の溶融粘度の低下を招くおそれがあるため好ましくない。二軸スクリュー押出機を用いて混練する場合、混練物が実質的にPETの融点を超えない未溶融状態から半溶融状態で吐出される場合があり、この場合、押出はダイヘッドを開放した状態で行なってもよいし、またダイヘッドを閉めた状態でも、ダイヘッドをPETの融点近傍に設定することで、混練物を一時的に溶融させてストランドとして引くことが可能であり、これを公知の方法でペレタイズすることができる。ダイヘッドを開放状態で行った場合は、その吐出物を粉砕機に通すことで容易に押出成形可能な粒子状に変えることができる。例えば、押出機先端の吐出口直下に粉砕機を設置することによって、連続的に破片粒子化処理まで行うことができる。
【0039】
かかる方法によって得られた本発明の再生PET樹脂組成物は、(A)成分が連続相をなし、その(A)成分の連続相中に(B)成分が分散相として粒状分散され、さらに(B)成分の分散相中に(C)成分が分散したモルフォロジーを有する。(C)成分を含有する(B)成分の分散相の平均粒径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。この分散粒径が5μmを超えると、再生PET樹脂組成物の耐衝撃性が低下するため、好ましくない。
【0040】
さらに、本発明による再生PET樹脂組成物においては、特に制限されることはないが、押出成形性の観点からJIS−K7210で規定される280℃及び2.16kgf 荷重におけるMFRが0.01〜10g/10分であるのが好ましく、0.1〜5g/10分の範囲にあるのが更に好ましい。MFRが0.01g/10分未満では、溶融粘度が高すぎて成形性が損なわれるので好ましくなく、逆にMFRが10g/10分を超えると、ドローダウンが大きくなる傾向になるため好ましくない。
【0041】
また、本発明の再生PET樹脂組成物には、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて樹脂の混合時に、慣用の他の添加剤、例えば顔料、染料、補強材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、粘土鉱物、チタン酸カリウム繊維など)、充填剤(カーボンブラック、シリカ、アルミナ、酸化チタン、金属粉、木粉、籾殻など)、耐熱安定剤、酸化劣化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤等を配合することができ、その配合量も本発明の目的を損わない限り、従来から一般的に使用される量とすることができる。
【0042】
本発明に従った再生PET樹脂組成物は、特に押出成形用途に限定されるものではなく、その使用目的に応じて射出成形やブロー成形においても好適に使用することができる。なお、本発明に従う技術は、使用済み廃棄PET製品等のいわゆるリサイクルPETの使用に限定されず、押出混練や成形加工履歴のないバージンPETに対しても適用可能であることはいうまでもない。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明するが、本発明の技術的範囲が以下の実施例により限定されるものではないことはいうまでもない。先ず、以下の実施例で用いた原材料及び混練装置について説明する。
【0044】
(A)成分:使用済みの廃棄PETボトル粉砕フレーク(R−PET)
よのペットボトルリサイクル(株)製で、一部色付PETや結晶質の蓋用PETの粉砕品が混入しているものを使用した(洗浄品)。なお、このPET粉砕フレークの昇温速度20℃/分におけるDSC法(パーキンエルマー社製DSC7使用)による結晶融解ピークの終点の温度(融点)は263℃であった。
【0045】
(B)成分:ポリオレフィン系樹脂
HDPE:640UF(出光石油化学(株)製、MFR=0.05g/10分)
このHDPEの昇温速度20℃/分におけるDSC法による結晶融解ピークの終点の温度(融点)は133℃であった。
LLDPE:0134(出光石油化学(株)製、MFR=1.2g/10分)
このLLDPEの昇温速度20℃/分におけるDSC法による結晶融解ピークの終点の温度(融点)は125℃であった。
【0046】
(C)成分:ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体
SEBS:Septon8006((株)クラレ製、スチレン含有量33重量%、トルエン溶液粘度42mPa・S(30℃、5重量%))
SEPS:Septon2006((株)クラレ製、スチレン含有量35重量%、トルエン溶液粘度27mPa・S(30℃、5重量%);1220mPa・S(30℃、10重量%))
