JP3594225B2 - 広視野カメラ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、広い視野のレンズ、例えば魚眼レンズ等を装着したカメラ装置に係り、特に広視野レンズに基づく像の幾何学的歪みを補正して、通常のレンズを装着したのと同じ画面で、かつ、通常のレンズでは得られない超広角視野を備えた広視野カメラ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、監視カメラは、広角レンズを使用しても視野角は約90度前後が最高であり、それ以上の広角撮像は不可能であった。また、魚眼レンズを使用すれば、180度前後の視野角が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、魚眼レンズは、その光軸を中心として±90度、つまり前方180度の視野を円形の光学像に変換して、光軸を通らない直線は楕円状に丸く変形する歪みを伴うため、肉眼で直視した像とは別世界のものになっており、そのままでは見づらくて使用に耐えなかった。
【0004】
そこで、この発明は、上記した事情に鑑み、広視野レンズ、例えば魚眼レンズ等を装着したカメラで撮像した画像の歪みを補正して通常のレンズで撮像したものと同等画像のものを得るとともに、広角レンズでは得られなかった超広角監視カメラ等が実現でき、しかもその歪みの補正を実時間で、つまり例えば毎秒60枚のTV画像にあっては、毎秒60枚の速度で補正することができる広視野カメラ装置を低コストで提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、この請求項1に係る発明は、広視野レンズを備えたカメラ装置において、前記カメラ装置の光電変換された出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部の出力データを画像メモリに書き込むための書込アドレスの発生と書込制御を行う書込カウンタと、前記A/D変換部の出力を一時記憶する画像メモリと、魚眼レンズからなる光学系を有する広視野レンズが与える円画像の基準円の半径を変数とする座標変換式によって、前記画像メモリからの画像読出しの際のアドレスを決定して演算結果をテーブル部へ出力するマイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサで求めた基準円の中心座標及び半径に関するデータを入力して、前記座標変換式に基づく演算結果を座標変換データとして記憶し、前記記憶データの内容は出力信号のタイミングで読み出され、その整数部は画像メモリの読み取りアドレスとして、その小数点以下は内挿係数データとして内挿部へ出力するテーブル部と、前記画像メモリ上の読出し整数座標に対して、読出しアドレスの小数点以下の端数分に相当する内挿係数データに基づく内挿を行って、画面にギザギザの発生を抑制する内挿部と、前記内挿部から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換して、モニタへ出力するD/A変換部とを備えた広視野カメラ装置である。
【0006】
また、請求項1に記載の発明は、画像メモリの読出しアドレス(i,j)と表示アドレス(x,y)との関係が、
i=m・x・θ/tanθ ・・・(3)
j=m・y・θ/tanθ ・・・(4)
ここで、
θ= arctan [(R/R0 )・(π/2)]・・・(1)
R=[x2+y2]1/2 ・・・(5)
m:魚眼レンズの倍率
i:読出し位置の水平座標(魚眼画像中心を原点とする)
j:読出し位置の垂直座標(魚眼画像中心を原点とする)
x:表示位置の水平座標
y:表示位置の垂直座標
R0 :基準円の半径
R:表示位置と、魚眼画像中心間の距離
式(3),(4)の制約条件を満たすように座標を変換させ、出力映像に不自然なギザギザが発生するのを抑えつつ、歪みの少ない広視野観察画像を形成するように構成した広視野カメラ装置である。
【0007】
さらに、請求項2に記載の発明は、画像メモリによるメモリの読出は、予め演算により生成されてテーブル部8の内部に蓄えられたデータを読出アドレスとして用いる広視野カメラ装置である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、魚眼画像中心からの距離Rには、魚眼画像中心からの距離に従って修飾され、値を変更したものを代入する手段を備えた広視野カメラ装置である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明に係る魚眼レンズ(広視野レンズの一例として使用しているが、特にこの魚眼レンズに限定されない)と被写体像との関係を示す原理図であり、この図面に基づいて魚眼レンズでの画像と平面画像との関係を示す座標変換式(関数)を導出する。
