JP3944321B2 - 動吸振装置および工作機械 - Google Patents

動吸振装置および工作機械 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば、工作機械等の振動する構造要素の振動エネルギの吸収のために使用される動吸振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図19は従来における動吸振装置のモデルである。
図19において、バネKによって支持された質量Mの振動体210は、外力が作用することにより共振するため、この振動体210の振動エネルギを吸収するために、振動体210に動吸振装置201を取り付ける。
動吸振装置201は、質量mの質量体202と、振動体210と質量体202との間に、バネ203およびダンパ204を有している。
動吸振装置201の質量体202の質量mおよびバネ203の弾性係数は、動吸振装置201の固有周波数が振動体210の共振周波数に略等しくなるように設定される。
振動体210が共振すると、動吸振装置201の質量体202が共振し、この質量体202の振動エネルギをダンパ210が吸収することにより、振動体210の共振が抑制される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来において、ダンパ204を構成するには、たとえば、油などの粘性流体や、ゴムなどの粘弾性体を使用するため、経時変化が発生しやすく、また、油などの粘性流体を収容する必要があるため構造が複雑となり、油などの粘性流体や、ゴムなどの粘弾性体は温度に応じて粘性が変化するため、減衰特性の調整が難しいという不利益が存在した。
また、上記構成の動吸振装置201からバネ203を欠く構成の動吸振装置はいわゆるランチェスタダンパとして知られているが吸振特性が劣る。
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであって、構造が簡単で、メンテナンスの必要がなく、振動対象物への装着が容易であり、経年変化がなく、振動の減衰性能に優れる動吸振装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の観点の動吸振装置は、振動体に連結固定され所定の質量を有し、前記振動体の振動によって共振するように固有振動数が設定された付加質量体と、前記付加質量体に所定の範囲で移動可能に保持され、前記振動体の振動によって当該付加質量体と衝突を繰り返す可動質量体とを有する。
【0006】
本発明では、振動体に連結固定された付加質量体に保持された可動質量体は、振動体の振動によって付加質量体に対して相対移動し、付加質量体に衝突を繰り返す。
この付加質量体と可動質量体との衝突によって、振動体の振動エネルギが失われ、振動体の振動振幅が減衰する。
また、本発明では、振動体の振動周波数によらず、付加質量体と可動質量体とが衝突すれば振動体の振動エネルギを吸収することができるため、幅広い帯域の振動体の振動に対応することができる。
【0007】
前記付加質量体は、一端に振動体への取付部が形成され、他端に係合保持部が形成された軸部材からなり、前記可動質量体は、前記軸部材が挿入される挿入孔を有し、一端面が前記係合保持部に保持され、前記挿入孔の内周に軸部材に当接可能で前記軸部材に対して所定の隙間をもつように形成された当接面を有する可動部材からなる。
【0008】
前記所定の隙間は、前記振動体の振動振幅の大きさに基づいて設定されている。
【0009】
前記所定の隙間は、前記振動体の振動振幅の大きさに近い値に設定されている。
【0011】
前記可動部材は、前記軸部材の軸方向に重ねて複数装着され、前記各可動部材は、互いの端面が当接している。
【0012】
前記軸部材と前記各可動部材の当接面との間の所定の隙間は、それぞれ異なる値に設定されている。
【0013】
前記各可動部材の所定の隙間は、前記係合保持部に当接する可動部材から順に狭小化されている。
0014
前記可動部材の当接面の軸方向の長さは、当該可動部材の挿入孔の軸方向の長さよりも短く形成されている。
前記振動体は、複数の振動モードを有し、前記各振動モードの振動によってそれぞれ共振する複数の前記軸部材と、当該各軸部材に挿入保持される複数の可動部材とからなる。
0015
前記係合保持部の質量は、前記軸部材の固有振動数を所定の値にするように調整されている。
前記係合保持部は、前記軸部材に対して着脱自在に設けられている。
【0016】
発明の第の観点の工作機械は、被加工物を加工することにより振動が発生する振動体と、前記振動体に装着された動吸振装置とを有する工作機械であって、前記動吸振装置は、振動体に連結固定され、所定の質量を有し、前記振動体の振動によって共振するように固有振動数が設定された付加質量体と、前記付加質量体に所定の範囲で移動可能に保持され、前記振動体の振動によって当該付加質量体と衝突を繰り返す可動質量体とを有する。
【0017】
本発明の第の観点の工作機械は、被加工物を加工することにより振動が発生する振動体と、前記振動体に装着された動吸振装置とを有する工作機械であって、前記動吸振装置は、一端が振動体へ取り付けられ、他端に係合保持部が形成され、所定の質量を有する軸部材と、前記軸部材が挿入される挿入孔を有し、一端面が前記係合保持部に保持され、前記挿入孔の内周に前記軸部材に当接可能で前記軸部材に対して所定の隙間をもつように形成された当接面を有する可動部材とを有し、前記可動部材の当接面が前記振動体の振動によって前記軸部材と衝突を繰り返すことにより前記振動体の振動を吸収する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る動吸振装置の断面図である。
