JP3762942B2 - イカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法 - Google Patents

イカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の目的】
この発明は、我が国の食用軟体動物として最も消費量の多いイカ(烏賊)の加工処理に係わるものであって、特に、その潰し肉としての利用を可能とし、従前からのイカ加工食品には見られない新たな性状の加工食品への展開を可能とすることにより、イカの消費拡大を図ると共に、従前からの加工処理手段では利用価値が少ないとされてきた腕やヒレの有効活用に繋がり、廃棄物処理の面に役立つようにする新規な構成からなるイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
生活水準が高くなり、衣食住全ての面で各人の好みに応じた自己主張が反映される豊かな時代を推移する中で、人々の最も高い関心事は、偏に健康管理に集中するところとなり、衣であれ食であれ住であれ、その選択基準の中心的な位置を占めるに至っている。例えば、食生活についてみれば、ひと頃までの珍しければ事足りていて、外国料理を漁り、多国籍料理にまで趣向を走らせていた時代から、最近では、無農薬野菜とか有機肥料栽培米、天然もの魚介類等といった身体に好ましい自然食品を食材とした料理・食品に強い感心が集まり、生産者は勿論のこと、それら原材料を使って加工する料理店や加工食品メーカーにおいても、移り変わる消費者ニーズへの対応に果敢に取り組む姿勢が強く見られるようになってきている。
【0003】
ところが、こうした自然食ブームの一翼を担う筈の水産業界では、国際的な漁業権の規制に加え、自然環境保護の問題や異常気象までもが絡み、その漁獲量が年々下降現象を来してきている上に、輸入規制の緩和によって外国産の同種競争品や珍しい魚介類が大量に出回ることとなって、制約された枠内で漸く水揚げした水産物も、思うような単価では流通せず、経営的な危機に瀕している水産業者も続出する等して深刻な様相を呈し始めてきている。
【0004】
その傾向が端的に現われてきている水産業者の一つに、我が国の食生活の中で、これまでのところ極めて家庭的な水産物として人気も高く、その消費量でも他を圧倒してきていたイカ生産業者が取り上げられる。特に、我が国におけるイカ水揚げ量で他県を寄せつけない青森県では、その影響が最も強く、極めて深刻な事態にまで発展し兼ねない虞れもあって早急な対策が望まれていることから、各種悪条件の中での消費拡大に繋がる有効な方策の模索が、官民一体となって地道に続けられてきている。
【0005】
イカの消費拡大策としては、生食としての消費拡大と加工食品としての消費拡大とに大別されるが、現状では、安価で大量の輸入イカが店頭に並ぶことと、消費者の趣向の多様化で、家庭的な食材とはいえ、ひと頃程の必需品的なニーズが陰り始めてきていること等の事情を直視すれば、生食の方面からの対策は極めて難しいと云わざるを得ず、残る加工食品としての展開の面で新しい試みが期待されるところとなり、従前からのスルメ、裂きイカ、塩辛、薫製イカ、酒徳利等々の加工品に加わる新食材のための有力な加工技術としては、イカを原材料とする練り物からの新たな展開を必要とすることになるが、従前からもそうした取り組みがなされていなかった訳ではない。
【0006】
例えば、特開昭52−54052号「いか肉を用いた食品の製造」野村発明、特開昭53-115854号「珍味食品の製造法」大塩発明、特公平1−2348号「いか巻の製造方法」榎本等発明、特公昭58−15106号「いかすり身の製造方法」宮川商店特許、特開昭63−44835号「いかの乾燥シートおよびその製造方法」町出等発明、特公平2−30号「微粉の製造方法」田口特許、特開平1−171464号「イカ加工品の製造方法」藤本発明、特開平4−158767号「シート状珍味の製造法」金井発明、特開平5−199852号「いかの腸詰めおよびその製造方法」高村発明、特開平10−113151号「イカ利用均質食品」塩谷発明、特開平10−165110号「水産廃棄物から製造した魚類誘因餌料」富沢発明等々に散見されるとおりである。
【0007】
しかし、これら従前からの試みのものは、既に確立した技術となっているスケトウダラ冷凍すり身を主原料としたゲル化(蒲鉾)技術の応用編の域を脱しきれておらず、イカすり身を主原料としながらも、必ず澱粉やその他の農産物および/または魚肉等と共に練り混ぜ合わせた上、焼成して煎餅状にしたり加熱処理して竹輪状あるいはソーセージ状としてしまうものであり、所謂従前から存在してきている食品について、主原料をイカ肉に代替して作り上げたに過ぎない程度のものであり、イカの特性を活かして完全に新規な素材に至るようにした提案は認められない。
【0008】
イカ肉の特性は、これまでのゲル化商品の代表であるスケトウダラ肉の場合と比較的に示せば、水晒しによってタンパクが溶け出して肉質の流出現象を来し易く、品質向上のためのゲル化前処理としてスケトウダラ肉の場合に採用されている不溶成分を洗い流すための水晒しができないこと、内因性のプロテア−ゼ活性が高いため、魚肉のゲル化に欠かせない塩ずり工程をするとタンパク質が分解され、ミオシン重鎖の著しい減少が起こりゲル化能の低下を招くこと、また、この塩ずり後の座り処理(ゲル強度の低下を来さないよう30℃程度で数十分間予備加熱して弾力性を向上させる工程)によると、ミオシン重鎖が低分子化されて著しいゲル化形成能の低下に繋がること、そして、何よりもイカ肉タンパク質は、水素結合やイオン結合等が主体となっていて、共有結合によるミオシン重鎖多量化が主体をなすスケトウダラ肉の場合と基本的にゲル化機構を異にしていることといったスケトウダラ肉のゲル化に欠かせない処理工程を不適とする特性がある。
【0009】
