JP3910503B2 - 塩基性炭酸マグネシウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特殊な形状の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法及び該塩基性炭酸マグネシウムの利用に関する。より詳しくは、水酸化マグネシウムと二酸化炭素含有ガスとを原料とする、薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムの製造方法、及び該塩基性炭酸マグネシウムを含有する組成物又は構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
工業的に利用されている塩基性炭酸マグネシウムは、化学式mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表される。この化学式におけるm及びnの値については、製造条件等によって変化し一定のものではないが、mは3〜5、nは3〜8のものが一般的である。
【0003】
この塩基性炭酸マグネシウムは、通常、薄片状微細結晶の不定形凝集粒子として得られ、見掛け密度は0.2〜0.3g/mLと低く、比表面積は10〜40m2/gと比較的高いなどの特性をもつ。
塩基性炭酸マグネシウムは、上記したような特性を活かして、ゴム、塗料、製紙、医薬品、化粧品、建材、窯業原料などの分野で、利用されている。特にゴム用フィラーとしては、配合した天然ゴムに透明感を与える、ゴムの強度を向上させるなどの特性を有している。
【0004】
塩基性炭酸マグネシウムの製造方法としては、塩化マグネシウム等の可溶性マグネシウム塩と炭酸ナトリウムとの反応を利用したソーダ灰法、可溶性マグネシウム塩と炭酸アンモニウムとの反応を利用した炭安法、水酸化マグネシウムと炭酸ガスとの反応を利用したガス法など多くのものがある。いずれの方法においても、マグネシウム源と炭酸源との反応により中間生成物として得られる正炭酸マグネシウム(MgCO3・nH2Oで表され、n=3のものが一般的)あるいは炭酸水素マグネシウム(Mg(HCO3)2)を長時間熟成することによって塩基性炭酸マグネシウムを生成させる。
【0005】
この塩基性炭酸マグネシウムに関する研究開発は古くから行われてきており、例えば、特許第1207124号公報においては、正炭酸マグネシウムを含有する懸濁液を適切な温度条件にて熟成することにより、短時間でかつゴム用フィラーとして優れた性能をもつ塩基性炭酸マグネシウムを製造する方法が、特開昭61−31314号公報においては、水溶性硫酸塩の存在下で水溶性マグネシウム源と水溶性炭酸塩とを反応させることにより、合成樹脂の填料として優れた性能をもつ塩基性炭酸マグネシウムを製造する方法が提案されている。
【0006】
また、特開平2−208220号公報においては重炭酸マグネシウム水溶液を循環させながら加熱することによって得られる特定吸油量及び比表面積を有する塩基性炭酸マグネシウムが、特開平3−97618号公報においては正炭酸マグネシウム懸濁液をヒドロキシカルボン酸の共存下で加熱することによって得られる特定のX線回折パターンを示す塩基性炭酸マグネシウムが提案されている。さらに、塩基性炭酸マグネシウムの粒子形状に着目したものとしては、特許第1635418号公報及び特許第2602444号公報等があり、それらには、一次粒子が凝集してなる球状の多孔質粒子で、特定の嵩密度や比表面積等の性状を示す塩基性炭酸マグネシウムが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述のとおり、塩基性炭酸マグネシウムに関してはこれまで多くの検討がなされてきているが、ゴム用フィラーなどの限られた分野でのみの使用に留まっているのが現状である。また、その粒子形状に関しても、薄片状微細結晶からなる不定形又は球状のものしか知られておらず、性能及び用途等は充分に満足できるものとはいえず、他分野への用途拡大、高性能化、高機能化等に対応できる新規な形状の塩基性炭酸マグネシウムが嘱望されていた。
【0008】
このような状況のなか、本発明者らは、可溶性マグネシウム塩と可溶性炭酸塩とを原料として温度やpHなどの反応条件を適切に調節することにより、新規な形状を持つ塩基性炭酸マグネシウムが得られることを見出し、特許出願した(特願2002−179462)。この塩基性炭酸マグネシウムは、薄片状微細結晶からなる柱状または管状の凝集粒子という独特の形状を有し、高比表面積、高細孔容積、高吸油性、高吸水性、低かさ密度など、種々の粉体特性に優れたものであり、特に管状のものはこれら粉体物性をより優れたものとすることができる。
【0009】
しかしながら、本発明者らが特願2002−179462において提案した、薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムの製造方法は、水溶性マグネシウム塩と水溶性炭酸塩とを原料として用いるものであり、最終生成物中には、水溶性マグネシウム塩の陰イオン成分や、水溶性炭酸塩の陽イオン成分が、不純分として残留することとなり、これら不純分が製品中に含有されることが好ましくない場合には、製造したスラリーの溶媒の置換や生成物の洗浄などを行わなければならない。
【0010】
また、上記各原料としてバージン原料を使うとなると、コスト高になり、できることなら副産物などを利用したいところである。例えば水溶性マグネシウム塩として、水酸化マグネシウム法による脱硫中和廃液(硫酸マグネシウム含有液)を利用すれば、ある程度のコスト低減が可能となるが、その場合、該廃液中に含まれる諸成分が、塩基性炭酸マグネシウムの生成反応に悪影響を及ぼすことがあるほか、製品中にその成分が残留し、製品の価値を低下させる要因にもなる。
【0011】