図1において、本実施形態に係る動吸振装置1は、軸部材2と、可動部材6と、ナット7と、固定部材11とを有する。
固定部材11は、ボルト61によって振動体Oの一部に固定されている。固定部材11には、軸部材2を装着するための平板状の装着部11bが振動体Oの振動方向である矢印A1およびA2の方向に沿って形成されており、この装着部11bにはネジ部11aが形成されている。
軸部材2は、可動部材6が挿入される軸部3と、振動体Oに取り付けられた固定部材11に固定される軸部材2の一端側に一体に形成された取付部4と、軸部材2に一体に形成され、係合面5aによって可動部材6を係合保持する係合部5とからなる。
軸部材2の取付部4は、ネジ部4aが形成されており、このネジ部4aが固定部材11の装着部11bに形成されたネジ部11aに螺合する。
ナット7は、固定部材11へ螺合固定された軸部材2の取付部4が振動等により緩まないように緩み防止のために設けられている。
軸部材2の係合部5は、軸部材2に挿入された可動部材6を係合面5aで係合保持するとともに、所定の質量を軸部材2の先端に付与している。
【0019】
可動部材6は、所定の質量の円筒状の部材から形成されており、内周に軸部材2の軸部3を挿入するための挿入孔6aが形成されている。
可動部材6の挿入孔6aの内径Dは、軸部材2の軸部3の外径dよりも大きく形成されており、可動部材6を軸部材2の軸部3に同心に挿入したときに可動部材6の挿入孔6aと軸部材2の軸部3とで形成されるギャップδが所定の値になるように設定されている。
【0020】
図2は、図1に示した動吸振装置1および動吸振装置1が適用される振動対象物をモデル化した図である。
図2に示すように、振動体Oを質量m0 の質量体Ms0 がバネK0 を介して基準位置Bに移動自在に連結されているものとしてモデル化する。
また、軸部材2を質量m1 の付加質量体Ms1 がバネK1 を介して上記の質量体Ms0 に移動自在に連結されているものとする。上記構成の動吸振装置1では、軸部材2の取付部4の外径d1 は軸部3の外径dよりも小さくなっており、軸部材2の取付部4の剛性が他の部分よりも低くなっており、この部分をバネK1 とすることができる。
さらに、可動部材6を質量m2 の可動質量体Ms2 とし、上記の付加質量体Ms1 の保持凹部Fの衝突面FaおよびFbとの間にギャップδをもって移動自在に保持されているものとしてモデル化する。
また、可動質量体Ms2 と付加質量体Ms1 との衝突の際の反発係数をeとする。
【0021】
図3は、図2に示したモデルに基づいて、動吸振装置1による制振シミュレーションの結果を示す図であり、(a)は各質量体の加速度α0,α1,α2および速度V0,V1,V2を示しており、(b)は各質量体の各基準位置からの変位量p0,p1,p2を示している。
シミュレーションの条件は、バネK0 の剛性を1.2〔MN/m〕、バネKの剛性を1.8〔MN/m〕、質量体Ms0 の質量m0 を3kg、可動質量体Ms2 の質量m2 を1.5kg、付加質量体Ms1 の質量m1 を1.5kg、ギャップδを0.8mm、反発係数eを0.6とし、質量体Ms0 、付加質量体Ms1 および可動質量体Ms2 に同時に矢印X方向に0.8〔m/s〕の初速を与えた。
【0022】
図3(a)に示すように、質量体Ms0 、付加質量体Ms1 および可動質量体Ms2 の速度V0 、V1 、V2 の初速を0.8〔m/s〕とすると、図3(b)に示すように、質量体Ms0 、付加質量体Ms1 および可動質量体Ms2 の変位量p1 、p2 およびp3 は、それぞれ直線的に増加していくが、質量体Ms0 および付加質量体Ms1 の変位量p1 、p2 はバネK0 およびバネK1 の作用によって質量体Ms0 および付加質量体Ms1 にバネの引張力が作用するため、変位量p1 、p2 の増加が鈍化する。
一方、可動質量体Ms2 は、付加質量体Ms1 に移動自在に保持されているため、可動質量体Ms2 の変位量p2 と付加質量体Ms1 の変位量p1 との差は広がり、約2ms経過後のX1 の地点で、変位量p2 と変位量p1 との差がギャップδの大きさに達すると、可動質量体Ms2 は付加質量体Ms1 の衝突面Faに衝突する。
【0023】
可動質量体Ms2 と付加質量体Ms1 との衝突により、振動エネルギの一部が失われ、図3(b)に示すように、可動質量体Ms2 は付加質量体Ms1 に対して変位方向が逆となる。このとき、可動質量体Ms2 の速度V2 は、図3(a)に示すように、階段状に変化し、付加質量体Ms1 の速度V1 も急激に変化する。
【0024】
続いて、図3(b)の地点X2 で、可動質量体Ms2 は付加質量体Ms1 の衝突面Fbに衝突し、同様に、地点X3 、X4 、X5 で可動質量体Ms2 は付加質量体Ms1 に衝突を繰り返す。
約10msの質量体Ms1 の振動の周期の間に、可動質量体Ms2 は付加質量体Ms1 に4回衝突し、2周期の間に計5回の衝突を繰り返している。この衝突毎に振動エネルギが吸収されるため、質量体Ms0 の速度V0 、加速度α0 および変位量p0 は減衰していく。
【0025】
上記のモデルでは、質量体Ms0 およびバネK0 のみでは、質量体Ms0 は単振動を繰り返し、質量体Ms0 の振動振幅は減衰しないが、可動質量体Ms2 と付加質量体Ms1 との衝突によって、質量体Ms0 の振動振幅は速やかに減衰する。
また、付加質量体Ms1 は、バネKによって質量体Ms0 に連結しているため共振し、この付加質量体Ms1 の共振によって、付加質量体Ms1 と可動質量体Ms2 とは衝突しやすくなっている。
【0026】
