JP3647031B2 - 垂直磁気記録媒体の製膜制御方法 - Google Patents

垂直磁気記録媒体の製膜制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3647031B2
JP3647031B2 JP2001567587A JP2001567587A JP3647031B2 JP 3647031 B2 JP3647031 B2 JP 3647031B2 JP 2001567587 A JP2001567587 A JP 2001567587A JP 2001567587 A JP2001567587 A JP 2001567587A JP 3647031 B2 JP3647031 B2 JP 3647031B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mag
medium
ini
perpendicular magnetic
ferromagnetic layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001567587A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2001069595A1 (ja
Inventor
高橋  研
伸 斉藤
ダビッド ジャヤプラウィラ
Original Assignee
高橋 研
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 高橋 研 filed Critical 高橋 研
Publication of JPWO2001069595A1 publication Critical patent/JPWO2001069595A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3647031B2 publication Critical patent/JP3647031B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G11INFORMATION STORAGE
    • G11BINFORMATION STORAGE BASED ON RELATIVE MOVEMENT BETWEEN RECORD CARRIER AND TRANSDUCER
    • G11B5/00Recording by magnetisation or demagnetisation of a record carrier; Reproducing by magnetic means; Record carriers therefor
    • G11B5/84Processes or apparatus specially adapted for manufacturing record carriers
    • G11B5/855Coating only part of a support with a magnetic layer

Landscapes

  • Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)
  • Magnetic Record Carriers (AREA)