このような状況に鑑み、本発明者らは、薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムの製造方法に関して、原料コストが低くかつ製品中に含有される不純分を低減できるような製造方法を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、開発に成功したのが本発明である。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、安価な原料が使用でき、かつ溶媒の置換や生成物の洗浄などを行わなくても、製品中に含有される不純分を低減できる、薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムの製造方法、及び該塩基性炭酸マグネシウムを含有する組成物又は構造体を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムの製造方法、及び該塩基性炭酸マグネシウムを含有する組成物又は構造体を提供するものであり、その製造方法の原料は水酸化マグネシウムと二酸化炭素含有ガスとを利用するものであり、製造された薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムは、組成物又は構造体として利用されるものである。
【0013】
その製造方法は、水酸化マグネシウム懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入することによって炭酸水素マグネシウム溶液を調製する第1ステップと、該炭酸水素マグネシウム溶液をpH7.5〜11.0に調節して正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる第2ステップと、該正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液をpH9.0〜12.0、かつ温度30〜75℃に調節した後、前記温度範囲を維持することにより塩基性炭酸マグネシウムを生成させる第3ステップとを有することを特徴とするものであり、その方法により前記した独特の形状である薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子の塩基性炭酸マグネシウムが製造される。
【0014】
そして、本発明の製造方法においては、水酸化マグネシウムと二酸化炭素含有ガスとを利用するものであり、水酸化マグネシウムは最も安価なマグネシウム原料であり、かつ二酸化炭素含有ガスも燃焼排ガスなどが利用できることから原料コストの低減が可能となるほか、水溶性マグネシウム塩と水溶性炭酸塩とを原料として用いる方法と比較して、最終生成物である塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液中に含有される不純分を低減できるという効果を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、それによって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。本発明では、原料として水酸化マグネシウムと二酸化炭素含有ガスとを利用するものであり、製造された塩基性炭酸マグネシウムは薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子であり、組成物又は構造体として利用される。
【0016】
その製造方法は、水酸化マグネシウム懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入することによって炭酸水素マグネシウム溶液を調製する第1ステップと、該炭酸水素マグネシウム溶液をpH7.5〜11.0に調節して正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる第2ステップと、該正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液をpH9.0〜12.0、かつ温度30〜75℃に調節した後、前記温度範囲を維持することにより塩基性炭酸マグネシウムを生成させる第3ステップとを有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の製造方法で得られる塩基性炭酸マグネシウムは、管状の凝集粒子で、薄片状微細結晶がカードハウス構造状に集合したものであり、本発明者らが既に提案した特願2002−179462のものと同等のものである。その化学組成は、mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表されるもので、m及びnの値については、製造条件等によって変化し一定ではないが、一般の塩基性炭酸マグネシウムとして知られているmの値が3〜5、nの値が3〜8のものなどと変わらない。その薄片状の結晶の厚さは0.005〜0.5μm、径は0.1〜10μmがよい。
【0018】
そして、その第1ステップは、水酸化マグネシウムの懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入して炭酸水素マグネシウム溶液を調製する工程であり、ここで使用する原料の水酸化マグネシウムについては、特に制限されることはなく、海水に水酸化カルシウムを添加して水酸化マグネシウムを沈殿させる、いわゆる海水法により製造される水酸化マグネシウムが利用できるほか各種のものが利用できる。
【0019】
例えば、天然に産出する水酸化マグネシウム鉱石(ブルーサイト)をそのまま粉砕したものや、天然に産出する炭酸マグネシウム鉱石(マグネサイト)や水酸化マグネシウム鉱石を焼成し、酸化マグネシウムとしたものを水和させたものなどが使用できる。さらに、硫酸マグネシウムや塩化マグネシウムなどの水溶性マグネシウム塩の水溶液に、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムなどのアルカリ性物質を加えて、水酸化マグネシウムを沈殿させることにより得られる水酸化マグネシウムの懸濁液を用いてもよい。
【0020】