【0010】
魚眼レンズは、平面の実被写体像を半球面上に投影するものであり、この魚眼レンズを装着した(撮像)カメラからの画像出力は平面上に円形状の画像(静止画像でも動画像でもかまわない。以下、円画像とよぶ)として出力される。このカメラで撮像した平面状の円画像は、図1の半球面に投影された像を、後述する図2の平面画像(後述する基準円C内の画像)に変換したものに相当する。
【0011】
従って、例えば光軸から無限大の距離にある被写体は半球面の180度の位置R0に結像するので、この位置R0を満たす半径の円を、以下では、カメラ出力の円画像の180度基準円Cとして使用する。
【0012】
平面上の実被写体像(先端点位置P)を魚眼レンズで屈折させて半球面S上に結像させると、図2に示す像(先端点位置がR(i,j)、以下観察像Rとよぶ)が得られる。また、この実被写体像Pと半球面Sの中心Oとを結ぶ線が光軸Lとなす角度をθ(rad)、半球面Sの1/4円周長WをR0とすると、半球面Sの半径(球面半径)rは、
となる。
【0013】
ここで、この3次元曲面である半球面Sを、図3に示すように、平面S´に広げてみると、半球面Sの半径rと平面S´上の観察像Rとの間には、正接(tan )関係があるから、
が成立する。
【0014】
また、図3において、平面S´上の観察像の先端点R(x,y)について、光軸Lからの距離D1と、半球面Sの先端点R(i,j)の円画像上での中心Oからの距離D2との割合(比)は、倍率を無視すれば、
D1=半球半径・ tanθ
また、弧度法でのラジアン(radian)の定義から、
D2=半球半径・ θ
であるから、
D1/D2= tanθ/ θ ・・・(2)
の関係が成立する。
【0015】
なお、魚眼レンズは、光軸を中心として同軸性を有するので、この(2)式は光軸を含む任意の切断面で成立している。これによって、円画像上の直交座標(i,j)に(2)式を乗ずれば、対応する(所望の歪み補正後の)平面画像上の直交座標値を求めることができる。
【0016】
逆に、平面画像の座標(x,y)を基準にして対応する円画像の座標(i,j)を求め、その座標(i,j)の画素を読み出して、デイスプレイへ出力する方が現実的で良い。従って、実際の画像処理に当たっては、平面画像の座標(x,y)を(2)式で割算して円画像での座標(i,j)を求める。具体的には、次の関係式(3)(4)(以下、これを座標変換式とよぶ)を用いればよい。
【0017】
即ち、円画像上の各座標(i,j)は、平面画像の座標(x,y)との間に以下の関数関係が成立する。
i=m・x・θ/tan θ ・・・(3)
j=m・y・θ/tan θ ・・・(4)
ここで、m=魚眼レンズの倍率である。なお、
θ=arctan[(R/R0 )・(π/2)] ・・・(1)
また、ピタゴラスの定理から、
R=[x2 +y2 ]1/2 ・・・(5)
【0018】
以上の5つの式により、実被写体をカメラで撮像させて得た円画像が、この画像を構成する各画素を座標(i, j)ごとに所定の関数関係で規定された座標変換させることにより、矩形若しくは方形の平面画像(以下、角画像とよぶ)(x,y)に座標変換される。つまり、このような座標変換を行うことにより、歪んだ魚眼画像を補正して、歪みのない画像が得られる。
なお、この実施例では、(等距離射影を行う)魚眼レンズについて説明してきたが、特にこれに限定されるものではなく、広視野の各種レンズに対して適用可能である。また、同様にして、縦倍率は一定で横倍率が異なる円筒形レンズ等へも適用可能である。
【0019】
従って、この実施例によれば、例えば座標変換式(3),(4)において、この式に含まれる倍率mについては、自由に数値を変更できる定数であるから、例えばこの倍率mを任意に無段階変更させることにより、ズーム機能を付与した広視野カメラ装置が提供できる。
【0020】
次に、この発明に係る(歪み補正機能付き)広視野カメラ装置、特にこの実施例では(歪み補正機能付き)魚眼カメラ装置について、図4を参照しながら説明する。