以上のように、上記構成の動吸振装置1をモデル化したシミュレーション結果より、質量体Ms0 およびバネK0 でモデル化された振動体Oの振動は、付加質量体Ms1 およびバネKでモデル化された軸部材2と可動質量体Ms2 によってモデル化された可動部材6との衝突によって、速やかに吸収されることがわかる。
【0027】
本発明の第1の特徴は、軸部材2と可動部材6とを衝突させて、この衝突による振動エネルギの消失によって振動体Oの振動を吸収する点にある。
したがって、軸部材2と可動部材6との単位時間当たりの衝突回数が多いほど、吸振効果が高くなる。
このため、上記構成の動吸振装置1の軸部材2が振動体Oの振動によって共振するように、軸部3または取付部4の寸法や係合部5の質量を調整することにより、軸部材2の振動振幅が共振によって増幅され、軸部材2と可動部材6との単位時間当たりの衝突回数が増加し、動吸振装置1の吸振性能を向上させることができる。
さらに、本発明の第2の特徴は、振動体Oの振動周波数にかかわらず、軸部材2と可動部材6とが衝突すれば、振動体Oの振動を吸振できる点にある。
すなわち、振動体Oの振動が一定でなく経時変化したり、また、一次の固有振動モードのみならず、高次の固有振動モードを有する場合等に、常に振動を吸振できる。
【0028】
図4は、上記構成の動吸振装置1が適用される振動体を有する工作機械の一例を示す図であって、たとえば、タービンロータを加工するのに用いられる旋盤装置である。
図4に示す旋盤装置は、主軸台部51と、心押台部52と、刃物台部53と、操作部54とから構成されている。
主軸台部51は、被加工物301の一端をチャッキングし、内蔵された主軸によって被加工物301を回転させる。心押台部52は、被加工物301の他端の回転中心を保持する。
刃物台部53は、被加工物301を切削するバイトを具備しており、主軸台部51および心押台部52によって保持された被加工物301に対して、被加工物301の回転軸に直交する方向および被加工物301の回転軸に沿った方向に刃物を移動させることができる。
操作部54は、被加工物301を加工するプログラムを入力したり、主軸の回転速度を設定したり、加工のための各種の設定を行うためのものである。
【0029】
図5は、図4に示した旋盤装置によってタービンロータを加工する様子を示す図である。
図5において、被加工物であるタービンロータ301の各フランジ部301aの間の深溝部301bを切削加工するために、各フランジ部301aの間にバイト53cを挿入して切削加工している。
通常、バイト53cは刃物台部53に設けられた刃物台53aに直接取り付けられるが、タービンロータ301の各フランジ部301aの間の深溝部301bを切削加工する場合には、刃物台53aの長さが不足し、軸方向の幅も広すぎるため、図5に示すように、刃物台53aとバイト53cとの間にラメラと呼ばれる薄板状の刃物板53bを設けてタービンロータ301の各フランジ部301aの間の深溝部301bを切削加工している。
さらに、タービンロータ301の各フランジ部301aの間の深溝部301bを切削加工する際には、深溝部301bの突き切り加工だけでなく、所定の曲率のR面加工を行う必要があるため、刃物板53bの厚さは十分に薄くする必要がある。
【0030】
図6は、上記の刃物台53a、バイト53cおよび刃物板53bの拡大図である。
図6に示すように、刃物板53bの一端は刃物台53aに片持ちばりとして固着保持されており、刃物板53bの先端にはバイト53cが固着されている。
上記構成によって、タービンロータ301の各フランジ部301aの間の深溝部301bを切削加工を行うと、刃物板53bの厚さ方向、すなわち、Z軸方向の剛性が不足するため、加工中に刃物板53bがZ軸方向に共振するびびり振動が発生する。この振動の周波数は、刃物板53bが単にZ軸方向に振動する一次振動モードに加え、刃物板53bにねじれが発生する二次振動モードが存在する。
【0031】
刃物板53bに上記の振動が発生すると、タービンロータ301の各フランジ部301aの間の深溝部301bの仕上げ面が荒れたり、振動の状態によっては加工を継続できないことがある。
このため、本実施形態では、上記の刃物板53bの共振を抑制するために、刃物板53bの先端部に上記構成の動吸振装置1を装着する。
動吸振装置1の刃物板53bへの取付位置は、たとえば、図6に示すように、刃物板53bの振動方向、すなわちZ軸方向に、軸部材2が直交する方向に設置する。
【0032】
刃物板53bに、振動が発生すると、動吸振装置1の軸部材2が共振し、ギャップδの範囲で可動部材6が移動し、可動部材6の挿入孔6aの内周面は軸部材2の軸部3に衝突する。
この衝突によって、刃物板53bからの振動エネルギが吸収されることになり、刃物板53bの振動が低減される。
また、可動部材6の端面は軸部材2の保持部5の保持面5aと当接しており、可動部材6が移動すると、保持部5の保持面5aとの間に摩擦が発生する。この摩擦によっても、刃物板53bからの振動エネルギが吸収されることになり、さらに刃物板53bの振動が低減される。
【0033】
ここで、図7は、動吸振装置1を厚さ45mmの刃物板53bへ装着しない状態で、刃物板53bのZ軸方向に沿ってプラスッチックハンマで衝撃を与えたときの解析データであって、(a)は振動データを示しており、(b)は振動データを周波数分析したパワースペクトルである。
図7(a)から分かるように、刃物板53bに衝撃を加えてから十分に振動が減衰するまでに約0.15秒程度かかる。
また、図7(b)から分かるように、約108Hzおよび235Hzに振動のピークが存在する。
【0034】
図8は、動吸振装置1を刃物板53bへ装着した状態で、刃物板53bのZ軸方向に沿ってプラスッチックハンマで衝撃を与えたときの解析データであって、
(a)は振動データを示しており、(b)は振動データを周波数分析したパワースペクトルである。