Description

【0001】
技術分野
本発明は、垂直磁気記録媒体の製膜制御方法関する。より詳細には、記録層をなす強磁性体層に占める微結晶組織部の割合を定量的に把握できるとともに、その上に形成された柱状組織部の磁性結晶粒が所望の結晶磁気異方性定数Kugrainを備えているかについても同時に調べ、好適な製膜条件の指標を得ることが可能な、垂直磁気記録媒体の製膜制御方法に関する。
【0002】
本発明に係る垂直磁気記録媒体は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に好適に用いられる。
【0003】
背景技術
現行のハードディスク装置(HDD)等の磁気記録装置に搭載されている磁気記録媒体では、磁気記録層の面内方向に磁化を反転させてデータを記録する長手記録方式が使われている。この方式では単位面積当たりの記録密度を増やすため、主に磁化反転方向の長さの小型化、いわゆる線記録密度を向上させることが可能な媒体の開発が進められてきた。
【0004】
従来より、長手記録方式(longitudinal recording)の媒体(以後、面内媒体と略称する)において線記録密度を上げるには、磁化反転長の短縮化が有効であることが知られている。これに対応するために、媒体側には、強磁性体層の保磁力の増大とともに、強磁性体層の残留磁束密度と厚さを小さくすることが求められる。
【0005】
しかしながら、線記録密度を向上させるため強磁性体層を薄くすると、強磁性体層を構成する結晶粒が小型化し、その体積Vが小さくなる傾向にある。そして、磁性結晶粒のもつ異方性定数Kuとその体積Vの積であるKu・Vがある程度以下に小さくなると、熱の影響で磁性粒の磁化方向が不安定になるという熱磁気緩和現象の発生、いわゆる熱擾乱の問題が懸念されている。
【0006】
この現象は結晶粒の体積Vが小さくなるほど顕在化してくるので、記録磁化の安定性を保つためKuの大きな磁性材料の開発が期待されている。これに応えるべく、本発明者は、所定の比率からなるCoCrGe系の強磁性金属材料が大きなKuを実現できることを特願平11−135038号公報に開示した。また本発明者は、結晶粒の粒径分散を低減することにより熱擾乱を抑制できることを見出し、その具体的な方策としてWあるいはWCrからなるシード層を備えた媒体が有望であることを特願平11−150424号公報で明らかにした。
【0007】
これに対して、媒体面内と垂直をなす方向に磁化を反転させてデータを記録する垂直記録方式(perpendicular recording)の媒体(以後、垂直媒体と略称する)は、面内媒体のような磁化の突き合わせがないので、記録層をなす強磁性体層の厚さを低減する必要はないという利点がある。つまり、強磁性体層の結晶粒を小さくしても適当な厚さを維持することにより、厚さ方向で結晶粒の体積Vをかせぐことができるので、磁性粒の磁化方向は熱的な安定性を保ちやすい。このことから、垂直記録方式は長手記録方式で懸念される熱擾乱の問題を回避できる技術として注目されている。
【0008】
具体的な垂直媒体としては、基体上に記録層としてCoCr合金(Cr=10〜18%)膜を設けたものが広く知られている[S.Iwasaki and K.Ouchi:IEEE Trans.Magn.MAG−14(1978)849;文献1]。スパッタ成膜法で基体上に作製したCoCr膜からなる記録層は、hcp結晶からなる柱状の微粒子が膜面に垂直方向に成長したもので、その平均粒径は100nm以下であり、hcp結晶のc軸は膜成長の方向にほぼ一致することが報告されている。
【0009】
また基体と記録層との間に、さらに面内方向に磁化しやすいFeNi合金等の軟磁性膜を設けた2層膜媒体も提案されている[S.Iwasaki,Y.Nakanura and K.Ouchi:IEEE Trans.Magn.MAG−15(1979)1456;文献2]。記録時及び再生時における磁束の流れを有限要素法で解析した結果、軟磁性膜と記録層からなる2層膜媒体は、記録層のみからなる単層膜媒体に比べて、より大きな保磁力の記録層に書き込むことができ、再生電圧の増加も図れること、及びこの軟磁性膜の存在は、磁気ヘッドの主磁極から発生する磁束が主磁極先端の空間内で高密度に収束されるため、主磁極付近の磁界の増加をもたらすことが記載されている[岩崎俊一,田辺信二:電子通信学会論文誌,J66−C(1983)740;文献3]。
【0010】
つまり、上述した垂直媒体は、面内媒体と比較し反磁界による磁化減磁の影響が小さいため、記録層の膜厚を厚く設定できることから、熱擾乱に強い高記録密度化に好適な媒体として有望視されている。
【0011】
ところが、垂直媒体では、作製法によっては媒体の記録層となる柱状組織の初期成長部に「初期層」と呼ばれる構造の乱れた組織が形成されることが問題となっている[田中勉,大内一弘,岩崎俊一:H本応用磁気学会誌,Vol.10,No.2(1986)65;文献4]。また、この初期層を計算機シミュレーションで解析し、再生波形を実測したものと比較検討した報告もある[中村慶久,田河育也,岩崎俊一:日本応用磁気学会誌,Vol.11,No.2(1987)119;文献5]。これら2つの報告には、初期層は膜面の面内方向に磁化容易、すなわちc軸が2次元ランダムに配向しており、その上に成長した柱状組織ではc軸が膜面の垂直方向に配向するとして解析する手法が紹介されている。
【0012】
しかしながら、上述した文献1〜5の垂直媒体に関する報告は、記録層全体の巨視的な磁気特性変化を議論している場合が多く、柱状組織の有する真性的な結晶磁気異方性やそれに等価な異方性磁界を、初期層の影響を排除して、定量評価したものではなかった。
【0013】
従って、同一品質の垂直媒体を安定して大量に製造するためには、作製した媒体内に存在する初期層を正確に把握し、定量的にかつ簡便に評価できる方法、及びそのような評価方法を適用可能な媒体の開発が期待されていた。
【0014】
本発明は、媒体の記録層をなす強磁性体層に占める微結晶組織部の厚さや、その上に形成された柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainを管理することができ、所望の設計条件に沿って安定して作製可能な垂直磁気記録媒体の製膜制御方法を提供することを第一の目的とする。
【0015】
また本発明は、媒体の記録層をなす強磁性体層に占める微結晶組織部の厚さやその厚さ方向の分布などが定量的に把握できるとともに、その上に形成された柱状組織部の磁性結晶粒が所望の結晶磁気異方性定数Kugrainを備えているかについても同時に調べることが可能な、垂直磁気記録媒体の製膜制御方法を提供することを第二の目的とする。
【0016】
発明の開示
本発明に係る垂直磁気記録媒体は、微結晶組織部の上に柱状組織部が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体であり、前記微結晶組織部は3次元ランダムにc軸が配向した微結晶であるものを対象としている。
【0017】
本発明は、3次元ランダムにc軸が配向した微結晶からなる微結晶組織部の上に柱状組織部が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体の製膜制御方法であって、前記微結晶組織部の厚さをdini、前記強磁性体層の厚さをdMag、前記強磁性体層の垂直磁気異方性定数をKu⊥、前記柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数をKu grainと定義したとき、前記Ku⊥と前記dMagから、前記Ku grain及び/又は前記diniを求め、これらを製膜条件の指標とすることを特徴としている。
【0018】
発明を実施するための最良の形態
以下では、本発明に係る媒体の一例を示す模式的な断面図(図1)と、本発明に係る媒体の断面方向の微細組織を透過電子顕微鏡(Transmission
Electron Microscope,TEM)で調べた結果(図2)と、本発明に係る媒体の配向面および配向面法線の分散角をX線回折計(X−ray diffractometer,XRD)で調べた結果(図3)とを参照して、本発明に係る垂直磁気記録媒体について説明する。
【0019】
(垂直磁気記録媒体)
図1に示すように、本発明に係る垂直磁気記録媒体10は、基体11上にCoとCrを主成分とする強磁性体層12を設けたものであり、記録層として機能する強磁性体層12が微結晶組織部13とその上に位置する柱状組織部14とから構成されている。
【0020】
