JP3853104B2 - 血液フィルター - Google Patents

血液フィルター Download PDF

Info

Publication number
JP3853104B2
JP3853104B2 JP09739799A JP9739799A JP3853104B2 JP 3853104 B2 JP3853104 B2 JP 3853104B2 JP 09739799 A JP09739799 A JP 09739799A JP 9739799 A JP9739799 A JP 9739799A JP 3853104 B2 JP3853104 B2 JP 3853104B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
blood
potassium
ions
ion
concentration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP09739799A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000288084A (ja
Inventor
忠広 本村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Terumo Corp
Original Assignee
Terumo Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Terumo Corp filed Critical Terumo Corp
Priority to JP09739799A priority Critical patent/JP3853104B2/ja
Publication of JP2000288084A publication Critical patent/JP2000288084A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3853104B2 publication Critical patent/JP3853104B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • External Artificial Organs (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液および血液製剤中からカリウムイオンを選択的に除去しうる血液フィルター、およびカリウムイオン除去に加えてさらに透析、白血球除去などの他の血液浄化機能をも有する血液フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
血中カリウムイオンは心機能に大きな影響を与えることは周知である。血中カリウム(カリウムイオン)濃度の正常値は、個体差はあるが3〜5 mEq/l程度とされており、これが8mEq/l 程度まで上昇すると心停止を起こすおそれがあるといわれている。血中カリウムイオン濃度の上昇は、食物からの過剰摂取に限らず、体内の組織細胞中に含まれるカリウムイオンが、ケガ、打撲などによる組織細胞の破壊によって血液中に流入することによって生ずることも知られている。特に事故などで応急的な止血処理が施される場合には、再び血液を循環させた際に、患部周辺のカリウムイオンを含む血液が循環することにより血中カリウムイオン濃度が急激に上昇し、致命的な高濃度になることもある。これを未然に防ぐことが必須である。
【0003】
また輸血用血液または血液製剤は、保存中にカリウムイオン濃度が上昇するという問題点もある。具体的に説明する。輸血用血液または血液製剤は、輸血後の主に白血球に起因する副作用を防ぐために、遠心分離、放射線照射、濾過による白血球除去および不活化が行われている。特に国内では、同じHLA(ヒト主要組織適合性抗原遺伝子複合体)ハプトタイプを共有する確率が高く、輸血後に移植片対宿主反応(GVHD:Graft Versus Host Disease )の発症リスクが高いと言われているため、該GVHD予防の唯一の有効な手段として放射線照射が行われる。この際の放射線照射量は比較的低線量であり、具体的に「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン(III) 」(日本輸血学会誌, 42(6), 1996 )で推奨される照射量は15〜50Gyである。
【0004】
このような照射量であれば、細胞の機能をある程度保ちつつ、細胞核内のDNAにのみ障害を与えることができ、最終的には輸血のドナーリンパ球は消滅するとされている。一方、輸血効果に対する悪影響はほとんど無いとされており、具体的に、リンパ球、顆粒球(Duguid JKMら、Vox Sang誌, 60, 151-154(1991) )、血小板(Button LN, Transfusion誌, 21, 419-426(1981))などについて悪影響がほとんど無いことが報告されている。
【0005】