図8(a)と図7(a)を比較すると、図7(a)では刃物板53bに衝撃を加えてから十分に振動が減衰するまでに約0.15秒程度かかったが、図8(a)では約0.08秒程度で振動が十分に減衰するのがわかる。
また、図8(b)と図7(b)を比較すると、図7(b)において約108Hzおよび235Hzに存在していたピークがともに、なだらかになり、パワー自体も低下していることがわかる。
以上のことから、上記構成の動吸振装置1を旋盤装置の刃物板53bに装着することにより、一次の固有振動モードおよび二次の固有振動モードの振動に対して同時に吸振効果があることが分かる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る動吸振装置1によれば、振動体O、たとえば、刃物板53bの振動エネルギを吸収する際に、ダンパを構成するオイル等の粘性流体を必要とせず、簡単な構成で振動体Oの振動を抑制することが可能になる。
また、本実施形態に係る動吸振装置1では、振動体Oが一次および高次の固有振動モードを有していても、これら全ての振動モードに対して同時に有効であり、たとえば、一次の固有振動モードに対しては有効であるが、高次の固有振動モードを逆に励起し増幅するといったことがない。
また、本実施形態に係る動吸振装置1によれば、特に、動吸振装置1のメンテナンスの必要がなく、また、刃物板53b等の振動体Oへの装着も容易である。
さらに、本実施形態では、時間の経過によって、形状や寸法、状態等が大きく変化する構成要素がなく、経年変化がすくないため、振動抑制効果が常に一定して得られる。
【0036】
なお、本実施形態に係る動吸振装置1では、軸部材2の係合部5を一体に形成する構成としたが、本発明はこれに限定されるわけではない、
すなわち、軸部材2の係合部5を軸部材2対して、たとえば、雌ネジおよび雄ネジによって、着脱自在な構成とすることも可能である、
この場合には、係合部5の質量を種々調整することにより、軸部材2の固有振動数を刃物板53bの振動数より適正な範囲で低下させたり、所定の固有振動数に設定することが可能になる。
したがって、軸部材2を固定部材11によって刃物板53bに固定した場合に、軸部材2の軸部3、取付部4および係合部5を含む振動系が刃物板53bの振動によって共振するように軸部材2の取付部4の外径d1 や、軸部3の長さや、係合部5の寸法や、可動部材の質量を設定する。
また、可動部材6の挿入孔6aと軸部材2の軸部3とで形成されるギャップδは、可動部材6と軸部3とが衝突しやすいように、たとえば、刃物板53bが振動した場合に、刃物板53bの振動振幅に近い値、または、軸部材2の軸部3の振動振幅に近い大きさとなるように、可動部材の内径Dを設定する。
【0037】
第2の実施形態
図9は、本発明に係る動吸振装置の第2の実施形態を説明するための図であって、上記した旋盤装置の刃物板53bに複数の動吸振装置152および151を装着した状態を示す図である。
図9に示す動吸振装置151および152は、上記した動吸振装置1と同一構成のものであるが、動吸振装置151および152における可動部材6の挿入孔6aと軸部材2の軸部3とで形成されるギャップδがそれぞれ異なる値に設定されている。
【0038】
図3において説明した動吸振装置1のモデルのシミュレーション結果では、振動体Oである質量体Ms0 の振動振幅が小さくなると、図3からわかるように、質量体Ms0 の振動振幅がギャップδの半分程度になると、軸部材2である付加質量体Ms1 と可動部材6との衝突回数が減り、衝突による吸振効果が少なくなる。
このため、単体の動吸振装置1だけでは、振動体Oの振動振幅が減衰された後の微小な振動を吸収することが難しい。
このため、本実施形態では、ギャップδのそれぞれ異なる複数の動吸振装置151および152をそれぞれ独立に旋盤装置の刃物板53bに装着する。
【0039】
たとえば、動吸振装置151の可動部材6の挿入孔6aと軸部材2の軸部3とで形成されるギャップδを50μmとし、動吸振装置152のギャップδを30μmとし、各動吸振装置151および152を図9に示すように、旋盤装置の刃物板53bに装着する。
刃物板53bが振動すると、刃物板53bの振動振幅が大きいうちは、動吸振装置151が主に作動して刃物板53bの振動エネルギを主に吸収する。
これによって、刃物板53bの振動振幅がある程度小さくなると、ギャップδの小さな動吸振装置152が主に作動して、刃物板53bの振動振幅が小さくなっても、刃物板53bの振動エネルギを吸収する。
【0040】
以上のように、ギャップδの異なる複数の動吸振装置を刃物板53b等の振動体Oに装着することにより、振動体Oの振動振幅に幅広く対応することができ、吸振性能を向上させることができる。
【0041】
第3の実施形態
図10は、本発明の第3の実施形態に係る動吸振装置の構成を示すモデル図である。
上述した第2の実施形態では、異なるギャップδを有する複数の動吸振装置151および152を振動体Oである刃物板53bに設ける構成として、刃物板53bの振動振幅が小さくなっても吸振できるものとした。
本実施形態に係る動吸振装置161は、図10に示すように、バネK1 と、質量m1 の付加質量体Ms1 と、質量m2 の可動質量体Ms2 および質量m3 の可動質量体Ms3 からなり、質量m1 の付加質量体Ms1 の2ヵ所に保持部F1およびF2を設けて、これら保持凹部F1およびF2にそれぞれ質量m2 の可動質量体Ms2 および質量m3 の可動質量体Ms3 を移動可能に保持させた構成としている。
また、保持部F1の衝突面Fa1 と衝突面Fb1 と可動質量体Ms2 との間のギャップδ1 と、保持部F2の衝突面Fa2 と衝突面Fb2 と可動質量体Ms3 との間のギャップδ2 は異なる値に設定されている。
【0042】