水酸化マグネシウムの粒度については、より細粒の方が炭酸ガスとの反応性に優れ、第1ステップの所要時間を短縮できる点でよく、平均粒子径が50μm以下のものが望ましく、25μm以下のものがより望ましい。さらに水酸化マグネシウム懸濁液の濃度については、最終的に製造したい塩基性炭酸マグネシウムの量を勘案して適宜調節すればよい。ただし、濃度が低すぎると製造効率が悪くなり、逆に濃度が高すぎると懸濁液の粘度が上昇し、均一な反応を阻害することもあるので、5g/L〜200g/Lがよく、望ましくは10g/L〜100g/Lがよく、より望ましくは10〜50g/Lの濃度とするのがよい。
【0021】
また、第1ステップで使用する二酸化炭素含有ガスに関しても特段の制約はなく、ボンベ等から供給される二酸化炭素やそれを空気等で希釈したもの、燃焼排ガスなどの二酸化炭素を含有するものが利用できる。二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素濃度についても特に制限はないが、濃度が低すぎると、炭酸水素マグネシウムを生成させる効率が悪くなることから、5容量%以上の二酸化炭素を含有するガスを使用することが好適である。
【0022】
二酸化炭素含有ガスを導入する方法についても、各種の気液混合装置が適用でき、例えばガス導入管を通じて水酸化マグネシウム懸濁液中に、二酸化炭素含有ガスをバブリングする方法あるいは気泡塔を使って二酸化炭素含有ガスを導入する方法などが挙げられる。二酸化炭素含有ガスを導入する際は、二酸化炭素と水酸化マグネシウムとを効率よく反応させるために、ガスを細かく分散させて、気液接触を促進させることが好ましく、例えば、水酸化マグネシウム懸濁液を撹拌することによってガスを細かく分散させることができ、水酸化マグネシウムと二酸化炭素との反応効率を高めることができる。
【0023】
第1ステップにおいては、原料とする水酸化マグネシウムの90%以上、望ましくは全量が炭酸水素マグネシウムに変化するのがよい。その理由は、炭酸水素マグネシウムに変化していない水酸化マグネシウム量が多い場合、後の第2ステップ及び第3ステップにおいて、均一な反応が阻害され、最終生成物である塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子の粒子形状の均一性が悪化することがあるからである。
【0024】
水酸化マグネシウムから炭酸水素マグネシウムへの変化に関しては、液のpHや導電率などを計測することによって確認することができる。例えば、液のpHについては、二酸化炭素含有ガスを導入する前の水酸化マグネシウムの懸濁液のpHが9〜11程度であるのに対して、水酸化マグネシウムの全量が炭酸水素マグネシウムに変化すれば、液のpHはほぼ中性となる。第1ステップにおいては、液のpHが8以下になるまで二酸化炭素含有ガスを導入することが望ましく、pHが7.5以下となるまで導入することがより望ましい。
【0025】
水酸化マグネシウム懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入する際の液温についても特段の制約はないが、液温が高すぎると、炭酸水素マグネシウムの溶解度が低下してしまい、その結果として調製される炭酸水素マグネシウム溶液中に残存する未反応の水酸化マグネシウム量が多くなるばかりでなく、第1ステップの反応が完了する前に炭酸水素マグネシウムが分解してしまう現象も認められる。したがって、水酸化マグネシウム懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入させる際には、液温を35℃以下に保持することが望ましく、30℃以下に保持することがより望ましい。
【0026】
また、水酸化マグネシウムの懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入した後、未反応の水酸化マグネシウムやその他の不純分などの不溶解残渣を除去することがより望ましく、そうすることによって、不純分の少ない炭酸水素マグネシウム溶液を調製することができ、後の第3ステップにおいて、純度が高くかつ粒子の均一性の高い塩基性炭酸マグネシウムを得ることができる。
以上のようにして、第1ステップにおいては、炭酸水素マグネシウム溶液を調製する。
【0027】
続く第2ステップにおいては、第1ステップで調製された炭酸水素マグネシウム溶液を、pH7.5〜11.0に調節して正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる。この第2ステップにおいても、第1ステップの場合と同様に反応の均一性を確保するため反応液の撹拌を行うのが好ましい。なお、本発明でいう正炭酸マグネシウムとは、化学式MgCO3・nH2Oで表されるものであり、nの値については、n=3のものが一般的であるが、それ以外であっても、以下に述べる生成条件あるいは形状のものであれば制限はない。
【0028】
第2ステップに供される炭酸水素マグネシウム溶液の濃度については、特段の制約はなく、第1ステップで調製したものをそのまま用いてもよいし、また、第2ステップで生成させたい正炭酸マグネシウムの量を勘案して、適宜希釈あるいは濃縮したものを用いてもよい。ただ、炭酸水素マグネシウム溶液の濃度が低すぎると製造効率が悪くなり、逆に濃度が高すぎると、生成させる正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液の粘度が高くなり、均一な反応の進行を妨げることもあることから、望ましくは、第2ステップで生成させる正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液の固形分濃度が10〜300g/Lとなるように、炭酸水素マグネシウム溶液の濃度を調節することがよい。
【0029】
この第2ステップにおいては第1ステップにおいて中性域に移行したpHをアルカリ側にpH調節することが必要であり、そのために第1ステップで調製した炭酸水素マグネシウム溶液に、適当量のアルカリ性物質を添加することによってpH調節する。また、調節後は、pHが7.5〜11.0の範囲にあることが必要である。ここで使用するアルカリ性物質としては、特に限定はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などを使用することができる。