この実施例の(歪み補正機能)付き魚眼カメラ装置は、魚眼レンズ1と,撮像カメラ2と、A/D変換部3と、書き込みカウンタ4と、アップダウンカウンタ5と、画像メモリ6と、マイクロプロセッサ7と、テーブル(座標変換)部8と、内挿部9と、D/A変換部10と、モニタ11とから構成されている。
【0021】
撮像カメラ2は、(倍率等の異なる広視野レンズ、例えば魚眼レンズ等の)レンズを交換可能なものであって、一般にNTSCカラーカメラを用いることが多いが、NTSC以外の方式、例えば静止画像撮影用のデジタルカメラでもよい。要するに広視野レンズによる光学像を2次元電荷結合素子(CCD)等で2次元走査された電気信号に変換させる構成のものであればよい。
【0022】
A/D変換部3は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものであって、画像メモリ6へ一時記憶させるための前処理を行うものである。この実施例のA/D変換部3は、入力が撮像カメラ2の出力に接続されているとともに、出力が画像メモリ6の入力に接続されている。
【0023】
書込カウンタ4は、A/D変換部3出力データを画像メモリ6に書き込むための書込アドレスの発生及び書込制御を分担するが、その動作はカメラ走査に対応した単純2次元走査を呈する一般に良く知られた書込動作でよい。
【0024】
アップダウンカウンタ5は、書込カウンタ4の出力データの一部を入力するようになっており、後に詳しく説明する180度基準円(以下、基準円と略す)に接する接点τの座標値を導出させるようになっている。
【0025】
マイクロプロセッサ7は、アップダウンカウンタ5によって求められた基準円の接点τの座標から、基準円の中心位置及び基準円の半径を導出するようになっている。また、このマイクロプロセッサ7は、画像メモリ6からの画像読出しの際のアドレスを決定する読出しアドレス決定手段を構成しており、先述した座標変換式(3)(4)(これらは、少なくとも広視野レンズが与える円画像の基準円の半径を変数とする関係式を構成している)に基づいて所定の演算を行うとともに、その演算結果をテーブル部8へ出力する。
【0026】
テーブル部8は、マイクロプロセッサ7で求めた基準円の中心座標及び半径に関するデータを入力すると、先の座標変換式(3)(4)に基づきこれらのデータを演算してその結果を座標変換データとして記憶する。このテーブル部8に格納されている座標標変換式(3)(4)はともに奇関数であるから、この関数が与える関数曲線はそれぞれ画面中心に対して点対称に分布するため、4個の象限内の一つの象限(例えば、第1象限)のみ記憶しておけば、他の象限(例えば、第2象限から第4象限)については正負の符号のみ適宜変更するだけで、全象限において画像曲線が得られる。
なお、このテーブル部8での記憶データ内容は、出力信号のタイミングで読み出され、その整数部は画像メモリ6の読み取りアドレスとして、小数点以下は内挿部9の内挿係数データとして、それぞれ画像メモリ6及び内挿部9へ出力される。
【0027】
内挿部9は、画像メモリ6上の読み出し整数座標に対して、読出しアドレス小数点以下の端数分に相当する内挿係数データに基づく内挿を行ってギザギザの発生を抑制するために組み合わされる機能である。即ちこれは、一般に、魚眼レンズ画像が、画像中央部に比べ、周辺部付近で拡大されるが、周辺部の拡大率は例えば視野角140度において8.5倍にも及ぶため、A/D変換部3におけるサンプル間隔が画面上に大きく現れ、これによって画面にギザギザの障害が発生するからである。
【0028】
D/A変換部10は、内挿部9から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するものであって、入力が内挿部9の出力に接続されているとともに出力がモニタ(デイスプレイ)11に接続されている。
【0029】
次に、この発明に係る広視野カメラ装置における歪みの補正方法について図5を参照しながら説明する。なお、この実施例に係る歪み補正では、先の実施例に係る魚眼レンズ画像(半球状視野の等距離射影の画像)に対して歪み補正を行うものとする。
この実施例の歪み補正方法では、先述した座標変換式(3)(4)において、正接関数を含んでおり、この正接関数が描く固有曲線では、急激な立ち上がり、立ち下がりを示す微係数(傾き)の変化を伴うため、補正されるべき円画像の中心位置と補正に用いる固有曲線(関数)の中心位置及び円画像の半径と180度基準円の半径とをほぼ正確に一致させる手段を備えることが必要であり、重要となっている。