たとえば、動吸振装置161の可動質量体Ms2 のギャップδ1 を50μmとし、可動質量体Ms3 のギャップδ2 を30μmとして、動吸振装置161を旋盤装置の刃物板53bに取り付けると、刃物板53bの振動振幅が大きいうちは、可動質量体Ms2 が主に作動しやすく、可動質量体Ms2 と付加質量体Ms1 との衝突によって刃物板53bの振動エネルギが主に吸収される。
これに加えて、可動質量体Ms2 と付加質量体Ms1 とが衝突すると、この衝撃によって、他方の可動質量体Ms3 と付加質量体Ms1 との衝突が誘発されやすくなる。
このため、付加質量体Ms1 に対する衝突回数が増加し、振動エネルギの吸収効率が高まり、刃物板53bの大きな振動振幅の減衰に要する時間が短縮化される。
また、刃物板53bの振動振幅がある程度小さくなると、可動質量体Ms3 が主に作動して、刃物板53bの振動振幅が小さくなっても、刃物板53bの振動エネルギを吸収する。
【0043】
以上のことから、本実施形態に係る動吸振装置161によれば、上記した第2の実施形態に係る構成に比較して、刃物板53bの振動の減衰時間を短縮化でき、なおかつ、刃物板53bの微小な振動を吸収することができる。
なお、図10に示した動吸振装置161のモデルと等価になる具体的構造は、上記した第1および第2実施形態の動吸振装置のように、軸部材2に可動部材6を挿入する構造だけでなく、種々の形態を採用することができる。
【0044】
第4の実施形態
図11は、本発明の第4の実施形態に係る動吸振装置の構成を示す断面図である。なお、本実施形態において、上述した実施形態と同一の構成部分は同一の符号をもって示す。
図11に示す動吸振装置171は、2つの可動部材6および61を有しており、保持部材5に端面が当接している可動部材6の挿入孔6aと軸部材2の軸部3との間のギャップδ1 と可動部材61の挿入孔61aと軸部材2の軸部3との間のギャップδ2 とは異なる値に設定されており、下側の可動部材6のギャップδ1 は上側の可動部材61のギャップδ2 よりも大きく設定されている。
【0045】
図12は、図11に示した動吸振装置171および振動体Oのモデル図である。
図12に示すように、動吸振装置171は、バネK1 と、バネK1 によって質量m0 の質量体Ms0 に連結された質量m1 の付加質量体Ms1 と、付加質量体Ms1 の保持凹部F内に移動可能に保持され、それぞれ、保持凹部Fの衝突面FaおよびFbとの間のギャップがδ1 およびδ2 に設定された可動質量体Ms2 およびMs3 とによってモデル化される。
【0046】
上記構成の動吸振装置171のギャップδ1 およびδ2 をそれぞれ、たとえば、50μmおよび30μmとして、上記の旋盤装置の刃物板53bに装着すると、刃物板53bに発生する振動は、刃物板53bの振動振幅が大きいうちは、下側の可動部材6が主に作動しやすく、可動部材6と軸部3との衝突によって刃物板53bの振動エネルギが吸収される。
また、可動部材6のギャップδ1 は可動部材61のギャップδ2 より大きいことから、下側の可動部材6が軸部3に衝突する際には、下側の可動部材6と上側の可動部材61との間には相対運動が発生する。可動部材6と可動部材61とは互いの端面が接しており、相対運動によって互いの端面の間に摩擦が発生し、可動部材6には軸部材2の係合部5の係合部5aとの摩擦とあわせて両端面に摩擦力が作用し、これらの摩擦によってさらに振動エネルギが吸収される。
これに加えて、下側の可動部材6が軸部3に衝突すると、その衝撃によって上側の可動部材61と軸部3との衝突が誘発されやすくなり、さらに振動エネルギが吸収されやすくなる。
この結果、刃物板53bの大きな振動振幅の減衰に要する時間が大幅に短縮化される。
また、刃物板53bの振動振幅がある程度小さくなると、上側の可動部材61が主に作動し、刃物板53bの振動振幅が小さくなっても刃物板53bの振動エネルギを吸収するとともに、上側の可動部材61には、下側の可動部材6との間に摩擦力が作用するため、さらに振動エネルギの吸収効率が向上する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る動吸振装置171は、上記した第3の実施形態に係る動吸振装置161と比較して、刃物板53bに対してさらに大きな振動の減衰性が得られる。
なお、本実施形態では、可動部材6および61の2つの場合について説明したが、さらに多くのギャップδの異なる可動部材を有する構成とすることにより、さらに大きな振動の減衰性が得られるとともに、微小な振動を確実に吸収することが可能になる。
【0048】
第5の実施形態
図13は、本発明の動吸振装置の第5の実施形態を示す断面図である。なお、本実施形態において、上述した実施形態と同一の構成部分は同一の符号をもって示す。
図13に示す動吸振装置181は、軸部材2の軸部3に挿入される可動部材6を複数(4個)有しており、可動部材6と軸部3との間に形成されるギャップδはそれぞれ等しい。他の構成については第1の実施形態に係る動吸振装置1と同様である。
図13に示す動吸振装置181では同一構成の各可動部材6は、互いの端面が当接しており、軸部材2が振動体Oからの振動によって振動すると、それぞれの可動質量体6が所定のギャップδ内で独立に移動して軸部材2の軸部3に衝突する。
このとき、各可動質量体6は、互いの端面に接触しているため、各可動質量体6の端面間には摩擦が発生する。可動部材6が単一の場合には、可動部材6に作用する摩擦力は軸部材2の係合部5の係合面5aとの間でのみ発生する。
本実施形態では、多数の可動部材6によって軸部材2に衝突する回数が増加するとともに、各可動部材6の端面間に発生する摩擦によって、振動体Oである刃物板53bの振動エネルギをさらに吸収することができ、減衰性を一層向上させることができる。
