JP3874973B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助を行う電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両のステアリング機構に電動モータが発生するトルクを伝達し、これにより、操舵の補助を行う電動パワーステアリング装置が用いられている。
この種の電動パワーステアリング装置では、ハンドルの操作により入力された操舵トルクなどに基づいて定めた目標電流値から、電動モータの回転速度および車両速度に基づいて定めたブレーキ電流値を減算して得られる値をモータ電流指令値として、電動モータに供給するモータ電流を制御している。ブレーキ電流値は、車両速度が低速の時には比較的小さな値に設定され、高速の時には大きな値に設定される。これにより、高速走行時における車両の安定性を向上させることができ、また、ハンドルを中立位置(直進走行時におけるハンドルの位置)に速やかに収斂させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術では、ハンドルの操作とは無関係にブレーキ電流値が決定されるため、たとえば、ハンドルを中立位置から一方向に切り込む際に、電動モータから十分なトルクが発生せず、運転者にフリクション感を与えるおそれがあった。
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、車両の走行安定性やハンドルの中立位置への収斂性を悪化させることなく、操舵フィーリングを向上できる電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、上記モータの回転方向および回転数を表す回転速度を検出するためのモータ回転検出手段と、上記ステアリング機構に入力される操舵トルクの方向および大きさを表す操舵トルク値を検出するための操舵トルク検出手段と、この操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいてモータ電流目標値を設定する電流目標値設定手段と、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度ならびに上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいて、上記電流目標値設定手段によって設定されるモータ電流目標値から減算すべきブレーキ電流値を定めるブレーキ電流設定手段とを備え、上記ブレーキ電流設定手段は、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度に基づいてブレーキ電流基本値を設定する基本値設定手段と、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値が有する符号との異同を判断する方向異同判断手段と、この方向異同判断手段の判断結果および上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいてトルク補正係数を定めるトルク補正係数設定手段と、上記基本値設定手段によって設定されるブレーキ電流基本値に、上記トルク補正係数設定手段によって設定されるトルク補正係数を乗算する第1乗算手段とを含み、上記トルク補正係数設定手段は、トルク補正係数テーブルを有し、上記トルク補正係数テーブルは、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値が、零である場合、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と逆の符号である場合、または、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、予め定める値以下である場合には、トルク補正係数を相対的に大きな一定値に設定し、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、上記予め定める値よりも大きな所定値以上である場合には、トルク補正係数を相対的に小さな一定値に設定し、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、上記予め定める値よりも大きく、上記予め定める値よりも大きな所定値よりも小さい範囲内である場合には、当該操舵トルク値の絶対値が大きいほどトルク補正係数を小さく設定する含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0005】
また、請求項2記載の発明は、上記電流目標値設定手段によって設定されたモータ電流目標値から上記ブレーキ電流設定手段によって設定されたブレーキ電流値を減算して得られる値を、上記モータに供給すべき電流値である電流指令値として上記モータを制御するモータ制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
上記の発明によれば、モータ電流目標値から減算すべきブレーキ電流値は、モータの回転方向および回転数だけでなく、操舵トルクの方向および大きさも考慮して定められる。これにより、請求項2に記載されているように、モータ電流目標値からブレーキ電流値を減算して得られる値を電流指令値としてモータの制御を行うことで、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させ、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、モータから操舵補助を十分に行うことができるトルクを発生させることが可能になる。ゆえに、ハンドルを右方向または左方向に切り込む際に、運転者にフリクション感を与えるおそれをなくすことができ、操舵フィーリングを向上させることができる。
【0007】