SEP :Septon1001((株)クラレ製、スチレン含有量35重量%、トルエン溶液粘度70mPa・S(30℃、10重量%))
【0047】
(D)成分:エポキシ基含有オレフィン共重合体とビニル系(共)重合体のグラフト共重合体
EGMA−g−PS:モディパーA4100(日本油脂(株)製、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート含有量15重量%)とポリスチレンのグラフト共重合体、EGMA/PS=70/30重量%)
【0048】
混練装置は(株)日本製鋼所製の減圧ベント付き二軸押出機TEX30α(2条スクリュー、口径32mm、L/D=42)を用いた。この装置のシリンダ部は温調ブロックごとにC1〜C12の12ブロックから成り、C1部に原材料供給口を、C6部及びC11部にベントを設置し、またスクリューの混練部(ニーディングゾーン)をC4及びC10の位置になるように配した。
【0049】
次に、実施例における結果は以下の方法で評価した。
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210に準拠し、メルトインデックサー((株)東洋精機製F−F01)を用いて、280℃及び2.16kgf 荷重の条件でメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0050】
(2)樹脂組成物の機械物性
射出成形機((株)日本製鋼所製J55ELII)を用いて、シリンダ設定温度260℃及び金型温度40℃で、100mm×10mm×4mmの短冊型試験片を成形した。その後、JIS−K7111に準拠してシャルピー衝撃試験(U字ノッチ付き)を、またJIS−K7171に準拠して曲げ試験を行った。
【0051】
(3)押出成形性及び成形品の性能試験
(株)池貝製の単軸押出成形機FS−65(口径65mm、L/D=25、フルフライト)を用い、シリンダ及び金型(ダイ)の設定温度250℃、スクリュー回転数80rpm 、引取り率1.5倍にて、大きさ90mm×40mm、肉厚3mmの断面形状がコの字型のスノコ状成形品に押出成形した。なお押出成形性については、下記の判断基準で評価した。
◎:特に問題はなく、成形性は良好である。
○:ドローダウンは多少あるが、成形性には特に問題なし。
△:ドローダウンが大きく、通常の成形ができない。
手作業にて金型口からの溶融吐出物を支え、性能試験用サンプルを作成した。ただし成形品の形崩れが大。
×:ドローダウンが激しく、成形ができない。
【0052】
(4)押出成形品の性能試験
成形品の性能試験として、長さ500mmに切り出した押出成形品を用いてJIS−A5721に準拠して落球衝撃試験(スパン450mmで支持し、1kgf のおもりを1.2mの高さから落とす)を行った。さらに、耐久疲労試験として、スパン400mmで支持し、その中央部に60kgf の荷重を繰り返し30万回かける試験を行った。何れの試験においても、下記判断基準にて評価を行った。
○:割れや亀裂が発生せず、充分に耐える。
×:割れや亀裂が発生。
【0053】
(5)モルフォロジー
射出成形試験片からクライオミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、酸化ルテニウムで染色後、透過型電子顕微鏡(フィリップス社製、CM−300)を用いてモルフォロジーを観察した。
【0054】
実施例1〜5及び比較例1〜2
表Iに示す量(重量部)の各成分を、二軸押出機の原材料供給口から投下し、下記混練条件にて、混練押出ししてペレットを作成し、射出成形及び押出成形を行った。なお、混練前の原材料の予備乾燥は行わなかった。また射出成形及び押出成形前には予備乾燥として、ペレットを100℃で、4時間乾燥した。
【0055】
【表1】
Figure 0003983056
【0056】
シリンダ設定温度:C1〜C8/C9〜C12/ダイ=150/220/240℃
スクリュー回転数:160rpm
【0057】
比較例3
シリンダ設定温度:C1〜ダイ=280℃
スクリュー回転数:160rpm
以上の評価結果を表Iに示した。
【0058】
実施例1〜3及び実施例4〜5は、それぞれ成分(A)〜(D)の配合量を本発明の範囲内で一定にして、成分(B)及び(C)の種類を変えたものである。成分(B)及び(C)の種類によって、また成分(A)〜(D)の配合量によって、物性に違いは認められるが、本発明に従った組成物は、いずれの場合も押出成形性は良好であり、その性能も満足するものであった。実施例3においては高耐衝撃強度のものが得られ、用途によって適宜選択することができる。
【0059】