赤血球についても放射線照射により輸血効果は損なわれないとされているが、赤血球膜のイオン透過性に対してはある程度の影響が認められており、これにより血液または血液製剤の保存期間中にカリウムイオン濃度が上昇することが指摘されている(日本輸血学会輸血製剤放射線照射小委員会、上記日本輸血学会誌)。すなわち赤血球細胞内外のイオン濃度は、ナトリウムポンプによるイオンの汲出し、汲入れによってイオンバランスが適切に保たれているが、放射線照射により赤血球膜に障害を生じると、陽イオンが通過しやすく、その通過量は正常時よりも多くなる。しかし赤血球製剤を保存する4℃では、ナトリウムポンプ機能が停止状態となるため、カリウムイオンが細胞外へ漏れ出す一方、ナトリウムイオンの細胞内浸入により赤血球膜内外のイオンバランスは崩れる。このため上清のカリウムイオン濃度は著しく高くなる。
【0006】
具体的には、採血後に1週間経過した赤血球MAP液に、150KV のX線を15Gy照射し、1週間保存したり、未照射で6週間保管すると、血漿カリウム濃度は50mEq/l に達することが知られている(日本輸血学会誌, 39(6),979-983, 1993 )。このような保存血(血漿)中のカリウムイオンの上昇を防ぐためにはX線照射後、短期間の内に輸血に用いればよいが、その場合でも緊急大量輸血をする患者、腎不全患者、新生児などでは心機能障害を起こすおそれがある。このように血液または血液製剤中からカリウムを除去することは重要な課題である。
【0007】
血中カリウムイオン濃度を低下させる方法はいくつか知られており、たとえばグルコースおよびインシュリンを患者に大量に投与すればよいが、血糖値が急激に低下する副作用がある。また従来陽イオン交換樹脂の適用も知られており、これを患者に投与して腸内でカリウムイオンを吸着する方法は実用化されているが、血中のカリウムイオン濃度を低下させるには長時間を要する。またイオン交換樹脂を血液または血液製剤と接触させることにより除去する方法も検討されている。しかしながら陽イオン交換樹脂は、本質的に陽イオンを非特異的に除去するため、カリウムイオンのみだけでなく除去する必要のない他のイオンたとえばカルシウムイオンなどまでも失われたり、また却って他のイオン濃度を上昇させたりすることもある。血中イオン(電解質)濃度の変化は、患者の心負荷を増大させるだけではなく、浮腫を生じるなど重篤な障害を引き起こす。そのためにも、カリウムイオン濃度を低下させる必要がある場合には、カリウムイオンを選択的に除去して、血中カリウムイオン濃度を迅速に低下させることは重要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、血液または血液製剤中のカリウム(カリウムイオン)を選択的に除去しうる血液フィルター、さらに他の血液浄化機能も有する血液フィルター、および該血液フィルターを用いる血液中のカリウム除去方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、カリウムイオン記憶特性を有する無機化合物を吸着剤とし、血液中のカリウムイオンを選択的に除去する血液フィルターを提供する。
上記カリウムイオン記憶特性を有する無機化合物としては、たとえばクリプトメラン(cryptomelane )型マンガン化合物が挙げられる。
【0010】
前記マンガン化合物の組成は、具体的にMnO2 ・0.28H2 Oで示される。
また上記無機化合物として、タングステン酸塩も挙げられる。
タングステン酸塩の組成は、具体的にNax 2-x 4 13、またはHx 2-x 4 13で示される(ここで、0<x<2)。
【0011】
上記のような本発明の血液フィルターを用いると、血液中からカリウムイオンを選択的に除去することができ、イオン(電解質)バランスを崩すことなく血中カリウムイオンの濃度を低下させることができる。
本発明では、上記のようなカリウム除去に加えて、さらに他の血液浄化機能を有する血液フィルターも提供される。
本発明に係る血液中のカリウムイオン除去方法では、上記のような血液フィルターを、血液または血液製剤と接触させる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。本明細書において、「血液」という語は血液および血液製剤を総称する意味で用いられることがある。
本発明では、カリウムイオン記憶特性を有する無機化合物を吸着剤とする血液フィルターが提供される。
【0013】
カリウムイオン記憶特性を有する無機化合物は、カリウム含有無機錯体中のカリウムイオンをプロトンなどの代替カチオン(foreign cation)に置換した化合物であり、分子中にカリウムイオンを取込みうる骨格構造(イオン格子)を有するカチオン性化合物である。具体的にはたとえば、無機化合物(ホスト化合物)中に、カリウムイオン(ゲストイオン)をイオン結合を保持したまま導入し、次いで加熱処理などにより、ホスト化合物の共有結合を保持させたまま骨格構造を成形した後、カリウムイオンを保有しうる骨格構造を実質的に変えずにカリウムイオンを代替カチオンに交換して得られる。
【0014】
上記のような構造を有する無機化合物は、再びカリウムイオン(ゲストイオン)の接近によって、前記代替カチオンとカリウムイオンとが交換され、カリウムイオンは無機化合物中に取り込まれ、すなわちカリウムイオン記憶特性を示す。またカリウムイオン記憶特性を有する無機化合物は、このカチオン交換時に、カリウムイオンを選択的に取り込むことができる。
【0015】