たとえば、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、運転者はハンドルから手を離すか、ハンドルが急に戻るのを防ぐためにハンドルに軽く力を加えるので、操舵トルクの方向とモータの発生トルクの方向とは逆になる。一方、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、操舵トルクの方向とモータの発生トルクの方向とが一致する。したがって、操舵トルクの方向とモータの回転方向とが逆であればブレーキ電流値が大きくなるようにトルク補正係数を設定し、操舵トルクの方向とモータの回転方向とが一致していればブレーキ電流値が小さくなるようにトルク補正係数を設定することにより、車両の走行安定性やハンドルの中立位置への収斂性を悪化させることなく、操舵フィーリングを向上させることができる。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記電動パワーステアリング装置は、車両の走行速度を検出するための車速検出手段をさらに含み、上記ブレーキ電流設定手段は、上記車速検出手段によって検出される車両の走行速度に基づいて車速補正係数を定める車速補正係数設定手段と、この車速補正係数設定手段によって設定される車速補正係数を、上記基本値設定手段によって設定されるブレーキ電流基本値に乗算する第2乗算手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の電動パワーステアリング装置である。
【0009】
この発明によれば、たとえば、高速走行時にはブレーキ電流値が大きな値をとるように車速補正係数を設定し、低速走行時にはブレーキ電流値が小さな値をとるように車速補正係数を設定することにより、高速走行時における車両の走行安定性が損なわれることを防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。ステアリング機構には、操舵トルクを検出するためのトルクセンサ1が付設されており、制御部2は、トルクセンサ1の出力信号と、車速を検出する車速センサ3の出力信号とに基づいて、モータ4を制御する。このモータ4が発生する駆動力が、減速機などを含む適当な駆動力伝達機構を介して、操舵補助力としてステアリング機構に伝達され、操舵補助が行われるようになっている。
【0011】
モータ4には、モータ駆動回路5からの電流が供給されるようになっている、そして、モータ4に流れるモータ電流は、モータ電流検出回路6によって検出され、モータ4の端子間電圧は、モータ端子電圧検出回路7によって検出されて、いずれも、フィードバック制御のために、制御部2に入力されるようになっている。
制御部2は、マイクロコンピュータなどにより構成されており、このマイクロコンピュータが所定の動作プログラムに従って動作することにより、モータ4の制御に必要な機能を実現する。これにより、制御部2は、次に説明する複数の機能ブロックを実質的に有している。
【0012】
すなわち、制御部2は、トルクセンサ1の出力信号の位相を進め、系を安定化させるための位相補償部21と、位相補償部21の出力などに基づいて適切な電流指令値を生成する電流指令値演算部22と、電流指令値とモータ電流検出回路6によって検出されるモータ電流値との偏差を演算する減算部23と、この減算部23の出力に基づいてPWM駆動パルスを生成するPWM生成部24とを備えている。
【0013】
電流指令値演算部22は、位相補償部21が出力するトルク値Tに対応した目標電流値Iを出力するトルク−モータ電流特性テーブル31と、位相補償部21の出力トルク値Tの時間微分値ΔTに対応した電流補正値ΔIを出力する微分制御テーブル32と、モータ電流検出回路6およびモータ端子電圧検出回路7の各出力に基づいてモータ4の回転数Nを検出するモータ回転検出部33と、このモータ回転検出部33が出力する回転数N、車速センサ3が検出する車速Vおよび位相補償部21が出力するトルク値Tに基づいてブレーキ電流値ΔIbcを生成するブレーキ電流制御部34とを含む。トルク−モータ電流特性テーブル31は、車速域ごとに異なるトルク−モータ電流特性を設定した複数のテーブルを有しており、車速センサ3の出力信号に基づいて、いずれか1つのテーブルが選択されるようになっている。
【0014】
トルク−モータ電流特性テーブル31は、右方向操舵に対する補助力を発生する方向のトルクをモータ4から発生させる場合に正の値の目標電流Iを出力し、左方向操舵に対する補助力を発生させる方向のトルクをモータ4から発生させる場合に負の値の目標電流Iを出力する。また、位相補償部21から入力されるトルク値Tは、ハンドルに右方向操舵トルクが作用しているときに正の値をとり、ハンドルに左方向操舵トルクが作用しているときに負の値をとる。そして、目標電流値Iは、一定の範囲内において、トルク値Tに対して目標電流値Iが単調に増加するように定められている。
【0015】
微分制御テーブル32は、モータ4およびこれに関連した機構部品の慣性に起因する応答遅れを改善するためのものである。すなわち、急操舵が行われることによりトルク値Tの時間微分値ΔTの絶対値が大きな値をとるときには、それに応じて絶対値の大きな電流補正値ΔIが生成される。この電流補正値ΔIは、加算部35において、トルク−モータ電流特性テーブル31が出力する目標電流値Iに加算され、これにより、応答性改善のための補正が施された目標電流値I+ΔIが得られる。
【0016】
モータ回転検出部33は、モータ4の回転数Nを算出するため、まず、モータ電流検出回路6によって検出されるモータ電流の平均値Iaと、モータ端子電圧検出回路7によって検出される端子間電圧の平均値Vaとを求める。そして、その求めたモータ電流平均値Iaおよび端子間電圧平均値Vaから、下記第(1)式に従ってモータ4の内部抵抗の瞬時値Rを算出する。
R=Va/Ia ・・・・・・(1)
次に、モータ内部抵抗瞬時値Rを時間積分してモータ4の内部抵抗値Riを求め、この内部抵抗値Ri、モータ電流平均値Iaおよび端子間電圧平均値Vaから、下記第(2)式に従ってモータ4の逆起電圧Vcを求める。
【0017】
Vc=Va−Ia・Ri ・・・・・・(2)