【0049】
変形例
上述の第5の実施形態では、軸部材2の係合部5の係合面5a上に、下側の可動部材6の一端面を直接載置した構成とした。
しかしながら、上記構成では、可動部材6の一端面に大きな摩擦が作用し、条件によっては、可動部材6と軸部材2の軸部3との衝突が発生しにくくなる場合も想定される。
このため、たとえば、軸部材2の係合部5と可動部材6との間に、振動体Oの振動方向に沿って推力軸受を介在させ、軸部材2の係合部5と可動部材6との間の摩擦を低下させ、軸部材2の係合部5に対して可動部材6が相対移動しやすい構成とすることも可能である。
可動部材6が軸部材2の係合部5に対して相対移動しやすくなると、可動部材6と軸部材2の軸部3との衝突が発生しやすくなるとともに、上側の可動部材61と可動部材6との間の相対運動も発生しやすくなり、振動エネルギの吸収効率を向上させることができる。
【0050】
また、上側の可動部材61と下側の可動部材6との間にも、振動体Oの振動方向に沿って推力軸受を介在させた構成とすることにより、上側の可動部材61が移動しやすくなる。この構成の場合には、上側の可動部材61と下側の可動部材6との間の摩擦によって振動エネルギの吸収効率を高めるのではなく、上側の可動部材61および下側の可動部材6と軸部材2との衝突が発生し易くすることによって振動エネルギの吸収効率を高めることができる。
【0051】
第6の実施形態
図14は、本発明の動吸振装置の第6の実施形態を示す断面図である。なお、本実施形態において、上述した実施形態と同一の構成部分は同一の符号をもって示す。
図14に示す動吸振装置191は、同一構成の可動質量体6を2個有しており、また、軸部材2の軸部3の長さLも上述した第1の実施形態に係る動吸振装置のものよりも短縮化されている。
上述した各実施形態に係る動吸振装置は、刃物板53bの一次振動モードおよび二次振動モードの振動に関わらず、各種の振動を減衰させる効果を有するが、たとえば、上記の旋盤装置の刃物板53bの振動によって軸部材2が共振する場合と共振しない場合とでは、共振する場合のほうが軸部材2の振動振幅が大きくなって可動部材と軸部材2との衝突が発生しやすくなり、振動の減衰性が良くなる。
【0052】
上記した旋盤装置の刃物板53bは、上記の旋盤装置の刃物板53bが単に振動する一次振動モードと、刃物板53bにねじれが加わった二次振動モードを有する。
しかしながら、たとえば、上記した第1の実施形態に係る動吸振装置1が刃物板53bの一次振動モードにの振動によって共振するように軸部材3の長さLや係合部5の質量等が設定されていたとすると、一次振動モードの振動とともに二次振動モードの振動も減衰されるが、十分な減衰を得ることは難しい。
【0053】
このため、本実施形態に係る動吸振装置191では、刃物板53bの二次振動モードの振動によって動吸振装置191の軸部材2が共振を発生するように、たとえば、軸部材2の軸部の長さLを短縮化し、可動部材6の質量を減らして動吸振装置191の共振周波数帯域を高める構成としている。
たとえば、刃物板53bの一次振動モードにの振動によって共振するように設定された動吸振装置に加えて、本実施形態に係る動吸振装置191を併せて刃物板53bに装着することにより、刃物板53bの一次振動モードおよび二次振動モードの振動を同時に効率良く減衰させることができる。
【0054】
第7の実施形態
図15は、本発明の動吸振装置の第7の実施形態を示す断面図である。なお、本実施形態において、上述した実施形態と同一の構成部分は同一の符号をもって示す。
図15に示す動吸振装置192は、可動部材6の構造に特徴を有し、他の構成要素については上述した実施形態と同様である。
図15に示す動吸振装置192の可動部材6は、可動部材6に形成された軸部材2の軸部3を挿入するための挿入孔6aの内周の一部に軸部3に対して突出する当接面6bが形成されている。
この当接面6bと軸部3との間のギャップは、所定の値に調整されている。
軸部材2が振動すると、可動部材6の当接面6bのみが軸部3に衝突し、他の部分は衝突しない。
たとえば、可動部材6の挿入孔6aの内周全面が当接面6bとなっている場合には、挿入孔6aが傾斜していたり、挿入孔6aと軸部材3とのギャップが所定の値になっていないと、正確に可動部材6と軸部3とが衝突せず、振動エネルギを衝突エネルギとして吸収することができない場合もあるが、本実施形態のように、挿入孔6aの一部に当接面6bを形成することにより確実に可動部材6と軸部3とを所定のギャップの範囲で衝突させることができ、動吸振装置の吸振(減衰)特性を安定化させることができる。
【0055】
第8の実施形態
図16は、本発明に係る動吸振装置を他の対象に適用した場合を示す図であり、図16に示す適用対象は、たとえば、門型マシニングンタのラムである。 図16において、ラム201は、たとえば、門型のマシニングンタの水平方向に設けられた水平部材に対して鉛直方向に設けられており、油圧シリンダによって移動可能となっている。
ラム201の先端には、工具203を装着、駆動するためのアタッチメント202が装着され、アタッチメント202に設けられた工具203により加工を行う。
ラム201は、任意の位置に繰り出されるため、ラム201の繰出量の変化に応じて工具203にかかる切削力によってラム201に発生する振動の振動数および振動振幅は種々変化しうる。
このため、本実施形態では、図16に示すように、ラム201の各種の振動および振動振幅に対応して、軸部材2の剛性、係合部5の質量、可動部材6と軸部材2との間のギャップ等が設定された複数の動吸振装置194および195をラム201に装着する。
この結果、工具203にかかる切削力によって発生するラム201の種々の振動を効果的に減衰させることが可能になる。