本発明では、上記のようなカリウムイオン記憶特性を示すことができれば、ホスト化合物を形成する元素、代替カチオンは特に限定されないが、たとえばこの無機化合物としては、クリプトメラン(cryptomelane )型マンガン化合物、タングステン酸塩などが挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるクリプトメラン型マンガン化合物は、K2-x Mn8-y 16で示されるクリプトメラン中のKを代替カチオンに置換したものに相当する化合物をいう。なおクリプトメランは、天然マンガン鉱の呼称の一つである。天然硬マンガン鉱(α- MnO2 )は、実質的にはマンガン以外の陽イオンを含み、M2-x Mn8-y 16の組成で示されるが、このM=Kであるものがクリプトメラン(cryptomelane )と称されている。
【0017】
このようなクリプトメラン型マンガン化合物中の代替カチオンが、たとえばプロトンである場合には、水和二酸化マンガン(hydrous manganese dioxides)の組成で示される。
具体的には、MnO2 ・0.28H2 Oの組成で示される水和二酸化マンガンが挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるクリプトメラン型マンガン化合物は、上記したようなカリウムイオン選択性の構造を有するように合成できれば、合成方法はとくに限定されない。
たとえばMn(II)とMn(VII )とを用いる Guyard 反応により合成することができる。
Guyard反応は、M. P. Dubois(Ann. Chem. 5, 411(1936) )により提案された合成方法などを利用して実施することができる。この反応では、Mn(II)と、Mn(VII )とを、Mnの総含量を0.7 〜0.8 Mの範囲に保持しながら異なるモル比で用いる。
【0019】
具体的にはまずクリプトメランを合成した後、得られたクリプトメラン中のカリウムイオンをプロトンと交換することにより得られる。
クリプトメランは、1M硫酸を含む 0.5M過マンガン酸カリウム溶液に、1M硫酸マンガン(II)の1M硫酸溶液を、60℃で添加して沈殿(クリプトメラン)を生成させる。
得られたクリプトメラン中のカリウムイオンと、プロトンは、たとえば上記沈殿を硝酸洗浄することによりカチオン交換することができる。硝酸洗浄により、カリウムイオンを完全に除去することはできないが、最終的なカリウムイオン含有量が0.06-0.07meq/g程度にすることができる。
【0020】
水和二酸化マンガンは、上記のようなGuyard反応に以外にも、過マンガン酸をH2 2 またはHClなどで還元する方法、あるいはMn(II)塩をKClO3 、O3 または(NH4 2 2 8 などで酸化する方法などにより合成することができる。なおこれらの反応は、Gmelin Handbuch derAnorganischen Chemie, Mangan Teil C 1,Springer-Verlag,Berlin,1973,pp.144-145.などに記載されており、これらを参照して水和二酸化マンガンを合成することができる。
【0021】
またカリウムイオン記憶特性を有するタングステン酸塩としては、具体的に、タングステン酸カリウムK2 4 13中のKの一部を代替カチオンに置換した組成のタングステン酸塩が挙げられる。K2 4 13で示されるタングステン酸カリウムでは、c軸に沿ってWO6 により2種類の多角形が形成され、各多角形中にKが配位した構造であると推察されている。このような構造のK2 4 13のKを全部他のカチオンに置換した化合物たとえばNaW4 13は安定な化合物であってカリウムイオンを取り込まないが、その一部を置換した場合には、c軸の格子定数は実質的に変化せず、カリウムイオンを取り込むことができる。具体的にKの交換率が60%超たとえば68%程度で、分子中Na>Kとなってもカリウムイオン記憶特性を示すことができる。
【0022】
このようなタングステン酸塩としては、たとえばNaxK2-x 4 13の組成で示されるナトリウムイオン型タングステン酸塩、Hx 2-x 4 13の組成で示されるプロトン型タングステン酸塩などを挙げることができる。ここで各組成中のxは、0<x<2であるが、たとえば上記ナトリウムイオン型タングステン酸塩における具体例としては、0.5 <x<1.35程度が挙げられ、プロトン型タングステン酸塩における具体例としては、x=0.25程度が挙げられる。
【0023】
上記のようなタングステン酸塩は、上記のようなカリウムイオン選択性の構造を有するように合成できればその合成方法は特に限定されないが、たとえばまず炭酸カリウムと三酸化タングステンとを反応させてK2 4 13の組成を有するタングステン酸カリウムを合成した後、これを酸処理してプロトン型タングステン酸塩(Hx 2-x 4 13)を得ることができる。ナトリウム型タングステン酸塩(Nax 2-x 4 13)は、上記K2 4 13を、硝酸ナトリウム塩の溶融物と接触させることにより得ることができる。
【0024】
なお上記のような各マンガン化合物、タングステン化合物は、粉末X線回折法により同定することができる。
これら化合物は、空気中で安定であり、長期間に亘ってカリウムイオン記憶特性を示す。