比較例1は成分(B)を、そして比較例2は成分(C)を、それぞれ、省いた例である。比較例1では耐衝撃強度は良好であるが、溶融粘度が低めでドローダウンが大きく、押出成形品が得られなかった。比較例2では所望の形状、寸法の成形品はえられなかったものの、成形品は得ることができた。しかし、耐衝撃性が低く実用に耐えるものではなかった。比較例3は、配合量は本発明の範囲に従うものであるが、混練温度が本発明の範囲を逸脱する例である。混練設定温度がPETの融点以上になると、PETの加水分解により溶融粘度が低下し、押出成形加工性が低下する。
【0060】
図1及び図2に、実施例の代表例として、実施例1及び実施例3の樹脂組成物のモルフォロジーの写真を示した。この写真から明らかなように、本発明の樹脂組成物は成分(A)が連続相をなし、この成分(A)の連続相中に成分(B)が粒状分散し、さらにその(B)成分の分散相中に成分(C)が分散したモルフォロジーを形成する。なお、実施例1及び3の分散相(B)の平均粒子径はいずれも約1μmであった。
【0061】
【発明の効果】
上述のように、本発明に従った再生PET樹脂組成物は、PETの加水分解劣化が抑制され、さらに(A)PET樹脂が連続相をなし、そのPET樹脂の連続相中に、(B)ポリオレフィン系樹脂が分散相として粒状分散され、かつそのポリオレフィン系樹脂の分散相中に、(C)ブロック共重合体が更に分散した安定なモルフォロジーを形成するため、得られる再生PET樹脂組成物は、押出成形に好適な溶融粘度及び溶融張力を発揮するとともに、成形後の耐衝撃強度等の機械的強度に優れた特性を有する。
【0062】
また、一般にポリエステルとエポキシ基の反応は遅く、本発明の再生PET樹脂組成物においては、PETの融点未満の温度で混練されて成るため、PETとエポキシ基含有オレフィン共重合体及びビニル系(共)重合体からなるグラフト共重合体との反応効率が緩慢になり、反応途中又は未反応のエポキシ基が一部残留しているものと考えられる。そのため、本発明の再生PET樹脂組成物を用いて押出成形を行った場合、溶融過程中に前記した残留官能基による反応が進行し、成形中の溶融粘度低下を抑制せしめ安定した押出成形性を助長しているものと考えられる。
【0063】
このように、本発明に係る再生PET樹脂組成物は、PETの加水分解劣化の抑制、安定したモルフォロジーの形成及び押出成形中における残留官能基の反応による相乗効果で、大型で厚肉の成形においても優れた押出成形性を有する。従って本発明はPET再生技術の向上に著しく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた再生PET樹脂組成物のミクロ構造を示す透過型電子顕微鏡写真(約7500倍)図面である。
【図2】実施例3で得られた再生PET樹脂組成物のミクロ構造を示す透過型電子顕微鏡写真(約7500倍)図面である。

Claims (6)

  1. (A)使用済みの廃棄PET製品のPET粉砕品100重量部、(B)ポリオレフィン系樹脂3〜60重量部、(C)少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体から成るブロック及び少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体からなるブロックを有するブロック共重合体2〜80重量部並びに(D)エポキシ基含有オレフィン共重合体とビニル系(共)重合体をグラフト共重合せしめた多層構造重合体1〜50重量部を混練装置を用いて、(B)成分であるポリオレフィン系樹脂の融点以上であって、(A)成分であるPET粉砕品の融点未満の温度で混練することを特徴とする再生PET樹脂組成物の製造方法
  2. 前記再生PET樹脂組成物が、前記(A)成分が連続相をなし、その(A)成分の連続相中に(B)成分が分散相として粒状分散され、そしてその(B)成分の分散相中に(C)成分が更に分散した相形態を有する請求項1に記載の製造方法
  3. 前記PET粉砕品の形状がフレーク状又は短繊維状である請求項1又は2に記載の製造方法
  4. 前記(C)成分の共役ジエン化合物重合体からなるブロックの少なくとも一部が水素添加により飽和されているブロック共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法
  5. 前記(B)ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法
  6. メルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法
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