【0030】
第2ステップにおいて、pHを前記のとおり調整する必要があるのは、pHが7.5未満であると、後の第3ステップにおいて塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子が得られないためである。逆に、pHが11.0を超えると、正炭酸マグネシウムが不安定になり、正炭酸マグネシウムの生成が完了する前に塩基性炭酸マグネシウムが生成してしまったり、また炭酸水素マグネシウムから直接塩基性炭酸マグネシウムが生成してしまい、最終生成物の塩基性炭酸マグネシウムの粒子の均一性が著しく悪化するばかりでなく、pH調節のために使用するアルカリ性物質の必要量が多くなり、経済的にも芳しくない。
【0031】
第2ステップにおいて正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させるには、第1ステップにおいて調製した炭酸水素マグネシウム溶液をpH7.5〜11.0に調節した後、正炭酸マグネシウムの生成が終了するまで反応を継続させることがよい。正炭酸マグネシウムの生成の終了については、液のpHあるいは導電率を計測し、その値が安定化したことを観測することにより確認できる。
【0032】
また、その際の温度については、20〜55℃にすることが望ましく、30〜55℃にすることがより望ましい。20℃未満であると後の第3ステップにおいて、塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子のほかに、不定形の凝集粒子が混入しやすくなる。逆に55℃を超える温度の場合においても、第3ステップにおいて粒子の均一性が悪化する傾向がある。
【0033】
第2ステップでは、前記したとおりにpHを調節し、望ましくは温度も前記したとおり調節して、正炭酸マグネシウムの生成が終了するまで反応を継続させ、正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させるわけだが、その柱状粒子の形状としては、径が0.5〜10μm、長さが5〜500μmのものが望ましい。特に柱状粒子の径については、0.5μm未満あるいは10μmを超える場合、後の第3ステップにおいて、本発明の目的とする塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子が得られないことがある。
【0034】
第2ステップで生成される正炭酸マグネシウムの柱状粒子の形状については、後の第3ステップで製造したい塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子の形状によって調節することが望ましい。すなわち、本発明で製造される塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子は、第2ステップで生成する正炭酸マグネシウムの柱状粒子の表面に塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が析出することによって、管状という独特の粒子形状が形成されるものと推察される。
【0035】
また、第3ステップで製造される塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子の形状、特に径と長さは、第2ステップで生成させる正炭酸マグネシウムの柱状粒子の径と長さに影響されており、製造目的である塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子の形状に応じて、第2ステップで生成させる正炭酸マグネシウムの径と長さを調節することが望ましい。正炭酸マグネシウムの柱状粒子の径と長さと調節するには、第2ステップにおいて、正炭酸マグネシウムを生成させる際のpH及び温度を適切にコントロールすればよい。
【0036】
例えば、第2ステップにおけるpHについては、前記した範囲内で、より高いpHとすることにより、径の小さな正炭酸マグネシウムの柱状粒子を得ることができ、逆により低いpHとすることにより、径の大きな正炭酸マグネシウムの柱状粒子を得ることができる。また、第2ステップにおける温度に関しては、前記した範囲内で、より高い温度とすることにより、径の小さな正炭酸マグネシウムの柱状粒子を得ることができ、逆により低い温度とすることにより、径の大きな正炭酸マグネシウムの柱状粒子を得ることができる。
【0037】
具体例を挙げると、第2ステップで正炭酸マグネシウムを生成させる温度を45℃とした場合、pHを8.0とすると正炭酸マグネシウムの柱状粒子の径は5〜10μm、長さは20〜150μm、pHを9.0とすると径は1〜5μm、長さは20〜100μm、pHを10.0とすると径は0.5〜2μm、長さは10〜80μmとなる。
【0038】
また、生成させた正炭酸マグネシウムの柱状粒子を、一旦濾別、洗浄してもよく、そうすることによって、第2ステップで添加したアルカリ性物質を除去することができ、製品中に含有される不純分をより一層低減できる点で望ましい。このようにして、第2ステップでは、炭酸水素マグネシウム溶液から、正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる。
【0039】
第2ステップに続く、最後のステップである第3ステップにおいては、第2ステップで得られた正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液からpH9.0〜12.0、温度30〜75℃の下において塩基性炭酸マグネシウムを生成させる。また、第3ステップにおいても、第1ステップ及び第2ステップの場合と同様に、反応の均一性を確保するため反応液の撹拌を行うのが好ましい。
【0040】