【0025】
本発明では、カリウムイオン選択性吸着剤として、上記のような無機化合物の1種を用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。これらのうちでも、カリウムとイオン交換されるカチオンは、人体に安全でかつカリウムイオン除去処理により血中の電解質バランスに大きな影響を与えないプロトン型であることがより好ましい。プロトン型であれば、特にイオン交換により血中ナトリウム濃度が上昇することがないためである。
【0026】
上記無機化合物は、合成により通常粉末状で得られるが、使用時にはそのままであるいは粒(顆粒)状、多孔質状などに加工して用いることができる。
また無機化合物に加えて、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて他の材料を任意に併用することができる。たとえば他の材料としては、塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、エチレンーポリビニルアルコール共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の合成高分子あるいはこれらの混合物を用いることができる。またこのような任意の材料と上記無機化合物とが複合した形態で使用することもできる。
さらに上記のような吸着剤は、親水性付与、血液に対する影響を低減する為にコーティングなどの表面処理が施される場合もある。
【0027】
本発明に係る血液フィルターは、上記のようなカリウムイオン記憶特性を有する無機化合物を吸着剤とすること以外は特に限定されず、血液フィルターの形状なども任意であってよい。血液フィルターは、固体を吸着剤とするときの一般的な手法たとえば吸着剤をカラムなどの容器に充填するなどにより製作される。
【0028】
本発明の血液フィルターを用いれば、血液中の陽イオン電解質Na+ イオン、K+ イオン、Ca2+イオン、Mg2+イオン、NH4+イオンなどのうちから、K+ イオンを選択的に除去することができる。
【0029】
従来公知のイオン樹脂などを用いた血液フィルターでは、血液中からカリウムイオンを選択的に除去することは困難であり、通常カリウイオンとともに他の陽イオンも除去するか、あるいは却って血液中の他の陽イオンを上昇させるなど、イオンバランスを崩すことがあった。これに対して上記のような本発明の血液フィルターは、カリウムイオン選択性を示すので、特にプロトン型のものを用いれば、カリウムイオン以外の陽イオンの増減なく血液中からカリウムイオンを選択的に除去することができる。
【0030】
具体的に血中の電解質濃度の正常値(mEq/l )は、個体差もあり一概にはいえないが、一般的に、Na+ が135〜147程度、K+ が3〜5 mEq/l程度、Ca2+が2.4〜2.7程度、Mg2+が0.7〜1.1程度であるとされている。
【0031】
このK+ が7 mEq/l以上になると心機能に異常をきたし、前記したように8 mEq/l程度まで上昇すると心停止を起こすおそれがあるといわれている。本発明では、このように血中K+ 濃度が高くても、容易にK+ 濃度を低下させることができ、この際特に上記したようにプロトン型を用いれば、Na+ などの他の電解質濃度を増減させることなく、K+ 濃度を選択的に低下させることができる。本発明では、血中K+ 濃度が8 mEq/lを超えて高く、たとえばX線照射後あるいはそのまま保存期間中に輸液バッグ血液上清(血漿)中のK+ 濃度が30 mEq/l程度まで上昇していてもK+ 選択性の効果を発現する。
【0032】
血液中の陽イオン濃度は、通常、遠心分離により得られる血液上清中の陽イオン濃度として、電解質自動分析装置により分析することができる。
また本発明に係る血液フィルターは、無機化合物を吸着剤としており、オートクレーブによる滅菌処理が可能である。
【0033】
本発明では、上記のような血液フィルターと、血液または血液製剤とを接触させることにより、血液中のカリウムイオンを除去することができる。したがってて本発明によれば、極めて簡易な方法によって血液中のカリウムイオンを選択的に除去することができ、しかもカリウムイオンを直接血液中から除去することができるので、患者の腸内にイオン交換樹脂を投与するなどの従来方法に比べて迅速に血中カリウムイオン濃度を適正範囲に低下させることができる。
【0034】
本発明において、カリウム除去処理に供される血液は、採血血液そのままであってもよく、また抗凝固剤を含むものであってもよい。抗凝固剤としては、ヘパリン、FUT(メシル酸ナファモスタット)、ACD(クエン酸ナトリウム−クエン酸−デキストロース)、CPD(クエン酸ナトリウム−クエン酸−リン酸−デキストロース)、cPDA-1(クエン酸−リン酸−デキストロース−アデニン)などが挙げられる。これらの使用量は、通常の保存血液に対して用いられる量程度であればよい。
【0035】
本発明では、処理血液が上記のような抗凝固剤を含むものであっても、血中カリウムイオン以外の電解質濃度特にカルシウムイオン(Ca2+) 、マグネシムイオン(Mg2+)、ナトリウムイオン(Na+ )濃度を変動させることなく、カリウムイオン(K+ )濃度を低下させることができる。