図2の写真は、図1の構成を備えた媒体の断面をTEMで調べた結果である。詳細には、(a)はガラス基板からなる基体11上に強磁性体層12として厚さ50nmのCoNiCrTa膜を直接成膜した試料の断面TEM像、(b)と(c)はマイクロディフラクト法による電子線回折図形である。写真(a)からは、強磁性体層12の基体11近傍側には灰色のコントラストを有する組織が層状に存在し、その組織の上方には柱状の組織が存在することが分かる。灰色の層状組織[領域α]からはリング状(b)、柱状組織[領域β]からはスポット状(c)の回折図形が得られた。以後、前者を微結晶組織部13、後者を柱状組織部14と呼ぶ。
【0021】
図3は、図2に示す媒体のXRDプロファイルであり、強磁性体層12の厚さを変えて作製した媒体の結果を示す。厚さが10nmの試料では回折線が観測されない。これに対して、厚さが17nm以上の試料では膜厚の増加に伴いc面からの回折線強度が増大し、何れの媒体でもhcp構造c面以外からの回折線は観測されなかった。
【0022】
以上の結果より、図2の回折は、hcp−CoNiCrTa相のc面からの回折に起因すると判断される。このことは、灰色の層状組織すなわち微結晶組織部13は3次元ランダムにc軸が配向した微結晶から構成されており、柱状組織すなわち柱状組織部14はc面配向した結晶粒から構成されていることを示唆している。
【0023】
つまり、上記構成からなる垂直磁気記録媒体では、強磁性体層12の微結晶組織部13はc軸が3次元ランダムに配向した微結晶なので、微結晶組織部13の垂直磁気異方性定数Ku⊥iniを零として取り扱うことができる。
【0024】
従って、本発明に係る垂直磁気記録媒体は、後述する評価方法を適用することができる。このことは、本発明に係る媒体は、その製造工程において、作製した媒体が所望の磁気特性を備えているか否かの判断を明確に下すことができる媒体であることを意味する。具体的には、作製した媒体が媒体設計に沿った微結晶組織部13の膜厚diniを備えているかを的確に判断し、その特性の管理が可能となる。
【0025】
予め、所望の媒体設計に沿った媒体において、強磁性体層の厚さdMagを横軸、強磁性体層の垂直磁気異方性定数Ku⊥とdMagの積(Ku⊥×dMag)を縦軸、としてプロットしたグラフを作成しておくことにより、直線近似部からなる検量線が得られる。具体的には、この直線近似部の傾きからは柱状組織部14の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数をKugrainが、直線近似部を延伸させ、横軸との交点からは微結晶組織部13の膜厚diniが、それぞれ求まる。
【0026】
従って、本発明に係る垂直磁気記録媒体、すなわち、c軸が3次元ランダムに配向した微結晶からなる強磁性体層12を記録層とする媒体であるならば、上記検量線の情報に基づき、媒体設計に沿ったKugrainを作製中の媒体がもつことができるように、強磁性体層の成膜条件、例えば膜中の組成比率や、作製温度、プロセスガス圧などを的確に調整できる媒体製造ラインの構築をもたらす。
【0027】
(強磁性体層)
なお、以上の媒体に係る説明は、強磁性体層12としてCoNiCrTa膜を用いた場合を例にとって行ったが、本発明に係る媒体の強磁性体層12はCoとCrを主たる成分とし、磁化容易軸が膜面に略垂直方向に配向した六方最密構造(hexagonal closest packed structure,hcp)を有する磁性膜であれば、その構成元素として他の元素を含んでも構わない。具体的な強磁性体層12を構成する材料としては、CoCr(Cr<25[at%])、CoNiCr、CoCrTa、CoCrPt、CoCrPtTa等の合金が挙げられる。また、強磁性体層12をなす結晶粒の粒径制御や粒間の偏析制御、柱状組織部14の結晶磁気異方性定数Kugrainの制御、あるいは強磁性体層12の耐食性制御等を目的として、上記合金をなす元素以外に、Fe、Mo、V、Si、B、Ir、W、Hf、Nb、Ruあるいは希土類元素等から選択される元素を、上記合金に適宜含ませてなる材料で、強磁性体層12を構成してもよい。
【0028】
(金属下地層)
以上の説明は、強磁性体層12の下部をなす微結晶組織部13が基体11上に接して設けてなる構成の媒体について行ったが、微結晶組織部13が1又は2以上の金属下地層15を介して基体11上に設けてなる媒体でも、c軸が3次元ランダムに配向した微結晶からなる微結晶組織部13を備えてさえいれば、後述する本発明に係る評価方法は有効である。
【0029】
金属下地層15としては、その上に形成される強磁性体層12がc面配向し得る材料であれば、如何なる材料であっても構わない。好適な材料としては、Ti、W、Taなど単元素からなる材料や、これらに添加元素としてCrなどを加えた材料、CoCr(Cr≧25[at%])などの非磁性材料、FeNi、CoZrNb、NiNbFe、FeAlSi、NiCuMoFeなどの軟磁性材料、あるいはこれら軟磁性材料の下に設けるSmCoなどの硬磁性材料が挙げられる。
【0030】
また、強磁性体層12の下に位置する金属下地層15は単層として設ける以外に、例えばFeNi/Ti/FeNi、CoZrNb/SmCoのように複数の層を重ねて設けても構わない。
【0031】
(基体)
本発明に係る基体11としては、例えば、アルミニウム、チタン及びその合金、シリコン、ガラス、カーボン、セラミック、プラスチック、樹脂及びその複合体からなる非磁性の基板11a、及びそれらの表面に異種材質からなる非磁性の被覆膜11bをスパッタ法、蒸着法、めっき法等により表面コーティング処理を行ったものが挙げられる。
【0032】
この基体11の表面に設けた非磁性の被覆膜11bは、高温で磁化せず、導電性を有し、機械加工などがしやすい反面、適度な表面硬度をもっていることが好ましい。このような条件を満たす非磁性の被覆膜11b膜としては、特にスパッタ法やめっき法により作製されたNiP膜、NiTa膜、NiAl膜あるいはNiTi膜が好ましい。
【0033】
特に、垂直磁気記録媒体の場合、磁気ヘッドが媒体に書き込まれた信号を良好に読み取るためには、磁気ヘッドと媒体の空隙を小さくすることが望ましい。つまり、磁気ヘッドが媒体上空を浮上しながら記録再生する場合はその浮上量を小さくする必要がある。あるいは磁気ヘッドを浮上させずに媒体表面に接触させて記録再生できればより好ましい。従って、垂直磁気記録媒体用の基体11としては、優れた表面平坦性を提供できる材料が好適である。更には、表裏両面の平行性、基体円周方向のうねり、および表面の粗さが適切に制御されたものが望ましい。このような観点より、好ましい基体11としては、例えばガラス基板、シリコン基板、アルミニウム基板、又はこれらの基板上にNiP膜、NiTa膜、NiAl膜あるいはNiTi膜からなる被覆層を設けたものが挙げられる。中でも、ガラス基板は基体の薄型化に対応できる剛性も兼ね備えていることからより好ましい。
【0034】
また、基体11は、媒体10と磁気ヘッド(不図示)の表面同士が接触及び摺動する際の摩擦や摩耗を改善する目的から、その表層部に凹凸付与を目的としたバッファ層11cを備えても構わない。
【0035】
更には、基体11は、その上に堆積される強磁性体層12等をなす結晶粒子の初期成長段階において、結晶成長を促す核として機能する層として、二次元的な平坦膜ではなく、局所的に点在した形状からなる島状膜という形態のシード層11dを表層部に備えてもよい。このようなシード層は、その上に形成される堆積膜をなす結晶の小型化や小径化、粒径分散の減少などを促すことが期待される。
【0036】
また更には、基体11が回転/停止する際に、媒体10と磁気ヘッド(不図示)の表面同士が接触及び摺動する(Contact Start Stop,CSS)ことへの対策として、従来の面内磁気記録媒体用の基体と同様に、基体の表面に、概ね同心円状の軽微なキズ(テクスチャー)を設けても構わない。
【0037】
(飽和磁化:Ms、垂直磁気異方性定数:Ku⊥、記録層の膜厚:dMag
本発明に係る「飽和磁化:Ms」とは、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer,VSM)を用いて測定した磁化曲線から求めた記録層全体の飽和磁化である。また本発明に係る「垂直磁気異方性定数:Ku⊥」とは、後述する高感度トルク磁力計を用いて測定した垂直トルク曲線のsin2θ成分の飽和値を反磁界補正して求めた薄膜垂直方向の一軸磁気異方性定数である。本発明に係る評価法で用いた「記録層の膜厚:dMag」とは、使用する成膜装置において、予め把握しておいた成膜速度と成膜時間との積により定義される記録層の設計膜厚である。なお本願明細書では、微結晶組織部13の上に柱状組織部14が位置してなる強磁性体層12が当該記録層に相当する。