そして、下記第(3)式に従い、上述のようにして求めたモータ4の逆起電圧Vcに、逆起電圧Vcに対する回転数の比であるモータ発電定数Kを乗算することにより、モータ4の回転数Nを算出する。この回転数Nは、モータ4の逆起電圧Vcの符号に対応した符号を有し、たとえば、モータ4の右方向回転に対しては正の値をとり、モータ4の左方向回転に対しては負の値をとる。つまり、回転数Nは、モータ4の回転方向成分を含む回転速度であるといえる。
【0018】
N=K・Vc ・・・・・・(3)
ブレーキ電流制御部34は、モータ回転検出部33が出力する回転数Nに対応したブレーキ電流基本値Ibcを出力するブレーキ電流基本値設定テーブル41と、ブレーキ電流基本値Ibcに車速Vに応じた車速補正係数を乗じて出力する車速補正係数テーブル42と、この車速補正係数テーブル42が出力する値に位相補償部21の出力トルク値Tおよびモータ4の回転数Nに応じたトルク補正係数を乗じてブレーキ電流値ΔIbcを生成するトルク補正係数テーブル43とを有している。
【0019】
トルク補正係数テーブル43(ブレーキ電流制御部34)が生成するブレーキ電流値ΔIbcは、減算部36において目標電流値I+ΔIから減算され、これにより得られる値I+ΔI−ΔIbcが電流指令値とされる。
図2は、ブレーキ電流制御部34によるブレーキ電流値ΔIbcの生成について詳細に説明するための図であり、ブレーキ電流基本値設定テーブル41、車速補正係数テーブル42およびトルク補正係数テーブル43の一例を示している。
【0020】
ブレーキ電流基本値設定テーブル41は、モータ4(図1参照)の回転数Nの絶対値が一定値+N1,−N1の絶対値以下であり、不等式−N1≦N≦+N1の関係を満たしている場合には、ブレーキ電流基本値Ibcを零に設定する。また、モータ4の回転数Nの絶対値が一定値+N2,−N2の絶対値以上である場合には、ブレーキ電流基本値Ibcを予め定められた値に設定する。そして、モータ4の回転数Nが不等式−N2<N<−N1または+N1<N<+N2を満たしている場合には、モータ4の回転数Nの絶対値が大きいほどブレーキ電流基本値Ibcの絶対値が大きくなるように設定する。なお、ブレーキ電流基本値設定テーブル41の特性は、原点を通る直線としてもよい。ただし、このようにして設定されるブレーキ電流基本値Ibcは、モータ4が右方向回転している場合には正の値に設定され、モータ4が左方向回転している場合には負の値に設定される。
【0021】
車速補正係数テーブル42は、車速Vに応じた良好な操舵フィーリングを達成するためのものである。すなわち、車両の低速走行時には、モータ4に大電流を供給して大きな操舵補助力を発生させるのが好ましいから、絶対値の比較的小さなブレーキ電流値ΔIbcが適切である。一方、車両の高速走行時には、車両のふらつきを抑えて走行安定性を高めるため、絶対値の比較的大きなブレーキ電流値ΔIbcが適切である。
【0022】
そこで、車速補正係数テーブル42は、たとえば、車速Vが予め定める低速度V1以下であれば車速補正係数を0に設定し、車速Vが予め定める高速度V2以上であれば車速補正係数を1に設定し、車速Vが上記低速度V1より大きく上記高速度V2よりも小さい範囲内にあれば車速補正係数を車速Vに比例した値に設定する。そして、この車速Vに応じて設定した車速補正係数を、ブレーキ電流基本値設定テーブル41から与えられるブレーキ電流基本値Ibcに乗じて出力する。
【0023】
トルク補正係数テーブル43は、位相補償部21が出力するトルク値Tおよびモータ回転検出部33が出力する回転数Nから、ハンドルに作用する操舵トルクの方向とモータ4の回転方向との関係を求め、この関係およびトルク値Tの絶対値に基づいてトルク補正係数を設定する。
たとえば、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すとき、モータ4の慣性による影響を排除して、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させるために、絶対値の比較的大きなブレーキ電流値ΔIbcに設定されるのが好ましい。一方、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、モータ4に大電流を供給して大きな操舵補助力を発生させるのが好ましいから、絶対値の比較的小さなブレーキ電流値ΔIbcに設定されるのが適切である。
【0024】
また、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、運転者はハンドルから手を離すか、ハンドルが急に戻るのを防ぐためにハンドルに軽く力を加えるので、位相補償部21が出力するトルク値Tは、零またはモータ4の回転数Nと逆の符号を有する値となる。一方、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、位相補償部21が出力するトルク値Tの符号とモータ4の回転数Nの符号とが一致する。
【0025】
そこで、トルク補正係数テーブル43は、位相補償部21が出力するトルク値Tが零またはモータ4の回転数Nと逆の符号を有する値である場合には、トルク補正係数をたとえば1に設定する。そして、この設定したトルク補正係数を車速補正係数テーブル42から与えられる値に乗じ、これにより得られる値をブレーキ電流値ΔIbcとして出力する。これにより、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、ブレーキ電流値ΔIbcは絶対値の比較的大きな値に設定されるので、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させることができる。
【0026】