そこで、先の実施例に係る(歪み補正機能付き)魚眼カメラ装置にはこのための手段を備えており、この魚眼カメラ装置を使用した魚眼レンズ画像の歪み補正方法のうち、特に基準円の中心位置及び基準円の半径の導出方法について説明していく。
【0030】
図5は、この補正方法を説明するための説明図であり、この魚眼レンズ画像の歪み補正方法では、円画像上において水平(H)方向及び垂直(V)方向にカーソル線を付加しており、180度基準円Cにカーソル線Nが接する状態のカーソル位置をマイクロプロセッサ7で与えるように配置される。なお、図5において、画郭Fは入力円画像の輪郭、Cは円画像の180度基準円を示す。
【0031】
アップダウンカウンタ5に入力される選択信号H/V及び0/1の出力によって以下に示すいずれかの接線N1〜N4が選択され、1個のデータを入力次第順次切り替えられて4個のデータのセットが入力される。
【0032】
・例えば、[0,0]の時
上接線N1が現れ、U/D信号、即ちアップダウンカウンタ5の内容を増減させると、上接線N1の位置が変化するように構成されており、これによって180度基準円に上方側から外接する状態が得られる。このときのアップダウンカウンタ5の内容、即ち外接点座標等をマイクロプロセッサ7へ出力する。
・同様に、[0,1]の時には下接線N2、[1,0]の時には左接線N3、[1,1]の時には右接線N4の各々について同様の操作を行い、同様の情報をマイクロプロセッサ7へ出力する。
【0033】
その結果、上接線N1と下接線N2の接点Y座標の相加平均から円画像の中心部の垂直位置(Y0 ),左接線N3と右接線N4と接点X座標の相加平均から円画像の中心部の水平位置(X0 )を求め、これらX,Yの各々の接点座標の差分を求めて2分の1すれば、円画像の半径を求めることができる。
なお、この半径については、垂直方向半径と、水平方向半径との2つの半径が得られるが、これらの平均を求めるデータが、テーブル部8での演算に使用される。
【0034】
以上、図5においては、カーソル方式による補正方法について例示したが、マウスを用いて180度基準円上を大凡120度毎に3点入力する方式をとれば、操作3回で済ませることができることは言うまでもない。
【0035】
次に、視野角を拡張するに極めて有効な、魚眼中心からの距離Rを修飾し変更する手段につき、実施例を図6、及び図7を用いて説明する。
このことは、監視カメラの設置に当たっては、監視すべき対象をカメラ視野の中央に写し出すと共に、その周りは、監視対象にヒトや移動物体などが近づく有様や遠ざかる有様など、監視対象そのものに対して準監視対象的位置づけであり、この部分では被写体の歪みは気にしないで、極力広い視野を監視したいことが多いことを踏まえて、魚眼歪みを補正するよりも、寧ろ、周辺部の歪みを許容することにより中心部の被写体の大きさを確保する意味で、魚眼歪みの補正よりも、魚眼歪みの変換とも言うべき性質のものである。
以上に於いて説明した魚眼歪み補正は、円画像の画素子の座標を、中心からの距離に従ってtan(θ)/θ倍するため、視野角を拡大するにつれて正接曲線に沿って周辺部の拡大率が急速に高まり、それに伴って画面全体の面積も増える。そのため、拡大された周辺部も含めて全体が表示面積に収容できるよう、全体の倍率を下げざるを得ない。
その結果、監視したい主要部分である中央部が異常に縮小されて「遠く向こうに引っ込んでしまう」ことになる。
この現象を差し支えない程度に留めるためには視野角を一定の値以下に留めて、水平視野角で120〜130度辺りが限度と考えられるが、本発明では次のような手段を用いてその限界を約160度辺りまで改善している。
それは、図4のマイクロプロセッサ7においてテーブル部8のデータを生成するに当たり、(1)式に示す
θ=arctan〔(R/R0)・(π/2)〕
のRに、魚眼画像中心を原点とする入力座標(i,j)を用いて、
R=sqrt (i 2 +j 2 )
を代入して得た代わりに、i及びjを一旦、図6のように修飾してから上式に代入すれば、その結果、読み取り座標は図7のようになり、中央部の縮小を押さえ、周辺部の異常な拡大を押さえて不自然さをなくすることができる。
図6、及び図7の複数の曲線に添えられた数字Kは、中央部と周辺部の画像拡大率の割合を設定するための任意の係数であり、K=0.0の時、図6の直線のように修飾なし、K=0.2の時、やや弱い修飾、K=0.8の時、ほぼ中央部と周辺部の被写体の大きさがバランスするが、図6で判るように、入力座標の値そのものよりも小さい値を上式に代入することにより、図7のように読み取り位置が中心寄りに移動する。