【0038】
(垂直磁気記録媒体の評価方法)
以下では、本発明に係る垂直磁気記録媒体の評価方法について説明する。
【0039】
本評価法は、例えばトルク磁力計を用いて求めた、媒体を構成する強磁性体層の垂直磁気異方性定数Ku⊥を利用し、強磁性体層をなす微結晶組織部13と柱状組織部14の磁気的構造を分離して評価する方法である。
【0040】
ここでは、トルク磁力計を用いた場合について詳述するが、磁気カー効果を利用した磁化曲線測定装置(Kerr Loop Tracer,KLT)や上述したVSMで観測した垂直磁化膜の面内ループから垂直磁気異方性定数Ku⊥を解析する方法を用いても構わない。このような方法としては、例えば飽和磁場Msから求めた異方性磁界Hkより垂直磁気異方性定数Ku⊥を算出する方法[大内一弘:1984年東北大学博士学位論文;文献6、C.Byun,J.M.Sivertsen and J.H.Judy:J.Appl.Phys.,vol.57(1985)3997;文献7]やSucksmith−Thompson法[W.Sucksmith and J.E.Thompson:”The magnetic anisotropy of cobalt”,Proc.Roy.Sco.,vol.A225(1954)362:文献8]などが挙げられる。
【0041】
図4は、自作した高感度トルク磁力計(有効感度:3×103〜3[dyn/cm])を用い、図1に示す構成の媒体10において、強磁性体層12の厚さを変えて作製した媒体の垂直トルクを測定した結果と、それから垂直磁気異方性定数Ku⊥を決定した一例を示すグラフである。
【0042】
図4に示すとおり、トルク曲線のsin2θ成分の飽和値Lsat(2θ)は、L(2θ)を1/Hに対してプロットし、1/Hを零に直線外挿した結果から求めた(以後、外挿法と呼称する)。Ku⊥は、反磁界を考慮すると、
Ku⊥=Lsat(2θ)+2πMs2
と導出される。
【0043】
このKu⊥を求める作業を厚さの異なる強磁性体層12を備えた各媒体に対して行い、その結果を纏めたものが、図5の垂直磁気異方性定数Ku⊥と強磁性体層12の厚さdMa gとの関係を示すグラフである。
【0044】
図5より、垂直磁気異方性定数Ku⊥の値は強磁性体層12の膜厚dMagが増加するにつれて徐々に増え、膜厚dMagが35nm以上になると飽和傾向を示すことが分かる。しかしながら、図5のグラフからは、媒体を構成する微結晶組織部の厚さdiniや柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainを読みとることはできない。
【0045】
そこで、図2で明らかとなった微結晶組織部13の存在を勘案し、Ku⊥が強磁性体層12の膜厚に対して飽和傾向を示す現象について説明する。
【0046】
上記のとおり、本発明に係る媒体は、微結晶組織部13の上に柱状組織部14が位置してなる強磁性体層12が記録層をなしているので、微結晶組織部13が媒体の磁気特性に及ぼす影響を議論するためには、微結晶組織部13と柱状組織部14の磁気的構造を分離して評価する必要がある。
【0047】
また、TEMを用いた断面構造の観測より、微結晶組織部13は3次元ランダムにc軸が配向しているのに対して、柱状組織部14はc面配向していることが明らかとなっている。
【0048】
従って、トルク測定から得られた媒体の垂直磁気異方性定数Ku⊥は、柱状組織部14と微結晶組織部13からの寄与の総和として観測されるから、柱状組織部14の垂直磁気異方性定数Ku⊥columnと微結晶組織部13の垂直磁気異方性定数Ku⊥iniを用い、次式で表される。
【0049】
Ku⊥=Ku⊥column×(VMag−Vini)/VMag+Ku⊥ini×Vini/VMag (1)
ただし、VMagは強磁性体層12全体の体積、Viniは微結晶組織部13全体の体積である。膜面積をS、微結晶組織部13が平坦であると仮定した場合の微結晶組織部13の厚さをdiniとすると、
Mag=S×dMag
ini=S×dini
であるから、上記(1)式は次式で置き換えられる。
【0050】
Ku⊥=Ku⊥column×(dMag−dini)/dMag+Ku⊥ini×dini/dMag (2)
図2から明らかなように、微結晶組織部13はc軸が空間内にランダム配向した微結晶により構成されているから、個々の微結晶による全体の垂直磁気異方性は互いに相殺し、
Ku⊥ini=0
と近似できる。一方、柱状組織部14の垂直磁気異方性は、個々の柱状組織を形成する単一結晶粒の結晶磁気異方性に等しいから、
Ku⊥column=Kugrain
である。したがって、上記(2)式はdiniが零でない場合、
Ku⊥×dMag=0 (3)
Ku⊥×dMag=Kugrain×(dMag−dini) (4)
と表される。
【0051】
上記(3)式は、強磁性体層12が柱状組織部14を持たずに全て微結晶組織部13からなる場合であり、dMag=diniの関係を代入することにより求まる。一方、強磁性体層12が微結晶組織部13と柱状組織部14からなる場合、すなわち微結晶組織部13の厚さdiniが0<dini<dMagの関係にあるときは、上記(4)式が成立する。
【0052】
上記(4)式は、Ku⊥×dMagを縦軸、dMagを横軸としてプロットすると直線近似することができ、直線近似部の傾きからは柱状組織部14の磁性結晶粒の結晶磁気異方性Kugrainが、直線近似部を延伸させ、横軸との交点からは微結晶組織部13の膜厚diniが、それぞれ求まることを意味する。
【0053】
図6は、図5の結果に基づき作成した、(Ku⊥×dMag)を縦軸、強磁性体層の厚さdMagを横軸としたグラフである。図6の結果は上記(4)式に相当する例であり、直線近似部の傾きからはKugrain=1.3[×106 erg/cm3]を、横軸との切片からはdini=14[nm]を、それぞれ読み取ることができる。
【0054】
なお、上記(4)式から明らかなように、微結晶組織部13の厚さが限りなく零に近い場合は、dini=0として次式に従い解析できることは言うまでもない。
【0055】
Ku⊥×dMag=Kugrain×dMag (5)
上記(5)式は、微結晶組織部13の厚さが零近似できる条件下でも直線近似部の傾きから柱状組織部14の磁性結晶粒の結晶磁気異方性Kugrainが求まることを示唆している。
【0056】
ところで、ここでは膜厚dMagやdiniに注目した式展開に基づき詳述したが、膜厚の代わりに面積や体積をとって式展開し、これによってグラフを作成し、同様にKugrainやdiniを求めることができることは言うまでもない。しかしながら、このようなグラフからはdiniを直読することはできず、読み取った数値を計算し直す煩わしさが生じる。これに対して、本発明に係る方法は膜厚dMagやdiniに注目した式展開を採用し、グラフ化したことによって、直線近似部の傾きと横軸切片から、Kugrainやdiniを直読できるという利点を備えている。
【0057】
つまり、上述した本発明に係る媒体の評価方法は、次のように換言できる。
【0058】
(1)微結晶組織部の上に柱状組織部が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体は、微結晶組織部が3次元ランダムにc軸が配向した微結晶であるとして、強磁性体層の垂直磁気異方性定数Ku⊥と強磁性体層の厚さdMagから、柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrain及び/又は微結晶組織部の厚さdiniを求めることにより、本発明に係る媒体の評価方法は、従来の評価方法では分離して解析できなかった微結晶組織部と柱状組織部の厚さや磁気特性を、区分して解析できる。
【0059】
(2)微結晶組織部の厚さdiniが零より大きい場合は、式Ku⊥×dMag=Kugrain×(dMag−dini)を用いることによって、記録層の垂直磁気異方性定数Ku⊥と強磁性体層の厚さdMagから、記録層の結晶磁気異方性定数Kugrain及び/又は微結晶組織部の厚さdiniが求まる。すなわち、微結晶組織部が存在する場合は、その厚さdiniとともに記録層の結晶磁気異方性定数Kugrainも定量的に把握できる。
【0060】