また、位相補償部21が出力するトルク値Tの符号とモータ4の回転数Nの符号とが一致するとき、トルク補正係数テーブル43は、トルク値Tの絶対値に基づいてトルク補正係数を設定する。たとえば、トルク値Tの絶対値が予め定める値T1以下であればトルク補正係数を1に設定し、トルク値Tの絶対値が予め定める値T2以上であればトルク補正係数を一定値αに設定し、トルク値Tの絶対値が上記値T1より大きく上記値T2よりも小さい範囲内にあれば、トルク値Tの絶対値が大きいほどトルク補正係数を小さく設定する。そして、この設定したトルク補正係数を車速補正係数テーブル42から与えられる値に乗じ、これにより得られる値をブレーキ電流値ΔIbcとして出力する。これにより、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、トルク値Tの絶対値に応じて、ブレーキ電流値ΔIbcは絶対値が相対的に小さな値に設定され、モータ4から十分な操舵補助力(トルク)を発生させることができる。
【0027】
以上のようにこの実施形態によれば、モータ4に流れるモータ電流を制御するための電流指令値は、トルク−モータ電流特性テーブル31が生成する目標電流値Iと微分制御テーブル32が生成する電流補正値ΔIとの和から、ブレーキ電流制御部34が生成するブレーキ電流値ΔIbcを減算して得られる値に設定される。そして、ブレーキ電流制御部34が生成するブレーキ電流値ΔIbcは、モータ回転数Nに対応したブレーキ電流基本値Ibcに、車速Vに応じた車速補正係数およびハンドルに作用する操舵トルクの方向とモータ4の回転方向との関係に応じたトルク補正係数を乗じることにより設定される。
【0028】
これにより、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させ、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、モータ4から十分な操舵補助力を発生させることが可能になる。ゆえに、ハンドルを右方向または左方向に切り込む際に、運転者にフリクション感を与えるおそれをなくすことができ、操舵フィーリングを向上させることができる。しかも、高速走行時にはブレーキ電流値ΔIbcの絶対値が大きな値をとるように車速補正係数が設定されるので、高速走行時における車両の走行安定性が損なわれることもない。
【0029】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態でも実施することが可能である。たとえば、上述の実施形態では、ブレーキ電流基本値Ibcに車速補正係数を乗じた後にトルク補正係数を乗じるとしたが、ブレーキ電流基本値Ibcにトルク補正係数を乗じた後に車速補正係数を乗じてもよい。
また、車速Vを加味したブレーキ電流値ΔIbcを設定するために、車速Vに応じた車速補正係数をブレーキ電流基本値Ibcに乗じるのではなく、車速域ごとに異なる複数のブレーキ電流基本値設定テーブル41を用意しておき、いずれかのテーブルを車速Vに応じて選択し、この選択したテーブルに基づいてブレーキ電流基本値Ibcを定めるようにしてもよい。
【0030】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】ブレーキ電流制御部によるブレーキ電流値の生成について詳細に説明するための図であり、ブレーキ電流基本値設定テーブル、車速補正係数テーブルおよびトルク補正係数テーブルの一例を示している。
【符号の説明】
1 トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
2 制御部
3 車速センサ(車速検出手段)
4 モータ
5 モータ駆動回路
6 モータ電流検出回路(モータ回転検出手段)
7 モータ端子電圧検出回路(モータ回転検出手段)
23 減算部
24 PWM生成部(モータ制御手段)
31 トルク−モータ電流特性テーブル(電流目標値設定手段)
32 微分制御テーブル(電流目標値設定手段)
33 モータ回転検出部(モータ回転検出手段)
34 ブレーキ電流制御部(ブレーキ電流設定手段)
35 加算部(電流目標値設定手段)
36 減算部
41 ブレーキ電流基本値設定テーブル(基本値設定手段)
42 車速補正係数テーブル(車速補正係数設定手段、第2乗算手段)
43 トルク補正係数テーブル(方向異同判断手段、トルク補正係数設定手段、第1乗算手段)
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助を行う電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両のステアリング機構に電動モータが発生するトルクを伝達し、これにより、操舵の補助を行う電動パワーステアリング装置が用いられている。
この種の電動パワーステアリング装置では、ハンドルの操作により入力された操舵トルクなどに基づいて定めた目標電流値から、電動モータの回転速度および車両速度に基づいて定めたブレーキ電流値を減算して得られる値をモータ電流指令値として、電動モータに供給するモータ電流を制御している。ブレーキ電流値は、車両速度が低速の時には比較的小さな値に設定され、高速の時には大きな値に設定される。これにより、高速走行時における車両の安定性を向上させることができ、また、ハンドルを中立位置(直進走行時におけるハンドルの位置)に速やかに収斂させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術では、ハンドルの操作とは無関係にブレーキ電流値が決定されるため、たとえば、ハンドルを中立位置から一方向に切り込む際に、電動モータから十分なトルクが発生せず、運転者にフリクション感を与えるおそれがあった。