【0056】
第9の実施形態
次に、上記のマシニングンタのラムへの適用を一例に、上述した各実施形態に係る動吸振装置における可動部材と軸部材との間に形成されるギャップと軸部材の軸剛性の最適化方法について説明する。
図17に、ラム201に図11において説明した構成の動吸振装置171を適用した場合のモデル図を示す。
ラム201のモデルは、質量m0 とバネK0 からなる単振子である。ラム201には質量m1 およびバネK1 からなる軸部材2が連結固定され、軸部材2には質量m2 およびm3 の可動部材6、61がそれぞれギャップδ1 、δ2 で保持されているているものとする。
また、ラム201には粘性摩擦c0 、軸部材2には粘性摩擦c1 、軸部材2の係合部5と下側の可動部材6との間には粘性摩擦c2 および下側の可動部材6と上側の可動部材61との間には粘性摩擦c3 がそれぞれ作用するものとする。
さらに、軸部材2の係合部5と下側の可動部材6との間にはクーロン摩擦q2 、下側の可動部材6と上側の可動部材61との間にはクーロン摩擦q3 がそれぞれ作用するものとする。
【0057】
次いで、上記のモデルに基づいて、各質量m0 、m1 、m2 、m3 の自由運動時の運動方程式をたて、初期条件を与えて、逐次的に運動方程式の解を所定の微小な計算時間間隔、たとえば、0.5ms毎に計算するシミュレーションを行う。
また、軸部材2の係合部5と下側の可動部材6との間および下側の可動部材6と上側の可動部材61との間の動摩擦と静止摩擦は、可動部材6、61の移動方向に基づいて動摩擦の向きを決定し、可動部材6、61の移動速度の大きさによって動摩擦と静止摩擦とを切り換える。
【0058】
また、自由運動の各所定の計算時間間隔毎の解析後に、可動部材6、61と軸部材2との間のギャップ量を調べ、ギャップ量が全て正の値の場合には可動部材6、61と軸部材2とは衝突しなかったと判断する。
負の値のギャップ量が存在する場合には、計算時間間隔の間に衝突が発生したと判断する。
可動部材6、61と軸部材2との衝突が起きた場合には、重心位置の保存則、運動量の保存則、角重心位置の保存則、角運動量の保存則、衝突時刻の保存則、および反発方程式の保存則を連立させて解き、各質量m0 、m1 、m2 、m3 の衝突後の位置と速度を求める。
【0059】
シミュレーションの条件は、ラム201の重量は実際には約2000kgであるが、先端の振動部分の等価質量m0 を500kgとし、また、ラム201の固有振動数を50Hzとし、バネK0 の剛性を50N/μmとした。
軸部材2の質量m1 は15kgとし、可動部材6、61の質量m2 、m3 をそれぞれ7.8kgとした。
軸部材2の係合部5と可動部材6との間には、推力軸受を設けてあることから、動摩擦を0.02、静止摩擦を0.05とし、可動部材6と可動部材61との間の動摩擦を0.10、静止摩擦を0.15とした。
軸部材2と可動部材6、61との間の反発係数は0.5とした。
また、初期条件として、ギャップδ1 を0.08mmとし、ギャップδ2 を0.05mmとし、軸部材2の剛性を5N/μmとし、ギャップδ1 、δ2 を0.1mmの単位で、軸部材2の剛性を1N/μmの単位で変化させ、各質量m0 、m1 、m2 、m3 の振動波形をシミュレーションする。
【0060】
上記のシミュレーションから得られる各質量m0 、m1 、m2 、m3 の振動波形のみでは、軸部材2の最適な剛性および最適なギャップδ1 、δ2 を判断することは困難であるため、各質量m0 、m1 、m2 、m3 の運動エネルギと各バネK0 、K1 のたわみによるエネルギを合計し、ラム201および動吸振装置171からなる系全体が保有する保有エネルギを求め、保有エネルギの減衰曲線を指数曲線に回帰して各軸部材2の剛性および各ギャップδ1 、δ2 に対する保有エネルギの減衰時定数を求めた。この結果を図18に示す。
図18に示す各軸部材2の剛性および各ギャップδ1 、δ2 に対する保有エネルギの減衰時定数から、最適な軸部材2の剛性およびギャップδ1 、δ2 を決定することができる。
以上のような手法によって決定された動吸振装置の軸部材2の剛性およびギャップδ1 、δ2 にしたがって動吸振装置を設計することにより、最も振動の減衰性の高い動吸振装置が得られる。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、振動体の振動を減衰させるのに、可動体と軸部材との衝突および摩擦を利用しているため、油等の粘性流体を使用していないため、温度等の影響がなく、また、保守も容易である。
また、本発明によれば、可動質量体と付加質量体との衝突によって振動体の振動エネルギを吸収するため、広い帯域での吸振特性が得られ、たとえば、一次振動モードと高次振動モードの振動を同時に抑制することができる。
また、本発明によれば、構造が簡単であるため、製作が容易でかつ、振動体への取付も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動吸振装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した動吸振装置1および動吸振装置1が適用される振動対象物をモデル化した図である。
【図3】図2に示したモデルに基づいて、動吸振装置1による制振シミュレーションの結果を示す図である。
【図4】本発明の動吸振装置の適用される振動体を有する装置の一例としての旋盤装置の全体構成を示す図である。
【図5】図4に示した旋盤装置によってタービンロータを加工する様子を示す図である。
【図6】図4に示した旋盤装置の刃物台付近の拡大図であって、本発明に係る動吸振装置を刃物板に取り付けた状態を示す図である。