【0036】
本発明では、上記のようなカリウムイオン除去に加えて、さらに血液透析、白血球除去等の他の血液浄化機能を組み合わされていてもよい。他の血液浄化機能は、血液中の病因物質を吸着除去しうる機能であって、病因物質に対応した吸着剤などが選択される。より具体的には、ウイルス、感染細胞、LDL(Low-Density Lipoprotein )、エンドトキシンなどの病因物質を吸着除去しうる物質を特に限定することなく用いることができる。
【0037】
本発明では、これらの他の血液浄化機能を有する物質と、上記カリウムイオン除去無機化合物とを、別々の血液フィルターで用いることができる。
また本発明の目的を損なわない範囲であれば、これらを同一血液フィルター内に含ませてもよく、本発明では、特にこのような血液フィルターが提供される。この場合、無機化合物とともに同一血液フィルター内に含ませる物質としては、特にウイルスや副作用の原因となる白血球などの病因物質を除去しうる吸着剤が好ましく、具体的に白血球除去フィルター、ウイルス除去膜などが挙げられる。
【0038】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
血液中のカリウム、ナトリウム、カルシウム各イオン濃度は、血液を3000prm で10分間遠心分離して得られた上清を、電解質自動分析装置(東亜電波製、NAKL-134)に供して測定した。
また以下の実験では、試験用血液として、ACD血(血液100mlに対し、ACD−A液を15ml加えた血液)に、塩化カリウムを、上清カリウム濃度が30meq/Lとなるように添加したものを使用した。
【0039】
(実施例1)
1M硫酸を含む 0.5M過マンガン酸カリウム(KMnO4 ) 溶液に、1M硫酸マンガン(II)の1M硫酸溶液を、60℃で添加して沈殿を生成させた。生成物は、粉末X線回折法により同定した。
沈殿中に含有されるカリウムを6M硝酸溶液で洗浄した後、沈殿を水洗、乾燥し、MnO2 ・0.28H2 Oの組成を有するクリプトメラン型マンガン酸化物を得た。
【0040】
上記で得られたクリプトメラン型マンガン酸化物30mlを、円筒状の容器に充填して血液フィルターを製作した。
血液フィルターの入口から、約240mlの上記ACD血を、5ml/minの流速で流した。
濾過前後の血液上清中のカリウム、ナトリウム、カルシウム各イオン濃度を上述の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
炭酸カリウムと三酸化タングステンとを1対4のバッチ組成で混合した後、750℃で、72時間反応させてタングステン酸カリウム(K2 4 13) を得た。生成物は、洗浄乾燥後、粉末X線回折法により同定した。
次いで、このタングステン酸カリウムを1M硝酸で室温12時間反応させて酸処理タングステン酸カリウムを得た。この酸処理タングステン酸カリウムの組成は、H0.251.754 13であった。
【0042】
得られた酸処理タングステン酸カリウム50mlを円筒状の容器に充填して血液フィルターを製作した。
血液フィルターの入口から約240mlの上記ACD血を流速5ml/minで流した。
濾過前後の血液上清中のカリウム、ナトリウム、カルシウム各イオン濃度を上述の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
(比較例1)
実施例1において、クリプトメラン型マンガン酸化物30mlに代えて、イオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR120Bを塩酸でH+ 型にしたもの)20gを充填した血液フィルターを用いた以外は、実施例1と同様にして、約240mlの上記ACD血を濾過した。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例2)
実施例1において、クリプトメラン型マンガン酸化物30mlに代えて、市販のポリスチレンスルホン酸ナトリウムイオン交換樹脂(鳥居薬品製、ケイキサレート)20gを充填した血液フィルターを用いた以外は、実施例1と同様にして、約240mlの上記ACD血を濾過した。結果を表1に示す。
【0045】
Figure 0003853104
【0046】
以上の結果から、実施例1〜2においては、いずれもカリウム濃度のみが大きく低下し、他イオン(ナトリウム、カルシウム)の濃度には変化が無く、血液上清から選択的にカリウムを除去することができた。しかしながら、イオン交換樹脂を用いた比較例では、カリウムの濃度は低下するものの、ナトリウム、カルシウム等他の陽イオン濃度も大きく変動し、選択的除去は、出来なかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の血液フィルターは、血液中の電解質のうちでも、カリウムイオンを選択的に除去することができるので、電解質バランスを崩さずにカリウム濃度のみを選択的に低下することができる。本発明では、この血液フィルターを、血液または血液製剤と接触させてることによって血中カリウム濃度を低下させることができ、操作も簡便であり、さらにイオン交換樹脂を患者に投与する従来のカリウム除去方法などに比べて、血中カリウム濃度を迅速に低下させることができる。