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、車両の走行安定性やハンドルの中立位置への収斂性を悪化させることなく、操舵フィーリングを向上できる電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、上記モータの回転方向および回転数を表す回転速度を検出するためのモータ回転検出手段と、上記ステアリング機構に入力される操舵トルクの方向および大きさを表す操舵トルク値を検出するための操舵トルク検出手段と、この操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいてモータ電流目標値を設定する電流目標値設定手段と、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度ならびに上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいて、上記電流目標値設定手段によって設定されるモータ電流目標値から減算すべきブレーキ電流値を定めるブレーキ電流設定手段とを備え、上記ブレーキ電流設定手段は、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度に基づいてブレーキ電流基本値を設定する基本値設定手段と、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値が有する符号との異同を判断する方向異同判断手段と、この方向異同判断手段の判断結果および上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいてトルク補正係数を定めるトルク補正係数設定手段と、上記基本値設定手段によって設定されるブレーキ電流基本値に、上記トルク補正係数設定手段によって設定されるトルク補正係数を乗算する第1乗算手段とを含み、上記トルク補正係数設定手段は、トルク補正係数テーブルを有し、上記トルク補正係数テーブルは、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値が、零である場合、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と逆の符号である場合、または、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、予め定める値以下である場合には、トルク補正係数を相対的に大きな一定値に設定し、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、上記予め定める値よりも大きな所定値以上である場合には、トルク補正係数を相対的に小さな一定値に設定し、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、上記予め定める値よりも大きく、上記予め定める値よりも大きな所定値よりも小さい範囲内である場合には、当該操舵トルク値の絶対値が大きいほどトルク補正係数を小さく設定する含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0005】
また、請求項2記載の発明は、上記電流目標値設定手段によって設定されたモータ電流目標値から上記ブレーキ電流設定手段によって設定されたブレーキ電流値を減算して得られる値を、上記モータに供給すべき電流値である電流指令値として上記モータを制御するモータ制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
上記の発明によれば、モータ電流目標値から減算すべきブレーキ電流値は、モータの回転方向および回転数だけでなく、操舵トルクの方向および大きさも考慮して定められる。これにより、請求項2に記載されているように、モータ電流目標値からブレーキ電流値を減算して得られる値を電流指令値としてモータの制御を行うことで、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させ、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、モータから操舵補助を十分に行うことができるトルクを発生させることが可能になる。ゆえに、ハンドルを右方向または左方向に切り込む際に、運転者にフリクション感を与えるおそれをなくすことができ、操舵フィーリングを向上させることができる。
【0007】
たとえば、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、運転者はハンドルから手を離すか、ハンドルが急に戻るのを防ぐためにハンドルに軽く力を加えるので、操舵トルクの方向とモータの発生トルクの方向とは逆になる。一方、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、操舵トルクの方向とモータの発生トルクの方向とが一致する。したがって、操舵トルクの方向とモータの回転方向とが逆であればブレーキ電流値が大きくなるようにトルク補正係数を設定し、操舵トルクの方向とモータの回転方向とが一致していればブレーキ電流値が小さくなるようにトルク補正係数を設定することにより、車両の走行安定性やハンドルの中立位置への収斂性を悪化させることなく、操舵フィーリングを向上させることができる。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記電動パワーステアリング装置は、車両の走行速度を検出するための車速検出手段をさらに含み、上記ブレーキ電流設定手段は、上記車速検出手段によって検出される車両の走行速度に基づいて車速補正係数を定める車速補正係数設定手段と、この車速補正係数設定手段によって設定される車速補正係数を、上記基本値設定手段によって設定されるブレーキ電流基本値に乗算する第2乗算手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の電動パワーステアリング装置である。
【0009】
この発明によれば、たとえば、高速走行時にはブレーキ電流値が大きな値をとるように車速補正係数を設定し、低速走行時にはブレーキ電流値が小さな値をとるように車速補正係数を設定することにより、高速走行時における車両の走行安定性が損なわれることを防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。ステアリング機構には、操舵トルクを検出するためのトルクセンサ1が付設されており、制御部2は、トルクセンサ1の出力信号と、車速を検出する車速センサ3の出力信号とに基づいて、モータ4を制御する。このモータ4が発生する駆動力が、減速機などを含む適当な駆動力伝達機構を介して、操舵補助力としてステアリング機構に伝達され、操舵補助が行われるようになっている。