読み取り座標が中心寄りに移動すると言うことは、表示位置よりも中心寄りの画像が表示されることに対応するため、中心部の被写体が大きく表示されることは改めて説明する迄もない。
このことは図7の上では、次のように言える。
K=0のカーブは中心部で急峻であるが、僅かの位置の変化で読み取り座標が大きく変化するため被写体の大きさが縮小され、周辺部で傾斜が急峻なのは逆に被写体が拡大されることに対応する。それがKの値と共に、中心部の傾斜が緩やかになる方向に、周辺部の傾斜が急峻になる方向に変化しており、既に説明した、「中央部が異常に縮小され、周辺部が異常に拡大されるのを緩和する」ことが理解されよう。
【0036】
次に、画像回転について説明する。
一般に、監視カメラは建物壁面の天井に近い高所に取り付けられていることが多く、機械的に正確なカメラ取り付けが困難であり、このため光軸の回りにやや傾いて取り付けられることも多い。
このような場合、〔0035〕で説明した座標軸の変形の結果、周辺部の縮小率が高まるので、カメラがやや斜めに傾いて取り付けられて被写体の中の水平の長い線、例えば廊下と壁面が接する線がやや斜めになっていると、その直線の傾斜が周辺部で急峻になるため、S字型に変形して違和感を伴うことになる。
この現象に対する対策としては、テーブル部8に記憶させる座標データを、カメラが傾斜した角度だけ座標回転して記憶させれば、結果として出力される画像にはカメラの傾斜は相殺されて水平になり、前記S字型歪みも消え去ることになる。
ここで言う座標回転は、画面の中心を通り、かつ画面に垂直な軸を回転軸として、テーブルの水平垂直の2次元平面をカメラ取り付けの傾斜角だけ回転させたデータをテーブルに記憶させるものであって公知の技術であるので、詳しい説明は省略する。
【0037】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明によれば、広視野レンズ(魚眼レンズ)を備えたカメラ装置において、カメラ装置の光電変換された出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部の出力を一時記憶する画像メモリと、魚眼レンズが与える円画像の基準円の半径を変数とする座標変換式によって画像メモリからの画像読出しの際のアドレスを決定する読出しアドレスを決定するマイクロプロセッサとを備えたので、以下のような従来のものには見られない種々の優れた効果が得られる。
(a)広視野レンズ(魚眼レンズ)の歪みを補正することができるようになる。
(b)特に、例えば本願発明に係るカメラ装置内部に設けたテーブル部に画像メモリと同じアクセスタイムのSRAMを用いれば、座標変換式を10ナノ秒〜数十ナノ秒毎に動作・演算させることができるので、完全動画を保って歪み補正することができる。
(c)アドレス決定手段を構成するマイクロプロセッサには特殊のものではなく通常の安価な汎用のものが使用できるから、製造コストの増大を抑えることができる。
(d)通常のレンズ交換可能なカメラは、視野角が数十度と狭く、しかも平面画像であるため、CCD撮像素子の中心とレンズ光軸が多少ずれていても問題ないが、広視野レンズ(魚眼レンズ)の補正にあっては、円画像と補正曲線の中心はより精度良く一致させる必要があるが、本願発明では得られた円画像を基にして補正曲線を計算で算出できるため、カメラとレンズの組み合わせ誤差を完全に吸収でき、通常のレンズ交換可能なカメラを使用することが可能であり、その分製造コストの削減を図ることができる。
(e)この発明によれば、任意の広視野レンズ(魚眼レンズ)を使用しても、レンズの設計によりその光学像の大きさが異なるが、中心位置合わせ同様、円画像の半径も実際に広視野レンズ(魚眼レンズ)で撮像された画像から測定して座標変換式に使用可能であるから、その誤差を完全に吸収させることができ、低コストで高性能なものが提供できる。
(f)中央部と周辺部の画面縮小、或いは拡大率を任意に調整することができるため、視野角が大きくとれる他、周辺部の歪みは視覚心理的にさほど気にならないから、ある程度周辺部の歪みを許容することにより、主要な監視被写体が写った中央部分を監視に適した大きさに設定できる技術を提供できる。
(g)さらに、この発明によれば、倍率は座標変換式におけるmの値を任意に変更・変化させることで容易に変更できるから、格別の装置を付加しなくとも電子ズーム機能を付与することもできる。