更に、このイカ肉の特性には、逆にスケトウダラ肉のゲル化処理に不都合とされている処理にも適した特性、即ち、冷凍耐性があることから長期間の冷凍保存によっても冷凍変性を来さず、スケトウダラ肉の場合のように変性防止剤を必要としないこと、スケトウダラ肉の場合と違って、50℃ないし60℃前後の温度帯によってもゲル強度の低下(スケトウダラ肉の処理において「火戻り」と称されている現象)に繋がることがなく、その範囲の加熱温度帯が積極的に加工処理に採用できること、したがって、スケトウダラ肉の場合のように、予備加熱処理による「座り」を要せず、直接高温度加熱処理によってゲル化を達成できること等の特性も有している。
【0010】
こうしたイカ肉特性に配慮した処理技術によるものとしては、既述の先行技術の中の宮川商店特許(特公昭58−15106号「いかすり身の製造方法」)にもその一部を見い出せるが、この特許発明の技術的思想は、その公報の記載からも明らかなとおり、鰭や腕の活用に欠かせないそれらの部分の剥皮を主目的とするものであって、その要旨は、物理的な手段では剥皮が困難な鰭や腕部分の皮を、所定の割合で中腸腺かアルカリ剤、あるいはそれらを併用して混入した温湯(45℃〜55℃)中で軟化あるいは剥皮してから、水に晒して冷却し、その後閉鎖系内で遠心加速し、遠心運動方向に固定した刃物で薄片にカッティング処理するすり身の製造方法であって、皮の軟化あるいは剥皮処理の際、熱変性を来し易いイカ特性に配慮した温湯温度を採用していること、また、熱変性の進行停止と無機塩類や水溶性蛋白の除去を目的とした水晒しに際し、イカ肉質の流出に配慮した晒し処理を採用している。
【0011】
しかし、この宮川商店特許発明の製造方法は、既に知られている特性を、皮の軟化あるいは剥皮処理に応用するため、鰭や腕部分をそのままにして短時間温湯処理し、皮の部分だけの熱変性に止めるようにしたものであり、身の部分の熱変性を最小限に止めるか、熱変性を起さないようにした上、その後冷却した身をカッティング処理するものであり、いわば何等かの手段によって皮を剥いで身だけにした生イカのすり身の製造方法と基本的には変わらず、すり身自体は、スケトウダラに混入、利用されてゲル化(蒲鉾)されていた従前からの皮を剥いだ胴の部分のすり身と何等変わるところのものではなく、その証拠には、イカの特性からいって、本来採用されるべきではない水晒し処理を行い、スケトウダラに混入処理されてゲル化(蒲鉾)した際、練製品としてのアシに影響する無機塩類や水溶性蛋白の除去する処理までを採用していることからも明らかであり、したがって、これら公知となっている先行技術に開示されたイカのすり身に関するものの中には、それだけを活かして全く新たな食品素材とする関連技術を全く見い出すことができない。
【0012】
この発明は、以上見てきたとおり、イカの積極的な加工処理として、未だイカの潰し肉を主原料とし、しかも、その特性を有利な要素として活かしてなる新食品素材の開発、実用化がなされてきていないことに着目し、今後のイカの消費拡大には、その分野でのイカの利用が欠かせないとの政策的な判断から、その現場で水産業者を指導、支援する立場にあるものとして鋭意開発、研究を継続し、永年に渡る試行錯誤と幾多の試作実験とを繰り返してきた結果、遂に茲にきて、以下において詳述するとおりの新規な構成からなるイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法を実現化することに成功したものである。
【0013】
【発明の構成】
この発明は、基本的に次のとおりの構成を要旨とするカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法である。
即ち、生イカを適宜手段ですり潰してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなすことにより、イカ肉のタンパク質変性を制御し、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル化処理を施してイカ潰し肉ゲル化素材が得られるようにした構成からなるイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法である。
【0014】
この基本的な構成のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法を、他の記載表現によるものとして示せば、生イカを適宜手段ですり潰してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながらゲル化させた後、速やかに冷却または冷凍処理するか、乾燥させてから冷却または冷凍処理するかしてイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにした構成を要旨とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法ということもできる。
【0015】
そして、上記基本的な構成のこの発明のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法には、より具体的な構成のものとして示すことができる以下のとおりの幾つかの代表的なイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法が包含されている。
先ずは、その一つに、生イカを適宜手段ですり潰し、少なくとも0.02モル以上の糖類を添加、混練してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながらゲル化させ、薄板化したものを、70℃以下の温度で透明または半透明になるまで乾燥した上、冷却または冷凍処理をすることにより、透明または半透明のイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにした構成を要旨とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法がある。
【0016】