【0011】
モータ4には、モータ駆動回路5からの電流が供給されるようになっている、そして、モータ4に流れるモータ電流は、モータ電流検出回路6によって検出され、モータ4の端子間電圧は、モータ端子電圧検出回路7によって検出されて、いずれも、フィードバック制御のために、制御部2に入力されるようになっている。
制御部2は、マイクロコンピュータなどにより構成されており、このマイクロコンピュータが所定の動作プログラムに従って動作することにより、モータ4の制御に必要な機能を実現する。これにより、制御部2は、次に説明する複数の機能ブロックを実質的に有している。
【0012】
すなわち、制御部2は、トルクセンサ1の出力信号の位相を進め、系を安定化させるための位相補償部21と、位相補償部21の出力などに基づいて適切な電流指令値を生成する電流指令値演算部22と、電流指令値とモータ電流検出回路6によって検出されるモータ電流値との偏差を演算する減算部23と、この減算部23の出力に基づいてPWM駆動パルスを生成するPWM生成部24とを備えている。
【0013】
電流指令値演算部22は、位相補償部21が出力するトルク値Tに対応した目標電流値Iを出力するトルク−モータ電流特性テーブル31と、位相補償部21の出力トルク値Tの時間微分値ΔTに対応した電流補正値ΔIを出力する微分制御テーブル32と、モータ電流検出回路6およびモータ端子電圧検出回路7の各出力に基づいてモータ4の回転数Nを検出するモータ回転検出部33と、このモータ回転検出部33が出力する回転数N、車速センサ3が検出する車速Vおよび位相補償部21が出力するトルク値Tに基づいてブレーキ電流値ΔIbcを生成するブレーキ電流制御部34とを含む。トルク−モータ電流特性テーブル31は、車速域ごとに異なるトルク−モータ電流特性を設定した複数のテーブルを有しており、車速センサ3の出力信号に基づいて、いずれか1つのテーブルが選択されるようになっている。
【0014】
トルク−モータ電流特性テーブル31は、右方向操舵に対する補助力を発生する方向のトルクをモータ4から発生させる場合に正の値の目標電流Iを出力し、左方向操舵に対する補助力を発生させる方向のトルクをモータ4から発生させる場合に負の値の目標電流Iを出力する。また、位相補償部21から入力されるトルク値Tは、ハンドルに右方向操舵トルクが作用しているときに正の値をとり、ハンドルに左方向操舵トルクが作用しているときに負の値をとる。そして、目標電流値Iは、一定の範囲内において、トルク値Tに対して目標電流値Iが単調に増加するように定められている。
【0015】
微分制御テーブル32は、モータ4およびこれに関連した機構部品の慣性に起因する応答遅れを改善するためのものである。すなわち、急操舵が行われることによりトルク値Tの時間微分値ΔTの絶対値が大きな値をとるときには、それに応じて絶対値の大きな電流補正値ΔIが生成される。この電流補正値ΔIは、加算部35において、トルク−モータ電流特性テーブル31が出力する目標電流値Iに加算され、これにより、応答性改善のための補正が施された目標電流値I+ΔIが得られる。
【0016】
モータ回転検出部33は、モータ4の回転数Nを算出するため、まず、モータ電流検出回路6によって検出されるモータ電流の平均値Iaと、モータ端子電圧検出回路7によって検出される端子間電圧の平均値Vaとを求める。そして、その求めたモータ電流平均値Iaおよび端子間電圧平均値Vaから、下記第(1)式に従ってモータ4の内部抵抗の瞬時値Rを算出する。
R=Va/Ia ・・・・・・(1)
次に、モータ内部抵抗瞬時値Rを時間積分してモータ4の内部抵抗値Riを求め、この内部抵抗値Ri、モータ電流平均値Iaおよび端子間電圧平均値Vaから、下記第(2)式に従ってモータ4の逆起電圧Vcを求める。
【0017】
Vc=Va−Ia・Ri ・・・・・・(2)
そして、下記第(3)式に従い、上述のようにして求めたモータ4の逆起電圧Vcに、逆起電圧Vcに対する回転数の比であるモータ発電定数Kを乗算することにより、モータ4の回転数Nを算出する。この回転数Nは、モータ4の逆起電圧Vcの符号に対応した符号を有し、たとえば、モータ4の右方向回転に対しては正の値をとり、モータ4の左方向回転に対しては負の値をとる。つまり、回転数Nは、モータ4の回転方向成分を含む回転速度であるといえる。
【0018】
N=K・Vc ・・・・・・(3)
ブレーキ電流制御部34は、モータ回転検出部33が出力する回転数Nに対応したブレーキ電流基本値Ibcを出力するブレーキ電流基本値設定テーブル41と、ブレーキ電流基本値Ibcに車速Vに応じた車速補正係数を乗じて出力する車速補正係数テーブル42と、この車速補正係数テーブル42が出力する値に位相補償部21の出力トルク値Tおよびモータ4の回転数Nに応じたトルク補正係数を乗じてブレーキ電流値ΔIbcを生成するトルク補正係数テーブル43とを有している。
【0019】
トルク補正係数テーブル43(ブレーキ電流制御部34)が生成するブレーキ電流値ΔIbcは、減算部36において目標電流値I+ΔIから減算され、これにより得られる値I+ΔI−ΔIbcが電流指令値とされる。
図2は、ブレーキ電流制御部34によるブレーキ電流値ΔIbcの生成について詳細に説明するための図であり、ブレーキ電流基本値設定テーブル41、車速補正係数テーブル42およびトルク補正係数テーブル43の一例を示している。
【0020】
ブレーキ電流基本値設定テーブル41は、モータ4(図1参照)の回転数Nの絶対値が一定値+N1,−N1の絶対値以下であり、不等式−N1≦N≦+N1の関係を満たしている場合には、ブレーキ電流基本値Ibcを零に設定する。また、モータ4の回転数Nの絶対値が一定値+N2,−N2の絶対値以上である場合には、ブレーキ電流基本値Ibcを予め定められた値に設定する。そして、モータ4の回転数Nが不等式−N2<N<−N1または+N1<N<+N2を満たしている場合には、モータ4の回転数Nの絶対値が大きいほどブレーキ電流基本値Ibcの絶対値が大きくなるように設定する。なお、ブレーキ電流基本値設定テーブル41の特性は、原点を通る直線としてもよい。ただし、このようにして設定されるブレーキ電流基本値Ibcは、モータ4が右方向回転している場合には正の値に設定され、モータ4が左方向回転している場合には負の値に設定される。
【0021】
車速補正係数テーブル42は、車速Vに応じた良好な操舵フィーリングを達成するためのものである。すなわち、車両の低速走行時には、モータ4に大電流を供給して大きな操舵補助力を発生させるのが好ましいから、絶対値の比較的小さなブレーキ電流値ΔIbcが適切である。一方、車両の高速走行時には、車両のふらつきを抑えて走行安定性を高めるため、絶対値の比較的大きなブレーキ電流値ΔIbcが適切である。
【0022】
そこで、車速補正係数テーブル42は、たとえば、車速Vが予め定める低速度V1以下であれば車速補正係数を0に設定し、車速Vが予め定める高速度V2以上であれば車速補正係数を1に設定し、車速Vが上記低速度V1より大きく上記高速度V2よりも小さい範囲内にあれば車速補正係数を車速Vに比例した値に設定する。そして、この車速Vに応じて設定した車速補正係数を、ブレーキ電流基本値設定テーブル41から与えられるブレーキ電流基本値Ibcに乗じて出力する。
【0023】
トルク補正係数テーブル43は、位相補償部21が出力するトルク値Tおよびモータ回転検出部33が出力する回転数Nから、ハンドルに作用する操舵トルクの方向とモータ4の回転方向との関係を求め、この関係およびトルク値Tの絶対値に基づいてトルク補正係数を設定する。
たとえば、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すとき、モータ4の慣性による影響を排除して、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させるために、絶対値の比較的大きなブレーキ電流値ΔIbcに設定されるのが好ましい。一方、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、モータ4に大電流を供給して大きな操舵補助力を発生させるのが好ましいから、絶対値の比較的小さなブレーキ電流値ΔIbcに設定されるのが適切である。
【0024】
また、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、運転者はハンドルから手を離すか、ハンドルが急に戻るのを防ぐためにハンドルに軽く力を加えるので、位相補償部21が出力するトルク値Tは、零またはモータ4の回転数Nと逆の符号を有する値となる。一方、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、位相補償部21が出力するトルク値Tの符号とモータ4の回転数Nの符号とが一致する。
【0025】
そこで、トルク補正係数テーブル43は、位相補償部21が出力するトルク値Tが零またはモータ4の回転数Nと逆の符号を有する値である場合には、トルク補正係数をたとえば1に設定する。そして、この設定したトルク補正係数を車速補正係数テーブル42から与えられる値に乗じ、これにより得られる値をブレーキ電流値ΔIbcとして出力する。これにより、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、ブレーキ電流値ΔIbcは絶対値の比較的大きな値に設定されるので、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させることができる。
【0026】
また、位相補償部21が出力するトルク値Tの符号とモータ4の回転数Nの符号とが一致するとき、トルク補正係数テーブル43は、トルク値Tの絶対値に基づいてトルク補正係数を設定する。たとえば、トルク値Tの絶対値が予め定める値T1以下であればトルク補正係数を1に設定し、トルク値Tの絶対値が予め定める値T2以上であればトルク補正係数を一定値αに設定し、トルク値Tの絶対値が上記値T1より大きく上記値T2よりも小さい範囲内にあれば、トルク値Tの絶対値が大きいほどトルク補正係数を小さく設定する。そして、この設定したトルク補正係数を車速補正係数テーブル42から与えられる値に乗じ、これにより得られる値をブレーキ電流値ΔIbcとして出力する。これにより、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、トルク値Tの絶対値に応じて、ブレーキ電流値ΔIbcは絶対値が相対的に小さな値に設定され、モータ4から十分な操舵補助力(トルク)を発生させることができる。
【0027】
以上のようにこの実施形態によれば、モータ4に流れるモータ電流を制御するための電流指令値は、トルク−モータ電流特性テーブル31が生成する目標電流値Iと微分制御テーブル32が生成する電流補正値ΔIとの和から、ブレーキ電流制御部34が生成するブレーキ電流値ΔIbcを減算して得られる値に設定される。そして、ブレーキ電流制御部34が生成するブレーキ電流値ΔIbcは、モータ回転数Nに対応したブレーキ電流基本値Ibcに、車速Vに応じた車速補正係数およびハンドルに作用する操舵トルクの方向とモータ4の回転方向との関係に応じたトルク補正係数を乗じることにより設定される。
【0028】
これにより、ハンドルを切り込んだ状態から中立位置に戻すときには、ハンドルを中立位置に速やかに収斂させ、ハンドルを右方向または左方向に切り込むときには、モータ4から十分な操舵補助力を発生させることが可能になる。ゆえに、ハンドルを右方向または左方向に切り込む際に、運転者にフリクション感を与えるおそれをなくすことができ、操舵フィーリングを向上させることができる。しかも、高速走行時にはブレーキ電流値ΔIbcの絶対値が大きな値をとるように車速補正係数が設定されるので、高速走行時における車両の走行安定性が損なわれることもない。
【0029】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態でも実施することが可能である。たとえば、上述の実施形態では、ブレーキ電流基本値Ibcに車速補正係数を乗じた後にトルク補正係数を乗じるとしたが、ブレーキ電流基本値Ibcにトルク補正係数を乗じた後に車速補正係数を乗じてもよい。