(h)また、この発明によれば、カメラ取り付けの機械的精度が余り良くなくても、電子的に画像を回転してカメラ取り付けの機械的誤差を吸収するので、取り付け工事は簡単であり、かつ正確な画像を得ることができる。この手段はテーブルの内容を演算する段階の数式演算のみで構成されるため、所謂ハードウェア・コストを追加することなしに実現できるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る実被写体と魚眼レンズ画像との関係を示す原理図。
【図2】この発明に係る魚眼レンズ画像を広げて円画像等に変換した状態を示す説明図。
【図3】この発明に係る半球半径と角度θとの関係を導出する説明図。
【図4】この発明に係る広視野カメラ装置の構成を示すブロック図。
【図5】この発明に係る広視野カメラ装置における歪みの補正方法の一部を示す説明図。
【図6】この発明に係る入力座標と修飾後座標との関係を示す特性曲線。
【図7】この発明に係る入力座標と書込座標との関係を示す特性曲線。
【符号の説明】
1 魚眼レンズ(広視野レンズ)
2 カメラ
3 A/D変換部
6 画像メモリ
7 マイクロプロセッサ(アドレス決定手段)
8 テーブル部(アドレス決定手段)
Claims (3)
- 広視野レンズを備えたカメラ装置において、
前記カメラ装置の光電変換された出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(3)と、
前記A/D変換部(3)の出力データを画像メモリ(6)に書き込むための書込アドレスの発生と書込制御を行う書込カウンタ(4)と、
前記A/D変換部(3)の出力を一時記憶する画像メモリ(6)と、
魚眼レンズからなる光学系を有する広視野レンズが与える円画像の基準円、すなわち、光軸から無限大の距離にある被写体は半球面の180度の位置R 0 に結像するので、この位置R 0 を満たす半径の円をカメラ出力の円画像の180度基準円Cとし、この基準円の半径を変数とする座標変換式によって、前記画像メモリ(6)からの画像読出しの際のアドレスを決定して演算結果をテーブル部(8)へ出力するマイクロプロセッサ(7)と、
前記マイクロプロセッサ(7)で求めた基準円の中心座標及び半径に関するデータを入力して、前記座標変換式に基づく演算結果を座標変換データとして記憶し、前記記憶データの内容は出力信号のタイミングで読み出され、その整数部は画像メモリ(6)の読み取りアドレスとして、その小数点以下は内挿係数データとして内挿部(9)へ出力するテーブル部(8)と、
前記画像メモリ(6)上の読出し整数座標に対して、読出しアドレスの小数点以下の端数分に相当する内挿係数データに基づく内挿を行って、画面にギザギザの発生を抑制する内挿部(9)と、
前記内挿部(9)から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換して、モニタ(11)へ出力するD/A変換部(10)と、
によって構成すると共に、
画像メモリ(6)の読出しアドレス(i,j)と表示アドレス(x,y)との関係が、
i=m・x・θ/tanθ ・・・(3)
j=m・y・θ/tanθ ・・・(4)
ここで、
θ= arc tan [(R/R 0 )・(π/2)]・・・(1)
R=[x 2 +y 2 ] 1/2 ・・・(5)
m:魚眼レンズの倍率
i:読出し位置の水平座標(魚眼画像中心を原点とする)
j:読出し位置の垂直座標(魚眼画像中心を原点とする)
x:表示位置の水平座標
y:表示位置の垂直座標
R 0 :基準円の半径
R:表示位置と、魚眼画像中心間の距離
を満たすように、カメラで撮影した円画像を構成する各画素を座標(i , j)ごとに平面画像(x,y)に座標変換させ、歪みの少ない広視野観察画像を形成するように構成したことを特徴とする広視野カメラ装置。 - 画像メモリ(6)によるメモリの読出しは、予め演算により生成されてテーブル部(8)の内部に蓄えられたデータを読出しアドレスとして用いることを特徴とする請求項1に記載の広視野カメラ装置。
- 魚眼画像中心からの距離Rには、魚眼画像中心からの距離に従って修飾され、値を変更したものを代入する手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の広視野カメラ装置。
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