第3ステップに供される正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液の固形分濃度は、特段の制約はなく、第2ステップで得られたものを直接用いてもよいし、製造したい塩基性炭酸マグネシウムの量を勘案して適宜希釈あるいは濃縮してもよいが、望ましくは、第3ステップで得られる塩基性炭酸マグネシウム懸濁液の固形分濃度が5〜100g/Lとなるように調節するのがよい。それは、5g/L未満であると、製造効率が低くなり現実的でないほか、100g/Lを越えると、懸濁液の粘度が高くなり撹拌が不十分となり、生成物の均一性が損なわれるばかりでなく、反応効率が低下するからでもある。
【0041】
第3ステップで塩基性炭酸マグネシウムを生成させる際の温度については、30〜75℃であることが必要かつ重要である。30℃未満の温度であると、目的とする管状の塩基性炭酸マグネシウムが得られなかったり、反応時間が極端に長くなって製造効率が低下し現実的でない。75℃を越える温度では、生成する塩基性炭酸マグネシウム粒子の均一性が悪くなり、不定形〜球状の凝集粒子の混入が顕著になる。
【0042】
該ステップにおけるpHについては、9.0〜12.0とすることが必要である。その理由は、pHが9.0未満であると正炭酸マグネシウムから塩基性炭酸マグネシウムが生成する速度が遅くなり製造効率が低下するばかりでなく、最終生成物中に正炭酸マグネシウムが残留することがあるからである。また、pHが12.0を越えると、最終生成物の粒子の均一性が損なわれ、不定形ないし球状の粒子が混入しやすくなる。
【0043】
さらに、第3ステップにおけるpHは、第2ステップにおいて正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる際のpHよりも高くすることが望ましく、より望ましくは0.3以上高くすることがよい。そうすることにより、均一性が高く、かつ種々の粉体物性に優れる塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子を、より効率よく製造することが可能となる。この範囲にpHを調節するためには、第3ステップにおいて酸性物質またはアルカリ性物質を添加し調節すればよく、添加する酸性物質としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などが、アルカリ性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが利用可能である。
【0044】
なお、第3ステップにおける温度及びpHは、第2ステップで生成させた正炭酸マグネシウムの形状、特に径と長さに応じて調節することが望ましく、そうすることによって、より均一な形状の塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子を得ることができる。具体的には、正炭酸マグネシウムの径が小さい場合、第3ステップでのpH及び温度は低い方が好ましく、逆に正炭酸マグネシウムの径が大きい場合、第3ステップでのpH及び温度は高い方が好ましい。
【0045】
第3ステップにおいては、塩基性炭酸マグネシウムの生成が終了するまで、前記した範囲の温度を保持しながら、撹拌を継続させることが望ましい。なお、その際には、温度30〜75℃に調節した直後の温度を継続して維持している必要はなく前記温度範囲では変動してもよいが、変動は可能な限り少ない方が好ましい。なお、塩基性炭酸マグネシウムの生成の終了に関しては、懸濁液のpHや導電率などを計測することによって確認することができる。例えばpHについては、塩基性炭酸マグネシウムの生成が継続している時点では、懸濁液のpHは低下していくのに対して、生成が終了すればpHはほぼ一定で推移する。
【0046】
以上のとおりであり、本発明においては、第1、第2及び第3ステップにより薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムが製造できる。また、本発明においては、各ステップの反応条件を適切にコントロールすることが重要であり、前述した好適な条件、望ましい条件、より望ましい条件などを適宜組み合わせることも何ら問題はない。例えば、より望ましい条件と好適な条件を組み合わせることも何ら問題ない。
【0047】
それら条件の組み合わせ例を示すと、効率よく塩基性炭酸マグネシウムの管状凝集粒子を製造するには、第1ステップにおいて、平均粒子径が50μm以下の水酸化マグネシウムを使用し、その懸濁液の濃度を10〜100g/L、液温を35℃以下に保持して、pHが8以下になるまで二酸化炭素含有ガスを導入し、第2ステップにおいて、pHを8を超え11.0以下の範囲でアルカリ性に調節し、温度を20〜55℃として、径0.5〜10μm、長さ5〜500μmの正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させ、第3ステップにおいては、pH9.0〜12.0の範囲であって第2ステップよりも高いpHで、かつ温度30〜75℃に調節した後、前記温度範囲を維持することにより塩基性炭酸マグネシウムを生成させることが望ましい。
【0048】
また、第1ステップにおいて、平均粒子径が25μm以下の水酸化マグネシウムを使用し、その懸濁液の濃度を10〜50g/L、液温を30℃以下に保持して、pHが7.5以下になるまで二酸化炭素含有ガスを導入した後不溶解残渣を除去し、第2ステップにおいて、pHを7.5を超え11.0以下の範囲でアルカリ性に調節し、温度を30〜55℃として、径0.5〜10μm、長さ5〜500μmの正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させた後、濾別、洗浄して第2ステップで添加したアルカリ性物質を除去し、第3ステップにおいては、pH9.0〜12.0の範囲であって第2ステップよりも0.3以上高いpHで、かつ温度30〜75℃に調節した後、前記温度範囲を維持することにより塩基性炭酸マグネシウムを生成させることによって、粒子の均一性が高く、各種粉体物性がより優れる塩基性炭酸マグネシウムの管状凝集粒子を安定して得ることができ、より望ましい製造条件といえる。
【0049】
このようにして製造された塩基性炭酸マグネシウムは、その用途に応じて懸濁液の状態、あるいは脱水、乾燥させ乾燥粉の状態として利用することができる。懸濁液の状態で利用する場合、反応後の懸濁液をそのまま用いてもよいし、用途に応じて適宜希釈あるいは濃縮してもよい。乾燥粉の状態で利用する場合は、脱水工程や乾燥工程を経ることによって乾燥粉を得ればよい。
【0050】
ただし、乾燥工程において乾燥凝集が起こって後の工程で解砕が必要となることもあり、場合によっては解砕することにより粒子形状が破壊される現象も認められることから、乾燥粉を得るためのより望ましい手法としては、生成後の塩基性炭酸マグネシウム懸濁液の溶媒をアルコールなどの有機溶媒で置換するか、あるいは脱水後にアルコール等の有機溶媒による洗浄工程を設け、その後乾燥させる方法がよい。
【0051】
このようなアルコールなどの有機溶媒による溶媒の置換またはアルコールなどによる洗浄を行うことによって、乾燥による凝集が抑えられた乾燥粉が得られる。なお、ここで用いる有機溶媒としては、塩基性炭酸マグネシウムの溶解度が低いものが好適であり、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、アセトンなどが使用できる。
【0052】
また、上記したような有機溶媒による溶媒の置換あるいは洗浄を行わなくても、乾燥凝集が起こり難い乾燥方法を採用してもよく、例えば噴霧乾燥機や流動層乾燥機、真空乾燥機、真空凍結乾燥機、撹拌乾燥機などを用いれば、乾燥凝集の抑制された乾燥粉を得ることができる。このようにして得られた塩基性炭酸マグネシウムは、脂肪酸塩、樹脂酸塩、もしくはカップリング剤をはじめとする各種界面活性剤などの有機系表面処理剤、又はリン酸塩や硫酸塩などの無機系表面処理剤にて処理し、各分野で利用しても何ら差し支えない。
【0053】
前記方法によって得られる塩基性炭酸マグネシウムは、薄片状微細結晶がカードハウス構造状に集合した管状の凝集粒子という独特の形状を示す。管状の凝集粒子の寸法としては、内径0.5〜5μm、外径1〜20μm、長さ5〜200μmのものが得られ、さらに先に述べたように第2ステップにおける温度やpHを調節することによって、内径や外径、長さがコントロールされたものを製造することができる。
【0054】
本発明により製造される塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子は、このような独特の形状に由来して、高比表面積、高吸油性、高吸水性、低嵩密度、多孔性、独特の細孔分布、高細孔容積など種々の優れた特性を有するものとなる。その物性の測定例を挙げると、比表面積については、BET法による測定で70〜200m2/gと高い値を示す。また、細孔分布については、水銀圧入法による測定で、細孔径0.01〜100μmの細孔容積が5000〜12000mm3/gと高い値を示すほか、細孔径0.01〜100μmの細孔容積(A)と細孔径0.5〜5μmの細孔容積(B)の比であるB/Aの値が0.45〜0.85という独特の細孔分布を示す。
【0055】
本発明により製造される塩基性炭酸マグネシウムは、このような独特の形状及び優れた特性を活かして、様々な分野、具体的には、ゴム用フィラー、樹脂用フィラー、製紙用フィラー、塗料、断熱材、保温材、吸音材、フィルター、建材、医薬類及びその担体、農薬類及びその担体、化粧料及びその担体、触媒担体、微生物担体、生体担体、肥料、吸液剤、吸油剤、乾燥剤、芳香剤、消臭剤、シーリング剤、防錆剤、食品添加物、濾過材、濾過助材、研磨剤、並びにカラム充填剤などに利用が可能であり、これらが本発明の薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムを含有する組成物又は構造体である。
【0056】
そして、本発明の製造方法により得られる塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子は、先に本発明者が提案した(特願2002−179462)可溶性マグネシウム塩と可溶性炭酸塩とを原料として製造されたものと比較して、不純分が低減されていることから、より広範な分野への応用を可能とするものであり、各種製品に配合もしくは塗布、又は原材料などとして用いることにより、製品の品質、性能又は機能性の向上に優れた効果を発揮するものである。また、炭酸源として二酸化炭素含有ガスを利用し、マグネシウム源としてマグネシウム原料の中でも最も安価な水酸化マグネシウムを利用することから原料コストの低減が可能となる。
【0057】
【実施例】
以下において、本発明の実施例及び比較例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、以下の実施例及び比較例における生成物の同定、すなわち正炭酸マグネシウムあるいは塩基性炭酸マグネシウムの判定は、化学分析、粉末X線回折、光学顕微鏡観察、SEM観察、TEM観察により行った。
【0058】
[実施例1]
水酸化マグネシウムの懸濁液(30g/L)2.0Lに、その温度を20℃に保持して撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/分の速度で30分間導入した後、不溶解残渣を除去して、炭酸水素マグネシウム溶液(pH7.3)を調製した(第1ステップ)。
【0059】
このステップに続いて、炭酸水素マグネシウム溶液に、適量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを8.0に調節するとともに、加熱して液温を35℃にまで上昇させ、その後も同温度に保持しながら60分間撹拌して、正炭酸マグネシウムの懸濁液を調製した(第2ステップ)。この正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、径5〜10μm、長さ30〜100μmの柱状粒子であることが確認された。
【0060】