また、生イカを適宜手段ですり潰し、細片状とした大葉等の薬味材を添加、混練してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながらゲル化させ、所定サイズのブロック化したものを、一旦凍結させた後、半解凍状態でスライス加工で厚さ1ミリ程度の薄片化したものとすることにより、温水に潜らすと縮れ現象を来すイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにした構成を要旨とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法も包含されている。
【0017】
更に、生イカを適宜手段ですり潰し、チーズ、パイナップル、醤油、納豆、イカ足ぶつ切り等、食味用あるいは増量用の適宜材料の一種類以上を混入してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制して短時間加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら外側だけをゲル化させ、速やかに冷却したものを適宜サイズの小片状に成形してしまうことにより、その後、衣をつけて油で揚げ、成形フライに加工処理するためのイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにした構成を要旨とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法も同様である。
【0018】
そして、生イカを適宜手段ですり潰してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制してなる温湯中または加熱油中に細く絞り出し、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながらゲル化させた後、速やかに冷却または冷凍処理したものとすることにより、麺類用とする紐状のイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにした構成を要旨とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法も包含される。
【0019】
生イカは、水揚げされた後のイカであって、熱処理加工等によってタンパク質変性を起していないものでありさえすれば、特にその鮮度にあまり左右されるものではなく、生食(刺身)には適さないが、十分食用できる程度のものまで対象とすることができ、また、イカは、スケトウダラの場合と違って冷凍耐性があることから、冷凍イカの採用も当然可能になる上、従前からの加工処理による整形段階に副次的に発生する余り肉部分や利用頻度の低い鰭や腕の部分も何等支障なく対象となり得る。但し、各部の皮(通常四層となっている皮全て)については、この発明が包含する透明または半透明のイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにする製造方法に使用対象となる生イカの場合を除き、何等剥皮処理するまでもなく、この発明による製造方法の実施が可能になるものの、透明または半透明性を必要としたり、きれいな白色系にゲル化する必要のある製造方法用の生イカとする場合には、色素胞を含む層の皮(通常第1〜3層まで)については剥皮、除去してしまわない限り、食品素材が赤みを帯びたものになってしまうことから注意を要することになる。
【0020】
なお、生イカの種類についての制約はなく、食用に供されているものであればどの種のものでも利用可能とするものの、その種類によっては、タンパク質変性の温度に対する感受性が異なる(参考までに、感受性の高い順に代表的なイカの種類を列挙すれば、「ホタルイカ」、「アルゼンチンイレックス」、「カナダイレックス」、「ヤリイカ」、「ニュージーランドスルメイカ」、「アカイカ」、そして、最も安定する「コウイカ」)ため、熱に対して不安定な種類については、特に処理中の温度上昇に留意する必要がある。
【0021】
上記対象となった生イカは、特に温度感受性の強い種の生イカは勿論のこと、そうでない種類の生イカについても、極力品温の上昇を来すことのないよう処理条件を整え、なるべくは10℃を超えることのない低温下、望ましくは5℃以下の温度下となるような設備条件となるようにした上、従前からの潰し肉処理手段、例えばミートチョッパーやサイレントカッター等による手段を含む適宜手段によって、できるだけ迅速な潰し肉処理を完了し、この発明の製造方法のための所定の潰し肉を製造してしまうようにすべきである。
【0022】
なお、こうして製造されたイカ潰し肉は、一旦冷却したものとして使用するのが望ましく、また、その後も速やかに次の加熱処理工程に廻すようにすべきであり、当該加熱処理工程までに時間が空く場合、例えば潰し肉の製造工程だけが独立、先行して実施されるようなケースでは、速やかに冷凍貯蔵するようにしなければならない。但し、イカ類が冷凍耐性を有するとはいえ、一度イカ潰し肉とした後で凍結・解凍が繰り返されると、ゲル強度低下に代表される品質の低下を免れなくなることから、イカ潰し肉処理後は、冷却処理した上、速やかに加熱処理工程に流れる一連の製造方法が実施されるよう、予め加熱処理工程以降の処理能力に応じた分量だけのイカ潰し肉処理となるようにすべきである。
【0023】
このイカ潰し肉は、イカ肉だけでも差し支えはないが、食材目的、即ち対象食品の素材として味付けや色付けを必要とするかどうかや、機能性食品とするために、ある種の有効成分、例えばカルシウムやEPA、DHA、各種ビタミン等の栄養素の補充をすべきものかどうか等といった主に食品成分上からくる目的、および/または、透明度を高くするとか、ゲル化を促進あるいは制御して所望の弾力性や艶やかさ、固さを実現する必要があったり、日持ち等性状の維持、改善の要請がある等、主に食品性状の改善に繋がる目的等といった各種目的に応じ、それら目的達成に必要となる適宜添加物を適量添加し、均質に混練してなるものとすることができる。なお、酢等に代表されるタンパク質変性剤またはそれに関連する材料の添加については、タンパク質の変性を来たさない程度の少量の使用については問題がないが、それ以上となってタンパク質が変性を起こしてしまうとゲル化反応に支障を来たすこととなるため、注意が必要になる。
【0024】
これら添加物は、前記イカ潰し肉に対し、極力温度上昇を阻止するように努めながら、できるだけ短時間の処理で均質に混練されるようにすべきであり、しかも、その混練の際には、最終商品に要求される性状に合うよう真空度を調節し、混練物の中に混入する空気の量を最適な条件、例えば、透明性を持った最終食品としたり、比較的固めの蒲鉾状最終食品にしようとする場合であれば、イカ潰し肉中への空気の混入を断つようにしながら速やかな撹拌、混練をなし、また、フライ等ソフトな食感を必要としたり、白濁した外観が好ましい最終食品用とするとき等には、逆に積極的に空気を混入するようにした混練とする。
【0025】
なお、最終食品を透明性のあるものにしようとするときには、この空気量の遮断混練処理と共に、添加物しての糖類(例えばシュクロースやソルビトール、マルトース等、特に種類を問わない。)の採用が必須であり、その添加割合も、イカ潰し肉中水分に対して0.5モル程度以上としなければならず、該糖類の添加割合と透明性の程度とはある程度の割合のところまでは略比例していることが判明した。
【0026】
こうして形成されたイカ潰し肉は、ゲル化を制御、進行するための加熱処理工程にできるだけ早く移行する必要があり、その加熱処理工程に移行する間、従前からのスケトウダラのゲル化処理の場合であれば、水晒しをしてゲル化に都合の悪い不溶性分を洗い流す工程を取り入れたり、弾力性向上を意図して比較的低温の30℃程度で数十分間もの予備加熱をする「坐り」処理をする等といった中間処理を必要としていたのに対し、この発明の製造方法では、それら中間処理を必要とせず、直接(正確には、最終食品との兼ね合いで適宜成形処理した上)加熱処理工程に入るようにするものである。
【0027】
この加熱処理工程では、その加熱温度帯が、加熱対象となるイカ潰し肉の中心温度で30℃〜70℃の範囲、望ましくはそれより高い40℃〜70℃とすべきであり、更に短時間の中にゲル化を制御して良品質の食品素材を製造するためには、後述の実施例で多く採用しているように50℃前後といった比較的高温帯域において実施するようにし、イカ肉のタンパク質変性を制御し、一部熱変性を伴うゲル化の進行と共に、未変性タンパク質のままでその後に未だタンパク質変性能を残す部分が併存するようにしたゲル化処理を施すようにしなければならず、それら二つの特性がバランスしたままのゲル化を実現する上で、上記した加熱温度帯は極めて重要な要素であり、70℃前後よりも高い温度域によって処理した場合には、そうした特徴あるゲル化処理を果たすこと難しく、この発明が目的とするゲル化食品素材の製造に相応しくない製造方法となってしまう。
【0028】
この加熱処理工程における加熱手段は、比較的肉薄状に成形したものの場合には温湯によるものとし、肉厚板状あるいはブロック状等に成形したものでは、ヒーター内蔵の加熱容器内に直接充填して通電加熱するようにするか、伝熱性成形用容器内に収容した上、当該容器毎加熱装置内に入れて加熱する等肉厚内部まで効率的に伝熱できる手段によるものとする外、紐状の食品素材に加熱処理するような場合であれば、当該イカ潰し肉をスタファー等の絞り機で、適当なノズルを介して絞り出し、温湯または加熱油中で加熱処理することも可能である。
【0029】
なお、加熱処理に先立つイカ潰し肉の整形には、ビニール袋等耐水・耐熱性袋に充填した上で、所望する厚さまで薄く圧延するようにしたり、および/または形状を整えてしまうようにする手段によるか、あるいは、最終食品が、しゃぶしゃぶ用素材のように、かなり薄手のものとしなければならないような場合には、先の耐水・耐熱性袋に充填して圧延する手段によるものとする外、一旦ブロック状のものに整形して加熱処理した上、凍結してしまい、その後半解凍状態においてスライサー等の器具を使って薄く切るようにした手段により、最終的に薄片状に整形したと同様の結果が得られるようにすると、極めて効率的且つきれいに製造することができて極めて好都合のものとすることができる。
【0030】
温度管理と時間管理とによる加熱処理でゲル化を制御し、予定どおりの性状にまでゲル化を進めた後、所定のゲル化状態に固定するための冷却処理を経ることにより、この発明のイカ潰し肉ゲル化食品素材が製造され、夫々目的とする最終食品への加工過程、即ち最終食品としての整形や味付け、色付け、他食品との組合せ・一体化、ラッピング、冷凍貯蔵等の処理に廻されることになるが、この素材製造の最終工程となる冷却処理には、製造すべきイカ潰し肉ゲル化食品素材がどのような性状の最終食品を対象としているかによっても違いがある。
【0031】
例えば、透明な商品向けとなるイカ潰し肉ゲル化食品素材とする場合には、ゲル化のための加熱処理工程を終えた後、−10℃ないし70℃の範囲内の温度下での通風乾燥処理が必須となり、その乾燥時間も適用温度によって変わり、また透明性を付与する上で必須の条件となる糖類の添加割合によってもその乾燥時間は変わり、その適用温度が高ければ短く、糖類添加量が多くなる程長くするようにした乾燥処理を施した上、高温通風乾燥の場合には、速やかに冷却処理する必要がある。
【0032】
また、透明性を必要としない食品向けのイカ潰し肉ゲル化食品素材の場合であれば、所定の性状のゲル化に達した段階で、できるだけ円滑に冷却してしまうようにし、特に紐状として麺類食品とするものの場合等は、芯部にまでゲル化が進行して独特の弾力性と折角の風味とが殺がれてしまわないようにする等、必要以上のゲル化の進行を阻止するようにして、最終食品に相応しい安定した品質のイカ潰し肉ゲル化食品素材が確実に得られるようにする。
以下では、上記したこの発明のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法の構成が、より一層明確に把握できるようにするため、この発明を代表する幾つかの具体的な実施例を示すことにする。
【0033】
【実施例1】
この発明の技術的思想に基づくイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法によってもたらされる素材として、最も端的にその特徴が認められる事例が茲に取り上げた実施例であり、従前までのもののような他の肉や澱粉等の繋ぎ材等を一切使用することなく、イカ潰し肉だけを使って透明性のあるゲル化食品素材が製造可能となるようにしたものである。その製造工程は、以下に展開するとおりのものである。
【0034】
第 一 工 程
生イカ(加熱処理をしていないという意味での生イカであって生鮮の程度は問わない。)、それが冷凍物であれば解凍したイカを用意し、より望ましい透明性を実現するために内臓や鰭、頭脚部を取り除いてしまうと共に、赤みを帯びた色を避ける必要があれば四枚ある皮の少なくとも外側三枚を剥いでしまう工程。
したがって、着色傾向や透明性にそれ程こだわることのない場合には、鰭、頭脚部の除去や剥皮処理を施す必要はなく、最低限内臓だけを除去した生イカの採用も可能となる。
【0035】
第 二 工 程
その生イカを、例えばミートチョッパーやサイレントカッター等の公知の器具によってイカ潰し肉とする。その際、品温の上昇を来すことのないように10℃を超えることのない低温下、望ましくは5℃以下の温度において処理が成されるように十分な配慮を必要とし、特に、採用した生イカが、温度感受性の強い種、例えばホタルイカやヤリイカ等の生イカの場合には細心の注意をはらった上、できるだけ迅速な潰し肉処理を完了してしまうようにすべきである。
【0036】
第 三 工 程
次に、公知の撹拌器を用い、砂糖1.3%、食塩0.5%、グルタミン酸ナトリウム0.05%を添加し、温度の上昇を極力避けるようにして手際よく十分な混練がなされるようにする工程。
その際、可能な限り脱気して混練物内への空気混入量を規制し、透明度を高めるようにする必要がある。なお、砂糖の割合を多くする程透明性の付与に有利になるものの、後述する乾燥処理に時間を要することになる点と、最終商品における甘さに影響する点とを勘案して最適な割合とすれば良いが、最低限イカ潰し肉中水分に対して0.5モル程度以上となる添加割合が確保されていなければならない。
【0037】
また、必要に応じ、最終食品としての栄養価や味付け、色合い等に注文があれば、この段階で、それらの要求に応じた適宜添加物、例えば、機能性食品を狙って、例えばカルシウムやEPH、DHA、各種ビタミン等有効成分の一種類または数種類を添加したり、調味液や着色料等も添加可能になる外、公知の性状改善剤等を加えてその弾力性や艶やかさ、固さ、日持ち等を良くするようにしたものとすることもできることは云うまでもないことである。
【0038】
第 四 工 程
上記までの工程で所定の如くに製造されたイカ潰し肉は、ビニール袋の中に所定量が詰め込まれ、当該袋の外側からのし棒を転がして押しつぶすか、適宜押圧具の間に挟着状にする等適宜手段によって圧延し、その厚さが略3mm程度の均一な厚さとなるようにする工程。
【0039】
第 五 工 程
45℃の温湯中に、上記第四工程で用意したビニール袋入りイカ潰し肉を、その袋毎浸漬し、約3分間程加熱した後、引き上げた袋からゲル化を進めた板状のイカ潰し肉を取り出してしまう工程。
この状態のイカ潰し肉は、ゲル化が制御されていて、一部熱変性を伴うゲル化の進行と共に、未変性タンパク質のままでその後に未だタンパク質変性能を残す部分が併存するようにしたゲル状物質となっており、速やかに常温以下まで冷却し、その性状を維持するようにすると共に、粘着性もあって適宜形状、例えば筒状にすること等も容易であり、最終食品に応じた形状に適宜成形するようにする。
【0040】
第 六 工 程
所定のゲル化を終え、必要に応じて成形されたイカ潰し肉を、50℃前後に設定した乾燥機の中で水分50%以下の乾燥度となるよう、2時間程度の所要時間を掛けて所望の透明度となるまで通風乾燥する工程。
この乾燥処理する際、網に載せた状態にすると編み目が付いてしまう虞れがあることから、紐に吊るす等の工夫を要する。通風乾燥温度帯は、30℃ないし70℃の温度範囲内でなければならず、透明度を上げるには、できるだけ低温側において実施するのが有利ではあるが、低温側になる程、通風乾燥に時間を要してしまうことに留意する必要がある。
【0041】以上の工程によって製造されたイカ潰し肉ゲル化食品素材は、糖類の添加割合や通風乾燥温度の条件によってその透明度に違いを生ずる。換言すれば、所望の透明度を実現しようとすれば、イカ潰し肉への糖類の添加割合や加熱処理後の通風乾燥温度の条件を適宜コントロールすることによって実現し得ることになる。そして、一旦所定の透明性を有するものとしたイカ潰し肉ゲル化食品素材は、その後、冷凍させたとしても、解凍後には再びその透明性を維持したイカ潰し肉ゲル化食品素材に復帰する。
【0042】
【実施例2】
この実施例は、透明性のあるイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造する方法で、上記実施例とは異なる工程からなるものの事例であり、上記実施例の第一ないし三工程を経過して得られたイカ潰し肉につき、その後の第四工程および第五工程が次のように第四の一工程および第五の一工程に変更されて実施された上、第六工程は、上記実施例1と同様にして実現されるようにしたものである。
【0043】
第 四の一 工 程
上記までの工程で所定の如くに製造されたイカ潰し肉を、耐熱性袋その他容器に入れるか、直接充填可能な専用のジュール加熱装置による等して10cm角程度の直方体ブロックが成形されるようにし、その容器入りイカ潰し肉をジュール加熱装置によって45℃、3分間程度の加熱をなし、ゲル化を進行させ、予めブロック状のものとして形成してしまう工程。
【0044】
第 五の一 工 程
ブロック状のものにゲル化したイカ潰し肉を、スライサーを使って略3mm程度の厚さのものに切り揃えるようにした工程。
以降は、実施例1における第六工程と同様の処理をして透明性を有するイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造するものである。
【0045】
【実施例3】
次は、イカ潰し肉によって餃子の皮様食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造するようにした具体的事例であり、前記実施例1の第一および第二工程と同様にした工程を経てイカ潰し肉を製造した後、実施例1の第三ないし第五工程を、第三の一工程、第四の二工程および第五の二工程に変更、実施し、上記実施例1の第六工程については、透明性を付与する必要があるときだけに採用されるようにしてなるものである。
【0046】
第 三の一 工 程
公知の撹拌器を使って、砂糖1%、食塩1%、グルタミン酸ナトリウム0.3%、およびイノシン酸ナトリウム0.03%を添加し、温度の上昇を極力避けるようにして手際よく十分な混練をする工程。
【0047】
第 四の二 工 程
上記によって製造されたイカ潰し肉を、直径5cm程度の塩化ビニリデンチューブに詰め込み、50℃の温湯中(ジュール加熱装置によってもよい。)で20分間加熱し、ゲル化を進行させる工程。
第 五の二 工 程
ゲル化したイカ潰し肉を、チューブから取り出すか、あるいはチューブ入りのまま、スライサーによって略2mm厚程度のものに切り揃えるようにした工程。
以上により、餃子の皮様食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造するものである。
【0048】
【実施例4】
この実施例は、イカ潰し肉を使ったしゃぶしゃぶ食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法に関する具体例であり、前記実施例1の第一および第二工程と同様にしてイカ潰し肉を製造した後、実施例1の第三ないし第五工程を、次のとおりの第三の二工程、第四の三工程および第五の三工程に変更して実施するようにしたものである。
【0049】
第 三の二 工 程
前記実施例1の第1および第2工程と同様にして得られたイカ潰し肉に、上記実施例3と同様にして、砂糖1%、食塩1%、グルタミン酸ナトリウム0.3%、およびイノシン酸ナトリウム0.03%を添加し、公知の撹拌器で温度の上昇を極力避けながら手際よく十分な混練をする工程。
【0050】
第 四の三 工 程
上記によって製造されたイカ潰し肉を、実施例2の第4の一工程と略同様に、先ず10cm角程度の直方体ブロックが成形し、ジュール加熱装置(温湯でも差し支えはない。)によって50℃、3分間程度の加熱をなし、ゲル化を進行させ、予めブロック状のものに形成してしまう工程。
第 五の三 工 程
ゲル化したイカ潰し肉を、一旦凍結させた後、半解凍状態にしたものを、スライサーによって略1mm厚程度のものに切り揃えるようにした工程。
以上により、しゃぶしゃぶ食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造するものである。なお、第五の三工程の後、冷凍貯蔵しておいて解凍、使用するようにしても、熱湯内に浸けて縮れ状となる性状に支障を来すことはない。
【0051】
【実施例5】
この実施例は、衣が剥離することのない成形フライ食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造であって、前記実施例1の第一および第二工程と同様にした工程を経てイカ潰し肉を製造した後、実施例1の第三ないし第五工程を、第三の三工程、第四の四工程および第五の四工程に変更、実施し、以降は、従前からのフライ用に衣を付けて油で揚げるようにする工程を経れば製造できるようにしたものである。
【0052】
第 三の三 工 程
公知の撹拌器で、前記実施例1の第二工程までで得られたイカ潰し肉に、砂糖1%、食塩1%、グルタミン酸ナトリウム0.3%、およびイノシン酸ナトリウム0.03%を添加し、温度の上昇を極力避け、手際よく十分な混練したものに、更にチーズ、パイナップル、醤油、納豆、イカ腕ぶつ切り等を適当量混合する工程。
【0053】
第 四の四 工 程
上記によって製造された添加物混合のイカ潰し肉を、スタッファーに充填し、50℃の温湯または油の中に向け、直径2.5cm程度のノズルを使って絞り出し、軽く潜らせて表面側だけがゲル化を進行させるようにした工程。
【0054】
第 五の四 工 程
ゲル化した棒状のイカ潰し肉を、フライに適した長さサイズのものにカットするようにした工程。
以上によって、以降の処理工程の、フライとするための小麦粉、とき卵、パン粉を順次まぶし、170℃の油で揚げて成形フライとするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造するものである。
【0055】
【実施例6】
次の事例は、ソフトな食感を有するうどんのような細紐状食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造であって、前記実施例1の第一および第二工程と同様にした工程を経てイカ潰し肉を製造した後、実施例1の第三および第四工程を、第三の四工程、第四の五工程に変更する工程を経るようにした製造方法である。
【0056】
第 三の四 工 程
公知の撹拌器で、前記実施例1の第二工程までで得られたイカ潰し肉に、砂糖1%、食塩1%、グルタミン酸ナトリウム0.3%、およびイノシン酸ナトリウム0.03%を添加し、温度の上昇を極力避け、手際よく十分な混練する工程。
【0057】
第 四の四 工 程
上記によって製造されたイカ潰し肉を、スタッファーに充填し、50℃の温湯または油の中に向け、直径5mm程度のノズルを使って絞り出し、温湯または油の中に数分間止まらせて表面側だけがゲル化を進行させるようにした工程。
以上によって、うどんのような細紐状食品とするためのイカ潰し肉ゲル化食品素材を製造するものである。
【0058】
【作用効果】
以上詳述してきたとおり、この発明のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法によれば、従前までのような、単にスケトウダラ冷凍すり身を応用した程度であって、イカすり身を主原料としながらも、必ず澱粉やその他の農産物および/または魚肉等と共に練り混ぜ合わせ、加熱処理して竹輪状あるいはソーセージ状のものとしたり、焼成して煎餅状のものにした、所謂従前から存在してきている食品について主原料をイカ肉に代替したに過ぎない程度のものではなく、イカの潰し肉を主原料とし、しかも、その特性を活かして新食品用の素材とすることを可能にしたものであり、様々な理由から低迷するイカ消費の拡大に繋げることができると云う極めて大きな特徴を発揮するものとなる。
【0059】
即ち、生イカは、その特性として、そのゲル化機構において、ゲル化商品の代表でとして知られるスケトウダラ肉のような共有結合によるミオシン重鎖多量化が主体をなすものと違い、水素結合やイオン結合等を主体とすることに起因したゲル化が進行するものであると云う基本的な違いがある上に、既に確立しているスケトウダラ肉の応用では、品質向上のために不溶成分を洗い流す水晒しによってはタンパクが溶け出して肉質の流出現象を来し易く、また、内因性のプロテア−ゼ活性が高いため、魚肉のゲル化に欠かせない塩ずり工程によってもタンパク質が分解され、ミオシン重鎖の著しい減少が起こりゲル化能の低下を招いてしまう外、弾力性向上のための予備加熱がなされると、ミオシン重鎖が低分子化されて著しいゲル化形成能の低下に繋がることなる等の差異を有している。
【0060】
したがって、この発明では、スケトウダラ肉において確立したゲル化処理方法に拘泥せず、何よりもイカ肉タンパク質は、冷凍耐性がある上、50℃ないし60℃前後の温度帯によってもゲル強度の低下がなく、その範囲の加熱温度帯が積極的に加工処理に採用できるという特性を活かし、温度と時間とを調整した加熱処理によってイカ肉のタンパク質変性を制御し、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしてゲル化させた後、速やかに冷却または冷凍処理するか、乾燥させてから冷却または冷凍処理するかすることによって、イカ潰し肉だけでのゲル化食品素材の製造に成功したものである。
【0061】
その結果、成形後にあってもタンパク質の接着能力が失われず、それ自体を整形して自由な形の商品に展開可能にするだけではなく、他の素材との一体化も確実且つ強固なものとすることができ、フライ商品としたときにも衣だけが剥がれ、離脱もしくは破裂してしまう虞れが全くないイカ食品とすることができると云う利点があり、また、従前からのイカ製品としての加工、整形後に発生する形の不揃いな余り肉や鰭、腕等商品価値の低い部位の肉でも区別なく使用可能になり、資源の有効活用と共に廃棄処理対策上からも有用な技術とすることができる上、各種添加物の混入も、タンパク質を変性させてゲル化に支障を来す酢等を除けば、各種の物の混入が可能になって、機能性食品その他目的婦負とに適った各種食品への応用が可能になったり、それらの特徴を備えた食材として、簡単に定量化し、しかも、ゲル化の制御によって商品固さのコントロールも容易になることから、学校給食、病院食、デイサービス用弁当等のようにカロリーや咀嚼性等に特に配慮しなければならない食材として最適なものとすることができる等、多くの実用的な利点が得られることになる。
【0062】
特に、実施例に取り上げたイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法では、図1に示すデーターからも明確になるとおり、イカ潰し肉水分に対して0.5モル以上の糖類を添加し、図2のデーターによって判明した所定温度範囲内で時間を調整した通風乾燥をするという新規な製造工程を採用することによって、かって実現されたことのない透明性のあるゲル化食品素材の製造が確実に実施可能になり、それを利用して極めて新規性に富んだ新食品の実用化が図れるようにすると云う秀れた特徴が得られるものとなる。
【0063】
また、図3のデーターが示すとおり、通風乾燥処理段階の温度帯を規制することによって製造されたイカ潰し肉ゲル化素材には、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしてゲル化されて乾燥した後でも、粘着性が保持され続けていることが実証されており、餃子や春巻きのように内部に他の素材を入れて包み込んでしまうようにした食品の皮用となるゲル化素材として、極めて有利な特徴となるものであって、イカ味のする好ましい風味を兼ね備えた新たな商品としての餃子や春巻きの実現化を可能にすると云う秀れた効果も得ることができるものとなる。
【0064】
一方、イカ肉のタンパク質変性を制御しながらゲル化させて所定サイズのブロック化したものを、一旦凍結させた後、半解凍状態でスライス加工で厚さ1ミリ程度の薄片化するようにしたものでも、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしてゲル化が効を奏して、温水に潜らすと縮れ現象を来すという、これまでの生イカ主体の加工食品には全く期待のできなかった極めて珍しいイカ潰し肉ゲル化素材を得ることができ、こうした特徴ある性状は、タンパク質変性を制御し、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしてゲル化したことから、ゲル化素材とした後でも当該未変性タンパク質の部分が熱変性する結果としてもたらされものと考えられる。
【0065】
更に、所定温度帯内であって短時間加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら外側だけをゲル化させ、適宜サイズの小片状に成形したり、紐状となるようにしてイカ潰し肉ゲル化素材としたものでは、表面側の一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル部分に、上記したとおり、粘着性があって衣が付着し易く、その後油で揚げたり、電子レンジによって再加熱した際にも、イカ潰し肉ゲル化食品素材から衣部分が剥がれたり、水分が隠って破裂現象を起すことがなく、また、ゲルの内側には、イカ潰し肉がそのままで存在し、成形フライやうどん麺として食する調理段階の加熱によって完全にゲル化して弾力性が増し、全体がイカ潰し肉からなり、正にイカ風味がして歯触りの良い極めて新しい食品を提供することが可能になるものである。
【0066】
叙述の如く、この発明のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能にすると云う秀れた特徴を発揮し得るものである上、、従前からの代表的なゲル化食品であるスケトウダラ肉によるものに比較しても、その製造工程は極めて簡略化され、効率的な生産を可能にするものであることから、これまでのところでは、加工イカとしての生イカの利用範囲が制約を受け、永年に渡って消費拡大の点で遅れをとってきたイカ関連水産業者の活性化に貢献し、また、消費者からも新たな食材の登場として賞賛されることとなって、各方面から高く評価され、大いに普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法の特徴を裏付けるために必要する各種データーを示すものである。
【図1】糖類添加量と光透過性との関係を示すグラフである。
【図2】水溶性タンパク質と乾燥温度との関係を示すグラフである。
【図3】粘着性と乾燥温度との関係を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 生イカを適宜手段ですり潰してなるイカ潰し 肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル化処理の後、該ゲル化を固定するために速やかに冷却または冷凍処理するか、乾燥させてから冷却または冷凍処理するかしてイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにしたことを特徴とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  2. 生イカを適宜手段ですり潰し、少なくとも0.02モル以上の糖類を添加、混練してなるイカ潰し肉を、水晒し予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル化処理をし、薄板化したものを、該ゲル化を固定するために70℃以下の温度で透明または半透明になるまで乾燥した上、冷却または冷凍処理をすることにより、透明または半透明のイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにしたことを特徴とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  3. 生イカを適宜手段ですり潰し、細片状とした 大葉等の薬味材を添加、混練してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制すると共に、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル化処理をし、該ゲル化を固定するために所定サイズのブロック化したものを、一旦凍結させた後、半解凍状態でスライス加工で厚さ1ミリ程度の薄片化したものとすることにより、温水に潜らすと縮れ現象を来すイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにしたことを特徴とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  4. 生イカを適宜手段ですり潰し、チーズ、パイナップル、醤油、納豆、イカ足ぶつ切り等、食味用あるいは増量用の適宜材料の一種類以上を混入してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制して短時間加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル化処理をして外側だけをゲル化させ、該ゲル化を固定するために速やかに冷却したものを適宜サイズの小片状に成形してしまうことにより、その後、衣をつけて油で揚げ、成形フライに加工処理するためのイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにしたことを特徴とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  5. 生イカを適宜手段ですり潰してなるイカ潰し肉を、水晒し、予備加熱等の処理をすることなく直接、その中心温度で30℃ないし70℃の範囲内となるように規制してなる温湯中または加熱油中に細く絞り出し、中心温度に応じた時間内において加熱処理をなし、イカ肉のタンパク質変性を制御しながら、一部熱変性を伴うゲル化に未変性タンパク質の部分が併存するようにしたゲル化処理の後、該ゲル化を固定するために速やかに冷却または冷凍処理したものとすることにより、麺類用とする紐状のイカ潰し肉ゲル化素材を得るようにしたことを特徴とするイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  6. イカ潰し肉は、食材目的に応じた適宜添加物の適量が、空気混入量を調節しながら速やかに撹拌、混練されたものとして製造された上、所定の如く加熱処理以降の工程が実施されるようにした、請求項1ないし5何れか記載のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  7. 添加物は、砂糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムの全てか、それらの適宜組合せによるものかの何れかによるものとした、請求項6記載のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  8. 添加物は、カルシウム、EPH、DHA、各種ビタミン等有効性分の一種類以上が適量混入されて機能性食品素材としての形成を可能となるようにした、請求項6または7記載のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
  9. イカ潰し肉の混練は、10℃以下、望ましくは5℃前後の温度下で実施されるようにした、請求項1ないし8何れか記載のイカ潰し肉ゲル化食品素材の製造方法。
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