(3)上記(2)は、前記dMagを横軸、前記Ku⊥と前記dMagの積を縦軸としてプロットしたグラフの直線近似部を利用することで、Kugrain及び/又はdiniを視覚的に捉えることができる。また、標準試料において直線近似部の基準線が予め求まっていれば、作製した所定膜厚の試料がこの基準線から上下いすれかの方向にどの程度外れたかによって、その外れた原因を推定することが可能となる。このことは、媒体の成膜条件を的確に制御し、所望の磁気特性を備えた媒体を量産する際に有効な手段となる。
【0061】
(4)上記(3)のグラフにおける直線近似部の傾きからは、柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainが求まる。
【0062】
(5)上記(3)のグラフにおける直線近似部を延伸させ、前記横軸との交点からは、微結晶組織部の厚さdiniが求まる。
【0063】
すなわち、上記傾きや交点を正確に求めることによって、製造した媒体の磁気特性の厳密な数値管理が可能となる。
【0064】
(6)更には、上記(3)のグラフにおける直線近似部のdMagが小さい側にテイル部が存在する場合、前記テイル部から前記微結晶組織部の厚さ方向の分布が求まる。この分布を捉えることによって、微結晶組織部と柱状組織部との界面状態を把握できる。従って、この界面状態の情報に基づき、媒体の成膜条件を的確に制御し、所望の磁気特性を備えた媒体を量産する際に有効な手段となる。
【0065】
(7)微結晶組織部の厚さdiniが零の場合は、式Ku⊥×dMag=Kugrain×dMagを用いることによって、強磁性体層の垂直磁気異方性定数Ku⊥と強磁性体層の厚さdMagから、柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainが求まる。すなわち、微結晶組織部が存在しない場合でも、柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainは定量的に把握できる。
【0066】
なお、上記説明では、図1に示した媒体、すなわち微結晶組織部13が基体11上に接して設けてなる構成の媒体を例にとって詳述したが、同様の作用・効果は、他の構成としても得られる。例えば、図9に示す微結晶組織部13が金属下地層15を介して基体11上に設けてなる媒体が挙げられる。
【0067】
実施例
以下に実施例をあげて本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されることはない。
【0068】
(実施例1)
本例では、図1に示すような基板上に強磁性体層としてCoNiCrTa膜を直接設けた構成の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法に、本発明に係る評価方法を適用した場合について述べる。
【0069】
上記媒体の強磁性体層は、現行量産機で使われている10-7[Torr]台という背圧条件を備えたスパッタリング成膜装置を用いて作製した。その際、基体温度は放射加熱ヒータを用い250[℃]とし、Arガスをプロセスガスとして用いガス圧2〜4[mTorr]とした。成膜時間を変えることにより、強磁性体層の厚さが10〜50[nm]の範囲で異なる媒体を作製した。基体としてはディスク状ガラス基板を用い、強磁性体層形成用のターゲットとしてはCo−13at%Ni−16at%Cr−4at%Taの合金ターゲット(純度:3N)を用いた。
【0070】
作製したディスク状媒体は、超音波加工機(超音波工業社製M100)で直径8mmの円形試料に整形した。
【0071】
基体上に作製した薄膜の配向面および配向面法線の分散角は、X線回折法(XRD:理学電機社製RAD−B)により解析した。薄膜の断面方向の微細組織に関しては、透過電子顕微鏡(TEM:日本電子社製JEM−2000EX、JEM−2000FX)による明視野像および電子線回折像を用いて解析した。
【0072】
試料の飽和磁化は、振動試料型磁力計(VSM:理研電子社製BHV−35)を用い測定した。
【0073】
また垂直磁気トルクは、自作の高感度トルク磁力計を用い、上述した外挿法で測定した。その際、有効感度は3×103〜3[dyn/cm]、印加磁界は15[kOe]、磁界回転速度は2度/秒とした。
【0074】
図2は、本発明に係る媒体の断面方向の微細組織を透過電子顕微鏡(TEM)で調べた結果を示す写真であり、(a)はガラス基板からなる基体11上に強磁性体層12として厚さ50nmのCoNiCrTa膜を直接成膜した試料断面の明視野像、(b)と(c)はマイクロディフラクト法による電子線回折図形である。(b)は写真(a)における灰色の層状組織[領域α]を、(c)は写真(a)における柱状組織[領域β]をそれぞれ調べた結果である。
【0075】
図2(a)から、強磁性体層12の基体11近傍側には灰色のコントラストを有する組織が層状に存在し、その組織の上方には柱状の組織が存在することが分かる。以後、前者を微結晶組織部13と、後者を柱状組織部14と呼ぶ。
【0076】
微結晶組織部13からはリング状(b)、柱状組織部14からはスポット状の回折図形が得られた。これらの回折はhcp構造のc面であるhcp(002)からの回折に起因すると判断される。従って、上記回折図形は、微結晶組織部13が3次元ランダムにc軸が配向した微結晶から構成されており、その上に位置する柱状組織部14がc面配向した単一の結晶粒から構成されていることを示唆している。
【0077】
図3は、図2に示す媒体のXRDプロファイルであり、強磁性体層12の厚さを変えて作製した媒体の結果を示す。厚さが10nmの試料では回折線が観測されなかった。これに対して、厚さが17nm以上の試料では膜厚の増加に伴いc面からの回折線強度が増大し、何れの媒体でもhcp構造c面以外からの回折線は観測されなかった。ロッキングカーブの測定より、c面配向結晶粒の分散角は8.0度以下であった。
【0078】
つまり、上記構成からなる垂直磁気記録媒体では、強磁性体層12の微結晶組織部13はc軸が3次元ランダムに配向した微結晶なので、微結晶組織部13の垂直磁気異方性定数Ku⊥iniを零として取り扱うことができることが明らかとなった。
【0079】
従って、発明の実施形態で説明したように、微結晶組織部13の上に柱状組織部14が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体は、微結晶組織部の厚さをdini、強磁性体層の厚さをdMag、強磁性体層の垂直磁気異方性定数をKu⊥、柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数をKugrainと定義したとき、前記微結晶組織部は3次元ランダムにc軸が配向した微結晶であることから、Ku⊥ini=0とおくことよって、Ku⊥とdMagから、Kugrain及び/又はdiniを求めることが可能となる。これは、関係式Ku⊥×dMag=Kugrain×(dMag−dini)が成り立つことによる。
【0080】
図5は、本例で作製した媒体の垂直磁気異方性定数Ku⊥と強磁性体層の厚さdMagの関係を示すグラフである。図5から、垂直磁気異方性定数Ku⊥の値は強磁性体層の膜厚dMagが増加するにつれて徐々に増え、膜厚dMagが35nm以上になると飽和傾向を示すことが分かった。
【0081】
図6は、図5の結果に基づき作成した、(Ku⊥×dMag)を縦軸、強磁性体層の厚さdMagを横軸としたグラフである。図6に示すグラフの直線近似部を利用して、Kugrain及び/又はdiniを求めることができる。すなわち、上記の関係式Ku⊥×dMag=Kugrain×(dMag−dini)が成り立つので、直線近似部の傾きからはKugrainが、直線近似部を延伸させ、前記横軸との交点からはdiniが求まる。図6より、Kugrain=1.3[×106 erg/cm3]、dini=14.0[nm]、と読み取ることができる。
【0082】
また、本例で作製した媒体は、図7に示すように直線近似部のdMagが小さい側にテイル部(斜線で示した領域)が認められる。このことは、図8の模式的な断面図に示すように、微結晶組織部13の柱状組織部14側の界面が凹凸形状をなし、膜厚方向において凹部16と凸部17の高さの差がかなり存在することを示唆している。従って、このテイル部を定量的に評価することにより、微結晶組織部13の厚さ方向の分布を求めることが可能となる。なお、図8における矢印はc軸方向を表す。
【0083】
(実施例2)