Claims (7)

  1. カリウムイオン記憶特性を有する無機化合物を吸着剤とし、血液中のカリウムイオンを選択的に除去する血液フィルター。
  2. 前記無機化合物が、クリプトメラン(cryptomelane)型マンガン化合物である請求項1に記載の血液フィルター。
  3. 前記マンガン化合物の組成が、MnO2・0.28H2Oである請求項2に記載の血液フィルター。
  4. 前記無機化合物が、タングステン酸塩である請求項1に記載の血液フィルター。
  5. 前記タングステン酸塩の組成が、Nax2-x413(0<x<2)である請求項4に記載の血液フィルター。
  6. 前記タングステン酸塩の組成が、Hx2-x413(0<x<2)である請求項に記載の血液フィルター。
  7. 前記カリウムイオン除去に加えて、さらに他の血液浄化機能を有する請求項1〜6のいずれかに記載の血液フィルター。
JP09739799A 1999-04-05 1999-04-05 血液フィルター Expired - Fee Related JP3853104B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09739799A JP3853104B2 (ja) 1999-04-05 1999-04-05 血液フィルター

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09739799A JP3853104B2 (ja) 1999-04-05 1999-04-05 血液フィルター

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000288084A JP2000288084A (ja) 2000-10-17
JP3853104B2 true JP3853104B2 (ja) 2006-12-06

Family

ID=14191397

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP09739799A Expired - Fee Related JP3853104B2 (ja) 1999-04-05 1999-04-05 血液フィルター

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3853104B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6523614B2 (ja) * 2014-04-22 2019-06-05 日機装株式会社 使用済み透析液用の除水器及びそれを用いた透析液再生システム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000288084A (ja) 2000-10-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6243544B2 (ja) 吸着剤処理おける再利用のため使用済みリン酸ジルコニウムを再生する方法
EP2485983B1 (en) An immunoactivation blood perfusion filter for the treatment of malignant tumors
EP3364986B1 (en) Pathogen-inactivated cryo-poor plasma and methods of use thereof
BR9700196B1 (pt) Dispositivo e método para a remoção extracorpórea de toxinas, em particular citoquinas, especialmente para o tratamento de pacientes afetados por insuficiência orgânica aguda
EP2558177A1 (en) Anticoagulant-free dialysis systems and methods
JPH08508047A (ja) 体液を処理するための方法及び装置
Uvizl et al. Biochemical changes in the patient’s plasma after red blood cell transfusion
Furuyoshi et al. New Adsorption Column (Lixelle) to Eliminate (β2‐Microglobulin for Direct Hemoperfusion
JP3853104B2 (ja) 血液フィルター
EP0382018A2 (en) Viricidal blood bag system
JP7306606B2 (ja) 尿毒素を除去するための方法及び組成物
JPH04187206A (ja) 白血球分離装置及び白血球分離材料の製造方法
JP3076080B2 (ja) 選択透過性膜の処理方法
JP5484354B2 (ja) Hla−dr陽性単球の選択除去器及びその製造のための抗酸化剤の使用
WO2023006151A1 (de) Additivlösung für erythrozytenkonzentrate
JP3118288B2 (ja) カリウムイオン除去剤
JP2754203B2 (ja) 体液処理装置の滅菌方法および滅菌された体液処理装置
JPH0622626B2 (ja) 体外循環治療用吸着体の再生方法
DE19735460A1 (de) Spül- oder Lagerungsflüssigkeit für Blutzellen
JPS6112626A (ja) 血液保存剤
Maini Haemoperfusion over ion exchange resins and polymeric adsorbents
Nakagawa et al. Development of nonaluminum phosphate binder hydrous cerium oxide (Ceα (OH) 4–2α· nH2O)
WO2014176573A1 (en) Non-hemolyzing blood filter and methods for filtering blood without hemolysis
JP2004321720A (ja) 中空糸膜型モジュールの製造方法および中空糸膜型モジュール
JPS5826819A (ja) 多孔性ガラスからなる低密度リポ蛋白質吸着剤

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060411

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060606

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060822

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060905

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090915

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100915

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110915

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110915

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120915

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130915

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees