JP3008831B2 - 圧電トランスの製造方法 - Google Patents

圧電トランスの製造方法

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JP3008831B2 JP28296095A JP28296095A JP3008831B2 JP 3008831 B2 JP3008831 B2 JP 3008831B2 JP 28296095 A JP28296095 A JP 28296095A JP 28296095 A JP28296095 A JP 28296095A JP 3008831 B2 JP3008831 B2 JP 3008831B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電トランスの製
造方法に関し、特に、入力電圧印加用電極および出力電
圧取出し用電極が圧電体の表面に設けられた構造の圧電
トランスを製造する際の、分極処理の方法に関わるもの
である。
【0002】
【従来の技術】この種の圧電トランスは、基本的に、例
えばチタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT:PbZrTi
3 )のような圧電性セラミック材料を焼成して得られ
る長板状の圧電体が、長手方向に沿って、駆動部(以
後、入力部と記す)と発電部(以後、出力部と記す)の
二種類の部分に分けられた構造となっている。昇圧は、
入力部に設けた入力電圧印加用電極(以後、入力電極と
記す)に交流電圧を加えて圧電体全体に長手方向の縦振
動を発生させ、その圧電体の縦振動に応じて出力部に生
じる電圧を、出力電圧取出し用電極(以後、出力電極と
記す)から外部に取り出すことにより、行われる。入力
電圧の加え方を変え、出力電極に入力電圧を印加すれ
ば、降圧された電圧を入力電極から取り出すことができ
る。
【0003】図6に、このような圧電トランスの一例の
斜視図を示す。図6を参照すると、この圧電トランス1
では、長板状の圧電セラミック板10が、長手方向軸に
沿って左側から順に、低インピーダンスの入力部11L
と、高インピーダンスの出力部12と、入力部11Lと
同一構造の入力部11Rの三つの部分に区分されてい
る。入力部11L,11Rは外部から電圧を入力する部
分であって、それぞれの上・下両面にはほぼ全面(但
し、セラミック板の周辺部を細く残して)に、平面状の
入力電極13A,13B及び14A,14Bが設けられ
ている。この入力部11L,11Rの部分のセラミック
板は、図6中に太い矢印で示すように、予め厚さ方向に
分極させられている。一方、出力部12は昇圧された電
圧を取り出すための部分である。この出力部には、セラ
ミック板10の長手方向中央の上下面に、セラミック板
の幅方向に走る細長い出力電極15A,15Bが設けら
れている。この出力部12は、図6中に細い矢印で示す
ように、予めセラミック板10の長手方向に分極させら
れている。
【0004】上記の圧電トランスを昇圧トランスとして
用いるときは、入力電極および出力電極を下記のように
接続する。すなわち、入力部11Lの上側の電極13A
と入力部11Rの上側の電極14Aとを、入力端子17
Aに接続する。一方、入力部11Lの下側の電極13B
および入力部11Rの下側の電極14Bは、入力端子1
7Bに接続すると共に、出力端子18Bにも接続する。
これに対し出力部12では、上・下の出力電極15A,
15Bどうしを短絡して、出力端子18Aに接続する。
これでこのトランスは、入力部11L,11Rそれぞれ
の下側電極13B,14Bを入・出力に共通の電極とす
る、4端子構造となる。この状態で、二つの入力端子1
7A,17Bの間に外部から交流電圧einを印加する
と、入力部11L,11Rの部分のセラミック板が、圧
電横効果31モードにより、長手方向に振動する。この
振動は出力部12側に伝達され、セラミック板10全体
に長手方向の縦振動が生じる。出力部12ではこのセラ
ミック板の縦振動に応じて、圧電縦効果33モードによ
り、出力電極15A,15Bと入力部の下側電極13
B,14Bとの間に電圧が生じる。その電圧が出力電圧
out として出力端子18A,18Bの間から取り出さ
れる。
【0005】ここで、上に述べたように、圧電トランス
には入力部と出力部の二種類の領域が必要であり、且
つ、それらの領域は必ず、予めセラミック板の長手方向
または厚さ方向に分極させられている。つまり、一つの
圧電トランスには、必ず、互いに異る方向に分極された
二種類の領域が存在することになる。そして、それらの
領域における分極の度合が高いほど、トランスとしての
変圧比を大きくとれる。それら分極は、製造過程の分極
処理工程で、セラミック板のそれぞれの領域に分極すべ
き方向の電界を加え双極子モーメントを生じさせること
によって、行われる。その場合、双極子モーメントの発
生の大きさつまり分極の度合は加えた電界の強さと温度
に依存し、電界が強いほど分極が十分に行われ、又、温
度が高ければ加えるべき電界が低く済むことが知られて
いる。そこで、圧電トランスに限らず例えば圧電アクチ
ュエータのような、圧電効果を利用する素子の製造にお
ける分極処理には、加熱と電界印加とを併用して比較的
低電界で分極させることが、一般的に行われている。高
電界での分極処理による素子の特性劣化や破壊あるい
は、作業時の危険性や放電防止の困難さなどを避けるた
めである。その場合、素子を加熱するための媒体には、
シリコーンオイルのような絶縁油が多用されている。絶
縁油は絶縁性に優れ、高電圧を必要とする分極処理に適
しており、また150〜200℃程度の高温が比較的容
易に得られるからである。例えば特開昭64ー1498
1号公報に開示されたモノモルフ素子の製造に際して
は、100℃のシリコーンオイル中で、距離200μm
の電極間に400V(2kV/mm)の電圧(電界)を
加えて分極処理を行っている。又、この出願発明の譲受
人と同一譲受人による特願平6ー174417号による
圧電トランスでは、入力部および出力部の分極処理を、
100℃の絶縁油中で4kV/mmの電界を加えること
により行っている。更に、同じくこの出願発明の譲受人
と同一譲受人による特願平4ー27040号による圧電
トランスでは、150℃の絶縁油中で駆動部および発電
部に1.5kV/mmの直流電界を加えて分極処理して
いる。
【0006】このように、従来の圧電トランスの分極処
理は、セラミック板のキュリー点やトランスの構造など
にもよるが、およそ150〜200℃程度に加熱した絶
縁油中で数kV/mmの電界を加え、且つ、入力部およ
び出力部とも同一の条件で行うことが一般的である。そ
の場合、電界の印加は、通常、入力電極および出力電極
を利用して行われる。例えば図6に示す圧電トランスに
おいて入力部11L,11Rを分極処理するときは、上
側の二つの電極13A,14Aどうしを短絡させ、また
下側の二つの電極13B,14Bどうしを短絡させた上
で、上下の電極間に直流電圧を加える。一方、出力部1
2の分極処理のときは、入力部の四つの入力電極13
A,14A,13B,14Bを全て短絡させ、又、出力
部側では、二つの出力電極15A,15Bどうしを短絡
させる。そして、それら同電位の四つの入力電極と同じ
く同電位の二つの出力電極との間に直流電圧を加える。
従って、入力部の分極処理と出力部の分極処理とは、そ
れぞれの処理における入力電極、出力電極の接続の仕方
が異なるので、必然的に、同時に実施することはでき
ず、別々に、順番に行わなければならないことになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の分極処
理方法、すなわち、入力部と出力部とを同一の条件で、
しかも別々に順番に行うという方法に基づいて製造した
圧電トランスでは、これを動作させたときセラミック板
にクラックが発生し易く、甚だしい場合は破壊に至るこ
とがある。又、先に分極処理を行った部分での分極度が
十分ではない、という問題が起る。以下にその説明を行
う。
【0008】この種の圧電トランスでは、通常、変圧比
を大きくするために、出力部12の部分のセラミック板
の長さ(すなわち、出力部の電極15A,15Bと入力
部の電極13A,13Bとの間および、電極14A,1
4Bとの間の距離)を、セラミック板の厚さ(すなわ
ち、入力部の電極13A,13B間の距離および電極1
4A,14B間の距離)に比べて長く設定する。入力部
では低い入力電圧で大きなひずみを発生させるために、
電極間距離を狭めて電界を高め、一方、出力部では高出
力電圧を得るため、セラミック板のひずみ量つまり長さ
を大きくする必要があるからである。従って、出力部1
2の分極処理の際には、分極を飽和させるために、出力
部の電極15A,15Bと入力部の電極13A,13B
との間および14A,14Bとの間に高い電圧を加える
ことになり、この部分のセラミック板に長手方向の大き
なひずみが生じる。
【0009】但し、上記の長手方向のひずみは、セラミ
ック板10のうち、出力電極15A(15B)と入力電
極13A(13B)とが向き合っている部分および出力
電極15A(15B)と入力電極14A(14B)とが
向き合っている部分に、発生するものである。ところ
が、セラミック板表面に電極を設けた構造のこの種の圧
電トランスでは一般に、図6に見られるように、各電極
をセラミック板10のエッジから多少引き退げて内側に
形成する。すなわち、各電極は、セラミック板の幅方向
の端から端まで全幅に亘って形成されているのではな
く、セラミック板の端には電極が形成されていない部分
がある。セラミック板のエッジ部での電界集中による異
常放電を避けるためである。従って、出力部12には、
分極処理時に長手方向にひずみを発生する部分と、ひず
みが生じない部分とが併存することになる。その結果、
上記のひずみ発生部分とひずみ非発生部分との境界にひ
ずみ量に応じた大きな応力が発生し、その応力が大きい
ときはセラミック板10に亀裂やクラックが発生してし
まう。このようなクラックの発生は、出力部12の分極
処理の際の印加電圧の大きさに左右され、分極処理温度
が低く高電圧を加えなければならないほど、クラックが
生じ易い。印加電圧を低下させるには、分極処理温度を
高くすることが効果的であるが、その温度は、従来、絶
縁油の温度に制限されて、高高200℃である。
【0010】次に、上述したように、圧電トランス製造
の際には、出力部の分極処理と入力部の分極処理とを、
別々に順番に行わなければならないのであるが、この場
合、先に分極処理した部分の分極が後の分極処理の際の
加熱で戻ってしまうという、脱分極現象が起る。この脱
分極は、高温であるほど著しい。例えば、図7は、PZ
T系の圧電性セラミック材料から得た焼結体を一度分極
させた後、高温中に保管し、保管温度と分極度の低下度
合との関係を調査した結果を示すものである。セラミッ
ク材料としてはNEPEC8(商品名:(株)トーキ
ン)を用い、これを面積37.0×5.3mm2 で厚さ
1.3mmの圧電板に成形し、焼成した。その後、その
焼結体の上下面に電極を設け、150℃のシリコーンオ
イル中で、厚さ方向に2.0kV/mmの一定直流電界
を30分間印加して、分極処理を行った。そして、その
分極させた試料を高温の恒温槽中に30分間保管した
後、圧電特性(横効果電気機械結合係数k31および機械
品質係数Qm )を測定し、分極度を算出した。
【0011】図7を参照すると、分極度は保管温度が1
50℃を越えると下り始め、200℃を越えると急激に
低下して行く。すなわち、保管温度が分極処理温度を越
えると、一度分極したものが戻り始めることが分る。こ
のことから、圧電トランスにおいて、出力部と入力部と
を、順番に、同一条件で、分極処理を行うという従来の
製造方法では、先に分極処理を施した部分の分極が後の
分極処理時に受ける熱によって戻ってしまい、十分な変
圧比を得ることができなくなってしまうのである。
【0012】従って本発明は、出力部および入力部の分
極度が従来より高くしかも、クラック発生などのない、
変圧比が大きく信頼の高い圧電トランスを製造する方
法、特に、分極方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0013】本発明の圧電トランスの製造方法は、長板
状の圧電セラミック板に、分極の方向が互いに異る、入
力部及び出力部の二種類の領域を設けてなる圧電トラン
スを製造する方法であって、前記入力部及び出力部をそ
れぞれ前記分極の方向に分極させるための分極工程を含
む圧電トランスの製造方法において、前記圧電板の材料
にPZT系の圧電セラミック材料を用い、前記分極工程
では、始めに、前記圧電セラミック板をキュリー点−1
5°Cの温度以上に加熱した後、分極距離の長い方の領
域に分極させるべき方向の直流電圧を印加し、その直流
電圧を一定に保持しつつ100°C以下になるまで徐冷
した後、電圧印加を停止する第1の分極処理と、次に、
前記圧電セラミック板を前記第1の分極処理における温
度より低い温度に加熱した後、分極距離の短い方の領域
に分極させるべき方向の直流電圧を所定時間印加し、そ
の直流電圧の印加を停止後、急冷する第2の分極処理の
二段階で分極処理することを特徴とする。
【0014】又、上記の圧電トランスの製造方法におい
て、前記第1の分極処理で、徐冷するのに替えて、急冷
することを特徴とする。
【0015】更に、上記の圧電トランスの製造方法にお
いて、前記分極距離の長い方の領域に印加した直流電圧
を一定に保つのに替えて、前記徐冷又は急冷の開始か
ら、前記印加した直流電圧を徐々に上昇させて行くこと
を特徴とする。
【0016】本発明において第1の分極処理では、分極
距離が長く印加電圧に伴うひずみ量の大きい方の領域つ
まり出力部を、キュリー点−15°Cの温度以上の高温
で分極処理することで、低電界で分極できるようにして
いる。これにより、応力の集中する出力部の電極近傍で
のひずみを少くしながら、高い分極度を得る。一方、第
2分極処理では、分極距離が短くひずみ量の小さい領域
つまり入力部を、出力部より低い温度、高い電界で分極
処理している。これにより、先に分極させた出力部の分
極が、後から行われる入力部の分極処理の際の加熱で戻