引き続き、正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液に、適量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを10.5に調節するとともに、加熱して液温を55℃にまで上昇させ、その後も同温度に保持しながら120分間撹拌して、塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を得た(第3ステップ)。この塩基性炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、厚さ0.02〜0.1μm、径1〜2μmの薄片状微細結晶からなる、内径2〜5μm、外径5〜10μm、長さ20〜50μmの管状の凝集粒子であることが確認された。
【0061】
[実施例2]
第2ステップのpHを9.0、第3ステップの温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして、塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を得た。
なお、第2ステップで生成した正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、径1〜3μm、長さ20〜50μmの柱状粒子であることが確認された。また、第3ステップで得られた塩基性炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、厚さ0.01〜0.05μm、径0.2〜1μmの薄片状微細結晶からなる、内径1〜2μm、外径2〜3μm、長さ5〜30μmの管状の凝集粒子であることが確認された。
【0062】
[実施例3]
第2ステップのpHを10.0、第3ステップの温度を40℃とした以外は、実施例1と同様にして、塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を得た。
なお、第2ステップで生成した正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ径0.5〜1μm、長さ10〜50μmの柱状粒子であることが確認された。第3ステップで得られた塩基性炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、厚さ0.005〜0.02μm、径0.1〜0.5μmの薄片状微細結晶からなる、内径0.5〜1μm、外径1〜1.5μm、長さ5〜30μmの管状の凝集粒子であることが確認された。
【0063】
[実施例4]
水酸化マグネシウムの懸濁液(45g/L)2.0Lに、懸濁液の温度を15℃に保持して撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを10.0L/分の速度で45分間導入した後、不溶解残渣を除去して、炭酸水素マグネシウム溶液(pH7.2)を調製した(第1ステップ)。
【0064】
このステップに続いて、炭酸水素マグネシウム溶液に、適量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを8.0に調節するとともに、加熱して液温を50℃にまで上昇させ、その後も同温度に保持しながら60分間撹拌した後、生成物を濾別し、再度同量の水道水に分散させて、正炭酸マグネシウムの懸濁液を調製した(第2ステップ)。この正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、径3〜5μm、長さ30〜80μmの柱状粒子であることが確認された。
【0065】
引き続き、正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液に、適量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを11.0に調節するとともに、加熱して液温を55℃にまで上昇させ、その後も同温度に保持しながら120分間撹拌して、塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を得た(第3ステップ)。この塩基性炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、厚さ0.01〜0.05μm、径0.5〜1μmの薄片状微細結晶からなる、内径2〜5μm、外径3〜8μm、長さ20〜50μmの管状の凝集粒子であることが確認された。
【0066】
[実施例5]
第2ステップのpHを9.0とし、第3ステップのpHを10.5、温度を50℃とした以外は実施例4と同様にして、塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を得た。なお、第2ステップで生成した正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、径1〜2μm、長さ20〜50μmの柱状粒子であることが確認された。第3ステップで得られた塩基性炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、厚さ0.005〜0.02μm、径0.1〜0.5μmの薄片状微細結晶からなる、内径1〜2μm、外径2〜3μm、長さ5〜30μmの管状の凝集粒子であることが確認された。
【0067】
[比較例1]
水酸化マグネシウムの懸濁液(30g/L)2.0Lに、懸濁液の温度を20℃に保持して撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/分の速度で30分間導入して、炭酸水素マグネシウム溶液を調製した。
【0068】
これに続いて、炭酸水素マグネシウム溶液をそのまま(pH7.0)加熱して液温を50℃にまで上昇させ、その後も同温度に保持しながら60分間撹拌して、正炭酸マグネシウムの懸濁液を調製した。この正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、径20〜50μm、長さ100〜300μmの柱状粒子であることが確認された。
【0069】
引き続き、正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液をそのまま(pH7.8)加熱して液温を85℃にまで上昇させ、その後も同温度に保持しながら180分間撹拌して、塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を得た。この塩基性炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、厚さ0.05〜0.2μm、径1〜10μmの薄片状微細結晶からなる、20〜100μmの不定形〜楕円状の凝集粒子であることが確認された。
【0070】
[比較例2]
40℃に調節した硫酸マグネシウム7水塩水溶液(125g/L)2.0Lに、40℃に温度を維持しながら無水炭酸ナトリウム(220g/L)0.50Lを徐々に添加し50分間撹拌して、正炭酸マグネシウムを得た。この正炭酸マグネシウムをSEMにて観察したところ、径が1〜3μm、長さが10〜50μmの柱状粒子であることが確認された。
【0071】
これに続いて、正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液(pH10.2)を加熱して、温度を55℃に保持しながら120分間撹拌して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。得られた生成物をSEMにて観察したところ、厚さが0.01〜0.04μm、径が0.5〜2μmの薄片状微細結晶からなる凝集粒子で、外径が1〜5μm、内径が0.5〜3μm、長さが5〜20μmの管状の凝集粒子であることが確認された。
【0072】
[生成物中に含有される不純分の分析]
実施例及び水溶性マグネシウム塩と水溶性炭酸塩とを用いた比較例2で得られた塩基性炭酸マグネシウムの懸濁液を濾別し乾燥させたものについて、含有される不純分の分析を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
生成物中に含有される不純分の分析結果を示す表1からも明らかなように、本発明の製造方法により得られる塩基性炭酸マグネシウムは、水溶性マグネシウム塩と水溶性炭酸塩とを原料として使用した場合(比較例2)よりも、不純分含有量が格段に低減されていることがわかる。すなわち、全ての実施例において、ナトリウム酸化物については、比較例2に比して1/4以下、硫黄酸化物(SO3)については1/20以下になっていることが表1から把握できる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、種々の優れた特性を発揮する塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子を、水酸化マグネシウムと二酸化炭素含有ガスとを原料として製造することができ、その結果水溶性マグネシウム塩と水溶性炭酸塩とを原料として用いる方法と比較して、原料コストが低く抑えられ、かつ製品中に含有される不純分を低減することが可能となる。また、この製造方法により得られた塩基性炭酸マグネシウムが含有される組成物又は構造体は、原料コストが低く、かつ製品中の不純分も低減されていることから品質向上などに優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた塩基性炭酸マグネシウムの粒子形状を示すSEM写真(×10,000)である。
【図2】実施例2で得られた塩基性炭酸マグネシウムの粒子形状を示すSEM写真(×10,000)である。
Claims (6)
- 水酸化マグネシウム懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入することによって炭酸水素マグネシウム溶液を調製する第1ステップと、該炭酸水素マグネシウム溶液をpH7.5〜11.0に調節して正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる第2ステップと、該正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液をpH9.0〜12.0、かつ温度30〜75℃に調節した後、前記温度範囲を維持することにより塩基性炭酸マグネシウムを生成させる第3ステップとを有することを特徴とする、薄片状微細結晶からなる管状の凝集粒子である塩基性炭酸マグネシウムの製造方法。
- 第1ステップにおいて、35℃以下に保持された水酸化マグネシウム懸濁液に二酸化炭素含有ガスを導入することにより炭酸水素マグネシウム溶液を調製する請求項1に記載の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法。
- 第2ステップにおいて、炭酸水素マグネシウム溶液から正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる温度を、20〜55℃とする請求項1又は2に記載の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法。
- 第2ステップにおいて、径が0.5〜10μm、長さが5〜500μmの正炭酸マグネシウムの柱状粒子を生成させる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法。
- 第3ステップにおいて、正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液から塩基性炭酸マグネシウムを生成させるpHを、第2ステップにおいて正炭酸マグネシウムを生成させるpHよりも高くする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法。
- 第2ステップにおいて、正炭酸マグネシウムを生成させる際のpH及び/又は温度を調節することにより、正炭酸マグネシウムの柱状粒子の径及び/又は長さを変化させることにより、第3ステップで、所望の径及び/又は長さの塩基性炭酸マグネシウムの管状の凝集粒子を生成させる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法。
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