【図7】動吸振装置を刃物板へ装着しない状態で、刃物板にプラスッチックハンマで衝撃を与えたときの解析データを示す図である。
【図8】動吸振装置を刃物板へ装着した状態で、刃物板にプラスッチックハンマで衝撃を与えたときの解析データを示す図である。
【図9】本発明に係る動吸振装置の第2の実施形態を説明するための図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る動吸振装置の構成を示すモデル図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る動吸振装置の構成を示す断面図である。
【図12】図11に示した動吸振装置および振動体Oのモデル図である。
【図13】本発明の動吸振装置の第5の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明の動吸振装置の第6の実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明の動吸振装置の第7の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る動吸振装置を他の対象に適用した場合を示す図である。
【図17】ラムに本発明の動吸振装置を適用した場合のモデル図である。
【図18】軸部材の剛性および各ギャップδ1 、δ2 に対する系が保有する保有エネルギの減衰時定数との関係を示す図である。
【図19】従来における動吸振装置のモデルの一例を示す図である。
【符号の説明】
1,161,162,171,181,191,192,194、195…動吸振装置
2…軸部材
3…軸部
4…取付部
5…係合部
6…可動部材
6a…挿入孔
7…ナット
11…固定部材

Claims (14)

  1. 振動体に連結固定され、所定の質量を有し、前記振動体の振動によって共振するように固有振動数が設定された付加質量体と、
    前記付加質量体に所定の範囲で移動可能に保持され、前記振動体の振動によって当該付加質量体と衝突を繰り返す可動質量体と
    を有する動吸振装置。
  2. 前記付加質量体は、一端に前記振動体への取付部が形成され、他端に係合保持部が形成された軸部材からなり、
    前記可動質量体は、前記軸部材が挿入される挿入孔を有し、一端面が前記係合保持部に保持され、前記挿入孔の内周に前記軸部材に当接可能で前記軸部材に対して所定の隙間をもつように形成された当接面を有する可動部材からなる
    請求項1に記載の動吸振装置。
  3. 前記所定の隙間は、前記振動体の振動振幅の大きさに基づいて設定されている
    請求項2に記載の動吸振装置。
  4. 前記所定の隙間は、前記振動体の振動振幅の大きさに近い値に設定されている
    請求項3に記載の動吸振装置。
  5. 前記可動部材は、前記軸部材の軸方向に重ねて複数装着され、
    前記各可動部材は、互いの端面が当接している
    請求項2〜4のいずれかに記載の動吸振装置。
  6. 前記軸部材と前記各可動部材の当接面との間の所定の隙間は、それぞれ異なる値に設定されている
    請求項5に記載の動吸振装置。
  7. 前記各可動部材の所定の隙間は、前記係合保持部に当接する可動部材から順に狭小化されている
    請求項6に記載の動吸振装置。
  8. 前記可動部材の当接面の軸方向の長さは、当該可動部材の挿入孔の軸方向の長さよりも短く形成されている
    請求項2〜7のいずれかに記載の動吸振装置。
  9. 前記振動体は、複数の振動モードを有し、
    前記各振動モードの振動によってそれぞれ共振する複数の前記軸部材と、
    当該各軸部材に挿入保持される複数の可動部材とからなる
    請求項2〜8のいずれかに記載の動吸振装置。
  10. 前記係合保持部の質量は、前記軸部材の固有振動数を所定の値にするように調整されている
    請求項2〜9のいずれかに記載の動吸振装置
  11. 前記係合保持部は、前記軸部材に対して着脱自在に設けられている
    請求項2〜10のいずれかに記載の動吸振装置。
  12. 被加工物を加工することにより振動が発生する振動体と、前記振動体に装着された動吸振装置とを有する工作機械であって、
    前記動吸振装置は、
    振動体に連結固定され、所定の質量を有し、前記振動体の振動によって共振するように固有振動数が設定された付加質量体と、
    前記付加質量体に所定の範囲で移動可能に保持され、前記振動体の振動によって当該付加質量体と衝突を繰り返す可動質量体とを有する
    工作機械。
  13. 前記付加質量体は、一端に前記振動体への取付部が形成され、他端に係合保持部が形成された軸部材からなり、
    前記可動質量体は、前記軸部材が挿入される挿入孔を有し、一端面が前記係合保持部に保持され、前記挿入孔の内周に前記軸部材に当接可能で前記軸部材に対して所定の隙間をもつように形成された当接面を有する可動部材からなる
    請求項12に記載の工作機械。
  14. 被加工物を加工することにより振動が発生する振動体と、前記振動体に装着された動吸振装置とを有する工作機械であって、
    前記動吸振装置は、
    一端が振動体へ取り付けられ、他端に係合保持部が形成され、所定の質量を有する軸部材と、
    前記軸部材が挿入される挿入孔を有し、一端面が前記係合保持部に保持され、前記挿入孔の内周に前記軸部材に当接可能で前記軸部材に対して所定の隙間をもつように形成された当接面を有する可動部材とを有し、
    前記可動部材の当接面が前記振動体の振動によって前記軸部材と衝突を繰り返すことにより前記振動体の振動を吸収する
    工作機械。
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