また、車速Vを加味したブレーキ電流値ΔIbcを設定するために、車速Vに応じた車速補正係数をブレーキ電流基本値Ibcに乗じるのではなく、車速域ごとに異なる複数のブレーキ電流基本値設定テーブル41を用意しておき、いずれかのテーブルを車速Vに応じて選択し、この選択したテーブルに基づいてブレーキ電流基本値Ibcを定めるようにしてもよい。
【0030】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】ブレーキ電流制御部によるブレーキ電流値の生成について詳細に説明するための図であり、ブレーキ電流基本値設定テーブル、車速補正係数テーブルおよびトルク補正係数テーブルの一例を示している。
【符号の説明】
1 トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
2 制御部
3 車速センサ(車速検出手段)
4 モータ
5 モータ駆動回路
6 モータ電流検出回路(モータ回転検出手段)
7 モータ端子電圧検出回路(モータ回転検出手段)
23 減算部
24 PWM生成部(モータ制御手段)
31 トルク−モータ電流特性テーブル(電流目標値設定手段)
32 微分制御テーブル(電流目標値設定手段)
33 モータ回転検出部(モータ回転検出手段)
34 ブレーキ電流制御部(ブレーキ電流設定手段)
35 加算部(電流目標値設定手段)
36 減算部
41 ブレーキ電流基本値設定テーブル(基本値設定手段)
42 車速補正係数テーブル(車速補正係数設定手段、第2乗算手段)
43 トルク補正係数テーブル(方向異同判断手段、トルク補正係数設定手段、第1乗算手段)
Claims (3)
- モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、
上記モータの回転方向および回転数を表す回転速度を検出するためのモータ回転検出手段と、
上記ステアリング機構に入力される操舵トルクの方向および大きさを表す操舵トルク値を検出するための操舵トルク検出手段と、
この操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいてモータ電流目標値を設定する電流目標値設定手段と、
上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度ならびに上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいて、上記電流目標値設定手段によって設定されるモータ電流目標値から減算すべきブレーキ電流値を定めるブレーキ電流設定手段とを備え、
上記ブレーキ電流設定手段は、
上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度に基づいてブレーキ電流基本値を設定する基本値設定手段と、
上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値が有する符号との異同を判断する方向異同判断手段と、
この方向異同判断手段の判断結果および上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値に基づいてトルク補正係数を定めるトルク補正係数設定手段と、
上記基本値設定手段によって設定されるブレーキ電流基本値に、上記トルク補正係数設定手段によって設定されるトルク補正係数を乗算する第1乗算手段とを含み、
上記トルク補正係数設定手段は、トルク補正係数テーブルを有し、
上記トルク補正係数テーブルは、
上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値が、零である場合、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と逆の符号である場合、または、上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、予め定める値以下である場合には、トルク補正係数を相対的に大きな一定値に設定し、
上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、上記予め定める値よりも大きな所定値以上である場合には、トルク補正係数を相対的に小さな一定値に設定し、
上記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルク値の符号が、上記モータ回転検出手段によって検出される回転速度が有する符号と一致し、かつ当該操舵トルク値の絶対値が、上記予め定める値よりも大きく、上記予め定める値よりも大きな所定値よりも小さい範囲内である場合には、当該操舵トルク値の絶対値が大きいほどトルク補正係数を小さく設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記電流目標値設定手段によって設定されたモータ電流目標値から上記ブレーキ電流設定手段によって設定されたブレーキ電流値を減算して得られる値を、上記モータに供給すべき電流値である電流指令値として上記モータを制御するモータ制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記電動パワーステアリング装置は、車両の走行速度を検出するための車速検出手段をさらに含み、
上記ブレーキ電流設定手段は、上記車速検出手段によって検出される車両の走行速度に基づいて車速補正係数を定める車速補正係数設定手段と、この車速補正係数設定手段によって設定される車速補正係数を、上記基本値設定手段によって設定されるブレーキ電流基本値に乗算する第2乗算手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の電動パワーステアリング装置。
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