ることを防ぎ、出力部の分極度を従来より高めている。
【0017】第1の分極処理の際の冷却を急冷で行う
と、圧電セラミック板が高温に曝されている時間が短く
なるので、出力部では高温による分極の戻りが小さくな
り、その分、分極度が高くなる。
【0018】更に第1の分極処理の際に、圧電セラミッ
ク板の内部抵抗が温度の低下に伴って上昇する現象を利
用して、出力部に印加した直流電圧を徐々に高めて行く
と、その高めた分、出力部の分極度が高まる。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て、説明する。本発明者は、以下に述べる幾つかの実施
の形態の分極方法により、図6に斜視図を示す構造の圧
電トランスを作製し、出力部および入力部の分極度を測
定した。又、完成したトランスを動作させ、性能を評価
した。
【0020】始めに、全ての実施の形態に共通な事項に
ついて、述べる。 (1)製造工程 先ず、圧電セラミック板10を形成する。
【0021】PZT系の圧電性セラミック材料としてN
EPEC8(商品名:(株)トーキン)を用い、これを
焼成して、キュリー点が310℃で、平面形状37×
5.3mm、厚さ1.3mmの長板状の焼結体を得た。
【0022】次に、入・出力電極13A,13B,1
4A,14B,15A,15Bを形成する。
【0023】銀ペーストを使用した厚膜スクリーン印刷
法によりパターン形成した後、600℃で焼き付けた。
出力部12の電極15A,15Bと入力部11L側の入
力電極13A,13Bとの距離および入力部11R側の
入力電極14A.14Bとの距離は、それぞれ6mmで
ある。
【0024】次いで、出力部12の分極処理(第1分
極処理)を行う。
【0025】入力部11L,11Rの上下に設けられた
四つの電極13A,14A,13B,14Bを、治具で
短絡させる。又、出力部12の上下の電極15A,15
Bどうしを、同じく治具で、短絡させる。そして、高温
の恒温槽中で加熱しながら、入力部側の四つの電極をア
ース電位として出力側の二つの電極に直流電圧を加え
る。分極処理時の温度プロファイルおよび電圧プロファ
イルについては、後に、実施の形態ごとに詳述する。
【0026】更に、入力部11L,11Rの分極処理
(第2分極処理)を行う。
【0027】前の第1分極処理で各電極の短絡に用いた
治具を全て取り外し、入力部11L,11Rの上側の二
つの電極13A,14Aどうしを、治具で短絡させる。
又、下側の二つの電極13B,14Bどうしを、同じく
治具で、短絡させる。そして、シリコーンオイル中で加
熱しながら、上側の電極13A,14Aと下側の電極1
3B,14Bとの間に直流電圧を加える。分極処理時の
温度プロファイルおよび電圧プロファイルについては、
後に、実施の形態ごとに詳述する。以上の工程で、圧電
トランスが完成する。 (2)分極度測定およびトランス性能評価 トランス完成後、それぞれの入・出力電極に導線を取り
付け、入力部および出力部それぞれの分極度を測定し
た。又、トランスの性能評価を行った。
【0028】分極度測定 横効果電気機械結合係数k31eff 及び縦効果電気機械結
合係数k33eff を測定し、その測定値から分極度を算出
した。測定結果については、後に、実施の形態ごとに詳
述する。
【0029】トランス性能評価 図2に示す測定回路により、トランスの入力電極に交流
電圧を加え、動作中のトランスの表面温度を測定した。
図2を参照して、直径3mmφ、長さ220mmの冷陰
極管22にバラストコンデンサ21(容量8pF)を直
列接続したものを、負荷とした。圧電トランス1への入
力にはシンセサイザ29を用い、その交流正弦波出力を
アンプ20により増幅して入力した。入力の際には、ト
ランスの長さ3次振動モードの共振周波数(約130k
Hz)近傍で、出力電流5mAで入力電圧が最低となる
ように、入力周波数を調整した。トランスの表面温度測
定には非接触式赤外線熱画像装置を用い、トランスの出
力部表面で最も温度上昇の大きい位置での温度を採用し
た。評価結果については、後に、実施の形態ごとに詳述
する。
【0030】尚、分極度測定および性能評価に当って
は、トランスの機械振動の節に相当する位置で、入・出
力電極それぞれの中央に、0.1mmφの銅線をはんだ
付けした。
【0031】以下に、第1の実施の形態から第4の実施
の形態について、実施の形態ごとに説明する。
【0032】〔第1の実施の形態〕図1は、本実施の形
態における、第1分極処理(出力部の分極処理)および
第2分極処理(入力部の分極処理)時の、温度プロファ
イルおよび電圧プロファイルを示す図である。図1を参
照して、本実施の形態では、第1分極処理で、トランス
を恒温槽中で325℃に加熱し、出力部に3kV(0.
5kV/mm)の直流電圧を印加した状態で5時間掛け
て100℃以下に徐冷した。次いで第2分極処理で、ト
ランスをシリコーンオイル中で150℃に加熱し、入力
部に2.6kV(2.0kV/mm)の直流電圧を20
分間印加した後、電圧印加を停止すると同時に取り出
し、急冷した。
【0033】このようにして得たトランスを洗浄、乾燥
した後、10個につき分極度を確認したところ、入力部
は99%、出力部は94%の平均分極度であった。
【0034】又、図2に示す回路で、入力電極に交流電
圧34Vrms を入力し、10個ともに、5mA,2.5
Wの出力を得た。このとき、トランスの平均温度上昇
は、25℃であった。
【0035】更に、第1分極処理の温度を変えて分極度
を測定したところ、295℃以上であれば、0.5kV
/mmの直流電界で同等の分極度が得られることが、判
明した。
【0036】次に、比較例として、従来の分極方法によ
り、出力部および入力部を分極処理した。先ず、空気中
で150℃、2.0kV/mmの条件、すなわち、(圧
電セラミック焼結体の分極処理条件としては)比較的低
温、高電界で、出力部の分極処理を試みた。しかし、処
理時に放電が生じたり、分極が終了した後のトランスに
クラックが見られ、分極電界を低下させる必要があるこ
とが、分った。
【0037】その後、分極処理温度を先の温度より高
め、直流電界を先の電界より低めた条件つまり中温度,
中電界の条件に変更し、出力部,入力部の順に同一条件
で分極処理した。すなわち、シリコーンオイルを用いて
トランスを200℃とし、出力部に6.0kV(1.0
kV/mm)の直流電圧を20分間印加して分極処理を
行い、次に、同じくシリコーンオイル中、200℃で、
入力部に1.3kV(1.0kV/mm)の直流電圧を
20分間印加して、入力部を分極処理した。このトラン
スの10個について分極度を確認したところ、入力部の
平均分極度は97%であったが、出力部は平均分極度が
90%で、分極度に低下が見られた。
【0038】そこで、更に検討の結果、図3に示す条件
で分極処理を行った。すなわち、トランスを150℃の
シリコーンオイル中に入れた後、温度を200℃に上
げ、出力部に6.0kV(1.0kV/mm)の直流電
圧を20分間印加し、電圧印加停止後ただちにトランス
を取り出して急冷することにより、出力部を分極処理し
た(第1分極処理)。次に、150℃のシリコーンオイ
ル中で、入力部に2.6kV(2.0kV/mm)の直
流電圧を20分間印加し、電圧印加停止後ただちにトラ
ンスを取り出して急冷することにより、入力部を分極処
理した(第2分極処理)。このようにして得たトランス
10個につき分極度を確認したところ、入力部は97
%、出力部は93%の平均分極度であった。又、図2に
示す回路で、入力電極に交流電圧37Vrms を入力し、
10個ともに5mA,2.5Wの出力を得た。しかし、
このとき、圧電トランスの平均温度上昇は35℃と高い
値を示した。又、試験中に2個の圧電トランスには、出
力部電極近傍にクラックが発生した。
【0039】〔第2の実施の形態〕図4は、本実施の形
態における、第1分極処理(出力部の分極処理)および
第2分極処理(入力部の分極処理)時の、温度プロファ
イルおよび電圧プロファイルを示す図である。図4を参
照して、本実施の形態では、第1分極処理で、トランス
を恒温槽中(急冷用の強制空冷装置付)で325℃に加
熱し、出力部に3kV(0.5kV/mm)の直流電圧
を印加した状態で、強制空冷装置を用いて−4.5℃/
分の温度勾配で100℃以下に冷却した。次いで、シリ
コーンオイル中で、第2分極処理を施した。分極処理条
件は、第1の実施の形態における第2分極処理の条件と
同一である。
【0040】このようにして得たトランスを洗浄、乾燥
した後、10個につき分極度を確認したところ、入力部
は99%、出力部は96%と、第1の実施の形態に比べ
ても更に良好な平均分極度であった。又、図2に示す回
路で、入力電極に交流電圧30Vrms を入力し、10個
ともに、5mA,2.5Wの出力を得た。このとき、ト
ランスの平均温度上昇は20℃で、第1の実施の形態に
おける25℃よりも、低かった。
【0041】前述したように、PZT等の圧電セラミッ
ク焼結体の分極処理は、温度が高いほど低電界で済む。
特に、キュリー点以上の高い温度で分極させると、非常
に短い時間で分極が完了する。しかし一方では、分極処
理温度が高ければ高いほど、処理後の冷却過程で高温に
曝されている時間が長くなるので、分極の戻りが大きく
なってしまう。このような、高温による分極の戻りは、
セラミックに電界を加えた状態であっても、程度の違い
はあれ、同様に見られる。従って、第1の実施の形態の
ように第1分極処理の際の冷却を徐冷で行うときには、
出力部の分極度がその徐冷過程で多少低下することは、
免れ難い。そこで、本実施の形態では、その対策とし
て、第1分極処理に際してトランスに熱膨張、熱収縮に
よるクラックを生じさせない程度の急冷を行い、トラン
スが高い温度に曝される時間を短くすることによって、
分極度の低下を防止しているのである。本実施例では、
第1分極処理における冷却速度を−4.5℃/分とした
が、−50℃/分程度までであれば、クラック発生など
の点では特に問題がないことを確認した。
【0042】〔第3の実施の形態〕図5は、本実施の形
態における、第1分極処理(出力部の分極処理)および
第2分極処理(入力部の分極処理)時の、温度プロファ
イルおよび電圧プロファイルを示す図である。図5を参
照して、本実施の形態では、第1分極処理で、トランス
を恒温槽中(空冷装置付)で325℃に加熱し、出力部
に3kV(0.5kV/mm)の直流電圧を印加した。
その後、約−2.0℃/分の温度勾配で冷却しながら1
50℃になる迄の間、温度の低下につれて、電圧を約−
15V/℃の割合で増加させた。そして、最終的にトラ
ンス温度が100℃以下になる迄に、6.5KV(約
1.1kV/mm)の電圧を印加した。次いで、シリコ
ーンオイル中で、第2分極処理を施した。分極処理条件
は、第1の実施の形態における第2分極処理の条件と同
一である。
【0043】このようにして得たトランスを洗浄、乾燥
した後、10個につき分極度を確認したところ、入力部
は99%、出力部は95%と、第1の実施の形態に比べ
ても更に良好な平均分極度であった。又、図2に示す回
路で、入力電極に交流電圧32Vrms を入力し、10個
ともに、5mA,2.5Wの出力を得た。このとき、ト
ランスの平均温度上昇は22℃で、第1の実施の形態に
おける25℃よりも、低かった。
【0044】第1の実施の形態に見られる、分極処理の
際の冷却時の分極度低下を防止する方法としては、印加
電界を高くすることが有効である。しかし、温度が高い
と圧電セラミックの内部抵抗が低いので、分極処理開始
当初のまだ高温のときには、印加できる電界には制限が
ある。そこで、本実施の形態では、セラミックの冷却時
に、その冷極に応じて内部抵抗が上昇することを利用し
て、印加電界を漸増させ、これにより冷却時の分極度低
下を防いでいる。本実施の形態では、第1分極処理を空
気雰囲気中で行っているため、圧電セラミック表面での
リーク発生などの関係で、低温になった後の印加電界を
1.1kV/mmとそれ程高くはできなかったが、トラ
ンス表面に絶縁油脂等を塗布するなど放電対策を講じれ
ば、もっと大きな効果を期待できる。
【0045】〔第4の実施の形態〕第1分極処理時に、
第2の実施の形態における第1分極処理時と同じ急冷条
件(−4.5℃/分。図4参照)で冷却しながら、第3
の実施の形態における第1の分極処理時と同じ電圧上昇
条件(−15V/℃。図5参照)で漸増させた。その
後、第2分極処理を、第1〜第3の実施の形態における
第2分極処理と同一の条件で行った。
【0046】このようにして得たトランスを洗浄、乾燥
した後、5個につき分極度を確認したところ、入力部は
99%、出力部は97%と、第1の実施の形態に比べて
も更に良好な平均分極度であった。又、図2に示す回路
で、入力電極に交流電圧30Vrms を入力し、5mA,
2.5Wの出力を得た。このとき、トランスの平均温度
上昇は19℃で、第1の実施の形態における25℃より
も、低かった。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、第1
の分極処理で、分極距離が長く印加電圧に伴うひずみ量
の大きい方の出力部をキュリー点−15°Cの温度以上
の高温で分極処理することで、低電界で分極できるよう
にしている。これにより、応力の集中する出力部の電極
近傍でのひずみを少くしながら、高い分極度を得てい
る。又、第2分極処理では、分極距離が短くひずみ量の
小さい入力部を、出力部より低い温度、高い電界で分極
処理している。これにより、先に分極させた出力部の分
極が、後から行われる入力部の分極処理の際の加熱で戻
ることを防ぎ、出力部の分極度を従来より高めている。
【0048】これにより本発明によれば、変圧比が大き
くしかも、クラックなどの機械的損傷のない信頼性に高
い圧電トランスを提供することができる。
【0049】第1の分極処理の際の冷却を急冷で行う
と、圧電セラミック板が高温に曝されている時間が短く
なるので、出力部では高温による分極の戻りが小さくな
り、その分、分極度が高くなり、変圧比を更に大きくで
きる。
【0050】更に、第1の分極処理の際に、圧電セラミ
ック板の内部抵抗が温度の低下に伴って上昇する現象を
利用して、出力部に印加した直流電圧を冷却開始と同時
に徐々に高めて行くと、その高めた分、出力部の分極度
が高まるので、変圧比をより大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における分極処理条
件を示す図である。
【図2】圧電トランスの性能評価に用いた回路の回路図
である。
【図3】比較例の製造方法における分極処理条件を示す
図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における分極処理条
件を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態における分極処理条
件を示す図である。
【図6】圧電トランスの一例の斜視図である。
【図7】分極させた圧電セラミック焼結体における、保
管温度と分極度の低下との関係を示す図である。
【符号の説明】 1 圧電トランス 10 セラミック板 11L,11R 入力部 12 出力部 13A,13B,14A,14B 入力電極 15A,15B 出力電極 17A,17B 入力端子 18A,18B 出力端子 20 アンプ 21 バラストコンデンサ 22 冷陰極管 29 シンセサイザ

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長板状の圧電セラミック板に、分極の方
    向が互いに異る、入力部及び出力部の二種類の領域を設
    けてなる圧電トランスを製造する方法であって、前記入
    力部及び出力部をそれぞれ前記分極の方向に分極させる
    ための分極工程を含む圧電トランスの製造方法におい
    て、前記圧電セラミック板の材料にPZT系の圧電セラミッ
    ク材料を用い、 前記分極工程では、始めに、前記圧電セラミック板をキ
    ュリー点−15°Cの温度以上に加熱した後、分極距離
    の長い方の領域に分極させるべき方向の直流電圧を印加
    し、その直流電圧を一定に保持しつつ100°C以下に
    なるまで徐冷した後、電圧印加を停止する第1の分極処
    理と、 次に、前記圧電セラミック板を前記第1の分極処理にお
    ける温度より低い温度に加熱した後、分極距離の短い方
    の領域に分極させるべき方向の直流電圧を所定時間印加
    し、その直流電圧の印加を停止後、急冷する第2の分極
    処理の二段階で分極処理することを特徴とする圧電トラ
    ンスの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の圧電トランスの製造方
    法において、 前記第1の分極処理で、徐冷するのに替えて、急冷する
    ことを特徴とする圧電トランスの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の圧電トラ
    ンスの製造方法において、 前記分極距離の長い方の領域に印加した直流電圧を一定
    に保つのに替えて、前記徐冷又は急冷の開始から、前記
    印加した直流電圧を徐々に上昇させて行くことを特徴と
    する圧電トランスの製造方法。
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