本例では、図9に示すように、基体11と強磁性体層12との間に金属下地層15を設けた構成の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法に、本発明に係る評価方法を適用した場合について述べる。その際、成膜時間を変えることにより、強磁性体層12の厚さdMagが10〜50[nm]の範囲で異なる媒体を作製した。但し、金属下地層15としてはTi膜を用い、その厚さは7.5[nm]に固定した。
【0084】
すなわち、本例に係る媒体は、強磁性体層12の下部に位置する微結晶組織部13が金属下地層15を介して基体11上に設けてなる構成である。
【0085】
他の点は、実施例1と同様とした。
【0086】
実施例1と同様に、作製した媒体の断面方向の微細組織を透過電子顕微鏡(TEM)で調べた結果、形成された強磁性体層12は微結晶組織部13とその上に位置する柱状組織部14とから構成されていることが分かった。
【0087】
そこで、実施例1と同様に高感度トルク磁力計を用い、作製した媒体の垂直磁気異方性定数Ku⊥を求めた。
【0088】
図10は、本例で作製した媒体の、(Ku⊥×dMag)を縦軸、強磁性体層の厚さdMagを横軸としたグラフである。図10において、●印が金属下地層を備えた本例で作製した媒体の結果であり、○印は比較のために記載した金属下地層を持たない実施例1の媒体の結果である。
【0089】
図10より、金属下地層15を備えた構成の媒体でも、各プロットは直線近似できることが確認された。そして、実施例1と同様に、この直線近似部を利用することにより、金属下地層を備えた本例で作製した媒体(●印)は、Kugrain=1.8[×106 erg/cm3]、dini=7.4[nm]、と定量的に把握することができた。一方、金属下地層を持たない実施例1の媒体(○印)は、Kugrain=1.3[×106 erg/cm3]、dini=14.0[nm]であることから、金属下地層を導入することにより、微結晶組織部13が薄く、柱状組織部の磁性結晶粒の垂直磁気異方性定数Ku⊥の大きな媒体が作製できることが確認された。
【0090】
また、本例で作製した金属下地層15を備えた構成の媒体では、直線近似部のdMagが小さい側にテイル部が殆ど認められなかった。これより、金属下地層15の導入は、その上に形成される微結晶組織部13の柱状組織部14側の界面を平坦化をするのに有効な手段であることが確認できた。
【0091】
(実施例3)
本例では、実施例1において強磁性体層12をなす磁性材料CoNiCrTaに代えて、CoCr、CoNiCr、CoCrTa、CoCrPtを用いて作製した図1に示す層構成の媒体の製膜制御方法に、本発明に係る評価方法を適用した場合について述べる。その際、成膜時間を変えることにより、強磁性体層12の厚さdMagが10〜50[nm]の範囲で異なる媒体を作製した。
【0092】
すなわち、本例に係る媒体は全て、強磁性体層12の下部に位置する微結晶組織部13が基体11上に直接設けてなる構成である。
【0093】
他の点は実施例1と同様とした。
【0094】
作製した各媒体の垂直磁気異方性定数Ku⊥は、実施例1と同様に高感度トルク磁力計を用い求めた。
【0095】
図11は、本例で作製した各媒体の、(Ku⊥×dMag)を縦軸、強磁性体層の厚さdMagを横軸としたグラフである。図11より、CoCr、CoNiCr、CoCrTa又はCoCrPtのいずれの磁性材料からなる強磁性体層12を備えた媒体でも、各プロットは直線近似できることが確認された。
【0096】
そして、実施例1と同様に、この直線近似部を利用することにより、表1に示すように、各媒体における柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainと微結晶組織部の厚さdiniが、図11の傾きと横軸切片からそれぞれ読み取ることができた。
【0097】
【表1】
Figure 0003647031
【0098】
従って、本発明に係る評価方法は、微結晶組織部の上に柱状組織部が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体において、微結晶組織部が3次元ランダムにc軸が配向した微結晶からなる場合は、強磁性体層を構成する磁性材料に依存することなく、柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainと微結晶組織部の厚さdiniを定量的に把握できることが明らかとなった。
【0099】
産業上の利用の可能性
以上説明したように、本発明に係る垂直磁気記録媒体の製膜制御方法においては、c軸が3次元ランダムに配向した微結晶からなる微結晶組織部13と、その上に位置する柱状組織部14とで構成される強磁性体層が記録層をなしているので、微結晶組織部13の垂直磁気異方性定数Ku⊥iniを零として取り扱う、本発明に係る評価方法を適用することができる。このことは、媒体の製造工程において、作製した媒体が所望の磁気特性を備えているか否かを明確に判断することができる媒体の提供を可能とする。
【0100】
また、予め所望の媒体設計に沿って作製した媒体において、強磁性体層の厚さdMag横軸、強磁性体層の垂直磁気異方性定数Ku⊥とdMagの積(Ku⊥×dMag)を縦軸、としてプロットしたグラフを作製しておくことにより、直線近似部からなる検量線が得られる。従って、本発明に係る媒体は、この検量線の情報に基づき、媒体設計に沿ったKugrainを製造中の媒体がもつことができるように、強磁性体層の成膜条件、例えば膜中の組成比率や、作製温度、プロセスガス圧、基体に印加する電気的なバイアスなどの的確な制御が可能となる製造ラインの構築をもたらす。
【0101】
本発明によれば3次元ランダムにc軸が配向した微結晶からなる微結晶組織部の上に柱状組織部が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体の製膜制御方法であって、前記微結晶組織部の厚さをd ini 、前記強磁性体層の厚さをd Mag 、前記強磁性体層の垂直磁気異方性定数をK u ⊥、前記柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数をK u grain と定義したとき、前記K u ⊥と前記d Mag から、前記K u grain 及び/又は前記d ini を求め、これらを製膜条件の指標とすることにより、従来の製膜制御方法では分離して解析できなかった微結晶組織部と柱状組織部の厚さや磁気特性を、区分して解析できる。柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数Kugrainや微結晶組織部の厚さdiniを正確に把握することによって、製造した媒体の磁気特性の厳密な数値管理が可能となるので、磁気特性の揃った高品質の媒体を大量生産することに本発明の製膜制御方法は寄与できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る垂直磁気記録媒体の一例を示す模式的な断面図である。
図2は、本発明に係る媒体の断面方向の微細組織を透過電子顕微鏡(TEM)で調べた結果を示す写真であり、(a)は試料の断面TEM像、(b)は微結晶組織部の回折図形、(c)は柱状組織部の回折図形である。
図3は、図2に示す媒体のXRDプロファイルを示すグラフである。
図4は、図2に示す媒体において、強磁性体層の厚さを変えて作製した各種媒体の垂直トルク測定結果と、それらから垂直磁気異方性定数Ku⊥を決定した例を示すグラフである。
図5は、実施例1に係る媒体のKu⊥とdMagとの関係を示すグラフである。
図6は、実施例1に係る媒体の(Ku⊥×dMag)とdMagとの関係を示すグラフである。
図7は、図6のグラフにおいて、直線近似部のdMagが小さい側に認められるテイル部(斜線を付した領域)を明示したものである。
図8は、図1の構成からなる媒体において、微結晶組織部の柱状組織部側の界面が凹凸をもっている様子を拡大して示す模式的な断面図である。
図9は、本発明に係る垂直磁気記録媒体の他の一例を示す模式的な断面図である。
図10は、実施例2に係る媒体の(Ku⊥×dMag)とdMagとの関係を示すグラフである。
図11は、実施例3に係る媒体の(Ku⊥×dMag)とdMagとの関係を示すグラフである。
(符号の説明)
10 垂直磁気記録媒体、
11 基体、
11a 基板、
11b 被覆膜、
11c バッファ層、
11d シード層、
12 強磁性体層、
13 微結晶組織部、
14 柱状組織部、
15 金属下地層、
16 凹部、
17 凸部。

Claims (6)

  1. 3次元ランダムにc軸が配向した微結晶からなる微結晶組織部の上に柱状組織部が位置してなる強磁性体層が記録層をなす垂直磁気記録媒体の製膜制御方法であって、
    前記微結晶組織部の厚さをdini、前記強磁性体層の厚さをdMag、前記強磁性体層の垂直磁気異方性定数をKu⊥、前記柱状組織部の磁性結晶粒の結晶磁気異方性定数をKu grainと定義したとき、前記Ku⊥と前記dMagから、前記Ku grain及び/又は前記diniを求め、これらを製膜条件の指標とすることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製膜制御方法
  2. 前記Ku⊥と前記dMagから前記Ku grain及び/又は前記diniを求めるとき、関係式Ku⊥×dMag=Ku grain×(dMag−dini)を用いることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法
  3. 前記dMagを横軸、前記Ku⊥と前記dMagの積を縦軸としてプロットしたグラフの直線近似部を利用して、Ku grain及び/又はdiniを求めることを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法
  4. 前記直線近似部の傾きからKu grainを求めることを特徴とする請求項3に記載の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法
  5. 前記直線近似部を延伸させ、前記横軸との交点からdiniを求めることを特徴とする請求項3に記載の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法。
  6. 前記直線近似部のdMagが小さい側にテイル部が存在する場合、前記テイル部から前記微結晶組織部の厚さ方向の分布を求めることを特徴とする請求項3に記載の垂直磁気記録媒体の製膜制御方法
JP2001567587A 2000-03-17 2001-03-16 垂直磁気記録媒体の製膜制御方法 Expired - Fee Related JP3647031B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000076021 2000-03-17
JP2000076021 2000-03-17
PCT/JP2001/002100 WO2001069595A1 (fr) 2000-03-17 2001-03-16 Support d'enregistrement magnetique vertical et son procede d'evaluation

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2001069595A1 JPWO2001069595A1 (ja) 2004-01-08
JP3647031B2 true JP3647031B2 (ja) 2005-05-11

Family

ID=18593822

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001567587A Expired - Fee Related JP3647031B2 (ja) 2000-03-17 2001-03-16 垂直磁気記録媒体の製膜制御方法

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP1283518A4 (ja)
JP (1) JP3647031B2 (ja)
WO (1) WO2001069595A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8463611B2 (en) 2004-10-13 2013-06-11 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Method and system for improving the fidelity of a dialog system

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100418640B1 (ko) * 1993-07-21 2004-05-31 미가쿠 다카하시 자기기록매체및그의제조방법
US5846648A (en) * 1994-01-28 1998-12-08 Komag, Inc. Magnetic alloy having a structured nucleation layer and method for manufacturing same
US6042939A (en) * 1995-03-08 2000-03-28 Takahashi; Migaku Magnetic recording medium and method of manufacturing the same
JPH08273140A (ja) * 1995-03-27 1996-10-18 Victor Co Of Japan Ltd 垂直磁気記録媒体及びその製造方法
JP3529258B2 (ja) * 1998-01-09 2004-05-24 日本電気株式会社 垂直磁気記録媒体
JP2991689B2 (ja) * 1998-02-09 1999-12-20 株式会社日立製作所 垂直磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録再生装置

Also Published As

Publication number Publication date
WO2001069595A1 (fr) 2001-09-20
JPWO2001069595A1 (ja) 2004-01-08
EP1283518A1 (en) 2003-02-12
EP1283518A4 (en) 2004-12-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3143611B2 (ja) 磁気薄膜媒体用の超薄核形成層および該層の製造方法
TWI483246B (zh) 具有增強可寫性與熱安定性的磁性記錄媒體及其製造方法
KR101022603B1 (ko) 자기 기록 매체의 교환 커플링 조정
US20050214520A1 (en) Granular thin film, perpendicular magnetic recording medium employing granular thin film and magnetic recording apparatus
US20160118071A1 (en) Perpendicular magnetic recording medium and magnetic storage apparatus using the same
JP2007179598A (ja) 磁気記録媒体、その製造方法および、磁気記録再生装置
JP2010257566A (ja) 垂直磁気記録媒体
JP4083494B2 (ja) 磁気記録媒体、その製造方法、および磁気記録再生装置
JP4707265B2 (ja) 垂直磁気記録媒体
JP2006127588A (ja) 垂直磁気記録媒体
KR20040076819A (ko) 쓰기 지원층이 있는 자기 기록 매체
JP2005190552A (ja) 磁気記録媒体
JP4864391B2 (ja) 磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置
JP2003099912A (ja) 垂直磁気記録媒体、その製造方法及び製造装置、並びに磁気記録装置
US7060376B1 (en) Amorphous soft underlayers for perpendicular recording media
JP5019955B2 (ja) 磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置
JP3647031B2 (ja) 垂直磁気記録媒体の製膜制御方法
US8877360B2 (en) Magnetic recording medium with a plurality of pinning portions in the magnetic layer
US20060177701A1 (en) Magnetic recording medium, method of producing the same, and magnetic storage apparatus
JP4472655B2 (ja) 垂直磁気記録媒体および磁気記録再生装置
KR20050012227A (ko) 수직 자기 기록 매체와 그것을 갖춘 자기 기록 장치 및수직 자기 기록 매체의 제조방법 및 제조장치
JP4782047B2 (ja) 垂直磁気記録媒体および磁気記録再生装置
JP3544645B2 (ja) 磁気記録媒体及び磁気記憶装置
JP2002329305A (ja) 磁気記録媒体、その製造方法、および磁気記録再生装置
JP3567157B2 (ja) 磁気記録媒体、その製造方法及び磁気記憶装置

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20031225

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040218

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20040916

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041015

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041214

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20041217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050203

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050207

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090218

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100218

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100218

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110218

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120218

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130218

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees